Chapter.2... Bitter...Valentine's Day               I WISH YOU...




「母の日」にカーネーショーンが値上がりするのと同じく、一年に一度、バラの花が値上がりする日がある。

時は二月。


二月というと…そう!バレンタインデーだ。

僕は今、一大決心をしている。
このバレンタインデーに、に…プレゼントをする!そして自分の気持ちを伝える!

そう決心して僕は今、目の前にあるガラスの瓶を、ジーっと見つめていた。
ダイヤ型の淡いピンク色の瓶に入った香水…。
そうが愛用している、イブサン・ローランの"BABY DOLL"だ。

僕は今、オークランドの中心部、ダウンタウンにある"ディーエフエス・ギャラリア"って店の香水コーナーにいる。
この店はクィーンエリザベスⅡ世スクエアから、徒歩三分のところにあって便利なんだ。
外観がフレンチルネッサンス風でオシャレなビルだ。

僕はへのプレゼントを買うべく、今日は撮りが午後までないという事を聞いて、起きてから、コッソリと買い物へ来ていた。
もちろん、アスティンやビリー、ドムには内緒さ。
奴らが二度寝をしてるとこを、コッソリ抜け出してきた。

バレンタインは、もう明日に迫っていた。(今日時間が取れて良かったよ…)

へのプレゼントはこの香水にしようと、あの日、彼女が愛用していると聞いた時から決めていた。
本当はもっと身につける…そうアクセサリーの方がいいかな、とも思ったんだけど、
まだ付き合ってもいないのに、高価なものをあげても、に気を使わせるだけだしね。
せっかくバレンタインデーが来るというのに、この機会を逃す手はない。
オーランドというライバルまで現れた事だし!

さあ、買うぞ…。大きさはこのタイプでいいだろう。
この形が一番奇麗だ。
そこへ僕に気づいた店員が歩いて来た。

イヤ、もともと何十分も、そこに立っていたのだから気づいていたのかもしれない。
サングラスに帽子を深くかぶった怪しい格好の僕は、かなり目立ってただろう。


「Hello. May I Help you?」


その女性の店員は、その怪しい格好の僕を見ても笑顔のまま声をかけてきた。

一瞬、ドキっとしたが、僕は、さっきからすでに10分は見ていたであろう、その香水を指差し、


「I'll take this. ..........This is a present....!」と言った。


思わず贈り物で…というとこに力が入る。
その女性の店員は、「All right!」と、ニッコリ微笑んで、香水を取り出し、ギフト用に包む為に歩いて行った。

―はぁ…女性へのプレゼントを買うのに、こんな緊張した事あったかな…。
僕は知らない間に緊張していたのか、どっと汗が噴出してきた。

暫くすると、その店員は、瓶と同じ奇麗な淡いピンク色のラッピングされた箱を手にして戻ってくる。
イライジャは張り切って「How much is it?」と聞いた…。








「どこ行ってたんだよ、リジー」



俳優専用のトレーラーへと入っていくなり、アスティンが訊いてきた。

―う…もう起きてたか…。

イライジャはプレゼントを隠したお腹を見えないように横を向きながら、自分のスペースへと歩いていき、
軽い感じで、「散歩だよ。眠くなかったから…」と答えた。

「ふぅーん…めずらしいな。いつも一番遅くまで寝てるのに」とアスティンは言うと、先ほどから
読んでいた台本へと目を戻す。

イライジャは、そっと汗を拭き、さて…これを、どこへ隠そうか…と悩んだ。
そして考えたあげく、自分の荷物の中でも、きっと誰も開けないだろうと思われる、下着(!)を入れてある、
トランクのポケットに、香水の箱を入れて、上からタオルで隠す。そしてシッカリとチャックを閉めた。

よし・・!これで見付からないだろう。
あ~早く、これをに渡したいよ。 喜んでくれるかなぁ…。
イライジャは一人、ニヤニヤしそうになるのを必死でこらえていた。そこへアスティンが声をかけてくる。

「なあ、午後の撮影ってヘリで移動だってさ。凄い山の上に行くらしいよ」
「え?ヘリ?そっか…。今日はカラズラスのシーンの撮影だっけ…」
「やだなぁ…寒そうじゃん、山なんて…また足つけてくのかなぁ…」
「あー…それ考えると憂鬱だね…」

ま、がメイクしてくれるなら、その余韻で頑張れる気がするけど・…。

イライジャは心の中で、そっと呟いた…。








その日の撮影は夜までかかり、日が沈む頃にやっと終った。
各自、またヘリコプターへと乗り込み、冷えた体を毛布で温めている。

「ひゃー寒いよ…!もう雪の中に、この格好じゃなー」
「何だか、しもやけになってる気がする!」
「感覚ないよー」

とそれぞれ寒い雪山でのシーン撮りで、疲れ果てていた。

「あっちのヘリ、まだ来ないねー」とリジーは下を向いて、二機目のヘリを見た。

「またショーンが、ぐずってるんじゃないの?登る時も、本気で嫌がってたしさー」とビリーが笑う。
「ああ!ショーンの弱点見たり!って感じだね。今日のボロミアが、フロドの指輪を拾うシーン、
かなりヤバかったよ!顔が、まだ強ばってて。ま、でもあのシーンでは、あれが良かったかも」

アスティンも笑いながら言った。

ボロミア役のショーン・ビーンは高いところが苦手なのか、それとも、ただ単にヘリコプターが嫌いなのか
行く前から乗りたがらなかったのだった。
でもヘリじゃないと、とてもじゃないが撮影する場所までは行けない。
歩いて登ると二時間はかかってしまう。

そうこう言ってる内に、ヘリは山のふもとの、スタッフが待機している集計地点へと到着。
ちゃんとプロペラが止まったのを確認すると、皆一斉にヘリから飛び降りた。

「あーー!怖かった!凄い揺れるんだもん!落ちるかと思ったよぉー」

とリジーは振り向いて、皆へ声をかける。

「ああ、あの揺れは勘弁だな!飛行機より怖いよ!」

とドムが毛布をまとったまま、降りてきて答えた。

皆はすぐに車に乗り換え、近くにある休憩用のトレーラーへと戻って行く。

「あー早く風呂に入って暖まりたいよ!」ビリーが冷えた足をさすりながら叫んだ。
「明日は、何のシーンだっけ?あれ…剣の練習か?」
「ああ、そうだな。明日は剣の練習と、トロルと戦うシーンの動きの最終チェックだ。
一日、スタジオかもな。スタジオは逆に暑くていやだよ…」

アスティンが溜息まじりでグチった。
イライジャは、明日は撮影はスタジオという事で、ホっとしていた。

スタジオなら、も、すぐ近くでスタンバイしているし、時には撮影風景を見て楽しんでいる。

明日は…ずっと近くにいられる。
チャンスをうかがってプレゼントを渡せるかもしれないな…。
バラの花も買おうかと思ったが今日買ってしまうと枯れてしまうだろうし、
その前に隠す場所なんてない。
イライジャは仕方なく、バラを断念したのだった。

あー・…何て言おう。上手く伝えられるかな…

イライジャの心は、すでに明日のバレンタインデーへと飛んでいたのである・…。







「うーーん…気持ちいい朝だなーー。ニュージーランドは朝日が奇麗だ!」

一人伸びをして呟いた。

イライジャは今日も早起きをしてスタジオの駐車場にある自分用のトレーラーへと向った。
もちろん、へのプレゼントを、いつでも出せるように、どこか隠し場所を変えるため。

そこへ「おはよう!」と声をかけられた。
その声に驚いて振り向くと、そこには愛しいが笑顔で立っていた。
朝日の真ん中に見える彼女は、イライジャには天使のように見える。

ああ、今朝も奇麗だな…長くて黒い髪がキラキラ光ってるし、天使の輪が見えるから…イヤ、まさに彼女は天使だ!
などと、恋は盲目…とはよく言ったもので…朝から頭の中で春を迎えるイライジャも、

「お、おはよう!。いい朝だね!」と、ニッコリ笑って挨拶した。

「めずらしく早起きね!リジー」とクスクス笑ってはイライジャを見る。
「そ、そうかな?だって、こんなに気持ちのいい朝だからね!ニュージーランドの朝はとっても奇麗だよ。
まさにアメ―ジング!」と両手を広げておおげさに太陽の方へ向いた。

「ほんと・…!凄く奇麗よね!今日はまた特別だわ」も昇る朝日を見て感動している様子。


「今日は撮影ないのよね?剣の練習だって?」

「うん。午前中は練習で、午後からは衣装とメイクつけて、トロルシーンのリハだよ。
CG相手だから、動きをチェックするにも大変だよ。相手がいないのに戦う振りして動かなきゃいけないし!
という事で、午後は、またお世話になります」とイライジャは可愛く、お辞儀をした。

はそれを見て笑いながら、「こちらこそ!」とお辞儀をした。

「それじゃ…また…」とイライジャが名残惜しいのをこらえて歩き出そうとした。

すると―

「あ、リジー待って!」との方から呼び止めてくる。
パっと笑顔になり「ん?何だい?」と振り向いた。

「あの・…リジーって甘い物…好きかしら…?」ちょっと、はにかんだような顔でが聞いて来る。
「へ?甘い物…?チョコとか…ケーキとか?」僕は意味が分からず首をかしげた。
「うん、そうね。チョコとか…」
「大好きだよ?でも…何で?」
「え?ううん!何でもないの。じゃ、また後で!」とは、そう言うと走って行ってしまった。

ん?チョコ??何だろう?あとで、おやつでもくれるのかなぁ・…。

イライジャは意味が分からず、またも首をかしげていたが、それでも朝からに会えたので嬉しさのあまり
鼻歌交じりでトレーラーへと向ったのであった…。






カキ―ン!キーン!

金属音の触れ合う音が、練習場の中に響く。
練習場はスタジオ近くにある。室内でもアクションの練習ができるほどの広い部屋だ。

皆それぞれ自分の動きと、剣のさばき方を教わりつつ、練習していた。

「よぉーし!いいぞ!だんだん剣にキレがでてきた!あとは午後のリハで各自の動きを合わせてくれ!」

剣術指導のボブは満足そうに、皆に声をかけた。
その声に、皆は一斉に剣を下ろした。

「はぁー腕が痛いよ~」と相変わらず、へタレた声を出すドム。
「結構、剣振るのって疲れるんだね!もうあがらなくなってきたよ…」とアスティンとビリーが腕をぶんぶんと振って、ほぐしていた。

「そんなんじゃ午後のリハ、乗り越えられないぞ!」そう言いながら、まだ剣の練習をしているヴィゴ・モーテンセン。
彼は剣の達人という設定のアラゴルン役なので、さすがに入念なチェックをしている。

「ひゃー…オレもダウン、ダウン!」そこへオーランドも泣き言を言いながら、窓際まで歩いて来て座った。
練習用のタンクトップと膝までのパンツという格好だが、さすがに暑いのか、タオルで汗をふいている。

イライジャも汗を拭きながら、チラっとオーランドを見た。

彼も…プレゼントを用意してるのかな・…。そこのところが凄く気になった。―すると、いきなり…

「なあ、オレさ、弓を撃った後に、皆の方を振り向いた方がいいかな?その方がリアルっぽい?」

オーランドはタオルを首にかけながら、イライジャへ訊いてきた。

一瞬、声をかけられドキっとはしたものの、その問いかけが演技の事だと分かると、心の中で、そっと安堵し、それに答えた。

「そうだねー。オークがドアから弓を撃ってきた時に、レゴラスが反撃して…その後に、オレの方へ振り向いたらいいかもね。
フロドを守るために戦ってるんだから気遣う感じを出すといいかも」
「そうか、そうだな!じゃ、そうしようっと!午後のリハでやってみるよ」オーランドは笑顔で、そう言うと立ち上がり、
飲み物が置いてある隅のテーブルへと歩いて行った。

うーん…何だか普通だな…。向こうもオレの動き気になってるのかすら分からない…。

イライジャは、美味しそうにミネラルウォーターを飲んでいるオーランドを見ながら、あれこれ考えていた・…。









少しの休憩の後、リハが始まった。
何度も動きをチェックして、それでOKというところまで来た時には、すでに夜になっていた。

「よし!じゃあ明日は今の動きで撮るから、皆も少しチェックしておいてくれ」

PJは、そう言うとサッサとスタジオを出て行く。

皆はそれぞれ、その場にへタレこんだが、イライジャだけは足早にスタジオを出ると、駐車場にあるメイク用トレーラーへと向った。

今のうちだ!皆は暫く、スタジオで休んでるだろう。
イライジャはプレゼントを入れた小さな鞄を持って、走り出した。
そしてトレーラーへと急いで入っていく。

…!」

イライジャはドアを思い切りよく開けて声をかけた。

「あら!リジー、お疲れ様!早いのね!」はメイクを落とす道具の準備をしていた。
「うん…!疲れたから…速攻で戻ってきたんだ」と笑顔で返す。
「そうなの。皆は?まだスタジオ?」
「ああ、疲れてへタレこんでたよ。リハ、きつかったしね」イライジャは心を落ち着かせようと軽く説明した。
「そうかぁ。お疲れ様!じゃ、はい。ここに座って。早くメイク取りたいでしょう?」

は、そう言うとイライジャの方へ椅子を向けてくれる。
イライジャも、「う、うん…」と呟き、そっと深呼吸などしながらも、大人しく椅子に座った。

ああ…ヤバイ…緊張してきたぞ…!いざとなると何て言っていいか分からないよ…!

イライジャはドックンドックンとなりだした心臓の音が、に聞こえないかとヒヤヒヤする。

だが、は、それに気づかないようで、イライジャのウィッグを取りにかかるため、そっとイライジャの頭へと
手を伸ばし、慎重に肌へとくっつけている部分を外しにかかる。
オデコのあたりから外していくので、目の前にはの顔がアップで近付いて来た。

うわー…いつも以上に緊張する…!!と言うか心臓が飛び出しそう…って言葉が、今はよく分かる!
ほら、よくアニメであるじゃないか!心臓がハートの形で、ビョ―ンと前に飛び出すやつ!
今のオレは、ほんとに、あれになってるんじゃないかってくらい鼓動が早いよ…。

そんな事を考えつつも、チラっとの方へ視線を向けると、そこには真剣な顔をしたの顔。
イライジャは、ついついの、うっすらと開いた唇へと目がいってしまい、良からぬ想像のせいで、ますます鼓動が早く鳴り出し、
ギュっと目をつぶった。

―ヤバイ…!何を考えてるんだ、オレは!今は顔が真っ赤なんじゃないだろうか・…!

そんなイライジャの様子に気づいたのか、が「リジー…どうしたの?」と声をかけてきた。

「えっ?!イ、イヤ…!何でもないよ…!ちょっと…疲れたなーってだけでさ!」慌てて答えた。
「そう?もう取れるから…待っててね」とは言うと、ウィッグの横も手早く、それでも丁寧に取っていき、
イライジャの頭から外してくれた。

「はい!これでスッキリしたでしょ?」とイライジャに微笑んだ。
「あ、ありがと…スッキリしたよ…」イライジャも、ひきつった顔で何とか笑顔をつくる。

「あ!そうだ!」

いきなりが何かを思い出したのか、大きな声をあげた。

「ど、どうしたの?!」イライジャも少々、驚き問い掛ける。

「うん…あのね!リジー疲れてるみたいだから…。ちょ、ちょっと待ってね!」―は、そう言うと何やら、大きなバッグから
可愛い包みを取り出した。
イライジャも不思議そうに、それを見ていると、が笑顔で振り向き、一言言った。

「はい!ハッピーバレンタイン!」

とその包みをイライジャに差し出す。


「へ?」

何ともマヌケた返事だが・…一瞬、イライジャは固まってしまった。
その言葉の意味が分からず、目の前に差し出された、見るからにプレゼントのような包みの箱に視線がクギ付けになりながら…

え!えーーーーーーーーっ!!!!

イライジャは、その大きな目が飛び出たんじゃないかと思うほど驚いた。―イヤ、飛び出したらホラーだよ!アニメだよ!トム&ジェリーだよ!―

そんな、くだらない事が頭をめぐりつつもイライジャは、その包みの意味を考えた。

「な、な、な、・…何で?!!!!僕にくれるの?!!!」

イライジャはからプレゼントを貰えるとは思っていなかったので明らかに動揺したものの、あまりの嬉しさに椅子から、ガタンと立ち上がってしまった。

も、このイライジャの狼狽振りに驚きながらも、ニッコリ微笑んで

「だって、今日はバレンタインデーだよ?知らなかった?」と答える。

イ、イヤ…知ってるも何も…だってオレは・…君に告白しようとしてたんだから…!

そう言いそうになるが、のプレゼントの真意も、まだ聞いてないので言葉を飲み込んで落ち着いて聞いてみた。

「イヤ…知ってたよ・…。でも…何で僕に…?」 ―そこまで言うと顔から火が吹きそうなほど熱くなった。

―ああ…もしかして・…も僕の事・…!!

「え…だから・…」

が何かを言おうとした瞬間、トレーラーのドアが勢いよく開いた。

「ハーイ!ーーー!王子が戻って来たよー!」

そう叫びながら入って来たのは、なんとオーランドだった。


―げっ!!!!何で、この大事な時に!!!!!

イライジャは目の前が真っ暗になり、今まで飛び出しそうだった心臓も一気にしぼんだ気がした。


「オーリー!お疲れ様!リハ、上手くいった?」も笑顔でオーランドへ声をかけている。
「うん!バッチリ!これで明日の撮影は、レゴラスの一人舞台だね!」などと言って、そのレゴラスの格好のまま、二人の前まで歩いてくると、
「あれ?!リジー?いたの?!え?もう戻って来てたの?いないと思ってたら、いつの間に!」と驚いている。

イヤ、入って、すぐ気づけよ…!!

イライジャは心の中で叫んだ。

そ、それより…オレはの返事が聞きたいんだよー!!―イライジャはすでに泣きそうな顔。


するとオーランドが何やら手に持っていた袋を開けると、「はい!、ハッピーバレンタイン!」と言ってに、その包みを手渡した。

なっっっ!!!!!こ、こ、こ、こんな時にーーーー!!

イライジャは、またも目が飛び出るかと思うほどに驚いた!イヤ、少し出たかもしれない。

「え?これ・…私に?」とも嬉しそうに、その包みをレゴラスオーリーから受け取る。
「うん!開けてみて!」オーランドは、ワクワクしたような顔での顔を覗き込んでいる。
「わー、何だろ!」

イライジャも、そのプレゼントが何か気になって、そこは大人しく見ていた。

もワクワクしたように、そっと、その包みを開けると・…

「うわーーー!チョコ!!!日本のチョコだわ!」と喜びの声をあげた。

「エヘへ!この前、が凄く恋しいって言ってただろ?日本で売ってる「明治の板チョコが食べたい!」って。
それに日本ではバレンタインデーは、チョコをプレゼントするって聞いたからさ!探して日本のチョコを取り寄せたんだ!」

とオーランドは嬉しそうに説明している。

な、なに?チョコをプレゼント・…?!何でチョコなんだ?!
イライジャは、その意味が分からずに思わず聞いた。

「え…何でチョコなわけ?日本ではって、どういう意味?」

するとは、まだ笑顔のまま、イライジャを見て話し始めた。

「ああ、リジーは知らないのね。アメリカでは、バレンタインというと、女性、男性に関係なく、好きな相手にプレゼントをするんでしょ?
日本ではね。何故か女性が好きな男性へ告白するっていうイベントになってるの。
それも好きな相手にチョコレートを渡して。好きな相手にあげるのが、"本命チョコ"。

あと他にもあって、仕事場や、友人などにあげる、"義理チョコ"。あとは、いつもお世話になってる人へあげる"感謝チョコ"等が
あるのよ。だから日本の女性はバレンタインは大変なの!色々と付き合いでチョコを何個も買うから。
でも、その点、アメリカはいいわよねぇ。男性からでもいいんだから。しかも素敵なプレゼントを
あげるんでしょ?バラの花束と一緒に。日本なんかより、凄くロマンティックよね」

は説明してくれた…が、イライジャは、その説明に、明らかに動揺していた。

も、もしかして・…さっきがくれたのって・…と手に持っている箱を見下ろした。
すると、それにも気づいて、

「あ!それは義理じゃなくて、感謝の方だから」と、あの天使の微笑み。

ああーーー・・…!!!やっぱり・……・…!!!イライジャはガックリと頭を垂れた・…。
だから今朝、甘い物が好きか聞いてたんだ・…。

イライジャはさっきの幸せなドキドキ感が、すっかり潮がひくように消えていくのを感じていた…。

そんなイライジャの気持ちも知らぬまま、は嬉しそうにオーランドへお礼を言った。

「オーリー、ほんとに有り難う!凄く嬉しい!この明治のチョコは甘すぎないし美味しいの。
海外のチョコは、私には甘すぎて…だから凄く、このチョコ食べたかったのよ」

は本当に感激している様子。

「へへ。良かった!喜んで貰えて!ほんとはバラの花束と一緒に何かプレゼントをあげようかと思ったんだけどね?」とオーランドはウインクしている。
「え!!そんな…もったいないわ!私になんて…。他の女の子にあげてよ。私は、これで十分嬉しいから…
しかも王子様の格好でプレゼント貰えるなんて、滅多にないし…!」

も微笑みながら可愛く顔を赤らめている。

そしてオーランドにも、チョコを出して、「はい!これ、オーリーにも。いつもお世話かけてます!感謝してるわ!」と差出した。
それでもオーランドは嬉しそうに、「わお!ありがとう!嬉しいな!でも"感謝"じゃなくて、"本命"なら、もっと嬉しいのに!」
と照れもせず、ヌケヌケと言っている。

「な、何を言ってるの…オーリーったら本当に口が達者ね!」と、も恥ずかしそうに俯いて、メイクを取る道具を出し始めた。

「何でだよ!本気で言ってるのに。以外に言ってないだろ?」と、少々スネているオーランド。

それを横目に、イライジャはガックリと頭を目の前の机に垂れた。

ああ…今日はダメだ・…もう・…告白する気分じゃないや・…。

「リジー?どうした?具合でも悪いのか?」それに気づいたオーランドがイライジャの隣へ座って肩を抱いてきた。
「う~…別に…。ちょっと疲れただけだよ…」

それを聞いて、は思い出したように

「あ、そうそう!リジー疲れてるからと思って…チョコとか甘い物食べるといいのよ、頭がスッキリするから」と言った。

ああ…それで・…さっきの場面でチョコをくれたのかぁ・…。

「ん。有り難う。後で食べるね」とイライジャは力なくお礼を言って精一杯のムリをして微笑んだ。

僕のプレゼント・…どうしようかなぁ…。―イライジャが、そっとプレゼントの入っている鞄を見た。
すると、机の上に置いた拍子に中から出てきたのであろう、ピンク色の包みが見えている。
しかも、それをオーランドは目ざとく見つけ、「あれ!何?これ?」と、なんとプレゼントを鞄から取り出した。

「わ!ダ、ダメだって!」イライジャは明らかに動揺して、そのプレゼントをオーランドから取り返そうとした。
「えーーなに?なに?イブサン・…ローラン・…・?!リジー、これって香水じゃないの?」

オーランドがイライジャを見て聞いてきた。
そこまでバレて言い訳のしようもないが、イライジャは、何と答えていいか迷っていると、がそれを聞いて声をあげた。

「あ!!その包み…BABY DOLL?!」
「え?…BABY DOLLったら…がつけてる香水じゃないか。リジー、これへプレゼントかい?」
と、彼女が使ってる香水の名前までしっかりと知っていたオーランドはアッサリと言ってしまった。

「え!!!!」と、も驚いてイライジャを見る。

が、イライジャは、それを、どうしても「YES」と言えない。

「あー・…うー・…」と言葉が出てこなくなる。

二人はイライジャの答えを待ってるかのように、見つめていた。

―そ、そんな見るなよ…!だいたいオーリーが、お邪魔虫なんだってば!いなかったら…言えるのに・…!

そんな事を心で叫びつつ、二人はまだ答えを待ってるので、仕方なくイライジャは

「イヤ…僕がつけようと思ってさ・…」と言ってしまった・…!!

「え?でもこれ・・・・メンズじゃないよ?・…」オーランドも明らかに疑いの眼差し。
「い、いいんだよ!気に入ったんだから!!メンズつけようが、レディースつけようが僕の勝手だろ!!」イライジャも逆切れ。
「ああ!リジー、この前、いい匂いって誉めてくれたもんね!それで気に入ったのね!」

あげくは全く、イライジャの気持ちを気づいていない。

「そっかぁー、フフフ…じゃあ、お揃いだね!」とはイライジャにニッコリ笑いかける。

ああ…その笑顔も可愛いなぁ・…そうか!もう、この際だ、お揃いって事でいいや!イヤ…!待てよ?!あの甘い匂いを僕がさせてたら・…
皆に変態って思われるかも…!

「えーーー!ずるい!オレもお揃いにする!オレもこれ買ってくるよ!リジー、どこで買ったの?」

とオーランドは、とんちんかんな事を言い出し、イライジャは、ますます溜息が出て来る。


イヤ…いくらオーランドでも、その甘い匂いをプンプンさせてたら、皆、ひくし!!
いっその事、これオーランドにあげて、変態エルフにしてやろうか・…。

イライジャは、恨めしそうな顔をして、張り切っているオーランドへと悪魔のような視線を送っていた。これも指輪の魔力のせいかもしれない。

「でも…私も売ってるお店、聞きたいわ。私が持ってきたやつ、もうそろそろ、なくなりそうなの。
だから買いたいなって思ってたんだけど…ニュージーランドって、まだどこに何があるか分からなくて…」

そのの言葉に、イライジャは息を吹き返した・…!

「え?!そうなの?!じゃ、じゃあ、これあげる!!」とオーランドが、まだ持っていた香水の箱を奪い返し、へと差し出した。

「え…!そんな…せっかく買ってきたのに悪いわ!」と、は遠慮する。
「いいんだ!よく考えたら、オレが、この甘い匂いさせてたら、皆から、からかわれそうだし!だから是非、が使って!」

イライジャは必死。

「アハハ。そっか。皆から、からかわれるかもね。じゃあ・…ほんとに貰っても?」が嬉しそうにイライジャへ聞いて来る。

「もう!全然、貰ってくれた方がオレも嬉しいよ!はい、これ!」と、半ば強引にの手に箱を渡す。
「・…リジー、ほんとに…ありがとう」

は嬉しそうな笑顔で、イライジャに、お礼を言った。
「イ、イヤ。全然!」 ―だって、それはのために買ったんだから…―とは言えないが―

それを見ていたオーランドが、チラっとイライジャの方へ視線を向ける。
イライジャも気づいたが、今はの嬉しそうな顔に満足だったので気にならない。


―まあ…告白もできなかったけど…形はどうあれ、プレゼントが彼女の手に渡ったってだけで、オレはいいよ…。

甘いバレンタインの夜とは、ほど遠かったが、イライジャは満足だった。

告白は…また次の機会にしよう…。
今度は絶対!オーランドが近くにいない時に!イライジャは、またも、一大決心の如く、心の中で呟いた。

そこへ、やっと賑やかな声が聞こえ、ビリーやドム、アスティンなどが戻ってきた。




そして彼らにも、日本で言うところの、"感謝チョコ"を笑顔でくばるの姿、それを微笑ましそうに見つめる、イライジャ、オーランドの姿があった・…。












Postscript


あうぅぅ・…!全然、バレンタインの甘々が書けない…!
何だかリジー悲惨だし・…(苦笑)
お邪魔虫レゴラスオーリーも、手におえん・…^^;
このシリーズ、ずっと、こんなんかいな・…

甘々好きな方は御免くさい~・…
他のキャラで甘々したいと思います…!(逃亡!)

本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...


【C-MOON...管理人:HANAZO】