Chapter.12 全部~ライバルにはご用心③ Only you can love me...
鳥の鳴く声が聞こえて来て、私はゆっくり目を開けた。 (ああ…朝なんだ……) そう思いながら、いつものように寝返りを打ち、起きだすまでの間、少しだけまどろむ時間…… そして、いつものように最初に思い浮かべる大好きなダンの顔―――― 「あ…………っ」 少しづつ意識がはっきりしてきて私は夕べの出来事を一気に思い出した。 ガバっと起き上がって部屋の中を見渡すも、そこにダンの姿はない。 隣のベッドでエマがスヤスヤと寝ているだけだ。 それでも、この部屋にダンが実際にいたんだという事を裏付けるように私のベッドの横には椅子が置いたままだった。 私……昨日、ダンに好きだって言われたんだった……っ! そ、それに私、ダンに、キ、キス………… そこまで全て思い出した瞬間、私は一気に顔が真っ赤になり、布団に潜り込んだ。 体中の熱が顔に集中してるようで熱いのと、鼓動が突然早く打ち出して苦しいのとで私は布団の中でジタバタ暴れた。 きゃ~~~…っっど、どうしよう…! きょ、今日、どんな顔してダンに会えば……ううん会えない…っ!恥ずかしすぎてダメだよ……っ 一人寝起きにパニくってしまい、私の暴れてる姿をエマが目を擦りながら見ていたのに気づかなかった。 「………?どうしたの?」 「………………っっ?!」 その声にドキっとして顔だけ出すと、エマが眠そうな目で私を見ていた。 「あ……ご、ごめんね?起こしちゃった……?」 「ううん、それはいいんだけど…。大丈夫?」 「え…?」 「、顔真っ赤だけど……風邪引いちゃった?」 「……………ち…違うの……っ。大丈夫よ?」 慌てて手で頬を隠すと、私は何とか笑顔で答えた。 するとエマが妖しくニッコリ微笑んで私のベッドの方に歩いて来る。 「、おめでと!」 「え……?キャ…っ」 突然エマに抱きつかれて私は本気で驚いた。 だがエマはギュっと抱きしめてきて、 「昨日、ダンに聞いたわ?二人、両思いだったんですってね!」 と言われて再び顔が赤くなる。 「えっっ?あ、いや…え?!」 一人慌てふためく私に、エマはニコニコしながら、 「あのね、ダンには、いつものこと相談されてたの!だから私も嬉しくって!ほんと良かった!」 と言ってきた。 「ダ、ダンに相談………?」 「そうよ?ダンも、ずっとのこと好きだったのよ?」 「………………っっっ!」 (嘘…ダンが…ずっと…?) 私はエマの言葉が信じられなくて本当に胸が苦しくなった。 その時、部屋の電話が鳴り出し、エマが受話器を取る。 「Hello?あ、ダン?おはよ!」 「………!」 エマは、そう言ってチラっと私を見た。 それだけで私の心臓が跳ね上がったように早くなる。 「うん、うん。分かったわ?じゃ、代わるね?」 エマは、そう言うと私の方まで電話を引っ張ってきて、 「はい。愛しのダーリンからよ?」 とダンに聞こえるくらいの声で言ってから軽くウインクした。 「ちょ…!エ、エマ?!」 「あらら!、真っ赤だよ?」 エマは楽しそうに笑いながら私の頬を指で突付いてくる。 「じゃ、私、シャワー入ってくるから、ゆっくり話してて?」 「え?ちょ、ちょっとエマ……っ」 受話器を渡されたまま、慌ててエマを呼ぶが彼女はサッサと歩いて行って何故か部屋のドアを開けてサブキーを挟むとバスルームに入ってしまった。 (う、嘘でしょ……?そんな…昨日の今日でダンと何を話せば……っ) 一晩経つと何だか昨日の事が嘘のように凄く意識してしまって私はギュっと受話器を握りしめた。 (早く出なくちゃ…あまり待たせても……) そう決心をして軽く深呼吸をすると、そっと受話器を耳に当てた。 「He....Hello.....?」 『あ、?おはよう』 「お…おはよう…」 いつも聞いて知ってるダンの声も今日は、いつも以上に、カッコよく聞こえてドキっとする。 『もう起きた?』 「え?あ…うん、さっき……」 『そっか!じゃ、今行くね?待ってて』 「うん……えっっ?!」 思わず頷いてしまったものの、ダンの言葉に私は凄く驚いた。 「ちょ…来るって…ダン?Hello?」 ツーツーツー… 空しい音が聞こえて来て、すでに電話は切れていた。 「嘘……」 受話器を持って呆然としたが、ハっと我に返りドアの方を見た。 (あ…!さっきエマがドアを開けておいたのは、もしかしてダンに頼まれたから……?!) そこに気づき、私は慌てて…そう酷く慌ててドアを閉めなくちゃ…なんて思ってしまった。 後で考えれば何で、こう思ったのか分からないけど、とにかく今、ダンの顔をまともに見る勇気なんてなかったのだ。 「キャ……っ」 ベッドから降りて床に足をついた時、足首に痛みが走り、力を抜いてしまった。 そのおかげで、ベッドから落ちて今度は膝を強く打ち付けた。 「ぁいったぁ………」 「?!」 「…………っっっ!!」 したたか打ち付けた膝を擦っているとダンの声が聞こえてドキっとして顔を上げた。 するとダンが驚いた顔で私の方に走ってきて目の前にしゃがみ込む。 「大丈夫?どうしたの?」 「え?あ…あの…ちょっと落ちちゃって……」 「えぇ?怪我は?どこか痛い?!」 ダンは本当に心配そうな顔で私の足を見てくれている。 だけど心の準備もないまま、こうしてダンと顔を合わせてしまい、尚且つ、私は、まだパジャマのままだった…! 「あ~膝が赤くなってるよ?大丈夫?」 「え?!あ……いえ、あの…大丈夫だから…っ」 ダンが私のパジャマを少しだけ捲って赤くなってる膝に触れてきたものだから私は顔から火が出そうで慌てて捲れたパジャマを戻した。 私のパジャマはワンピース風になってるので余計に恥ずかしいのだ。 するとダンも私の態度に気づき、頬を赤くして、 「ご、ごめん!あ、あの別に変な意味じゃなくて……っ」 と焦っている。 そんな事を言われたら私も、もっと恥ずかしくなった。 「う、ううん…いいの…。あの……」 「と、とにかくベッドに戻ろう?立てる?」 ダンは顔を赤くしたまま目を反らし、私の体を支えてくれた。 それだけで私の心臓はいっぱい、いっぱいだ。 「あ…ありがと…。ちょっと夕べ挫いた足首が腫れちゃってて…」 「え?ほんと?大丈夫?」 「う、うん…。今日一日冷やせば多分……」 そう答えるとダンは私をベッドに座らせてくれた。 「じゃあ…今日は部屋にいて?僕が湿布もらってくるから……」 「え?そんな、いいよ…」 「良くないよ。は歩けないだろ?遠慮しないでよ」 ダンは、そう言うとベッドの端に腰をかけて私の頬に手を添えた。 それだけで一気に鼓動も早くなってしまう。 「あ…あの………」 「、夕べ寝ちゃったから、そのまま部屋に戻ったんだ」 「え?あ…そ、そう……」 「うん。あの…さ………」 「え………」 恥ずかしいのを我慢して少しだけ顔を上げれば、ダンが目を伏せてチラっと私を見ている。 「夕べのこと………夢じゃないよ…ね?」 「……………ぇ?」 「今朝……目が覚めて、もしかして昨日の事は全部、夢だったんじゃないかって思ったら…凄くに会いたくなっちゃってさ…」 ダンはそう言いながら照れくさそうに微笑んだ。 その笑顔にすら私はドキドキしてしまって、そろそろ壊れちゃうんじゃないかって心配になる。 それでも凄く嬉しくて、私もちょっと微笑んだ。 「私も……一瞬、夢かと思っちゃった…」 何とか、それだけ言うと、ダンは凄く嬉しそうに微笑んでくれる。 そして私の腕を軽く引くと優しく抱きしめてきた。 「あ、あの…」 「早く抱きしめたかった………」 「ぇ…っ」 「…今朝、早くに目が覚めちゃって……に会いたかったけど起きる時間まで待ってたんだ…。もう凄く会いたくて堪らなかった…」 「………………っ」 そのダンの言葉で私は耳まで赤くなってしまった。 心臓なんて本当に早打ち選手権なんてものがあったら確実に優勝できるわ…なんて変な事まで考えちゃうくらいドキドキしっぱなしだ。 私は黙ったままダンの腕の中で、ただ時が過ぎるのをジっと待っていた。 体が緊張のあまり固くなってるみたいで動けない。 するとダンが少しだけ体を離して私の顔を見つめてきた。 奇麗な淡いブルーの瞳に思わず見惚れてしまう… フワフワした気持ちの中で、そんな事を考えていると、ゆっくりダンの顔が近づいて来て、ハっと我に返り、慌てて俯いてしまった。 「…………?」 ダンの少し驚いたような声が聞こえてきたけど、私はすでに耳まで真っ赤で顔を上げられない。 だって……昨日は何だかダンに好きだと言ってもらえて、どこか非現実的な気持ちだったから… それに真っ暗で気づけばキスされてたって感じで照れる余裕もなかった。 でも今は朝で、こんな明るい中でダンの顔を目の前で見ちゃったら、私は、どうしていいのか分からない… その上キスなんてされたら……どうにかなっちゃいそう… 「………どうしたの?」 ダンが不安そうな声で私の顔を覗き込んでくるけど、私はギュっと目を瞑って首を振ることしか出来ない。 するとダンが小さく息をついて、背中にまわした腕を解いてしまった。 「ごめん……嫌だった?」 「え……?ち、ちが…」 ダンを傷つけたかと焦って顔を上げた途端、唇にチュっとされ、凄く驚いた。 「ダ……ダン……?」 「不意打ち!」 「………っ」 ダンは、そう言ってちょっとイタズラっ子のように笑っている。 それを見て私は騙されたって気づいて真っ赤になってしまった。 「ひ、ひどい……」 恥ずかしくて、そう呟くと、ダンは、また私を抱き寄せ、 「だって……俯いちゃうからさ…」 とだけ呟いた。 「ダン……?」 「これでも、ちょっとだけショックだったんだけど…」 「あ……ご、ごめんなさい……だって……」 「恥ずかしいんだろ?」 「え…?」 「分かってるよ…」 「ダン………」 私はダンの言葉に驚いて、少し離れると優しい瞳の彼と目が合う。 至近距離で見つめられて恥ずかしいのに、その視線から目が離せない。 ダン…分かってくれてたんだ… で、でも、そうだよね……?きっと私、今、凄く顔が赤いと思うし…見れば分るよね…… 「あ、あの…ダン、そろそろ用意しないと撮影に遅れちゃうよ……?」 少しだけ視線を反らして、そう言うとダンは私の額にそっと口付けた。 その感触にビクっとなると、コツンとダンが額を合わせてくる。 「ダ、ダン……?」 「ちゃんとキスさせてくれないと撮影に行けない………」 「……え?!な、何言って…っ。ほんとに遅れちゃうよ?それにエマだって、そろそろ……」 私はダンの言葉に真っ赤になりながらも、いつエマがバスルームから出てくるかと実の所かなりヒヤヒヤしていた。 なのにダンは私を離してくれなくて、どうしようと焦ってしまう。 するとダンがクスクス笑いながら、 「早くしないとエマが戻ってきちゃうよ?」 と言って今度は私の頬にチュっとキスをしてきた。 「あの……」 そのダンの行動にドキっとして顔をあげると、不意に唇を塞がれて体中に電気が走ったみたいにドキっとした。 何度も触れては角度を変えて優しくキスをしてくるダンに、私は金縛りにあったみたいに動けない。 ただギュっとダンの胸元を掴むだけ… そしてダンはゆっくり唇を離すと、私を強く抱きしめた。 「…ほんとに好きだよ……?ずっと、こうしていたい」 「……………っ」 ダンの囁くような言葉に胸がいっぱいになる。 抱きしめられてる体が自分のものじゃないみたいにフワフワして眠いような感覚になってきた。 その時バスルームのドアが開く音がして二人でドキっとしたように顔を合わせた。 そして慌てて離れた瞬間、 「あれ?ダン、用意しなくていいの?あと30分もないよ?」 と、エマがバスタオルで髪を拭きながら出てきた。 「あ、うん。今戻る」 ダンは普段どおりの笑顔を見せてベッドから立ち上がった。 「じゃ、は部屋で休んでて?湿布は僕が後でもらってくるから」 「う、うん…。ありがとう」 「ひゃ~ダン、や~さしぃ!」 「う、うるさいな、エマは!」 エマにからかわれてダンは少しだけ顔を赤くすると、私の方に屈んで、 「じゃあ、僕、撮影に行って来るから、ちゃんと寝てるんだよ?」 と言って優しく頭を撫でてくれた。 ダンは普段も優しいけど今日は、その数倍は優しく感じた。 それは友達から恋人になったという証のような気がして、私は嬉しすぎて泣きそうになった。 「じゃ、後で休憩の時に、また来るから」 「うん…。あの…頑張ってね?」 「うん、もう…頑張れるよ?」 ダンはそう言って照れくさそうに笑うと、 「エマも急げよ?」 と声をかけて部屋を出て行った。 「もう~ダンってばデレデレね~?あんなダン、初めてみたわ?って、あれ?、どうしたの?顔真っ赤よ?」 「な、何でもない…」 そう言って私はベッドに横になると布団で顔を隠した。 ダンが今言った"もう頑張れるよ"の言葉の意味が分かって恥ずかしかったのだ。 私はそっと指で唇に触れてみた。 そこだけ熱をもってるような感じで、更にドキドキしてしまう。 信じられない…ダンがファーストキスの相手だなんて…… ううん……キスだけじゃなくて……ちゃんと付き合うのも…さっきみたいに好きだよって言ってもらうのも… 優しく、でも強く抱きしめてもらうのも…。 全部、ダンが初めて…。 それが凄く嬉しかった。 「?大丈夫?」 「え…?」 エマの声に私は慌てて顔を出すと、彼女はすでに出かける準備をしている。 「だ、大丈夫よ?」 「そう?でもダンも朝、一番にに会いに来るなんて、相当、好きなのね?のこと」 「…えっ?!」 エマの言葉にドキっとして起き上がると、エマはクスクス笑っている。 「だって…私、あんなダン見たの初めてよ?前の彼女の時でもなかった……あ…ご、ごめんっ」 「う、ううん……」 「じゃ…じゃあ私も行ってくるね?あ、ランチはダンが持ってくると思うし私はルパートと外で食べてくるから…」 「うん、分かった。撮影、頑張ってね?」 「あ、ありがと。じゃ…行って来ます!」 エマは気まずそうな笑顔を見せると部屋を出て行った。 私は笑顔で手を振って見送ったがドアが閉まった瞬間、その手もすぐに下りてしまう。 「はぁ……」 前の彼女かぁ…… 一瞬胸がズキンとした。 でも……仕方ないよね? 私はダンが何もかも初めての人でも、ダンは違うだろうって思ってた。 抱きしめてくれる仕草ももキスをしてくる時でさえ、何となく…慣れてるような気がしたから… そう思うとまた胸が痛む。 さっきまで死ぬほど幸せだったのに、前の彼女って聞いただけで、こんなにも気分が逆転するんだ… 人を好きになると…相手の言動で一喜一憂するって恋愛小説で読んだ事があるけど本当なんだなぁ… ダンは凄くモテるし…学校でも、仕事場でも、ダンの事を好きな女の子がいっぱいいる。 そんなダンが前に誰とも付き合わなかったはずがない。 ダメダメ……こんなこと考えちゃ…… 前の彼女って事は過去の事なんだから… それにダンは、ちゃんと私の事を好きだって言ってくれた… さっきだって優しく抱きしめてくれて……ずっと、こうしていたいってまで言ってくれたんだから… その言葉だけ信じていよう。 私は、そう思いながら、ベッドに横になった。 今……会ったばかりなのに……早くダンに会いたかった――― 「カーット!!ダメダメ!そこ動き早いよ!」 監督の声が響いて一旦、カメラが止められるとエキストラが元の位置に戻って行く。 僕はそれを少しイライラしながら見ていた。 「ちょっとダン……顔、怖いよ…?もっと笑って…」 「分かってるよ」 エマの言葉に、僕はちょっと息をつくと、無理やり笑顔を作ってニカっと笑って見せる。 「わざとらしい笑顔……」 「悪かったね」 僕はすぐに顔を戻すと思い切り溜息をついて時計を見た。 もう20分も押してる。 いい加減に決めて欲しい。 そう思いながらカメラの方に視線を向けると、エキストラの動きをチェックしてるスタッフが何やら大声を出している。 大方、2~3人ダメ出しされてるんだろう。 今は出番待ちと言うやつで、このエキストラのシーンがOK出なければ僕の出番が回ってこない。 と言うことはホテルに戻るのも遅れると言う事で、僕はさっきから苛立っていた。 「ダン~ソワソワするのやめなよ~」 「エマ、うるさい」 「何よ。だって気になるんだもん!」 「まあまあ、お二人さん!」 僕とエマの間に、いつものようにルパートが割り込んできた。 「ダンはに会いたくて仕方ないんだから分かってやれよ~。そういう男心!」 「ちょ…ルパート!声が大きい…っ」 「あ、ごめん、ごめん!」 僕が慌てて睨むと、ルパートも慌てて手で口を抑える。 すぐ後ろ…と言っても少し離れてはいるけど、そこには僕と同じく出番待ちしているトムがいるからだ。 「まぁねぇ~気持ちは分かるけどっ」 「な…何だよ、その顔……」 僕はニヤニヤしながら顔を覗き込んでくるエマに思い切り顔を顰めた。 「だ~ってダンってばの前だとデレデレで見てられないんだもん」 「うるさいなぁ…。じゃあ見なきゃいいだろ?」 「あら、そんなこと言うの?今まで散々相談に乗ってあげてたのに!」 「はいはい、そうだね…。悪かったよ…」 エマに逆らうと大変なのは分かってるから、軽くそう言っておいた。 「あ~ダン、そう言えば朝は、締まりのない顔で戻って来たもんなぁ?そんなにが好きなんだぁ?」 「な、何だよ…っ。いいだろ?別に…!やっと告白出来たんだから…っ」 「まあ、そうだな?ほんとなら、このロケ終わってからって言ってたしな?何なら、僕、と部屋代わってあげようか?」 「バ…バカ!変なこと言うなよ…っ。だいたい、そんなのが困るに決まってるだろ?!」 「あら~ダンってば顔が真っ赤よ?可愛い~っ」 「………ぐ…っ」 二人にからかわれて僕はムカついたが、ここで大声だすわけにも行かず、グっと堪えた。 「そんな怖い顔しないでよ~。ジョークだってば!私だって嬉しいんだからね?二人の気持ちが同じで」 エマはそう言って僕の肩をポンっと叩く。 「…ああ、サンキュ」 そこはお礼を言って、ちょっと笑うと、ルパートもニコニコしながら、 「僕も嬉しいよ~っ。お似合いだよね?二人は!」 と言ってくれた。 と、"お似合い"なんて言われると、ほんとに顔がニヤケてしまう。 まさか…僕が、こんなに一人の女の子の事を好きになってしまうなんて自分でも意外だった。 前の時は憧れを好きと同じに勘違いして始まった恋だったし、それに気づいてから妙に冷めた奴になっていたのに。 それに僕が有名になってしまってからは色々な女の子が言いよってきて正直、女の子って、うっとうしいって思ってた事もある。 そりゃ僕だって男だし、世間一般の男と同様、女の子に対しての興味を持った事もあったけど、それは本当に興味だけであって、 前の一つ年上の彼女と付き合ってからは、そんな興味も薄れてしまった。 初めてキスした時も緊張はしたけど、とキスする時みたいに、こう胸の温かくなるようなドキドキ感はなかった気がする。 彼女に求められるままにキスしたり抱きしめたりはしても、さっきみたいに自分から、そうしたいと思った事はなかった。 なのに……と一緒にいると、どうしても触れたくなってしまう。 が恥ずかしがるって頭では分かっているのに、抑えが利かなくって、さっきもちょっと意地悪しちゃったり… みたいな子は初めてだから……どう扱っていいのかさえ分からなかったりするし、僕って、こんな奴だったっけ?って疑問に思う。 こうしてる今も僕はの傍に行きたくて仕方ないんだ。 の傍に行って、思い切り抱きしめて、それから……何度だってキスしたいって思う。 ほんと…変だ。 自分が自分じゃないようで… 熱に浮かされてるようで妙に心の奥の方が熱い…。 これが恋ってやつなのかな…… そう…僕は本気でに恋してる… それも生まれて初めての… は僕が初めて本気で好きになった唯一の女の子だから――― 15歳で、まだ、そう思うのは早いって言う人もいるだろうけど… 僕には分かる。 この先も…僕にとって大切な女の子は、たった一人……だけだって。 僕は、撮影を見ながら、彼女への想いを確信していた――― 「あれ?ダン、お前ランチ行かないのか?」 廊下で出会ったロバートが驚いたように聞いてきた。 僕は早くのところへ行きたかったけど、仕方なく足を止めて振り向いた。 「うん。僕ちょっと部屋で食べるよ。皆で行っていいよ?」 「そうなの?ああ、ちゃんが残るからだな?」 「な…何が……?」 ロバートがニヤリと笑って言った言葉に一瞬、動揺してしまった。 「いや~ちゃんの姿が見えないからエマに聞いたら、足を捻挫して部屋で寝てるって言ってたし…。そうなんだろ?」 「う、うん…。だから…一人じゃ可哀相だし…さ…。ルームサービスでもとって一緒に食べようかと…」 「はは~ん。そうか、そうか。ま、二人きりの方がいいよなぁ?何かと」 「な…何がだよ?」 ロバートの意味深な発言に一瞬、僕との事がバレたのかとドキっとしてしまった。 だが彼は、ニヤニヤしたまま、 「何がって、好きな子とは、いつでも二人きりの方がいいだろ?思い切って好きだって言えば?」 なんて言って、いやらしい顔をしている(!) 「ああ、それもいいね?」 もう、とっくに言ったよ!と心の中で思いつつ、僕はロバートに不敵な笑みで答えた。 「お?何だよ、言うようになったな?じゃあ、いっそのこと押し倒せ!まあ、15歳じゃ、もう早くもないだろ?」 「バ…!バッカじゃないの!中学生に変なこと言うなよっ」 「おぉ?何だ?こういう時だけ子供ぶるのか?嫌だねぇ~ダンは!俺が15歳の時はな~無敵だったぞ~?色々と♪」 「うわ!ロバート最低!今度から見る目変えよう!」 僕が大げさに溜息をついて両手で頭を抱えると、ロバートは楽しげに笑っている。 「まあまあ、羨ましがるなって!今度、この俺様がダニエルくんに色々と手ほどきをしてしんぜよう!感謝しろよ?!」 「別に羨ましがってなんかいないよ!それに誰が感謝するんだよ!そんなの自然にそうなればいいだけだろ?僕は焦ってないしねっ」 「うわ!何だか凄く奇麗事!男だろ~?」 「はいはい。そうだね。それより、もう行くよ?がお腹空かせてるかもしれないしさ」 「あ~悪い、悪い!じゃあ、ま、俺に聞きたいことがあれば、いつでも部屋に来い!じゃーな~!」 ロバートはそう言って笑うとエレベーターホールの方に歩いて行った。 僕は頭に来て、 「誰が行くか!このエロ兄貴!!」 と怒鳴ると、ロバートは爆笑しながら手をヒラヒラ振っている。 「はあぁぁ……どっと疲れた……」 思い切り溜息をつくと、僕は急いでの部屋へと走り出したのだった。 「ちょっとエマ、ダンは?」 エマとルパートがランチに行くのにスタッフの車に乗り込むと、すでに先に乗っていたルシーナが怖い顔で聞いてくる。 「さあ?知らないわ?いつでも一緒なわけじゃないし。ねぇ?ルパート」 「そうそう。知らない、知らない」 「じゃあ、あのって子は?今日は一度も見かけてないけど?」 「は足を捻挫したでしょ?あの屋敷で。だから部屋で寝てる」 エマは素っ気無く答えると、前の方の席にルパートと並んで座った。 すると後ろに座っているルシーナが身を乗り出してくる。 「もしかしてダン、あの子のとこに行ったんじゃないでしょうね?」 「だから知らないって言ってるじゃないの。しつこいわねっ」 「何ですって?」 「しつこいとダンに嫌われるだけよ?ダンは、しつこい女が大嫌いなの。それと……に何かしても嫌われるわよ?」 エマは少しキツイ口調でそう言うとルシーナの顔が一瞬、青ざめた。 「何よ、それ…。私があの子に何するって言うのよっ」 「別に。何かするつもりだったら…と思って忠告しただけよ?」 「失礼ね!あんな子、目じゃないわよ!」 「あっそ、だったら姑息な手を使わず、まあ頑張ってよ」 エマは澄ました顔でそう言うと、ルシーナは唇を噛み締めている。 「あの子…。いったいダンの何なの?この前だってダンに肩を貸してもらってたし…っ。ほんとに、ただのクラスメートなわけ?」 ルシーナの言葉に、エマとルパートはチラっと互いの顔を見る。 「さあね。そんなのダンに聞けば?私は知らないもの。ね?ルパート」 「うんうん、そうそう」 「ルパートは黙っててよ!」 「………はぃ…」 ルシーナに怒鳴られ、ルパートはムっとしたものの、関りたくないのか、そう呟くと息をついて肩を竦めた。 何なのよ…!ほんと嫌なコンビ! ルシーナはイライラしながら、また座ると、窓の外に見えるホテルを眺めた。 ダン……ほんとにって子のところに行ってるワケ? あんな普通の、どうって事ない子のどこがいいワケ? ただ純情ぶってるだけじゃない。 ダンに良く思われたくて猫かぶってるに決まってるわ… 化けの皮剥いでやるんだから…っ ルシーナは、そう思いながらホテルからスタッフと歩いて来たトムに目が行った。 トムは使えるかも… トムは結構、ああいう大人しいタイプは好きそうだし…… ちょっと、けしかければ、すぐに手を出すに決まってる。 ジュリアには悪いけど……利用しない手はないわね… ルシーナは、少し考え込むと、車に乗ってきたトムに、いつもモデルの仕事の時に見せている最高の笑顔を向けた。 「トム、隣に座らない?」 「よぉ、ルシーナ。今日も、お奇麗で」 トムはいつものノリで、歩いて来ると、ルシーナの隣に座ったのだった。 僕はの部屋の前まで来ると、エマから預かったキーを取り出し、そっとドアを開けてみた。 一瞬、チャイムくらい鳴らずべきだったかな…?と思ったが、早くの顔が見たくて、そのまま部屋へと入る。 「………?」 そう声をかけてみるけど変事がない。 そのまま入って奥のベッドのある一角に歩いて行った。 そして、ベッドの上でスヤスヤ眠っているを見て、思わず顔が綻んだ。 「何だよ…寝ちゃってる…」 時計を見れば、もう午後の1時… ずっと眠ってたのかもしれないな。 そう思いながらベッドまで歩いて行くと、そっと覗き込んでみた。 はスースーっと小さな寝息をたてて気持ち良さそうに寝ている。 ちょっと口が開いてて子供みたいで凄く可愛かった。 どうしよう…… 起こすべきかな…… でも...まだ寝顔をみていたい気もする。 僕は静かにベッドの端へ腰をかけると、の顔の横に手を置いて彼女の頬にそっと口付けた。 それにはも少しだけ顔を動かしただけで、またスヤスヤと寝入ってしまう。 「……可愛い…」 思わず顔が緩んで、そう呟くと、彼女の頬を指で、そっと撫でて暫く寝顔を見ていた。 こうしてるだけで愛しい気持ちが次から次へと溢れてくる。 人を愛しいと思う感情って上限はないんだな… そんな事を、ふと思った。 そして彼女の顔の横に置いた手を少し動かした時、ベッドがギシっと鳴ってしまい、の顔がかすかに動き、ドキっとする。 は横に向けていた顔を上に向けて何だかムニャムニャ呟いていて、僕は笑いを噛み殺した。 「ほんと可愛くて嫌になる…」 ちょっと微笑んで、そう呟くと僕は彼女の薄っすらと開いた唇に、ほんとに触れるだけのキスを落とした。 「…………んぅ…」 キスをしてるとが子供みたいな声を出してモゾモゾと動き出したから、静かに離れて名前を呼んでみた。 「………?起きた…?」 「…………………ん……ぅ?」 体を横に向けて手でゴシゴシと目を擦るに僕はクスクス笑いながら、もう一度、 「?」 と声をかけてみた。 「…ん~……今何時?」 「今?今は…お昼の1時だよ?」 「…………………ぇ…っ」 僕が素直に答えると、は驚いたように目をパチっと開けて僕を見た。 「ダ……ダン……っ?!」 「おはよう。は、お寝坊さんだね?」 驚いた顔で僕を見ている彼女に、そう言えば、一瞬で頬を赤くした。 「な…何で……あれ?!撮影は……?」 「ああ、そんなの、とっくに終わって休憩だよ?さっき言ったろ?戻ってくるって」 「嘘……もう、そんな時間?やだ……私、ずっと寝てたかも……」 は焦ったように体を起こすと慌てて髪を直している。 そんな彼女を見て僕は小さく噴出した。 「そんな慌てなくても…。それにの髪は奇麗だから寝癖なんてついてないよ?」 「……………っ」 の長くて奇麗な髪を手にとって、そう言えばの頬がますます赤くなってしまった。 そんなが可愛くて、僕は彼女の首に腕をまわすと、そっと抱き寄せ、唇に軽くキスをする。 「……凄く会いたかった。遅くなってごめんね?」 「う、ううん……私も寝ちゃってたし………」 僕の言葉には小さく首を振ると消え入りそうな声で、そう呟いた。 そんな彼女をギュっと抱きしめると、かすかに体を固くするのが分かる。 まだ慣れないか…… 心の中で少しだけ寂しく思うけど、でも、そんなシャイな彼女が愛しくて堪らない。 「……」 「…え?」 「お腹空かない…?」 「あ……ちょっと……空いたかも……朝から何も食べないままだったし…」 「だよね?僕も時間なくて食べてないんだ。じゃあルームサービスでも取ろうか?」 「え?ルームサービス?」 その言葉にが驚いたように顔を上げた。 「うん。メニューが置いてあるから、それ見て決めよう?」 「ほんと?私、ルームサービスって初めて!映画やドラマ見て憧れてたのっ」 無邪気に、そう言って笑顔を見せるに僕はちょっとだけ噴出した。 「あ……今、バカにしたでしょ……」 「ち、違うよ……そうじゃなくてさ…。あはは…っ」 「もう…笑わないでよ…」 は少しだけ口を尖らせ、でも恥ずかしそうに僕の顔をチラっと見ている。 そんな彼女が可愛くて愛しくて、僕は堪らず腕を少し強引に引き寄せ、思い切り抱きしめた。 「キャ…ダ、ダン…っ、どうしたの…?」 「ううん……。ただ抱きしめたいだけ」 「……………っ」 は僕がこういう事を言うと、すぐに黙ってしまう。 僕が、"好きだよ"とか、"会いたかった"と言っても、は黙ったまま何も言ってくれない。 それが少し寂しいんだけど…… 「……」 「な…なに……?」 「僕のこと好き…?」 「………………っ」 ほら、また黙った。 「…?答えてくれないの?」 「だ、だって……」 「僕は…のことが好きで好きで堪らないんだけど……。はそうじゃないの?」 「……………っっ」 「答えて欲しいんだ」 僕は、そう言って少しだけ体を離し、の顔を覗き込んだ。 見ればの顔は本当に真っ赤で恥ずかしいのか僕の顔を見ようとはしてくれない。 そんな彼女を見て、ちょっと可哀相かな……と思った。 「嘘だよ。ごめ……」 「す、好きだよ…?」 「え…?」 不意にが呟いて僕はドキっとした。 「私も………ダンが凄く凄く好き……」 はやっとって感じで言葉を押し出すように、そう言ってくれて僕は胸の奥が熱くなった。 「……ほんと?」 「…ぅ、ぅん……ほんと」 「良かった……」 僕はそう呟いてもう一度を腕の中へ納めた。 今度はも少しだけ力を抜いて黙って僕の胸に顔を押し付けている。 優しく彼女の頭を撫でながら、僕は、もう一度、今の自分の気持ちを口にした。 「は……僕が初めて本気で好きになった子だから……。ずっと傍にいて欲しいんだけど…いいかな?」 「……え?でも……」 僕の言葉にが不意に顔を上げて少しだけ悲しそうな顔をした。 「でも…何?」 僕は少し不安を感じて、そう聞けばは言いにくそうに俯いてしまった。 「……?何か言いたい事あるなら言って欲しい…。の気持ち全て知りたいから」 彼女の目を見て真剣に、そう言えば、も小さく頷いた。 「あ、あのね…。さっきエマから前の彼女のことを、チラっと聞いたから……」 「え………っ?!」 まさか、そんな事だと思わなくて僕は、かなり驚いてしまった。 そんな僕を見て、も不安に感じたのか、悲しげに目を伏せてしまい、僕は焦った。 「あ、あのさ、その事なんだけど……。彼女って言っても僕も、本気で好きだったわけじゃ…あ、じゃ、じゃなくて、え~っと……」 バカか、僕は…! こんなこと言ったら軽い男だって思われちゃうよ…っ! 何と説明して良いのか分からず、僕は一人、動揺していると、不意にが僕を見上げてきた。 「いいの…」 「え?な、何が?」 「前の彼女のこと……。私に気を遣わないで?私だってダンが今まで誰とも付き合ってないなんて思ってないし…」 「ちょ、ちょっと待って、…。あ、あのさ……。そうじゃなくて……気を遣って、そう言ってるわけじゃないんだ…。ほんとに、その……」 「ダン……?」 は不思議そうな顔で僕を見ていて、そんな彼女を見てると、ちゃんと説明しなくちゃ…と思った。 軽く息をつくと、僕はの瞳を見つめて、昔の彼女の事を話し出した。 それを聞いて、がどう思うのか凄く不安もあったけど、それでも適当に誤魔化すとか嘘をつくのが嫌だと思ったから… は黙って聞いててくれた。 前の彼女は先輩だった人で最初は憧れてたこと、そして彼女から告白されて僕も、その気持ちを好きだと勘違いしてしまったこと、 年下扱いされて、僕も彼女の事を先輩という目でしか見れなくなってしまったこと…まあ、ファーストキスの相手だってとこは省いたんだけどね。 僕は最後まで話して、だからが初めて好きになった子だということも付け加えた。 は案の定、そこで、また頬を赤くしちゃったんだけど… それでも理解してくれたようで、 「分かった…。話してくれて嬉しい……」 と小さな声で、そう言ってくれた。 それが僕は嬉しくて、また彼女を抱きしめてしまった。 に、してもエマめ!余計なこと言ってくれちゃって…っ 後で覚えてろ…。 僕は心の中で怒りつつ、に微笑むと、 「じゃ、ルームサービス頼もうか?」 と言った。 も笑顔で頷くと嬉しそうにメニューを見て喜んでいる。 そんな彼女を見て、また愛しさが増えた気がした―― 「ちょっとエマ!何、余計なこと言ってるんだよっ」 午後の撮影も終わり、皆で衣装を脱いだ後、僕はエマのトレーラーに行って、そう文句を言った。 エマも、かなり反省してたらしく、両手を合わせて、 「ごめん!ダン…!ついポロ…っと口から出ちゃったのよ~~っっ!ほんっとごめんね!」 と謝ってきた。 なので、そこは僕も仕方なく許してあげた。 「ほんと心臓止まりかけたよ…。に、そのこと言われた時はさぁ…」 「だから、ごめんってば~~っ」 「まあ、もう全部きちんと説明したからいいけどさ…」 僕はそう言って口を尖らせると、エマはホっとしたように微笑んだ。 「じゃあ、もうに隠し事はないってワケね?」 「ああ。ないね?もう~まーったくない!ゼロ!」 「じゃあ、いいじゃない。これからも仲良くしてよ」 「言われなくてもするよ」 僕が苦笑しながら答えると、エマは呆れたように噴出した。 「あ~あ~ダニエル・ラドクリフともあろう人が本当にデレデレね?こりゃ世界中のダンのファンが泣いちゃうわよ?」 「いいよ。僕はさえ泣かなければね?」 「うわ!うわ!そこまでノロケちゃう?!感じわるぅーーい!!!」 おどけたように言った僕の言葉に、何故かエマが顔を赤くして頭を抱えた。 「何よ~私も彼が欲しい~~!!そんな風に愛されたいなぁ~~~っっ」 「何だよ、エマだって言い寄ってくる男くらいいるだろ?」 「でも好みの子がいないもの!私は理想が高いの!」 「そんな選り好みしてたら売れ残るぞ?」 「うわーー!言ったわね~~?!ちょっと自分が幸せだからって嫌な感じ!!」 「あはははっ。そんな怒るなって!エマに好きな人が出来たら強力するからさ?あ、トムはどう?」 「げ…!お断りします!」 「うわ、即答かよ!」 エマの言葉に僕は大笑いしていると、 「もう~ダン、笑ってないで早く愛しい愛しいの元へ飛んでいけばいいでしょ~?目を離してると他の誰かに攫われちゃうわよ~?」 と、僕がもっとも言われたくない台詞を言われた。 「エマ……気分が沈むようなこと言うなよ……」 「あら、だって、可愛いしライバルだって出て来るかもしれないじゃない?あ、トムは本気じゃないから、どうでもいいけど」 「そうだけど…。あ~あ~……。もう~をずっと部屋に閉じ込めておきたいよ……」 僕がそう言ってベッドに寝転がると、エマが半目で見下ろしてきた。 「な、何だよ、その顔……」 「もぉ~…ほんっとダンってばメロメロって感じねぇ……。どうしちゃったの?」 「何が……?」 「前は、そんな風じゃなかったもん。もっとドライって言うか…特に女の子にはクールって言うか…。そんな感じだったじゃない? でもには見ての通り、クールなんて言えたもんじゃないし……」 「悪かったな……」 「別に文句言ってるワケじゃないわ?ちょっと意外だったって言うか…。ダンにも、そんな一面があったんだって驚いてるだけよ」 エマはそう言いながら肩を竦めた。 僕は小さく溜息をつくと、天井を見つめながら、 「僕も自分で驚いてるよ…」 と呟く。 「の傍にいると、どんどん、こう胸の奥から好きだとか愛しいって気持ちが溢れて来て…心全部がに向かって動いちゃってさ… 自分が自分じゃなくなる感覚でさ…。ちょっと怖いかな?」 僕がそう言って苦笑すると、エマが首を傾げた。 「怖いって……。何が?」 「…だから……と…この先もずっと一緒にいれるのか、どうか……って考えると…」 「いれるじゃない。互いに気持ちが変わらなければ」 「そ、それが一番、曖昧で怖いんだろ?僕は変わらない自信があるけど、は……彼女はさ…変わるかもしれないからさ…」 「もう~何よ、弱気ね?ダンともあろう人が、そんな弱気でどうするのよっ。もっと自信持ってよね?」 エマはそう言って僕のお腹に軽くパンチを入れて来て、軽く咽た。 「って…何だよ、エマ……ゲホ……っ」 「いいから起きて!早くのとこに行ってあげなさいよ。私は今夜も遠慮してルパートにゲームつき合わせるから」 エマはそう言って笑うと、僕の腕をグイグイと引っ張ってくる。 「わ、分かったよ。起きるって……。ほんとバカ力だな?エマは…」 「何ですって?!」 「何でもないです…」 「よろしい。じゃ、とイチャイチャしてきたら?今朝のように!」 「んな…っ!!!何言って………あぁ!!も、もしかして……っ」 「もちろん見ちゃったわよ~~?二人の熱い抱擁!アンド熱いキッス!」 「う…っし、信じられない!いつから見て…っっ」 僕は一気に耳まで赤くなって、口をパクパクさせてると、エマがニヤニヤしながら、 「"早くしないとエマが戻ってきちゃうよ?"ってとこ?熱くて少しドア開けたまま着替えてたら私の名前が聞こえてきたから、ちょっと覗いてみたの。 そしたら、ダンってばに熱~~~い口付けなんてしちゃってるから出るに出そびれたのよ?」 それを聞いて僕は本当に真っ赤になってしまった。 「あらら!今さら照れないでよ。には甘い台詞言ってたクセに!」 「う、うるさいよ!うわー!最低!エマ、ほんっと最悪だよ!信じられない!」 恥ずかしさのあまり、僕は、そう言いながらトレーラーを出て行った。 すると後ろから、 「ダン、頑張ってねぇ~~~~っ!」 なんて叫んできてギョっとした。 だって周りには、まだ片付けとかしてるスタッフがいるんだよ?! 「よぉ、ダン!何を頑張りに行くんだぁ?!」 「バカ!あの子だよ!ダンが連れてきた可愛い子!」 「ヒュ~♪ヒュ~♪ダン~~これから何しに行くのかなぁ~~?!」 「うるさいよ!!」 案の定、エマの雄たけびを聞いたスタッフが次々に僕をからかってきて、僕は真っ赤になる一方…… 思わず、その場から駆け出し、ホテルへと向かった。 だから、その場にルシーナがいて、怖い顔で僕を見ていた事には気づかなかった―――― |
Postscript
す、すみません~、ただイチャイチャさせたかっただけです(笑)
やっぱり付き合い始めは、こうでなくちゃ~とか思いつつ、
15歳の時って、どうだっけ?と悩みました、ハイ。
でもきっと、こんなラブラブではなかったと思います(笑)
だって15歳くらいは、お互いに恥ずかしいってのが先に来るでしょ?(笑)
まあダンはイギリスの子なので少しだけオマセさんって事で一つ(笑)
因みに私の初キッスは12歳くらいの時だったかと…(聞いてないし)(笑)
ハイ、私もませたガキでしたね^^;
今の15歳なら普通かもね~(笑)とっくにしちゃってる子が多そうです。
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】