お兄ちゃんが恋人@ 












ハリソン





私の名はハリソン・フォード。まあ、ハリウッドでも有名な俳優だ(自分で言うのも何だが)
そして有名なのは私だけではない。私の家族もまた、かなりの有名人ぞろいだ。
4人の息子に可愛い娘一人。
この子供達が皆、ハリウッドスタァというやつだ。
そして皆、血の繋がりはない家族。
そう、父親の私とも。
まあ、その辺の事情は話すと長くなるので、

"ハリソンファミリーの全て〜PRECIOUS〜THE ROYAL FAMILYS〜"

という本が出てるので、それを読んでくれ。

確かに私達は血の繋がりはないが普通の家族以上!に絆は強い。
互いを思いやり、家族の誰かに何かがあれば本気で心配もする。
だが……末っ子のの事となると、私も、そして息子達も冷静ではいられないが、このファミリーの共通点。







「な…!!何だとぉうっ?!」

「ちょ…父さん、落ち着いて!」

あまりにショッキングな話に私が思わず立ち上がると椅子がガタンっと音を立てて後ろにひっくり返ってしまい、
目の前のレオが珍しく慌てて私の肩に手を置いている。

に俺達がその事を知ってるってバレたくないんだからさ…頼むよ…」
「あ、ああ……わ、わ、分かってるよ…っ」

私は声が震えつつも落ち着こうと、棚に入っているブランデーを出してグラスに注ぎ、ストレートで一気に飲んだ。(因みに朝の9時)

し、しかし…!久し振りに帰宅して息子達や娘の顔が見れるとウキウキしていたのに!
まさか、私のいない間に、そんな大変な事になっていたなんて…!

私はネクタイを緩めると再び椅子に座った。

「そ、それで…その何とかって男は何してるんだ?!まさか、そんな事があっても共演させるなんて…」

そう言って顔を上げると、レオは軽く首を振ってソファに座った。

「それは大丈夫。スタンリーがテリーに話してウォーレンを外してもらったから」
「そ、そうか…。しかし…許せん…っ!!」

私は頭に血が上って来てダン!っと机を叩いた。

「私の娘に手を出そうなんて…!しかも無理やり…っ!そ、そんな奴は、この業界で生きていけなくしてやる!」
「俺も同意見だね。ま、所詮、モデル上がりで俳優に転向しようって奴だから簡単だろ?根回し頼むよ」
「ああ。そんなのは簡単だ。任せておけ」
「出来れば、二度との前に、あのツラ出して欲しくないからね」

レオも相当、怒っているのか我が息子ながら目が怖い。

「じゃ、ゆっくり休んで。俺は仕事だから」
「あ、ああ。頑張れよ。ん?は仕事に行ったのか?」
「もう、すっかり元気になったしね。まあ、俺らの前でだけ元気なように振舞ってるのかもしれないけど」
「そうか・・・。一目顔が見たかったんだが・・・。他の皆は元気なのか?」
「ああ。ジョシュはオフを満喫して旅行に行ったりしてるし、オーランドも相変わらず。リジーも新しい映画のロケで今はいないよ」
「そうか…。久々だから今夜は皆で何か映画でも…と思ったんだが…」
「ま、今度皆が家にいる時にね。っつか父さんも毎日帰って来たらいい話だろ?」
「む、ま、そ、そうなんだが…」

苦笑気味にそう言うレオから視線を反らしブランデーを飲む。
だが元々私はウソをつくのが上手い方ではない。
とかくレオを相手にすれば呆気なく見破られ………


「ああ・・・もしかして新しい恋人でも出来た?」

「――――っ」

「なーんだ。図星か。ま、せいぜい今度は長続きさせろよ?」

「ぐ…っ。お前にだけは!言われたくないぞっ?」


ひらひらと手を振りつつ、私の書斎を出て行こうとしたレオに、そう言えば最後に一度振り返った。

「あ、父さん」
「何だ?」
「ウォーレンのこと頼むね。あとにバレないようにしてよ?」
「ああ、分かってる。任せておけ」
「じゃあ行って来る」
「行ってらっしゃい」

パタンとドアが閉まり、私は軽く息をついた。

「はぁ…レオは相変わらず怖い…(!)」

何で父親が長男に弱いのか・・・と言われそうだが、何とでも言ってくれ!!怖いものは怖いのだ(開き直り)
特にの事に関しては一番、極悪になれるんではないだろうか。
オーランドは、オーランドで、ある意味、予測のつかない復讐をするから、それもまた怖いし、(まさかドムを使うなんて事は知らない)
ジョシュはジョシュでレオほど感情の起伏は激しくはないが静かな怒りを溜めるタイプだ。
イライジャはイライジャでストレートに感情を表現するが、実際は裏で何かやる小悪魔的なところがある。

「ふむ…となると………うちの家族は………皆、極悪じゃないかっ!!(遅)」

やっと、そこに気づいた。

世間の皆様はうちの家族の事を「ROYAL FAMILYS」なんて思っているが、そんなのは表の顔だ。
裏では極道ファミリーとでも言った方がいいんじゃないかと言う気がしてきた。
確か日本でのマフィア映画は面白かった気がする。
向こうは……そうそう。マフィア="ヤクザ"だ。
義理と人情の厚い、ヤクザ映画が多かった気がするな、うん。
こっちのマフィアなんて義理も人情もあったもんじゃないからな。
何かってーと、すぐピストルで撃ち合いするし………(何のこっちゃ)
と、とにかく!この極道ファミリー(?!)の大切な大切なプリンセスを襲おうとした罪は重い!!

"目には目を。歯には歯を"

そのバーレーン(国の名)だか、ウォンレイ(中国人かっ)だか知らんが、モデル上がりの小僧など私の敵ではない!!
長い間、この業界に携わっているハリソン様をナメるなよ?!


「ふふふふ……。どんな方法で奈落の底に突き落としてやろう…………」


私は朝から黒い事を考えつつ、ブランデーなんぞ飲みながら復讐作戦を練り始めたのだった―――











――2〜3日後……





イライジャ





「ねーねーリジー!」

ロケから無事に戻り、僕がいつものようにリビングでコミックを読んでいると、ドタバタと騒々しい足音が聞こえて来てオーランドが飛び込んで来た。

「今朝の新聞記事、見た?!」
「は〜?新聞?そんなもん見ないよ。今の時代、ニュースなんてネットで調べれば見れるからね。
新聞なんて読んでるのは未だパソコンさえ出来ないアナログなオーリーくらいじゃない?」

ソファに寝そべりながら彼の方を見もしないで、そう言った。

「むぅ!新聞は古くから情報を得る手段だぞ?!バカにするなぃ!」
「はいはい……。で?何の記事?」

朝からスネスネモードのオーリーを相手するのも嫌なので僕は仕方なく体を起こし尋ねてあげた。
するとオーリーは僕の隣に腰をかけ、持っていた新聞を広げ指を指す。

「ほら、ここ!の映画をウォーレンが降板したって記事が載ってるんだっ」
「あ……」

比較的、大きく載っていた、その記事に僕は目が点になった。
記事によると、の映画を降板した理由は、暴漢二人組みに襲われ、暫く治療が必要だ、という事だった。

「何だよ、これ?ウソもいいとこじゃん」
「だろぉ?!降板したんじゃなくて、させられたクセにさぁ!」
「でも、まあオババだって降板の理由を問い詰められればの事まで話さなくちゃいけなくなるし、あっちに理由付けを任せたんだろうけど」
「あ、そっか!なるほどね!でも……この暴漢二人組みって、もしや……」
「……………」

思わず二人で顔を見合わせた。

「だろうね……。まあ、どれだけ殴られたってウォーレンは訴える事なんて出来ないし、そう言うしかないんじゃない?」
「だよな!ここにも、犯人の顔すら覚えていないって書いてるし!こっちも酔ってたから被害届を出す事もしないってさ」
「当たり前だよ。被害届なんて出したら警察は見つかるまで犯人を探すだろうし、ウォーレンにも詳しい話を何度も聞きに行くだろ?」

僕は笑いながら肩を竦め、そう言うとオーランドは新聞に載っていたウォーレンの写真にマジックでイタズラ書きをして遊んでいる。

「こんな奴、二度と業界で働けなくしてやればいいんだよっ」
「ああ、それならレオが父さんに何か頼んだらしいよ?」
「え?ウソ!マジで?」
「ああ、その辺、レオも抜かりないだろ?」
「そっかぁー!父さんが許すはずもないしねっ。ざまぁみろ、ウォーレンめっ!ビシっ」

オーリーはそう言って、すでに誰の顔だか分からないくらいになったウォーレンの写真を指で突付いて破いている。
と、そこへエマが顔を出した。

「オーリー頼んだ新聞持って来てく……ちょ、ちょっと何してるの!」
「あ、ご、ごめん、エマ…!は、はい、これ……」

(何だ……エマに頼まれて新聞なんて取りにいったんだ……あ〜あ。エマ、怒っちゃったよ…)


「全く!何で来たばかりの新聞を破いてるの?!私、ここ楽しみにしてたのにっ」

エマはそう言いながらプリプリとキッチンに戻って行った。
どうやらエマが読みたかった記事は、ちょうどウォーレンが載っていた記事の裏面にあったらしい……
そこはポッカリと穴が開いてしまい、読めなくなってしまった。
オーリーはシュンとしながらソファで膝を抱え、小さくなっていたが、急に顔を上げると、

「でもとセクハラ野郎が共演って事にならなくて良かったね!」

と、すぐにニコニコ顔に戻っている。
その変わり身の早さには僕も思わず苦笑いだ。

「その辺はスタンリーがキッチリとオババに言ってくれたらしいからね。オババだって、自分とこの看板女優を無理やり酔わせてベッドに連れ込むような男とは共演させられないって思ったんだろうし」
「あーオババも、そう言う仕事は早いね。すぐにウォーレンの事務所の社長と話して手を打っちゃうんだからさ」

オーリーは感心したように腕を組んで、うんうんと頷いている。
ほんと単純だ。

「ま、これで後はが元気になってくれれば……ってとこかな?」
「うん。でもさぁ、、最近かなり元気じゃない?」
「空元気じゃないの?」

僕がそう言うとオーリーは、う〜んと考え込むように首を傾げた。

「そうかなぁ?ほんとに元気そうに見えるんだけど…。共演しなくて良くなったしホっとしてるのかも」
「まあ、それもあると思うけど」

僕はそう言ってコミックに目を戻す。

「あれ、リジー今日はオフ?」
「いや、午後からスタジオで撮影。そろそろ行くよ?オーリーは?」
「俺は今日で終わるんだ。夜は遅くなるかも」
「ああ、もう終わるんだ。お疲れ」
「ん〜これで少しはオフもらえるかなぁ〜!オフもらったらとデートするんだぁ〜♪」
「…………」

ルルララ〜♪と鼻歌を歌っているオーリーを横目で見つつ、僕は溜息交じりでソファから立ち上がった。


はこれから撮影に入るんだし、そんな暇ないと思うけどね」

「…………!!」


僕の一言でオーリーがピシっと固まっていたのに満足しつつ(意地悪)、仕事の用意をしようとリビングを出た。
















「はぁ〜困ったわ…。次のキャストって誰になるのかしら…」

午後の昼下がり。
さっきからテリーはウロウロと歩き回って脚本家からの電話を待っていた。
私は雑誌を見つつ紅茶を飲んでノンビリしていたのだが、目の前でウロウロブツブツされると落ち着かない。
まあ、でもテリーが焦る気持ちも分かるんだけど………

今度の映画で決まっていた私の相手役、ウォーレン・リードックは、暴行未遂の件でテリーが激しく抗議をして降板となった。
スタンリーがテリーに話してくれたのだ。
ウォーレンの事務所は、そんな事が公になるのは困るので、すぐに降板するのを承諾。
だが一応、記者達にも発表していたキャストが突然の降板となれば、事情をあれこれ聞かれてしまう。
テリーだって事件が公にされるのは嫌なので、ウォーレン側の事情で、という事にして欲しいと言ったそうだ。
それに、ちょうど(?)ウォーレンも暴行事件に巻き込まれたようで、あの自慢のお顔が見るも無残な姿になったという。
(誰だか知らないけどキスの一つもしてあげたいくらいだ)
なので事務所もそれを理由に治療入院という事にして降板となったと発表していた。

そこで急いで探さなきゃならなくなったのがウォーレンの代わりだ。
刑事の役なので多少、身長もあってアクションにも慣れている俳優。
そして少しは名の知られた人物が好ましいというのがキャスティングした人の意向だった。
今日は映画のキャスト皆で、宣伝材料用の撮影があったのだが、相手役がいないのでは仕方がないと、急遽中止になり、
今は当てはまる俳優を探すのに大忙しというわけで、当然、仕事がキャンセルとなった私は暇になる。
なので事務所で、こうして寛いでいられるのだけど……

さん、紅茶、お代わりお持ちしましょうか」
「お願い、シリア」

事務所の女の子で、私の次の付き人にもなる予定の女の子が笑顔でカップを下げていった。
と言うのも、近々スタンリーが私のマネージャーに昇格するという話があるようだ。
そうなると雑用係も任せられる付き人もいなくてはと言う事で、新人のシリアが、その付き人にあげられたのだ。
私はその話を聞いて少し驚いたのだが、今まで通りスタンリーと一緒に仕事を出来ると少しホっとしていた。

そのスタンリーはと言えば、さっきからテリーが、あの状態なのでスケジュール調整や、他の仕事の電話をかけていて、
この部屋(応接室)には顔を出していない。
ドアは開いたままになってるので時々、声がするとドキっとしてしまうんだけど……

あの夜から…何だか彼が気になってしまう自分に気づいていた。
ううん、あの助けてもらった夜よりも、もっと前から・・・何となく気にはなっていたんだろうけど。
最初の頃に比べたら、少しは打ち解けたとも思うけど、結局私は彼の事を何も知らない。
素っ気無いクセに、時々優しくて、そんな彼の事も、よく分からない。
それに、あの夜の、あの言葉………

"俺がにキス出来るわけないだろ?"

あれは……どういう意味なの…?好きじゃないから?それともスタッフと女優という関係だから……?

あれから色々考えちゃって、でも答えは出ない。
本人に聞けもしない。
スタンリーは私のこと、どう思ってるの………?



「どうぞ」
「あ……ありがと…」

不意に目の前に紅茶を置かれ、ドキっとして顔を上げた。
シリアは笑顔で紅茶のセットを置くと、また隣の部屋に戻って行く。
紅茶のカップを持って、ゆっくり口に運んでいると、シリアと入れ違いに、いきなりスタンリーが入って来た。

「テリーさん、CMの件で"M"の企画担当から電話が入ってますけど」
「え?"M"?あ、ああ…あの件ね。分かった。あ、スタンリー悪いけど、この電話に脚本家から電話が入ったら応対しておいてちょうだい」
「分かりました」

テリーは忙しそうに応接室を出て行った。
いきなりスタンリーと二人きりになり、私はドキっとした。
が、平静を装い、雑誌に目を向けるが何となく神経は彼の方に向いている。
スタンリーは私の向かいの座り、難しい顔でスケジュール帳を見ていて何となく声がかけづらい。

「…………」

最近、忙しそうだな……
テリーから引き継ぐ仕事だけでも大変なのに、次から次に入ってくる仕事の調整で頭が一杯みたい。
今年に入ってから休みもとってないみたいだし……

「……何?」
「えっ?」
「チラチラ見て。何か話でもあんの?」
「…………」

(バレてたのか……)

「う、ううん、別に……」
「急に仕事なくなって暇か?」
「え?あ……そんな事はないけど……」
「心配すんなよ。明日からはビッチリ入れてあるから寝る暇もないかもな」
「え…」

それには、つい顔を顰めて顔を上げれば、スタンリーはニヤっと笑ってスケジュール帳に視線を戻した。

「…………」

(そ、そんなに忙しいの?)

とは聞けず、そのまま雑誌に目を戻す。
その時、テリーの電話が鳴り出し、スタンリーがすぐにそれを取った。

「Hello?YES....。えっ?ああ、はい、はい……。分かりました。じゃあ、そう伝えます。はい、失礼します…」

「………?」

相手役が決まったんだろうか。
そう思って私はスタンリーの方を見た。
彼は電話を切ると、軽く息をついて私の方に視線を向けた。

「あ、あの……決まった…の?」
「ああ。一応はね。でも相手に交渉するのは、これから」
「そ、そう…。で…・誰?」

何となく気になり、そう尋ねればスタンリーは何とも言えない顔をした。

「それが―――」

「スタンリー!電話きた?」

そこに電話を終えたテリーが戻って来てスタンリーは彼女の方を見た。

「ええ。今…」
「そう、誰に決まったって?」
「それが……」

スタンリーはそう言って言葉を切ると何故か私の方を見て、軽く肩を竦めた。

(…何だろう?)

そう思った瞬間、スタンリーの口から驚くような名前が飛び出した。



「決まったのは、ジョシュ・ハートネット。交渉はこれからだそうです」

「え…っ?」

「えぇ?!ジョシュ?!」



私とテリーは心底驚いて同時に声を上げた。
それにはスタンリーも苦笑いを浮かべている。

「まあウォーレンのイメージで探す事もないって事で脚本家が彼の名前を挙げたそうですよ」
「ウソ…だ、だってジョシュ、アクション映画なんてした事ないし…」
「ま、でも今度の映画はアクション映画じゃないし、サスペンスだからな?刑事役にハマれば誰でもいいんだろ?」
「で、でもジョシュ、今はオフ取ってて……」
「ああ、だから交渉するって」
「…………」

私は驚きすぎて、それ以上何も言えなかった。
だがテリーは意外と乗り気で、

「まあ、いいんじゃない?兄妹で共演なら話題性もあるし何て言っても、恋人役なのよ?きっとヒットするわよ」
「…………!」

(そ、そうだった!!今度の映画の相手役……恋人って設定だったんだ!)


その事を思い出し、私は何とも言えない気分になってしまった。












ジョシュ






ちょうど、その頃、何も知らない俺は次はどこに旅行に行こうかと、車の中でパンプレットを眺めていた。
バレンタインデーに一度、帰国したものの、まだオフは残っている。

今日は久し振りに一人で海までドライヴがてらやってきていた。
煙草に火をつけ窓を少しだけ開けると気持ちのいい風が入ってくる。

(はぁ…何だかこうしてボーっとしてると、自分がハリウッド映画に出てるなんて思えないな…)

そんな事を思いつつ煙を吐き出した。

ほんとはバレンタインデーが終われば、またすぐに旅行に行こうと思っていた。
だがの件もあり心配で、なかなか、すぐには発てなかったのだ。でも最近のは元気そうに見える。
それは俺達の前だから・・・というものでもなく、自然に見えた。
だからやっと安心して、こうして旅行に出ようと思ったのだ。

「どこがいいかな…」

ペラペラっとパンプレットを捲り、そう呟いた時、突然、携帯が鳴りだしドキっとした。

(何だ…?アランから?)

それはマネージャーのアランからだった。

珍しいな…何だろう。オフに入ってから一度も電話なんてかけて来なかったのに。
そう思いつつ出ないわけにもいかないので携帯に手を伸ばした。

「Hello...?」
『あ、ジョシュか?』
「ああ、どうした?何かあった?」

アランの声は少し焦っている感じに聞こえ、俺はそう問い掛けた。
すると電話の向こうで軽く深呼吸をしているのが分かる。

『あ、あのな、実は映画出演のオファーが四件ほど来てるんだが……』
「何…仕事の話?オフ中なんだし勘弁してよ…」

アランの言葉にウンザリするように息をつく。いきなり現実に戻された気分だ。
だがアランは慌てたように、

『い、いや、それが普通の仕事の話なら、わざわざかけないで復帰した時にでも話すさっ』

と興奮している。
その様子が気になり、俺はとりあえず話を聞く事にした。

「分かったよ…。で…どんな作品…?」
『あ、ああ。それがな…四件中、二件はどうでもいいいんだが…(!)』
「うん、残りの二件は?」
『う、、うん。どっちとも、その…刑事の役なんだ』
「へぇ、俺に刑事?似合わなそうだな」

ハハハ・・・と笑ってそう言えば、アランの鼻息が荒くなった(!)

『に、似合う似合わないじゃなくて!その共演者の事だよっ』
「……共演者…?誰なんだよ」

アランの慌てぶりに、さすがに俺も気になってきた。


『一つは………ハリソン・フォード!お前のお父さんだっ』

「はぁ?父さんなの?」

『ああ、そうだ!彼とは、まだ共演した事ないだろう?』

「ああ、まぁね。家族の中ではイライジャとオーリーだけだよ」

『それに、もう一人増える事になる』

「え?父さん意外にもって事?」

『ああ…。もう一つオファの来てる映画の共演者はな……』

「だ、誰だよ……」


アランの口ぶりに俺はゴクっと喉を鳴らした。アランは興奮したように―――


『………ちゃんだっ!』

「な……っ」

『しかも恋人役で、だ!どうだ?驚いただろう?!』

「―――――っっ?!」


(な……何だってぇ〜〜っ?!!)



父さんとの共演より、こっちの方が更に驚いたのは仕方のない事だった―――












レオナルド





「え?ジョシュと?!」

「うん…」


俺は驚きすぎて椅子から落ちそうになった(!)

今は撮影も終わり、スタジオの控室で寛いでいた。
そこへ突然、今日仕事のキャンセルになッたというが遊びに来たというわけだ。
を送って来てくれたスタンリーは仕事があるとかで、すぐに事務所に戻って行った。
突然の事でもが会いに来てくれた事が嬉しくて衣装を着替えて、すぐに戻って来たというのに、
いきなり、ジョシュと共演、しかも恋人役で…と聞かされてみろ。驚くに決まってる!

「そ、それで…?ジョシュは何て?」
「それが、暫くしてアランからOKの返事が来たって脚本家さんから電話があったの」
「…じゃあ…ジョシュは引き受けたって事か?でもあいつ今はオフなのに……」
「うん…。でも撮影もすぐには始まらないわ?今はまだキャストが決まったばかりだし、これからリハとかやる段階だったから…」
「じゃあ間に合うってわけか…。で、ジョシュとはもう話した?」

俺がそう聞くと、は小さく首を振った。

「それが電話通じないの。今日は家にいるはずなんだけど…出かけたのかな.…?」
「ああ、そうかもなぁ。ほら仕事に復帰するなら、それなりに打ち合わせだってるだろうし…」
「そうね。今日流れた宣伝材料の撮影も来週になったし……」
「そっか。でもウォーレンの代わりにジョシュねぇ……。皮肉だな…」
「え?何が?」
「い、いや、何でもないよ」

ま、まさか俺とジョシュで、あいつに、あんな事や、こんな事をしたなんてにだけは死んでも言えない。
俺は笑って誤魔化し、の頬に軽くチュっとキスをした。

「ね、レオ。もう帰れるんでしょ?一緒に帰ろ?」
「ああ。じゃ、行こうか」

そう言って立ち上がりの腕を引っ張ってあげた。


道は比較的空いていて、すぐに家が見えて来た。
門の近くにいるパパラッチ軍団を交わしつつ、家の敷地内へ入ると、車を車庫に入れる。
そこにはジョシュの四駆もあって、帰って来てることが分かった。

、ジョシュ帰ってるよ」
「うん」

二人で車を降り家の中へと入れば、何だか騒々しい声が聞こえて来てギクっとした。



「あぁあぁぁっ!何故、俺とは共演話が来ないんでしょう、お父様ぁっ!!!!!」


「うるっさい!小僧!! おい、ジョシュ、こいつ、うるさいから外へ放り出せっ」


「ええ?やだよ、俺……」


「そんな、お父様ぁ〜〜!」


「私はお前ごとき(!)の"お父様"じゃないっ!!」




その騒ぎに二人で顔を見合わせた。

「あの声は………」
「ドムじゃない?遊びに来たのかなっ」
「あ、おい!」

は、まさかドムに狙われてるなんて知らないものだから無邪気にリビングに走って行ってしまった。

「はぁ…だいたい何であいつ来てんだ?」

俺はウンザリしつつリビングへと向った。

「ドム!久し振りね?」
「あぁ!!お、お帰り!(ハニーvvとは心の声)疲れただろ?ささ、ここに座って……ふぐっ!
「ドム…勝手にに話しかけんな…(!)」
「く…ジョ、ジョシュ……」

ドムは相変わらず頭が悪いようで、早くもジョシュに一撃やられている。
ご愁傷様。

「あ、お父さん!」
「お帰り、
「帰ってたの?」
「ああ。今朝な?それより、、ジョシュと共演決まったんだって?」
「そう、そうなの!ね?ジョシュっ」
「ああ。聞いた時は驚いたよ」

ジョシュは苦笑しながらソファに座ってを膝の上に座らせた。

「もおーさっきから電話してたんだよ?」
「あ、悪い。アランが速攻で脚本とか台本とか用意したって言うし打ち合わせもかねて会ってたんだ」
「そうなんだ!じゃあジョシュも来週から合流?」
「そうだよ?宜しく、お姫様」

ジョシュはそう言っての頬にチュっとキスをした。
それを見てドムの目が一ミリほど飛び出したように見えて、俺はつい目を擦って確めてしまった…(!)

「ああ、それとな?ジョシュは私とも共演する事に決まったからな?」

「「「えぇ?!!」」」

父さんの言葉に、俺と、そして何故かドムまでが驚いた。

「お、お父さんと共演って?」
「それがな?との映画が終わった頃に、私も新作を撮るんだが…その相棒の役がジョシュになったんだ」
「えーー凄い!!そうなの?ジョシュ!」
「ああ、アランが言ってたよ。どっちも俺は刑事役らしい」
「ウソ!凄い偶然!」

はその話を聞いて楽しそうに喜んでいる。
ドムは何だかブスーっとしていて、一体何しに来たんだ?と俺は首を傾げた。

「あれ…オーリーとリジーは仕事?」
「ああ、そうみたいだな。オーリーは少し遅くなるそうだ。イライジャはそろそろ…」

父さんがそう言いかけた時、エントランスの方で、「ただいま〜」というリジーの声がした。

「ああ、噂をすれば、だ。帰って来たようだな?」

父さんがドアの方を向いて苦笑した。

「あれ?皆、帰ってたんだ…って、ドム?!な、何でここにいんの?!」

リジーもやはりドムを見て驚いている。
という事はリジーとの約束はしていないという事だ。

「親友が遊びに来たらダメなのかな?ミスターエルウッド」
「そ、そんな事ないけど……」

リジーはそう言いながら父さんや俺の顔色を伺っている。
俺はとりあえず部屋に戻って着替えようとソファから立ち上がった。
はリジーにジョシュと共演する事を楽しそうに話している。
それを見ながらリビングを出た。

(はぁ…共演か…俺も一度くらい、と共演してみたいもんだな…)

そんな事を思いながら部屋に戻った時、携帯がなりだしディスプレイを確認した。
だが、そこには"非通知"と出ていて首を傾げつつも通話ボタンを押す。

「Hello?」

『………』

「?……Hello?誰?」


ブツ……ッツーツーツー……


そこで何も答えず電話は切られた。

「何だ……?イタズラか?」

俺はちょっと頭に来て携帯をソファへ放り投げる。

こんな無言電話なんて、この時は大した気にもしていなかった―――









オーランド





やほー♪僕の名前はオーランド!
まあ、皆様知っての通り、今やハリウッド界の新星!"世界の恋人"なんて言われてるハリソンファミリーのナイス・ガイな次男坊さっ。
え?次男坊なのに三男坊や四男坊にイジメられすぎだって?放っておいてくれないかな!その辺のことはさ!
あれは可愛い愚弟たちの愛情だと思って、僕もイジメられてあげてるって事なんだから。
まあ…時々、本気でへこむんだけど……

この前の尾行の任務の時だって気づけばバーの支払いをさせられ、あげく置いてきぼりにされ、更に"不審者"と通報され、
最後には、ドーナツ大好きポリスメーンにまで追い掛け回されたんだから嫌になるよ!
散々ホテル内を逃げ回り、結局、上手く逃げ出せたんだけど。
(だって見つかればスキャンダルになってパパラッチを喜ばせる事になっちゃうしね)
え?どうやってホテルから逃げたかって?それは企業秘密だよ。
まあ、アドバイスしてくれたのはドムだったかな?彼はその辺、ほんと天才だからね♪

だけど、驚いたのは帰宅してからだよ!
散々走り回ってクタクタで家についたら、僕を置いてけぼりにしたレオもジョシュも、
そして、あんなに探し回っていた愛しのまでが帰って来ていて、部屋でスヤスヤと夢の中だったんだからさ!
こんなのないだろうぅ?!
ぼ、僕がどれだけ心配したと……ぅぅ…(涙)

おっと話が反れてごめんよ?
で、何だっけ…………?ああ、そうだ、そうだ!
それで、あの後、レオとジョシュに詳しく聞けば、は危ないところを何とスタンリーくんに助けられたと言うじゃないか!
僕は感動したね!彼はやっぱり、いい人だ!
顔もいいし性格もいい!彼は裏方じゃなく、"僕みたい"にスタァになるべき男だね、うん!
同じモデル出身でも、あの"バカセクハラ筋肉男"とは雲泥の差さ!
ま、これであの筋肉マンはとの共演話すら消えうせ、ついでに業界からも消え去りそうだと言うし!僕にしたらバン万歳だよ!

な、なのに………なのにぃ〜〜〜っ!

何故、神様は意地悪なんですか?!

僕があまりに素適でカッコいいから焼きもちですか?!(うぉい)

何故、「兄妹でラブラブ共演vv」というチャンスを僕に下さらなかったんですかぁ〜〜〜〜っっ!!(号泣)






うわぁーーーーーーーーーーーーーんん〜〜おぃおぃぃ〜〜ふぇ〜うぉいおぃ〜っぅあーんっ!!!」




「おい・・・何とかしろ…。うるさくて酒が不味くなる…レオ…」とは、ハリソン。(すでに額はピキピキ、グラスを持つ手はぷるぷる)

「俺かよ。やだよ…こういう時はやっぱ優しい優しいジョシュだろ?」と、ウンザリ顔のレオ。(横目でジョシュを見る)

「俺?俺が話しかけたら逆効果だろ…?リジィ、行けよ…」と、肩を竦めるジョシュ。(オーリーの方は見ないようにしている)

「えぇ?やだよぉ!ああなったら手がつけられないんだからさあぁ!あ!ここは一つ部外者という事でドムが♪」と、嬉しそうなリジー。(満面の黒い笑み)

「ぬ…俺様は"部外者じゃない!そのうち、このハリソンファミリーの末っ子の夫にな――「うわぁぁぁ〜〜〜ん!!」(必殺ドム、遮断)

〜〜〜!!ほんとに共演するのぉ〜?!」

「キャ、オーリィ…っ」



僕はバカな家族+部外者の戯言は軽く無視して、ソファで寛いでいたに抱きついた。

「あ、あのオーリィ…泣かないでよ…ね?」
「うぅ…・グス…だ、だって…ジョ、ジョシュと…こ、こ、こ…こ…びと…どう…し…なんて…グス…」
「あはは!小人じゃなくて恋人同士だろ?」
「ふぬ!!!分がっでるんだよ!レオのバガ!!…ズピーーっ(鼻の鳴る音)」
「バカァ?!!」
「ごべんなざい………」
「分かれば宜しい」

(ぬ!偉そうに!この極道兄貴めぇ〜〜!)

僕は鼻を噛みながら澄ました顔でブランデーグラスを揺らしているレオを横目で睨んだ。(心の中であっかんべぇ)

「あ、あのオーリィ…仕方ないでしょ?次はオーリーと共演かもしれないし…」
「ふぉんど?!」
「う、うん…。あ、あのオーリィ…鼻、出てるよ…?」
「ぁ……ぅ!」
「はい、ティッシュ♪」
「あ…ありがど………(優しいなぁ、はvv)」



チィーーーーーーーーーィーーーーーーィーーーーーーーーーィン(鼻噛み中のため、待つこと暫し)



「ぶは……っスッキリ!」(復活)
「だ、大丈夫…?オーリィ、鼻が赤くなって…」
「大丈夫、大丈夫!何だか大泣きしたらスッキリしたよ♪」
「そ、そう?」


「「「「「はぁぁ……」」」」」

「むっ!そこ!5人で同時に溜息つかない!」

「お前がいると、ほんと賑やかになるよ………俺、部屋で静かに飲むわ……」

(お♪極道兄貴が出て行くぞ?)

「じゃあ、こんなバカ、放っておいていいから休めよ?」
「も、もうレオ……」
「お休み」
「お休み」

(あ……ちゃっかりの頬にチューなんてしてるし!!ずるー)

「俺もちょっと台本や脚本に目を通しておきたいし部屋に戻るよ」

(おぉ♪ジョシュまでがいなくなるぞぉ?ってそれは余裕か?!あぁん?と共演できるからって余裕なのかぁー?!)(だんだんドム化)

「じゃ、も早く部屋戻って休めよ?」
「うん。でも寝る前に私も台本読まないと」
「そっか。じゃ、今度台詞合わせでもしような?」
「うん!」

(ぶーぶー!ジョシュの奴、鼻の下いつもの二倍は伸びてるぞー!あ、しかものマシュマロほっペにチューなんて!これもずるぃ!(そして幼稚化)

「はぁ……オーリィ……その子供のような口を元に戻したら?」

(ぬっ!リジィめぇ〜〜!一人大人ぶっちゃって!!このおばはんキラーめっ!)

「おい、バカオーランド!お前、そろそろを離せよっ!」
「うるさい、バカドム!!!」(そこは生声で反撃)
「くっ!バ、バカと言うな、俺様に!!!俺様はだなぁふぐっ!

「小僧……帰れ……」

「は、はいぃぃ……」

お!ダディ!やっとドムを追い出してくれるんだな!ザマーミロ!ってか何しに来たんだ!って、どうせの顔を見に来ただけだろうけど……

「そしてオーランド……」

「なに?父さん!」(満面の笑み)

「お前は寝ろ……」

「―――っ!!!」


ウンザリしつつ半目状態の父さんを見て、僕はスゴスゴとリビングを出て行った。
リジーの奴は黒い悪魔の尻尾を振りつつ、含み笑いしてるし何だかムカつく。
でも最後にが、「お休み、オーリィv」って頭を撫でてくれたから、そこでハッピーなんだけどね!

「はぁ…」

僕は階段を上りつつ特大の溜息をついた。

とジョシュが共演……しかも恋人同士……はぁ…僕の憂鬱な日々が、まだまだ続きそう…。



「うぅ……グス……っひっっく……ふっぇぇ…っ」





バン!!







「「うるさいっ!!!」」




「―――ッ!!」





最後の最後で僕はレオとジョシュに怒られた…………












久し振りの家族夢Uでした〜^^;
今回はちょっと家族よりで書いてたのでスタンリーとの絡みは少ないです(笑)
ハリソンパパも久々登場&ジョシュとの共演話が〜(笑)