Chapter.3...Temperature I WISH YOU...
その日の朝、僕はいい天気で気分も良く、そしての顔が見れるのもあり、鼻歌交じりでメイク用のトレーラーへと歩いて行った。
そして勢いよくトレーラーのドアを開けて中へと入る。
そして挨拶をしようと思ったその時―
すぐに異変に気づいた。
いつもの部屋の風景の中…何かが違う。
(そう…がいない…その代わりに…オーエンとグラント…)
この二人がいてがいないなんて事、今までなかった事だった。
僕は心配になり、さりげなくオーエンに問い掛けた。
「おはよう、オーエン、グラント!…あれ?今日、は?まだ来てないの?」
するとオーエンが、少し顔を曇らせ、一言…――
「おう、リジー、おはよう。…実は…。彼女、昨夜、倒れてね…。今日は休ませてるんだ」
僕は、その言葉の意味を理解するまでに、少しの間、時間がかかった…。
―今…オーエンは、何て言った…?
倒れた……え…っ?!倒れた?!…な!なんだってぇーーーっ?!が倒れた?!!!
僕は急に胸が苦しくなり、動揺してるのを隠す余裕もないままオーエンへと聞いた。
「な、なんで?!倒れたって…どこか悪いのかい?!今どこに?!ねえ、オーエン!!」
「おいおい…。一度に沢山聞かれても、答えられないよ…」
と、オーエンは少しイライジャの迫力に圧倒されて後ずさりながら答える。
「だって!!は?!大丈夫なの?!」
それでも、まだ動揺を隠せない自分がいた。
「ああ。ただの過労だよ。少し熱が出てね…昨夜、具合が悪そうだったから、もういいよって言ったんだけど、
それでも彼女は皆のメイクを落とした後、後片付けまでして…で、その時、眩暈がしたのか倒れてしまって…。だから…」
オーエンが話し終える前に僕はトレーラーを飛び出していた。
…!夕べは…僕もに担当してもらった…!そう言えば…少し元気がなかったかもしれない…っ
それでも…彼女は僕に笑顔で、「お疲れ様」って笑ってくれた…。
Shit!何で気づかなかったんだ!!
僕はホテルへと走りながら、気づいてやれなかった自分の鈍感さを悔んだ。
途中、アスティンや、ドム、ビリーに会って「おう!リジー!どこ行くんだ?…」と声をかけられた気がしたが、答えている余裕はない。
そのまま二人の前を走り去って行った。
「お、おい!リジー?!」
アスティンは驚いて後ろから叫んだが、すでにイライジャは暴走特急の如く、ホテル内へと消えてしまう。
「な、何だ?あれ?」
「何か忘れ物でもしたのかな?」
「…の割には走るの速すぎじゃない?」
アスティン、ドムとビリーはイライジャの早朝からのオリンピック選手並みな走りっぷりに暫し、あっけにとられていた…。
そんな事にはお構いなしに僕はの部屋の前まで来ると思い切りドアをノックした。
するとすぐに少しだけドアが開き、白衣を着た女性が顔を出す。
僕は息が整わない内に彼女へ問い掛けた。
「あ、あの…か…彼女…は…大丈夫です…か?…」
いきなり全力疾走したからか息も途切れがち。
「あなた…。イライジャね?」
その白衣を着た女性が少し驚いた顔で僕を見た。
「は、はい…。あの…彼女は?」
僕は心配なあまり、挨拶するのさえ、煩わしかった。
「ああ…。今は少し安定してるわ…。あの…どうぞ?」
彼女はドアを開けて僕を中へと促す。
僕は今まで、入った事もないの部屋へ入るのに少し緊張したが心配する気持ちの方が大きかったので言われるまま中へと入って行った。
「彼女は寝室よ」
「あの…彼女に…会えますか?」
その女性は少し僕の顔を見つめ、何かを考えている様子だったが軽く溜息をつくと、
「あなたと…彼女は、どういう関係?」
「え…?!」
僕はいきなりそんな事を聞かれて焦ってしまった。
「い、いや…あの…関係って…。別に…友達…ですけど…」
「そう…。一応、女の子の寝室へ案内するんだから、そういう事は聞いておかないとね」
と、その女性が微笑む。
僕はその言葉に少し顔を赤くした。
「あ、そ、そうですよね…。やっぱり…彼女に失礼ですか?」
「そんな事はないと思うけど…。そんなに心配なら顔を見るくらいならいいわよ」
とクスクス笑っている。
「ありがとうございます…!」
僕は、お礼を言うと、すぐにの寝室のドアを静かに開け、そっと中へと入ってみた。
キィ…
中へと入ると、すぐ窓際にあるベッドが視界に飛び込んで来た。
薄暗い部屋の中、ベッドへ横たわるが見える…。
点滴の管が彼女の細い腕へと繋がっているのが分かった。
僕は後ろ手にドアを閉め、足音を立てないように静かに歩いてベッドへと近付きの顔を覗き込んだ。
少し息が苦しそうに寝息を立てている。
の色白な顔が今日は少し青ざめている。
それでも熱があるのか、頬はほんのりと赤かった。
僕はゆっくりベッドサイドへ膝をつくと、の赤い頬を手で、そっと触れてみる。
熱い…体温が高いのがすぐ分かる。熱があるのだ。
「…」
改めてルナの熱い体温を感じ、僕は心配で胸が苦しくなるのが分かった。
いつも笑顔で、辛い顔なんて見せずに頑張っていた彼女を思い出す。
(過労だなんて…。頑張りすぎだよ……)
確かに、ここ最近はずっと朝早くから、夜遅く…いや朝方まで撮影は続き、かなりハードだった。
もうすぐで第一章の旅の仲間の撮影が終るからだ。
最後の追い上げといったものだったが、大の男でさえ、根をあげるほど忙しかった。
そんな中、も必死に頑張っていた。
後半は彼女達、メイクスタッフも現場まで来て、戦闘シーンの後とかには、メイクを直したり、
沢山いるエキストラの特殊メイクを少ない人数でこなしていた。
だが、その忙しさも今日で終わるハズだったのに…。
ここに来て無理が祟ったのだろう…。は人一倍、頑張りすぎるところがあるから…。
だけど…僕は、そんな彼女を好きになったんだっけ―
そして…倒れるほど頑張ってたを、また愛しく思い、イライジャは優しくの手を握った。
「…頑張ってる君が好きだけど…こんなに無理をしないで…心配かけないでよ…」
そこへドアが静かに開き、白衣の女性が、「イライジャ…ちょっと…」と小声で僕を呼ぶのが聞こえ、
僕は慌てて握っていた手を離す。
「は、はい?」
僕が振り向くと彼女は手招きをしている。
僕は名残惜しかったが、の寝顔をチラっと見ると溜息をついて、そっと立ち上がり寝室を出た。
すると、その女性が、僕に、電話の受話器を向けて、「スタッフの方からよ?」と言った。
僕は慌てて受話器を受け取る。
「Hello?」
『やっぱり、そこにいたか…』
受話器の向こうからは溜息交じりのオーエンの声が聞こえてきた。
「あ…ごめん!ちょっと…心配だったから…あの…」
『いいって。分かってるから。それより撮影まで時間がないから心配なのは分かるが早く戻って来い。
は先生に任せて』
「う…うん…。分かった…。今戻るよ…」
『そっちへ行った時と同じように、全力疾走して戻ってこいよ!』
と、オーエンは笑いながら言ってくる。
僕は顔が真っ赤になりながら、「わ、分かったよ!じゃね!」と電話を切ってしまった。
今頃、ニヤニヤしているオーエンの顔が浮かぶようだ。
うー…ヤバイ…。が心配のあまり他の人の目なんて気にしてなかったよ…!
それに…オーエンのやつ、やっぱり"分かってるから"なんて…。
ジョンの言うように…僕って分かりやすいのかな…
イライジャは少し落ち込んだが、気を取り直し、後ろにいる先生に、「あの…すみませんでした」と声をかけた。
「いえ、いいのよ。同じ現場で働いてるんですもの。心配にもなるわよね。
彼女は少し休めば大丈夫だから、私に任せて撮影に集中して」
と、その女性はニッコリ微笑んだ。
何だか彼女にまで僕の気持ちが見透かされてるような気がして恥ずかしくなり、
「じゃ…戻ります…」
と言って、早々に部屋を出てしまった。
(ああ…オーエン達と顔を合わすの…イヤだな…)
僕は少し憂鬱になりながらも、また急いで、もと来た道を戻るべく、
今度は全力…ではなく半分の力で走って行った…(!)。
最後の撮影はラウロスのシーンだった。
ボロミアがメリーとピピンを守るため、命をかけてウルク・ハイと戦う場面。
そして、ウルク・ハイの放った矢に撃たれて、倒れ、そこへアラゴルンが来る。
アラゴルンがボロミアを抱き上げ、息を引き取るのを見守る。
そこへカメラがアラゴルン役のヴィゴのアップを撮って行く…。
「カ―――――――――――ーット!!!!!!」
突然、PJのいつも以上に大きな声が森の中へ響いた。
その瞬間に、ワァー―っと歓声が上がる。
「お疲れさん!これで"旅の仲間"の撮影は全て終った!よく頑張ってくれた!ありがとう!」
PJが興奮したように、皆へと、ねぎらいの声をかけると、またも大歓声。
そして、あちこちで抱き合う俳優陣たちの姿が見える。
たった今、息を引き取った筈のボロミア…ショーンも起き上がり、アラゴルン役のヴィゴと抱き合っていた。
ショーンの胸には、まだ矢が刺さったままなので何とも奇妙な感じだ。
「お疲れさん!」
メリー役のドムと、ピピン役のビリーも、ヴィゴ達へ声をかける。
「おっつかれぇーー!」
そこへ一際元気な声が聞こえ、オーランドが歩いて来た。
「お疲れ!オーリー!今日の見せ場、良かったよ」
ビリーが、そう言うとオーランドは嬉しそうに、
「Thank you!ちょっと弓を撃つ時の速さが微妙だったけどね」と笑う。
「でもボロミアが撃たれた時、俺、ちょっと泣きそうだったよ…」とドム。
「ああ!俺も!ウルっときそうになったし、ヤバかったよ…」とビリーも苦笑いしている。
そこへショーンが立ち上がり、「そう言ってもらえると守って死んだ甲斐があったよ」と笑いながら言った。
ショーンは、この撮影で最後となる。少し寂しそうだった。
「ところで…リジーとアスティンは…?」
とオーランドが、一向に姿を見せないイライジャとアスティンを探すようにキョロキョロとしている。
「ああ、さっき一足先に撮影終えたよ?一人で指輪捨てに行くシーンで。でもその後…見てないな…」
と、ドムも首をかしげる。
「ああ、そう言えば何だかが倒れたとかで心配そうにしてたし…もしかしたら先にホテル戻ったのかも…」
とビリーは思い出したように言った。
すると、急に、
「えっ!!!!が倒れた?!俺、聞いてないよ!!いつ?!どこで?!だから今日、見かけなかったんだ!」
と、オーランドが大きな声で騒ぎ出した。
ビリーは驚いたが、
「い、いや…俺もさっきまで知らなくて…。朝、リジーが凄い勢いでホテルへ走って行ったの見たから、
後で戻って来た時に何かあったの?って聞いたら…が倒れたから様子見てきたって言ってて…さ…」
と、言いかけ、ビリーは唖然とした…。
言い終える前に、凄い勢いで走り出したレゴラスオーリーの後姿が見えたからである…。
イライジャはビリーの予想通り、一人先にメイクを落とし、ホテルへと戻って来ていた。
撮影最後の感動に浸っている暇はなかった。
の事が心配で、最後のシーンを撮り終えた後、すぐに車へと乗りマネージャーの運転でホテルへと帰って来た。
今は早歩きでの部屋へと向っているところである。
だが、そのイライジャの後をくっついてくる、もう一人の人影…
「おい、リジー、歩くの速いよ!」
と文句を言っているのは…一緒に最後のシーンを撮り終えたアスティンだった。
僕は、その声など聞こえないかのように、足の歩みを休めないまま歩いた。
アスティンは溜息交じりで、それこそ小走り状態のまま、必死について行く。
の部屋の前まで来ると、僕は深呼吸をして、そっとノックをした。
すぐにドアは開き、今朝の白衣の女性が顔を出す。
「あら…もう撮影は終ったの?」
「はい。あの…は…?」
「ああ、だいぶ良くなってきてるわ。どうぞ?」
そう言うとドアを開けてくれる。
僕はすぐに部屋の中へと入り、「寝室へ行っても?」と先生に聞いてみる。
「ええ、どうぞ。まだ寝てるかもしれないけど…」
と先生は微笑んで答えた。
そこへ息も絶え絶え、アスティンが、やっと追いつき部屋の前まで来た。
「あら…今度はショーン・アスティンね?どうぞ?」
と笑いながら、アスティンも中へと入れる。
「あの…どうも…」
アスティンは挨拶をした。
「初めまして。私は医療スタッフのジェイミーよ」
と手を差し出され、アスティンは思わず握手するが、「え…医療スタッフ…?」と呟く。
「ええ、途中から合流してたんだけど…別に誰かがケガしたりしなければ顔を合わせないから知らなかったでしょう?」
「そ、そうなんですか。…で、はどうですか?」
「少し休めば元気になるわ。ちょっと無理が祟ったのね。ハードな撮影が続いてたようだし…」
「ええ…そりゃもう…。この何週間は地獄のように忙しかったですよ…」
とアスティンは、うんざりした顔で言った…。
イライジャはそんな二人の会話は知らず、すでに先に寝室へと入っていた。
今朝と同じように、ベッドサイドへ膝をつき、の顔を見てみる。
(ああ…朝よりは…顔色も少し良くなって来てる…。良かった…)
僕は心底ホっとしての額の汗をサイドテーブルにあったタオルで拭いてあげた。
そのテーブルには僕のあげた香水"BABY DOLL"の瓶が置いてあり、僕は思わず微笑んだ。
―嬉しいな、こういうのって…。
そして汗で濡れて頬についている長い髪を、そっと取ってあげる。
(の寝顔…初めて見ちゃった…)
今朝は余裕もなく、そこまで考えず見ていたが…冷静になってみると、少し恥ずかしくなった。
やっぱり…寝顔も可愛いや…。 ―目を閉じていると、長いまつげが、より長く見えて奇麗だった。
「早く…元気になってね…」
イライジャは、そう呟くと、の額へと軽く唇をつけた。
するとが、「う…ん…」と動いた。
イライジャは、ビクっとなり、パっと離れる。 (バ、バレなかったかな…)
僕はドキドキしながら、の顔を覗き込んだ。
その時、の瞼が動いてゆっくりと目を開けた。
「…・…ッ?」
イライジャは慌てて声をかけた。
その声が届いたのか、は薬でボーっとしているようだが、それでも、ゆっくりと視線をイライジャの方へと向ける。
「リ…ジィ…?」
力のない瞳だったが、どうやらイライジャを見分けたようだ。
「ああ、僕だよ…。大丈夫?…」
「今…何時…?撮影…は?」
やはり心配なのか撮影の事を先に聞いてくる。
僕は多少、苦笑いしながらもそれに答えた。
「もう…全て終ったよ…。さっき撮影は終了した。だから気にしないで休んで」
「そ…う…。残念…。最後…皆と一緒に…その場に…いたかったな…」
は少し寂しげに呟いた。
僕まで何だか悲しくなり、の頭をそっと撫でた。
「次の二つの塔で見届ければいいさ…。それまでには元気になってなくちゃね…」
「ん…。そう…ね。…ありがと…。リジー」
そう言うと、は少し微笑んだように見えた。
僕はそんなの顔を見て彼女の事を守りたいと…強く思った。
そして…「凄く心配したんだよ…?もう心配かけないで…」と言った。
すると彼女は少し驚いたような表情を見せる。
そこで僕はの大きな瞳を見つめてある決心をした。
「あの…僕さ…が……」
「おい、リジー。、起きた?」
…うぉい!!!
いきなりドアが開き、アスティンが入って来た…
僕はベッドの端に乗せていた肘が、ガクっとずり落ちた・…。
そんな僕に、気づきもせず、アスティンは能天気な声で、「お!、目が覚めた?大丈夫かい?」と言っている。
「ありがと・…来てくれて…。あの…撮影…参加できなくて…ごめんなさいね・・・・」
「何、言ってるんだよ!そんなの気にするなって!」
とアスティンはウインクなんぞしている。
僕は恨めしい…といった目つきでアスティンを見上げた。
そこへ、またもイライジャの頭痛のタネとなる、一際大きな声と足音が響いた。
バタバタバタバタ……ッ
バン!
「・…!!!!!大丈夫かい?!」
そこへ騒音とともに入って来たのは・…―
「オーリ・…?」
イライジャの肘が、またもガクっと、ガクっとなったのは言うまでもない・…。
「もうーー!!すっごく驚いて飛んできたよ・…!」
そう言うとオーランドは、レゴラスの格好のまま、の寝ているベッドの横へとしゃがみ、の額へ手を当てた。
僕の目の前で・…。 ―僕は無表情のまま、目を細めレゴラスオーリーを見た。
「少し熱いね…。まだ熱があるよ・…。…苦しくない?大丈夫?」
オーランドは本当に心配そうに、へ声をかけている。
「ん・…大丈夫よ…。今日は…ほんと…ごめんなさい・…」 とは少し微笑んだ。
「何言ってんの!そんなのいいからさ、オーエン達をコキつかってやるよ。はゆっくり休んで早く良くなってね」
とオーランドは、の頭を撫でながら言った。
むぅ…全く・…ほんとにオーランドもが好きなんだ・…。あの狼狽振り…初めて見たよ…。
だから、いっつも邪魔するんだな…?!さりげなく見えて、実はわざとかもしれない!
―あ…でも今日は邪魔したのはオーリーじゃなくてアスティンか・…。ああ…僕は友人に恵まれてないかもしれない…。
僕は一人心の中で涙を流していた・…
そこへ、またも大きな足音と声――
ダンダンダン・…っ
「!大丈夫か?!」 「?」
何とヴィゴとショーン・…人間組まで登場ときたもんだ。しかも、この二人まで衣装を着ていて、アラゴルン、ボロミアのまま。
「あ・…ヴィゴ・…ショーンまで・…」
も驚いて体を起こそうとした。
「ああ!寝てて!起き上がっちゃダメだよ…」
僕は慌てて、の肩を押さえた。
「そうだよ、・…。そのままでいいからね」
ヴィゴが今までに見た事もない優しい顔で声をかける。
「すみません…。何だか…皆さんに心配かけちゃって・…」
は申しわけなさそうに目を伏せた。
「何言ってるんだよ…。あのハードな撮影の中、あんなに頑張ってたんだ。体がまいるのも当たり前だよ。
僕達でさえ、きつかったからね」
と、ショーンも優しく慰める。
「あの・…。ショーン…今日で撮影…終わりじゃない…ですか・…?お疲れ様でした…」
とはショーンへ微笑みながら言った。
ショーンは苦笑いしながら、
「全く…君って人は…。ありがとう。でも、そんな事より、自分の体を心配しなきゃ…」
と言っての横まで来て頭を撫でた。
するとオーランドが、「あ!ダメだよ、ショーン!触らないでね!」と言ってショーンの手を軽く叩く。
「お前に言われたくないな・…。その手を離してから言ってくれないか?」
ショーンは、いつの間にか、しっかりの手を握っているオーランドへ呆れたように言った。
「僕はいいんだよ。王子様だからね。お姫様は王子の口付けで目覚めるって定番だし」
と、ワケの分からないセリフをはき、素早くの額へ軽くキスをした―!
(んな?!・…何してるっ?!オーリー!!!は、とっくに目が覚めてるだろう?!)
僕は驚きのあまり、後ろへよろけてしまった。
「ちょ…オーリー…!」
も顔が真っ赤だ。 すると―
「くぉら!!オーランド!」
それを見ていたヴィゴは、オーランドの首を後ろから腕で締め上げ、無理やりから引き剥がす。
「く、苦しいよ…!ヴィゴ、離せってば!」
とオーランドも必死でもがいている。
(いいぞ!ヴィゴ!さすが未来の王様だ!セクハラ王子を、そのまま離すなよ!)
僕には、そのヴィゴが、本当に救世主に見えた―!
「全く、お前はすーぐ、そうやってスキンシップするから、も困るんだぞ?そういう事は相手を見てからやれ」
「苦しい~~ぃ…!ヴィゴ~離してよ!だいたい、他の女の子になんてしたくないよ…!」
オーランドはもがきながらも、自分の気持ちを訴えている。
(オーリィ・…。それってもう告白だよね?そうだよね?)
僕はアッサリと言えるオーリーが少し羨ましくなった…。
チラっとを見ると彼女は、またいつものアメリカンジョーク(!)と思ったのか、二人のやりとりを少し微笑みながら見ている。
そこへ―
「あなたたち!もう少し静かに出来ないの?!そろそろを寝かせてあげて。彼女、病人なのよ?」
ドアの前に仁王立ちして、ジェイミーが怒鳴った。
するとヴィゴが、パっと腕を離してオーランドを開放すると真っ直ぐジェイミーの前へ行き、
「これは、すみませんでした。僕とした事が…。あなたが医療スタッフの方ですか?
こんな奇麗な方にだったら治療して貰いたいものですね」
などとキザなセリフをはいている。
しかもアラゴルンの格好なので、ますます、サマになっていた。
ジェイミーも顔を赤くしながらも、
「と、とりあえず…皆さん、もうお引き取りください。彼女は過労で休んでいるんですから、これ以上疲れさせないで」
とビシっと言った。
「そうだね!そうだよ、に早く元気になってもらわないとね!じゃ、また来るからね、ゆっくり休むんだよ?」
さっきまで首をしめられていたとは思えないほど元気な笑顔でへと声をかけるオーランド。
それにはも微笑んで、
「ん…。ありがとう。オーリー。オーリーも今までの分、いっぱい休んでね。皆さんも…」
と微笑む。
そして皆は、「じゃあ、、早く元気になってね」「また来るから」とそれぞれ声をかけて部屋から出て行く。
僕は最後に、の前へしゃがんで、「じゃ…。ゆっくり寝て早くいつもの元気なに戻ってね…」と頭を軽く撫でた。
「ありがとう…リジー。リジーも・…次の撮影まで、ゆっくり休んでね…」
と笑顔で言ってくれる。
「じゃ…」と僕が立ち上がろうとしたとき、「あ、リジー・…」とが僕を呼び止めた。
「ん?何?」
「あの・…さっき何か言いかけてたけど…」
いきなり、そう言われて僕は焦った…。
(そうだ!さっき…僕はに… "好きなんだ"と言うつもりでいたんだ…)
「え?いや…べ、別にたいしたことじゃないから…」
僕は動揺してつい、そう言ってしまった…。
「そう?なら…いいけど…」
と言いながらはニッコリすると、「じゃ、おやすみなさい…」と言った。
僕も少し微笑むと、「おやすみ・…また来るから・・」と言って、そっと部屋を出る。
そしてジェイミーに挨拶をすると廊下へと出た。
他の皆も少し前を歩きながら、談笑している。
僕は、ふと、この後のオフの事を思い出していた。
ああ…第二章の撮影に入るまで、少しの間オフがあったな…。
皆、それぞれ仕事が入ってるやつは、一度ロスやニューヨークへと行くハズだ。
僕も取材の仕事やらで、一度ニューヨークへと行く予定が入っていた。
ああ…行きたくない…。は…このオフはどうするんだろう…。オフと言っても家に戻るほどの日数はない…。
ここへ残るなら…暫く会えない事になる。
オーランドは…彼も仕事が入ってたはず…。
という事は僕の居ない間、オーリーもいないんだな…。
僕はそこだけは少し安心した…。
(僕の居ない間に、に告白されても困るからね…!)
そんな事を考えながら、イライジャは明日もを見舞おう…と決めて、一人ニヤニヤしつつ、
皆がサッサと乗り込んだのが見え、慌ててエレベーターへと走って行った…。
Postscript
ああ…!またも告白できなかったリジー…^^;
やっぱり、このシリーズ、ずっとこんなん?…(苦笑)
ドゥーしよう・…(自分で書いてるのに分からない奴。汗)
次回はちょっとNZを離れるかもですv
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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