Chapter.4...Stormyvacation
in NY.3 I WISH YOU...
「あぁー!疲れた!」
はそう言うと、スケートリンク場内にある小さなカフェの椅子へドサっと座った。
僕は笑いながら、「はい、冷たいコーヒー。あんなに叫んだんだから喉渇いたろ?」と飲み物を渡す。
「ありがとう!ほんと…喉が渇いちゃった…」
も恥ずかしそうに笑って受け取った。
「足より…何だか腕が痛いわ…」
「そりゃそうだよ。だって、凄い力で僕の手掴んで滑ってるんだもん」
僕が笑いながら言うと、も笑いつつ、
「だって離したら転びそうだったんだもの…」
と顔を赤くしている。
僕もアイスコーヒーを飲みながら、腕をさすっているを見て、そっと微笑んだ。
(ああ…これで付き合ってたら、もっと楽しいのにな…)
僕は、ふと、そんな事を考えながら軽く溜息をついた。
するとそこへ、いきなり僕の携帯の着信音が流れた。
音を大きくしたままだったので僕は慌てて相手も確めずに電話に出る。
「Hello?」
『…llo…?』
よく聞き取れない…。このカフェは大勢の人が休んでいて、ざわついているからだ
「Hello~~?!」
僕は少し大きな声を出した。
『...Hello?!リジー?』
ん?どっかで聞いたな…この声… ―僕はしばし考え込んだ。
『もしもし!リジー?!僕だよ!オーリーーーーーーーー!!!』
いきなり、バカでかい声が聞こえた。
(…げっ!!!!!!オーリー?!ヤバイ!出ちゃったよ!)
『もしもーーーーーし!!聞こえてる?!リジー!!』
僕は電波が悪いと言って切ってしまおうかと思った…。
するとにまで、オーリーのでかい声が聞こえたようで…
「え?オーリーから電話?」と驚いて声をあげている。
僕は頭が痛くなり、仕方なくオーリーへ声をかけた。
「もしもし…」 (声も自然に不機嫌になる)
『もしもし?!リジー?聞こえてる?』
「聞こえてるよ…。つか、うるさい、オーリー!いったい何の用?」
『何の用って冷たいなーーー!俺も今ニューヨークに来てるから遊んでやろうと思って電話したのにさ!』
(何?!今、なんて言った…?!オーリーが…ニューヨークに来てるってぇ~~?!!)
僕は目の前が真っ暗になった気がした…
『もしもし?リジー?今、どこさ?何だか後ろでの声が聞こえたけど?!』
(しかもの声も聞こえてるし…!!!)
「ああ、何?」
『何じゃないだろ?!この前、に電話したらメイクの勉強でニューヨークへ来てるって言ってたから、
今、のホテルまで会いに来たら外出してるって言うしさーー。
携帯にかけたら、リジーの電話ともども圏外になってたし!
どうせ二人でいるんだろ?いったい、どこに行ってたのさ!今はどこ?!』
何やら凄い剣幕だ。
さっきの日本料理店は確かに電波が悪かった。
しかも奥の席へと座ったもんだから尚更…。
「ね?リジー、オーリー何だって?何か怒鳴ってるけど?」
は心配そうに見ている。
僕はどうしたものかと考えをめぐらしていた…。
だって…ニューヨークへ来てまで、何でオーリーがいるんだ!
ストーカーか?! ―何ともひどい言いようである。
すると、が、「貸して?私が出るわ」と僕に手を出す。
「え?!そ、そう?」
僕も素直に渡してしまった。
「もしもし?オーリー?」
『あ!?!オーリーだよ!』
(いちいち名乗らなくても分かってるよ!)
その嬉しそうな声が僕にまで届き、僕は思わず心の中でツっこんだ。
「どうしたの?もう仕事終ったの?」
『うん!終って、速攻で、リジーにも電話したんだけど出ないから、すぐのホテルまで来たんだよ。
でもいないし電話も圏外だったからどうしようかと思ったよ~』
「あ~ごめんなさいね!リジーと食事して、今は近くのスケートリンク場にいるのよ」
(ああ…!!!そんなアッサリ教えちゃダメだよ…!絶対、来るって言うに決まってるんだから…!!)
『ほんと?!どこ?今から行くよ!』
案の定、嬉しそうに大声を出してるオーリーの声がイライジャの耳にまで聞こえてきた。
それを聞いたイライジャは諦めたようにガックリと頭を垂れた…。
「えっとね、ここは五番街で…近くにセントパトリック教会があるわ」
『あ!分かった!じゃ、今そっちへ向うね!タクシーで行くからすぐだよ!』
「分かったわ!待ってるね」
も笑顔で答え電話を切った。
「はい、リジー。今からオーリーも来るって」
が僕に携帯を返しながら言ってくる。
僕は一気に酔いが回った気がして虚ろな目でそれを受け取った。
「どうしたの?リジー、顔色悪いよ?もしかして酔っちゃった?」
が心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「いや…大丈夫だよ」
僕は無理に笑って答えた。
しかし…心の中では、モンスーンが僕に襲い掛かってきたかのような荒れ具合だったのは言うまでもない…。
暫くすると、あのうるさい声がカフェに響いた。
「ハーイ!お待たせ!~~会いたかったよ~~~!」
オーランドは、そう言っていきなりに抱きついた。
「何してるんだよ!だいたい待ってないってば」
僕は慌ててオーリーの腕を掴んで言った。
「何だよぉ~~。冷たいじゃないか、リジー。さっきだって電話に出なかったしさー。その後繋がらないし…」
とオーリーは恨めしそうに僕を見る。
「オーリーって分からなかっただけだよ!それに圏外なのは店の電波が悪かったの!」
僕は少し怒りながら答えた。
「ちょ…オーリー苦しいから離して…」
がオーリーの腕の中でもがきながら訴える。
「あ、ごめんね!」
その訴えでオーリーも慌てて腕を離す。
僕はそれを見て少しホっとして息を吐き出した。
「僕も滑ろうかな~!」
「オーリーもスケート、得意なの?」
「ああ、まあね!スポーツは何でも好きだしさ」
「へぇー凄いのねー」
僕は二人の会話を聞いてはいたが、すでにパワーを使い果たしたかのように疲れきっていた。
「じゃ、僕、靴借りてくるね!」
そう言うとオーリーはカウンターへと走って行った。
「リジー?大丈夫?何だか疲れた顔してるわ…」
が心配そうに聞いて来た。
「え?!全然、大丈夫だよ?まだまだ滑れるよ!」
僕は精一杯の笑顔で答える。
(二人きりで滑らせるなんて嫌だからな!)
絶対、転びそうなを、オーリーはいやらしい顔で抱きかかえるに決まってる!
イライジャは勝手に想像して、一人で怒っていた…。
「ああー楽しかった!!!少ししか滑れなかったけど久し振りだったから楽しかったよ」
オーランドは満足そうに両手をあげて伸びをしながら言った。
結局、少し滑ると、スケートリンク場の閉館時間となり、3人は外へ出てきていた。
「何だか私、明日は筋肉痛のような気がする…腕も足も痛いもの…」
が呟いた。
「そうだよねー、、必死で力入れてたからさー」
オーランドが笑う。
「あー!ひどい!オーリーまでそんな事言うのね!」
「なに?リジーにも言われたの?」
オーリーが僕をチラっと見て言った。
それは…僕がと手を繋いだんだな?というような目つきだった。
それも、そのはず。
さっきもは転んでしまって、それを見たオーリーが素早く彼女の手を取り滑り出したからだ。
はやっぱり怖いらしく必死に今度はオーリーの手に捕まって滑っていた…
それを僕は涙ながらに見ていたというわけ…。ああ…最後が、こんなオチじゃ、最悪なデートじゃないかー!
「オーリーはどこに泊ってるの?」
「俺はリッツカールトンだよ?」
「え?!僕と同じじゃん!」
「そうだよ、リジーが、そこだって言ってたから同じとこにしたんだ。ウィンザーは取れなかったからさ」
(と同じとこ、泊る気だったんかい…!!!! )―思わず心の中でツっこんだ。
「リジーも同じなのね、じゃあ途中まで一緒に帰りましょうか」
はそう言うと僕達に微笑んだ。
僕はその笑顔に見惚れていたが、ふと横のオーリーの顔を見ると…僕と同じような顔していた…!
「で?オーリーは今日はニューヨークへ何しに来たわけ?」
僕はぶっきらぼうに問い掛けた。
「俺も取材と、あとこっちのラジオの生放送に出るんだよ.。明日」
それを聞いて僕は驚いた。
「え?!ラジオ?!僕もだよ?!…まさか…同じ番組?!」
「あ、そうかもね。マネージャーが旅の仲間の一人が一緒だって言ってたから」
「えーーー!僕、聞いてないけど?!」
「じゃ、忘れてるんじゃない?アレクって物忘れ激しいじゃん、小さい連絡等は」
オーリーに言われてみると、確かにその通り…。 ―アレクのヤツ~~~!明日、覚えてろ!
「じゃ、明日は二人で、ラジオに出るのね!いっぱい宣伝しなくちゃね」
は無邪気に喜んでいる。
僕は明日もまたオーランドの顔を見なくちゃいけないのかと思うと憂鬱になってきた…。
いや、別に彼の事が嫌いとかじゃない。好きなんだけど…ライバルだからな…。
「いつまでニューヨークにいるの?」
がどちらともなく聞いてくる。
「僕は…明後日まで…かな?」
「ああ、俺もそうだよ。休みないよ、全くさぁー」
僕はそのオーリーの一言で、
こりゃーニュージーランドへ帰る時も一緒かもしれない…
と、半分ヤケクソ気味に溜息をついた。
やっとの泊ってるホテル前まで来た。
もう夜の12時過ぎだった。
「じゃ、明日のラジオ、頑張ってね!」
は僕たちに笑顔で言った。
「もちろん!、聞いててよ!俺、メッセージ言うからさ!」
「ええ!いいわよ、そんな!恥ずかしいし、それに私は昼間は学校があるもの…」
と、も苦笑いしている。
「ええぇー!聞いてくれないの?!」
「オーリィ…はニューヨークへ遊びに来たわけじゃないんだからさ…」
僕が見かねて口を挟む。
「何だよ、また、じいちゃんみたいに!」
「僕はオーリーのじいちゃんじゃないよ!だいたいオーリーより4つも若いんだからね!」
僕もデートを邪魔された恨みからか、つい言い返してしまった。
「ちょ、ちょっと二人とも…。ケンカしないでよ…」
は困った顔でうろたえている。
そんなを見るのは忍びないので僕とオーリーは顔を見合わせ口論するのはやめた。
「それじゃ…明日は仲良く映画を宣伝する事!分かった?」
いつになくが、お姉さん口調で言ってくる。
僕は素直に、「了解しました!」と、おどけて敬礼した。
それに続いてオーリーも、「了解です!」と敬礼する。
それを見て、はニッコリ笑うと、
「よろしい。…なーんてね!じゃ、おやすみなさい!」
「おやすみ、」
「おやすみー、!僕の夢を見るんだよ?」
オーリーは相変わらずアホな事を言っている。
「…見れたらね!」
もそろそろオーリーの扱い(!)に慣れてきたのか軽くかわすと僕の方をふいに見た。
「今日は、本当にご馳走様!ありがとう。凄く楽しかった」
と満面の笑みで僕に笑いかけてくれた。
僕はそれだけで胸がいっぱいになって、隣にオーリーがいる事なんて気にならなくなってしまう。
(ああ…ほんと…僕って単純だよ…)
心の中で自分に苦笑い。
「ううん、僕こそ凄く楽しかったよ!またニューヨークにいる間に時間あったら誘っていいかな?」
「うん!電話してね。そういう時は」
「えーー!俺も行く!俺も時間出来たら電話するからね?!」
「うん、オーリーも。時間出来たら、今度は一緒に食事しましょ?」
「ほんと?やったね!じゃ、無理やり時間空けてもらうよ!」
と、オーランドは、何とも無茶苦茶な事を言っている。
僕はまた溜息をついた…。 ―次回は…二人きりというわけにはいかなそうだな…
「それじゃ、気をつけて帰ってね!おやすみなさい!」
は、笑顔で手を振り、そう言うとホテルのロビーへと入っていく。
僕とオーリーも笑顔で大きく手を振り見えなくなるまで見送った。
そして彼女がエレベーターへ乗り込むのを見届けると、僕とオーリーも自然と顔を見合わせ、
「さて…俺らも帰りますか!」
「そうだね…寒いし…」
と並んで歩き出す。
一日の終わりに見るのはの笑顔だったはずなのに、何故かオーリーと並んで寒い道のりを歩いているなんて…
きっとオーリーも同じ思いだったろう…。
だって二人同時に、溜息をついて、また僕達は顔を見合わせたんだから……。
その後も僕は取材にテレビ出演と、超ハードスケジュールで、とうとうニュージーランドへ帰る日が来てしまった。
心配でオーリーのスケジュールをアレクに調べてもらったが、だいたいが僕と同じような忙しさだったので少し安心した。
結局、とはニューヨークで一日しか会えなかった。
僕はニューヨークを発つ前の晩にへ電話を入れた。
声くらい近くで聞きたかったから―
は明るい声で、 "お疲れ様!"と言ってくれた。
"私も明後日の昼には戻るわ"
そう言ってた。
次に彼女に会えるのは、またニュージーランドの明るい太陽の下だろう…。
そう思うと、一生離れ離れになるわけじゃないんだと思って、少し嬉しくなった。
好きな人と、どこへ行っても会えるという事は、こんなにも幸せな事なんだと実感していた。
僕は、この映画の撮影が、もっと長く続いてくれればいいのに…とさえ思っていた。
がニュージーランドへ戻って来たら、僕も笑顔で、"お疲れ様"と言ってあげよう…。
「おい、リジー?もうそろそろ到着するぞ?」
僕はハっとして窓の外から視線を戻し、機内放送を聞いた。
『間もなく当機は、オークランド国際空港へ到着いたします…』
「準備しとけよ?」
隣に座っているアレクが手荷物を下ろしながら僕に声をかける。
僕は、ニッコリ笑って、「ああ…分かってる。 ―やっと帰って来たな…ニュージーランド…」 と呟いた。
僕とが出会った場所…。
僕はそれだけで、この街が最高の思い出の場所になるだろう…と思いつつ、降りる準備を始めた。
因みに僕の後ろで、
「ねーリジー!このベルト、外れないよ!ちょっと…俺、降りられない!―ジェイク!これ外して!」
と大騒ぎするオーリーの声が響いてきた。
それを慌てて取ろうと頑張るオーリーのマネージャー、ジェイクの苦労に僕はそっと同情さえしていたのであった…。
Postscript
ひゃーやっとこ書き終えました~…。ちょっと長め(?)にして、NY編を書いてみましたv
どうでしたでしょうか??^^;
初めてデート(?)させてみましたが、お邪魔虫は、どこへ行こうとお邪魔虫なのでした(笑)
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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