三男、ジョシュの決意







真っ暗な道、サンタモニカ・ブールバードを街灯が鮮やかに照らしていて凄く奇麗だった。
今夜は月も丸く、かなり明るい。
僕は愛車のベンツを飛ばして自宅へと急いでいた。
今日は、またマネージャーと話してきた帰り。
今日は事務所の社長も来たので遅くなってしまった。

はぁ…何だか緊張して疲れてしまった。説得するのに時間もかかったし…今は…1時過ぎか…。
…起きてるかな。こんな疲れた日の最後にはの笑顔が見たい。 

僕は煙草に火をつけると窓を少し開けて煙を出した。
来週早々から、今、公開中のオーリーと共演した映画のプロモーションが始まる。
まあ、オーリーはその前に撮ってたリジーとの共演した映画のプロモーションに行くんだけど…。
僕は、それが終ると、更に前に撮ってあった映画のプロモーションが始まる。
ちょっと事情があって公開が遅れていた作品だ。
そして…それが全て終ったら…僕は暫く俳優を休業しようと考えていた。
この前から何度もマネージャーと話をしていたのは、この事だった。
まあ…理由は後ほど話すとして――


自宅が近づいてきたので僕はスピードを落とした。
リモコンで大きな門を開けると慣れた手つきでハンドルを回し中へと入る。
何だか門の周りで数人の人影が動いて一瞬、パっと数箇所で光るのを感じた。
まあ、また、いつものパパラッチだろう。
うちの家族のコーナーまである雑誌とか、テレビ番組の奴らも張り込んでいるのは知ってた。

全く…何が、そんなに楽しいんだろう…。
確かに…普通の家族じゃないけど、僕は、この一風変わった自分の家族達を気に入っていた。
よく人から"複雑じゃない?"とか"大変だね"とか言われるけど、そんな事は一度も思った事がなかった。
僕は血の繋がらない家族を誇りに思ってる。
血なんて関係ない。
血が繋がっていたってバラバラな家族はあるし、子供が親を殺したり、親が子供を虐待したりしている世の中だ。
そんな外ヅラだけの家族なんかよりも、僕の家族の方が言いたい事も言い合って分かり合えてるし素晴らしいと言える。
確かによくケンカもする。イジメたりもする。でも、それはもちろんジョークだし愛情表現の裏返しだったりするんだ。
僕は駐車場の自分のスペースへと車を入れると重い足取りで玄関へと向った。
一応…父さん以外の皆の車はあったけど…いるのかな?
僕は静かに玄関のドアを開けて中へと入って行った。

「あら、お帰りなさい」

昔はベビーシッター、現、うちの家政婦のエマがひょっこりと顔を出した。
まあ、いわゆる僕らの母親代わりをしてきてくれた人だ。

「ああ、エマ。ただいま」
「今日は皆さん、もっと遅いかと思ってたわ?」
「そうなの?え?皆はまだ?」
「ええ、ハリソンは外泊中だし…レオは友人と約束があるって夕方出かけて…オーリーとリジーは仕事で昼くらいから…」
「そっか。は?」
「ああ、は部屋にいるんじゃないかしら?さっきまでDVD見てたけど…今、覗いたらいなかったし」
「そう…もう寝ちゃったかな…」
「顔でも見てきたらどう?」

エマはちょっと微笑むと、

「じゃ、私は仕事は終ったので、これで寝ることにするわ。おやすみ、ジョシュ」
「ああ、おやすみ!」

エマはそう言うと一階廊下の奥にある自室へと歩いて行った。
僕はそのままリビングへは入らず、キッチンへと向い、冷蔵庫からミネラルウォーターを出して飲んだ。

「はぁ…何だか腹減ったな…」

今日のディナーは話の内容が内容だっただけに、殆ど口に出来なかった。
僕はキッチンの手前にあるカウンターバーの椅子へと腰をかけて溜息をつく。

それにしても…よく僕の我がままを聞いてくれたもんだ。
休業するに当たってクビになる覚悟でいたのに。
そして、社長にももちろんハッキリ言った。

「休業がダメなら…契約を切って頂いても構いません」 と…。

でも最初は反対していた社長も僕がそこまで言うと、渋々だが承知してくれた。

「仕方ない…最悪半年だけだぞ?」

とにかく…僕は残りのプロモーションの仕事はキッチリやろうと決心していた。
皆に…相談する事もなく…勝手に決めてしまったし…皆は驚くだろうか?

その時…リビングの方からパタン…と音がした。

(誰だ…?エマ?…いや、か?)

僕は椅子から立ち上がると、リビングの方へと戻って行った。
リビングのドアを静かに開けると大きな壁にかけられている液晶テレビの前に、が立っていた。

…?」
「わ…!」

は僕が急に声をかけたので驚いて体がビクっとなった。

「ごめん!驚かせちゃったね」

僕は慌てての方へと歩いて行った。

「あ、ジョシュ!」

振り向いたは嬉しそうに僕に抱きついてきた。

「お帰りなさい!もっと遅いかと思ってたわ?」

僕はの額へとキスすると、

「何とか終ったよ? それより…、何してるの?寝たかと思ってたよ」
「まさか!まだ1時過ぎよ?私には夕方くらいの時間じゃない?」

はちょっと笑うと僕を見あげて来る。

「そっか!ま、夜更かし大好きな、この家族は皆が同じようなもんか」
「そうそう!」

は笑いながら僕の手を引っ張って大きなビーズクッション(専用)に座った。
このクッションは僕が前にカウチポテトが大好きなの為に買ってきたものだ。
僕が座っても余るくらいの巨大なクッションで、は相当気に入ってくれたので良かったが、今ではレオやオーリーも勝手に座ったりしている。
僕もの隣へと腰をかけた。

「あのね、今、DVD見ようと思ってたの」
「え?ああ、さっきも見てたんだろ?」
「あ、エマから聞いたのね?―そう・・それで見終わったから今、部屋に行って次の映画を探してきたの」
「次は何見るの?」

僕は笑顔で問いかけた。

「これ!」

そう言ってが出したパッケージには、"パールハーバー"と書いてあった。

「うわ!こ、これ見るのか?…」

僕はあからさまに嫌な顔をした。
はクスクス笑うと、

「さっきはレオの"ロミオ&ジュリエット"見てたのよ?だから次はこれ!」
「順番から行くと、次はオーリーのだろ?何でいきなり俺のやつなの?」

と僕は苦笑しながら、の手にあるそのパッケージを奪った。

「だってぇ…"LOTR"は長いから…今から見たら朝になっちゃうもの。関係者用のDVDだからノーカット版なのよ?」
「まあ、そうかもしれないけどさ…。これも結構長いだろ?」
「でも見たかったの!」

は笑いながら、また僕の手からパッケージを取ると、「ジョシュ、一緒に見たくないなら私、一人で見るもん」 と口を尖らした。
僕は、そのに弱い…まあ、どんな顔をされても弱いのには変わりはないけど。

「分かったよ、一緒に見るよ」

僕は観念して自分の映画をと見ることにした。 ――本当は凄く恥ずかしいんだけど――

「やった!大好き、ジョシュ!」

は嬉しそうに僕の腕に自分の腕を絡ませてくる。

「あ、その前にさ…ちょっと腹が減ったから…何か食べてもいいかな」
「え?ジョシュ…夕飯食べてきたんじゃないの?」
「ちょっと食べ損ねちゃってさ。帰って来た途端、お腹空いちゃって…」

僕は苦笑しながらの頭を撫でると、は笑顔で、「あ、じゃ、私が何か夜食作ってあげる!」 と言った。

「そりゃ嬉しいな!」
「じゃ、キッチン行こ?」

は僕の腕を掴むと引っ張っていく。
僕はそれに従って一緒にキッチンへと行くと、「ジョシュ、何食べたい?」 とが聞いてきた。

「うーん…夜中だから…何か軽いもの?卵料理とか食べたいな」
「それって軽い?」

が笑いながら大きな冷蔵庫を開けて中を覗いている。

「軽いだろ?バーガーとかピザに比べたらさ」
「まあ、それに比べちゃうとねぇ…。あ、卵は大量にあるし出来そうよ?」
「じゃ、それでオムレツとか作ってくれちゃう?」
「了解しました!」

はおどけて笑うと卵を何個か出し始めた。
僕は、またカウンターの椅子へと座ると、楽しそうに鼻歌を歌いながら作業し始めたの後姿を見ていた。
は自分の奇麗な長い黒髪をクリップで上にまとめてアップにするとエプロンまでつけている。
そんなを見ていて、ふいに気になり声をかけた。

…」
「ん?」
「何で俺たちの映画なんて見てたんだ?」

その問いには僕の方へと振り向いた。
そして、ちょっと微笑むと、「…皆がいない夜には皆の映画を見たりしてたの。そしたら寂しくないでしょ?」 と目を伏せる。
僕は少し胸が痛くなった。

(そうか…。皆が仕事や何かでいない時、が家で一人になった時は寂しいからか…)

僕は黙って椅子から立ち上がると、をギュっと抱きしめた。

「ジョシュ…?」
「…これからは…僕がいるよ…。だから寂しくない」 

僕はそう言うとの額にキスをして微笑んだ。
はキョトンとした顔で僕を見上げてる。

「…どういう意味?ジョシュは…今までも側にいたでしょ?」
「ああ、そういうんじゃなくてさ…。今までだって仕事とか入ると長期ロケとかで、お互いに何ヶ月も会えなかったりしただろ?」
「うん…」
「俺…今度やるプロモーション終ったら…暫く休業する事にしたんだ」

僕はに、そう言うと少しだけ心の重荷が取れた気がした。
だがは驚いた顔で僕を見つめていた。

「嘘でしょ…?ジョシュ」
「…いや、ほんと。だから最近マネージャーと、よく出かけてたろ?その話をしてたんだ」
「でも…だって…。どうして?理由は?!」

は黒くて大きな瞳に涙を浮かべている。

「おい、…。何で泣くんだよ?泣かないで…」 

僕は慌てて、の頬へキスをした。

「だって…」

は顔を伏せて涙を拭っている。

…。僕は何もACTORを辞めるってわけじゃないよ?」

優しく言うと、は顔をあげて僕を見た。

「じゃあ…どうして?」

その問いに僕は少し息を吐き出すと、の手を取り静かに口を開いた。

「…去年、"ブラックホークダウン"の撮影でモロッコに行ったろ?」
「うん…」
「その時にさ、あの国の人々の貧しさが考えられないほどの酷さで、しかも、彼等は、そこから抜け出すチャンスすらゼロに等しいんだって事を知ったんだ。
こんな生活をしてる俺には凄く衝撃的だった。自分は…何をしてるんだろうって思ったよ。それに…俺だって一歩間違ったら孤児だったかもしれないんだ。
父さんが養子にしてくれなかったら…俺もどこかで食べる物を食べれなくて…何でもやってたかもしれないし、飢え死にしてたかもしれない。
でも有難い事に今、こうして楽しく皆と幸せに暮らしてる。それにACTORって仕事まであって…。ちょっと、そのギャップにショックを受けたっていうか…そんな時にさ、"パールハーバー"のプロモーションでハワイに招待されたんだ。も行ったろ?」
「あ、うん…凄いプレミアだったね?」
「そう…あの何もないモロッコから戻って来てすぐにハワイに招待されて…その落差たるや頭がクラクラ空回りするような感じだった。
映画の宣伝費用とかも聞いて…僕の常識が何か違う方向へ動いたっていうか…"パールハーバー"や"ブラックホーク…"で、
このままノリにノッてハリウッドの荒波を泳いでいったら色々なオファーがくるだろうって思う。でもフッっと冷たい風が吹いて…
俺は、どういう風に生きて、どんな役者になりたいのかって考えたんだよ。このまま一種のスター街道をみたいなものを進みたいのか?ってね。
俺は知らず知らずのうちに、今の自分に満足してて本来の夢を見失ってた。贅沢になってたんだ。
だから…少し今のポジションから抜け出したくなったっていうかさ…この生活を変えようとか、そんな奢った考えはしてないよ?自分の運命ってものがあると思ってるから…。ただ仕事だけは事務所の引いたレールを行くのをやめたかったんだ。自分で選んで自分の出たい作品に出たいって思ってさ。大作じゃなくていい。
何か小さい映画でも自分がやりたい役だって思ったのに出たいんだ。それには…今のまま流されるままに映画に出てちゃダメなんだって思ったんだ」

僕は、そこまで言うと真剣な顔で聞いてるの額へとキスをした。

「分かってくれた?」

は何も言わず、優しく微笑むと、コクンと頷いてくれた。
僕はそっと微笑み、もう一度の額へ唇を落とすと、が僕を見て、

「分かった…。ちょっと心の洗濯するのね?」
「ああ、そういう感じかもな?また気持ちをゼロに戻してスタートしたくなった」
「ジョシュは…感じやすいのね…きっと…。他人の痛みを凄く…」
「え?」
「そう思ったって現実に行動に移せる人は少ないわ?皆、必死に今の自分のポジションを守ろうとする人の方が多いと思うもの。でもジョシュは真剣に考えて出した答えの中で、そのポジションを捨てようとしてる。誰にでも出来る事じゃない」
…」
「…ジョシュの…そういうところも…大好きよ?」

そう言うとは僕に抱きついてきた。
僕はの言葉が嬉しくて、そのまま抱きしめると、「…ありがとう」 と言った。
は、そこでパっと離れると、「じゃ、ジョシュが飢え死にしないように…夜食を作らなくちゃ!」 と微笑む。
僕は苦笑すると、「ほんと…頼むよ…。ペコペコなんだ」 と言って大げさにお腹を抑えた。





僕は、の作ってくれた夜食を食べながら、約束どおり"パールハーバー"を一緒に見ていた。
大画面の中でダニエルという役をやっている僕は何だか自分じゃないようだ。
チラっとを見ると真剣な眼差しで画面に見入ってる。
僕は何だか照れくさくなり少し俯くと、さっき開けたワインをグラスへと注いだ。
その時、がクスクスと笑い出した。

「どうした?何、笑ってるの?」

僕が問い掛けるとは画面を指差し、

「ここ。このダニーがイブリンの家に彼女の忘れたハンカチを届けに来るシーン。私好きなの」
「え?」

僕は画面に視線を戻すと確かに、そこにはダニエルが恥ずかしそうにイブリンの家の前でブツブツと家に来た言い訳を呟いている。
そして出てきたイブリンに対して変な説明をしているところ。

「ああ…これね…。こんな男がいいの?」
「うん。変に慣れてるよりも、こんな風に一生懸命な人って好きかな?」
「へぇ…。そうなんだ。じゃ、レオはダメじゃん。慣れまくりでさ」 
「そんな事ないわよ?レオだって凄く照れ屋だもの」

僕は、そのの言葉に耳を疑った。

「ええ?あのレオが?あんなに遊んでてか?」
「アハハ。でも、そういうのじゃなくて…私がおやすみのキスをしただけで赤くなるのよ?」

僕は、それを聞いて唖然とした。

あのレオが?妹におやすみのキスをされただけで…
いや、まあ…僕もからされると照れくさいけど…。でも、あのレオまでが?!(失礼)
一緒に住んでても僕の前とかでは、そんな素振りは見せないが…何となく…分かる気はするけどな…。
他の女には強いんだけど、には、とことん弱いってわけか…。

僕は少しおかしくなって吹き出してしまった。

「ジョシュ?何、笑ってるの?」
「い、いや…ちょっと意外な面を見たなってさ…」
「そう?私には昔から、そうだったよ?」
「そ、そっか!うちの男連中は皆、に弱いよな…!」

そう言うと、は首を傾げて、「そうなの?」 とキョトンとしている。
僕は優しく微笑むとの頭を自分の肩へと寄せて額にキスをした。
は、ニッコリ微笑むと、また画面に視線を戻し映画に見入っている。

ほんと…は鈍感だよなぁ…と心の中で苦笑した。
あんなに、にメロメロな兄貴達を見ても、それに気づかないんだから…
僕達が他の人にも同じくらい優しいとでも思っているのか…
それとも世の男共も皆、僕らのように女性には優しいと思っているのか…。
まあ、でもそれは過去の辛い恋愛で気づいただろう…
他の男達はそうではないんだって事を…。

僕はが過去に辛い恋愛をしてたのを知っている。
は家族の誰にも気づかれていないと思っているかもしれないけど…
三年程前に、は、ある映画でACTRESSとしてデビューした。
丁度その頃だった。
の態度や行動に疑問を感じ、違和感を覚えたのは…
それまでは何よりも家族を優先し、どこに行くにも行き先を告げていたのに、それが、まずはなくなった。
夜、遅く帰って来た時、"どこに行ってたんだ"と聞くと、"仕事仲間と飲んでた"とか"撮影が押して…"とか曖昧な事を言ってははぐらかす。
そして夜中にも出かけるようになり、そのうち外泊までするようになった。
僕らは物凄く心配したが年頃と言うのもあり、きっとACTRESSの仕事をしだすと色んな奴と知り合いになるし、
そういう付き合いが楽しい時期なんだろうと…そう思うようにしていた。
だが、それまで映画が好きなでもラブストーリーだけは苦手で見なかったのが、そういう映画ばかり
見たがるようになって、驚いてしまったのを覚えてる。
そういう恋愛ものを見て泣いたのを僕は初めて見たんだ。

好きな奴が出来たんだ。

僕は直感的に、そう思った。
たぶん、僕だけじゃなく、レオも気づいていたように思う。
に電話の呼び出しがあり出かけた後は途端に機嫌が悪くなって部屋にこもるようになってた。
そんなに心配なら本人に聞けば良いんだろうけど僕らは全員、男で…こういう事を聞くのはやはり母親とかの方がいいと思った。
だから僕らの母親代わりのエマに、それとなくに聞いてみて欲しいと頼んだのだが…
も案外手強く、エマにさえ笑って誤魔化したと言う。
きっと心配性な僕らの事を考えての事なんだろうけどね。それと…相手の男の身を案じたのか…。

それからは、どんどん奇麗になっていった。
もう傍目から見れば完璧に恋をしてる女性だった。
相変わらず僕は相手の男も分からずヤキモキしていた。
レオもきっと同じだったように思う。だってレオの素行の悪さ(?)が、ますます酷くなっていったのは、この頃くらいからだ。
レオにしてみれば、が我が家に来た直後から大切に大切に可愛がってきた妹なんだ。
それを、どこの馬の骨とも知らない男の家に泊まってくると思っただけで、相手の男に殺意(!)くらい覚えても不思議はない。
だが相手が分からない以上、どうする事も出来ないし、そのイライラを紛らわすのに毎晩遊び歩いてたんだろう。
僕だって、この頃から変に胸が痛んで、どうしようもないくらいに相手の男に嫉妬にも似た感情を持った。

それは…今でも変わらないんだけど…。
だけど一年位前から、またの様子がおかしくなった。
しょっちゅう出歩いていたのが、今度は逆に全く家から出なくなってしまった。
仕事以外では、本当に引きこもリのような生活…。
僕らは、また心配になり、色々元気付けようと遊びに誘ったりもしたがダメだった。
食欲もなかったようで、どんどん痩せていくを見て、何もしてあげられない自分が本当に嫌になったよ…。

そんな時、と共演して以来、が姉のように慕っているサラが心配して家に遊びに来た。
たまたま、その日は僕とレオが家にいて、僕らは、がいない時に彼女に何気なく聞いてみた。
すると最初は口が重かった彼女だが必死な僕とレオを見て、もう終った事だし…と少しだけ話してくれた。
それは僕とレオが相手の男に本気で殺意を抱くような話だった―(!)
には確かに年上の恋人が出来たらしい。にとっては18歳にして初めての本気の恋愛。
のめり込むには十分だった。二人は本当に仲が良かったようだが、
付き合いだして2年が過ぎた頃…。相手の男は、意外の女に手を出し、そして妊娠させてしまったらしい。
その浮気相手の女性は流産までしてしまい、彼は、その責任をとって、その女性と結婚…。
は大事な恋人を失ってしまった…
僕とレオはカっとなって相手の男は誰なんだと問い詰めたが、それだけはサラも教えてくれなかった。
たぶん、僕とレオが何をするか分からなくて心配だったのかもしれない。

結局、相手の男は聞き出せなかったけど…僕とレオは、の辛い恋の事は二人だけの秘密にして知らないフリをしようと決めた。
だからオーリーもイライジャも、その事は知らない。
それでもは少しづつ元気をとりもどしていった。
きっと初めての恋愛で、そんな思いをしたから、すぐに忘れると言う事は出来ないのかもしれないが…
今のを見ていると少し大人びたようにも思う…無邪気なところは変わらないのだけど…
何だか、その事があってからは僕とレオは前以上に、には過保護になってしまった気がする。
に近付く男には十分な警戒をするようになったし、共演者の男には、それとなく釘を刺したり…
共演者が一番危険だという事は嫌でも知っている。
の恋人もきっと共演者だったんじゃないかって思ってるしね。
デビュー作(ホラー映画)で共演した…二人のACTORの、どっちかじゃないかって…まあ、証拠はないんだけど。
一人は1で殺されてしまった役だし…、2でも共演した、もう一人の方か…?なんて僕は思ってるんだけどさ。
でも…今はが、こうして笑顔を取り戻してくれただけで僕は嬉しい。


気づけば画面では爆撃のシーンが流れていて、それを見ては、「ああ…!ダニー危ないよ!」 とハラハラしている。
僕は苦笑すると、「何度も見てるんだから結果は分かってるだろ?」 と言って頭を軽く撫でた。
はちょっと口を尖らせると、「だって…分かっててもドキドキしちゃうのよ…」 と呟く。

「この時、ほんとに爆発起しての撮影だったから大変だったなぁ…」

僕は撮影時の時の事を思い出して呟いた。

「ああ、あのメイキングビデオ見せて貰った時は驚いちゃった!凄かったよね?ベンも驚いて転んでたし」

も思い出したのかクスクスと笑っている。

「あ〜ベンかぁ。元気かな?最近連絡とってないけど」
「私、ゴシップ記事で見たくらいよ?恋人と婚約したとか何とか…」
「ああ、そう言えば…そんな話聞いたな…婚約かぁ…」

僕は何だか友人が婚約したと聞くと、変な気分だった。
僕たち家族も…いつかは結婚して家を出てバラバラになるんだろうか…
も…いつかお嫁に行くのかな…やだな、そんなの…。
僕は、ふと、そんな事を考えて憂鬱になった。その時――


「ねえ、ジョシュは恋人は?前に別れてから恋人とか出来た?」 

「…ぶっゲホッゲホ…!」


がいきなり、そんな事を聞いてきたので、僕は飲みかけていたワインを吹いてしまった。

「ジョシュ?!だ、大丈夫?!」

は驚いたようで慌ててタオルを取ってきて濡れたとこを拭いてくれた。

「あ、ああ…ありがと…」

僕は恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまった。

「もう…どうしたの?そんなに驚いた?」

はクスクス笑いながら僕の顔を見る。

「え?あ、いや…別に、そんな…」
「あー分かった!何か、やましい事でもしてるんじゃない?女遊びとか!」

が僕をからかうようにして顔を覗き込んできて僕は、ちょっとムキになってしまった。

「そんなレオじゃあるまいし…!するわけないだろ?それに、いないよ、恋人なんてさ」
「そうなの?どうして?ジョシュ、凄くモテるじゃないの。知ってるのよ?前に共演したACTRESSから告白されたの」

がニヤニヤしながら言った事に僕は動揺してしまった。

「な…!何が?!そ、そんなのは別にモテるとか、そんな事でも…って言うか、何で知ってるんだ?!」
「そのACTRESSと私の友だちが仲良くて…小耳に挟んだの」

そう言うとはニッコリと微笑む。

(全く…どうして女って、こうも、おしゃべりなんだ?!)

「ね、それで、どうしたの?付き合ったの?」

は興味津々で聞いてくる。
僕は顔が赤くなるも、「つ、付き合ってないよ…!断った…からさ」 と何とか答えた。

「ええ?もったいない…!あの人、奇麗だったのに」
「そういうのは関係ないよ…。好きになれなかったら仕方ない事だろ?」
「ま、それもそうね!」
はちょっと笑うと、

そうかぁ…。じゃ、今、お兄さん達の中で、まともに女性と付き合ってるのはオーリーだけって事だ」 
「え?そうなんだ。リジーは?」
「リジーは前に凄く年上の女優さんと付き合ってたじゃない?彼女と別れてからは誰とも付き合ってないって、この前言ってたよ?」
「へぇ…そうなんだ。ま、あの時は驚いたけどな。レオより年上と付き合ってるんだからさ」
「フフフ…そうね。でもリジーは本当に年上のお姉さま系にはモテるのよ?リジーから聞いて知ってるんだ。また告白された〜とか、飲みに誘われた〜とか言って、でも付き合うまでには行かないみたいだけど」
「何でなんだろうな?リジーの方は年上が好みなんじゃないのかな?」
「う〜ん、どうだろ?別れた彼女は音楽があまり好きじゃなかったみたいで、上手くいかなくなって別れたって言ってたけど…歳が離れすぎると、その辺の趣味も違ってきちゃうのかな…」
「そんな事もないだろうけど…そっか、リジーの奴、音楽大好きだし、その辺合わないとキツイかもな」
「でも、最近リジーってば少し大人っぽくなった気がしない?男の色気とか出てきたっていうか…」
「え?だって…まだ21だろ?男の色気はなぁ…。レオくらいからじゃないの?それでもまだ若い方だけどレオは遊んでるからさ(!)」
「そぉかな?私から見たらジョシュだって色気あるよ?年齢よりも落ち着いてるし、大人の男性って感じ?」
「な、何言ってんだよ…!」

僕はに、そう言われて顔が真っ赤になってしまった。

「あ〜ジョシュ、顔赤いよ?ほんとテレ屋なんだから!」

笑いながら、そう言うとは僕の腕に自分の腕を絡めてくる。

「何だよ…そんなに笑わなくたって…!」 との頭をクシャクシャっと撫でる。
「あ〜ひどーい…グシャグシャになっちゃたじゃないの〜」

も苦笑しながら髪の毛を直していると、玄関の方でドアの開く音がした。

「あ、オーリーとリジーかな?レオかな?」
「さあ…?」

そう話してた矢先、リビングへ入って来たのは、父のハリソンだった。

「おぉ、何だ、お前たち。まだ起きてたのか?」
「お父さん…?!」
「父さん、お帰り!」
「ああ、ただいま」

ハリソンはニコニコと上機嫌でソファーへと座ると、「はぁ〜疲れたよ…今日の撮影は…」 と息を吐き出している。

「何だか…久し振りに見た気がするよ、父さんのこと」

僕が苦笑しながら言うと、ハリソンもニヤリと笑って、「私もだ」 と言った。
は、すぐに父さんの隣に座って甘えている。

「お父さん、彼女元気?」
「ああ、元気さ!私と一緒にいたからね」

ハリソンはヌケヌケとそう言うと、の頬にキスをして、

は?オフを楽しんでるのか?」 
「ええ、ノンビリ出来てるから少しは気分転換にもなってるわ」
「そうか。ならいいが…家にこもってばかりいないで少しは外出したらいいのに」

ハリソンが笑いながら、そう言うと、は思い出したように、「あ、そうだ。お父さんに話があったのよ」 と言った。

「ん?何だ?」
「あのね。来週の頭から、オーリーとリジー、ジョシュが、それぞれ映画のプロモーションに出るじゃない?」
「ああ、そうみたいだな」

父さんは僕らの飲んでたワインをグラスに注ぐと、ゆっくり飲んでいる。

「で…三人が日本に行く日が同じになったって言うから、その時は私とレオも一緒に日本へ行きたいなって思って。いいでしょう?」

いきなり日本へ行きたいと言われて、父さんも驚いたのかワインを飲んだ直後に咽ている。

「に、ゲホ!日本だって…?ゴホ…!」
「大丈夫?お父さん」

は咽ている父さんの背中を擦りながら、顔を覗き込んでいる。

「あ、ああ…大丈夫だ…。それより…日本って…お前とレオが何で行くんだ?他の三人は仕事で行くんだろう?」
「そうだけど…。三人だけ日本で会うなんてずるいもの…。私だって、日本で皆と一緒に過ごしたいわ?」

僕はの日本に行きたい理由にちょっと笑ってしまった。

(まったく…ほんとに可愛いよ、我が家の姫は…)

そのの言葉には父さんも苦笑している。

「一緒に住んでるのに、わざわざ日本で会わなくてもいいだろ?」
「そういうのと、また違うの!それに私、日本って行った事ないんだもの…。ね?いいでしょ?お父さん」

は必死に日本行きを頼んでいる。
可愛い愛娘の哀願には父さんも勝てるわけもなく…

「分かったよ…そんなに行きたいなら仕方ない」

と苦笑いしいつつ、の頭を撫でている。

「ほんと?!嬉しい!!ありがとう、お父さん!大好きよ!」

はピョンと飛び跳ねて喜んで、父さんに抱きついている。
僕はに抱きつかれて、顔がニヤケている、その締まりのない父さんの顔を見て吹き出してしまった。
その時、ふいにリビングのドアが開いて、ヒョコっとレオが顔を出した。

「ただいま…って、父さん!帰ってたんだ」 

と言いながら入ってくる。

「オォ、お帰り!」
「お帰りなさい、レオ!」

は、すぐレオの元まで走って行くと嬉しそうに腕を組み、「あのね、お父さんが日本行きをOKしてくれたの!」 と報告した。

「え?うそ?! ――ほんと?父さん」
「ああ、お前は、と一緒に行くんだろ?なら、安心だしな」
「Thank you!父さん」

レオも嬉しそうに、歩いてくると、僕の隣へと腰をかけた。

「お帰り、レオ。今回も、の勝利だよ」 
「…そうみたいだな?父さんも甘いから…」 

とレオも小声で言って笑っている。

「じゃ、俺、マネージャーにホテルの件、聞いておこうか?同じホテルに部屋が空いてたら、そっちの方がいいだろ」
「ああ、そうしてくれるか?オーリー達も同じなんだろ?じゃ、いちいち移動しなくていいしさ」
「OK!」 

僕はそう言うと、明日の朝にでもマネージャーに電話してホテルの部屋の追加を頼もうと思っていた。

「はぁ〜あ…疲れたぁ〜」

レオは溜息をつくと、ビーズクッションの上に寝転がった。
その時、ふっと甘い香りが漂ってきて、僕はチラっとレオの方を見た。

「…レオ…。またデート?」

僕が少し呆れた顔で聞くと、レオは寝転がったままニヤリとして僕を見た。

「バレた?」
「バレるよ、そんな甘い匂いプンプンさせてちゃ…。にバレても知らないぞ?どうせ遊びなんだろ?この前のモデルか?」
「いや…また別。今日はモデルじゃなくて女優だよ?しかも年上の超美人!」
「誰だよ?」
「俺が昔、共演した金髪の元モデル…と言えば分かるか?」
「…あっ!!彼女か!へぇ〜彼女だって結構遊んでるって噂だけど…今度は年下のレオに手を出してきたか!」
「共演した時も誘われたけどその時は上手くはぐらかしてたんだけどさ。この前バーで再会して電話してって言うから気晴らしにね」
「全く…次から次へ…。ちゃんとした恋人くらい作れば?」

僕はレオにもワインを注ぎながらそう言った。

「サンキュ! ――ちゃんとした恋人なんて無理だよ」 

レオは起き上がってグラスを受け取ると美味しそうにワインを飲んだ。

「何で?」
「そこまで惚れられる相手がいないからだよ!」  

レオは笑いながら言うと、

「そういうジョシュこそ、恋人くらい作れば?最近はデートもしてないだろ?仕事との相手ばっかりしてさ」
「俺は…いいよ。俺だって別に付き合いたいって人も出来ないし…。それにと一緒にいた方が楽しいよ。落ち着くしさ」

それを聞いてレオは、父さんと楽しそうに話しているをチラっと見た。

「それは…俺も同じかな?本当なら、と一緒にいた方が楽しいんだけどさ、デートは気晴らしってだけだよ」
「俺たちって変だよな?妹と一緒にいた方が楽しいなんて…いい歳してさ」 
「そうだな…ほんと変だよ…。でもさ、は俺たちの事を一番理解してくれてるだろ?だからじゃないのかな…他の子だとああはいかないし…ほんとの俺を見てくれてるのかな?ってよく思ってたんだ。だから前のは上手く行かなかったしさ」

そう言うとレオは驚いた顔をして、

「ああ!それ、俺も同じこと思ってる。絶対、上辺の姿しか見てないよな…って、よく思うんだ」

僕とレオは顔を見合わせて吹き出した。

「ほんと…"理想の男性なの"なんて、知りもしないで、よく言うよな?」
「ああ…俺なんて前の彼女に、"私、ジョシュって、もっと男らしい人なのかと思ってたわ?優しすぎるのよね"とか言われた事あったよ」
「うわ、最悪だな…。優しくなかったらそれはそれで文句言うクセに。つか俺はその正反対をよく言われるな…"もっと優しい人かと思ってたわ!"なんて」

僕とレオは何故だかワインでいい気分になり、自分が女性に言われた"ムカついた一言"――何かのコーナーみたいだ――を暴露しあっては笑っていた。

すると、そこへ一際騒がしい声と共に、オーランドとイライジャが帰ってきた。

「ただいまー!って何?今日は全員揃ってるの?!」
「ああ、オーランド、お帰り!」
「うわ、父さん?!久し振りじゃん!」
「お、リジー元気そうだな?」

リビングは一気に賑やかな家族の団欒のようになっていった。
オーランドとイライジャは、いつものように、まず帰って来たら、に、"ただいまのキス"をしてハグをする。

「ただいま、!」
 「お帰りなさい、オーリー」
「たっだいま!
 「お帰り〜リジー」

そんな、やりとりがあってから、イライジャもワイングラスを片手に、僕とレオの方まで歩いて来た。
オーランドは父さんに掴まって肩など揉まされている(!)

「よぉ、リジー。どうだった?インタビューは」 

レオがイライジャにワイン(二本目を開けた)を注ぎながら聞いた。

「もう〜疲れたよ?同じ事を何回も聞かれるからさ…いっそ聞かれて答えたものをテープに録音して流してやろうかと思ったよ…」
「アハハ、分かる、分かる。俺も、そう思った事あるよ」

僕はグッタリしたイライジャの頭にポンっと手を置いた。

「やっぱりぃ?そうだよね…。ああ…プロモーション行った先でも同じなんだろうなぁ…」

僕は、プロモーションと聞いて思い出し、「そうだ。とレオも日本でのプロモーションの時、来る事になったからさ」 と言った。

「え?うそ!ほんとに?」
「ああ、俺とはお前たちが日本につく日に到着するように行くよ。父さんもOKしてくれたしさ」
「そっか!じゃ、皆で日本で、パァっと遊びますか!買い物もしたいしさ〜、俺、もう一度行きたい漫画の店があるんだ」

張り切っているイライジャを見て、僕は笑いながら、

「お前、日本に言ってまで、漫画の店に行くのか?」 
「というか、日本の漫画が好きなんだよ。こっちではそんなに数も多くないしさ!日本に行った時に沢山買うんだ」
「へぇ〜。そういやリジーは日本のアニメも大好きだもんな」

レオがワインを飲みながら笑っている。そこへが手にお皿を持ってやってきた。

「はい、チーズ!」
「あ、ありがとう、

レオはお皿を受け取ると、の頬にキスをした。
は僕とレオの間に座ると、「ねぇ、リジー。聞いた?日本行きの話!」 と嬉しそうにしている。

「ああ、今聞いたとこ!やったな?は初めてだろ?日本に行くの。俺が色々と案内してやるよ」
「ほんと?うわぁ、楽しみ!私、日本のアニメの映画見たいなぁ…」

僕はそれを聞いて、「でもさ、それだと言葉が分からなきゃ見れないんじゃない?」 と首をかしげた。

「あ、そっかぁ…。私、日本語分からないもんなぁ…」

と、が悲しそうな顔をして俯いてしまった。
僕は慌てて、「で、でも映像見るだけでも奇麗だしいいんじゃないか?」との頭を撫でた。
隣ではレオがクスクスと笑っている。

(おいおい…笑ってないでレオもフォローするの手伝ってくれよ…僕はに悲しそうな顔をされるとどうしていいか分かんないんだからさ…)

その時、僕の前にいたイライジャが、

、言葉が分からなくても絶対に見る価値あるって!日本のアニメは映像が凄いんだからさ!
それにDVD出たら買えばいいさ。字幕ついてるし」 

と言っての頭を撫でてあげている。
するとが顔をあげて、「そうね!それに…私、もっと勉強するわ!まずは日本語から!」 といきなり言い出して僕は驚いた。

「え…日本語、勉強するの?今、やってるスペイン語はどうするんだ?」

は友人のサラの影響でスペイン…ラテンミュージックが大好きだった。
それでCDを聞くのに、只今スペイン語を勉強中。

「それも続けるわよ?だって今度、Ricky Martin のライヴに、サラと行くんだもの!」
「うそ?!いいなぁー!それ、僕も行きたいよ!」

の言葉に音楽好きのイライジャが羨ましそうな顔をしている。

「え?リジーも行く?チケット、もう一枚余ってるってサラが言ってたし」
「ほんとに?!やったぁー!行く、行く!ね、じゃサラに電話してよ!他の誰かにあげちゃわないようにさ!」
「うん、いいよ?じゃ明日の朝一番に電話してみるね」 

は笑顔でイライジャに言っている。
そこに、「じゃ、私は明日も撮影だし、もう寝るよ。おやすみ」と父さんがリビングを出て行った。

「おやすみ〜父さん!」
「おやすみ」
「おやすみなさい!お父さん」

皆、それぞれ声をかけて、兄弟、妹だけになると、いきなりオーランドが僕らのところに来て、グッタリと座り込んだ。

「疲れたぁ〜〜〜〜…何で僕に肩を揉ますんだ…」
「オーリーは断れないだけだろ?」 

とレオが笑ってオーリーの頭をこづいている。

「う〜…だってさぁ…。父さん、疲れてる顔してたし…たまには親孝行でもしようって思ってさ…」
「偉い、偉い!オーリーは偉いよ、ほんと!」

リジーは笑いながら本気なのか冗談でからかってるのか分からない口調で言った。

「む…リジィ…馬鹿にしてるだろ…」

オーランドは口を尖らせてイライジャを睨んでいる。

「してないって!今日のインタビューもオーリーは妙なハイテンションで場を盛り上げてくれて助かったよ、僕も」

とイライジャも、やはり多少、棘がまざった事を言いつつ笑いながらオーランドの肩に手を置いた。

「妙な…は余計だよ…」

オーランドは少しスネたように言って、その場に寝転がった。

「オーリー?大丈夫?肩揉んであげようか?」

がオーランドの、あまりのグッタリ様に優しく声をかけている。
それを聞いたオーランドは目を輝かせ、「ほんと?」 と起き上がった。
僕とレオ、リジーは、目を剥いて、

「だめ!!そんな甘やかさなくていいって、!」 
「ほんと、ほんと!オーリーなんて肩凝るほど仕事してないだろ?」
「ほっとけ、。映画の続きでも見ようよ」
「でも…」
「ぬ…何だよ、リジーも、レオも、ジョシュも皆してさ!俺だって疲れてるんだから…」
「分かってるわ?はい、じゃあ、オーリーここ座って?」

はオーリーをソファーのとこに呼んでいる。
僕ら三人は顔を見合わせ、その場を立ち上がると、ソファーの方へと歩いって、ジョシュがをひょいと抱き上げた。

「え?な、何?ジョシュ…」
「いいから、いいから!」

そして次にイライジャがオーリーの後ろへと立って両肩を掴み、「はい!僕がやってあげるよ!男の方が力あっていいだろ?」 と言うと、「ええ?いいよ!リジーは…!俺はがいいんだからさ!」 とオーリーが抵抗する。
それをレオが抑えて、「まあ、まあ、疲れてるんだろ?肩揉んでもらえよ、リジーに!」 と笑って言った。

「うわ、何だよ、お前ら!」 

とオーリーはプリプリしているが、イライジャはどこ吹く風って感じで、

「はい〜どうですか〜?お客さ〜ん!カユイとこ、御座いませんか〜?」 

などとやっている。

「それは美容室だろ?!」 

とオーリーも一応はツッコみなんてやって楽しそう(?)だ。
僕はをクションの上に降ろすと、「ま、あれで楽しんでるんだから、ほっとこう」 と笑った。
も、大騒ぎしながら肩を揉まれてるオーリーと、わざと凄い力でオーリーの肩をグリグリしているイライジャ、
そしてそれを大笑いして見ているレオをチラっと見て「ほんとだ。何だか楽しそうだね?」 と苦笑すると僕を見上げて微笑んだ。

「ジョシュ…肩揉んであげようか?」
「え?!」

僕はいきなり、そう言われて少しドキっとした。

「ジョシュも疲れてるでしょ?」
「い、いや・・・疲れてるけど…肩は凝ってないし大丈夫だよ?だって疲れるだろ?」
「そう?なら無理にはしないけど!」

はクスクス笑いながらワインを飲み干して、「もう一本、開けちゃおう!」 とキッチンへと歩いて行った。

僕は思い切り息を吐き出すと、ああ…もったいないこと、したな…と思った。
せっかく、が肩を揉んでくれるって言ったのに。
僕は断った事をちょっとだけ後悔していた…。
そして三人の方を見ると、オーリーが赤い顔で叫び倒している。

「ぃでぃででで…!!!ちょ!ちょっとリジー!そこ痛いってば!ツボが…ツボを肘でグリグリすんなぁーー!!」
「アハハハ!オーリーもう少し我慢してよ!やっとほぐれてきたんだから!」 
「男なんだから少し、我慢しらたどうだ?オーリー」
「う、うるさいよ、レオ!鬼!リジーのいじめっ子!!」

僕は、そんなオーリーの言葉に思わず吹き出してしまった。

(ああ、ほんと…楽しい家族だよ、まったく)

僕は仕事を休業する事を早く皆に言わなくちゃな…と思いつつ、今は、この騒がしい兄弟達を見て笑っていたかった…











今度は三男ジョシュの小話です(笑)
最初はちょいと真面目な感じで進みましたv
この辺でちょっくらヒロインの過去話とかを書きたかったもので…^^;
ジョシュ休業ネタはノンフィクションでした(笑)
理由もほんとです。
ちょっと、これで惚れ直したのでネタにしてみました(笑)
でも…ハリ的で復活してくれて良かったぁ…(安堵)
今はワシントンの、とある大学で撮影中…暑い場所なのに映画では冬という設定でジャンバーなんて着て学生のエキストラさん達と混じって頑張っているようですvv
頑張れぇ〜ジョシュ〜vvと言う事で(何が)こっちのジョシュは少しドジと言うか…クールになりきれない、でも優しいジョシュを書きたかったんですけど…いまいち出来れてませんね。
今後頑張ります!でもってオーリー こういうキャラになってきちゃいました(汗)
さて次は四男リジーだな〜