The present of holy night.. 〜クリスマス、ハリソン家は大騒ぎ…番外編&その後







日付も変わり、クリスマスも終わった。
賑やかだった街から少しづつネオンも消えて、サンタの格好をした人達も、何処かへと帰って行く。
売れ残ったクリスマスケーキやシャンパンも片付けられ、明日からは、また普段の日常へと戻って行くのだろう。
だが、ここで少しだけ時間を遡り、ハリソン家のパーティを、ちょっとだけ覗いてみれば…





父の場合





「ああ、。こっちに来て飲まないか?」

私がヴィゴやリジーサラたちと一緒に飲んでいると、庭先に愛娘のが出てきた。
彼女は嬉しそうに駆け寄ってきて私に奇麗にラッピングされた箱を差し出すと、

「パパ…これクリスマスプレゼントなの」

と言ってニッコリと微笑む。

「私にか?」
「うん」
「おぅ、ありがとう!大事にするよ!」

私は嬉しさのあまり立ち上がってを抱きしめた。
だがはクスクス笑いながら、「やだ、パパ。まだ見てないじゃない」と言って私を見上げてくる。

「あ、ああ。そうか…すまんすまん」

ちょっと頭をかきつつ笑って誤魔化しながら、その包みを開けてみると何と私に、きっと似合うであろう渋いサングラスが出てきた!

「これは…新作のサングラスじゃないか」
「うん。きっとパパに似合うなぁと思って支配人と相談しながら決めたのよ?」
…っ」

そんな可愛い事を言ってくれるを再び抱きしめると彼女の頬にキスをした。

「ほんとに、ありがとう!大事に使わせてもらうよ!」
「うん。あ、あと、これネクタイピンなの。使ってね?」
「こ、これもくれるのか…?いやぁ…ヴィゴ…私は嬉しいよ…っ」

隣で微笑ましそうに私達を見ていたヴィゴに、そう言えば彼もまた笑顔で、「良かったですね」と言ってくれる。
サラやキーラも、サングラスをかけた私を見て、

「良かったですね!とっても似合ってるわ?」
「ほんと!渋いです」

なんて言ってくれている。
私は酔いも手伝って少し涙ぐんでしまった。

「今年もいいクリスマスだな…。いいプレゼントを貰ったよ」
「やだ、パパ…大げさよ?」
「いやいや……。毎年、こうしてプレゼントをもらっているが、やはり何度目でも嬉しいもんだ…。子供はいいなあ、ヴィゴ!」




バシン!




「う…っ」


私は嬉しさのあまりテンションが高くなり、つい彼の背中を叩いてしまった。
ヴィゴは前のめりになって顔を顰めていたが、私の笑顔につられて一緒になって笑っている。(まあ顔は引きつっていたが)

「ハリソンは幸せものですね?こんな可愛らしい娘さんがいて…」
「ああ、そうだな?息子達には苦労が絶えないが(!)娘はいいもんだ……」
「いや、それは、この家の息子達は特別、飛んでるからでしょう……?」

ヴィゴはそう呟くとチラっとリビングに視線を向けた。
それには私も思い切り苦笑いを浮かべる。するとがクスクス笑いながら、

「じゃ、今から飛んでるお兄様たちにもプレゼント渡してこなきゃ!またね?パパ!」

と言って、リビングの方に走って行ってしまった。
それにはヴィゴも少しだけ寂しげな視線を送っている。

「ハリソン…」
「ん?何だ?」
「そろそろ私もに気持ちを伝えたいんですがね……」

苦笑しながら、そう言うヴィゴに私は思い切り顔を顰めると、サラやキーラも聞こえないフリをしながらワインを飲んでいる。

は誰にもやる気はないぞ?ヴィゴ」
「……また、それですか?彼女も21歳なんだし、そろそろ恋人くらい……」
「ダ・メ・だ!」
「はいはい……」

そうキッパリ言い切るとヴィゴも、だんだん私の性格を分かってきたのか、笑いを噛み殺しながら両手を広げている。
それには黙って飲んでいたイライジャも小さく噴出している。

「全く……彼女を、この家から出さない気ですか?」
「出来れば、そうしたいもんだな?」
「結婚もさせる気はない?」
「Of Course!」
「…………はぁ……」
「む。何だ、その溜息は!ヴィゴ……お前もしかしてと結婚しようなどと……っ」
「嘘!ヴィゴ、そうなの?」
「そんな恐れ多い」

私とイライジャの言葉にヴィゴは、そう言いながらも澄ました顔でワインを口に運んだ。
そんな彼を横目に、

は外に嫁には出さんぞ。この家に来た時から決めているんだ」

と言ってやると少しだけ眉を寄せてヴィゴは肩を竦めた。


「なら……息子と結婚でもさせる気ですか?」


「「「え……?!」」」


ヴィゴの何気ない一言に、サラとキーラが驚いたように、こっちを見た。
イライジャにいたっては大きな瞳を更に大きくして私を見つめている。
女性陣は…まあ、おそらく二人とも息子の誰かに惚れているのだろう。
まあ、私に似て皆、男前だからモテるのは仕方ないな、うん。(血は繋がってないけど)

「まあ、それもいいな?」
「は?」

ヴィゴの質問に、ニヤリと笑って答えると、その場にいたイライジャ、サラ、キーラも口を開けて驚いている。

「ちょ、ちょっと父さん、本気?!僕たちの誰かと結婚させるって……」

イライジャは動揺しつつ私の隣に座って顔を覗き込んできて、私はちょっと得意げに微笑んだ。

「まあ、それもいいかな?と思っているだけだ」
「それもいいかなって、そんな簡単に…」
「だって、そうすればを嫁に出さずに済むだろう?いい考えじゃないか!お前はが奥さんになるのは嫌なのか?」
「い、嫌って、そんなこと考えたことないし分からないよっ」

イライジャは少し顔を赤くして視線を反らし、ワインをぐいっと煽っている。
ヴィゴはヴィゴで、かなり呆れた様子で私を見ているし、キーラにいたっては少し悲しげな顔でリビングの方に歩いて行ってしまった。

ちょっと爆弾発言をしすぎたかな?まあ、クリスマスだしいいか…!(オイ)

私はからのプレゼントを手に一人、気分良くワインを飲み干したのだった。











長男の場合





「はい、レオ。クリスマスプレゼント!」
「お、アルマーニのサングラス!!ありがとう、!」

俺は可愛く差し出してくるプレゼントを受け取り、を思い切り抱きしめ両頬にキスをした。

「今年はね、皆のプレゼントはサングラスにしたの」
「嬉しいよ。しかも新作だろ?も俺に似てセンスがいいな?」
「レオったら」

はクスクス笑いながら俺の腕をするりと抜けて、

「じゃ、皆にも渡してくるね?」

と今度はダンとジャレているオーランドの方に歩いて行った。
俺はちょっと笑みが零れつつ、から貰ったサングラスをしてみる。

(やっぱりは俺の好みを分かってるよ…)

チラっとを見れば、プレゼントを貰って大喜びしているオーランド。
その横で面白くなさそうにしているダンに、俺は苦笑した。

「…何、笑ってるの?」

突然、声が聞こえて振り返れば庭からキーラが戻って来たのか、こっちへ歩いて来る。

「ああ、いや…オーリーとダンの間の火花が見えてね。あ、キーラ飲んでる?ワインはどう?」
「ありがとう…。いただくわ?」

彼女は、そう言って俺の隣に静かに座った。
俺が彼女のグラスにワインを注いであげると嬉しそうに目を伏せ、「ありがとう」と呟く。
少し酔っているのか頬が、ほんのりと赤くて年齢の割には色っぽく見える。

「父さん達の相手をさせて悪いね。もう放っておいてもいいからさ」
「いえ…楽しかったわ?ハリソンもヴィゴも楽しい方達ね?考えも飛んでらっしゃるし…(!)」
「そう?まあ…父さんは…天然キャラだしね。ヴィゴも話が上手いから」
「ええ。今、サラも一緒になって楽しそうに飲んでるわ?」

そう言って庭の方に視線を向けた彼女に続き、俺も視線を向ければ確かに、サラが父の隣に座り、そのうえリジーも加わり楽しそうに(?)笑っているのが見える。

はぁ…サラもジョシュのとこに行けばいいのに。ジョシュなんて鈍感だから、かなり積極的にいかないと気づいてくれないぞ…?
それとも最初は父さんと仲良くなるつもりかな…

そんな事を考えていると、サラが戻って来るのが見えた。

お…やっとジョシュのところへ行くのかな…?ジョシュはと言えば…ワインが足りなくなったからかキッチンへ取りに行った様子だ。


「レオ?」
「え?」

よそ見をしているとキーラが少し寂しそうに俺を見ている。

ああ、彼女の目……何だかヤバイかも…でもの友達だしな…
他の女と同じ扱いをするわけにはいかない。

「キーラ、何かカクテルでも作ってあげようか?」
「…ほんと?」

その一言でキーラは嬉しそうに微笑んだ。












二男の場合





「嬉しいよ〜〜っっ〜〜!!ありがとう〜〜!」
「キャ…オ、オーリー苦しいわよ…っ」

からプレゼントを貰った嬉しさのあまり、思い切り抱きつくと、隣ではダンが向かいではドムがムっとした顔で僕を見ている。

へへーん。勝ったね、勝ったね〜!どぅだ、おまえら!(大人気ない)
ちょっと得意になりつつの頬にチュッチュっとキスのプレゼントをしてあげてから彼女を解放した。

「ねね、似合う?似合う?」

貰ったばかりのサングラスをつけると、も笑顔で、

「うん、すごーく似合うよ、オーリー!」

なんて言ってくれる。僕はそれだけでハッピーなのさ!!

「うわーい、嬉しいよぉ〜〜!!これ大事にするねっ」
「うん。じゃ、ジョシュにもあげて来るね」

はそう言って僕の腕から抜け出そうとするけど、僕が離すわけがない。

「ダメダメ。
「え?」
「今度は俺からのプレゼントを受け取ってくれないと!」

僕はそう言って先ほど必死に取りに行ってきたへのプレゼントをソファーの後ろから取り出した。
それにはダンもドムも身を乗り出して見ている。

「はい、これは俺からのプレゼント!」
「オーリィ…ありがとうっ。わ、何だろ〜」

も嬉しそうに、その大きな箱を受け取ると、リボンをほどいていく。僕は、それを見ながらワクワクしていた。

これをカタログで見つけた時、絶対、今年のクリスマスのプレゼントにしよう!と、すぐに申し込んでしまったのだ。
この聖なる夜にはピッタリさ!

が箱を開けるのを見ながら、僕はドキドキしていた。

「わぁ…。何?これ………ドレス…じゃないよね…?」

は箱の中にあった真っ白な服を手にとり、首を傾げている。
そして、それを全部出してみた時、の顔が笑顔になった。

「うわぁ……天使?!」
「その通り!これはパジャマだよ?」

僕が胸を張って、そう言えばダンもドムも口を開けて、そのパジャマを見ている。

「あ〜羽がある!すっごく可愛いわ?オーリー!」

は嬉しそうに、そのパジャマを胸に当てて喜んでいる。
そう、このパジャマは天使をイメージして作られたもので真っ白でシンプルなデザインなのだが背中には奇麗な羽があしらってあるのだ。
しかもナイトキャップつきで天使の輪が描かれている。どうだ!これぞ、まさしくにピッタリじゃないか!

ダンとドムは頬を赤くしながら、が天使のパジャマを当てている姿を見ている。
どうせが、これを着ているところを想像でもしているんだろう。スケベだな、ほんとに!!
特にドムは鼻血を出しそうな勢いで、ガン見していて僕は危険を感じた。

「あ、。仕舞って仕舞って。今夜はこれ着て寝てね?」
「うん、ありがとう、オーリー!」

は僕に笑顔でお礼を言うと無邪気に抱きついて頬にキスをしてくれた!

うぅ〜これぞ至福の時!!

そこで口を尖らせているダンとドムに、僕はちょっと鼻を高々にあげて見せれば額に血管が浮き出てきて、ちょっと怖い(特にドム)

ま、でも、これは兄貴の特権だからねーー!

なんて思いつつニヤニヤしていると、後ろからリジーが歩いて来て、「を離せっ」と後頭部を小突かれた!

ほんと素敵な家族だよ……











三男の場合





僕はサラと話してからキッチンを出てリビングに戻った。
するとが笑顔で駆け寄ってくる。

「ジョシュ、これクリスマスプレゼント!」
「え…?」

そう言って目の前に出されたグッチの箱を、暫し見つめてしまった。

「あ、ありがとう…」
「ううん。ジョシュも素敵なインテリア、ありがとう!さっき見て来たわ?パパのソファーと凄く合うの!」
「ああ、イタリアのインテリアデザイナーの店で買ってきたから…良かったよ、喜んでもらえて」
「うん、凄く嬉しい!あ、それ、して見せて?」
「え?あ、ああ」

からのプレゼントを開ければ、そこには渋いサングラスが入っていた。

「わ、かっこいいじゃん」
「でしょ?絶対ジョシュに似合うと思うの」

はワクワクしたように言いながら僕を見上げてくる。
その笑顔にちょっと微笑むと、そのサングラスをかけてみた。

「わ…ジョシュ、かっこいい!」
「そ、そう?」
「うん!凄く似合ってるわ!思った通り」

無邪気に喜んでいるに、少しだけ照れくさくてサングラスを外した。
そしてを抱き寄せ頬にキスをする。

「ありがとう、。大事にする」
「うん。ジョシュは大きくて目立つから外出する時は必ずつけてね?」
「ああ、そうするよ」

の言葉に思わず吹き出しながら、僕はもう一度の頬にキスをした。

その時、リジーが大きな箱をダンに手伝わせながらソファーのところへ運んで来たのが見えた。











四男の場合





「あ、リジー。これクリスマスプレゼント!」

がジョシュのところから今度は僕のところに走ってきて可愛い包みを差し出した。

「わ、ありがとう。何だろ?」

そう言ってリボンを解いて中を見てみればグッチのサングラスだった。

「それね、ジョシュと形違いなんだけど今秋の新作モデルなの」
「へーっすっごいかっこいいよ!ありがとう、!」

僕はそう言って頬にキスをすると、そのサングラスをかけてみた。

「どう?似合う?」
「うん、かっこいいよ、リジー!」
「ほんと?サンキュ!あ、それと……これは僕からのクリスマスプレゼント!」
「え?あ…これ…オーディオセット!」
「うん、前に今使ってるのが調子悪いって言ってただろ?だからさ」
「うわー嬉しい!ありがとう、リジー!」

はそう言って僕に抱きついて頬にキスをしてくれた。

「大事に使うね!」
「うん」

そして僕は一旦、立ち上がるとに、「今、ダンのプレゼント持ってくるから待ってて」と耳打ちをする。
それにはも軽くウインクした。
そのまま僕はリビングを出て二階に上がると自分の部屋から、と二人で買ったギターを取り、すぐまた下へと向かう。
リビングに入ると、ダンがに何かプレゼントを渡している所だった。

「わ、いいの?ダン!」
「うん、もちろん。、それ欲しがってただろ?あと…これはロケの時、使って?」
「え?これも…?いいの?」
「もちろん」

ダンはそう言って少し照れくさそうに微笑んでいる。
見ればダンがあげたのは、ヴィトンのショールで淡いベージュはに、よく似合う。
15歳の男の子があげるにしては何ともセンスのいいプレゼントで、それだけでも驚いたんだけど、もう一つのプレゼントには僕も目が点になった。

「ダン…それ…」
「あ、リジー」
「ほうき…だろ?それ…」
「うん。が前に欲しいな〜って言ってたから大道具さんに作ってもらったんだ」

ダンはそう言って笑うとハリーポッターで出てくる空飛ぶほうきを手にした。

「ね、凄いでしょ?リジー!」
「あ、ああ。ほんと…僕も欲しいくらいだよ」

そう言って笑うとダンも楽しそうに笑っている。

「あ、ダン。これは…僕とから…クリスマスプレゼント」
「え…?!」

僕が背中に隠していたプレゼントをダンに差し出すと、さすがに驚いたのか、もともと大きな瞳が更に大きくなっている。

「こ、これ…いいの?!」
「ああ。が選んだんだ。ダン、音楽やりたいって言ってただろ?」
「うん、うわーー嬉しいよ!ありがとう、、リジー!」

ダンはそう言って僕とに抱きついてきて、思わず笑顔になった。

「ダン、ギター練習して弾いて聴かせてね?」
「もちろん!頑張って練習するよ」

ダンは僕らから離れると嬉しそうにギターを触っている。それを見ながら僕はと顔を見合わせて微笑んだ。
するとはダンの頬にチュっとキスをして、

「ダンも…素敵なプレゼント、ありがとう」

と言ってダンを抱きしめる。
ダンはと言えば、顔が真っ赤になっていて何とも恥ずかしそうだ。
そんなダンを見れば、ま、今日のところは仕方ないかな…?なんて思っていると…


「こらぁーーー!!!そこぉ!離れなさぁーーーい!!」


「GO!GO!オーリー!」



今まで我慢していたのだろう、ドムと二人で黙って見ていたオーランドが顔を真っ赤にしながら歩いて来た。
ドムに至っては拳を振り上げてオーリーを煽っている。

「な、どうしたの?オーリー」
〜〜!ダメだよ、ダンを甘やかしちゃ〜〜〜!!」
「何だよ、オーリー!自分だって甘やかされてんだろ?」
「ぬ!うるさいぞ!ダン!年々生意気になりやがって!どこの15歳がヴィトンのショールなんて買うんだ?そんな15歳いないぞ?」
「いいだろ?うちの父さんと一緒に買いに行ったら、これにしろって言うからしただけさ」

ダンは済ました顔で両手を広げている。さすが、ダンの方が一枚上上手だ。
オーリーなんて顔を真っ赤にして口をパクパクさせているし、ドムに至っては目が血走っていて超怖い。

「くそーー!よし!今年もカードで勝負だ、こらぁ!」
「望むところだ。負けたら罰ゲームだからね!」
「分かってるよ!そうと決まれば、そこで待ってろよ?今、カード持ってくるから!」

オーランドは、そう叫ぶとリビングを飛び出して行った。
は何だかワクワクしながら、


「わ〜またオーリーの(!)罰ゲームが見れるね?」


なんて言ってて楽しそうにダンと微笑みあっている。
きっと毎度の事ながらオーリーが負けると思っているんだろう。

(こんなの、とてもオーリーには聞かせられない…)

その時、カウンターで飲んでいたスタンリーがエントランスの方に出て行くのが見えて、僕は一瞬帰るのか?と思った。

だが彼はコートも着ないで手には車のキーだけ持っている。


(ああ、何か取りにでも行くのかな…)


僕は、そんな事を思いながら、何とかに話しかけようとしているドムをジロリと睨んでやった。
















(あれ……?スタンリーがいない…)

私はダンと話しながら、ふとカウンターにいたはずの彼の姿がない事に気づき、立ち上がった。
そしてソファーの隅に置いてあるバッグの中から、先ほど隠しておいたある物を取り出し皆から見えないように持つと、
そこにオーリーがカードを持って戻ってきた。

「よし、ダン!勝負だ!」
「僕はいつでもいいよ?」

そんな二人を見つつも、カウンターの方に歩いて行くとグラスだけが置いてある。

(やだ…帰ったわけじゃないよね…?どこに行ったんだろ…)

ちょっと不安になりつつ、その場に立ちすくんでいると、不意に頭にポンっと手が乗せられ驚いた。

「何してんだ?」
「あ…スタンリー?どこに行ってたの?」
「え?ああ、ちょっと車に忘れ物をね」
「何を……?」

私がそう聞けば、スタンリーは、ちょっと私を見つめてきてドキっとする。だがポケットから煙草を取り出し口に咥えた。

「これ」
「何だ…。帰っちゃったのかと思った…」
「そんな黙って帰るわけないだろ?いくら俺でもさ」

スタンリーは、そう言いながら椅子に座るとライターを出して煙草に火をつけようとした。
だが私は、その手を止めると、スタンリーは驚いたように顔を上げる。

「何だよ。禁煙か?」
「ううん。あの……これ…」
「え?」

私は隠し持っていた包みを出すとスタンリーの前に置いた。

「何だよ…?」
「だ、だから…クリスマスプレゼントよ…」

私が目を反らしながら、そう言うとスタンリーは今まで見た事もないくらいの顔で驚いている様子だ。

「プレゼントって……俺に…?」
「う、うん…。開けてみて…」

それにはスタンリーも戸惑うように何かを言いかけたが小さく息をつくと、プレゼントのリボンを解いて箱を開けた。

「あ……」

ちょと驚いたように顔を上げたスタンリーと目が合い、私はちょっと微笑むと、それを手に取り火をつけてあげた。

「どうぞ?」
「………サンキュ…」

少し困ったような何ともいえない表情を見せながらも、彼は煙草を咥えて私のつけたジッポの火に煙草を近づけた。

「これ……使ってね?」
「……………でも…」
「いいから。いつも…お世話になってる、お礼」

未だ戸惑っているスタンリーに、それだけ言うと私はオーリー達の方に戻った。
それでもチラっとカウンターに視線を向ければ、スタンリーが照れくさそうに頭をかきながら私のあげたジッポを手にして少しだけ苦笑している。
そして不意に、こっちを見てきて、彼と目があってしまった。



"あ り が と う"



ちょっと照れくさそうに口だけ動かしたスタンリーを見て、私は小さく首を振って微笑んだ。











<<26 days.12:00 a.m. or subsequent ones>>








サラ





「はぁ…今夜は、やっぱ冷えるな…」

そう呟いたジョシュの白い息が夜空へを上がるのを見ながら、私は少しだけ彼に寄り添って歩いた。
今はアルコールが回って来て体もフワフワしているから、私にしては勇気を出した方だ。

「どうした?寒い?」

優しく問い掛けてくれるジョシュの瞳に胸がドキンと跳ね上がるのを感じながら私は小さ首を振る。

「そう?寒かったら言ってね?」

ジョシュは私の頭に手を乗せて微笑むと、また手をポケットに入れて歩き出した。

(寒いわけじゃないの…ただジョシュの傍にいたいだけだから…)

そう言えればいいのに。

でも、もし、そう言えば…彼はきっと困るだろうと何となく分かっていた。
こうして優しくしてくれるのも、私がの親友だから…大事なの親友だからなのよね…?

が羨ましい…あんな素敵なお兄さん達に囲まれて愛されて……いつも、あの家族を見ると、そんな風に思ってしまう。
私もジョシュに、の半分でもいいから愛されたいな…って…贅沢なことまで夢見てしまう。

「はぁ……」

そんな事を考えていると思わず溜息が出てしまった。
いけない…って思った時には、もう遅くてジョシュが立ち止まって私の顔を覗き込んでくる。

「どうした?具合でも悪い?」
「う、ううん…。大丈夫よ?ちょっと……飲みすぎただけで…」
「そう?」
「うん。こうして夜風に当たってたら…だいぶスッキリはしてきたから」
「そっか。俺もだよ。ちょっとワイン飲みすぎたかなぁ〜」

ジョシュは、そう言いながら苦笑すると両手を上げて伸びをしながら、また歩き出した。
その時、大通りの方から一台のタクシーが走ってくるのが見えて私は小さく溜息をつく。

(ああ、もうタイムリミットだ…)

ジョシュがタクシーを止めているのを見て私は悲しくなった。
それでも、こうしてジョシュが自分から送るよって言ってくれた事が嬉しかったから…

(いいプレゼントになったかな…)

そんな事を思いながら、笑顔で手招きしているジョシュの方に歩いて行く。

「サラ、これに乗って」
「うん。ありがとう、送ってくれて」
「そんなのいいって。じゃ、風邪引くなよ?お休み」
「お休みなさい」

ジョシュの優しい笑顔に、微笑み返し私は車に乗り込もうとして、ふと立ち止まった。

「サラ…?どうした?」

ジョシュが心配そうに聞いてくる。
私は鼓動が早くなるのを感じながら、彼の方に振り向いた。



「サラ……?」


「あの…これ」


「え?」


「メリークリスマス…」



それだけ言って驚いた顔のジョシュの手に、先ほど渡せなかったプレゼントを渡した。

「お休みなさい…っ」

そう言って車に乗り込むとドアを閉める。
ジョシュが戸惑ったような顔で私に何か言ってるけど、それに笑顔で手を降ると、

「車出して下さい」

と運転手に告げた。
車は静かに走り出し、見る見るうちにジョシュが遠くなっていく。
後ろを振り返り、車を見送っているジョシュを見ながら、


「大好き……」


と言えない気持ちを口にした…。











キーラ





「美味しい…」
「そう?ありがとう」

レオは嬉しそうに微笑んで私の隣に座りながら煙草に火をつけた。
今、彼にカクテルを作ってもらったのだ。

(ほんと何でも器用に出来ちゃうのね…かっこいいなぁ…)

隣で楽しそうにオーリーと従兄弟とのダンくんとの熱戦を見ているレオの横顔に見惚れつつ、私は、またカクテルを口に運ぶ。

噂では、かなり遊んでるってことだったけど…。きっと違うんじゃないかなぁ…
こんなに優しくて素敵なんだもの。きっと女の子の方から寄って来るのよ。
だから、そんな噂がたっちゃうんだわ…。彼にしたらデートくらい付き合ったとしても、そんな遊んでるわけじゃないのかもしれないし…

「ん?どうしたの?キーラ、ボーっとして」
「う、ううん。何でも……」

彼と目が合うとドキっとしちゃって、すぐに目を反らしてしまう。
あの瞳に見つめられると、ほんとダメ…彼に見つめられた事のある女性なら、きっと同じよね…って今は恋人いるのかなぁ。

そんな事を考えながら、ふと時計を見て寂しくなった。

(もう12時も過ぎちゃった…帰らないと…。でも一つだけ聞きたいなぁ…)

「キーラ?時間、大丈夫?」
「え?あ……そろそろ…帰らないと。明日は撮影だし…」
「そう。じゃあ車呼んであげるよ」

レオはそう言って立ち上がると電話をしに歩いて行ってしまった。

「はぁ…」

彼の吸いかけの煙草から煙が立ち上がるのを見ていたら小さく溜息が出た。

あっさり言われちゃった。少しは残念がってくれないかなぁ…
やっぱり妹の友達としてしか見てくれてないのかな。その前にの事を妹として見てるのか…という事も気になるし。
さっきはハリソンも、とんでもない事を言い出すから驚いちゃった…
まさか兄弟との結婚を考えてたなんて…でも…酔ってる風だったし、もしかしたら彼なりのジョークなのかも……
ただレオは…さっきから見てたけど、に対しては本当に優しくて、まるで恋人に接してるみたいだから…
まさか…なんて思っちゃうんだけど。そんな事ないわよね…?

(はぁ…ダメダメ…こんな事を考えてたら暗くなっちゃう)

「キーラ、今、車来るから」
「あ、ありがとう……」

レオがまた私の隣に座り、吸いかけの煙草を口に運んだ。
私はチラっと彼を見れば、少し疲れているのか小さく息をついている。それを見て少しだけ胸が痛んだ。

「あの…レオ…?」
「ん?何?」

思い切って話し掛けると、レオは、やっぱり優しい笑顔で聞き返してくれる。
その瞳にドキッとしながらも、なるべく普通に微笑み返した。

「あの…レオは…こうしてクリスマスは毎年、家族で過ごしてるの?」
「ああ、そうかな?ずっと家族と過ごしてるよ」
「恋人…とは……?」
「恋人?」
「ええ…。レオなら…今まで恋人とクリスマスは過ごしてそうかな?って思って…」

私がさりげなく、そう言うとレオはちょっと笑って首を振った。

「俺は女性と二人でクリスマスを過ごした事ってないんだ。いつも、こんな感じだよ?」
「そ、そうなの……?」
「ああ、変かも知れないけどね。うちの家族は皆、そうだよ。その前に恋人もいないんだけどさ」
「嘘…。だって皆、凄くモテるじゃない…」

彼の言葉に唖然としつつ、そう言えばレオは、ちょっと微笑むだけで答えようとはしなかった。

「じゃあ…今も恋人は……」
「ん?ああ、皆いないんじゃないかな?あ、オーリーはイヴに振られて帰って来たしさ」
「え?あ、あの…彼女にってこと?」
「そう。ほら、オーリーってにばっか構ってて彼女の事をほったらかしてたし?仕方ないっちゃ仕方ないんだけどさ」

そう言ってレオは、またダンくんに負けて顔に悪戯書きされているオーリーを見ながら苦笑している。

そうか…やっぱり彼らが一番大切にしてるのはなんだ。
恋人よりも、ずっと大切に想ってるのかもしれない。

「キーラ?どうした?」
「あ…ううん、何でもないわ?」

諦めにも似た気持ちを押し殺し、私は笑顔で首を振った。










レオナルド




「あれ?は?」

俺はキーラを見送ってから、未だ熱戦を繰り広げているオーランド達の方に歩いていき、の姿がない事に気づいた。

「え?あ、あれ?!がいない!」

オーランドもダンもドムもリジーも皆が気づかなかったようで驚きながら辺りを見渡している。

「もう寝たのかな?」

俺は軽く息をついて、そう呟くと、突然ドムが勢いよく立ち上がった。

「うぉー!あのキザ男もいないぞ?!」
「え?あ、ああ…スタンリーのこと?そう言えば…。きっと泊ってくんだろ?ゲストルームに行ったんだよ。あ、が案内してるのかも」

リジーがそう言えば、ドムが真っ青になっている。

「な、な、何だとぉぉう?!あ、あのキザ男が、と、と、泊って行くって…。し、しかもと一緒にゲストルームにぃい?!」

何をどう聞いて、そうなったのか疑問だったが、俺は勝手に勘違いして、サッサとを諦めてくれればいと思った。

「ああ、そうだな?きっと。前に泊った時も、が彼の部屋に行ってたし…な?リジー」
「え?!あ、ああ…。そ、そう…だったかも…」

リジーは俺がウインクすると顔を引きつらせながら何とか相づちをうっている。
やはりリジーはジョシュよりも、ドムに後ろめたさが少しはあるのか、わざとらしい返事だった。
なのにドムは、それにさえ気づかず、今度は顔を真っ赤にしている。



「ぬ、ぬゎんだとぉう?!俺のと部屋で、な、何してやが……ーーーーっ?!」





ドカッ!!





「ってぃ!」




聞き捨てならない言葉を吐いたドムに俺の蹴りが炸裂したのは言うまでもなく、ドムは、その場に蹲っている。

「"誰の"だって?ん?」
「うぅ〜…お、お兄様達のですぅ〜……」
「その通り」

俺は、そう言ってドムの背中をポンポンっと叩くと、の様子を見に行こうかとリビングを出て行こうとした。
その時、がボーっとしながら階段を下りてくるのが見えて、少しだけホっとした。

(まあ…彼が何かするはずないか…)


「あ、レオ……」
「どうした?まだ寝ないのか?」

歩いて来たを軽く抱き寄せ、額にキスをしながら微笑むと、は目を伏せて頷いた。

「う、うん…。ちょっと片付け手伝おうかと思って……」
「でも…明日は仕事だろ?いいよ。俺達で少しやっとくから」
「え…?でも…」
「いいから。ジョシュも、そろそろ戻ってくると思うし皆でやっとくよ。それに…今夜は手伝ってくれるっていう優しいドムもいる事だし?」

俺がそう言ってドムを見れば奴は慌てて立ち上がった。

「お、俺がやっとくからは寝ていいよ?!」
「ドム……ありがとう」

に、そう言われてドムはすっかり舞い上がっている様子。

「い、いや、お礼なんて…そんな…はははははっ。大丈夫!掃除は大好きなんだ!」

頬を赤くしながら張り切っているドムを見て俺は、ちょっと、いい事を思いついた(!)

「へぇ…。そーんな掃除が好きなんだ〜ドムくんは」
「あ、ああ!大好きさ!毎日、掃除してるくらいだよ!あははははっ」
「ふ〜ん。じゃ、庭はドムに頼んじゃおうかな〜?」
「ああ、任せたまえ!!そーんな庭くらい!!俺の手にかかれば、ちょちょいのちょいだよ、君ぃ!」
「おぉ〜頼もしいなぁ?ドムは。なあ?
「ええ、ほんと、ありがとう、ドム。じゃ、悪いけど…私は先に寝かせてもらうわね?」
「ああ、安らかに眠ってくれ!後の事は俺に任せて!」

ドムは鼻血でも吹きそうな勢いで、そう言ってに笑顔で手を振っている。

「じゃ、お休みなさい」
「ああ、お休み。ゆっくり寝ろよ?」
「うん。レオも片付け終わったら早く寝てね?」
「ああ」

の頬にキスをして頷けば、すぐにオーランドが飛んでくる。

「お休み〜〜。今夜は俺の天使のパジャマ着て寝るんだよ〜!」
「うん。あれ着て寝るね?ありがと、オーリー。でも…オーリーも、その顔、寝る前に洗って寝てね?」

はオーランドの一本眉毛に続き、鼻の穴の周りが黒いのを見ると、笑いを噛み殺しながら頬にキスをしている。
そこに、その悪戯書きをした張本人が歩いて来た。

「お休み、
「あ、ダン、お休み。ダンも早く寝るのよ?」
「うん。あと一ゲームしてから寝るよ」

ダンは、そう言ってオーランドの方をチラっと横目で見ている。
それに気づいたオーランドは口を尖らせ、

「受けて立とうじゃないかっ」

と言って胸を張った(何度負ければ気が済むんだ?)
その間にリジーはの頬にキスをして、「お休み」と言いながらハグをしていた。

「お休み、リジー」

は皆とハグを交わすと手を振りながらリビングを出て行った。
それを確認すると、

「さて、と…。じゃあ各自、片付けでも始めるか」

と言ってドムを見る。
ドムは未だ赤い顔でポ〜っとしながらドアの方を見ていて、フニャフニャしているから、まるで、こんにゃくのようだ。

「おい、ドム!聞いてるのか?」
「え?あ、な、何でしょう。お兄様!」
「お兄様じゃないって言ってるだろ!とにかくお前は庭担当な!ま、頑張って片付けてきてくれ!」
「りょ、了解しました!」

ドムは酔ってフラフラしているものの、張り切って返事をすると、そのまま庭へと出て行った。
それを見ながらリジーが軽く苦笑している。

「レオ〜わざとドムを寒い庭に追い出しただろ?」
「あ、バレた?だって、この寒いのに庭に出るの嫌だろ?」
「うわ〜レオもほんと冷血だよね?尊敬するよ」

リジーは肩を竦めて苦笑いをしているが、俺は指を軽く振ってニヤっと笑った。

「チッチッ。ほんとの冷血人間なら、こんな事もやるんじゃないか?」

そう言って俺はベランダの窓を閉めるとカチャっと鍵を閉めてしまった。(ついでにカーテンも)

「うわ!レオってば鬼!」
「まぁね。自覚してるよ。ああ、俺はカウンター片付けてるから、あと一時間もしたら開けてやって。庭で凍死されても困るから」

俺は澄ました顔で、そう言うとテーブルの上のグラスから、まず片付け始めた。

その時、窓を叩く音と共に、


「あの!お兄様〜!!何故か鍵がかかってるんですけどぉ〜〜〜〜っ?!お兄様〜〜〜ぁ〜〜!!」


という情けない声がリビングに響き渡り、ちょっと噴出しそうになった。


だがそれを無視して楽しそうにカードゲームを続けるオーリーとダンの方が俺には、よっぽど冷血人間のように思えるんだけどな…。











ドミニク





「ヘーックッション!」


「「「あはははははっ」」」


「ぬ!笑うな!」


俺は盛大なクシャミをしつつ呑気にケタケタを笑い出した、オーランド、イライジャ、ダンの3人に怒鳴り散らした。

「ほんっと最悪な家族だよ!!ゲストを庭先に締め出すなんてぇ〜へ〜ックション!!」
「あははは…っ。まあまあ…でも、ちゃんと片付けてくれてるじゃん!サンキュな〜ドム!」

イライジャはそう言いながら俺様のグラスにホットワインを注いでくれている。
俺は鼻をグスグス言わせながらも仕方なく許してやった。

「だいたいだな!今日は俺は殆どと話さえしてないんだぞ?!お前等が邪魔しくさるから!」
「仕方ないだろぉ?は…」
「お気に入りの彼を連れて来たからな?」
「………………っ?!」

振り返ればキッチンから悪魔…もといレオがニヤニヤしながら戻って来る。
が、俺は今の言葉で、すでに脳の機能が停止しそうになって(!)クラリと眩暈がした。

「レ、レオ…そ、そ、それは…あのモデル気取りのキザ男の事か?!」

俺が必死にレオにしがみついて、そう聞くと徐に嫌な顔で、

「くっつくなよ!そうだよ!」

と俺から離れてオーランドの隣に逃げていく。
そして何だか驚いた顔で走って行ったダンとか言う従兄弟に何やら耳打ちをしていたが俺には、そんなのドゥーでも良かった…

「嘘だろ…。そんなに気に入っていると…」
「まあ仕方ないじゃん?彼、かっこいいしねぇ〜。ま、俺より落ちるけど!」
「オーランドは黙ってろっっ!!」
「む!」

ああ……っ!俺様の天使が……あんなキザ男に心が向いているだとぅ?!!
この聖なる夜…愛の証のプレゼントを用意してきたというのに…!渡せなかった上に、この事実!!OH!NO〜っ!!神様、仏様!(?)
イエスキリスト様ぁ〜〜!!頼むから、夢だよ?って言ってくれェェ!!!


「大丈夫?ドム…」
「うぅぅ〜〜リジ〜〜〜〜〜〜っっ!!」


俺は優しく肩を抱いてくれたイライジャに思い切り抱きついた。

「何でだ?!何で、そんな、お前等兄貴が冷静でいられるんだっっ?!
可愛いが、あのモデル気取りの男に攫われてもいいと?!!」
「おい、ドム……。スタンリーは"モデル気取り"じゃなくて、"元モデル"だ。それに、いいも悪いもが好きなら仕方ないだろ?」

レオが悲しげに溜息をつきながら、肩を竦めているのを、隣のオーランドも、うんうんと頷いている!


「そんなぁ…!あんなキザ男のどこがいいというんだいっっ?!それに俺様の時は、あんなに反対したくせに、あの男ならいいと言うのかぁ!!」

「「「少なくともドムよりはね」」」

(ぐぅ!!こ、このバカ兄弟3人組みめ!!!ヌケヌケと、そんな事を…っっ!!!)

「ほら父さんも気に入っているみたいだったし?」
「ああ、そうだったね〜!俺もスタンリーくんは大好きさ!」
「まあ〜仕事も出来るしいいんじゃない?僕も賛成かな?ごめんな?ドム」
「リ、リジー!!貴様、親友の俺様よりも、あのモデル気取りの男がいいとでも……」
「「「だから元モデル」」」
「ぬ…っっ、んなこたぁードゥーでもいいっっ!!」




ガンッッ!!!




「っで!!」


3人に突っ込まれ俺様は思い切り叫び倒した瞬間、物凄い激痛が俺様の後頭部を襲った!!


「ぬぉーーーだ、誰だっ」


「うるさいんだよ、夜中に」


「「「「ジョシュ!!!」」」」


その場にいた全員が振り返り、そこで呆れたように立っているジョシュを見上げた。

「お帰り!ちゃんと送って来たか?」
「ああ、それより…皆、寝たのか?も父さんも……」

リビングを見渡し、そう聞くジョシュに、オーリーが笑顔で頷いた。

「うん。二人とも、さっき寝たよ?」
「そっか。遅かったかな?」

ジョシュは溜息をついてソファーに座ると、オーランドの間抜けた顔を見て、プっと噴出した。

「おい、オーリィ…お前、何回負けてんだよ?」
「う、うるさいな!これからさ!」
「これからって、もう夜中だろ?寝ろよ、いい加減。眉毛も繋がってることだしさ?」
「負けたままじゃ寝れないよ!」

オーランドは熱くなりながらカードを握りしめて、「ああ!曲っちゃった!」と慌てて手で伸ばしている。
その前に俺様は殴られた後頭部が痛くて、擦りながら立ち上がる。

「ジョ、ジョシュ!」
「何だよ。文句あんの?」

何だか機嫌の悪いジョシュは凄い怖い顔(というか目が据わっているのだが)で俺様を見上げて来て一瞬怯んだ。
が、ここは何とか勇気を振り絞り、

が…あのワケの分からない男と今、部屋で一緒かもしれないんだ!!!それでもいいのか?!!」

と叫んでみた。
それには一瞬、ジョシュの顔にも動揺の色が見えたが、レオと目を合わせ、ちょっと噴出している。

(ぬぅ…何がおかしいと言うんだっ!)

「おい、ドム…。いい加減、諦めろ。も恋人が出来るかもしれないんだしさ」
「んなっっ!!!な、何を言って…っ。が、あんな男に惚れるわけがないだろう!!!バカモノが!!」
「ああ?誰がバカモノだって?!」
「う……ぼ、僕です…」
「だよなぁ?焦ったよ。まさか俺?って思っちゃっただろ?」

(うぅ…鬼!悪魔!レオといい勝負だよ!この三男も!!)

「そ、それより…ジョシュまで、に恋人が出来てもいいと言うのか?!」
「ああ、そのこと?ま、が良ければいいんじゃない?お前よりはマシだしな〜?」
「ぐ…っっ!!!お、俺がの相手だと不満だとでも……っ」

「「「「「不満に決まってんだろ?」」」」」


(きぃー!この兄弟は〜っ!!そ、それに従兄弟までが最悪だ!!悪魔だ!デビーーールマン勢ぞろいだ、このやろう!)


俺様が怒りに任せて地団駄していると、ワインの酔いも手伝って頭がクラクラしてきた。

(う…いかん……少し頭に血が上りすぎた…)

そう思ってソファーに座ろうと歩いて行って、ついヨロヨロっとよろけてしまった。
その時、ポケットに隠し持っていた、ある物がポト…っと床に落ちてしまってギョっとした!
すぐに拾い上げようと思ったのに、ダンとか言うクソガキが、

「あれぇ?これ何?ティファニーの箱だよ?!」

と大きな声で言って拾ったもんだから、レオやジョシュが凄い勢いで、その箱をダンから取り上げている。


「うわぁぁぁぁああ!!か、返せぇぇぇぇーーーーっっ!!!」


「なに?なに?これ!!もしかしてへのプレゼントかぁ?」
「うるさい、オーランド!!返せ、俺の愛の結晶をぉぉ〜〜〜〜〜!!!」


オーランドに飛び掛ったが、瞬間、またレオの手に渡り、奴はすぐにリボンをほどいて箱を開けてしまった!

(うぉーーー終わりだ、アルマゲドンだーーーーっっ悪魔に俺の愛を奪われた〜〜!!)


「うわ!何だよ、これ!エンゲージリングじゃん!」
「げ!!ドム、こんなの送ろうとしてたのおう?!」
「ったく…最悪だな、お前!」
「ははははは!やっぱり買ってきたんだ〜〜!サイズも分からないクセにさ〜っ」


この悪魔兄弟は、そんな事を言いながら大笑いして俺様の愛の結晶を眺めている。

「うぅ〜か、返せぇぇ!!こ、これは…っっ」
「あれぇ?でも、これサイズが9号じゃない?!には大きすぎるよ?」
「あ、ほんとだな?これじゃあプレゼントしても意味がないぞ?ドム」
「そーそー。諦めなって」
「それにはゴールドは好きじゃないんだよ?プラチナじゃないとさぁ〜!」

レオ、ジョシュ、オーリー、リジーは好き勝手な事を言って俺様を笑っている。
俺は怒る前に、悲しくなってきた。


いいんだ…愛に障害はつき物さ…こいつら、皆、障害物だ!!!そう!愛は障害物レースと同じなんだ!!!


「あれ…?こいつ泣いてる?」
「あらら〜泣かしちゃったよ、レオが」
「俺かよ!お前だろ?オーリー!」
「俺じゃないよ〜!レオとジョシュが追い討ちかけたんじゃない?」
「俺もぉ?俺は事実を言っただけだって」
「ま〜どっちにしろ、これはの好みじゃないと思うよ?」
「バカ、リジー。いい加減にしないと本気で、こいつ泣くぞ?」
「だってジョシュ〜…」


悪魔たちは、互いに責任の擦りあいを始めてプルプル震えている俺様を、まるっきり無視してやがる。
それにすら言い返す気力もなく俺は目の前にあるホットワインのグラスを手にすると、それをぐびぐび〜っと一気飲みしてやった。

「うわ!ドム、もう飲むなって!」
「あ〜顔が真っ赤だよ?どうする?レオ」
「知るかよ…誰か送ってけよ?俺は先に寝るから」
「え?ちょ、ちょっと待ってよ〜〜!俺も寝るから!あ、ジョシュ、リジー後は頼むね!ダン!勝負の続きは、また今度!」
「え?ちょっとオーリーまで!待ってよ!」
「僕も寝よう〜っと!は〜疲れた!」
「おい、ダン?!お前まで…」
「お休み、〜リジー」
「ま、待ってよ!僕に押し付けるな〜〜〜!ドムは酒癖悪いんだぞーー?!」

リジーは、そんな事を言いながら皆を追いかけようとしたが、俺様はホットワインで顔が一気に熱くなり、いい気分になったので、
リジーの首ねっこをむんずと掴んだ。

「待てぃ、リジー!!」
「うあ!は、離せよ!僕も寝るんだからさぁ!」
「いぃーや!寝かせん!!俺様の愛の結晶を元通りにしろ!!」
「う…ぼ、僕がほどいたわけじゃ……」
「兄貴の責任は弟のお前が取れーーい!それに俺様の親友だろう?!」
「あ、いや…でも……っ」
「いいからウダウダ言う…へーックシッ!!」
「うあ、汚な!!!!!!」

またも鼻がムズムズしだして俺は特大のクシャミをしてしまった。


その瞬間、鼻水やらヨダレやらが全てリジーの顔に飛んでしまい、奴は思い切り叫んだ後、あまりのショックからか気絶したようだった……













<<26 days.Morning........OMAKE>>










ハリソン





「父さん!!!」
「……うぁ……」

突然、怒鳴り声と共に体を揺さぶられて、私は目が覚めた。

「な…何だ……ふぁぁああ…」

重い瞼を擦りつつ顔だけ布団から出すと、そこには怖い怖い顔をした三男のジョシュが仁王立ちしている。

「おぉ……ジョシュか…。何だ?この朝っぱらから……。ん…まだ9時じゃないか…。もう少し寝かせて…」

そう言って、また潜ろうとした時、目の前に奇麗なガラスの破片を差し出された。

「これ、ダストボックスで見つけたんだけど?」
「…………………っっ?!」
「これはバカラのグラスだよね?」
「そ、そう……なのか?私には何のことかサッパリ…」
「父さん、目が泳いでるよ」
「う………っ」

(相変わらずレオの次に怖い……っ)

「これ、さっき見つけてエマを問い詰めたら教えてくれたよ。父さん、またやったんだって?!」


(…くそぅ、エマのおしゃべりぃーー!!)


「い、いや、それはだな……。ちょっと…手が当たって……」
「昨日から見当たらないから、もしかして…と思ってダストボックスを見てみたら、これだよ!
どうしてくれるんだよ!これが凄く大事にしてたセットなんだぞ?!アンティークで、なかなか見付からないのに!」
「う、す、すまん…!その……どうにか探してくるから、このことはにだけは……っ!」

私はガバっと起き上がってジョシュにヒシっと抱きついた。
それにはジョシュも特大の溜息をついている。

「俺だってには言えないよ!落ち込むの分かるしさ……っ」
「だ、だから私が探して同じものを買ってくるから…!!」
「絶対だよ?!それと!もう父さんは割れ物には近づかないでくれよな?!いくら買い換えても意味ないんだから!」

ジョシュは、そう言うと、プリプリ怒りながら私の寝室をバン!っと出ていってしまった。

「はあぁぁぁ…。こ、怖かった……」

私は、その場にへたれこみ、思い切り溜息をついた。

まさか、こんな、すぐにバレるとは…っ!ジョシュは普段、鈍感なクセに、こういう勘だけはいいんだから!
はあ…こうなったら本気を出して同じものを探すしかない!!
そうだ、これはのためだ!
が悲しむ姿は見たくないし、あの天使のような顔で私も怒られたくはない…っ
私はに嫌われたら生きていけないんだ……!(私はオーランドかっ)


私は朝から、そう決心をすると、もう一度時計を見た。


「もう少し寝よう…………」


そう呟いて私はホクホクと布団の中に潜り込んで、気づけば3秒で眠りについていた。


それはクリスマス明けの、ある寒い朝の事だった。











やっとクリスマス編を書き終えました〜^^;
ちょっと今回はオマケって感じですね(笑)
この後に微妙に繋げていきます。翌日の話は、まだあるので(苦笑)
しっかしドムだけは最悪なクリスマスになった事でしょうね(笑)