アルバム










イライジャ





「リジー、早く早く!」
「待ってよ、。そんな走ったら危ないってば!」

僕は目の前を急いで走って行くを慌てて追い掛けた。

今日はと前から約束をしていたRicky Martinのライヴだ。
サラとの待ち合わせの時間に10分過ぎてしまって、は焦って車から降りた瞬間に走り出したと言うわけ。

ったく…遅刻したのも全部、オーリーのせいだっ
今日は仕事だったクセに、夕方に一度スタジオから戻って来て時間が空いたから「俺も連れてけっ」なんて駄々こねるから…
チケットはないって言ってるのにダフ屋から買うからいいとか言っちゃって。
それなら席が離れちゃうだろって言い含めるのに大変だった。

「俺の天使を独り占めか?あぁん?!」

と今度は脅してきたから軽く蹴っておいたけどさ。
で、「今度はオーリーの分も一緒にチケットとってあげるから。今夜は我慢してね?」って優しく宥めていた。
それをジョシュは苦笑しながら見てただけ。
ジョシュも援護しろよ…と僕は思いつつ、やっとオーリーが納得したから慌てて車を飛ばしてきた。

(あ〜は約束の時間、守らないと気がすまない性質だから、あんな慌てちゃって…)

僕はが交差点のとこで赤に掴まり、イライラしながら足踏みしてるのを見て苦笑した。

。そんなイライラしないの」

僕はそう言って後ろからを抱きしめると、帽子にサングラスという格好のが頬を脹らませて振り向いた。

「だって、リジィ…。もう約束の時間が、こんな過ぎてるのに…」
「サラだって事情話せば許してくれるよ。全部オーリーのせいにしたらいい。実際、そうなんだしさ」
「でも…」
「サラも怒ってないって。あ、ほら。信号青になったよ?行こ?」
「あ、うん」

僕はの手を繋ぎ、歩き出した。
は今にも走り出しそうなくらい僕の手をぐいぐいっと引っ張っている。
僕は苦笑しながらついていくと前方にサラが手を振っているのが見えた。

、あそこにサラがいるよ?」
「あ、ほんとだ。サラ〜〜!!」

はピョコンっと飛び上がった後に、手を振って慌てて走り出した。
手を繋いでいた僕も走る羽目になる。

、リジー!こっちっ」

サラは別に怒ってる様子もなく笑顔だ。

「サラ〜〜、ごめんね?待たせちゃって…っ」

はサラに抱きついて謝っているが、サラは笑いながらの背中をポンポンと軽く叩いた。

「いいのよ。事情は電話で聞いたし。私、そこのカフェでコーヒー飲んでたから」
「ほんとにごめんね?」
「いいったら。それより中に入っちゃおう?」

サラはを離し、僕の方を見た。

「そうだね?、中に入ってから、ゆっくりしよう?」
「うん。はぁ〜何だかドキドキしてきた〜!久々にリッキー見れるのねっ」

は女の子らしく、好きなアーティストが見れると言う事で胸を抑えている。
僕はちょっと複雑な顔になりつつ、とサラの後ろからついていった。


ホールの中へ入ると、ほんと女性ばかりが目に付く。
若い感じで派手な格好の人が多い。
その中でもスパニッシュ系もチラホラを混じっていた。

「さすが。スパニッシュ系の人が多いね?」

僕が周りを見渡して、そう言えばは笑顔で頷いた。

「そうなの。前もこんな感じで。リッキーが出てくると凄いわよ?国旗なんか振り回しちゃって」
「そうそう!ノリもいいものね、あっちの人達は」

とサラは笑いながら自分たちの席を確認した。

「ここね。わぁ、かなり近いわ」
「ほんと!こんな前で見れるなんて最高〜」

その席はステージから3列目の真ん中で、ほんとに丁度いい席だった。

「へぇ。こんな、いい席だったんだ。よく取れたね?」
「ちょっとコネ使っちゃったの」

サラが笑いながら僕を見て、「開演前に時間あるし、ロビーのカフェで、お茶でも飲まない?」と言った。

「そうだね。そうしよっか」
「うん。あ、私、後でパンフレット買わなきゃ」

がウキウキしながら歩いて行く。
僕は、その後姿を見ながら軽く息をついた。

(はぁ、オーリー来なくて正解だな。が他の男にキャーキャー言ってるの見たら大騒ぎしそうだよ…)

そんな事を思いつつ、僕は二人についてカフェへと入って行った。





「ねぇ、終った後、どうする?皆で食事してく?」

が僕とサラを見て聞いてきた。
僕は、ドキっとして顔を上げた。

「いいわねぇ。じゃ、この近くに美味しいレストランがあるし、そこに行かない?スペイン料理なの」
「わぁ、行きたいわ?ね?リジー」
「あ、あのさ…。僕、ちょっと後で用事あるんだ…」
「えっ?用事って…?」

は紅茶のカップを置くと驚いた顔で僕を見た。

「あ、いや…ちょっと人と会う約束を…」

僕は気まずくて頭をかきつつ視線を反らすと、は途端にニヤっとしてくる。

「あ〜解った。最近、付き合ってる彼女でしょ?」
「え?リジー、彼女出来たの?」

の一言でサラまでが身を乗り出してくる。
僕は慌てて首を振った。

「ち、違うよ!彼女じゃないってば。ただ…」
「ただ?」
「少しだけ付き合ってくれって言われてて…。私のこと何も知らないのに振られるのは嫌だからってさ」
「へぇ、凄いわね?自信あるのかしら」

サラはクスクス笑いながらコーヒーを飲んでいる。

「で?その人と今夜、デート?」

が笑顔で聞いてきた。
僕は、またしても首を振りつつ、

「今夜ちゃんと断ってくるつもりなんだ。もう会えないって。電話でも良かったんだけど…ま、一応は会って言わないとって思ったからさ」
「ふぅん。リジー、その人のこと振っちゃうんだぁ…。何で?合わなかったの?」

は興味津々で僕の顔を見てくる。
僕はちょっと困って苦笑すると、「合わないっていうか…。好きになれなかっただけだよ?」と肩を竦めた。

「そうなの?リジーって…そう言えば、どんな人が好きなの?やっぱり年上?」
「ち、違うよ…っ。年上じゃなくたって…好きになれば…それでいいし」
「そうなんだ。ほんと我が家のお兄様たちは、いつになったら私に素敵な恋人を紹介してくれるのかな?」
「え?」

の言葉にドキっとして僕は紅茶を吹きそうになった。
ついでにサラまでドキっとしている。きっとジョシュの事を考えたのだろう。

「さ、さぁね…。皆…面倒臭がり屋だから…。ダメそうだね?」
「ほんとね?私も心配だわ?」

はクスクス笑いながら紅茶を飲んでいる。
その言葉に僕はチラっとを見て思い切って聞いてみることにした。

「あのさ、は…?」
「え?」
は…恋人とか…いらないの?」
「わ、私?」
「うん」

僕の言葉には驚いた顔をして、サラとも顔を見合わせている。
そして、ちょっと笑うと、「私は…今はいらない。皆がいるし、それに素敵な出会いなんてないもの」と言って微笑んだ。

「ほんとに?」
「え?」
「ほんとに恋人はいらない?」
「うん…、どうして?」
「いや…別に…」

僕はライアンのことだけは聞けずに、そこで言葉を切った。
は首を傾げて、「変なリジー」と笑っている。
サラは何だか微妙な顔をしていて、そのまま時計を見た。

「あ、そろそろ始まるわ?席に行こうか」
「あ、ほんとだ。始まっちゃう」

サラの言葉にも慌てて席を立った。
僕も静かに席を立ってレジで皆の分を支払い、ロビーに出ると、「リジー、ご馳走様」とサラが言ってきた。

「ううん。これくらい。チケット貰ったんだしさ」
「あ、じゃあ、もっと高いもの頼めば良かったかなぁ?」
「あ〜残念。夕飯ご馳走したかったんだけどね?」

僕が笑いながら肩を竦めると、サラも噴出した。

「そうね?まあ、用事があるなら仕方ないわ?」
「じゃ、サラ、私と二人で食事に行きましょ?」

がサラの腕に自分の腕を絡めて微笑んだ。
僕は笑いながら、「帰り、危ないからジョシュに迎えに来てもらえば?」と言った。

「あ、そうね!そうしよう!コンサート終ったらジョシュに来てもらって夕飯、ご馳走してもらおっか!」

が思いついたようにサラに、そう言えば見た目で解るほどにサラはドキっとしている。

「え?で、でも…悪いわよ…。今、オフなんでしょう?」
「うん、だからいいのよ。ジョシュも暇だって言ってたし。そのうち旅行に行くかもしれないけど…。ね?そうしよ?」
「う、うん…」

サラは何だか顔を赤くしながら視線を反らしている。
僕は、それを見ながら内心、苦笑していた。

(あ〜あ…ジョシュも罪な男。ま、ジョシュはに呼ばれれば飛んでくると思うけど…サラは緊張して食べられないかもなぁ)

僕は、そんな事を思いつつ、女性陣の後ろをゆっくり、ついて行った。












オーランド





僕は不貞腐れてソファーに寝転がった。

「何だよ…、冷たいな…」

リジーは自分だけ、ちゃっかりについていってさっ。ずるいったらないよ。
僕だって一緒にコンサート行きたかった…

「あ〜あ〜!」
「うるさい!」
「む…っ」

僕が大きく伸びをすれば、向かいに座って本を読んでいるジョシュから抗議の声が上がった。

「何だよ…。傷心な兄貴を怒鳴るなよな…っ」

体を起こして、そう言えばジョシュは本から視線を外し、ウンザリした目つきで僕を見た。

「いいから帰れよ、スタジオに…。何で、ここで寛いでんだ?」
「だって撮影、押してて、スタジオにいても暇なんだよ。始まりそうなら電話くれるって言うからさ」
「だからって抜け出してくんな…」
「いいだろぉ?別に家が近いんだから!」
「うるさいんだよ!ゆっくり読書しようと思ってたのに!」

ジョシュは、そう言うとバンと本を閉じてソファーから立ち上がった。

「どこ行くの?ジョシュ」
「部屋。オーリーがうるさくて本、読めないから」
「えぇ〜?!俺を一人にする気かい?!寂しいじゃないか、弟よ!」

僕は慌てて立ち上がってジョシュの背中にへばりついた。

「うっとぉおしい!離れろって!」
「やだよぉ〜!俺は一人が一番、絶えられないっ」
「だったらスタジオに帰れよ!ジョニーとか色々いるだろ?」

ジョシュは僕を振り落とそうとして暴れながら階段を上がっていく。

「だってぇ…ジョニーは撮影してるんだ!僕とのシーンまで、まだ時間があるんだよぉ〜〜!!」
「あっそ。だったら我慢して一人で耐え抜いてくれ」

ジョシュは最後の力を振り絞ったのか、僕の腕を離して、自分の部屋の中へ入ってしまった。
しかもガチャっと鍵をかける音が聞こえてきたのには僕も驚く。

「ぬ…っ。何も鍵かけなくたって!!」

そう叫ぶも返事はナッシン。

「くそぅ…。何て冷たい愚弟なんだ!」

僕は、そう怒鳴ると一人寂しく廊下に佇んだ。

(あ〜あ…今日は父さんもレオも仕事だしなぁ…スタジオ戻っても遊び相手も(!)いないし…)

そんな事を思いながら、僕は何故かレオの部屋へと入って行った。

「何か面白いものないかなぁ〜」

僕は勝手にレオの部屋に入って物色しはじめた。

「レオってば部屋、片付いてるなぁ…。俺と大違いだ」

僕はキョロキョロしながらレオの部屋を見渡した。かすかにレオの香水の香りが漂っている。

「レオめ…。最近は、どんな子と付き合ってるんだろ?」

サイドボードの引き出しを少し開けて中を覗きながら証拠になるブツはないかと刑事宜しく物色しはじめた。

「ん?これ…何だろ。ラブレターかな…」

僕は引き出しの奥に束になっている封筒を取り出してみる。

「愛するレオへ…。わ、ほんとにラブレターだ!」

僕はニヤリと笑って、ソファーに腰をかけると、その手紙を読んでみた。

「えっと、なになに…"愛するレオへ。あなたは今、どこで何をしてるのですか?私は、それを考えるだけで胸が締め付けられます…"…って何だか濃いな…」

僕は、その手紙を読みつつ顔を顰めた。

「レオにハマる女って何で、こんな濃厚なんだ?」

僕は首を傾げつつ、一体誰だろう?と、名前を見ると、"あなたの大ファンのエリーより"と書いてあった。

「って、ファンかよっ!!」

僕は一人で突っ込むと、その手紙の束を見てみた。

「何だぁ。これファンレターじゃん。つまらん…」

僕は溜息をついて手紙を元に戻した。

「もぉー何か悪行(!)の証拠になるものはないのか…?」

そんな事をブツブツ言いながらボードの下のドア開けてみると大きなアルバムが3つくらい仕舞ってある。

「あれ…?これ…アルバムかなぁ」

しゃがんで覗くと、その一冊を取って捲ってみた。

「うわっ。懐かしい〜!4歳くらいのレオだ。お!俺もいる.…!まだ小さくて可愛いなぁ〜」

僕は一人ニヤニヤしながら自画自賛しつつ、次々に捲ってみてみた。

「うあ〜レオってば、この頃から目つきが怖い…。やだねえ〜全く。あ、ジョシュも発〜見!!」

ジョシュは何だかブス〜っとして映っている。あ〜これは、まだリジーとがいない頃だ。
この頃は…まだレオやジョシュは、あまり笑わなかったんだったっけ。
でも、この後にリジーが来て、すぐにも来て…その頃からレオとジョシュは、よく笑うようになった。
僕は相変わらず明るかったと思うけど。よく二人にイタズラして怒られたっけ…

僕は夢中になってアルバムを見ていった。

あ〜この頃は僕が中学に入った頃だ。さすがに身長も伸びてきたなぁ。
レオは、この頃からすでに美形だし…あ、高校の女どもから、しょっちゅう電話かかってくるようになったのも、この頃だ。
ほーんとレオってば、この時から女を垂らし込むのが上手かったんだ、きっと(!)
でも…レオは学校の女の子と付き合ってたりしたけど…今と同じような感じだったっけ。
は、この時は、まだ小学校に通ってて…レオとかジョシュが帰りに迎えに行ってたし、優先だったのは今とそう変わりない。

僕は一冊目のアルバムを見終わり、次のアルバムを開いた。

「あ、これレオが二十歳になった時のお祝いのパーティ開いた時のだ。懐かしい〜!うわ、父さん、まだバリバリ若いし!エマも!うひゃ〜!あ、俺だ。この時は…俺は18歳か。男前だな、うん(!)」

僕は一人ニコニコとアルバムを見ながらブツブツが止まらない。

「あ、だ。この時は…中学生か〜。すっごい、この時から、お花のようだなぁ〜。可愛い〜!そう言えば…
よく学校の男どもからラブレターやらプレゼントなんか貰ってくるようになったのも、この頃だったっけ…。
レオと俺で、その男に家に行って、突っ返した覚えがあるぞ〜。その後に何故かにバレて俺だけ怒られたんだっけっ!
くそ、何でレオも行ったのに、俺だけ怒られるんだよ…。あの頃からレオは世渡り上手だったよなぁ…」

僕は過去を思い出し、また怒りが込みあげて来る。

「ほーんと、最悪だったよなぁ。ん?でも…このアルバム…自分のや僕等のは沢山あるけど…の写真が少ないな…何でだろ…」

僕は首を傾げながら、そのアルバムも最後まで見終わり閉じた。
そして、ふとボードの中に、もう一冊アルバムがあるのを思い出し、それにも手を伸ばす。

「わ、このアルバム、ブランドものか?」

僕は、それを手にして驚いた。そのまま捲ると更に驚いた。

「あれ…これ…」

そのアルバムを2〜3ページ一気にパラパラと捲って目を見張った。

「これ…だけのアルバムだ…」

そう、それはが家に来た歳からの彼女の写真が入っていた。
そして写真の下に何か文字が書いてある。

「"、2歳。この日初めてが僕の事を呼んでくれた。その時は本当に感動で父さんと思い切り抱き合った…。"
"、14歳。と初めて一緒に舞台を見に行った。私も女優になりたいと言い出し驚く…。"これ…凄いなぁ…。ちゃんとコメントまでついてるんだ」

僕は驚きながら、そのアルバムを見ていった。
よく親が、こんなアルバムを作るって聞いた事はあるけど…兄貴が…ってのは聞いた事がないぞ…?」

「レオって何だかの父親みたいだな…」

僕はそう呟きつつ、アルバムを眺めていった。










ジョシュ




僕は本を読み終わり静かに閉じると眉間を指で抑えてから思い切り伸びをした。

「あ〜っ、疲れた…」

そしてソファーに寝転がると、ふと時計を見てみる。

(夜の8時半…そろそろコンサートも終る頃かな…)

そんな事を思いながら体を起こした時、家の電話が鳴り、僕は部屋で取った。

「Hello?」
『あ、あのオーランドいますか?マネージャーですけど…』
「ああ、どうも。えっと…多分いると思います。あ、撮影再開ですか?」
『そうなんです。あの戻ってくるように伝えてもらえますか?』
「解りました。じゃ、そう伝えます」

そこで電話を切り、僕はふと気付いた。

(そう言えば…さっきまで、あんなにうるさかったのに今は、こんな静かだ。自分の部屋でフテ寝でもしてるのか?)

そう思いつつ部屋を出ると、一つドアが開いてる部屋がある。

(あそこは…レオの部屋だ。あれ?レオ帰ってるのか…?今日は遅いって言ってたのに…)

僕は静かにレオの部屋の方に歩いて行った。
そして開いてるドアの隙間から、そっと中を覗いてみた。
すると何やらブツブツ言っているのが聞こえてくる。

(ん…?この声は…)

その声の主が解り、溜息と共に部屋の中へそっと入って行った。
するとレオの部屋のサイドボードの前に、クリクリ毛が見え、あぐらを書いて何かを必死に見ているオーランドの姿が視界に入る。

(何だ…?オーリーの奴…何してんだ?)

そう思った僕は驚かしてやろうと、足音を忍ばせ、そっとオーリーの背後に近づいた。そして…


「こぉら!オーリー!!人の部屋で何してる?!」


「うあぁぁぁっっ!ご、ごめ…」


オーランドは案の定、大慌てで立ち上がり足元にバサっと大きなアルバムが落ちるのが見えた。

「あ!ジョシュ?!何だよ、俺、てっきりレオかと…っ」
「オーリー、何してんだよ。レオに見付かったら飛び蹴りの刑にあうぞ?」(!)
「だ、だって、あまりに暇だから…。あ、アルバム見てたんだよ、これ」

オーランドは、そう言って足元に落ちたアルバムを拾った。

「これ見て?の子供の頃から今までのを、ちゃんとアルバムに入れてあるんだ」
「え?の?」

驚いてそのアルバムを受け取り、ペラペラと捲ってみる。

「これ…」
「な?凄いだろ?これ、が見たら喜ぶんじゃない?自分の歴史みたいなもんだしさ」
「へぇ…さすがレオだな…。子供の頃に約束したの、ちゃんと覚えてるんだ」
「へ?何の約束さ?」
「オーリー覚えてないの?」
「…全く」                         
「はぁ…。あのな?父さんが昔から俺達の写真とか沢山撮ってくれてただろ?」
「うん」
「だけど、こんな風に纏めるのは父さん不精だから出来なくてさ。そしたらレオが、"じゃあ、皆のものも俺がちゃんと纏めておくから、父さんは写真だけ撮ってよ"って言ってたじゃん。大きくなってからも、が私の誕生日には毎年写真を撮って残しておいてねって約束してただろ?」
「そうだっけ…?」

オーリーは首を傾げて考えている様子だ。
僕は呆れて、そのアルバムを元に戻した。

「ほんとオーリーは鳥頭だな…」
「何だよ、それ?」
「3歩歩いたら、すぐ忘れるってことだよ」

僕が肩を竦めて部屋を出て行くと、ぶーぶー言いながらオーランドも出てきた。

「何だよ、それ!俺は鳥頭じゃないぞ?!そんな過去の事なんて覚えてる暇がないんだっ」
「あっそ。それよりマネージャーから電話来て、そろそろ戻ってこいって言ってたぞ?スタジオ戻れ」
「嘘?うわ、もう、そんな時間?!ヤバ、俺ちょっくら行ってくる!」

オーリーは慌てて階段を下りていったが、途中でコケたのか、ドドド…ゴンっっ

「っったぁ!」

という凄まじい音と声が聞こえて来て、僕は、その場でお笑いした。

「ったく…。階段は走るなよ?」

下を覗いてお尻を擦っているオーランドに、そっと呟いた。


僕は静かにレオの部屋へ戻り、もう一度アルバムを出してみる。

「うわ、小さい頃からあるなぁ…。父さん、にベッタリだったしなぁ…。あ、レオも俺もか…ついでにオーリーも…」

僕は苦笑しながらアルバムを捲っていく。小学校入学の、中学校に入学、そして卒業の時…
の歴史を纏めた、このアルバムに、父さんやレオの愛情を感じた。

(レオの奴…ほんとを愛してるって感じだな…丁寧に…大切に仕舞ってある)

僕は写真の中のの笑顔に、思わず微笑んだ。

の成長を一年一年…見守ってきたんだよなぁ、僕達は…)

そっと指で写真の中のをなぞり、アルバムを閉じた。

このまま、ずっと見守っていけたら――

そう思いながらアルバムを元に戻し、レオの部屋を出る。
その時、僕の携帯が鳴り出した。

「Hello?」
『あ、ジョシュ?』
?どうした?」

僕はからの電話に思わず笑顔になった。

『あのね、リジーがコンサートの後に、ちょっと用事があるみたいで…だから悪いんだけどジョシュ…』

の言葉に、ちょっと笑いつつ、「ああ、迎えに来いって?いいよ」と答えた。

『ありがとう、ジョシュ!夕飯、バッチリ、ご馳走しちゃうから!』
「いいよ、そんな…」
『いいから!サラと二人で、ご馳走するっ』
「はいはい。ありがと。じゃ、どこ行けばいい?」

僕は苦笑しながら、場所を聞いてみるとハイランド駅の近くだと教えてくれた。

「OK。じゃすぐ行けるな…。10分くらいだと思うし、待ってて」
『うん。じゃ、運転気をつけて来てね?』

らしい言葉に僕は少し笑みが零れた。

「ああ、じゃ後で…」

僕は、そこで電話を切ると、すぐに車のキーを取りに部屋へ戻り、ついでにキャップを被った。
そのまま車庫へ向かいながら、ふとリジーの奴、を放って、どこに行ったんだ?と疑問に思った。

あいつだって、よっぽどの事がない限り、と一緒に出かけて、を置いて行くということはしないだろうし…何か女性がらみのトラブルかな…

そんな事を思いつつ、僕は車に乗り込み、エンジンをかけた――












サラ




「ジョシュ、今、来てくれるって」
「そ、そう…」

私は、気になりつつも普通の顔で答えた。
リジーは最初に話してたとおり、コンサートが終ると、女性から電話が入り、顔を顰めつつも、そのモデルとやらに会いに行った。
私とは会場を出て駅まで歩いて来ると、がジョシュに電話してみると言い出したのだ。
私は…彼に会いたいという気持ちと、緊張するから会いたくないという気持ちの複雑な心境で、の電話を聞いていた。

「この辺にいれば、すぐジョシュの車が解るわ?」
「そうね」
「サラ?どうしたの?何だか落ちつかない顔しちゃって…」
「え?そ、そう?そんな事ないわよ?」
「そう?あ、リッキーの腰つきにやられちゃった?」

が冗談めかして私の事を肘でつついてきた。

「そ、そうね?今夜の彼も素敵だったわ?」

私が笑いながら、そう言うともウットリした顔で、「ほーんと!一度でいいから会って話してみたいなぁ…」と呟いている。
ちょっと苦笑してを見た。

「あんな素敵なお兄様達がいて、まだいい男に会いたいわけ?」
「あら。そんな皆とリッキーは違うじゃない。やっぱり異国の人だし、興味はあるわ?」
「そんなもの?」
「そうよ」

は笑いながら車の通りを眺めてジョシュの車を探している。
私は、そんなを見ながら、ふとライアンとは、どうなってるんだろうと気になり訊いてみた。

「ねぇ、
「ん?」
「その後…ライアンとは…どうなってるの?」
「え?あ、ああ…別に…」
「ちゃんと仕事出来てるの?」
「うん、まあ…でも…」
「でも?」

は少し顔を俯かせ、言葉を濁した。
そして少しだけ顔を上げると、「実は…ライアンにやり直したいって言われてるの…」と小声で呟いた。
私は驚いての方を見る。

「嘘…ほんとに?」
「うん…」
「だ、だって…リリーは?」
「離婚したいって…言われてるんだって…。リリー今は実家に戻っちゃったみたいで…電話しても出てくれないって…」
「そんな…彼女が?だって…彼女がライアンをから奪ったのよ?」

私は随分勝手な女だと腹が立った。
だがは首を振りながら私を見た。

「そうじゃないの…。リリーも苦しんでたみたい…いつライアンが私の元へ戻ってしまうかってビクビクしながら生活してたのよ…それが今度の共演が決まった時に…ライアンに彼女のとこへ戻ってって言って…家を出ていちゃったって…」
「そんな…。今さら……ライアンとよりを戻すの?」

私の問いには黙って首を振った。

「まだ…解らない。少し考えさせて貰ってるの…」
…。あなた…ライアンの事が好きなの?あんな裏切るような人を、また愛せるの?」

私はの肩を掴んで顔を覗き込んだ。
するとは顔を上げて、

「そうね…。前のようには…戻れないって私も思うわ…?きっと…。一緒にいれば、どこかぎこちなくなると思う…」
「そう思うなら…断った方が…」
「うん…。でも…ライアンの顔を見ると…どうしても昔の二人に戻ったような感覚になっちゃって…」
…。情があるのは解る。でも…情と、愛情は違うのよ?そこを間違えないで…。ね?」
「うん…、そうね…」

私の言葉に、は少しだけ笑顔を見せた。

「ちゃんと今の気持ちを考えて…返事をする」
「そうね。これ以上、皆に心配かけちゃダメよ?」
「え?皆って…?」

私はつい口を滑らせてハっとした。
はジョシュやレオ達に、ライアンの事はバレてないと思っているのだ。

「あ、だから…が元気ないと…きっとジョシュ達が心配するでしょ?だから…」
「ああ、そうね…。皆、ほんと心配性だから」

は気付かなかったようで、そう言って笑っている。
その時、「あ、ジョシュの車だわ!」が、そう叫んで少し道路に出ると大きく手を振っている。
私はジョシュの車のライトが見えてドキっとした。


「お待たせ。乗って?」


ジョシュは車を近くに寄せると、下りてきてドアを開けてくれた。

「ありがと、ジョシュ!」

は、そう言ってジョシュの頬にキスをした後に助手席へと乗り込んだ。
私はジョシュにドアを開けてもらった後ろのドアから中へと乗り込む。

「ありがとう…」
「いいえっ」

ジョシュは、そう言って微笑むとドアをバンと閉めてくれた。

「さて…どこの店に行くのかな?」

ジョシュは運転席へ戻ってくるとエンジンをかけながら、聞いてきた。

「あ、あのね。今夜はサラが知ってるスペイン料理の店なの。ジョシュ、スペイン料理は好き?」
「ああ、好きだよ?場所は?サラ、その店どこらへん?」
「え…え?!」

突然、ジョシュが振り向いたので私はドキっとした。

「どうした?ボーとしちゃって。あ、コンサートの余韻に浸ってた?」
「あ、あの…そ、そうなの。ごめんね?」

私は何とか笑いながら誤魔化すと、「えっと、この交差点を右に入って、中道を左に曲ると、すぐよ?」とレストランへの道を説明した。

「へぇ、近いんだ。OK.」

ジョシュは、すぐに車を出して、私の教えた通り車を走らせる。

、コンサート、どうだった?」
「うん、もう凄い素敵だったわ〜〜!リッキー少し髪を切ってて男っぽくなってたし。ね?サラ」
「え?ああ、そうね?」

私はそう答えつつ、ジョシュの複雑そうな顔を見て、ちょっと微笑んだ。

が他の男性を誉めるのが気に入らないって顔ね。
でも他の、お兄さん達もそうだし…ほんと過保護なんだから。

そう思いながら、まだリッキーの事を延々と誉めつづけるの話を苦笑しながら聞いてるジョシュの横顔を見ていた。











レオナルド





「ただいま」

俺は少し疲れ気味で家に帰るなり、自分の部屋へ行き、ベッドに倒れこんだ。
今日の長い撮りに寝不足も重なり、かなり疲れていた。

「はぁ…」

思い切り溜息をつき、寝返りを打つ。
時計を見れば夜の11時過ぎ…朝方3時に家を出て今までビッチリと撮影だった。
疲れるのも当然と言えば当然だろう。

(家の中が静かだな…誰もいないのか…?)

俺は、そんな事を思いながら目を瞑った。そこへノックの音が聞こえてハっとする。

「レオ?帰ってるの?」

エマの声だった。
俺は重たい体を起こして、ドアを開けに行った。

「あ、レオ。何だか声がしたと思って…。夕飯は?」
「う〜ん…少し食べようかなぁ…。今日、あまり食事する時間もなかったし…」
「そう?じゃ、すぐ用意する。ここに運ぶ?」
「ああ、いいよ。今、着替えてから下に下りる」
「解ったわ」

エマはニッコリ微笑んで、下へ下りて行った。
俺はドアを閉めて、バスルームへ行くと軽くシャワーを浴びた。そして部屋着に着替える。

「あ〜少しスッキリした…」

俺は髪をバスタオルで拭きながら、ソファーへと座った。
煙草に火をつけようとライターを探していると、ふとサイドボードの辺りに目が行く。

(ん…?何で、ここの扉が開いてるんだ…?)

俺は咥えた煙草をテーブルに置くと立ち上がってボードの前にしゃがんだ。
少しだけ隙間が出来ていて、俺はそっと扉を開けると中を確めるも、別に変わった様子もない。

(俺、昨日、ちゃんと閉めなかったのかな…?)

そんな事を思いつつ、アルバムに目が行き、それを手に取った。
ゆっくり捲っていくと、の幼い日の笑顔と目が合う。

これをアルバムに纏め出したのは、いつ頃からだったかな…
父さんが自分で撮った写真を、こうしてアルバムに入れる事なく、ただ無造作に机の引出しに仕舞ってるのを見つけた俺が
呆れて変わりに、こうしてアルバムを作ると言い出したんだったっけ。
も年頃になって来た時、後で見て思い出したいから私の写真、一年ごとに仕舞っておいてねと言われて俺が纏めておくよと約束をした。
その時、オーリーも、俺もの写真、集める!と言い張ってたが、あのオーリーができる訳がないと却下されてたんだ。
だいたいアイドルの写真じゃないんだから集めて、どうするんだ…。

俺はちょっと笑顔になりながら、昨年のの誕生日に撮った写真を眺めていた。

この頃は…まだ元気がなかったな…あいつと別れて…少し引きずってたから。…今、あいつと顔を合わせて平気なんだろうか。

俺は写真の中のの寂しそうな笑顔を見ながら少しだけ胸が痛くなった。
そっと閉じて、また元に戻すと、煙草を手に下へと降りて行く。キッチンからシチューのいい匂いがしてきた。

「あ、レオ。今、サラダも作ってるから、ちょっと待ってて?」
「ああ、急がないでいいよ?紅茶でも飲んでるから」

俺は、そう言って手早く紅茶を入れるとリビングに行ってテレビをつけた。
何か音がないと眠ってしまいそうだからだ。
面白くもない番組を見ながら、俺は煙草に火をつけ、ソファーのシートにもたれかかった。

今日は誰もいないんだな…
ああ、そっか。は今日、サラとコンサートだ。
それにリジーも行くって言ってたっけ。オーリーは…まだ仕事かな。
ってジョシュは…どうしたんだろう。あいつ、オフだし出かけたか…?

俺は目を瞑って、そんな事を考えていると、玄関の方で音がした。

「ただいまぁ…」

あ、リジーだ。
何だ、あいつ…疲れきった声出して…コンサートで踊り捲ったわけじゃないよな…

そんな想像して一人苦笑してると、リビングにリジーが項垂れて入ってきた。

「よぉ、お帰り。リジー」
「あれ?レオ…帰って来てた…?」
「ああ、ついさっき。もうハードで死にそう…」

俺は肩を竦めると紅茶を飲んだ。
するとリジーは目の前のソファーにドサっと座って思い切り溜息をついている。

「何だよ、そんな顔して。は?一緒だったんだろ?」
「ああ、とはコンサート後に別れたんだ。ジョシュが迎えに行ってると思うし心配いらないよ?」
「へぇ。何で?リジーどこ行ってたんだ?そんな疲れた顔して」
「それがさぁ…頼まれて一応、付き合ってた子に、やっぱり君とは付き合えないって言うのに会ってたんだ。僕も明日から仕事だし、もう会う時間すら取りたくないからさ。今日を指定して。だけど…」

リジーがそこで言葉を切って、また息をついている。
それを見ながら俺はちょっと苦笑した。

「何だ?ヒステリーでも起こされたか?」
「うん…。えっ?何で解るの?」

リジーは驚いたように顔を上げて俺を見た。

「何でって…そりゃ解るよ…。女なんて、そんなもんだろ?冷静に"はい、そうですか"って素直に頷いてくれる子なんて少ないって」

俺は苦笑しながら、そう言えば、リジーは感心したように頷いている。

「へえー。さすがレオ。伊達に色々と手をつけてないね?」
「まぁな、っておい!人聞きの悪い!」
「だって本当のことだろ?」
「うるさいなぁ、リジーは。で?最後は解ってもらえたのか?」

俺は煙草を灰皿に押しつぶし、リジーを見た。
するとリジーが顔を顰めながら小さく頷く。

「まあ…どうにかね…でも大変だったよ…。最初カフェで話してたんだけど泣き出すしさぁ…仕方ないから送るって言って車に乗せて暫くは、そこで宥めたよ?
彼女の家の前で2時間…。すんごい長く感じたよ…私を弄んだの?って、よく言うよって感じでさ?
僕は最初の方で断ってんのに私の事をよく知ってからにしてって言うから少しだけ会ってたんだよ?
それで何度か会ってみて、好きになれないって思ったから今日、そう言ってるのにさぁ…っ。ふざけんなって感じだよっ」

リジーは相当、参ってるのか、プリプリと怒りながらソファーに寝転がっている。
俺は、ちょっと笑いながら、

「今度からは少しでいいから付き合ってって言う女には気をつけるんだな?たいがい別れ際にモメるからさ」

と言って紅茶を飲んだ。
そこへエマが顔を出す。

「あら、話し声が聞こえたと思えば、リジーも帰ってたのね。お帰り」
「あ、エマ〜〜。僕何も食べてないんだ。何か食べるものある?」
「あるわよ?ちょうどレオのも用意してたから、すぐできるわ?」
「やったっ。食べる、食べる!」

リジーも体を起こし、ダイニングへと向かう。

「あら?は?」
「ああ、ならサラとジョシュとで食事してくると思うよ?」
「そうなの?途中で別れたの?」
「まあ.…」

エマに聞かれてリジーは顔を顰めると、エマも何だか苦笑して、

「まあ、いいわ。じゃ、座って?」

と言ってリジーの分も食事を用意している。
俺も椅子に座り、エマの出してくれた夕飯を食べ始めた。

「ああ、コンサート、どうだった?」

俺は思い出して訊いてみた。
すると、リジーはやっと笑顔になる。

「まあ楽しかったよ?ラテンもいいよねー。あれだけ踊れたら気持いいだろうなぁ。もサラもかなり盛り上がってたよ?」
「そうか。じゃ、また明日からリッキーってうるさいかもな?」

俺はちょっと笑ってシチューを食べた。

「あ〜もう会場出た辺りで凄かったし、きっと凄いと思うよ?今頃ジョシュに聞かせてるんじゃないか?」
「アハハ。災難だな、ジョシュも」

そう言って笑ってると、玄関の方で大きな声が聞こえて来て俺とリジーは顔を見合わせた。

「ただいまぁ〜〜〜!!エマーお腹空いたよぉーー」

「「オーリーだ…」」

二人で奇麗にハモり、苦笑してると、ドタドタを足音が聞こえてダイニングに歩く拡声器みたいなオーリーが飛び込んで来た。

「ただいま!あ〜いい匂い!」
「うるさいぞ?もっと静かに入って来れないのか?」
「まあまあ!レオ!疲れて帰って来た可愛い弟を労う気持はないのかい?!」
「ないね」
「む…っ」

俺が即答するとオーリーは、いつもの如く口を尖らせた。
そこへエマがリジーとオーリーの分も食事の用意をして入ってくる。

「はい、リジー。オーリーも。すぐ声で解ったわ?」
「ありがとう、エマ」
「わーい、サンキュ!エマ」

二人は出された夕飯を嬉しそうに食べ始めた。

「あれれ〜?リジィ…は?一緒だったんだろ?」
「ああ、途中で僕は用事が出来たから別れたんだ。ジョシュが迎えに行ってる。そろそろ帰ってくるんじゃない?」
「ふぅーん。そっか。コンサートは?楽しかった?」
「まあね」
「いいなぁー。俺も行きたかったよっ」

オーリーは少しフテくされた口調で言いながら美味しそうにシチューを口にしている。

「ん、美味しい!疲れた体に染みるねぇ〜っ」

オーリーは一人テンションの高いまま、食事をしている。
俺は、どこが疲れてるのか、凄く謎だった…。


「ご馳走様」
「あれ?レオ、もう食べちゃったの?」
「ああ…今日は疲れたから、もう寝るよ。お休み」

俺がそう言ってダイニングから出ようとすると、オーリーが驚いたように叫んだ。

「えぇ?、帰って来るまで起きてないの?珍しい〜!」
「うるさいなぁ…。ジョシュが一緒なんだから安心だろ?オーリーが一緒だったら心配で起きてるけどな?」
「な、何だよっ。何で俺が一緒だと心配なんだ!」

オーリーはそう叫んでいたが俺はオーリーと言い合う元気さえなく、そのまま無視してダイニングを出た。
玄関ホールまで行った、その時、外から話し声が聞こえてドアが開くとが笑顔で入ってきた。

「ただいま〜。あ、レオ!」
「お帰り、

嬉しそうに飛びついてきたを抱きしめて、頬にキスをした。

「あれ?レオ」
「ああ、ジョシュ。お帰り」
「ただいま。どうした?疲れてるね?」

ジョシュは中へ入って来て俺の肩をポンと叩いた。

「ああ、ちょっとハードだったからさ。もう寝るよ」
「えぇ?レオ、もう寝ちゃうの〜?」

そういうを見て俺は苦笑した。

「おい、。酔ってるな?」
「うん、ちょっとっ」

は笑いながら俺の腕を組んでくる。
俺は笑いながら、「おい、ジョシュ。に何を飲ませたんだ?」と聞いた。

「俺は何も飲ませてないよ?がサラと二人でテキーラ飲んだだけ」

ジョシュはそう言って肩を竦めた。

「テキーラ?大丈夫か?」

俺は心配になり、の顔を覗き込んだ。

「うん、大丈夫!ちょっと眠いけど」
「あ〜なら早くシャワー入って寝ろよ?明日から、また撮影だろ?」
「うん。そうしようかな?じゃ、ジョシュ、ありがとねっ」
「ああ、おやすみ」

ジョシュもの頬にキスをして微笑んだ。
も嬉しそうに微笑むとフラフラしつつ階段を上がっていく。

「あ〜あ〜危ないなぁ…」

俺は苦笑しながらを支えて階段を上がって行った。
ジョシュは肩を竦めてリビングに入っていく。

「おい、。あまり飲みすぎるなって言っただろ?」
「うん…ごめんなさい。凄く楽しかったの」
「サラは?大丈夫だった?」
「うん、ちゃんと家まで送って来たよ?」
「そっっか。ま、ジョシュがいたんだし、そりゃテンションも上がって飲みすぎるか…」
「え?何?」
「ああ、何でもないよ」

俺はにニッコリ微笑んで誤魔化した。

を部屋まで連れて行くと、一度ソファーに座らせた。

「大丈夫?」
「う〜ん…」

は目を擦りながら頷いている。
俺は仕方なくの部屋の冷蔵庫からミネラルウォーターを出してに渡した。

「ほら、水。少し飲んで?」
「あ、ありがと、レオ…」

は家に付いて安心したのか少し酔いがまわってきた様だ。

「ん〜冷たくて美味しい…」

はゴクゴクと水を飲むと軽く息を吐き出す。
俺は隣に腰をかけての顔を覗き込んだ。

「明日の撮影、大丈夫か?」
「ん…大丈夫…」
「起きれるか?」
「ん…起きれ…る」

はソファーに凭れかかって半分眠りの中に入ってるようだ。

「おい、…。早くシャワー入って来いって。ここで寝ちゃうぞ?」
「ん…解っ….」

その後の声が続かない。見れば目を瞑り、コクリコクリとしている。
俺はちょっと笑っての肩を抱き寄せ、頭にキスをした。

「ったく…。飲みすぎだぞ…?」

そう言って優しく抱きしめた。

また…明日から、あのライアンと仕事をさせなければならない。

その事を考えると少しだけ憂鬱になる。

…あまり…無理するなよ…」

俺は、そう呟いて静かに目を閉じた。
の寝息を聞いていると、俺まで疲れも手伝って眠気に襲われる。
少しづつ体の力が抜けて、の頭に頬を寄せた。

そこから眠りにつくには、そう時間もかからなかった。
浅い眠りの中で見た夢は、小さな頃のと一緒に昼寝をしてる夢だった。
俺は何だか幸せな気分だったのを覚えている。

だが、その一時間後…にお休みのキスをしにきたオーランドの、うるさい声で起こされた。

最悪の目覚めだった…。













ちょっとだけ久々の家族夢U本編ですv
私の大好きなRicky Martinネタで…(笑)
彼のコンサートは本当に凄いの一言!
かなり踊り捲るので汗だくです(笑)
あのラテンのノリで私は壊れます〜v
Rickyの腰つきが、ほんと絶妙だね(笑)
私、彼の曲は大好きだけど本人には興味なかったんですよ。
でも本物見てクラ〜っと一発でやられちゃいました(笑)
今回は久々にサラ登場。
そろそろハリソンやドムも登場させたいなぁ…
意味不明な話で申し訳ない^^;
テンション低いとテンション低い話しか書けず…(涙)