Chapter.7...Surprise engagement party3              I WISH YOU...




ホテルの厨房は、慌ただしかった。
昼少し前には皆が集まってきて、それぞれの役割を決めた後に作業へと入ったのだ。
ヴィゴとジーンはタンドリーチキンやらシュリンプのサラダやシーザーサラダ等を担当。
ミランダと僕はタコス用に、トルティーヤを焼き、アボガドディップを作り始め、メキシカンライスなどを担当。
は、ケーキのスポンジを焼きながら、夕べオーランドが悪戦苦闘していたポテトを使って、アメリカ人の、ほとんどが大好きであろう、
フライドポテトを揚げるべくオイルの用意をしている。
とにかくポテトも凄い量だから、オイルの量もハンパじゃない。
ヘンリーの持ち場は洗い場で手にしっかりとゴム手袋をして、

「スタンバイOKだよ?いつでもお皿持ってきて!」

などと言っていた。
その時、が手を動かしつつ僕に話し掛けてきた。

「ねぇ、リジー。リヴをスタジオに呼び出す時…どうする?何て言って呼べばいいかしら?」
「ああ、そうだね!怪しまれないように呼ばないと…。特に今日はオフだからスタジオに呼び出すのは難しいよねぇ…
いっそのこと、PJに、撮り忘れたシーンがあって…とか言って呼び出してもらう?」
「それがいいかもな?監督の言う事なら、オフでも出て来るだろうし、疑いもしないだろう」

ヴィゴも、そう言いながら手だけは動かしている。

「じゃあ、後で僕が、PJに電話しておくよ?」
「お願い、リジー」

は笑顔でそう言うと、またポテトへと視線を戻した。
僕は、一生懸命のを見て、そっと微笑んだ。

(ほんと…ってば何事にも一生懸命だよなぁ…僕も見習おう…)

そう思いつつ、手を動かし、アボガドをさばいていく。
それを隣で見ていた、ミランダが、

「リジー…ほんと起用ね?お料理もできるのには驚いたわ?」 

と感心している。

「そうかな…?家でも僕は一人で離れに住んでるからさ、親がいない時は自分で食事作ってたし少しづつ覚えただけなんだけど」
「そうなの?でも、いいわよね?料理が好きで、しかも上手な男性は。女の子にもモテるわよ?」
「え?そうなの?男が料理できると女性はいいわけ?」
「そりゃ全く出来ないよりは少しでも出来た方がいいんじゃないかしら?全て女任せじゃなくて…たまには男性にも作って欲しい時もあると思うわ」

ミランダは笑顔でそう言うと、トルティーヤの生地を伸ばし始めた。
僕は、その言葉で嬉しくなった。

そっか…料理出来た方がいいんだ。
そうだよなぁ…僕もの手料理も食べたいけど、にも作ってあげたいな、なんて思うし…。
今度何か作ってあげようかな…って俳優からスタッフに作ってあげるのって変とか思われるかな…

僕は一人、そんな事を考えつつ、アボガドディップを作り始めた。
チラっとヴィゴを見ると、何やらジーンと仲良く作業している。

はぁ…いいな、ああいうの。
僕もあんな感じでと一緒に料理がしたいよなぁ。

「ねぇ。トルティーヤって、この位の薄さでいいかしら?」

ミランダが、トルティーヤの生地を僕に見せてくる。

「ああ、それでOKだよ?それを時間を計って軽く焼けば出来上がり」
「そう?良かった!じゃ、これを100枚くらい作ればいいのね?」 

とミランダは苦笑しながら言った。

「ちょっと軽くつまめるものを作ろうって事だったのに何だか凄い事になってきたよ…」

僕は苦笑しながらミランダにウインクした。

「そうね?でも私達の手作りだと、リヴも喜んでくれると思うわ?」
「そっか。そうだね!」 

僕はアボカドを練りながら笑顔で答えると、が丁度、鍋に油を入れようとしている。

?大丈夫?」
「うん。何とか…油が暖まるのって時間かかるし…」
「火傷しないように気をつけてね?」 

と、ちょっと心配そうな顔で言うと、はニコっと笑って、「ありがと」 と言った。
僕も微笑み返すと、また自分の作業を始めて、気づけば昼過ぎの3時半となっていた。

「ねぇーまだあるのぉ~?」

ヘンリーが頬を脹らませて文句を言っている。

「仕方ないだろう?自分で手伝うと言ったんだから責任を持ちなさい」

ヴィゴも一緒に洗いながらも、ビシっと言うとヘンリーは泣きそうな顔でお皿を洗っていた。
今はやっと全て作り終えて、作業で使った鍋や皿が大量に残った。
それをヘンリーが一生懸命に洗っているのだ。

「あの…やっぱり私も手伝うわ…?」
「いや、。他の皆は自分の仕事は終えたんだから休んでていいんだよ?」
「でも…多すぎるわ?ヴィゴ…。洗物がこんなにあったらヘンリーだって…」

その言葉を聞きながら僕も洗い場まで歩いて来た。
ヘンリーは小さな体で一生懸命、皿やら鍋を洗っている。
普段は憎たらしいけど、僕は何だかヘンリーが可愛そうになってきた。

「ヴィゴ、こっちの鍋とか小皿は僕が洗うよ。ほら、ドムたちの飾りつけとか手伝いに行かないと」

ヴィゴは少し考えているようだったが、顔をあげてニッコリ微笑むと、

「そうだな…。サッサと片付けて、皆の手伝いでもしに行った方がいいか」

ヴィゴの言葉に、僕はホっとして、すぐに残りの洗い物を洗い始めた。
すると隣に、が来て、僕が洗ったお皿を拭き始める。

、ありがとう」
「ううん」 

と言うと僕の顔を見上げて、ニッコリと微笑んでくれた。
僕は目の前で見た、その優しい笑顔に、ちょっと照れて、パっと顔を自分の手元へと向けると、

「何とか出来上がって良かったね?」
「ええ。ちょっとホっとしたわ?あとは飲み物とお花が来るのを待って…飾り付けも終らせれば…完璧ね?」
「うん、そろそろオーリー達も来るんじゃ…」 

と言った瞬間、

「ただいまぁ~~…!」 

といつもより少し元気のないオーランドの声が聞こえた。
その後にディビッドも続く。

「お花、持って来たぞ~~…」
「二人とも、ご苦労さん! 」 

とヴィゴが微笑む。

「ひゃ~疲れた…!一日中花屋巡りだよ?思ったより、いい花がないんだから…」
「お疲れ様、オーリー」
「あ、!ただいま!ケーキは出来たの?」
「ええ、何とか!飾り付けが大変だったけど…。他のも全て出来たわよ?」
「そっかぁ~、お疲れ様!よく頑張ったね~」 

とオーランドはの頭を、よしよしと撫でている。
は少し顔を赤くすると、「もう…子供じゃないんだから…」 と苦笑した。

「いいんだよ!頑張った子には撫でて誉めてあげるの!」 

オーランドは、そう言いながら笑っていると、そこに水しぶきが飛んできた。

「つめた…っ!」
「変態エルフ!に触るなよ!」

ヘンリーが怖い顔でオーランドへ濡れた手で水を飛ばしている。

「うわ、チビスケ!いたの忘れてた!」
「こら、ヘンリーやめなさい!お前は洗い物に集中するんだ」

ヴィゴは苦笑しつつ、

「オーランド、悪いね?今、ヘンリーは、この通り機嫌が悪いんだ」
「ああ、別に大丈夫だよ…。慣れてるし…アハハ…」 

とオーランドも疲れきった顔で空笑いしている。
僕とは顔を見合わせて、ちょっと笑いあうと、残りのお皿を素早く洗い終えた。
そこにディビッドが、大きなトレンチにコーラを乗せて持ってきてくれた。

「皆、お疲れ!喉渇いたろ?あっちの厨房の人から差し入れだって」
「わぁ~やった~。喉カラカラだったんだよ~」 

と、オーランドは早速グラスを一つとる。
ヴィゴはヘンリーとジーンにとってあげていた。
僕も二つとって、にグラスを一つ渡すと、「あ、ありがと」 とニコっと微笑んでくれて僕も笑顔になる。

「はぁ~冷たくて美味しい…」 

は一気に飲むと息をついている。

「ほんと…何だかんだで昼から黙々と料理してたしね。ずっと立ちっぱなしで疲れたろ?」
「ちょっと足が浮腫んでる気がするけど…後で部屋に戻って冷やすわ」
「そうだね。その前に、まず…」
「飾り付けしなくちゃ!」

は、そう言うとコーラを飲み干して、またトレンチの上に置く。

「ん、オーリー。お花はスタジオに運んだの?」
「あ、うん。スタジオに持っていったよ?それとドムとビリーが垂れ幕飾ってた」
「うそ?じゃ、急がなくちゃ!二人だけだと大変でしょ?」

はそう言うと厨房の中をザっと見渡し、後片付けが終ってるのを確認して皆が作った料理を大きなワゴンの上に乗せていく。
僕とヴィゴ、そしてオーランド達も、それを手伝うと、

「じゃ、このままスタジオに行きましょうか」 

と言って、がワゴンを押していった。

僕は慌てて後を追うと、「僕がやるよ。これ重たいから!ね?」 と普段より強く言ってみる。
が、また遠慮しそうだったからだ。
それでもは笑顔で、「そう?じゃ、お願いします!」 とおどけて言うと、ワゴンを僕に渡した。
僕は、ホっとして、それを慎重に押していく。

ホテルの裏口から出して、それを大きな車に台を使って上手く乗せると僕は車の振動でワゴンが動かないように押さえる為、後ろに乗る。
オーランドも、それに続き、、ヴィゴ、ヘンリー、ジーンも乗り込んだ。
ディヴィッドが運転席する為、前に乗る。

「じゃ、出発するぞ?リジーとオーリー、しっかり押さえててくれよ?」

ディヴィッドが大きな声で後ろへ叫んでいる。

「OK!」
「あまりスピード出さないでよ?」

と、オーランドはちょっとびびりながら叫び返している。
ディヴィッドは、それに笑いつつ、「じゃ、出発!」 と言って車を発車させた。










「お待たせ!ビリー!ドム!」
「おぉ!お疲れさん!」
「お疲れ~!そっち終ったの?」
「うん、何とかね!これが料理だよ?」 

と、僕はワゴンを押してスタジオの隅に置いた。
そこに皆も入ってくる。

「Hey!飾り付けやってるか~い?」 

とオーランドは少し元気が出てきたのか、ドムの肩をバンと叩いた。

「やっと垂れ幕完成したから、上につるしたとこだよ?」

その言葉に皆が一斉に上を見る。
そこには大きな幕に、"Congratulations!!LIV!"と書いてあった。

「凄~~い!上手ね?デザインも素敵!それにリヴの似顔絵も凄く似てるわ!」 

が笑顔でドムとビリーに言った。

「ほんと?Thank you!苦労したんだよ~似顔絵のとこ…」 

とビリーは苦笑い。

「で、後は何をしたらいい?」 

ドムが僕とを見る。

「あ、オーリー達が買って来てくれた花を飾りましょうか?」 

がスタジオ内を見渡しながら僕を見た。

「そうだね?じゃ、まず花からやろう」

そこで、しばし皆は花の飾りつけに動き回った。

「あ、この花束はリヴにあげるやつね?」 

とディヴィッドが花束を避けて別の場所へと置く。

「このテーブルの周りに、もう少しお花足そうか?」
「あと、こっちにも!」

と、それぞれ慌ただしく花を飾っていって、皆で作業したので、あっという間に飾りつけは終った。

「はぁ~終ったぁ~…。あとは…する事ないよね…?」 

僕は近くの椅子に座って息を吐き出した。
そこへ、「ただいまぁ~」 とショーンとアンディが大きな箱を抱えながら入って来て、隅っこにドサっと置いた。

「あ、お帰り!二人とも、お疲れさん!!」

ヴィゴが二人の方へ歩いて行ってアンディの肩を叩いている。

「いやぁ~何とか量を確保したよ」 

とアンディは苦笑しながら、

「どうする?これテーブルに並べようか?」
「そうだな。あ、シャンパンとか白ワインは冷やしておこうか」
「ああ、そうしよう」

とアンディ、ヴィゴはすぐに、その大量のシャンパンやワインを、また厨房へと運んでいく。
僕はホっと一息つくと、

、少し休んできたら?疲れたろ?」 

と声をかけた。
すでに時間は4時半過ぎ。パーティーは6時くらいに始めるつもりだ。

「そうねぇ…。ちょっと…シャワーでも入って休もうかな…」 

は疲れた顔で息を吐き出した。
僕は心配になり、の顔をちょっと覗き込むと、「大丈夫かい?」 と頭を撫でた。

「うん。大丈夫!それに皆も同じでしょ!リジーだって夕べから作業してるんだし」 
「僕は…男だから、そんなのは平気だけどさ…。後は僕が監督に電話とかして色々と頼んでおくから早く休んでおいで?」
「うん、ありがとう」 

はそう言ってニッコリ微笑むと、皆の所へ言って声をかけている。
皆も部屋で休むのか、「じゃ、一旦戻ろうか」 と言って解散しはじめた。

「リジー!」

そこへ元気にオーランドやドム、ビリー、ショーンが歩いてくる。

「ね、監督、どこにいるんだろ?」
「さあ…バリー達と次のロケ地とか探しに行ってると思うんだけど…」
「そっか…。監督は休みじゃないもんなぁ~」 

と今更ながら、監督業は大変なんだと言う風にオーランドも呟く。

「携帯に電話して、リヴを呼び出してって頼んでおかないと」 

僕は携帯を出して外に歩きながら、PJの携帯に電話をかけた…。









「はぁ~…疲れた!」

僕は部屋に戻るとソファーにダイヴして、暫くの間、動かなかった。
ずっと立って作業してたので足がだるい。

撮影の時と違って、動かずに立っているのも、こんなに疲れるんだなぁ…。
も足が浮腫んでるって言ってたっけ…。
大丈夫かな…僕が恋人だったら、すぐマッサージしてあげるんだけど…なんちゃって。

僕は体を無理やり起こすと冷蔵庫から冷たいビールを出した。
ニュージーランドの地ビールで売上ナンバーワンの"ライオンレッド"と、オススメなのか冷蔵庫のメニューに書いてあった。
サッパリとした味わいなので、僕は一気にゴクゴクと飲んで、「はぁ~」 と息を吐き出す。
監督には頼んでおいたし…後はリヴが疑わずに来てくれる事を祈ろう…
PJは忙しさのあまり、「手伝えなくて申し訳ないね…」 と言って恐縮していた。
だからなのか、リヴを呼び出すのを快く承知してくれて、「任せてくれ!そういうのは得意なんだ」 と張り切っていた。
監督が張り切ったなら何とか上手くいくだろう。
撮影の時でも、PJが、"のる"と、おかしいくらいにスムーズにいく。
PJとはそういう何かを持っている人だった。
「さて、と…。僕もシャワー入って用意でもするかな…」 
一人呟き、ダルイ足を引きずりながら僕はバスルームへと入って行った。

シャワーから出ると僕は軽く用意をして、部屋を出た。
ちょっと早めにスタジオに言って用意をしようと思ったからだ。
エレベーターの前まで歩いて行き、ボタンを押す。
暫くしてエレベーターが上がって来て、ドアが開いた瞬間、僕はドキっとした。

「あら、リジー。どこ行くの?」

中にはリヴが乗っていた。
僕は気づかれないように笑顔を見せると、

「あ、ああ。あのちょっと買い物に…」 
「そう。 ―そうだ、私、後でスタジオで撮影入っちゃったのよ…」 

とエレベーターから出ると、リヴは溜息をついた。
僕は一瞬、ドキっとしたが顔には出さず、「へぇ~何でまた?」 と、さりげなく答えた。

よし!いいぞ、リジー!そのまま気づかれず演技しろ!

自分で自分に演技をしろもないものだが、とにかく今、リヴに悟られるわけにいかない。

「それが私とヒューゴのシーンを撮り直したいって言うの。この前はOKって言ってくれたのに…。
それで今、ヒューゴに確認しに部屋に行ったんだけど…」

僕はドキっとして、「え?!」 と聞き返してしまった。
ヤバイ…ヒューゴに確認されたら…いや、ヒューゴも事情は知ってるはずだ。
プレゼントを買いに行ってたと聞いたし…きっと気転を利かして合わせてくれるはず―

「彼、部屋にいなかったわ」 

とリヴが肩をすくめる。
それを聞いて僕もホっとして、「そ、そう…」 と微笑んだ。

「せっかくの完全オフなのに、ついてないわ?」 

とリヴは苦笑すると、「じゃ、またね」 と手を振って歩いて行った。
僕も、「うん、また…」 後でね…と、そこは心の中で呟き、素早くエレベーターと乗り込んだ…。



僕はスタジオに行くのにホテルの外へと出ると眩しいくらいの明るさに目を細めた。
すっかり太陽も傾き、奇麗な夕日が、もう少しで沈もうとしている。

「うわぁ~、真っ赤だな…」

僕は、その夕焼けの奇麗なオレンジ色を見て少し見惚れていた。

(ニュージーランドは、やっぱいいなぁ…)

ロスの夕日もいいけどさ。
ニューヨークなんて、こういうのは見られないだろうし…。
僕は、この撮影が終った後、ニューヨークへと引っ越すつもりでいた。
大好きな音楽の活動もしたくなり、それにはニューヨークの方が何かと便利だからだ。
ミュージシャンの友だちも、殆どニューヨークだった。
は…ロスにいるって言うのにさぁ…こればっかりは決めた後の事なので、どうしようもない。

はぁ~…ほんと撮影終ったら…告白しないと会えなくなりそうだよ…
いや…振られたら、ほんとに会えないな…それを考えると、やっぱり怖いよなぁ…

僕が、そんな事を考えていると、肩をポンと叩かれた。

「リジー?何をボーっとしてるの?」
「あ、…!」

振り向くとが、ニコニコと微笑みながら立っていた。

「あ、ちょっと夕焼け見てて…」
「ああ、ほんと。奇麗よねぇ…。吸い込まれそうなくらい」 

も夕焼けを見て呟く。
は淡いピンクベージュのワンピースに着替えていて、長い髪を軽くアップにしてるのがとても可愛かった。
僕はちょっと見惚れてしまって、知らず、の横顔を見つめていたらしい。

「リジー?どうかした?」

ふいに僕の方を振り向いたので慌てて、「あ、いや…スタジオ…行こうか?」 と何とか笑顔を作った。

「うん。そうね、皆もそろそろ集まってきてるわね」

もそう言うと、僕と並んで歩き出した。

「監督にはお願いできた?」
「ああ、PJもノリノリで引き受けてくれたよ?パーティーには遅れるかもしれないけど顔は出すって」
「そう。忙しいものね、監督も」

二人で、そんな話をしながらスタジオに入ると、スタッフ何人かが顔を揃えて何やら隅でゴソゴソしている。

「何してるの?」 

と僕が声をかけると、スタッフの一人が顔を上げて、

「ああ、イライジャ。いや、これ買ってきたんだ」 

と言って袋を持ち上げる。
その中にはクラッカーが大量に入っていた。

「あ、クラッカー!忘れてたよ」
「いや、イライジャ達が色々と準備してるのに俺たちは仕事があったからさ、手伝えなかったし、せめてこれくらいはね?」 

と、彼はウインクして言った。

「ありがとう!」 

僕も笑顔でお礼を言うと、そこへガヤガヤと人が集まり出した。

「あ、!」 

オーランドが笑顔で駆け寄ってきた。

「少しは休めた?」
「うん、オーリーは?いっぱいお花を運んで疲れたでしょ?」 
「いや~あんなの大丈夫だよ!―それより、今日もは可愛いね?アップ似合ってるよ」 

とオーランドはデレっとした顔でに微笑んでいる。

「あ、ありがとう…」 

も照れくさそうに、ニッコリ微笑みながら僕の方を見た。
僕はちょっと、ブスっとしてオーリーを見ていたので慌てて笑顔を作り、

「うん、ほんと可愛いよ!」 

そこにヴィゴ達が入って来た。

「おう。リジー、どうだった?監督とは連絡取れたか?」
「あ、ヴィゴ!うん、バッチリ!監督、任せておけって張り切ってたよ?」 

僕は少し笑いながら、そう言うとヴィゴも苦笑した。

「そうだろうな…。あの人は、そういうこと大好きだから…」 
「あ、あと20分くらいだね?リヴが来るの…準備しちゃおうか?」 

ディヴィッドが言うと、皆、それぞれスタンバイをしはじめた。
料理を並べたり、飲み物を並べたりして何とか形になる。
そこに僕はドムとビリー、ショーンがいない事に気づいた。

「あれ…3人がいないけど何してるんだろ…」 と辺りをキョロキョロしていると、
「お待たせ~!」 

と、その3人が何か大きなワゴンを持って入ってくる。

「あ、ホテルに頼んだ食事?」
「あ、リジー。そうそう!さっき出来たって聞いたからさ。僕らで取りに行って来たんだ」
「そっか、サンキュ!」

と僕は笑顔で言うと、その料理も皆で手早く即席で作ったテーブルへと並べていった。

「これで…バッチリかな?」

僕はザっと見渡すと、ヴィゴやオーランドも、

「ああ、これでいいんじゃないか?」 
「うん、あとはリヴを待つだけって感じだね?」 
「じゃ、皆でクラッカー持って」

さっきのスタッフが皆にクラッカーを手渡していく。
そしてスタジオ内の照明を落として暗くしてリヴの到着を待った。

僕の隣にはがいて、その横にヘンリー、そしてオーランド、ヴィゴ…といるはずだ。
と言うのも僕は暗くて、よく見えなかったから…。
「何だかドキドキするわね、こういうの」 
すぐ隣からの声が聞こえて僕は少しホっとした。

「うん、ほんとだね?やっぱサプライズは、この瞬間が一番ワクワクするよ?」 
「そっかぁ…私初めてだから何だか緊張してきちゃった」 

がクスっと笑う。

そこへ人が来る気配を感じ、「おい…来たみたいだぞ?」 と誰かが小声で言っているのが聞こえる。
僕も何だか息を殺して、クラッカーを鳴らす準備をした。
だんだん足音が近付いて来て、スタジオの扉が、ガチャッと開いた。
その瞬間、パっと照明が付き、あちこちから、パンパー―ン!!!とクラッカーの音が鳴り響く。



「Congratulations!!リヴ!」 

とオーランドが叫んだ…が――

「うお!!」 と驚いて叫んだのは、どう見てもリヴじゃなかった(!)

「「「「監督?!!!!」」」」

皆が一斉に叫ぶ。
そう、そこにはクラッカーの音で何かがぶつかると思ったのだろうか?
両手を顔の前に突き出し、目を瞑り横を向いているPJ、その人の姿があった。



「どうしたんですか?遅くなるハズじゃ…!」 

僕は驚きのあまり、そう聞いた。
PJは、恐る恐る(!)目を開けると、

「…はぁああ…!ビックリした…!いや、まさか、まだリヴが来てないとは思わなかったよ…」 

と苦笑している。

「すみません。驚かせて…てっきりリヴかと…」 

とヴィゴも苦笑している。
PJは大きな巨体を揺らしながら歩いてくると、

「いや…私も急に早く用事が済んだから、すぐに駆けつけたんだが…パーティーはもう始まってるのかと思ってね」 
「そうですか。あ、今からリヴが来るんです!監督も早くクラッカー持って。 ―おい、誰かまた照明落として!」 

とスタッフが仲間に声をかけている。
PJは、いつもの短パン姿で僕の方へ来ると、
「いや~まいった、まいった!」 と頭をかいて笑っている。

僕とも笑いながら、

「僕らも驚きましたよ…。リヴにしては野太い声だなって。ね?
「ええ。私、リヴって男らしい驚き方するのねって…」 

とクスクス笑っている。

「ハハハ。私が驚かされても意味はないのにな」 

と、PJは苦笑した。
その時、「おい、誰か来たぞ…」 とスタッフが小声で叫んだ。
僕も今度こそは…と息を殺して、クラッカーを握りしめる。
PJも、大きな体を小さくして(それでも大きいんだけど)息を殺している。
カッカッカっと今度は確かに女性だと分かるヒールの音がする。
そして静かに扉が開いた。



パンパンパー――――ン!!!



「「「「「「「「「Surprise!!Congratulations~~engagement~~!!リヴ~~~!!」」」」」」」」」 



「キャァ!!」



今度こそ、リヴだと分かる声が聞こえた。
照明がついて、リヴは目を細めたが、目の前に、監督、スタッフ、共演者の姿が揃っているのを見て目を丸くしている。

「な、な、何してるの…?」 

とリヴは呆然とした顔で皆を見渡して言った。

「婚約、おめでとう!リヴ!!サプライズパーティーだよ?婚約祝ってさ!」

と、このパーティーの発案者のオーランドが代表でリヴに花束を渡している。

「ええ?!」 

とリヴは更に驚いて唖然とした顔で花束を受け取ったが、皆からも次々に、

「おめでとう!幸せになってね!」 

とプレゼントを渡され、その驚きの表情が、少しづつ泣き顔に変わっていった。

「あ、ありがとう…皆!!凄く・…嬉しいわ! …私は幸せ者よ?こんな風に祝ってもらえるなんて…」 

と零れる涙を拭っている。
が、それを見て、さりげなくリヴにハンカチを渡した。

「おめでとう、リヴ…。これ、私からも二人に…フィアンセと使って?」

が、この前買ってきたプレゼントを渡す。

「まあ、ありがとう!!!」 

とリヴもに抱きついて頬にキスなんてしている。
僕も笑顔で、「リヴ、おめでとう!これは僕から…。二人に」 とプレゼントを渡した。
すでに持ちきれないくらいにプレゼントを貰っていたリヴは近くにあったテーブルの上に、
一旦貰ったものを置くと、僕のプレゼントを受け取った。

「ありがとう!!リジー!」 

と僕にもハグして頬に何度もキスをしてくれる。

「もう…リジーったら!さっき会った時なんて、普通の顔してたクセに…」 

とちょっと笑って僕を見た。

「まあね!バレないように僕も必死だったよ?」 

と僕も笑いながら肩をすくめる。

「でも…ほんと、皆、ありがとう!!凄く嬉しいわ!」 

リヴは、その場にいる全員にハグして行った。

「ドムとビリーも…ありがとう!凄い垂れ幕ね?」 
「アハハ!ちょっと手作り風でいいだろ?」
「ほんと!二人とも、こういうのやらせたら上手ね?」 

とリヴが笑いながら言った。
そこにポーンとシャンパンの栓を抜いた音が響き、ヴィゴとディヴィッドがグラスに、どんどんシャンパンを注いでいく。

「さ、皆、グラスを持って!乾杯しよう!」

そのヴィゴの声で、皆も一斉にグラスを持つ。
リヴも恥ずかしそうにグラスを持った。

「では、改めまして…リヴ、婚約、おめでとう!!乾杯!!」 

「「「「「「 おめでとう~~!!!カンパーイ!!」」」」」」

「ありがとう、皆!」

皆はシャンパンを一気に飲み干し、あちこちで拍手や喝采が響いた。
リヴはまた涙ぐんで、が貸したハンカチでそっと涙を拭いている。
僕はと顔を見合わせて、ちょっと微笑むと、が、「ケーキ切ってくるわ?」 と言ってリヴの方へと歩いて行った。
「あ、僕も手伝うよ」 と後を追うとヘンリーが走って来た。

「僕も何か手伝う~」
「そう?じゃ、お皿とフォーク出してもらおうかな?」 
「うん!」 

ヘンリーは嬉しそうな顔で僕の後をついてきた。

(何だか…なつかれちゃったかな、僕も…。)

ちょっと複雑な気持ちになったが、まあ、オーリーみたく攻撃の的にされるよりはいいか、なんて思いつつが切ったケーキをヘンリーと一緒にお皿に分けていった。

「うわ、奇麗なケーキ!」 

とリヴが歩いて来て驚いている。

「ああ、これ、が夕べから支度して作ったんだよ?」 

と僕が説明した。

「ええ?夕べから?!…もう…ほんとに、ありがとう、嬉しいわ…」 
「そんな、おめでたい事なんですから、これくらいは…」 

も嬉しそうに微笑んでいる。

の作ったデコレーションケーキの上には薔薇の花びらが散りばめられていて凄く奇麗だった。

「それに…この料理もやリジーが作ってくれたんですって?オーリーが言ってたわ?」
「あ、でも僕らだけじゃなくて…ヴィゴや、このヘンリーも、手伝ってくれたし。ジーンやミランダとも一緒に作ったよ?」
「そうなの…こんな忙しい中で…ありがとう。手作りのパーティーなんて感激だわ?」
「ああ、リヴ…泣かないでよ!せっかくのメイクが取れちゃうよ?」 

と僕は笑いながらリヴの頭を撫でた。

「もう…!いじわるね?リジー!「これ、ぜーんぶ一つづつ頂くわ?皆が作ってくれた料理…思い切り味わって食べる!」
「太るぞ?」 

とそこにオーランドが歩いて来て笑った。

「うるさいわよ?オーリー!私は食べる事を我慢してまでダイエットなんてしたくないもの!」 

リヴは、そう言うと僕らが作った料理を一つづつお皿にとって食べ始めた。

「美味しい!このケーキ、甘さ控えめで美味しいわ、。 ―それに、このマリネも美味しい~~」

リヴはすっかり料理に夢中で、僕やオーリー、も顔を見合わせて吹き出した。

「あんなに喜んでもらえて良かったわ…」
「うん、ほんとだね!夜中まで頑張った甲斐があったよ」
「ほんと!俺のポテトも食べてくれたし!」
「オーリーは皮剥いて切っただけだろ?それもデコボコに!」 

と僕は苦笑しながらオーリーを見た。

「む…別に、それでも参加した事に変わりはないだろ?」 
「ま、エロフにしたら上出来なんじゃない?」 

とヘンリーが済ました顔で言った。

「にゃにぉ~う?チビスケ!チビスケだって皿しか洗ってないだろ?!」
「ふん!ダディが料理作る時は僕は洗い物するって決まってるんだよ!親子の連携プレーさ!」
「何だよ、それ?チビスケは料理が出来ないだけだろ?」
「出来るよ!バカにするな!エロフだってジャガイモ一つ皮も剥けなかったらしいじゃないか!
今時の男は料理できなきゃモテないんだぞ?特にエロフはエロだけが得意なんだからさ!」
「くぅ~~~~!!言わせておけば、このガキャ~~!」 

またしても子供のケンカが始まり、僕は溜息をついた。
はぁ…何で、このおめでたい席でも、こうなるんだ?!
はシャンパンを飲んでいるからか、笑いながら二人を見ている。

ィゴも今日ばかりは、パーティーを楽しんでいる様子で他の共演者やジーンと楽しく談笑しているのでヘンリーとオーランドのケンカを
止める事もなく、無視していて、ますます二人はヒートアップしていた。

「だいたいさぁ~22歳にもなって"前に指切ったから怖いんだよォ~"なんて言わないよ?
普通。エルフの王子を、そんな情けない奴に、演じられるなんて僕ショックだよ」
「ああ~ん?!何で、そんなこと知って…」 

とオーランドは言葉を切ると僕の方をジロリと睨んだ。

「リジィ~~~~~?!お前…!!」
「あ、ごめん!さ、さっき暇で、おしゃべりしてた時についポロっと…アハハハ…」 

と僕は笑って誤魔化した。

「つい、ポロっとを、よりによってチビスケに言うなよ!」 

とオーリーはプンプン怒っている。
そこへリヴが、「な~に怒ってるの?オーリー!」 と料理の乗ったお皿を持ちながら歩いて来た。

「あ~リヴゥ~~~このチビスケ、何とかしてよ~~」 

とオーランドはリヴに泣きついている。

「女性に泣きつくなんて情けないぞ?エロフ」 

とヘンリーは済ました顔。

「くぅ~全くいちいちムカつくチビだな!」

僕はいまのうちと、その場からそっと離れた。
そして料理を取っているの隣へ行くと、「あ、リジー。サーモンマリネ、美味しいわ!」 と僕に微笑んだ。

「ほんと?良かった!がサーモン好きだって言ってたしさ」
「うん、凄く美味しい!ね、今度、作り方教えてくれる?」 

と笑顔で言ってきて、僕はドキっとした。

「う、うん…。こんなので良ければ…いくらでも」
「私、何度作っても酸っぱくなりすぎちゃって…」 

は笑いながら舌を出した。

「ああ、僕も最初、そうだったよ?」

そう言いながら美味しそうにマリネを食べるを見て、ちょっと微笑んだ。

(ずっと、一緒にいたいな…こうして一緒に笑っていたい)

でも…がスタッフで僕が俳優である限り…やっぱり間にラインを引かれてしまうんだろうか…
僕は、その事を考えると胸が痛んだ…







料理は大好評だった。
ヴィゴの作ったタンドリーチキンやら、シュリンプサラダ等も、ほぼ全部がなくなってしまった。
僕やミランダが作ったタコスや、メキシカンライスも完売って感じだ。
ホテルの料理も大勢で食べるとペロっとなくなってしまう。
そして楽しいパーティが終った後には…後片付けが待っている。

「お疲れ~~~!」 

オーランドが片づけを終えて椅子へと座った。
パーティーも大騒ぎで終わり、今は後片付けの為スタジオ内を元通りにした。
リヴが、「片付け、私も手伝うわ」 と言い張るのを、「主役が何を言ってるのさ」 と無理やり部屋へと返し、他の皆で片付け始めた。
パーティーの準備を出来なかったスタッフ達が、「変わりに片付けは任せてくれ」 と、殆どやってくれたので、
僕達は比較的やる事がなく、ヴィゴ達も少し片付けた後に部屋へと戻って行った。
僕と、そして何故かオーリーも残ったけど軽く洗い物をしただけで終った。
も息を吐き出して椅子に座っている。

「はい、。お疲れ様!」 

僕は手早くアイスティーを作ってあげた。

「あ、ありがとう!」 

は笑顔でグラスを受け取ると嬉しそうに飲んでいる。

「はぁ~美味し…」 
「リジィ~~俺には~~??」 

とオーランドがダラダラな格好で聞いて来た。

「そこにあるよ?」 

と僕は台の上を指差して言った。

「わ~い」 

と喜んでオーリーはアイスティーを飲みだすと、すぐに、「おい、オーランド!」 とディヴィッドの声が聞こえた。

「なに?」 

オーリーはグラスを置いて廊下まで出ると、ディヴィッドの声が近付いて来た。

「あのな、花買ってきたときに店の人に借りた大きなバケツ、返しに行くんだけど手伝ってくれないか?」
「ああ…あれか…。分かったよ…」 

とオーランドはガックリ頭を下げるも息を吐き出して、

「ちょっと花屋にバケツ返してくるね~」 

と僕とに手を振って言った。

「そう…行ってらっしゃい!」 
と、も少し心配そうな顔をしている

オーランドはちょっと微笑むと、ディヴィッドと歩いて行った。

「明日の撮影…結構きつそうだね?オーリーも」 

と僕は苦笑しながらアイスティーを飲んだ。

「そうねぇ…。今夜はゆっくり休めるといいけど…」

もちょっと息を吐き出す。
辺りは静かになり、気づけば厨房の中、僕との二人きりで僕は少し緊張してきた。
な、何か話さないと…変な空気が流れそうだ…
僕は、ちょっと息をつくと、「で、でもリヴも、あんなに喜んでくれて良かったね?」 とに微笑んだ。

「うん。ほんと…私も嬉しかったわ?」
も最後の方、涙目になってたもんね?」 

と僕がちょっとからかうようにの顔を覗き込むと、

「だって…リヴ幸せそうなんだもの…」 

が口を尖らせる。
僕はそんなが可愛くて、思わず頭を撫でた。

「うそうそ。分るよ?はリヴのこと、お姉さんみたいに慕ってたからさ」 

と言うともニコっと笑った。

「身内で結婚パーティーやる時に、来てって行って貰えて凄く感激よ…」
「ああ、そんなこと言ってたね?この撮影が終った後にやるんだよね…。その時は皆とも再会出来るし楽しそうだね?」
「そう言えば…そうね?この撮影が終っても…きっと、この仲間の関係は続くんだろうなぁ…」

そう呟くの言葉に僕は切なくなり、

「そ、そうだよ?こんなに長い間、一緒の場所で寝泊りして仕事してきたんだから…もう家族と同じだよ?
もちろんだってさ!」 

と僕がの手を取り微笑んだ。
するとも嬉しそうに微笑んで、「ありがとう…」 と言うと、

「私…最初の仕事が、この仕事で…良かったわ?こうして皆とも知り合えて、本当に良くして貰ってるし…
特にリジーには、お世話になりっぱなしで…ほんとに、いつもありがとう…感謝してる」 

と僕の目を見ては真剣な顔で言った。
僕は胸がいっぱいになり、ちょっと顔が赤くなった。

「あ、いや…そ、そんな事はないよ…?僕だってには、いつもお世話になってるしさ・…」
「そんな…私は何もしてないわよ…」 

とクスクス笑っている。

「そんなことないよ?僕は…いつもに元気を貰ってるし…。だからキツイ撮影だって頑張れるんだから…
朝,メイクして貰ってる時に,の笑顔見てるとさ…。 "今日も頑張ろう…"って思えるんだよ…。
――だから撮影が終ってもさ、また皆で集まったりしようね?」
「…リジー…」 

は少し驚いたような顔で僕を見た。

(言った…!!今日は僕、頑張った…気がする!!)

「…あ、あの…ありがとう…。そんな風に思っててくれたなんて…凄く嬉しいわ?」

もちょっと顔を赤くしながら微笑んでいる。
僕は顔が赤くなるのが分かったが、「ううん…。そんな、こっちこそ…」 と言いつつアイスティーを一気に飲んでしまった。
も照れくさいのか下を向いて黙ったまま。

ど、どうしよう…
何だか、このまま気まずくなってもやだな… ――そうだ…!今なら…

「ね、ねえ、…」
「…え?」
「あの…さ…。今度,また休みがあったら…映画行かない?,映画見るの好きだろ?」

今の僕に出来る精一杯のデートの申し込みだった(!)

「映画…?!でも…リジーが映画館なんて行ったら…バレないかなぁ?」 

と、は心配そうな顔。

「だ、大丈夫だよ?僕,変装するしさ!」

僕はこのチャンスを逃したら…!と言う気持ちで必死に言った。
するともちょっと笑って、「リジーの変装、見たいかも」 とクスクス笑っている。
僕は一瞬、その言葉の意味が分からなかったが…。

「…え?…じゃあ…」

「今度の休み…映画ね!」 

は僕を見てニッコリ微笑んだ。

や、やったぁーーー!!! ―僕は心の中で思い切りガッツポーズをした。

「う、うん…。じゃ、、何を見たいか決めておいてね?」 

僕は飛び上がりそうなくらい嬉しかったけど、そこはグっと我慢の子で、なるべく冷静を装った。

「うん、分かったわ?リジーは、どんなジャンルがいいの?」
「僕は何でもいいんだ。が決めていいよ?ほら、前に好きだって言ってたアドベンチャーとかでもいいしさ!」

と僕が笑いながら言うと、も、「そう?なら、そっちの方面で探しちゃおうかなぁ?」 と嬉しそうな顔で僕を見る。

「それで、いいよ?がアドベンチャーもの見ながらハラハラしてるのを隣で観察してるからさ」 

と言って笑った。

「えぇ…それは…ダメよ、リジーも映画に入り込んでくれないと…つまらないもの、一人でハラハラしてても」 
は少し頬を膨らませて、僕を睨む。
そんなが可愛くて僕はそっと彼女の頭を撫でた。

「分かってるよ?それに心配しなくても、きっと映画が始まったら僕の方が大騒ぎすると思うしさ、逆に呆れないでね?」 

僕がちょっと笑いながら言うと、も、プっと吹き出した。

「アハハ!リジーの、そういう所も見てみたいわ?だいたいアメリカの人はオーバーアクションじゃない?映画見る時」
「え…そ、そうかな?」 

僕はちょっと照れくさくなり頭をかいた。

「そうよ?前に初めてアメリカで映画を見た時、隣の人のリアクションで驚いた事があったわ?凄いんだもの!」

はジェスチャーで僕に教えながら笑っている。

「ああ、でも…それが普通じゃないの?日本は違うんだ?」 
「ええ、日本では映画館は静かに見るものって何だか暗黙の了解で決まってるとこがあって…
だから、そんな騒いだりってのはないわね…。笑ったらするとことかは別に平気なんだけど…大きな声とかは出さないかな?」

僕は、それを聞いて驚いた。

「そうなんだ!だって映画の中に入り込んじゃえば声もでかくなるよね?」
その僕の言葉に、はクスクス笑うと、

「そ、そうね?こっちの人は…素直なのよね?私もそれでいいと思うわ?」
「そう?なら、良かった!大いに騒がせてもらいます!」 

と僕も、おどけて言うと、は、また楽しそうに笑っている。
そんなの笑顔に、ドキドキしている事に気づいた。
が僕を見て優しく微笑んでくれる時、楽しそうに笑っている時、どの笑顔も僕の心にストレートに入り込んでくる。
好きって感情は、どんどん増えていくものなんだなぁ…。
こんなに好きになっちゃって…もしに拒絶されたら僕は…どうなるんだろうな…
に好きな奴が出来たら…きっと僕は嫉妬で狂いそうになるだろう。
どうして…好きな人は君だけなんだろう?
どうして、君は…僕だけの君じゃないんだろう…?
前は…こんな事、考えた事もなかったけど…
恋人同士の二人って…本当に凄いんだなぁ…なんて思ってしまう。
だって…自分が好きな人が自分の事を好きになってくれるって…奇跡だと思うから――

「リジー、そろそろ部屋に戻りましょうか?」 

は立ち上がると僕の方へ振り向いた。
僕はもう少し二人でいたかったけど、今日はも疲れてるだろうと思って、

「そうだね。眠いよね」 

と微笑む。
二人で厨房を見渡して、最終チェックをすると、そのままエレベーターの方へと歩いて行った。
エレベーターがの部屋の階に止まると、

「じゃ、今日はお疲れ様!ほんと楽しかった。リジーも、ゆっくり寝てね?」 

と、が優しく微笑んだ。
僕もちょっと微笑むと、

「うん。もね…!明日はお昼くらいだから少しゆっくり眠れるだろ?」 

と軽く頭を撫でる。

「うん、そうね?明日も頑張ろうっと!」
「そうだね!じゃ…おやすみ」
「おやすみなさい…。 ――映画、楽しみにしてるね!」 

と、はエレベーターから降りると、ドアが閉まる瞬間、そう言った。
僕はそれだけで嬉しくて、すぐに、「うん!僕も」 と言うと、ゆっくりとドアが閉まる。
は最後、僕に笑顔で手を振ってくれていた。
僕は嬉しさのあまり、つい、「やった!」 とエレベーター内で一人叫んだ。

早く休みにならないかなぁ…と気も早く今日、休みなのを忘れて、すっかり僕は舞い上がっていた。

(何だか明日の撮影は頑張れそうだな…)



そんな事を考えつつ自分の階(すぐ上の階だけど)につくまで僕はエレベーター内で一人ニヤケていた・…。





Postscript


やぁっと書きあがりました、リジー夢サプライズ編…^^;
随分と遅くなってしまいまして、ごめんなさい(汗)
ちょっと仲良くパーティーの用意をさせてみましたv
今回は、ちょっと他のキャラと絡むシーンが少なくて、ごめんなさい(苦笑)
でもサプライズパーティーっていいですよねvv


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...


【C-MOON...管理人:HANAZO】