ジョシュと話をしてから私はすぐに控室へと戻った。
「お帰り、。どうだった?」
「うん。話して来たわ.OKだって」
中へ入ると待っていたデライラへとそう言った。
すると彼女は苦笑を洩らし、ソファに凭れかかる。
「・・・そう。ダメって言うと思ったけど」
「え・・・どうして?」
「ううん、何でも。それより・・・他には誰か呼んであるの?」
「えっと・・・多分、リジィやオーリィの友人のドムくらいだと思うわ」
「あら、そうなの。のマネージャーさんは?」
「え?あ・・・ジョージはよく知らないし・・・」
何となく言葉を濁しながらデライラの隣に腰をかけると、彼女はクスクス笑って首を振った。
「違うわよ。代理の方じゃなくて!」
「・・・え?」
デライラは意味深な笑みを浮かべ私の事を肘で突付いてきた。
その様子に何が言いたいのか、分かりドキっとする。
「もしかして・・・スタンリーの・・・こと?」
「ええ、そう、その彼。彼も呼んだら?」
「ど、どうして?」
「人数、多い方が楽しいでしょ?ほら、電話してみたら?」
デライラはそう言いながら私のバッグをとってくれる。
だが私は慌てて首を振った。
「い、いいわよ。別に彼を呼ばなくても・・・。それに仕事してると思うし」
「そう?でも・・・会いたいんじゃない?は」
「・・・・・・え?」
その言葉にドキっとして顔を上げると、彼女はニッコリ微笑んだ。
「前には分かりやすいって言ったわよね?ここ最近のはちょっと寂しそうよ」
「そんなこと・・・・・・」
「好きなんでしょ?スタンリーのこと」
「―――っ」
一瞬で顔が熱くなった。
まさか彼女にバレているなんて・・・・・・
何を言えばいいのか分からなくて黙っているとデライラがちょっと笑って身を乗り出した。
「やっぱりね。ほんとってば分かりやすいんだから」
「デライラ・・・あの・・・」
「大丈夫。言わないわ、誰にも。だから電話で誘うくらいはしてみたら?」
「・・・・・・」
デライラにそう言われ私は少しだけ目を伏せた。
そう・・・確かに彼女が言う通り、スタンリーには会いたい。
毎日、そう思ってる。
今この瞬間にもミシェルと一緒にいると思えば胸が痛くなるし心配にもなる。
ただ早く前のように戻ってくれないかと祈るばかりだ。
「?ほら電話してみなさいよ。ダメもとでいいじゃない」
「・・・う、うん・・・」
デライラの言葉に思わず頷いてしまい、私は結局、携帯を取り出した。
そしてスタンリーの携帯番号を出すと少しドキドキしてくる。
(ダメもとか・・・そうよね。それでもいいじゃない。声だけでも聞けるもの・・・)
そう思って私は一気に通話ボタンを押した。
留守電にならない事を願うばかりだ。
だが、すぐに呼び出し音が聞こえて来てホっとするのと同時に緊張もしてくる。
(やだ・・・声震えちゃったらどうしよう・・・)
携帯をギュっと握りしめ、そんな事を考えていると、不意に呼び出し音が途切れ、少し低い声が聞こえた。
『Hello...か?』
「あ・・・ス・・・スタンリー?」
『うん。どうした・・・?』
受話器を通して聞こえてくるスタンリーの声は少し小さめで、まだ仕事中かもしれないと思った。
「あ、あの・・・今・・・大丈夫?仕事中?」
『いや・・・今日はもう終って今は出先だけど・・・どうしたんだよ。何かあったのか?』
「う、うん・・・えっと・・・」
出先と聞いてホっとしたものの、その後の言葉が出てこない。
すると隣にいるデライラが口だけ動かし、"が ん ば っ て"と言ってくれた。
その言葉に少しだけ励まされ、軽く深呼吸をする。
「あ、あのね・・・もし暇なら・・・今夜、うちで友達とか呼んで映画を見るんだけど・・・スタンリーもどうかなって思って・・・」
『・・・映画?』
「うん・・・ほら、リジィがシアタールームあるんだし大勢で集まって色々な映画見ようって・・・鑑賞会みたいなものかな?」
『映画鑑賞会?へぇ、楽しそうだな』
スタンリーはちょっと笑ってそう言ってくれて私は少し嬉しくなった。
「だったら・・・スタンリーも来ない?ヴィゴとかダメになっちゃって家族だけになりそうなの」
『ん〜でも俺今―― 貸せよ!―― ちょ・・・バカ、やめろって・・・!―』
「・・・?スタンリィ・・・?」
急に声が遠のき、何だか受話器の向こうから言い争う声が聞こえて首を傾げた。
その時――
『Hello、Hello?ちゃ〜ん?』
「・・・え・・・っ?」
『俺、俺!キースくんだよ〜?』
「あ・・・キ、キース?」
突然、聞こえて来た賑やかな声に私は驚いた。
『なになにぃ?今日は家で映画鑑賞会やるって?』
「え、ええ・・・」
『OK!OK!じゃあ俺が責任もって、こいつを連れて行くから待っててよ! ――バ・・・お前勝手に・・・!――』
「え、あの・・・」
キースの言葉に驚きつつ、その後ろではスタンリーが何だか騒いでいる。
「あの・・・でも――」
『大丈夫、大丈夫!俺の車で送るし、ウザーーイ、やぶ蚊くんには見つからないようにするからさ☆』
「はあ・・・あ・・・じゃ、じゃあキースも一緒にどうですか?」
『え?ワォ!いいのーー?!』
「う、うん。あの・・・大勢の方が楽しいってリジィも言ってたし・・・」
『ひゃほぅ!やったね!って事は俺、ハリソン家に入れて、しかもフロドにまで会えちゃうんだ!やったっ♪』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
受話器の向こうで大喜びするキースに呆気にとられたが、すぐにゴンっという音と共に彼の悲鳴が聞こえてきた。
『・・・ったく!調子に乗るな! ――Hello??』
「あ、スタンリィ・・・今、何したの・・・?」
『え?ああ、ちょっと制裁加えただけ(!)それより・・・ほんとにいいのか?こいつまで・・・』
「もちろん!あ、あの・・・来てくれるなら待ってるから・・・!」
『え?ちょ、おい――』
そこで私は慌てて電話を切ってしまった。迷っている空気を感じ、断られたらどうしようと思ったのだ。
でもキースが連れて来てくれると言うし、少しだけホっとした。彼と一緒なら来てくれるかもしれない。
すると隣で見守ってくれていたデライラが私の顔を覗き込んでくる。
「どうだった?」
「あ、う、うん・・・それが・・・スタンリーの友達がいて、彼が連れて行くって言ってくれたの・・・」
「そう!なら良かったじゃない」
「うん・・・」
一気に体の力が抜け、ソファに凭れるとデライラが立ち上がった。
「じゃあ私も用意してくるわね」
「あ、そうね。私も着替えなきゃ・・・」
「じゃあ後でまた来るわ」
「ええ、あのデライラ・・・ありがとう、色々・・・」
「・・・いいのよ、そんなこと。じゃ行って来るわね」
デライラはそう言うと自分の控室へと戻って行った。
残された私は軽く息をついて未だドキドキしている胸を手で抑える。
(今夜はスタンリーに会える・・・)
それだけで私は幸せな気分になるのを感じていた――
デライラはの控室を出ると、ゆっくりと廊下を歩き出した。
その顔からは、さっきまでの笑顔は消えている。そこへジョシュが歩いて来た。
「あら、ジョシュ。終ったの?」
「・・・ああ・・・」
「そう。お疲れ様。あ、あと・・・今夜、家にお邪魔させてもらうことになったの」
「・・・聞いたよ。一体どういうつもりだ?二度と来るなって言われたんだろ?」
ジョシュは少し顔を顰めながらデライラを睨む。
そんなジョシュにデライラはちょっとだけ笑みを零した。
「でもから誘って来たのよ?仕方ないじゃない」
「あんたが、そういう風に仕向けたんだろ?」
「人聞き悪いこと言うのね」
「・・・・・・とにかく。家に来てもレオには近づくな。それとすぐに帰れよ」
「あら、友達のお兄さんに挨拶しないわけにはいかないじゃない。それに・・・すぐ帰っても怪しまれるだけよ?」
「用事が出来たとでも言えよ。それに・・・うちの兄弟は以外、皆あんたの正体を知ってる。歓迎なんかされないぞ」
「いいのよ、そんなの。それより・・・大事な妹の事でも心配したら?」
「・・・何のことだよ?」
デライラの意味深な言葉にジョシュは眉間を寄せた。
すると彼女はちょっと笑って、そのまま廊下を歩きだし、ジョシュも慌てて後を追い掛ける。
「別に深い意味はないわ」
「嘘つけ、何かする気なのか?」
「まさか。友達に何をするって言うの?」
「友達?そんな思ってもないこと言うな!に何する気だ?」
そうジョシュが詰め寄ると、デライラは自分の控室の前で止まった。
「だから何もしないわよ。でも・・・大切な妹に好きな人が出来たなら心配かと思って」
「・・・は?何の事だよ」
彼女の言葉にジョシュは驚いた。
だがデライラはジョシュの質問には答えず、軽く笑みを洩らす。
「レオも・・・に恋人が出来たら、どんな顔するのかしら。見てみたいわね・・・」
「おい――」
「じゃ、後でね」
デライラはそう言ってニッコリ微笑むと自分の控室に入りバタンとドアを閉じてしまった。
その場に残されたジョシュは彼女の言っていた言葉の意味が分からず、首を傾げつつの控室まで戻って行く。
「何が言いたいんだ・・・?」
に好きな人・・・恋人?そんな奴がいるって言うのか?
そんな素振りはなかったと思うけど・・・
いや、でもデライラの事だから俺達を混乱させようとしてるのかもしれないし・・・
はあ・・・その前に・・・彼女を連れて行ったらレオ、どんな顔するんだろう・・・
それが一番怖いよ・・・。
ジョシュは少し気になりながらも、とりあえず今夜、帰ってからの事を考えると憂鬱になるのだった。
ドミニク
(むむむ・・・何だか楽しい企画のはずなのに空気が異様だ)
俺様はリビングに漂う、冷気(!)にいち早く気づき、それぞれの顔を見て行った。
さっき愛しい俺様の(?)がジョシュのヤロウと帰って来た。
まあ、これは仕事だから仕方ない・・・(ムカツクけど)
だが一人、見知らぬ女が二人と一緒にやってきたのだ。
が言うには今、共演してる女優とだという。
今夜、一緒に映画を見ようと誘ったようだ。
まあ、それはいい。
奇麗な女性が増えるのは男として、これほど嬉しい事はない。
おぉっと!でも誤解しないでくれ!
俺様は永遠に一筋だからな!他の女なんて目じゃないのさッ!
・・・で、まあ、そこまでは良かったが・・・
そのデライラとかいう女優が入って来た時、一瞬で空気が冷えたのが俺様には分かったのだ。(感がいいからな!はっはっは!)
は普通だったが、まず連れて来たジョシュの困り果てた顔。(分かりやすい奴め)
そして女優を見た時のレオとオーランドの目の釣りあがりよう。(俺様は見逃さなかった。でも怖すぎて逃げそうになった)
その動揺ぶりに気づいたが、まだ分かってないといった感じのイライジャ。(これは俺様と一緒)
そう、この女優が一人来ただけで以外の人間は何だかとても動揺しているのだ。
一体、この女優、何者なんだ?皆と何か関係でもあるのか?
とジョシュ以外、初対面だと思っていたが、そうではないような気がする。
俺様には分かるのさ!その辺のビミョーーーな空気がな!
そう・・・この何とも言えない空気は・・・男女間に出来る独特の気まずさ・・・それに間違いないッ!
もしかして・・・こいつら兄弟の中の過去の恋人だったりしてな!(変なとこで勘の鋭い男)
そう思いながら観察していると・・・
どぅも一番、動揺を見せてるのが普段なら兄弟の中でもダントツに冷静沈着、悪魔の微笑みで俺様を威嚇するレオ。
まあレオの今までの遊びっぷりを見ていると、この女優に手を出した、なんて事があったとしても俺様は驚かない。
けど・・・それをが気づいてないらしいってとこに問題があるのだろうか。
それに、この女優、もしレオと関係があったなら何故、この場に来たんだ?
まだ未練でもあるのか?あんな悪魔に。(ヲイ)
しかも何だかには友達顔で話し掛けたりしている。
うぅむ。何だか気に入らん。
俺様はそう思いつつ、夕飯代わりに出されたサンドウィッチをパクついていた。
(今夜は映画鑑賞会のため、手軽な物にしようとイライジャが言い出しエマが作ってくれたのだ)
レオはレオで、すでにブランデーなんか飲んで、ずっとの傍についている。(これだけは俺様にとって迷惑だ)
オーランドはオーランドでジョシュやイライジャと何やらヒソヒソやってるし、俺様は凄く暇なのだ。
俺様だけは一番安い、ビールを与えられ、仕方なく、ソレを飲みながら
レオの傍にいるの笑顔をつまみに飲んでいるしかない。(ぇ)
出来れば早く(と一緒に)映画を見たいところだが、何だか、まだ客が来ると言うことで夕飯を食べつつ一杯やりながら待っているらしい。
(・・・ったく!誰だ?今夜はゲストは俺様だけだと言ったのわ!)(唯一のゲストなら大切にしてもらえると思っていた奴)
内心イライラしながら、それでも暇なので一番近くにいるイライジャに目を向けた。
するとジョシュ達と話し終えたのか、呑気にワインなんて飲んでいる。
そこで俺様はササっとイライジャの服を引っ張った。
「何だよ、ドム。黙って食べてろよ」
「ム!食べてるよ!それより・・・あの女は一体、何なんだ?」
「え?」
「さっきからとレオの会話に割り込んでいるように見えるが・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そこでイライジャは口を閉ざした。
ということは・・・・・・・・俺様の推理は当たってたようだ。(推理かよ)
そこで気分を良くし、俺様は更に追求しようと思った。
イライジャの方に体を寄せ、皆には聞こえないように小声で話すことにする。(この時、イライジャがすっごい嫌〜な顔をした・・・)
「何だよ、ドム・・・少し離れてよ・・・」
「・・・我慢しろ(理不尽)・・・それより・・・あの女・・・レオが手を出した女なんだな?」
「な・・・何で知ってるのさ・・・っ」
俺様の鋭い問いかけにイライジャが大きな瞳を更に大きくしている。
(ふふん。やっぱり当たってたか)
そこで俺様は得意げにニヤっと笑った。
「まあ・・・経験上(?)分かるのさ。男女の気まずい空気がな」
「・・・別に気まずいのはレオだけだと思うけど・・・」
「・・・分かってるよ!で・・・何で、あの女、ここに来たんだ?どうせレオの事だからサッサと振ってるんだろう?」
「まあね・・・でも・・・」
「ああ、女の方が未練タラタラって事か?」
「ん〜そんな・・・とこなのかな・・・」
「ふん・・・レオも罪な男だな・・・。あんなに奇麗な子なんだから、あの子で手を打てばいいものを・・・」
「それ・・・本人に言える?」
「う・・・!」
イライジャに痛いとこを突かれ俺様は言葉に詰まった。
もし、そんな事を言えば俺様との結婚が完全になくなってしまう!(すでにない事に気づかない)
俺様は額に流れた冷や汗を拭くとチラっとレオの方を見てみた。
には優しい笑顔を向けているが、あの女優が話しに入ってくると目つきが変わる。
のいる手前か、一応は笑顔なのだが目が笑っていないのだ。いつも、あの目で睨まれ続けている俺様には分かる。(!)
「だ、だけど・・・何故、そんな女がと友達になったんだ?偶然、共演したって事か?」
「さあ?偶然・・・なんて事はないと思うけどね、僕は」
「じゃ、じゃあ、わざとか?レオに近づくためにを利用してるとか・・・っ」
「・・・案外、するどいね、ドム・・・。同じ匂いでも感じるわけ?」
「バ、バカを言うな・・・俺様はそんな姑息な真似は・・・ッ」
「はいはい、分かってるよ。まあ、でも・・・今日はちょっと気まずい感じで終りそうだね」
イライジャはそう言うと軽く溜息をついてワインを口に運んだ。
映画鑑賞を楽しみにしてたイライジャにとっては楽しくない雰囲気は嫌なのだろう。
(ま、俺様にはレオが窮地に追い込まれようが関係ないしな。と一緒にいれるだけで俺様は薔薇色の人生さ!)
そんな事を思いつつビールをグビグビ飲んでいた。
だが、この後・・・俺様を暗黒の人生へと落とす、招かれざる客が現れた・・・・・・
――キンコーン
「あ、来たんじゃない?」
「う、うん。じゃあ私出るね」
チャイムの音がして、あのデライラとかいう女優がに声をかけた。するとは慌てて立ち上がり、エントランスの方へと出て行く。
その様子を見ていた俺様は、やっと最後のゲストが来たか・・・と安堵の息を洩らした。
が・・・リビングに入って来た、そのゲストを見て、口に入れたばかりのビールを思い切り吹き出してしまった!
「やあ、スタンリー、久し振り!」
「ぶほっ!」
「どうも・・・お邪魔します」
「な―――ッッ?!!」
OH!MY!GOOD〜〜〜ッ!!!!!!!
レオが笑顔で出迎えた男は・・・な何と!!
あのモデル気取りヤロウで今はの担当から外されてるはずのスタンリーだった!
俺様は思わず手にしていたビールの缶をバキッ!メキッ!と潰してしまい、隣にいたイライジャがギョっとしている。
「な、何であいつがここに・・・ッ?」 (声が震えている)
「え?あ、言ってなかった?最後のゲストが彼なんだ。が呼んだらしいよ?」
「んな・・・!何でがあんなヤロウを・・・!」
「さあ・・・信頼してるマネージャーだったし・・・今の代理の奴の事で相談があるとか言ってたけど」
「い、今の代理って・・・」
「ああ、ただの陽気なおバカさんなんだけどね。は一緒にいると疲れるんだってさ」
「だ、だからって、あんなモデル気取りヤロウなんて呼ばなくても俺がいくらでも話を聞いてあげるのに・・・ッ!」
「・・・・・・・・・」
更に缶をリサイクルには最適なほど(!)バキバキッと潰しつつ、そう言うとイライジャの目が半目になっていた。(失敬な)
と、そこへ一際、派手な男が入って来て、俺様を更にギョっとさせた。
(な、何だこの、めっちゃ美形&紫スーツヤロウわっ!!つか、でか!身長何センチだぁ?!)
「どうも〜初めまして!」
「ああ、こいつ、俺の友達でキース・ボウエン。モデル時代の仲間です」
「どうも。レオナルドです」
「うぉ!は、初めまして!ひゃー本物のレオナルドだよッ!カッコいい〜〜♡」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「お、おいキース!失礼だろ?!」
あのモデル気取りヤロウの友達はレオを前にしてかなり興奮しているが、まだ次々に現れる兄弟に瞳を輝かせている。
「どーもー♪初めまして!俺、オーランド!」
「うわ!レゴラス!本物だーー♪ど、ども!宜しく・・・!」 (その場で飛び跳ねている)(子供か!)
「初めまして、キース。イライジャです」
「うーわー!フロドだ!うわ、ヤバ!ど、どうも初めまして!」 (更に飛び跳ねる)(俺にはオーランド二号に見えてきた)
「お、おい、キース!少しは落ち着けよ・・・ッ」
モデル気取りヤロウの友達はかなりのオポンチヤロウなのか、ミーハー宜しく皆と握手をして、
「手、洗えないよー!」
なんて女子高生みたいな事を言っている。
・・・おいおい、待てよ、青年。そこでレゴラスとフロド・・・と来れば、ここにも一人、驚く男がいるだろう?
そう。ここにも、あの"THE LORD OF THE RINGS"に出演していた男が一人・・・・・俺様、ドミニク・モナハーンが!!
(まあ、こいつは"ロード〜"の大ファンのようだし案外いい奴なのかもしれない)
俺様は爽やかに髪をかきあげ、挨拶をするべく、そのオポンチヤロウの前に歩いて行った。
キースという男はすぐ俺様に気づき、満面の笑みで走り寄って来ると―――
「うわーー本物のピピンだーー♪初めま―「誰がピピンじゃ、コルァァァ!!!!」
「―――っ!!!!!」
"
―――前言撤回。
モデル気取りヤロウと同じく、俺様の"脳内ブラックリスト"にめでたくインプットされた・・・・・・・・・・
オーランド
あーあー。バッカだね〜ドムの奴。つい本性表してゲストを怒鳴るなんてさ☆まーったレオに怒られてやんの!
ま、でもは笑ってたし、キースって奴もノリのいい奴で――自分と同じ匂いを感じた――怒鳴られても、
「わーメリーに怒られた!ラッキー☆」
なーんて言って喜んでたしね!
まあ、かなり変わってるのか、スタンリーもガックリ項垂れてておかしかった。
普段、あんな彼を見ることなんてないし、キースといると素の自分に戻っちゃうんだろうなぁ。
でも、ま、そうだよな。
いくらマネージャーやっててシッカリしてると言っても彼だってまだ22歳の若者なんだし!
僕はそう思いつつ、昼間買ってきたおやつをお皿に並べ、時々つまんだりしながらも映画を見る準備をしていた。
今、皆はシアタールームの方に移動して、先に何を観るかどうか考えてる様だ。
「オーランド、飲み物はここに入れておくから、なくなれば、ここから出してあげて」
「OK!サンキューエマ!」
準備を手伝ってくれたエマにお礼を言うと、僕はトレンチにお菓子の皿と皆のお酒を乗せてキッチンを出た。
すると中から、あのキースくんが出てきたのが見える。
「あれ?どこ行くの?もう始まるよ?」
「あ、レゴラス・・・じゃなくて・・・オーランド♪」
「俺の事はオーリーって呼んでよ。キースくん♪」
「え?いいんですか?」
「もちろんさ!何だか君とは同じ匂いを感じるんだ☆」
「それは光栄ですよ!」
なかなか熱い男なのか、キースくんはそう言うと嬉しそうな笑顔を見せた。
さすが現役モデルだけあって、その笑顔は僕の胸をキュン♪とさせるほどの代物(オイ)
羨ましいくらいに、切れ長おめめの、涼しげな美形くんで、黙っていればスタンリーくんと雰囲気も似ている気がする。
「で、どこ行くの?」
「あ、レオ兄貴に灰皿を頼まれまして」(!)
「へ?」
それには、さすがの僕もギョギョっとした。
(レ、レオの奴、ゲストにそんな事をッ?!)
彼はすでにレオの支配下となったのか、パシリのような事を言っている。
と思ったら――
「レオを"兄貴"と呼びたいならそうしろって、ドムの兄貴が・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
彼はどうやら"ドミニクマジック"の方にかかっていたようだ・・・・・(何だ、ソレ)
僕は何とか引きつった顔を笑顔に戻すと、リビングにあった灰皿を持った。
「あ、俺が――」
「いいよ、いいよ・・・・。ゲストにそんな事させられないからさ・・・・。悪いな・・・バカな友人でさ・・・」
「いえ、俺はロード〜の出演者に会えて凄く光栄だし!もうー今夜は興奮して眠れないかもなあ!」
「そ、そう?」 (ちょっと嬉しい)
「もうスタンリーに感謝しないとなー。あいつがちゃんの事務所に入ったおかげだし!」
「いやースタンリーくんもイイ奴だし、こっちも安心してを任せてるんだ!」
「あーあいつ、ほんとイイ奴ですよ!まー本人には口が裂けても言えないけど」
「キースくんもイイ奴じゃないか!類友だね!」
「そんなことないっすよ!」 (体育会系?)
僕とキースくんは何だか気が合い、話が大いに盛り上がった。
だが、そこでイライジャの呼ぶ声が聞こえてくる。
「オーリーー!!いつまで待たせるのさ!!早く来いよ!」
「おっといけね!あ、じゃあ今夜は楽しんで行って!」
「もちろん!皆さんと同じ空間で映画を見れるなんて光栄だーー♪」
「そ、そうかな〜?じゃあ今夜は一緒に飲み明かそっかーー☆」
僕は張り切ってそう言いながらシアタールームのドアを開けようとした。
が、先にドアが勢いよく開き、僕の顔面に迫ってきて―――
ガンッッ!!!
「うぎゃッ!」
――ガシャン・・・ッ
「わっ!!!」
カランカラーン・・・・・・
ドアが僕のデコにヒット。そして持っていたトレンチが宙に舞う。
その舞ったお菓子がドアを開けたレオの頭に降りそそがれた・・・・・・・・・・・・・・・
「ぃたた・・・っ」
「オーランド・・・」
「ぁ・・・ッ!!」
ぶつけたオデコをさすりつつ何とか顔を上げると・・・そこには頭からポップコーンやらチップスを頭からかぶったレオが・・・
この世のものとは思えないほどの怖い顔で立っていました――!!
「ご、ごめ・・・!あーーーっゆ、ゆるじ・・・ぐぇッ!!」 (首を思い切り絞められているらしい)
こうして楽しい映画鑑賞会の夜、僕はまたしてもマフィアな兄に殺されかけたのだった・・・
因みに・・・僕が殺されかけてる(!)のを後ろで見ていたキースくんは何故か・・・
「レオ、カッコいい〜♡」 と喜んでいた・・・
何故・・・?!Why?! HELP ME〜〜!!!!!!
これが騒々しい夜の幕開けだった――