レオナルド
今日は皆でオーリーが今、撮ってる映画の撮影現場に遊びに来た。がどうしてもジョニーに会いたいと、オーリーに頼んだからだ。
オーリーも渋々ながら、それを承諾し、が見学に行く事になった時、俺とジョシュ、リジーもついてく事にした。
その理由は、もちろん撮影が見たいわけじゃなく、が心配だったからってのが大いにある。
ロード・オブ・ザ・リングの時は、余計な虫がついてしまったからだ。(特にドム)
まあ、ジョニーがに…という事はないにしても、は彼のファンなんだから少しは心配もするってものだ。
だが俺には今、その事よりも心配な事があった。
夕べ…は遅くに帰って来た。
オーリー曰く、は帰って来たと同時に、すぐ自分の部屋に引っ込んでしまったから話も聞く暇がなかったと言っていた。
俺とジョシュは自室に篭っていたのでには会ってないが、オーリーが見た感じでは少しだけ元気がなかったようだ。
オーリーが、あの調子で、
「ライアンがに何かしたんだ!婦女暴行罪で訴えてやるぅーー!!」
と大騒ぎしていた。 (まあ、そこで俺とジョシュが殴ったのは言うまでもないが。…ったく縁起でもない)
元気がなかったと聞いて俺も、やっぱり心配だったが今朝のはいつもの通り元気に見えた。
そう見せてただけなのかもしれないが…
「ねぇ、レオ。私の服、変じゃない?大丈夫?」
「大丈夫だって。いつもの通り可愛いよ?」
服装の事を心配するの頬にキスをして、そう言えばは安心したように笑顔を見せる。
やはり憧れのジョニーに会うからか、朝から服装やら髪型を気にして大変だったのだ。
「しかし遅いな、オーリーの奴。どこまで探しに行ったんだ?」
ジョシュが溜息をつきながら出された紅茶を飲んでいる。
それにはリジーも座った椅子に凭れつつ大きく頷いた。
「ほーんと!嵐のようにいなくなって早15分?ジョニー探すのに何を手間取ってるのかな」
「どうせ途中、寄り道とかしてんだろ?」
俺が苦笑しながら煙草に火をつけると、は緊張した面持ちで俺を見上げる。
「や、やっぱり撮影前に会うのは悪いんじゃないかな…?気が散るでしょう?」
「大丈夫だよ。ジョニーは、そんな男じゃないって。俺も前に共演したから彼の性格は解ってる」
俺が、そう言っての頭を撫でると、は、そうかな…と呟いてソワソワしている。
(はぁ…そんなにジョニーが好きかよ…)
と心の中で、ぼやきたくもなる。
その時、一際うるさい声が聞こえてきた。
「お待たせぇ〜〜!やぁっとジョニー見つけてきたよ〜!」
オーリーが勢いよくドアを開け控室へと入って来て、はドキっとした顔で俺の腕をギュっと掴んだ。
ジョシュとリジーも椅子から立ち上がり、オーリーに文句を言っている。
「お前、どこ探してたんだよ?」
「隣のスタジオまで行ったんじゃないの?」
「まぁまぁ!そんな細かい事はいいからさ!はい、こちらがジョニー。あ、レオは一度共演してるから知ってるよね?」
「ああ。久し振り、ジョニー」
「よぉ。レオナルド!元気そうだな!」
ジョニーは、すでに衣装に着替えていたからか、すっかり海賊の船長になっていた。
俺に軽くハグをすると、ジョシュやリジーと握手をしている。
「やあ、初めまして!ハリソンファミリーに会えるなんて光栄だな」
「どうも。三男のジョシュです」
「初めまして、四男のイライジャです」
二人とも少し照れくさそうに挨拶をした。
そしてジョニーは笑顔でに視線を向けると、素早く手を出した。
「やあ、初めまして。君が末っ子のお姫様かな?」
ジョニーに、そう声をかけられては少し頬を紅潮させている。
「あ、あの…初めまして…。です」
「いやあ、オーランドや、他のお兄さん達が溺愛するだけあるな?映画や雑誌で見るよりも奇麗だ」
ジョニーは、そう言って何と握手をしたの手に軽く口付けた。
「ちょ、おい!ジョニー!手は出すなって言っただろ?!」
オーリーがすっ飛んできてをジョニーから引き剥がした。
は真っ赤な顔のまま固まっている。しかしジョニーは、どこ吹く風ってな顔で肩を竦めた。
「別に手を出したわけじゃない。挨拶だろう?」
「ジョニーがするといやらしくみえるんだよ!特に、その格好だとさ!」
オーリーが、とんでもなく失礼な事を言って、俺とジョシュはギョっとしたが、リジーだけは、ぷっと吹き出した。
(さすが心臓に毛が生えているだけある)
「ちょっとオーリー!失礼よ?リジーも、そんな笑って…」
が困った顔で自分を抱きしめているオーランドと、笑いをかみ殺しているリジーを睨んだ。
それにはオーリーもリジーも、
「「すみません」」
と素直に謝った。
当の本人、ジョニーだけは愉快そうに笑いながら、「別にオーランドの失礼さは今に始まった事じゃない」と言って肩をすくめた。
「む…。俺のどこが失礼なんだよ、ジョニー!」
「まあ、敷いて言えば…全部かな?」
「何だよ、それ〜!」
オーリーが口を尖らせて文句を言ったが、それを俺が静止すると、
「もう撮影始まるんだろ?俺達はスタジオの端で見学させてもらうよ」
と言った。
「ああ、そうだな。そうしてくれ。おい、オーランド、お前も着替えてメイクしてもらってこい。すぐ始まるぞ?」
「ラジャ!じゃあ、皆、適当に見学しててよ!」
オーリーは、そう言うと抱きしめていたを解放して、最後にちゃっかり頬にキスをした。
「じゃ、行ってくるね?My Little Girl!」
「うん、頑張って、オーリー」
も笑顔を見せて、オーリーの頬にキスをした。
それにはオーリーも満面の笑みで顔の筋肉が緩んでいる。
「からキスされたらパワー全開だね!」
「はいはい。解ったから行くぞ?」
ジョニーが苦笑しながらオーリーの腕を引っ張っていく。
「じゃあね〜また後でね〜!」
手をぶんぶん振りながら、オーリーは投げキッスまでしている。
俺はそれを見て不安になってきた。
「あいつ…ちゃんと演技できるのか…?」
「大丈夫だろ?一応、プロなんだし」
俺の言葉にジョシュが笑っている。
「だと、いいけどな…」
俺はちょっと笑って、まだ顔を赤くしているの手を繋いだ。
「じゃ、移動するか?」
「うん。はぁ〜やっぱりジョニーって素敵!もう今夜は眠れないわ?」
は興奮したように呟いて、俺とジョシュは顔を顰めた。
「アハハ。は本当に彼のファンだったからねぇ〜」
一人呑気に笑ってるリジーを俺は軽く睨むと、「…ごめん」と口を抑えてペロっと舌を出した。
そのまま皆でオーリーの控室からスタジオに移動すると、すでにセットが組まれていてスタッフが慌ただしく動き回っている。
「へぇ。何だか人の撮影現場って新鮮!」
リジーがそう言いながらキョロキョロしている。
すると奇麗な女の子が近寄って来た。
「こんにちは。オーリーの家族の方ですよね?」
「そうだけど…君は…?」
ジョシュが首を傾げて、その少女を見ている。
「あ、あの私、今回共演させてもらってるキーラ・ナイトレイと言います。初めまして」
「ああ、君がキ−ラ?オーリーから話は聞いてるよ」
ジョシュが、そう言って握手している。
「Hi!僕はイライジャ、宜しく。キ−ラ」
「宜しく」
「私は。宜しくね」
「こちらこそ、宜しく!」
も俺の手を離し、キーラと握手をしている。
そして最後にキーラが俺の方を見た。
「あ、あの初めまして」
「やあ、初めまして」
俺は営業用スマイルで彼女の手を掴むと軽く口付けた。
するとキーラは頬を一瞬だが赤くして、パっと手を離してしまい、ちょっと驚いた。
「レオは相変わらずだな?」
ジョシュが苦笑しながら俺の肩を叩いた。
「何がだよ?」
「奇麗な子を見ると、すーぐフェミニストになるって事だろ?」
リジーがジョシュの変わりに口を出して俺は軽く額をこずいた。
「うるさいよ、お前ら」
俺はちょっと笑いながら、そう言うと、キ−ラは赤い顔で、
「あ、あの…私も用意がありますので…また後で…」
と言って頭を下げ、最後に俺の方をチラっと見てからスタジオから出て行ってしまった。
「あ〜あ〜!レオ、またやっちゃったよ」
「ほんんとだな?罪な男…」
リジーとジョシュは、そう言いながら俺の事をつついてきた。
「はあ?何の話だよ?」
「うわ、とぼけちゃって!営業用スマイルなんて見せちゃって手にキスまでしたくセに」
「無駄だよ、リジー。ああいうのはレオは無意識でやってるんだからさ?」
ジョシュは笑いながら、そう言って、「なあ?」 との頬にキスをしている。
「何だよ、それ。酷い言いようだな…」
「だってさ、今の笑顔であれやられたら、どんな女の子も一瞬クラ〜ってくるだろ?キ−ラのレオを見る目が熱かったもんな?」
「うるさいぞ?リジー」
俺はの前で余計な事を言う二人を軽く睨んだ。
だがもクスクス笑いながら、二人の言葉に頷いている。
「ほんとね?きっとキーラもレオの嘘の笑顔にやられちゃったのかも」
「おいおい…まで、そんなこと言うわけ?傷つくよなぁ…」
「え〜?だって、ほんとの事だもの。後でキーラに釘さしておかないと!レオを好きなったら辛いわよって」
は笑いながら、そんな事を言って俺はちょっと本気で傷ついた。
ジョシュもリジーも人事だと思って笑ってるばかりだ。
「何で辛いわけ?」
俺は少しスネた口調でに聞くと、は少し考えてるように首を傾げた。
「ん〜。だってレオって誰とも本気の恋愛してないじゃない?ガールフレンドは、いっぱいいるけど…本気じゃないって言うか…」
「それは…さ…。本気になれる女がいないだけで…」
「どうして?」
が大きな瞳で見つめてきて、俺はドキっとした。
「どうしてって…。そんなの俺にも解らないよ…。ただ誘われたら断る理由もないしデートしてるだけだしね」
「ふぅん…。そんなものなの?男の人って…」
が、とんでもない事を言い出して俺は反論しようとしたが、その前にジョシュとリジーが口を挟んだ。
「、それは違うよ?世の男が皆、レオみたいに恋多き男なわけじゃないからさ?」
「そうそう。それにジョシュ、レオは、"恋多き男"はなくて、"遊びの多き男"だって」
「あ、そっか。そうそう、それ」
ジョシュも笑いながら、そう言って俺はさすがに頭に来た。
「お前ら…いい加減にしろよ?人のこと、ロクデナシみたいに…」
「だって、その通りだろ?俺、知ってるよ?レオに惚れてしまったばかりに、辛い思いして泣いてる女の子がいっぱい、いるの」
「おい、ジョシュ…」
俺は本気で焦って、ジョシュを睨むとの方を見た。
するとは頬をぷぅっと膨らませて俺を睨んでいる。
「あ、あの…?そのほっぺは可愛いけどさ…。何で俺を責めるような目で…」
「レオ、ダメよ?」
「え?」
「女の子は男の人より弱いんだから…。傷つけちゃダメ!好きになってくれた子には優しくしてあげないと」
「そ、それはさ…」
俺はに怒られて困ってしまった。
助けを求めようと、ジョシュとリジーを見るが二人とも顔を横に向けて知らん顔だ。
(おいおい二人とも…煽るだけ煽っといて無視かよ…)
俺は途方にくれて、仕方なくに謝った。
「ごめん。今度から気をつける…」
「レオは本当は優しいんだから、それをガールフレンドにも見せないとね?」
は無邪気に、そう言うと、やっと笑顔を見せてくれた。
それにはジョシュもリジーも笑いを堪えている。
ったく…後で覚えてろよ…。だいたいガールフレンドなんて言ったって俺は、そんな風に見てないし…
男より女が弱いって言うけど…俺に近寄ってくる女は皆が傲慢で弱いなんてもんじゃない。
逆に強すぎだよ…。俺が自分の思い通りにならなければ、すぐヒステリー起こすし…酷い時はストーカーまがいの事をするし…
むしろ俺の方が被害者だって気がするんだけど。へたに優しくすると、すぐに恋人気取り。
いい加減、俺だって、ウンザリするから、つい冷めた付き合いになるんだ。
それに…俺が優しいのはにだけなんだからな…
俺は、そんな事を思いつつ、撮影が始まり、それをジョシュやリジーと楽しそうに見学しているを見つめながら思い切り溜息をついた――
イライジャ
あ〜あ…レオってば解りやすい。かなり落ち込んでるな。
まあ、に怒られたら僕も、今こうして呑気に笑っているジョシュだって、目の前で真剣に演技しているオーリーだって、
あんな感じでへこむもんな、きっと。
オーリーは泣き喚くだろうし、ジョシュなんて、きっと部屋に篭って出て来なくなるに違いない。
そして僕はと言うと、ひたすら謝る事になるだろうな。
昔から、それは変わらない。
別に怒られるといったって、たいしたことじゃないんだけど…さっきのように軽く怒られただけで、それなんだから僕たち兄弟も情けない。
特にオーリーなんて、あのキャラだからをよく怒らせたりする。
は、さっき以上に怒ったりとかして、オーリーは毎回、真っ青になって生きるの死ぬのと大騒ぎになるんだ。
『僕はに嫌われたら生きていけないよぉ〜〜〜っっっ』
なんて言って最後はハニワのように魂が抜けたようになる。
そうなるとも見るに見かねて許してしまうんだから、よっぽだって解るだろ?
まあ、それぞれ落ち込み方は色々なんだけど気持ちだけ考えると、皆オーリーと同じ心中なのかもしれない。
そんな事を考えながら、ふと隣のを見ると何かを考えてる風に遠くを見ている。
撮影は中断してオーリーとジョニーは監督の指示を聞いてるようだ。
(…やっぱり夕べは何かあったのかな…聞いてみたいけど…答えてくれないだろうし)
「」
「ん?何?リジー」
「疲れた?」
「え?あ…大丈夫よ?」
はそう言って笑顔を見せた。
「そこの椅子にでも座ったら?」
「ううん、大丈夫。リジーは疲れた?夕べは遅くまで起きてたでしょう?」
「ああ…まあ…。は…?遅かっただろ?帰って来るの…」
僕はさりげなく聞いてみたが、は苦笑しながら、
「そうね、疲れたし帰って速攻でベッドに入っちゃったわ?だから結構寝たの」
と言うだけだった。
う〜ん…解らない…。もACTRESSだしなぁ…本気でとぼけられたら全然読めないよ…。
どうなんだろう…ライアンとは普通に接する事が出来てるのかな。自分を裏切った男と毎日、顔を合わせるのは辛いだろうな…
僕はちょっと煙草を吸おうと、スタジオから静かに出た。
「はぁ…スタジオ内、撮影中は、あまり話せないしきついなぁ…」
僕は廊下の奥にあった喫煙所の椅子に座り、煙草に火をつけた。
「リジー」
名前を呼ばれ、顔を上げると、が歩いて来て驚いた。
「あれ…、撮影見学は?」
「今、打ち合わせ中で中断してるし、ちょっと抜け出して来ちゃった。喉乾いちゃって」
「そっか。ああ、ここに冷たいドリンクあるよ?」
僕はそう言って、その場に設置されてる製氷機の氷をグラスへと移し、並べておいてあるコーラを入れてあげた。
「はい」
「ありがと」
は僕の隣に座ってコーラを美味しそうに飲みながら一息ついている。
「」
「ん?」
「やっぱり少し疲れてるんじゃない?」
「そう?そんな事は…」
「何だか無理してるように見えるよ?」
「リジィ…」
僕がそう言うとは驚いたような顔で、僕を見た。
「はすぐ無理するんだから…。あまり心配かけるなよ?」
そう言っての肩を抱き寄せ、額に口付けると、は僕の肩に頭を寄せて小さく頷き、「ありがと、リジィ…」と呟いた。
そこに、「我が家の姫を独り占めか?」と声が聞こえ、顔を向けると、ジョシュが歩いて来る。
「あれ、ジョシュも抜け出して来たの?」
「煙草吸いにね?」
ジョシュはマルボロの箱を持ち上げて見せる。
そしての隣の椅子に座ると、彼女の頬にチュっとキスをした。
「どうした?何だか元気ないな?」
「ジョシュまで、そんなこと言うのね?」
「え?」
の、その言葉にジョシュが顔を僕の方に向けたから、僕は肩を竦めて見せた。
「ああ、何だ。リジーにも言われたの?」
ジョシュは煙草に火をつけながら苦笑しての頭を撫でている。
「そんな元気なく見える…?」
「う〜ん…。ま、ちょっとな?心配しただけだから…気にすんな」
ジョシュは、いつもの優しい笑顔でに微笑んで、今度は額に口付けた。
僕はそれを見て苦笑いしつつ煙草を消すと自分もコーラをグラスへ移し一口飲んだ。
「あれ…?レオは?」
僕は、大体こういう時はを心配して傍にいるはずのレオが、なかなか来ないのでジョシュに聞いてみた。
するとジョシュが苦笑しながら煙を吐き出している。
「何?何か面白い事?」
「ああ、いや…それが…。さっきの…キ−ラ?って子に捕まってるよ」
「え?うそ…」
「ほんと?」
僕とは驚いてジョシュを見た。
「ああ、何だか彼女の出番がまだみたいでさ。衣装に着替えて来たんだけどレオがいつものように"奇麗だね"なんて言ったもんだから、その子も頬なんて染めちゃって…。で、そのままレオの今までの映画の感想とか話しだして…俺はアホらいしから抜けてきたんだよ」
「へぇ〜!レオ、モテるなぁ」
「ほんとね?でも、あの子ほんと奇麗だったし、もしかしたらレオも一目惚れしたのかもよ?」
が何気に言った言葉に、僕とジョシュは顔を見合わせ、同時にを見た。
「「それはないだろ?」」
仲良く声もハモったくらいにして。
「え?どうして?」
それにはもキョトンとした顔で僕とジョシュを交互に見る。
「だって…」
「…なあ?」
僕とジョシュは何となく顔を見合わせ、そう呟けば、はクスクス笑いながらコーラを飲んでいる。
「そんな解らないじゃない?レオだって今は、ちゃんとした恋人はいないし…。好きな人くらい出来るかもよ?」
「う〜ん…レオがぁ?」
「好きな人って…どうかな…」
「何で二人して、そんな顔するのよ」
「レオはさ…。特定の恋人なんて面倒くさいって言ってたし…」
僕はそう言うとは笑いながら、
「そんなの解らないじゃない。そう思ってても好きな人は出きるわ?恋するのって理屈じゃないでしょ?」
と言った。
その言葉に僕もジョシュもドキっとする。
「は…そういう事ってあったの?」
「え?」
「おいリジィ…っ」
僕は思い切って聞いてみると、はドキっとした顔で僕を見た。
ジョシュは一人焦りまくって煙草の火を手に落としたのか、
「あちっ」
と言って椅子から立ち上がっている。
僕は構わず、もう一度聞いてみた。
「は…好きな人とかいるの?」
「え…わ、私?」
「そう。だってだって凄くモテるだろ?僕の友達だってを招介しろって、うるさいのがいるしさ」
「な、何?そうなのか?」
「うるさいよ、ジョシュは…」
「ご、、ごめん」
一人、動揺してるジョシュを僕は軽く睨むとジョシュも頭をかいている。
「で?は今、好きな人いるの?」
僕は再び、を見て聞いてみた。
だがは笑いながら首を振る。
「いないわよ。好きな人がいたらオフの日に、家族で出かけてこないわ?」
「…ほんと?」
「何よ、リジー。嘘ついてどうするの?」
は肩を竦めて僕を見た。
ジョシュは後ろで何だか、ホっとした顔をしている。
「ふぅん…。そっか…」
「そういうリジーはいるの?好きな人!」
「え…?ぼ、僕?!」
「うん」
急にふられて僕は焦ったが別にいるわけじゃないので、「いないよ?そんな人は」と普通に答えた。
「ほんとぉ〜?」
「ほんと!嘘ついても仕方ないだろ?」
僕はちょっと笑ってを見ると、もくすくす笑っている。
「ねね、じゃあ、ジョシュは?いる?好きな人」
「えっ?!お、俺かよ…」
急にふられたのでジョシュも驚いている。
「俺もいないよ?好きな人なんて…」
「えぇ〜?嘘〜?」
「えぇ〜嘘〜?」
「…リジーまで真似すんな…」
「はぁい」
怖い顔で睨んでくるジョシュに僕はペロっと舌を出して肩を竦めた。
「ほんと、いないって!俺だって彼女いたら、オーリーの撮影、見学に来るわけないだろ?」
「ま、それも、そうよねぇ…」
は素直に頷いているが僕はそれを聞いて心の中で苦笑した。
いやいや…例えガールフレンドがいたって、ジョシュはが心配だとか言って絶対に来るね。間違いないっ。
だって前に彼女がいた時だって何かと、そう言ってはデートをすっぽかして彼女の怒りをかってたくらいだしさ。
ジョシュも嘘を上手くつけない人だから、すぐにバレるんだ。レオや僕みたいに上手くやればいいのにと思うんだけどさ。
オーリーは……ま、この際だ、置いておこう…(!)それにしても…レオは大丈夫なのかな?
オーリーも少しはフォローしてればいいけど…あの人が間に入ると、ろくなことがないからな…
僕は、そんな事を考えつつ、コーラを一気に飲み干した。
ジョシュ
「あ〜お腹空いた」
僕はメニューを広げて、そう呟いた。
今は撮影も休憩に入り、皆で近くのレストランへとやってきた。
ジョニーとキ-ラという子も一緒なので大勢だからと個室を取ってもらった。
僕がチラっと隣のを見ると、ジョニーも一緒だからか緊張した面持ちでメニューを見ている。
そのの反対側の隣にはオーランドが座っていて、せわしなくに話し掛けながら、
「は何食べる?俺、同じものにする」
と言って犬のようにが決めるのを待っている様子だ。目の錯覚か尻尾を振ってるように見える(!)
レオは…と言うと、その向かいに座って、これまた隣に座ったキーラに何だか話し掛けられている。
モテる男はつらいってね。
営業用スマイルも、そろそろ疲れてくるんじゃないか?
イライジャは我が道を行くタイプでジョニーの隣で色々と話を聞いている様子だ。
何を聞いてるのかと言えば、彼が経営しているライブハウスの事で、自分で音楽レーベルを作りたいリジーはいいアーティストはどうやって見分けるのかとか僕には、よく解らない話をしている。
「ねぇ、ジョシュ」
「ん?」
「どれが一番、食べやすいと思う?」
「え?」
「だって…ジョニーの前で大口開けて食べられないでしょ?」
少し恥ずかしそうに見上げてくるの顔が可愛くて思わず頬にチュっとキスをしてしまったが、
ジョニーの為に、そこまでする事ないのにと思った(!)
だが、それは口には出さず、「このドリアとかがいいんじゃないか?」と答えた。
「そうね。これなら奇麗に食べれるし」
「じゃ俺もドリアァ!シュリンプがいいな!」
が決めると、つかさずオーランドが叫んだ。
僕はちょっと苦笑しながら自分はグラタンとサラダに決めた。
他の皆も、それぞれ決めたのか注文をしている。
「あ〜お腹空いたっ。午後の撮りは体動かすから、キッチリ食べないと!」
「オーリー演技してる時は相変わらず別人よね?」
はお腹を抑えて騒いでいるオーランドを見ながらクスクス笑っている。
それには僕も心の中で頷いた。
「えぇ?そうかな?そんな変わる?」
「変わるわよ?レゴラスの時だって本当に王子様に見えたもの」
「そう、俺は王子様なんだよ?それもだけのね〜」
「何、バカなこと言ってんだ?」
そこへ我慢も限界のレオが怖い顔で口を挟んだ。
「まぁまぁ、レオはキーラと仲良く話しててよ」
「何だって?」
レオの冷たい視線にオーランドも口を手で抑えて、の影に隠れて、「怖いねえぇ、レオは」と呟いている。
キーラは何だかオーランドの言葉に反応して頬を赤くしながら俯いてしまった。
(ああ、こりゃ本気でレオに惚れたかな…やめておけばいいのに…)(!)
僕はちょっと息を吐き出し、煙草に火をつけた。
そしての方をチラっと見れば、小さく息をついてるのに気付いた。
「どうした?…。疲れた?」
「ううん。平気だってば」
は僕の言葉に、ハっとしながらも笑顔で答える。
僕は少し心配での顔を覗き込んだ。
「…もし…何か心配事とかあるなら…ちゃんと言えよ?」
「ジョシュ…」
「には、いつでも笑顔でいて欲しいからさ…」
僕はちょっと微笑んで、そう言うとも嬉しそうにニッコリと笑った。
「ん。ありがとう、ジョシュ」
「何話てんの?二人でっ」
そこにヌっと顔を出したオーランドの顔に、僕は思い切りデコピンしてやった。
「何でもないよ。うるさいぞ?オーリーは」
「ぬっ。何でデコピンなんだ?何だ、うるさいって!」
オーランドは額を抑えながら頬を脹らませている。
「そういうとこが、うるさいって言ってるのっ。ってかオーリーから離れろよ?」
「嫌だねっ」
オーランドは、そう言っての腕にしっかりとしがみついている。
は諦めたような顔で、苦笑しながら向かいのキ−ラと、おしゃべりをしだした。
「へぇ。じゃあ私達って同じ歳なのね!」
「そうね。今度一緒に共演したいわ?」
「ほんとね?」
「えぇ〜俺も共演するする〜!」
「「「うるさい、オーリー!!」」」
僕ら兄弟で、そこはピシャリと突っ込むとオーランドは、ますます頬を脹らませ、
「何だよ、皆して!俺がと共演するのが、そんなに許せないのかっ」
と、すでに共演が決まったような台詞をはいている。
も軽くそこは無視して、「あ、今度うちに遊びに来てよ」とキーラを誘っている。
僕は、それを聞いて、レオの方をチラっと見てみた。やはり、ちょっとギョっとした顔でを見ている。
でも、それに気付かず、は更に、「あ、いっそ泊りに来る?友達のサラも呼ぶわ?」なんて言って楽しそうだ。
キーラも、まんざらではない様子でチラっとレオの方を見ながら、
「そ、そうしようかな?」
なんて言って微笑んでいる。
まあ、僕としたらが楽しそうなんだから、それは良しとしても…レオは何だか困った顔で煙草を吸っている。
の友達になった子は邪険に出来ないからな。
万が一、キーラにデートとかに誘われたりしたら…そうそう冷たく断れないだろう。
僕は、その事を考えながら、ちょっとおかしくなった。だが、その後のの言葉に僕、そして他の兄貴達が固まった。
「あ、あの…ジョニーも良かったら…」
「え?俺もいいのか?」
「はい、もちろん!是非、来て下さい」
「そうかい?じゃあ、お言葉に甘えて…今度、君をデートに誘いに行こうかな?」
「「「「「えっっ?!」」」」」
何故か、うちの兄弟、全てが驚き、奇麗にハモった。
その中でだけは嬉しそうに頬を染めて、しきりに照れている。
「そんな…からかわないでください」
「いや、俺は本気だよ?」
ジョニーは優しく微笑みながら、ヌケヌケと、そんな事を言っている。
これには黙ってられないと最初に口火を切ったのは…我が家でも一番、感情を抑えられないオーランドだった…。
「何言ってるんだよ、ジョニー!!デートなんてダメだってば!」
「ん?お前には関係ないだろ?それに俺は前にちゃんのボーイフレンドに立候補しようかなと言っておいたはずだが…」
「え?」
がそれには驚いて顔を上げた。
だがオーランドは、ますます顔を赤くして怒り出す。
「ボ、ボーイフレンドなんて、ダ、ダメダメ!!は我が家の姫だよ?!アイドルだよ?!そんなジョニーの餌食になんて…」
バシンっ
「ぃて…っ」
「オーリー!失礼よっ?!」
そこはが珍しくオーランドの背中を殴って怒り出した。
「〜〜〜っ何で叩くのぉ〜〜?!」
「だ、だってオーリーが失礼なこと言うから…」
「アハハ、別に気にしてないよ?オーランドの失礼さには慣れてると言っただろ?」
「はあ…」
は気まずそうにしつつもオーランドを睨んでいる。オーランドと言えばすでに泣きそうだ。
僕は、まあ、この時ばかりはオーランドに同情した。きっとレオやリジーも同じだったろう。
言いたかった事を代わりに言ってくれたんだしな。(さすがに僕らがジョニーに文句を言えば角が立つというものだ)
まあ…な…、このジョニーも、どこまで本気なのか、よく解らない感じがするけど…。
本気でに手を出してはこないだろう。奥さんもいるという事だしな。
奥さんがいると言えば…ライアンだけど…僕はそっちの方が心配だった。
(…まさか、あの男とヨリを戻すなんて事はないよな?)
僕は、そろそろ・…その事を聞いてもいいんじゃないかと思っていた。
キーラ
(はぁ…何だか胸がいっぱいで食べられない…。こんなパスタなんて頼まなきゃ良かった…)
私はちょっと息をついてフォークを置いた。
すると隣の彼は優しく声をかけてくれる。
「キ−ラ?食欲ないの?」
「あ、あの…ちょっとお腹いっぱいで…」
「え?もう?そんなんで午後の撮影は大丈夫?」
「え、ええ…。大丈夫です」
「小食なのはと一緒だね?だから、そんな細いのかな?」
彼―レオは、そう言って、ちょっと笑っている。
その笑顔にさえ、私の胸がドキンと鳴った。
やだ…凄く顔が熱い…まさかレオナルドが、こんな素敵な人だったなんて思わなかった。
私は彼の事は、もちろん知っていた。
映画だって見ていた。
そして確かに素敵なACTORだし実力もあると思ってはいる。女性に対しては不実だと噂に聞いていたけれど。
今日だってオーリーから"家族が見学に来る"と聞いた時だって、ハリソンファミリーに会えるって、ちょっと楽しみだったくらいだ。
なのに…さっき実際に会って…彼の紳士的でスマートな姿に胸がときめいた。
噂を思い出し、いけないと思うのに、そう意識をすればするほど気になってしまう。
そして話してるうちに彼の優しさを見て、噂は嘘なんじゃないだろうかと思えてきた。
だって…こんなにも優しい笑顔の彼が、そんな酷い男であるはずないもの。
「キ−ラ?どうしたの?ボーっとして…。お腹がいっぱいで眠くなっちゃったのかな?」
レオはそう言ってクスクス笑っている。
「い、いえ…眠くはないです」
「そう? ――あ、、それ熱いから焼けどするなよ?ジョシュ、ちょっと見てやって」
レオは私と話してる間も妹さん…を気にかけて優しく言葉をかけている。
ほんと周りやオーリーから聞いたとおり、兄達には溺愛されてるらしい。
だってレオだけじゃなく、彼女の隣に座ってる三番目のお兄さんだって、さっきからの世話を焼いているし、
オーリーなんて相変わらずのスキンシップが普段よりもパワーアップしている。
それと四番目のお兄さんだってジョニーと話しながらも、さりげなく妹には手を出すなオーラをかもし出してるんだから凄い。
(彼女…愛されてるんだなあ…)
そう思うと羨ましくなった。
でも同じ歳だし仲良くなれそうな気がする。
彼女は何だかぽわんとしてて女の私でも守ってあげないとって思うような面があった。私は男みたいな性格だから尚更かもしれない。
と言っても好きな人には、めっきり弱くて今までも突っ張ってしまって結局上手くいかない事が多かったんだけど…
そんな事を思いつつ、もう一度レオをチラっと見てみると、彼は優しい瞳で、必死に熱いドリアをふーっと吹きながら食べているを見ていた。
そんな彼の横顔に、私の胸がまたドキンと鳴る。
私は、この日、彼…レオナルドに恋に落ちてしまった事に、そこで気付いた。
オーランド
「〜〜お兄ちゃんが悪かったよ〜〜っ。ごめんよ〜〜??」
僕はスタジオに戻ってからも必死にに謝った。
僕が心配してジョニーに言った言葉で、はプリプリと怒ったままだ。
おかげで僕は食欲減退。ランチのドリアも3分の2しか(!)食べられなかった…。
「もう、オーリーは何でも口に出しすぎなのよっ」
「解ってるっ。反省する!すぐ直すからっ。ね?だから許すって言っておくれ〜My Little Girl〜!」
「オーリー、いっつも、そう言うじゃない。でも直るのなんて1時間くらいよ?すぐ、また戻るんだからっ」
「うわーん、そんなこと言わないでさ?ね?ね?何でもするから許してよ〜っ」
僕が必死にに謝ってるのに、うちの愚兄と愚弟二人はケラケラと呑気に笑ったままだ。
さすがに頭にきて僕は三人をキっと睨みつけた。
「そこ!!笑ってないで何か援護射撃してくれよ!!」
「だって僕、関係ないもーん」
(ぬっ。リジーめ、いけしゃあしゃあと!)
「まあ、オーリーの考える前に口に出す性格は昔からだからな?仕方ないっちゃ仕方ないぞ、?」
(ぬぬっ。ジョシュめぇ…フォローになってないよ!)
「いっその事、その口、衣装担当さんに縫いつけてもらったらどうだ?オーリー」
(ぐぁっ。レオめぇ!それじゃあ台詞が言えないだろっつーの!)
「んっんっ!ゴホン!君たち!!俺を助ける気はあるのかな?!」
「「「あるわきゃねーだろ?」」」
「ぐぁーっ何て言い草だい、この愚兄エーンド愚弟ども!!君たちに優しさというものはないのかい?!そこに愛はあるのかい?!」
「「「ない」」」
「かーっ!感じ悪い!あ〜感じ悪い!!」
「オーリー?!」
「ぐ…っ」
僕があまりの苛立ちに地団駄を踏んでると、またに怒られた。
それが更に僕の悲しみを深くしてゆく。
「いいよ…皆してさ…どうせ俺なんて、いない方がいいんだろ…?そうだ、僕なんて味噌っかすなんだ…家族からも持て余されてる余されっ子なんだぁぁ〜っ」
やけっぱちで、そう叫ぶと皆が急にギョっとした顔で僕を見ている。
「俺は旅に出るよ…。もう家には戻らないから…皆、さよなら…俺のいない生活をエンジョイしてよ…元気でね…」
僕は呆れた顔で僕を見ているレオ、ジョシュ、リジーに、そう呟くと、最後にに、
「…と会えなくなるのは凄く辛いけど…いいんだ…を怒らせた僕が悪いのさ…。だからの前から消えるよ…に嫌われたら俺は生きていけない…。一人、雪山にでも上って遭難してやるさ…っじゃぁね……愛してるよ…」
と言って、トボトボと撮影スタジオの方に戻ろうと歩き出した。
そこに堪りかねたのかが僕を呼んだ。
「あ、あの…オーリィ…っ」
「何だい?My Little Girl!」
僕は満面の笑顔で振向き、シュタっとの前に跪いた。(何て省みの速さだ…とジョシュの呟く声が聞こえたけど、軽く無視さっ)
「も、もういいから…。そんなこと言わないで、ね?」
「ほんとに?!許してくれる?!」
「う、うん…。許すから…、それに雪山なんて上ったら風邪引いちゃうでしょ?」
「うん、そうだね!それに俺、行き方知らなかったよ!アハハっ」
「も、もう…オーリーったら…」
それにはも噴出して笑顔を見せてくれた。
僕は嬉しくて、そこでを抱きしめて頬に何度もキスをしたら後ろから何だかブツブツ抗議の声が聞こえたが、これまた無視さっ。
愛のない愚兄、愚弟なんて知るもんかい!
「おい…あの二人の会話、何だかズレてない?」
「ああ…確かに…。それに、まんまとオーリーの悪知恵にが引っかかったな…いつもの事だけど」
「ったく…オーリーも本気で家出する気もないクセに。ってか例え出てったとしたって、あいつ方向音痴だし道に迷って警察に駆け込むのがオチだろ?どうせ…」
リジー、ジョシュ、レオの三人は、こうして俺の事を影で文句言ってた訳だけど、今の僕には利かないのさ。
だってにキスの嵐を降らせたら、からも僕のほっぺにチュっとお返しのキスをしてくれたんだからね!
それを見て、僕のキュートなヒップに三つの足型がついたのは言うまでもないけど…
それが衣装だったから最悪だった。だって僕が衣装さんに怒られたんだよ?!
どうせ怒るなら、愚兄、愚弟どもに怒れってんだ!僕のヒップの足型を見てジョニーだけは爆笑していた。
そんな笑ってるけどジョニーだって、に手を出したら、これが4つジョニーのヒップにつくってこと解ってもらわないとねっ!
なんて言ったっては我が家の大切なお姫様で僕らのアイドルなんだから!親衛隊を怒らせると怖いって事さ!
なんて思いつつ、僕は痛みの残るヒップを擦りながら、午後の撮影を何とか乗り切ったのだった。