The present of holy night...〜クリスマス、ハリソン家は大騒ぎ〜前編












【23 days.Morning】







オーランド




12月も半ばを過ぎ、もう直ぐクリスマスという日の、ある朝…またしても台風が僕の静かな眠りを妨げた…




プルルルル……プルルルルル……プルルルルル…




「ぅ〜ん……っさい…」

何だか耳障りな音が響いて僕は意識を取り戻した途端、顔を顰めた。
モソモソと布団の中から這い出て、くっついてる目を擦りながら時計を見れば、何と朝の7時…
夕べは夜中の2時までやリジーと映画を見ていた僕には起きてはいけない時間だ。

「…だよぉ……。誰だい、こんな朝っぱらから…っっ」




プルルルル…プルルルル…




文句を言った所で一向に鳴り止みそうにない電話に僕は仕方なく手を伸ばした。

(マネージャーからかな…?今日のオフがスケジュール変更になって今から迎えに行くなんて言わないよな…?)

そんな不安を覚えつつ、まずは、うるさい音を止めたくて僕は通話ボタンを押した。

「Hello........?」
『遅いよ!!』
「……ぬっ?!」

電話に出た途端、いきなり怒鳴られ僕は受話器を耳から離した。

「うるさいなぁ…。朝からかけてくるからだろ?誰だよ!」

あまりに頭に来て、そう怒鳴ると、相手は思い切り溜息をついている。

(この生意気な溜息のつき方は…っっ)



『僕だよ。いい加減、声で気付けば?』


「…!……ぬぉっ!やっぱり、お前か、ダン……っ!!」



奴の声で一気に覚醒した僕はガバっと体を起こしてベッドに仁王立ちした。(かっこいいぞ、俺)




「……さむっ!」




だが、あまりに寒くて、直ぐに布団をかぶる。

『…相変わらずのテンションだね…。目、覚めた?』
「うぬぬ…またしても、こんな朝から…何の用だ!」
『僕がオーリーに電話するんだから用は一つしかないだろ?』
「はぁ?!どういう意味だよっ」
『クリスマス前に、そっちに行くから皆に伝えておいてってこと』
「は…はあ?!お、お前クリスマスに来るの?!」
『うん。仕事もあるし、それにクリスマスは、やっぱと一緒に過ごしたいだろ?』
「な…ヌケヌケと、よくも…!」
『ま、オーリーが、どう思おうと関係ないけど、ハリソン叔父さんからはOK貰ってるからさ。その辺よろしく』
「ま、また勝手に…!」
『あ、そろそろ飛行機に乗らないと。じゃ、ちゃんとにも言っておいてよ?じゃぁね!』
「え?!おい、飛行機って、もしかして今から来る気か?ダン…っっ」



プツ…ツーツーツー…



そこで電話が切れて空しい音が響いてきた。

「な、何なんだよ!」

僕は電話を投げ捨て、思い切り髪を掻き毟った。

またしても、あの台風の目のような従兄弟がやってくる…しかもクリスマスというアメリカでの大イベントの日に…!!
そ、それじゃあ、またを独り占めされてしまうじゃないかぁーーーーっっ!

僕は前回の仕打ちを思い出し、思い切り嫌な気分になった。

(くそぅ……ダンの奴、クリスマスはと過ごす気で来るんだな?!仕事なんて口実に違いない!)

「ぬー何か作戦を練っておかないと…っ。皆はアテにならないし…」

あれこれ寝ぼけた頭をめぐらせたが、そこで大きな欠伸が出て涙目になった。


「もうちょっと寝てからにしよう………」


僕は、そう呟いてまた布団にモソモソと潜り込むと、体を丸くして蓑虫の如く丸くなったのだった…












<<23 days.Daytime>>







イライジャ





「ふあぁぁ…」

特大の欠伸をして僕はリビングに入って行った。
するとジョシュがソファーで紅茶を飲んでいる。

「おはよ、リジー。眠そうだな?」
「おはよぉ…。もぅ、夕べ夜更かしして映画見てたからさ…」

そう言ってソファーに座ると、また欠伸が出た。

「あぁ…。そう言えば見てたよな?俺は眠くて先に寝ちゃったけど」
「うん…。が見たいって言ってたDVD、オーリーが買って来てさ…」
「そのオーリーは、まだ寝てるけど…。リジーは仕事?」
「うん。今日は雑誌のインタビューだけなんだけど時間が早くてさぁ……」
「そっか。ま、大変だな?」

ジョシュは苦笑しながら煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を吸い込んだ。

「ジョシュは?こんな早くに起きて、どこか行くの?」
「午後から出かけるんだ。クリスマスも近いしさ。何かと忙しいだろ?」
「ああ、そっか。そうだねぇ…って何?デートで忙しいの?」
「バカ。んなわけないだろ?彼女もいないのにさ」

ジョシュは、そんな事を言って苦笑いをうかべると、「クリスマスパーティの準備とか…プレゼントの用意だよ」と肩を竦めた。

「あ、そっか…!最近、忙しくて忘れてた!どうする?ツリーとかは、いつものとこで注文するんだろ?」
「ああ。レオが手配するんじゃないか?」
「だね。あの人、その辺は抜かりないから。でもさ、今年は招待する人も多いんじゃない?」
「だろうな…。どうせオーリーがヴィゴとか呼ぶだろ?ついでにドムも」

ジョシュは徐に嫌な顔をして僕を見た。それには僕も苦笑せざるを得ない。

「まあ……クリスマスだし許してやってよ。ドムは僕が何とか抑えるからさ」
「ああ、頼むよ。あ、リジー、今年ののプレゼント、もう決めた?」
「まだだよ。忙しくて考えてはいたんだけど、気付けば今日って感じ」
「そっかぁ…。また皆に聞いて回らないと被ったら困るからな。レオとオーリー、早く起きてこないかな…」

ジョシュはそう言って煙草を消すと紅茶を一口飲んだ。

「今年は…何にするかなぁ…。去年はカシミアのショールあげたんだけど」
「ああ、そうだったね。僕は相変わらず、CDやDVDのセットだったけど。今年はどうしようかなぁ」

毎年、クリスマスになると、僕らはへのプレゼントで頭を悩ませる。
家族にプレゼントというのも今ではにだけあげるようになっていた。
大体男同士でプレゼント交換なんて変だしね。
でも家族一人一人がにだけは何かしらプレゼントを買うのだ。

「レオは、どうせ貴金属類とかドレスだろ?」
「だと思うよ?が前に欲しいって言ってたディオールの新作ドレスかも…靴までつけて」

僕がそう言って笑うと、ジョシュも笑いながら頷いている。

「オーランドは…何だろうな…。あいつだけは予測がつかないよ」
「去年は、アレだろ?兎の耳つきコート!」
「ああ、真っ白なやつな?あれには驚いたよ…。どっから見つけてきたんだ?ってさ」

ジョシュは思い出したのか噴出してソファーに寝転がった。

そう…去年、オーリーは真っ白なコートをに贈った。
でもってフードには白い耳がついていて凄く驚いたけど、これがまたに、とても似合っていて可愛かったんだ。
オーリーは目がハートになって、

「やっぱり思ったとおりだ!すんごーく可愛いよ!It is wonderful!Very Beautiful...! My Little Girl〜〜!」

なんて大騒ぎして抱きついて大変だったっけ。今年はいったい、どんなものを考えているんだろう?

そこへ、うるさい足音が聞こえて来てリビングに当の本人が飛び込んで来た。




ドタドタドタドタ……ッ バン…!!





「大変だよおぉ〜〜!」
「「うるっさいっっ!!」」
「む…っ」

僕とジョシュ、同時に怒鳴られ、オーリーは口を尖らせた。

「何だよ、何だよ、二人して!」
「朝から、うるさいんだよ…。何が大変なんだ…?」

ジョシュが顔を顰めながらオーリーを見る。
するとオーリーはジョシュに抱きつくように隣に座った。

「ま、また来るんだよ…っ!」
「誰が…?」
「だ、だから、あいつが!」
「あいつ……?」
「そう!ダニエルが!!!」
「「え?ダンが?」」

その言葉に僕とジョシュは顔を上げると、オーリーは鼻息をふんっと噴いて何だか怒っている様子だ。

「ダンが来るって…いつさ?」
「よ、よりによってクリスマスに来るって言うんだ!!」
「「へぇ〜。いんじゃない?」」

僕とジョシュは、また奇麗にハモると、オーリーが目をむいた。

「良くないっっ!!ダンはとクリスマスを過ごす為に来るって言うんだよ?!」

バン!っとテーブルを叩いて鼻の穴を大きくしている二男に、僕とジョシュは顔を見合わせ思い切り溜息をついた。

「どうせパーティやるんだ。それに時々しか来ないんだし、それくらい許してやれよ」
「そうだよ。それにオーリーはダンのこと何だか前から敵視してるけどさ。まだ子供なのに何を、そんなに警戒してるわけ?」

ジョシュと僕が、そう言えばオーリーは、ますます鼻の穴を大きくしてしまった。

「け、警戒って言うか…俺は、ただが心配なだけだよっ」
「心配することか?どうせオーリーはダンの事が個人的に気に入らないだけだろ?」
「…ぐっ」

ジョシュが呆れたように言った一言で、オーリーも言葉に詰まっている。大方、図星なんだろう。

「もう、いいよ!ほんと皆はダンに騙されてるんだからさっ」

オーリーはそう言ってリビングを出て、また二階に行ってしまったようだ。
それには僕もジョシュも肩を竦めた。

「何なんだ?全く…オーリーの思考は理解不能だ…」
「ほんとだね…。それにだってダンのことは弟としてしか見てないんだしさぁ」
「ま、でもダンはのこと、女性として見てるんだろうけどな」
「あ、ジョシュも分かってた?」
「そりゃあ…オーリーが大騒ぎする前から分かってたよ。でも、そのうち他に彼女でも作るだろ?まだ15歳なんだしさ」
「まぁねぇ…。初恋ってだけだと思うけど。オーリーってば過剰に心配しすぎなんだよね」

そんな事を言って笑っていると上の廊下からかすかに、「ヘックション!」とクシャミをする声が聞こえて来て思い切り爆笑してしまった。












レオナルド





「ん………?」

(何だ?今の…?誰かがクシャミをしたような…)

少しだけ意識がはっきりしてきて俺はゆっくりと目を開けた。
暫しボーっとしていたが、何だか遠くでオーランドの叫び声が聞こえる気がする。

「ったく…朝から、うるさいったら……」

俺は欠伸をしながら体を起こすと時計を見た。

「何だ…昼か…」

(そろそろ起きるかな…)

少し体を解してからベッドを降りると、寝室を出た。
部屋のソファーに座り、煙草に火をつけ、ゆっくり煙を吸い込むと頭がクラっとする。

「あ〜夕べは飲みすぎたな……」

久々に仲間と飲みに行って帰って来たのは午前3時。
すでに皆が寝た後だったから静かに部屋に戻って速攻で寝たのだった。

「今日は…23日か…。プレゼント取りに行かないと…」

そんな事を呟き、煙草を消してバスルームへ向かう。
25日には家でクリスマスパーティがある。
飾り付けするツリーは、すでに注文済みなので今日の夕方には届くだろう。
料理はエマに任せるが、俺はのプレゼントを受け取りに行かないといけなかった。

皆は…何を買うんだろう。
最近、ゆっくりと顔を合わす時間もなくて、聞きそびれてしまったから勝手に買ってしまったけど…
まあ、でもジョシュやオーリー、リジーはドレスやアクセサリーは買わないだろう。
特にオーリーは……今年はタヌキのコートでも探してくるのかな…(!)

ふと、そんな事を考えておかしくなった。
熱いシャワーを顔に浴びつつ頭を洗うと、少し気分もスッキリしてくる。
キュっとコルクを止めてバスタオルで髪を拭くとバスローブを羽織った。

「あったかいスープが飲みたいな…」

アルコールを入れた次の日の朝は、どうしても食事が喉を通らない。

俺はエマにスープを作ってもらおうと、部屋を出て階段の方に歩いて行くと、オーランドの部屋の中から何か声がして、ふと足を止めた。

(何だ…?やっぱりオーリーが騒いでたんだ…)

そう思いながらドアに耳を当てると、中からは、

「ジョシュとリジーのアホー!!がダンの餌食になってもいいってのかぁ〜?!ったく呑気なんだから!!」

などと聞こえて来て、ついでにバフバフっっとクッションを叩く音まで聞こえてくる。

ダン…?ああ……もしかして、またダンが来る事になってオーリーは機嫌が悪いのか……?
それをジョシュとリジーにからかわれたとか……

そこに気付き、俺はちょっと苦笑すると、そのまま階段を下りていく。
リビングに行けば、案の定、ジョシュとリジーが仲良く談笑していた。

「あ、おはよ、レオ」
「おはよう。遅かったね?」
「ああ。夕べ、帰って来たのが遅かったしな。それより…オーリーが部屋で一人で騒いでるぞ?ダンがどうのって…」

俺がそう言うと二人は顔を見合わせて噴出している。
そして簡単に説明してくれた。

「へぇ、クリスマスに来るんだ。じゃあ人数が増えるんだな?」
「そうみたいだね。あ、そうだ。レオ、ツリーの方は…?」
「ああ、もう注文済み。今日の夕方、届くから」
「そっか、ほんと仕事早いな?レオは」

ジョシュは笑いながらソファーに凭れかかって俺を見た。

「まぁね。あ、そうだ。二人ともプレゼントは?」
「それが、まだ決めてなくてさぁ。レオは?」
「俺は注文しておいたから今日、受け取りに行くんだ」
「へぇ、何にしたんだ?」

ジョシュが身を乗り出してニヤニヤしている。それには俺も笑いながら肩を竦めた。

「どうせ分かってるんだろ?」
「ああ、ディオールとか…?」
「That's right!」
「やっぱりなぁ〜っ」

俺の言葉にリジーもソファーに転がって笑っている。

「あれに似合うだろ?」

俺は澄ました顔で、そう言えば二人とも、そこは大きく頷いている。

「絶対に似合うね。で、アクセサリーや靴も?」
「ああ、ドレスに合うようにコーディネートしてもらったよ」
「さすがだね。伊達に遊んでないね」
「おい、リジィ…人聞き悪いぞ?」

俺は苦笑しながら煙草に火をつけると、そこへエマが入って来た。

「皆、おはよう。朝ご飯はどうする?って言っても、もう昼だけど」
「ああ、俺はオニオンスープだけでいいよ」
「あら、レオは二日酔い?」
「まあ、そんなとこ」
「俺はサラダだけでいい」
「あら、ジョシュまで?食欲ないの?」
「いや、これから出かけるから軽いものでいいんだ」
「あ、僕は食べるよ。オムレツね」
「OK。分かったわ?じゃ、すぐ用意するわね?」

エマはそう言って微笑むとキッチンへ戻って行く。

は…仕事行ったのか?」

時計を見て誰にともなく、そう聞くと、ジョシュが頷いた。

「ああ、今朝は早いって言ってたから。寝不足だろうな、夕べ遅くまで起きてたから」
「そっか。でも明日からオフだしな」
「ああ、にしても……プレゼント何にするかなぁ……」

ジョシュが、そう言いながら息をついている。
リジーも、まだ決めていないからか、それに頷きつつ、雑誌なんかを捲りながら考えている様子だ。

そして…は今年、皆に何をくれるんだろう。

去年は……皆にそれぞれ本人が好きなブランドのネクタイを買ってくれたんだっけ。
毎年、一人で家族分のプレゼントを買うんだから大変だろうけど、は、どんなに皆がいらないと言っても買ってくる。
父さんや、エマ、俺達にプレゼントを選ぶのが楽しいみたいだ。
それに…は他の人の分まで買ってくるからなぁ…
今年は…まさかヴィゴやドムにまで買ってこないだろうな…

ちょっと不安になりつつ煙草を灰皿に押しつぶした。












<<23 days.Evening>>











「おい……起きろ。着いたぞ?」
「……ん……」

体を揺さぶられる感覚で私はゆっくり目を開けた。

「…ここ…どこ……?」

目を擦りながら、そう呟けば苦笑にも似た笑いが聞こえて頭にポンっと手を置かれた。

「寝ぼけてんのか?ロデオドライヴだよ?」
「…………ぁ…っ」

その声に慌てて顔を上げると、目の前にはスタンリーの呆れたような笑顔があり、私はギョっとした。

「ご、ごめ…寝ちゃった…っ」

私は凭れていたシートから体を起こすと、急いで座りなおし、ついでに髪型も直した。

「大丈夫か?夕べ遅くまで起きてたのか?」
「え?あ…少し……」
「ったく……。仕事ある時に夜更かしするなって言ってあるだろ?」

スタンリーは思い切り溜息をつくと、怖い顔で私を見る。

「ごめん……」

一応、謝ってから時計を見た。

「わ、もう夕方じゃない……」
「ああ、道が混んでてさ。買い物するんだろ?」
「あ、うん…。皆のプレゼント買わないと……」
「ああ、だから到着したぞ?行かないのか?」
「え?あ…ほんとだ…」

私は窓の外を見て驚くとバッグを掴んで車から降りようとした。

「おい、俺も行くから待てって」
「え?いいよ…。一人で平気…。それに個人的な買い物について来て貰うのは悪いわ…?」
「いいから。もしファンに見付かったらやっかいだろ?」

スタンリーは車を下りると回って歩いて来てから助手席のドアを開けてくれた。

「ほら、早く行くぞ?」
「あ、う、うん……」

仕方なく私も車を下りてドアを閉める。

「さて…まず、どこの店から行くの?」
「あ、えっと…まずは父さんのからだから……ベルサーチから…」
「OK。ほら来いよ」

スタンリーは、そう言って先にスタスタと歩いて行ってしまい、私は急いで後を追い掛けた。

今日は朝早くからCMの仕事の打ち合わせで長々と製作者側との会議に出ていた。
直ぐ終わると思ったのだが、それが午後にまでなり、私はすっかり疲れてしまった。
只でさえ寝不足なのに何だか、お偉いがたの長い話を聞いてると居眠りしそうになったほど。
それでも衣装合わせや、動きのチェックまであって、やっと先ほど解放されたのだ。
そこで帰りに、まだ買ってなかった皆のクリスマスプレゼントを買いに行くと、スタンリーに話したところ、ここまで連れて来てくれた。
ほんとは一人で買い物する予定だったので、ちょっと驚いたが、付き人としては私を一人では歩かせられないのだろう。

ベルサーチの店に入ると、店員がすぐに寄って来る。

「これはこれは、様」
「こんにちは。支配人はいますか?」
「はい。奥に。只今、呼んでまいります」

そこの店長が禿げた頭を下げながら奥へと歩いて行く。
するとスタンリーが横を向いて肩を震わせていた。

「スタンリィ…?どうしたの?」
「え?ああ…今の人…見事にツルツルなのに無理やり横の髪を上に持ってきてるし…しかも頭下げるからバーコードがモロ見え…」
「ちょ、ちょっとスタンリィ…っ」

私は彼の言葉に慌てて後ろを振り返ったが、まだ店長は戻って来ていなかった。

「いいじゃん、ほんとのことだし?」

スタンリーは澄ました顔で肩を竦めていて、それには私もちょっとだけ笑ってしまった。

「もう…信じられない。あなたでも、そんなとこで笑うのね?」
「は?そりゃ笑うだろ?人間なんだしさ」
「そ、そういう事じゃなくて……何だかちょっと以外…って言うか…」
「何が…って、ほら戻って来たぞ?バーコードと…何だ、ありゃ……深海魚に服でも着せたのか…?ぷ…っ」
「ちょ、ちょっとスタンリー失礼よ…っ」

店長と歩いて来た、ちょっと魚類系の顔立ちをした太った支配人(!)を見て、スタンリーはお腹を抱えて笑っている。
それには私も笑いそうになったが、支配人がニコニコと近づいてきたので顔を元に戻した。

「どうも。お久しぶりですな?様」
「こんにちは。お久しぶりです」
「今日は…何をお探しでしょう?」

支配人は大きなお腹を揺らしながら愛想よく微笑んでいる。

「あ、あの父のクリスマスプレゼントを選びに…」
「さようで御座いますか。では奥にどうぞ…。ん?そちらの方は…」

支配人が、まだ後ろで笑いを噛み殺しているスタンリーを見て首を傾げた。

「あ、あの彼は私のマネージャー代理みたいなものでして……」
「そうですか。いや、何だか見た事があるなと思いましてね?何やら楽しそうですな?」
「え?あ、か、彼、ちょっと"笑い上戸"で……」(!)
「は?」
「な、何でもないですっ。あの…行きましょうか」

私は余計な事を言ってしまい、慌てて支配人を奥に促した。
スタンリーは、そんな私を見て苦笑しながら、

「俺は、ここで待ってるよ」

と言って店内の商品を見て回っている。
それを見つつも私は奥のビップ用サロンへと連れて行かれた。
ここは店側でビップと見てる客しか通さない個室で、ここに色々な商品を持ってきてくれるのだ。
私は中へ入るとソファーに座り、出された紅茶を飲んで商品を待った。
すると、程失くして女性店員が奇麗なボックスに入れられた商品を次々に運んでくる。

アクセサリー類、ネクタイ、香水、スーツ…他、新作の載ったカタログまで開いて見せてくれた。

「ハリソン様には、どれが宜しいでしょう?」
「う〜ん…去年はネクタイにしちゃったし…今年は…」

と商品を見て行きながら、ふと新しいデザインのサングラスに目が行った。

「これ、かっこいいですね」
「ああ、それは今秋の新作モデルで御座います」
「そう…。スーツもいいけど…パパ、いつもオーダーメイドだし間に合わないから…これにしようかしら?どう思います?」
「これならハリソン様に、よくお似合いかと…」

支配人も無難な事を言いながらニコニコと笑顔は崩さない。
私は暫し考えて、5種類ほどあるサングラスのデザインを、よく見てみた。
そして一番、父に似合いそうな形を選ぶ。

「じゃあ、これにします」
「はい、ありがとう御座います」
「あ、あと、このネクタイピンも包んでくれますか?」
「畏まりました」

支配人はホクホクしながら、その商品を店員に持っていかせると、

「只今、ラッピング致しますので少々お待ちください」

と言って部屋を出て行く。
私は軽く息をついて紅茶を飲んだ。

良かった。いいのが見付かって…
そっか…今時期は新作が出手てくる時期だし…皆のもサングラスにしちゃおうかなぁ…。それだと早く選べそうだし。

そんな事を考えながら待っていると、支配人が奇麗にラッピングされたプレゼントを手に戻って来た。

「ご用意出来ました」
「あ、ありがとう。支払いは、これで」

そう言ってブラックカードを渡すと、女性の店員が笑顔で受け取り部屋を出て行った。
いつもなら買い物の際にはサインでOKなのだが、そうなると家のお金と一緒になってしまう。
プレゼントの場合は自分のカードで買うようにしていた。

「ご用意出来ました」

数分待った後、店員の女性が奇麗にラッピングされたプレゼントを持ってやってくる。

「ありがとう。じゃ、支配人、私はこれで」
「はい。またのお越しをお待ちしております。ありがとう御座いました」

私がソファーを立つと支配人は大きな体を揺らしながらドアを開けてくれた。
そのまま店内へ戻ると、スタンリーが歩いて来る。

「買ったか?」
「うん」
「じゃあ、次行くぞ」

スタンリーは、そう言って外へ出て行く。
それに続こうとした時、他の店員が何やら小声で話しているのが聞こえてきた。

様と一緒にいる彼…モデルのスタンリー・ウォルシュじゃない?」
「そうよねっ。どこかで見た顔だと思ったのよ。前にうちの広告でモデルやったんじゃなかった?」
「あ〜やってたわ、確か!新作のスーツの時よ」
「でも彼、彼女のマネージャーなんてモデル辞めたのかしら?」
「え〜もったいな〜い。彼、色々なブランドから引っ張りだこだったのに〜」

そこで私は店を出た。

スタンリーってば…ここでも仕事した事があったんだ。
そうよね…随分と慣れた感じで店内を見ていたし、別に支配人が出てきても普段と変わらなかった。

私は目の前を歩いて行くスタンリーの後姿を見ながら、ボーッと、そんな事を考えていると、不意に彼が振り向いた。

「おい、次はどこ?」
「え?あ…えっとぉ……ア、アルマーニかな?」
「OK。早くしろよ?遅くなるぞ?」
「う、うん」

そう頷いて私はスタンリーの方へ走って行った。











<<23 days.Night>>






ハリソン





「何?!小坊主もパーティに?!」

私は飲んでいたブランデーを吹きそうになりながら顔を上げた。
目の前には我が家の中でも一番、能天気な二男が恐々と私の顔を覗いている。

「いいだろ?クリスマスくらい…」
「う……」

それを言われると辛い…
確かに、あの我が愛娘に惚れているワケの分からん小坊主が家に来る事は嫌には違いないのだが…
一年に一度、特別なクリスマスということもあり、やはりそこはイエス様のように心を広く持たねばならない気もする(!)

「ねえ、父さん…俺とリジーでに近づかないようにするからさ…。いいだろ?ヴィゴも呼ぶのにドムだけダメなんて言えな――」
「あー分かったよ!勝手に呼べ!」
「ほんと?!いいの?!」
「ああ。だが、ちゃんとは守れよ?!」
「うん!分かってるよ!それにレオもいるしさ!ありがとー父ちゃん!」
「うぁ…っ」

でかい図体の息子に思いきり、羽交い絞めの如く抱きつかれ、私は後ろにひっくり返りそうになった。

「お、おい離せ!オーランド!首が絞まる…っっ」
「あ、ごめん、ごめん!」

オーランドは、そう言ってパッと手を離すと、ケラケラと呑気に笑っている。
私は首を擦りながら、軽く息をつくと、煙草に火をつけた。

「ところで……皆、どうした?ジョシュやレオは?」
「ああ、それが二人とも、のプレゼントを買いに行ったよ?リジーは仕事」
「ああ、そうか!で…お前は?」
「俺?俺は、すでに決めてあるから明日、買いに行くんだ。それ明日、届くからさ」
「そうか。で、今年は何にしたんだ?」
「それは見てからの、お楽しみさ〜♪それより父さんは?何あげるの?」
「ん?私は…まあが欲しがってた部屋に置くソファーだよ」

煙草の煙を燻らし、ちょっと笑うと、オーランドは目を丸くして隣に座った。

「え?ソファーって、あの…イタリア製の?!」
「ああ。取り寄せてあるから明後日には届くだろう」
「うっそ〜あれって何万ドルもするんじゃ……」
「ああ、まあ…可愛い娘の為なら高くはないさ」
「えぇ〜?じゃあ可愛い息子にはないの?特に素敵な二男には!」

そんな事を言いながら私の腕に擦り寄ってくるオーランドに私は顔を顰めた。

「何だ、その素敵な二男って…どこにいるんだ?それに…毎年お前たちにはやらんだろう?子供じゃないんだから」
「えぇ〜〜!!!でもでも、たまにはいいじゃん!俺、これ欲しいな〜〜!新しいポルシェ!」
「……自分で買え……」
「ぶーーっ」

(ったく……何を言い出すかと思えば…アホか、こいつは。あ〜あ〜あんなに頬を膨らませて…いったい何歳だと思ってるんだ……?)

私は隣で未だブツブツ言いながら車の雑誌を見ている二男を見て思い切り溜息をついた。
そこにイライジャが帰って来てリビングに顔を出した。

「ただいま…ってあれ?父さん、帰ってたの?」
「ああ、お帰り。今日からクリスマスまでは我が家にいるつもりだ」
「あ、そっか。は〜疲れたっ」

イライジャは向かいのソファーに座り、グッタリと凭れかかっている。

「どうした?今日は何の仕事だ」
「インタビューだけど…10本ほど取材があったからさ…。ちょっと疲れたよ」
「そうか…インタビューは一気にやられると疲れるからな…。明日はオフだろう?もちろん」
「ああ、クリスマスに仕事入れるような事務所なら辞めてやる」
「ははは。ま、そうだな」

イライジャの言葉に苦笑しながら私は煙草を灰皿に押しつぶすとエマが顔を出した。

「あら、お帰り。リジー」
「ああ、ただいま〜。エマ、お腹空いた〜」
「はいはい。もすうぐ出来るわ。今夜は皆揃いそうね」

エマはクスクス笑いながら、そう言うと、私の方に歩いて来た。

「ねぇ、ハリソン。パーティの料理、どうしましょうか?去年同様、シェフに来てもらえる?」
「ああ。手配してあるよ?今年はイタリアンにしたんだ。気軽に食べられるしな」
「そう。じゃ、私は簡単なものは作っておくわ。あとケーキは、いつもの注文しておいたから」
「そうか。ありがとう。ツリーの飾り付けは終わったのか?」
「ええ、さっき届いてオーリーに手伝ってもらって半分だけ…」

見れば庭先に大きなツリーが見える。

「今年のは立派だな。レオが注文したのか?」
「ええ。残りの飾りつけは、きっととレオでやるんじゃない?いつものように」
「そうだな。子供たちに任せるか」
「ええ。あ、じゃ夕飯、直ぐ用意するわね」
「ああ、頼むよ」

私が頷くと、エマはニッコリと微笑んでキッチンに戻って行った。

クリスマス時期になると毎年、やる事が増えて彼女も大変だ。
まあ、息子達も各自、手伝っているから一年の中で家族が、もっとも一緒にいる時間が多いのが、この時期だろう。
最初は家族だけでのパーティだったが、そのうちがサラや友達を連れてくるようになってから、息子達も友人を呼ぶようになった。
その分、料理も増えていき、今ではエマ一人に任すことが困難になってきた。
なので行きつけのレストランのシェフに出張してきてもらい、料理を作ってもらうようになった。

(今年は…ますます人数が多そうだ…)

私は先ほどの小坊主の事を思い出し、少しだけ憂鬱になったのだった…。











ジョシュ





僕は車を車庫に入れてから軽く息をついた。
今、やっとのプレゼントを買って家に帰って来た所。

「良かった。いいのがあって…」

助手席においた包みを見て、そう呟くと少しだけ窓を開けて煙草に火をつけた。

(かなり大荷物になったし…部屋に隠しておくか…)

結局、あれもこれも…と選んでいったら、数が多くなってしまった。
が、同じところのものだし一緒に部屋を飾れば、かなりお洒落になるだろう。
今年は身につけるものではなく部屋のインテリアにしたのだ。
イタリアの物が多いインテリアショップを見に行くとの好きそうな家具や照明、オブジェが沢山あって、すぐに決めてしまった。

(他の皆は買ったのかな…?)

ふと、そんな事を思いながら煙草の煙を吐き出す。すると門の開く音がして車が一台、入って来た。

(ん…?あの車は…の事務所のか…ってことはが帰って来たんだな。)

すぐに煙草を消して、僕は車を下りるとエントランスの方に歩いて行った。
その時、の声が聞こえてくる。

「じゃあ、あれ…お願いね?」
「ああ、分かってる。事務所に置いておく」
「うん。ありがとう。それじゃ……」
「ああ、楽しいクリスマスを」

スタンリーはそう言って手を上げると車に乗り込んだ。
するとが思い出したように車に近づき、コンコンっと窓を叩いている。それに気づいてスタンリーが窓を開けた。

「何?」
「あ、あの…スタンリーは…クリスマスは何してるの…?」
「え?俺は…別に何も?仲間と騒ぐくらいかな?」
「スタンリーは…家に帰らないの?」
「ああ。帰る家なんてないからな…」
「え…?」
「何でもない。じゃ、26日は午後から最後の撮影だからな?昼までに用意しといて」
「う、うん。じゃあ…気をつけて……」
「ああ。じゃ…」

そこでスタンリーは窓を閉めて車を出した。
それを見送っているに、僕はそっと近づいて後ろから抱きしめる。

「お帰り、
「キャァっ!!」

思った以上に驚いたようで、が腕の中で飛び上がった。

「ごめん、。俺だって」
「あ……ジョ、ジョシュ…っ。もぅ〜…ビックリした〜」

はホっと息をついて振り向くと笑顔で顔を上げた。
僕は額にそっとキスをしてを抱きしめると、

「ごめん。すぐ声をかけようと思ったんだけどさ。スタンリーと話してたから出そびれて」

と笑った。
するとがドキっとした顔で僕を見上げる。

「ん?どうした?」
「う、ううん…。何でもないよ」
「そう?あ、さっき何か頼んでたけど…何だ?事務所に置いておくって」
「え?あ…べ、別に…何でもないの。それより寒いし中に入ろ?」
「え?あ、ああ…」

ぐいぐいと腕を引っ張るに、僕は苦笑しつつもついて行った。

(だけど…さっきのスタンリーとの会話…。はパーティに彼も誘いたかったんだろうか…)

そんな事を、ふと考えた。

「ただいま〜」

先にが家に入り、続いて僕も入るとリビングからオーランドが飛び出してきた。

「お帰りぃ〜〜!〜〜!ツリーが届いたよ!」
「え?ほんと?」
「ほんとさぁ〜!一緒に飾り付けしよう!あ、お帰り、ジョシュ」
「はいはい。ついでに言ってくれて、ありがとよ」

僕はにへばりついているオーランドの額を軽く小突きながら、そう言うとリビングに入って行った。

「あれ?父さん?」
「おぉ、お帰り、ジョシュ」

中に入れば父さんとリジーが仲良く談笑していて驚いたが、クリスマス時期だから帰って来たんだろうと思い当たる。
そこにとオーランドも入って来て、に至っては父さんを見るなり、走って抱きついている。

「パパ、お帰り!」
「おいおい、それは私の台詞だろう?お帰り、お疲れさん」

父さんはの頭を撫でながら、ニコニコと顔が緩んでいる。
久し振りに娘に会えて嬉しいのだろう。
僕はベランダの窓を開けて、庭先に立っている大きなツリーを見た。

「へぇ、今年のも、かなり立派だなぁ…。レオの奴、いい仕事するよ、ほんと」
「全くだね、うん」
「うわ、オーリー!いつの間に…っ」

気づけば隣で腕を組みながら頷いているオーランドに僕はギョっとした。

「そんな事より、ジョシュも一緒に飾り付けしようよ!明日までには終わらせないとさ〜」
「ああ、そうだな。今年は忙しくて遅くなったもんな」
「明日の朝には家の周りにイルミネーションをつけてくれる業者さんが来るから、間に合わせたいんだよねー」

オーランドは、そんな事を言いながら庭に出ると横に置いてあるダンボールの中から色々な飾りを出し始めた。
そこへリジーともやってくる。

「オーリー、私もやるわ?」
「僕も〜」

二人は無邪気に庭に出ると、オーリーと一緒になってツリーに飾りをつけていく。
だがは小さいので高い場所には手が届かず、必死にピョンピョンっと飛んでいる。
それを見て僕はちょっと笑うと、の手から飾りをとり、上の方につけてあげた。

「あ、ありがと、ジョシュ」
「いいよ。さ、次は何をつける?」
「えっとねぇ〜。これこれ、二人のエンジェル」

が笑顔で手にしたのは真っ白な天使が二人、可愛くキスをしているものだった。

「あ〜それそっくりだね!で、こっちは俺そっく…」




ごぃんっ!




「ぃだっ!」


僕はオーランドの後頭部に一撃食らわしてやった。

「ジョ、ジョシュ〜〜!何で殴るんだっ」
「アホなこと言ってるからだろ?それより、サッサとつけよう。寒いんだから」
「へいへ〜い。ったく…すぐ暴力に訴えるんだからさ…っ。レオ、そっくりだ…」

オーランドはブツブツ言いながら箱の中から他の飾りを取っている。
それを見つつ僕とイライジャは笑いを噛み殺し、作業に戻った。
は、その天使の飾りを持って何だか嬉しそうに眺めていた。

?それ、どこにつける?」
「あ、えっとね…。じゃあ、そこのサンタの隣」
「OK。貸して?」

僕はそれをから受け取ると上の方にあるサンタの隣に結びつけた。
その時、リビングの方で声がして振り向くと、レオが帰って来たらしく、父さんと楽しそうに話している。
そして二人で庭の方に出てきた。

「へえーかなり出来上がってきたな?」
「レオ〜〜!遅いよ〜!早く手伝ってくれない?」
「はいはい。あ、、ただいま」
「お帰り、レオ」

レオはを軽く抱きしめると頬にチュっとキスをした。

「レオ、こんな立派なツリー、ありがとう!」
「ああ、いいのが入って良かったよ。気に入った?」
「うん!凄く奇麗になるよ?きっと」

は嬉しそうに、そう言うと僕の方を見て、「ね?」っと微笑んだ。

「ああ。明日はイルミネーションもつくし奇麗だろうな」
「ああ、楽しみだ」

レオは、そう言うと一人ギャーギャーうるさいオーランドの方に行って、飾り付けを手伝い始めた。
それに僕も続く。

、今年は…サラも呼ぶんだろ?」
「うん。もう電話しておいた。楽しみにしてたよ?」
「そうか。ああ、あと…ヴィゴとドムも来るらしいから気を付けろよ?」
「え?何で…気をつけるの?」

キョトンとした顔で見上げてくるに僕は優しく微笑むと頭に手を置いた。

「ヴィゴはともかく…ドムは酒癖が悪いから極力、近づくな。分かった?」
「う、うん…。そうなんだ…。そうは…見えないけど」

は首を傾げながら、そう呟くと飾りを手に取り、楽しそうにつけている。
そんな彼女を見ながら僕は、ちょっと笑うと、空を見上げた。今夜は星が沢山光っていて、雲一つない。

明日はイヴか…こうして家族でクリスマスを迎えるのは何回目なんだろう……こういうのが、ずっと続けばいいのにな…

楽しそうにツリーを囲んでいる皆を見て、ふと、そんな事を思った。










<<24 days.Christmas Eve>>







レオナルド





この日の朝、家の周りは沢山の人が忙しく動き回っていて何だか賑やかだった。

「うわーどんどんライトがついていくね!」
「ああ。って…オーランド、うっと〜しぃから離れろよ…」
「だって寒いだろぉ〜?いくらロスでも、この時期は最低気温は9度なんだぞぉ〜?」
「知ってるよ…。今日は、まだ15度もあるだろ?」

俺はぎゅうぎゅうと抱きついてくるオーランドの腕を離しながら顔を顰めた。

「でも寒いんだよ〜!昨日、夜にツリーの飾り付けしたから風邪引いたのかも…っ」
「ああ、それなら大丈夫だろ?」
「へ?何で?」
「"バカは風邪引かない"っていう日本の諺があるんだ。まさしくオーリーの為のような諺だな?」

俺が笑いながら、そう言えばオーランドの口が見る見るうちに尖っていく。

「何だよ、それーー!俺がバカだって言いたいわけ?!」
「あ、そう聞こえた?良かったよ。ちゃんと伝わって」
「ぬぅー!レオの意地悪!朝から何で弟いじめをするんだっ」

オーランドはプリプリ怒りながらリビングに入ると、丁度入って来たに抱きついている。

〜〜っ!」
「わ、オーリー、どうしたの?」
「レオがいじめるんだよぉう…!何とか言ってやって、言ってやって!」
「え?ああ、また何か言われたの?」

は、いつもの事とクスクス笑いながら俺の方を見た。

「ダメじゃない、レオ。オーリーは傷つきやすいんだから」
「そんな繊細じゃないだろ?」
「ほらぁーー!!また意地悪言ったよ?!」
「うるさいなあ…。それより早くエマと買出し行って来いよ…。荷物持ちくん?」

俺はソファーに腰をかけて両手を広げれば、オーランドは悲しげな顔で頬を膨らませた。

「分かったよ…!レオの分のランチは買ってこないからな?!」
「そんな子供みたいなこと言ってないで…。早く行けよ…」
「わ・か・り・ま・し・た・よ!!じゃあ…行ってくるよ、……」

オーランドは渋々を離すと、ちゃっかり頬にチュっとキスしてからトボトボ歩いてエントランスの方に向かった。
その後姿を見て、は苦笑しながら、「もしかしてオーリー、コイントスで負けたの?」と俺の隣に座ってきた。
そんなを抱き寄せ頬にキスをする。

「ああ、エマが明日の買出し行くのに付き合ってって言うから二人で勝負したんだ。で、いつもの通り、オーリーが負けたってわけ」
「あははは。レオ、ほんと強いもんねぇ」
「まぁね。それより…よく眠れたか?」
「うん。今日はワクワクして少し早く目が覚めちゃった」
「そっか。なら、いいけど…ここのとこ忙しかったみたいだし少し心配だったんだ」

俺はそう言いながらの頭に、そっとキスをすれば、が寄りかかってきた。

「大丈夫よ?もうすぐクランクアップするし、その後は短いけどオフはあるから…」
「そっかぁ。やっと終わるか……」

俺は、その事を聞いて少しホっとしていた。やっとライアンとの縁も切れると思ったからだ。

「ま、でも映画が出来上がればプロモーションで各国に行かないといけないし…また忙しくなるだろ?」
「うん。でも…大丈夫!最近、私、凄くやる気あるから」

は顔を上げてニッコリ微笑むと、ソファーから立ち上がった。

「明日、来る人の予定を書いてみたんだけど…」
「ん?ああ…どれどれ…」

が持って来たメモを覗き込んで見た。

どうやら夕方に、サラ、その後にヴィゴやドム…と続くらしい。
そこに何故かキーラも加わっていて俺は顔を上げた。

「あれ…キーラも来るの?」
「え?あ…うん。夕べ久々に電話して誘ったの。いいでしょ?」
「ああ、いいけど…。あ、それと、ダンも来るから」
「え?ダンが?いつ?」
「さあ?オーリーに電話してきたらしいから詳しい事は聞いてないけど…当日じゃないか?」
「そう!久し振りね!じゃあ、ダンの好きなプリンでも作ってあげようかな。ダン、ケーキは食べられないから」
「ああ、そうだな。そうしてやれよ。ダンも喜ぶ」
「うん」

は可愛く微笑むと、メンバーの中に、"ダン"と名前を加えた。

「あ〜あ〜。ほんとはジョニーも来て欲しかったからオーリーに頼みたかったんだけどなぁ…」
「え?ああ、だって彼は家族で過ごすだろう?」
「うん。オーリーも同じこと言ってた。だから諦めたの」

は残念そうに息をついている。
俺はちょっと苦笑すると、そっとの肩を抱き寄せた。

まあ…は彼のファンだからなぁ…一緒にクリスマスを祝いたかったんだろうけど…
こればっかりは仕方ない。家庭がある男には家族が一番だろうし。
あの父さんでさえ、恋人がいてもクリスマスには家族と一緒に過ごすんだ。
だから去年までは恋人とはイヴに過ごしてたようだけど、今は別れたらしいからな。今年は家にいるんだろう。
俺はと言えば…先週から女性からのお誘いが凄くて電話の留守電がメッセージでいっぱいになってしまった。
一度デートをした女から、一晩ともにした女まで、何度も電話が入る。その中には忘れてたような女もいて、ほとほと困り果てた。
クリスマスに、もちろんデートなんてするはずもなく全て無視してるんだけど…今もポケットの中で携帯が震え出して軽く息をついた。

「レオ…?」
「ちょっと部屋に行くよ。、今日は出かけないだろ?」
「あ、そのつもりだったんだけど…ダンが来るなら、私、プレゼントあげたいし、ちょっと買い物に行くかも…」
「そっか。じゃ、その時は一緒に行くし、呼んで?」
「うん。分かったわ?」

は笑顔で頷くと雑誌を手にペラペラ捲っている。
それを見ながら俺は急いで部屋へと戻った。
そして未だ震えつづけている携帯を手に思い切り溜息をつく。

「ったく…しつこいなぁ…」

そう呟いてディスプレイを見ると、更に溜息をつく事になった。

「嘘だろ……?」

そこには、前にホテルに置き去りにしてきた大物ACTRESS、"シャロン"の名前が出ていたからだ。

(あれから連絡もなかったからホっとしていたのに…)

どうしようかと思ったが、ここでハッキリ言った方がいいと思い、仕方なく電話に出る。

「Hello...?」
『お久しぶりね』

心なしか声が冷たい。
俺はベッドに腰をかけて軽く深呼吸をすると、「ああ、元気だった?」と無理に明るい声を出した。
だが受話器の向こうから溜息をつくのが聞こえてくる。

『元気なわけないでしょ?レオからの連絡を待ってたのにこないんだもの』
「それは…さ……」
『彼女のせい?』
「は…?彼女……?」

俺はいつ彼女なんて作ったっけ…?と首を傾げた。
するとシャロンの声が少しだけ大きくなる。

『この前、デートしてた女よ。ゴシップ記事にも書かれてたでしょ?』
「え?ああ……デライラのこと?あれは別に彼女じゃ……」
『あれ、つい、この前よね?』
「え?ああ…そうだけど…」
『私に合う時間はないのに、彼女と一晩ともにする時間はあるのね?』
「シャロン…それはさ…」
『私と付き合ってる時には他の女と会ってなかったのに…彼女に乗り換えたわけ?』

シャロンの言葉に、俺はどっと疲れてきた。
別にシャロンと付き合った覚えはないが、確かに彼女と会ってる時は他の女とデートをするのを控えた。
それはシャロンがかなりプライドが高く、俺が他の女ともデートをしてると知れば、何だかんだと、うるさいと思ったからだ。
別にシャロンの事を思って、そうしてたわけじゃない。それにデライラに乗り換えたとも思っていないんだけど…

「シャロン…。別にデライラとは一回きりのことだよ。彼女だって割り切ってる」
『嘘!あの子、レオと付き合ってるって言いふらしてるのよ?クリスマスもデートするんだって言って…!すっかり彼女気取りじゃないっ』
「そんなこと言われても…彼女が勝手に言ってるだけだしさ。それに俺はクリスマスは誰ともデートなんてしないし、するつもりもない」
『じゃあ…私とも会う気はないって事ね?』
「……ああ。そのつもりだよ」
『…………っ』

ついイライラしてハッキリと言ってしまい、受話器の向こうでは息を飲む気配がした。

「あのシャロン…悪いんだけど…」
『分かったわ…。もう電話もしない。さよなら!』

ブツ…っと、そこで電話が切れて、俺は思い切り息を吐くとベッドに寝転がった。

「はぁ…ったく面倒くさい…」

ここまで後を引く人だとは思わなかった。
彼女は今までだって若い俳優に手を出しては遊びとして付き合ってきてたはずだ。
俺としても一回きりの遊びのつもりだったんだけど、彼女はそうじゃなかったようだな…

「あ〜しっかしデライラの奴…勝手に、あることないこと言いふらしてんのかよ…」

さすがに、それは驚いたが、まあ今までもあったことで、一度、関係を持つと恋人になったと思い込む女は多々いる。
だけど、してもいないクリスマスデートの約束の事を言いふらしてるなんて最悪だ…

「あ〜もう携帯、切っておこう…」

俺は別に、嘘を言いふらしてる女に文句を言った事もない。延々と無視しつづけるだけだ。
そうすると相手も何も言わなくなってくるし回りも、それが嘘なんだと気づく。
それに、いちいち相手にしてたら面倒なのだ。

「そろそろ女遊びも控えるかな…」

俺はそう呟いて、携帯の電源を切ると、それをベッドに放り投げた。











ジョシュ





「あれ?、どっか行くのか?」

リビングに行くと、がコートを来てソファーに座っている。

「あ、ジョシュ、おはよ。あのね、ダンも来るって聞いたから、ダンのプレゼントを買いに…」
「ああ、そっか。乗せて行ってやろうか?」
「あ、でもレオが…」
「助かるよ。ジョシュ」
「あ、レオ…」

振り向けばレオが少し疲れたような顔で入って来た。

「俺の車だと目立つしジョシュの車に乗せてくれない?」
「ああ、それはいいけど…。どうした?何だか疲れた顔しちゃって」

隣に座ってきたレオの顔を笑いながら見れば、彼は溜息をついて肩を竦めた。

「ちょっとね…女難の相だよ」
「ああ、そういうこと。明日のデートの誘いが凄いんだろ」
「まあ……それもそうだけど…。ちょっとね」
「ま、大変だね、モテる男も」
「何だよ、自分だって」
「俺は色々と手はつけてないからさ?そんな誘ってくる女もいないし」

澄ました顔で、そう言えばレオも苦笑している。するとが興味津々な顔で僕らを見た。

「何?二人ともデートに誘われてるの?」
「え?ああ、いや…」
「俺は誘われてないよ?」
「嘘〜!モテるんだから誘われるでしょ?でも明日はダメよ?家族で過ごすって決めてるんだから」
「分かってるよ。他の女とデートするより我が家のお姫様と一緒にいた方が楽しい」

レオはそう言って歩いて来たを抱き寄せ膝に乗せると、頬にチュっとキスをした。
だがは呆れた顔で息をつくと、

「もう…そんなことばかり言ってるとシスコンって言われちゃうよ?」

と言って笑っている。
いや、もう言われてるだろう…と僕は心の中で苦笑した。

「はいはい、シスコンで結構だよ。俺は一筋だからさ?」
「もう…レオったら…」
「いいから、それより買い物行こう?早くしないとオーランドが帰って来て一緒に連れてけって騒ぐだろ?」

レオは苦笑しながらを膝から下ろすと、自分も持って来たコートを羽織って立ち上がった。

「どこに行く?」

僕もエントランスにかけてある自分のジャケットを羽織ると、外に出てから二人に聞いた。

「う〜ん…ダンって…何を貰ったら喜ぶのかなぁ……」
「15歳だろ?何だろうなぁ…。そう言えば、この前来た時は、音楽にハマってるって言ってたけど…」

レオが思い出したように、そう言えば、はが笑顔になった。

「そうなのよ。私やリジーの影響みたい。あ、じゃあ…趣味も同じだし、そのジャンルで選べばいいかな?」
「ああ、それでもいいかもな?じゃ、ロス・フェリスでも行くか」

僕はそう言って車のドアを開けてあげた。
レオとは後部座席に乗り込んでから、「あ、いっそのことリジーも連れて行く?まだ寝てるかなぁ」と話している。

「夕べ遅くまで映画見てたからな。ま、でも、もう昼過ぎだし起こせばいいんじゃないか?こっから電話しよう」

レオはそう言って携帯を出そうとしたが、顔を顰めて、

「あ…俺、部屋に置いてきたんだった。ジョシュ、携帯でリジーの部屋に電話してくれない?」
「OK」

僕は何故、携帯を置いてきたのか理由が分かり、ちょっと笑うと自分の携帯でリジーに電話をした。
すると暫くしてリジーの寝ぼけた声が聞こえてくる。

「Hello?リジー?」
『んぁ………誰ぇ……?』
「俺、ジョシュだけどさ」
『へ?ジョシュ…?何で電話なんか……今、どこ?』
「家の車庫。今さ、がダンのプレゼント買いに行くって言うから出かけるんだけど、リジーも行かない?」
『今から…?うあ…もう昼過ぎてんじゃん……寝すぎた〜』

リジーは何だか息をついて項垂れている様子だ。

「ああ、早く起きろよ。で、どうする?ダンとリジー趣味あうならプレゼント選んでやってくれよ」
『いいけどさぁ……。僕、凄い寝起きだよ?ちょっと待っててくれる?』
「いいよ。10分で用意しろ」
『OK......。じゃ、終わったら、すぐ行く〜』
「ああ、頼むよ。じゃな?」

そこで電話を切って後ろの二人に、「10分で用意して来るってさ」と告げた。

「そっか。じゃ、待ってよう…。でも…その間にオーランドが帰って来ないだろうな…?」
「え?ああ、オーリー、どこ行ってるの?」
「エマと買出し」
「そっか。なら少し時間かかるだろ?」
「ああ、でも…どこに行ったのかな…聞いておけば良かった」
「途中でバッタリ会うかもな」

僕が笑いながら言った一言に、レオは思い切り顔を顰めていた。











オーランド





「まだ買うのぉ〜〜う?」
「次は紅茶の葉を買わないと。切れてるのもあったから。あとは…ダンが来るからクッキー作ってあげたいし…その材料もいるわ」
「えぇ〜?!ダンにクッキー?いいよ、そんな作らなくてもさぁ〜っ」
「もう…どうしてダンを毛嫌いするの?」

エマは困ったように笑いながら振り向いた。僕は大量に入ったカートを押しながら、口を尖らせ立ち止まる。

「俺が毛嫌いしてるわけじゃなくてさ〜。向こうが俺に突っかかってくるんだってば」
「そう?いい子じゃない?優しくて」
「優しい?!どこが?!」
「だって来れば必ず手伝いしてくれるし、この前なんかゲストルームを掃除までしてくれたのよ?15歳なのにシッカリしてるし」
「どうせ俺は25歳でシッカリしてませんよ……」
「あらあら…そんな口を尖らせないの。どこでファンが見てるか分からないわよ?」

エマは笑いながら、そう言うとスタスタと紅茶のコーナーに歩いて行く。
僕は慌てて顔を元に戻すとサングラスをしなおし、またカートを押して、エマの後を追い掛けた。

(ファンが見てるって言うなら、こんなカートを押してる姿を見られた方が恥ずかしいよ…)

僕は帽子を深く被って辺りを見渡した。
クリスマスイヴだからか、人が沢山出ている。

は〜…カップルが多いなぁ…皆、今日デートかぁ。
って、そう言えばアニスに連絡してなかったっけ…。一応、プレゼントは用意してあるし、後で電話してみよう。

そんな事を思いつつ、エマの傍に行くと、大量の紅茶の缶を入れている。
うちの家族は皆が紅茶好きなので、いつも沢山買う事になるのだ。
そのまま今度はお菓子の材料が置いてあるコーナーに行くと、クッキー用のチョコチップやらを入れていった。

「さ、後は…」
「まだ、あるの〜…?」

僕がウンザリしたように言えば、エマはクスクス笑っている。

「後は今夜の夕食の分よ?食べたいものはある?」

それを聞いて僕はパっと顔を上げた。

「あるある!エマの手作りシチューが食べたい!」
「いいわよ?今日は買い物に付き合ってくれたからオーリーのリクエストで作ってあげる」
「やったぁー!」
「ちょ…オーリィ…っ?!恥ずかしいから離れてちょうだい」

僕が思い切り抱きつくと、エマはアタフタしている。

「ごめん、ごめーん。嬉しくてさ〜」

僕はすぐにエマを離すとカートを押しながら、お肉のコーナーに走って行った。

(は〜これで買い物に来た甲斐があったな〜♪)(単純)

そんな事を考えながら、エマと二人でシチューの材料も入れるとレジで支払いを済ませた。

「うぅ〜重いぃ〜…」
「ほら頑張って。もう少しよ?」

大量の袋を両手で抱えてフラフラしている僕の方をエマが苦笑しながら振り向く。
そして車のトランクを開けると、そこに荷物を入れていく。

「はい、ここに入れてくれる?」
「は〜い」

言われたとおり、買い物袋を一つ一つトランクに入れてから、思い切り息をついた。

「はぁ〜…疲れたぁ〜〜っっ」
「大げさねぇ?さ、帰りましょ?」
「うん、俺、お腹ペコペコだ〜」

フラフラしながら車に乗り込むと、エマも運転席に乗り込んだ。
僕の車だと荷物が入らないので今日はエマの車で出かけてきたのだ。

「さ、行きましょうか」
「うん」

エマがエンジンをかけながら、そう言ったのに対し顔を上げて頷くと、そこに見慣れた車が入って来て、僕は声を上げた。

「あ…っっ!ジョシュの車だ!」
「え?あら…ほんとだわ?リジーと…後ろにいるのはレオとじゃない?」
「えぇ〜〜?!うわ、ほんとだ!何だよ〜。僕がいない間に皆で仲良く買い物に来るなんて!ちょ、俺、行って来るよっ」
「え?あ、オーリー?!」

僕は車を飛び出し、またショッピングモールの方に走って行った。

(何だい、何だい!僕だけのけ者にしてぇ〜!)

僕は一人プリプリ怒りつつ、ジョシュの車の方に走って行った。
見ればジョシュの車が止まり、皆が下りてくる所だ。僕は必死に走って行くと思い切り叫んだ。

〜〜〜〜っっ!!」
「あ、オーリー!」
「げ、お前何で…っ」
「あれぇ?オーリーじゃん」
「やっぱ会ったか…」

僕が走って行くと、は嬉しそうに笑顔を見せてくれたが、レオは思い切り顔を顰め、リジーは驚いて大きな目を更に大きくしている。
そしてジョシュは苦笑しながら咥えていた煙草を手にとり、肩を竦めたのが見えた。

「な、何で皆で買い物に来てるんだよぉぉ〜〜っ」
「何でって…がダンにもクリスマスプレゼント買いたいって言うからさ」
「えぇ?そうなの?っ」
「うん」

ニコニコしながら頷いたに僕はガクっと膝落ちした。

「オ、オーリー?!どうしたの?」
「いいんだ…。何でもないよ…」
「いいから放っておけよ。行くぞ?
「でもレオ…」

(ぬ…っレオめぇ〜〜っ)

僕はガバっと立ち上がり、皆を追いかけて行った。

「待ってよ!俺も行くよ〜〜っ」

そう言ってリジーに抱きつけば、思い切り嫌な顔をされた。

「来てもいいけど……静かにしててよ?オーリーすぐ騒ぐんだから見付かっちゃうよ」
「分かってるよ〜」

少し口を尖らせながら頷くと、ジョシュがクスクス笑っている。
その時、僕の買ったばかりの携帯が鳴り出し、ドキっとした。

「あ、アニスだ…」
「ああ、彼女?そう言えば…クリスマスなのに会わないの?」
「いや…後で電話しようと…。あ、きっとアニスも会いたいって思ってかけてきてくれたのかも!」

そう言って張り切って電話に出た。

「Hello、Hello〜?アニス〜?」
『あ、オーリー?』
「うん。俺も電話しようと思ってたんだ〜」
『そう…。今、どこ?』
「今はね〜。ショッピングモールに皆で来てるんだ」

そう言って前を見れば、皆はさっさと中へ入って行ってしまったのが見えて慌てて追いかける。

「もうすぐ帰るし、その後にでも会おうか?」
『そうね。私もそう思って電話したの』
「ほんと?じゃあ、家に行けばいい?」
『ううん、今、出先なの。ウエストハリウッドにいるんだけど…そこのバーで会える?』
「うん、全然、構わないよ?じゃ、今から行こうか?」
『そうね…。私も後10分ほどで行けるから先に店で待ってる。あ、店の名前は"ブルジョア"って言うの』
「OK!そこなら知ってるから、すぐ行くよ」
『うん、じゃあ待ってる』
「うん、後でね?」

そこで電話を切って皆に声をかけた。

「あのさ〜やっぱ俺帰るね」
「え?どうしたんだ?」

レオがと手を繋ぎながら振り返った。
僕は、と手を繋いでるのを見ながら、内心、くそぅ〜と思ったが、ここは我慢するしかない。

「ん。ちょっと野暮用でさ?夜には帰ると思うけど」
「ああ、デートか?ま、せいぜい振られないように頑張れよ」
「む!分かってるよ!じゃーね!」
「オーリー、頑張ってね?」
「ありがと〜〜っ」

僕は最後にを抱きしめると、ジョシュとレオから蹴りを食らったが(!)そこは我慢して暫しの別れを告げ、アニスの元へと急いだのだった。












イライジャ





「良かったね〜。ダンのプレゼントも決まってさ」
「うん。ありがとう、リジー。お金も半分出してくれて」
「いいんだ。これでダンも楽器弾けるようになったら一緒にセッションしたいなぁ」

僕はそう言いながら腕の中にあるダンへのプレゼントのギターを持ち上げた。

「はぁ〜でも人ごみ歩くと疲れるなぁ…。最後は囲まれるし…」
「そりゃジョシュがサングラス取るから…。一番、大きいんだしバレるの当たり前だよ」
「だってサングラスしてたら時々、目が疲れるんだよ。仕方ないだろ?」

ジョシュは苦笑しながら家の中に入って行った。僕と、レオもそれに続くと、いい匂いがしてくる。

「わぁ〜今夜はシチューだ!」

が嬉しそうに、そう言ってキッチンの方へ走って行く。
僕はリビングに行って疲れた体を休めるべくソファーに寝転がった。

「お帰り。どうした?グッタリして」
「ああ、父さん…買い物してきてさ〜。人ごみは疲れるんだよ」
「ああ、今日は凄いだろうなぁ」

父さんは呑気に笑いながら本を閉じると、窓の方を指さした。

「そう言えばイルミネーション出来てるぞ?」
「え?ほんと?」
「ああ、今年も凄く奇麗だよ。スイッチ入れてから見てみろ」
「やった!」

僕は疲れた体を起こしてベランダの窓を開けると、薄っすと暗くなった庭に出てみた。
そしてスイッチを見つけて入れてみると一斉にイルミネーションが光りだす。

「うわぁ〜奇麗だ…」

家を囲った塀の周りに何十万個という電球が飾られ、キラキラと光を発している。
それは去年のよりも凄く奇麗だった。

「わぁ、奇麗!」
「わぉ!凄いな」

とレオの声がして振り向けば二人も庭に出てきた。

「ツリーと一緒に光ってて凄く奇麗ねっ」
「ほーんと。こりゃ、また明日のニュースで流されるね」

僕の腕に自分の腕を絡めてきたの頬に軽くキスをして、そう言えば、も笑顔で頷く。
毎年、家に飾られるイルミネーションはマスコミも騒いで取材しに来るほどだ。

「さぁ〜後は、やる事もないかな?一応、明日の準備は済んだだろ?」
「そうねぇ…。明日はお客さんを出迎えしないと…」
「それはの仕事!奇麗に着飾って出迎えしろよ?」
「うん」

レオがの額にキスしながら、そう言えばも張り切って頷いた。
そこにジョシュが顔を出した。

「うわ〜出来たんだ。奇麗だな」
「でしょ?夜になれば、もっと奇麗よ?きっと」
「ああ。楽しみだな」

ジョシュも目を細めてイルミネーションを眺めている。
そして軽く伸びをすると、「ちょっと寒いな…。、中へ入れよ?風邪引くぞ?」と言って自分も入っていく。
それにも笑顔でついていった。

「あ〜腹減ったな…」

レオがそう呟いたのと同時に僕のお腹もぐぅっと鳴り、互いに顔を見合わせた。

「オーリーが帰る前に食べちゃおうか」
「ああ、そうしよう」

二人で、そんな事を言いながら家の中へと入って行く。

そこへ丁度、エマが顔を出し、「食事できたわよ?」と微笑んだ。















「オーリー、遅いねぇ…どうしたんだろ」
「そうねぇ…。せっかくオーリーのリクエストでシチューにしたのに…」

エマとお皿を片付けながら私も時計を見てみる。
夜の11時。
少しだけ待ってみたものの、レオとリジーがお腹が空いたと騒ぐので、先ほど皆で食事をしたところだった。
そのまま父さんやレオ、ジョシュはお酒を飲み出したが、リジーはお風呂といって部屋へ戻ってしまった。

「でもデートなら帰って来ないかもね?久し振りだと思うし」
「そうね。まあ明日には戻ってくるでしょ?パーティの準備もあるし」
「うん。オーリーはお庭の担当だから帰ってくると思うわ?」
「そう。明日は朝からシェフの人が来るし早起きしないと…私、もう寝るわね?」

エマはそう言って水を止めると手を拭いている。

「そうね、買い物も疲れたでしょ?今夜はゆっくり休んで?」
「ええ。も今日は早く寝るのよ?お休み」
「お休みなさい」

私がそう言って微笑むと、エマはキッチンを出て行った。

「ふぅ…」

私はちょっと息をつくとリビングに戻って、父さんや、レオ、ジョシュに、「私、もう寝るね?」と言った。

「ああ、そうか。明日もあるしな?」
「うん。パパ達も早く寝てね?」
「ああ、分かってる」

父さんも笑いながら頷くと、私の頬にキスをして、「お休み」と言った。
その後にレオとジョシュもキスをしてくれる。

「お休み、
「お休み」
「お休みなさい。レオ、ジョシュ」

皆にそう言って私は自分の部屋へと戻って行った。

「はぁ〜…何だか今日は疲れちゃった……」

ソファーに座ってシートに凭れると軽く息をつく。

明日は…早く起きてダンの好きなプリンとクッキーをエマと一緒に作らないと…
料理はシェフがやってくれるが、並べたりするのは皆でやらないといけない。
庭にもテーブルを並べたりするから、それはオーリーとジョシュの仕事だった。
レオとリジーはリビングの中を少し広くして、ルームバーを使いやすくする方の担当だ。
私はと言えば、ほぼエマの手伝いで終わる。

「明日は忙しいかな……」

そう呟いて、早く寝ようとバスルームに向かう。

この時、私は皆に買ったプレゼントを事務所に取りに行くという事を、すっかり予定に入れておくのを忘れていたのだった――




 






ちょっと長くなっちゃって最後まで間に合わなかったので、
続きは週末にでもアップします^^;