Chapter.9 フレーズ~恋愛争奪戦~ Only you can love me...
僕はベッドに寝転がりながらコミックを読んでケラケラ笑っているルパートを見ていた。 「なあ、ルパート…」 「ん~?」 「手を繋いで歩いてくれるって事は、どういう事だと思う…?」 「はあ?」 その質問に、ルパートがやっとコミックから顔を上げて僕を見た。 「何の話?」 「だから…の事だよ…」 「え…?何、ダンってばと手を繋いだの?!」 「まぁね。昼間、ルパートが満腹で倒れてる時、二人でホテル裏の森に散歩に行ったんだ。その時…ちょっと」 「うわ、ずる!抜け駆け?!」 ルパートは口を尖らせつつ、僕の方に歩いて来てベッドにダイブしてきた。 「別に抜け駆けとかじゃ…。それに自分はダウンしてただろ?ロバートにおぶられて」 「そりゃ、そうだけど。手を繋いだって、すでに恋人同士みたいじゃないかっ。あ~あ~やっぱりもダンの事が好きなのかな~」 「そ、そうだったら嬉しいけど…さ…。解からないだろ?向こうは友達と思ってるだけかもしれないし…」 僕は仰向けになって軽く息をついた。 するとルパートの顔が目の前にヌっと現れ、ギョっとする。 「な、何だよ…っ」 「でも手を繋いで二人仲良く散歩したんだろ?いい雰囲気じゃん!」 「でも、の気持ちが解からないから悩んでるんだろ?」 「だったら告白したら?スッキリするからさっ」 そう言いながら僕の隣に寝転がったルパートは口を尖らせている。 彼の言葉に僕はちょっと息をつくと体を起こして振り返った。 「告白なんて…今は出来ないよ」 「なぁんでさ?!」 「今は大事な時期だろ?撮影が始まるって時に、もしに振られてみろ。演技に支障がでそうだよ…」 「何を弱気な…。その反対だって有り得るんだよ?上手く行けば頑張れるだろ?」 「そんな二分の一の確率で簡単に告白できないよ。ルパートは告白した事あるかもしれないけど僕は自分からってした事ないしさ」 「わ、何、それ?自慢?いつも相手から告白されるって言いたいわけ?」 「そ、そうは言ってないだろ?何でそう、ひねくれた言い方するんだよ」 僕は枕を掴んで一人スネてるルパートの顔面に押しつけると、ルパートは思い切りジタバタと暴れ出した。 「やったなっ」 ボフ…っっ!! 「ぃたっ」 ルパートも反撃してきて僕の顔に枕をぶつけてきた。 それに僕もやり返して一種の枕投げ状態になる。 「ぃてっ。痛いよ、ダン!」 「アハハ…っルパート鼻が赤いよ?」 ふざけあってジャレながら二人で一頻り枕を投げ合っていると部屋のドアをノックする音が聞こえた。 「ダン、ルパート、夕飯行くぞ?!」 「あ、ロバートだ」 「今、行くよ!」 僕はそう声をかけると急いでベッドから飛び下りて乱れた髪を直しながらジャケットを羽織った。 ルパートも"夕飯"と聞いて目の色を変えると、直ぐにベッドから下りて、そのままドアを開ける。 「ダン、早く早く!」 「解かってるって」 僕は苦笑しながら部屋のキーを手に取ると、それをポケットに入れてルパートの後を追い掛けた。 すると廊下でロバートが待っている。 「何だ?ルパート。髪がグチャグチャだぞ?二人で何してたんだ?」 「え?ああ、これ?ちょっと恋の争奪戦ってとこかな?」 「お、おい、ルパート…!」 僕は慌ててルパートの服を引っ張ったが、ロバートは、すでにニヤニヤしている。 「はは~ん…。そうか、そうか。二人でちゃんを取り合ってるんだ?」 「ち、違うよ、別にそんな…っ」 「何で?そうだろ~?」 「ルパート…!」 「まあまあ、ダニエル君!そんな照れなさんなって!」 ロバートは僕の背中をバンバン叩きながら楽しそうに笑っていて、ちょっとムカつく。 「まあ、あの子、お人形さんみたいで可愛いもんなぁ?あんなライバル多くてダンも苦労するな?」 「う、うるさいな…っ」 僕は頬が赤くなり、顔を反らしたがロバートの言葉が引っかかり、足を止めた。 「ねぇ、ロバート…」 「ん~?何だ?」 ロバートはエレベーターのボタンを押しながら呑気な顔で振り向いた。 僕はロバートの方まで歩いて行くと思い切って口を開く。 「今…"ライバル多くて苦労するな"って言ったよね?」 「ぅん?ああ、言ったけど?」 「それって…ルパート以外にも誰かいるって聞こえたけど…」 「ああ、そうだな?」 「えぇ?!だ、誰なの?ねぇねぇ!」 そこにルパートも口を挟んで騒ぎ出したのを無視して僕も聞いてみた。 「他にライバルって誰のこと…?」 「ん?ああ、トムだよ、トム」 「「はあ?!」」 その名前に僕とルパートは驚いて目を丸くした。 「ト、トム…って…あのトム?!」 「他にトムって誰がいるんだ?ルパート」 「な、何でトムがライバルなの?何かロバートに言ってたの?」 僕は動揺しながらロバートの腕を掴むと、彼はニヤニヤしながら僕の頭にポンっと手を置いた。 「ああ、さっきチェックインしてる時にな?"あの子可愛いよね~?"って言ってたな」 「ほ、ほんと?」 「ああ。それに…今、エマの部屋まで迎えに行くって言って向かったし、もう一緒にロビーに下りてる頃じゃないか…っておい、ダン?!」 僕はロバートの話を聞いてドアが開いたエレベーターに飛び乗った。 それにルパートも続く。 「ちょ、ちょっと待てよ…っ」 「待ってられないよ。早く下に下りなきゃ…!」 ルパートは、そう言ってロバートが乗り込むと、直ぐにロビーのボタンを押した。 それを見ながらロバートも苦笑している。 「そんな心配か?皆で食事に行くんだから大丈夫だよ」 「ロバートは呑気だなぁ…っ。トムは直ぐ可愛い子と仲良くなる達人だからねっ。僕らがを守らないとっ!ね?ダン」 「え?あ、ああ…」 一応、頷いたものの、僕は二人の会話は耳に入ってこなかった。 さっき確かにトムの言葉に少し警戒したけど、まさか、こんな早くに行動に移すとは思わなかった。 だって…トムのこと楽しそうに話してたし、何だか心配だ。 チーンという音と共にドアが開き、僕とルパートは急いでロビーに出て達を探すとソファーのところにエマを見つけた。 「あ、ダン…っ」 エマが僕らの方に駆け寄ってきて後ろを振り返る。 その視線の先にはトムと楽しげに話すの姿が見えた。 「あ、あの…トムが急に部屋に来て、夕飯に行こうって…」 「うん。ロバートから聞いた」 僕は困った顔のエマの肩をポンっと叩いて、とトムの方に歩いて行った。 「」 「あ、ダン」 は僕が声をかけると笑顔で振り向いてくれて、その顔に僕も笑顔になった。 「よぉ、ダン。遅かったな?またルパートとジャレてたのか?」 「別に。ちょっと用意が遅くなっただけだよ」 トムの言葉に僕は軽く交わして答えると、そこへロバートが意味ありげな笑顔を浮かべながら歩いて来た。 「さ、行くぞ?監督達は後から来るから。早く車に乗れ」 「OK」 僕はそう言ってから後ろを振り向くとエマが気を利かしてくれたのかの手を引いて外へと歩いて行った。 それをトムも慌てて追いかけている。 僕とルパートは互いに顔を見合わせて、その後に続いた。 「おい、ダン」 「何?」 「さっきは、あんなこと言ったけどさ。僕、ほんとはダンのこと応援してるんだ。だから…頑張れよ?」 「ルパート…?」 その言葉に驚き、ルパートを見ると、「今日会ったばかりのトムには負けるなよ?」と彼は笑顔で親指を立てた。 「Thanks…」 僕はルパートの気持ちが嬉しくて素直にお礼を言うと、ちょっと胸が熱くなるのを感じていた。 私は昼間の失敗をしないように自分が食べられるだけの量の食事を頼んだ。 おかげで食べやすい量のものが出てきてホっとする。 「わぁ、美味しそうね?このチキン。サルサソースだ」 私の隣に座ったエマと同じものを注文したので二人で顔を見合わせた。 目の前にはダンとルパートがいて、彼らはポークをナイフで切り分けている。 「僕のビーフも美味しいよ?」 「あ、ほんと。いい匂いね?」 私の隣には何故かトムが座っていて、知り合ったばかりなので少し緊張する。 「は、こっちに来て、まだ間もないんだろ?食事とか大丈夫?」 「え?あ…うん。家ではお母さんが日本食作ってくれてるし…」 「そっかぁ。やっぱ日本の人にフィッシュ&チップスは合わないかな?」 トムは笑いながらそんなことを言ってビーフを頬張っている。 私もちょっと笑いながら彼を見た。 「そんな事は…想像してたよりもロンドンのレストランも美味しいわ?」 「そう?もっとマズイかと思ってた?」 「あ…日本の学校の先生に散々、脅かされたから…」 「ロンドンの食事はマズイって?」 「う、うん…。ごめんなさい…」 「アハハ、そんな僕に謝らなくてもいいよ?確かにマズイ店もあるしさ?それに日本の方が食文化は充実してるよね。僕は寿司しか食べた事はないけど」 「あ、私もお寿司は大好きよ?」 私がそう言ってスープを口に運ぶと、不意にダンと目が合ってドキっとした。 ダンも一瞬、驚いた顔をしたけど、直ぐにニコっと笑ってくれて私も微笑み返した。 するとエマが私の腕を引っ張ってくる。 「ねね、。このサラダ、凄く美味しいの。食べて食べて?」 「え?あ、ありがとう」 エマは取り皿にサラダを盛り付けて私へ渡してくれた。 「どう?ドレッシング、美味しいでしょ?」 「うん、美味しい…っ。ちょっとピリっと辛くて…。こういうの好きかも」 私は笑顔で答えると、エマもホっとしたように微笑んだ。 「あ、ねぇ、。今夜、寝る前にダン達と一緒に何かDVDでも見ない?それかゲームするとか…」 「え?ダン達と…?」 私はちょっとドキっとして顔をダン達の方に向けた。 するとダンが笑顔で、「もし疲れてなければ、でいいよ?」と言ってくれる。 「ううん。大丈夫よ?」 「そう?じゃあ帰ったら部屋においでよ」 「うん。解かった」 私は寝る前にダンと一緒にいれるのが嬉しくて笑顔で頷いた。 こんな風に好きな人と一緒の時間を過ごせるなんて前の私なら考えられない。 エマも楽しそうに、ニコニコしている。 「じゃあ、決まりね?さっさと食べちゃおう?」 「僕も~」 「あんたは食べ過ぎよ。ルパート。また食べ過ぎた蛙みたくひっくり返っても知らないんだから」 「何だよ、エマ。僕は育ち盛りなんだからな?」 「それは聞いたわよ。ルパート、まだ育つつもり?」 「育って何が悪いんだよ。僕はもっと身長伸ばしてバスケの選手くらいになってやるんだ」 「あ~無理、無理!せいぜい170センチくらいじゃない?」 「何を~?!」 いつものケンカをしながらも二人は、それを楽しんでるようで私とダンは互いに顔を見ながら苦笑した。 「ほんと、うるいさい二人だよな?」 「そんなこと言って…楽しそうじゃない?」 そんな言葉を交わしてると隣のトムが話に入って来た。 「なあ、ダン。部屋でDVD見るなら仲間に入れてよ」 「え?」 「いいだろ?どうせホテルに戻っても退屈だしさ」 「そりゃあ、いいけど…」 「じゃ、決まり。後で、こっちで見るのに買ったDVD持って部屋に行くよ」 「う、うん」 そう言って頷いたダンを見て私は首を傾げた。 何だか…一瞬、ダンの表情が曇った気がしたけど…気のせいかな…? さっきは仲良く話してたもんね。 そんな事を思いながらナイフでチキンを切っていると、今までケンカしてたエマとルパートも急に黙ってしまって顔を見合わせている。 「どうしたの?エマ…」 「え?あ、何でもないわ?そ、それより食べちゃおう。ね?」 「…?…ぅん…」 ちょっと慌てた様子のエマに私は更に首を傾げつつ、食事を続けたのだった。 「何でOKなんて言うのよ。せっかくと一緒の時間を作ってあげたのに」 「だって…あそこで遠慮してくれなんて言えるわけないだろ?」 僕は怖い顔のエマに困ったように肩を竦めてみせた。 今はホテルの部屋に戻って来ている。 がシャワーに入ってる隙にエマが僕らの部屋に来て、さっきの事を文句言っているのだ。 「仕方ないよ、エマ。さっきのは誰でも断れないって。断ったら変に思われるだろ?」 「そりゃそうだけど…。じゃあルパート、何か言い方法、考えなさいよ」 「えぇ?何をさ?」 「ダンとが二人になれるようによ」 「え~?二人って…」 「そ、そうだよ、エマ。僕は別に急に二人なんてならなくていいよ…」 僕はエマの言葉にギョっとして首を振った。 するとエマは溜息をついて、 「じゃあ、目の前でトムとが仲良く話してるのを見てるわけ?さっきだってレストランで割り込むの苦労したんだから」 と腰に手を置いた。 それには僕も苦笑して肩を竦める。 「ああ、感謝してるよ?」 「もう!ダンも呑気ね?協力なライバルが現れたって言うのに」 「別に呑気にしてるわけじゃ…。それにトムはエキストラの、ほら…何て言ったっけ…あのブロンドの子…」 「ああ、えーと…ジュリア?」 「そうそう。その子のこと気に入ってたじゃないか」 僕はそう言ってベッドに腰掛けた。 「明日、その子に再会したらそっちに気が行くんじゃない?今はの事が珍しいから構ってるだけだよ、きっと」 「もぅ…そんな事ばっかり言って…。もし本気になったらどうする気?」 「それは…さ…。仕方ないだろ?別にのこと好きになるなって言う権利、僕にはないしさ…」 「はぁ…。じゃあ、もしがトムのこと好きになっちゃったら?仕方ないって言ってられる?」 「…ぅ…」 エマにそう言われて僕は言葉が詰まった。 (がトムのことを?冗談じゃない…) 「ほら、見なさい」 僕が黙っていると、エマが呆れたように息をついた。 「まあまあ、エマ…。あまりダンをイジメるなよ。ダンにはダンなりに考えがあるんだからさ?」 「ルパートは黙ってて」 「ぬ…っ。何でだよ?僕だって一応、関係者だぞ?」 「何よ、その関係者って…。とにかく…!後でトムが来たら、私がさりげなく邪魔するから、ダンも頑張ってよ?」 「あ、ああ…。解かってるよ…」 「ならいいけど!じゃ、私、がシャワーから出ちゃうとマズイから部屋に戻るわね?後で、また来るから」 「うん。じゃ、後で」 「あ、部屋。片付けときなさいよ?少し汚いわ。じゃね!」 エマは言いたいことだけ言って、さっさと部屋を出て行ってしまった。 ドアが閉まると僕とルパートは顔を見合わせ、思わず互いに肩を竦める。 「はぁ…相変わらず怖いよな、エマって」 「ほんとだよ…。つか、汚してるのルパートだろ?脱いだ服とか読んだ本とか片付けろよ」 「あ~はいはい。それより…さっきエキストラの子の話で思い出したんだけどさ…?」 「ん?何?」 ルパートは脱ぎ散らかした服を片付けながら、言葉を切ると僕の方を見た。 「ほら…ダンにもいたじゃん。あの…何て言ったっけ…。言い寄って来てた子って言うか…凄く可愛い子で、子供服のモデルもしてるっていう…」 「ああ…ルシーナ?」 「ああ、そうそう!ルシーナ!あの子、今回も来るようなこと言ってたけど、今、とハチ合わせしちゃマズイんじゃない?」 「マズイって…別に、あの子とは何でもないし…。そりゃ好きだとは言われたけど…僕は何も返事してないしさ」 「でも結構、仲は良かっただろ?どうなの?撮影終った後も連絡とかは取り合ってたの?」 「いや…連絡先は教えてないし…」 僕はちょっと両手を広げてそう言うとルパートは服を抱えつつ、顔を顰めた。 「でも、あの子さ…凄く積極的だったじゃん…。よくダンの部屋にも平然と会いに来てたし…今回もひょっとして…」 「まさか。それに今回も来るとは限らないだろ?彼女だって他にも仕事入って来てるだろうし…」 キンコーン… その時、部屋のチャイムが鳴って僕とルパートは顔を見合わせた。 「ま、まさか…すでに今日、来てるとか…」 「そんなはずないよ。もし今回も参加するにしろ、エキストラは明日集合のはずだしさ。きっとトムだろ?」 僕は笑いながら立ち上がるとドアの方まで歩いて行った。 それでも少し警戒しながらドアを開けると、そこにはトムが立っていて笑顔で片手をあげる。 「よ、持って来たぞ?DVD…」 「ああ、どうぞ」 何だ。やっぱりトムじゃん。 僕は、そう思いながらドアを大きく開いてトムを入れようとした。 その時、トムの後ろから、ひょこっと女の子が顔を出してギョっとする。 「ダン!会いたかった!」 「え?うわ…っ。ルシーナ?!」 突然、現れた彼女に抱きつかれ、僕は驚きのあまり後ろに尻餅をついた。 だが彼女はそれでもぎゅぅぎゅぅと抱きついてくる。 「アハハハ。驚いた?」 「ト、トム…?!な、何で…っ」 僕は何故、彼女と一緒に来たのか解からなくて目の前で立っているトムを見上げた。 するとトムはちょっと笑って肩を竦めた。 「僕、前に彼女と雑誌の仕事で一緒になったことがあってさ?それ以来、連絡取ってたんだ。で、今回も撮影に参加するって言うしさ」 「だ、だからって…他のエキストラは明日集合のはずだろ?何で今日、来てるんだ?」 僕は何とかルシーナの手を首から外そうと、もがきながら、そう聞くと彼女が少しだけ離れて僕の顔を覗き込んだ。 「そりゃ、もちろんダンに会いたかったから早めに来たに決まってるでしょ?さっきついてトムに電話したら今夜、ダンの部屋で集まるって言うから一緒に来ちゃったの」 「き、来ちゃったのって…そんなこと言われても…。と、とにかく離れてくれない?ちょっと今はマズイ…」 そう言いかけた時… 「ダン…?!何してるの?!」 その声にドキっとして廊下に視線を向けるとそこには驚いた顔のエマとが立っていて僕は顔から血の気が引いた。 力ずくでルシーナの手を外すと慌てて立ち上がる。 「ち、違うんだ…。彼女がいきなり…っ」 「何よ、ダン。何、焦ってんの? ―お久しぶりね?エマ」 「ルシーナ…こんばんわ」 ルシーナは笑顔で立ち上がると、エマに、ニッコリ微笑みかけた。 そして後ろに立っているを見て、 「あら、その子は?新しいエキストラの子?」 と聞いている。 「違うわ?は友達よ?ダンの学校のクラスメートで今回、撮影を見学に来たの」 「へぇ…ダンのクラスメート…」 ルシーナは、エマの説明にそう呟くと目の色を変えて、の方に歩いて行ったのを見て僕はギョッとした。 「お、おい、ルシーナ…」 「初めまして。私はルシーナよ?前回からハリーのエキストラで撮影に参加してるの」 「初めまして…。です」 「宜しく、。で…ダンとは、どういう関係なの?」 「え?」 「ルシーナ…っ」 突然、そんなことを言い出され、僕は軽い眩暈を起こしそうになった。 だがは驚きながらもルシーナの事を見て、「あの…どういうって…友達ですけど…」と素直に答えている。 「友達…そう。なら良かった」 「え?」 「私、ダンが好きなの。とらないでね?」 「…ちょ、何言ってんだ?いい加減にしろよっ」 僕はだんだん腹が立ってきてルシーナの腕を掴んだ。 「あら、何で、そんなに怒るの?いいじゃない。本当の事なんだし」 「そ、そういう問題じゃないよ…っ。とにかく君は今日は遠慮してくれない?」 「えぇ~…どうして?」 「ちょっとルシーナ。いい加減にしてよ。あまり、しつこいとダンも本気で怒るわよ?」 そこにエマも加勢してくれて僕はホっとした。 だがルシーナはムっとした顔で、エマを睨むと、 「何よ、偉そうに。メインのキャストだからって威張らないで。私だって別に好きでエキストラしてるんじゃないのよ?」 と言い返し、まさに一触即発状態だ。 僕もルパートも、それを見て溜息をついた。 は何が何だか解からないといった顔で困っている。 エマとルシーナは暫く睨みあっていたが、少しするとルシーナの方が思い切り溜息をついた。 「解かったわ?帰ればいいんでしょ?帰れば」 「お願いするわ?」 エマの追い討ちをかけた言葉にルシーナもムっとしたが、最後に僕の方を見て、 「じゃあ、明日から宜しくね?ダン」 とだけ言って歩いて行ってしまった。 それを見届けて僕は一気に息を吐き出すと、その場にしゃがみ込んだ。 「おい、トム…何で連れてくるんだよ…」 「何でって…ダンに会いたいって騒ぐからさ…。一緒に来る?って言っちゃったんだ。いいじゃん、ルシーナ可愛いだろ?」 「そういう問題じゃない…っ」 僕はそう言って立ち上がると未だ困った顔のに微笑みかけた。 「ごめんね?今の子、ちょっと変わってるんだ。気にしないで」 「あ…うん…」 もちょっと笑顔を見せてくれてホっとすると、そこへルパートが元気に口を挟んだ。 「ま、まあ…とにかく!皆、入って入って。早くDVD見よう。トム、何もって来たの?」 「ん?ああ、これこれ。ホラーだよ」 「えぇ~ホラーなの~?」 トムとルパートは、そう言いながら部屋のテレビの前まで歩いて行く。 エマは僕の方に目で合図すると先にソファーの方に歩いて行ってしまう。 「あ、あの…入って?」 僕はその場に気まずそうに立っているの手を、そっと掴むと軽く引っ張って部屋の中へ入れた。 そして直ぐ手を離しドアを閉めるとの方に振り返った。 「あ、あの…」 「今の子…」 「え?」 「帰しちゃって、良かったの…?」 突然、そう言われて僕は驚いたがは心配そうな顔をしている。 もしかして自分のせいかもしれないと思ってるのかも…と思って僕は、ちょっと微笑んだ。 「いいんだ。彼女とは別に仲がいいわけじゃなくて…。さっきみたいに少し強引なとこがあってさ…。だから…ほんと気にしないで?」 「う、うん…解かった」 「じゃあ、あっち行って映画見よう?」 「うん」 僕が笑いかけると、もやっと普段の笑顔を見せてくれる。 その笑顔を見て心底、ホっとした。 良かった…ルシーナと何かあるって誤解されたら最悪だったよ… まだ告白する前から誤解されてる場合じゃないって… そんな事を思いながらも、しっかりの隣をゲットして反対側はエマが気を利かしたのかガードするように座ってくれた。 それにはトムもつまらなさそうにルパートの隣に座ってて笑えたんだけど。 トムの持って来た映画というのはホラーもホラーで、あの"13日の金曜日"のジェイソンと、"エルム街の悪夢"のフレディが対決するという典型的なB級映画だった。 なので部屋のライトも消して真っ暗のまま観賞を始めた。 僕やエマは平気だけど、ルパートは、いちいち、 「OH!MY!GOD!」 とか、 「Unbelievable !!」 なんて大声をあげるので、その声で逆にビクっとなる。 だいたいルパートは普段から声がでかいんだ。 それには、最初、あまり感情を出さなかったも、ルパートの悲鳴やリアクションでビクっとしていて、ちょっと可愛いな…なんて思ったりして。 顔をチラっと見てみると眉間を寄せて、凄く怯えてる顔だ。 何かないと不安なのかクッションを抱きしめている姿が子供のようで、本当に可愛い。 そんな事を思っていると何だか服を引っ張られた感じがして下を見てみた。 するとが僕のシャツの裾をギュっと握っているのに気付き、思わず笑顔が零れる。 エマはすでに身を乗り出して見てるので近くにいた僕の方に頼ってきたんだろうけど、無意識なのか視線は画面を見たままだ。 その姿を見てると、本当に抱きしめたくなった。 今、二人きりだったら確実にそうしてたかもしれないな…なんて思いながら、少しだけの方に体を寄せた。 するとがそれに気付き、ちょっとだけ安心したように微笑んでくれて、僕も自然に微笑み返した。 かすかに触れてる部分がの体温を感じてドキドキしてくる。 こんな風に密着できたのはトムの持って来たB級ホラー映画のおかげだな、と、ちょっと感謝すらしてしまった。 まだまだ…映画が終らなければいいのに… 僕はそんな事を思いながら画面に視線を戻した。 私は映画が始まった時は、さっきの女の子のことが気になりそれどころじゃなかった。 ダンは何でもないと言ってくれたけど… さっき彼女がダンに抱きついてるのを見た時、一瞬で心臓がギュっと痛くなったのを感じた。 一瞬、ダンの彼女かと思って動揺を隠すのに必死だった。 だから違うと解かって、彼女も帰ってくれて、ちょっとホっとしたのも事実。 あんなにハッキリと、"ダンが好きなの。取らないでね"なんて言われて私は、どんな顔をしたらいいのか解からなかったけど、 でも…少しだけ彼女の事が羨ましかった。 あんなに、堂々とダンが好きだって言える事が… 私は…きっと言えないから。 そんな事を考えていると、突然、ルパートの雄たけびが聞こえてビクっとなった。 それで我に帰り、映画に集中しだしたのはいいけど、ジェイソンが追いかけてくるシーンで私は少しづつ怖くなって来た。 何だか何もないと不安で横にあったクッションを抱きしめながらも、手はじっとりと汗ばんでくる。 それでも怖くてエマに手を繋いで欲しかったが、彼女はすでに映画に見入っていて私より少し離れてしまっている。 仕方なく反対側にいるダンの服を、そっと掴んだ。 こんな時だし…いいよね…と自問自答しながら、なるべく控えめに掴んでいたつもりが、ジェイソンが次々に人を襲うシーンで知らず手に力が入ってしまった。 その時、私が怯えてるのが解かったのか、ダンが少しだけ体を寄せてくれてドキっとした。 そしてダンの方を見ると、彼も私を見ていて思わず、ホっとして微笑んだ。 するとダンも優しく微笑み返してくれて、また胸がドキドキしてくる。 ダンが、こんな風に寄り添ってくれるならホラーを見るのも案外、悪くないな…なんて思う。 まだまだ…映画が終らなければいいのに… 私は、そんな事を思いながら画面に視線を戻した。 「はぁ~案外、ラストはあっけなかったね~。俺、途中、ジェイソンを応援してたんだけどさ~、ガッカリだよ」 「よく言うよ。ルパートが一番騒いでただろ?」 トムは笑いながらルパートの頭を小突いている。 「何だよ~。大声出すのもホラーの醍醐味だろ?」 「へぇ~じゃあ、もう一本見る?」 「え?まだ持ってるの?何?何?」 ルパートはソファーから起き上がってワクワクしたように聞いている。 それを見ながら僕は時計を見てちょっと笑顔になった。 何だ…まだ9時過ぎだ。 この時間なら、もう一本見ても大丈夫そうだな… そんな事を思いながら隣のを見れば、エマと今の映画の感想を楽しげに話している。 さっきの怯えた顔は、どこへやらで今は笑いながら凄く楽しそうだ。 そこへルパートが立ち上がって僕の方に歩いて来た。 「ねぇ、ダン」 「ん?」 「トム、他にも沢山持って来たみたいなんだ、ちょっとトムの部屋で面白そうな映画探してくるよ。ダンは何でもいいだろ?」 「ああ、いいよ。任せる」 「OK。じゃ、行こうか、トム」 「ああ、ちょっと待ってて」 ルパートとトムがそう言って部屋を出て行こうとすると、突然、エマも立ち上がった。 「ちょっと待って。私も一緒に探すわ?」 「え?」 僕が驚いてエマを見上げると、彼女は軽くウインクして二人の後を追いかけて部屋から出て行ってしまった。 そうなると当然、僕とが二人きりで残される事になる。 チラっと隣を見ると、は、「次もホラーかなぁ…」と言いながら笑っている。 僕はちょっとエマの気遣いに感謝しつつ、ルームサービスでとった紅茶を一口飲んだ。 「はホラー苦手なの?」 「うん…そんなに見た事ないわ?うちのパパが好きで、よく借りてくるんだけど…いちいち叫ぶから、その声で驚いちゃって…」 「アハハっ。それじゃルパートと同じだね?のパパと気が合うかも」 「ほんと、そうね?」 も笑いながら、そう言うと、思い出したように時計を見た。 「あ…もう9時過ぎなんだ…。ダン、時間は大丈夫?」 「うん。明日は午後からだからね?大丈夫だよ」 「そう…。あの…台本とかは…?」 「バッチリ、台詞も覚えてあるよ?」 「え、ほんと?凄い…」 は、そう言って驚いている。 そんな彼女を見ながら僕も笑顔になった。 だってが来るんだから少しでも、こういう時間が欲しかったんだ。 だから来るまでに自分で出来る事は先にやっておいた。 一番の問題は台詞だったけど、今回は目的があったから、普段よりも早く覚えられたんだ。 これには自分でもビックリだったけど。 「あ…あのダン…」 「ん?何?」 「さっき…ごめんね?服掴んじゃって…」 「え?あ、ああ…全然。僕で良ければいつでも掴んでくれて構わないよ?」 僕はちょっと笑いながらそう言うとも吹き出している。 「じゃあ…次もホラーだったらお願いしようかな?」 「いいよ?何なら手でも繋いでてあげようか?」 「え…っ?」 僕は軽く言ったつもりだったけど、が少し顔を赤くしたのを見てドキっとした。 「あ、あの…が怖かったら…だけど…」 「う、うん。ありがと」 僕がなるべく普通に言うと、はちょっと、恥ずかしそうに目を伏せて紅茶を飲んでいる。 あ~…何言ってんだろ… 変な風に思われなかったかな… つい自分の希望を言っちゃったよ(!) 僕は自分の気持ちのセーブがきかなくてヒヤっとした。 そこへ騒々しい声と共に、3人が戻って来た。 「やほ~。面白そうなの見つけたよ~」 「今度はサスペンスホラーね?」 ルパートとトムが張り切って部屋に入って来た。 後ろからエマも戻ってくると、僕の方をチラっと見る。 そしてニコっと意味ありげに微笑み、またの隣に座った。 「、今度のも少し怖いけど面白そうよ?」 「ほんと?何て映画?」 「"デッドコースター~ファイナルディステネーションⅡ"って知らない?」 「あ…"ファイナルディステネーション"の続編?」 「そうそう!あの死が少しづつ近寄ってくるって奴。面白そうでしょ?」 「うん。私、あれⅠを親と一緒に見たんだけど面白かったわ?怖いけど、もろホラーって感じじゃないもんね?」 「そうなのよね。あ~楽しみ」 二人は、そんな事を話ながら画面の方に顔を向けている。 僕はちょっと苦笑しながらソファーに凭れた。 「はい、では電気消しますよ~」 ルパートが、そう言って、また部屋の電気を消した。 そしてトムがリモコンで再生を押す。 そして二人でソファーに座ると、男二人で身を寄せ合っている。 僕は笑いを堪えつつ、チラっとの方を見た。 彼女は、また真剣な顔でクッションを抱きしめながら画面を見ている。 僕は映画よりも、の表情を見てる方が楽しいと感じていた。 「うきゃ~怖かった…!何だよ、ラスト~~!フェイント?!」 ルパートが画面のエンドロールを見ながらソファーにひっくり返り、ジタバタと暴れている。 その横でトムが、うざったそうに顔を顰めた。 「暴れるなよ、ルパート…」 「だってさ、だってさ!これ予測つかないよね?面白かったよ~~っ。な?ダン、面白かったよな?」 「え?ああ、そうだね」 「何だよー。素っ気無いなぁ。じゃあ、は?」 「え?私?あ、あの面白かったわ?ちょっと怖いシーンもあったけど…」 はそう言って僕の方をチラっと見た。 きっと、そのシーンの時に僕の腕を掴んでしまった事を思い出したんだろう。 「気にしないで」 僕が笑顔で、そう言うとはホっとしたように微笑んだ。 「あーもう12時になるよ?そろそろ寝よっか」 トムが時計を見ながら立ち上がった。 するとエマも続いて立ち上がる。 「そうね。早く寝ないと顔に出ちゃうわ?寝不足はお肌に悪いから」 「アハハ。何、ババァみたいなこと言ってんだよ、エマ」 「うるさい、ルパート!私がババなら、ルパートは、ジジィよ!」 「うえぇ…はいはい…悪ぅございやした!」 「ったく…一言多いんだから。 ――じゃ、、戻ろうか?」 「あ、うん。じゃあ…お休みなさい」 は僕とルパートの方を見て、そう言うと微笑んだ。 「お休み。明日は起きられそう?」 「うん。大丈夫。ダンは?」 「僕も大丈夫。心配なのは…」 と言ってルパートを見る。 「な、何だよ~!僕だって、ちゃんと起きれるよ!ダンが起こしてくれれば」 「…何だよ、それ…。でも、ま…仕方ない。起こしてやるよ」 「助かる~。じゃ、すぐ歯を磨いて寝るとしよう!お休み、エマ、!あ、あとトムも!DVD、サンキュな!」 「ああ、また見ような?じゃ、お休み」 トムもエマや達と部屋から出て行くのを僕は少し不安に思いながらも仕方なく見送る。 あとはエマに任せよう。 「はぁ~ちょっと一気に二本も映画見ると目が疲れるね」 「何言ってんだよ。一番、楽しんでたクセに」 皆が出て行った後、ルパートが目を擦りながらソファーから起き上がった。 「だって大勢で見ると、楽しいだろ?まあ、今回はトムもいたけど彼のおかげで映画が見れたしさ?ダンだってと密着出来てたじゃん?」 「あ、あれは…が怖がってただけで…」 「まあまあ。でも嬉しかったくせに!」 ルパートはニヤニヤしながら僕を見てきて、ちょっと顔が赤くなった。 「う、うるさいなぁ…。歯磨いて寝るぞ?」 僕はソファーから立ち上がるとバスルームへ歩いて行った。 するとルパートも慌てて追いかけてくる。 「ねね、でもさ。明日から、トムは見張っておかないとヤバイって」 「ふぇ…?」 僕は歯を磨きながらで変な声で振り向いた。 ルパートも隣でハブラシに歯磨き粉をつけながら僕を見ると、 「いや、さっきDVD探してる間、しきりにダンとのこと聞いてきたからさ~。僕もエマも誤魔化すのに必死だったよ」 「ふぁにを…?」 僕は、そう言いかけて、すぐに口を漱ぐとタオルで顔を拭いた。 「何を?」 「ふぁから~。グァンと~がぁ~…」 「お前…何言ってるか、サッパリ解からない…」 「ひょ、ひょっと待っで…」 僕が苦笑するとルパートも急いで口を漱いで口を拭くと僕の方を見た。 「えっと、だからさ、ダンとは付き合ってないんだろ?とか、ダンはが好きなの?とかさ~根掘り葉掘り聞かれたよ」 「トムが……。それってが好きだから?」 「いや~、どうかなぁ?何だか、そういう感じより楽しんでるって言うのかな~。気になるんじゃない?ダン、女の子を撮影現場に連れてきたの初めてだからさ」 「…ったく…放っておいて欲しいよなぁ…」 僕はちょっと息をつくと部屋に戻り、寝室に向かった。 「あ~でもさ、でもさ」 「何?」 寝室まで追いかけてきたルパートを、僕はベッドに腰掛けて見上げた。 「彼女、可愛いよなぁ~。口説こうかなぁ?とは言ってたよ?」 「は?それを早く言えよ、バカっ」 僕はその言葉にギョっとして立ち上がった。 だがルパートは口を尖らせながら、パジャマに着替えている。 「バカとは何だよ、バカとはさ…」 「あ~ごめんって!取り消す!で、トムは本気で、そんなこと言ってたの?」 僕はスネはじめたルパートの機嫌を取るように声をかけると、途端に機嫌が直る。―ほんと単純で助かる。― 「まあ、あれは本気でって言うよりも…いつもの病気が出たってとこじゃない?ほら、トムは可愛い子を見ると、いつも――」 「優しい笑顔と言葉で口説く…」 「そうそう!ほんと15歳かね?彼の将来が不安だよ、僕ぁ~」 ルパートはアホみたく、そう言うと自分のベッドにダイブした。 「ねぇ、ダン」 「ん…?」 「この見学旅行を機会に、に告白したら…?」 「それは…さ…だから…」 「いいじゃん。きっと上手くいくよ。さっき二人凄くいい雰囲気だったしさ?」 「え…?」 その言葉にドキっとしてルパートの方に振り向くとニコニコしながら僕を見ている。 「あの雰囲気だと、きっともダンのこと好きだって!思い切って好きだーって言えば?」 「そ、そんな簡単に…」 「まあ、撮影も気になるだろうけどさ。最終日に言うとかさ。今回でが帰ったら、また暫く会えないし…」 「解かってるけど…」 「トムのことも心配だろ?僕はさっきも言ったようにダンには負けて欲しくないからね!恋愛争奪戦に見事、勝利して欲しいんだよ」 ルパートはおどけた口調で、そう言うと僕の方に、バフっと枕をぶつけてきた。 それには僕も笑うしかない。 「恋愛争奪戦か…。そんな経験ないから、ちょっと不安…」 「そんなダニエル・ラドクリフともあろう男が、何を弱気な!もっと強気に出たって大丈夫だって!どうせダンがニコ~っと微笑めば、どんな子も目がハートになるんだからさ!」 「何だよ、それ…。バカにしてんの?」 僕は横目でルパートを見ると彼はケラケラと大笑いしている。 「だって、ほんとの事だろぉ~?全く嫌になるよ、僕はっ」 「自分だって、可愛いとか言われてモテてるくせに…」 「まあ、僕のマニアなファンはいるけどさ?君には負けるよ、ダニエルくんっ」 「うわ…何だか、その言い方ムカっとくるな?」 僕が苦笑しながらルパートを睨むと、「何だよ、名前言っただけだろ~?」とルパートも笑っている。 「とにかく!僕は、すんなり負けを認めるけど、トムはプライド高いし、最近人気出てきたから、凄い自信持ってるぞ?ダンよりモテてるとか思ってるんだからさ~。 油断してたらを攫われちゃうってば」 「そんな人と争うのは苦手なんだけど…」 「じゃあを取られてもいいの?!」 「嫌だよっ!」 「おぉ!やっと素直になったね?」 「うるさい、バカ」 「バカでも何でもいいけどさ。頑張れよ?」 「ああ…勝てばいいんだろ?"恋愛争奪戦"とやらにさ」 僕は布団に潜りこみながら、そう言うと、すでに布団の中のルパートも笑いながら、 「そうそう!男なら勝つべし!」 と拳を振り上げている。 そんなルパートを見ながら苦笑すると、僕は顔まで布団をかぶって息をついた。 トムが、そんな軽い気持ちでに近づく気なら… 僕だって黙って見てるつもりは初めからない。 「…負けないよ…」 そう呟くと、僕は不安を振り払うように、ギュっと目を瞑った。 「ねぇ、…寝ちゃった…?」 「ううん…起きてるよ?」 私はエマの声を聞いて、ちょっとだけ布団から顔を出した。 そして隣のベッドを見ると、エマはこっちに体を向けている。 「どうしたの?眠れないの?」 「う~ん。そうねぇ。さっきの映画で騒ぎすぎたからかな?」 「そうね?大声出すと、眠くなくなる」 「でしょ?」 エマもちょっと笑いながら、そう言うと軽く息をついている。 「ねえ、…」 「ん?」 「は…トムのこと、どう思う…?」 「…え?トム…?」 「うん」 「どうって…。気さくで、いい感じの人だと思うけど…今日会ったばかりだし…よく解からないわ?」 「そっかぁ、そうだよねぇ…。じゃあ…ダンは?」 「え…っ?」 「ダンのこと、どう思う?もう知り合ってから結構経つでしょ?」 「そ、そうだけど…。どうって言われても…」 私はエマの質問に内心ドキドキしながら普通を装った。 (もしかして…私の気持ちバレちゃったのかな…) 何となく答えられなくて黙っていると、エマがニッコリ微笑んだ。 「好き…とか思ったりする?」 「え…?な、す、好きって…そりゃ友達だし…」 「そうじゃなくて。男の子としてよ?ダンのこと…どんな風に見てる?」 「そ、それは…。よ、よく…解からないわ…?」 「そうなの?」 「う、うん…。ダンは…凄く優しくて…一緒にいて楽しいと思うけどね」 私は何とかそれだけ言うと、部屋が暗くて良かったと思った。 きっと今の私の顔は真っ赤だと思うから… (でも…何でエマは急に、そんな事を聞いてきたんだろう…?) 「エマ…?」 「ん?」 「エマは…トムが好き…とか?」 「えぇ?何で?」 「何でって…そんなこと聞くから…。あ…もしかして…ダンが好き…なの?」 私はちょっとドキドキしながら聞いてみた。 もしエマがダンの事を好きなら…私は敵わない気がして不安になる。 だがエマは私の質問に、プっと噴出した。 「やだ、違うわよ。私はダンのこと好きだけど、それは、あくまで友達としてよ?ルパートを好きな気持ちと一緒」 「そ、そう…」 それを聞いて、内心、ホっとすると軽く息をついた。 「どうして…?気になる?」 「え?そ、そういうんじゃ…。エマが急に、そんな事を聞いてくるから…そうなのかなって」 「私は…今は恋はしてないもの。あ、チャーリーは気にいってるけど」 「アハハ。チャーリーかぁ。今頃サッカーの合宿中ね」 私はチャーリーの笑顔を思い出して微笑んだ。 「エマは彼氏とか…欲しい?」 「う~ん…そうねぇ…欲しいかなぁ?少し年上の方がいいけど」 「そうなの?」 「うん。ちょっと大人の男性がいいかな?おじさんは嫌だけどね?」 「そりゃ、そうよ。私達、まだ15歳なんだから」 私がそう言って笑うとエマも楽しそうに笑っている。 そして私の方を見ると、「ま、でも…。が彼氏が欲しいならダンをオススメするわ?」なんて言い出しギョっとした。 「な…何言ってるの…?そんな、オススメって…」 「あら、ダンじゃ役不足?」 「ま、まさか…っ。その前に、私の方が役不足だわ…?」 何とか笑って誤魔化すと、エマは上半身だけ起こして私を見た。 「そんな事ないったら。は可愛いわよ?優しいし、気は利くし。ダンだって、そうよ?優しくて紳士でしょ?お似合いよ?二人は」 「バ、ババ…バカなこと言わないでよ…。そ、そんな事は…」 私は耳まで熱くなるのを感じながら慌てて布団に潜ってしまった。 エマみたいな子に、しかもダンの傍にいる人にそんな風に言われて照れくさいのもあったが、凄く嬉しくて胸が苦しくなる。 このままだと自分の気持ちをエマに話してしまいそうだった。 「もぅ~~?どうしたの~?寝ちゃった?」 「も、もう寝ないと…明日キツイよ…?」 私が布団の中からそう言うとエマも溜息をついている。 「解かったわ…お休み、」 「お、お休み…」 私もそう言うとエマが布団に潜る気配がして、そぉっと顔を出した。 エマは頭まで布団をかぶって寝ている。 はぁ…驚いた… まさか、エマから、あんなこと言われると思ってなかったし。 ダンと…お似合いなんて…そんな有りえないもの。 さっきの…エキストラの子の方が、ダンとお似合いだった。 凄く可愛くてフランス人形みたいで手足も長くて…髪なんてサラサラのブロンドで… 美男美女って感じだったもの。 私は…平凡な日本人の女の子で…ダンとクラスメートだからって理由で友達にはなれたけど… 恋人同士になんて…絶対、無理そうだなぁ… ダンは…凄く優しいから…時々、勘違いしちゃいそうになるんだけど… さっきだって…映画を見てる間、ずっと私の傍に寄り添ってくれて…時々、心配そうな顔で私を見てた。 あの優しい瞳を見ちゃうと…"好き"がどんどん増えていってしまって…自分でも押さえがきかなくなりそうで…ちょっと怖い…。 告白して…友達という関係を壊したくないもの… 気まずくなるくらいなら…今の方がいい。 どうせ、私とダンは住んでる世界も進む道も違いすぎるから… 私は、そんな事を思いながら、何だか悲しくなってきて、もう一度布団に潜り、目をギュっと瞑った。 目を瞑れば…浮かぶのは、ダンの笑顔ばかりなのに… その時、ふと昔、大好きだった曲が頭の中に流れてきた。 何だったっけ、あの曲… 今の気持ちのように……凄く切ない歌詞で…大好きだったのになぁ… 少し眠たくなりながらも、私は必死に、その歌詞を思い出してみた。 そして、あるフレーズが浮かぶ。 "ねぇ、せめて…夢で会いたいと願う 時に限って一度も…ルルルルル…出てきてはくれないね… ああ…こんな歌詞だった… タイトルは…なんだったかな… 何だか…今、あの曲を聴きたい気分だよ… ダンが好きすぎて…涙が出そうだから… 私は半分、眠りにつきながらずっと頭の奥ではあの大好きだった歌のメロディーが何度も何度も流れていた― |
Postscript
久々ダンVer弟9弾で御座います。
何だかお邪魔虫も飛んできましたねぇ(笑)
二人の純愛は貫けるのかー(オイオイ)
皆が見てたホラーは、どっちも見ました(笑)
フレディVSジェイソンよりはデッド…の方が
凄い面白いですね(笑)
怖いけどホラーの怖さじゃないからv
良ければ、どうぞ(笑)(大丈夫な人だけ)
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】