狙われた二男"――意地悪でも何でもいいから、私の傍にいてよ" あの夜のの言葉が頭から離れず、スタンリーは軽く首を振って煙草を灰皿に押しつぶした。 「スタンリー」 その声に振り向けば今、担当をしているミシェルが笑顔で戻ってくる。 「どうしたの?浮かない顔しちゃって」 「いや別に。もう終わった?」 「ええ。NGも出なかったし」 「そう。じゃあ車回すから着替えてきて」 スタンリーはそう言うと、優しい笑顔を見せた。 それにはミシェルも気分を良くして、スタンリーの腕に自分の腕を絡める。 「ねぇ、帰りに食事して行かない?」 「食事…?」 「ええ。いいでしょ?」 「いいけど…じゃあスタッフも誘おうか。ほら、まだ皆とは仕事場でしか会ってないし」 スタンリーが出来るだけ、にこやかに提案すると、ミシェルの顔が見る見るうちに不機嫌なものへと変わっていく。 「スタッフはいいわよ…。仕事終わってまで会いたくないもの。どうせ今日のダメ出しとかするに決まってるわ」 「でも、もう少し皆と交流を持った方が撮影だって――」 「ああ、もう!そんな事いいから今日は二人で食事ね!はい、決まり」 ミシェルは勝手にそう決めると、「じゃあ、すぐ用意してくるから!」と控え室の方へ走って行ってしまった。 その後姿を眺めながらスタンリーは思い切り溜息をつくと、自らも帰る用意を始める。 ミシェルは最近、売れ出したからか、少し横柄な態度に出る事が多くなった。 前は新人だからと、共演者やスタッフにも常に愛想よく振舞っていたのだが、最近ではNGを出して注意されると、途端に機嫌が悪くなる。 この前も相手役の俳優に、「台詞を言いづらいから、もう少し間を読んでから自分の台詞を言ってくれ」と言われたせいで大喧嘩になってしまった。 幸い、相手役の俳優は若いながらにシッカリしていて、彼女のズケズケした物言いにも怒ることもなく、ミシェルが一方的にスネたという形で終わったのだが。 それ以来、ミシェルは皆と距離を置くようになり、スタンリーも、ほとほと困り果てていた。 最初はスタンリーもクルーの皆にミシェルの事で謝ることも多かったのだが、最近ではスタッフからも、 「大変だな。我がままミシェルのマネージャーなんて」 と同情されるようになった。 「はぁ…食事か…」 気が重くなり、再び煙草に火をつけ、そのまま駐車場へと歩き出す。 すると前から大道具のチーフでもあるザックが歩いてきた。 「おう、スタンリー、帰るのか?」 「うん、まぁね」 「そうか。俺はこれからセットの取替えさ。きっと朝までだな、こりゃ」 「怪我しないように気をつけて」 「ああ、サンキュ。それより…また我がまま姫のお相手か?」 ザックは苦笑を浮かべながら控え室の方へと視線を向けた。 多分、最近は撮影が終わってもミシェルが真っ直ぐ帰らず、スタンリーを連れまわしてると誰かから聞いたんだろう。 「まあ…ちょっと食事に付き合うんだ」 「そっかぁ。本来なら一日中あの我がまま娘に振り回されてるんだ。終わったら早く帰りたいだろう…全く困った子だな、ありゃ」 「そうだけど…。まあ、あんなもんですよ、新人女優なんて」 スタンリーが苦笑しながら肩を竦めると、ザックも楽しそうに笑った。 だがすぐに手を顎に持っていくと、何かを思い出したように顔を上げる。 「そうだな…。ああ、でもあの子は違ったぞ」 「…え?」 「ほら、お前が前に担当してたハリソン家のちゃんだっけ?」 「ああ…」 「彼女は新人の頃に一度、一緒に仕事をした事があるが凄くいい子だったな。俺達スタッフにも優しくてクルー全員から可愛がられた」 「…そう」 の話を聞いて、スタンリーの顔もふと優しい表情になる。 「何事にも頑張り屋だったし、NGは皆に迷惑かけるって言って必死で台詞を覚えてたっけ。怒られたって文句を言ってるのを聞いたことがなかったしな」 「…彼女はそんな事で絶対に文句は言わないよ。自分が悪いって分かってる」 「そうだろう?まあ、お前さんはいつも見てたんだから知ってるよな。今こんなに売れてるのに、昔とちっとも変わらないみたいだし」 「変わらないよ?相変わらずスタッフにも共演者からも可愛がられてるみたいだから」 スタンリーはそう言ってふっと微笑んだ。 そんな彼を見てザックは訝しげに眉を寄せると、 「しかし何で今更、担当が変わったんだ?普通は変えないものだろう」 「…まあ…ちょっとゴシップ記事が出回る事も多くなったし…。一時って条件なんだ」 「ああ、そうか!何だ、じゃあほとぼりが冷めたら、またちゃんの担当に戻れるのか」 「…まあ」 「そりゃ良かったな!仕事のパートナーはよっぽどのことじゃない限り変えない方がいいんだ」 ザックはそう言うとスタンリーの背中をバンっと叩いた。 「じゃあ我がまま姫のお相手、頑張れよ!もう少しの辛抱だ」 「…ああ、何とか頑張るよ」 ザックの言葉に苦笑を漏らすと、スタンリーは軽く手を上げて駐車場へと再び歩き出した。 「…ほとぼりが冷めたら…か」 ふと、そう呟くとスタンリーの顔が一瞬で曇る。 その時、後ろから甘ったるい声が聞こえて、ミシェルが走ってきた―― プルル…プルルル… 草木も眠る丑三つ時…ではなく、そろそろ草木も目を覚ますのでは、という時間の午前5時。 不意に部屋の個人電話が鳴り出した。 「…ん…るさぃ…」 オーランドは夢の中で鳴り響いている耳障りな音に文句を言いつつ、ゴロンと寝返りを打った。 が… ―――ドサっ! 「ぅ…っ」 あまりに勢いが良すぎてベッドの下へと普通に落下。 背中をしたたか打ちつけ、そこで一気に目が覚めた。 「ってぇ…」 急に夢から現実へと引き戻されたオーランドは開かない目をゴシゴシと擦りつつ、ノソっと這って再びベッドへと上がる。 が、そこでずっと聞こえていた、プルルル…という電話の音にハっと我に返った。 「何だ…電話…?」 薄暗い部屋の中を見渡し、こんな時間に非常識な…と思ったが、もしかしたら緊急な用件かも…と思い直し、ベッドボードの上にある電話に手を伸ばした。 「…もしもしぃ…?」 『……………』 「…?もしもし…?あの…どちらさま〜?」 何も返事がないので、もう一度呼びかける。 が、相手は何も答えない。 「おかしいなぁ…寝ぼけてたのかな…」(!) オーランドは何も聞こえてこない受話器を見つめながら、そんな事を呟いた。 あまりに眠いせいで、さっき聞こえてた電話の音すら夢だったのか?と思ったようだ。 だが、もしそうなら受話器の向こうからはツーっという発信音が聞こえてくるのだが、このオーランドはそこまで深く考えていない。 未だ無言のままの電話に、自分の勘違いだ、と思い込み、受話器を戻そうとした。 だがその時――― 『…クスクス…』 「―――ッ?!」 突然、女の笑い声のようなものが受話器越しに聞こえて、オーランドはビクっとなった。 そして再び受話器を耳に当てると、「も、もしもし…誰?」と問いかけてみる。 だが相手はまた何も答えず、シーンとしたまま。 そこでオーランドは、またしても"空耳?"という事で済ませようとした。 「俺、疲れてんのかな…。レオに苛められすぎて」(!) レオが聞いたら蹴りの一発でもいれそうな事を呟き、オーランドは頭を掻いた。 がその時、またしても受話器の向こうで、クスクスと笑う女の声が聞こえて来て――― 『―――You are cursed...... 』 「―――――ッ!!!」 …ブツ…ツーツーツー そこで電話が切れ、オーランドはベッドにひっくり返ったのだった。 「――ほーんとなんだってぇ!信じてよ、レオ〜!!」 いつもの如く朝からハリソン家のダイニングは、この家の次男のせいで騒がしかった。 「うるさいなぁ。どうせ寝ぼけてたんだろ?」 オーランドの放つ騒音に顔を顰めながらブラックコーヒーで目を覚まそうとする、この家の長男レオは思い切り溜息をついた。 「そうそう!寝ぼけてたんだって。だいたい、そんな時間にイタズラ電話かけてくる女とかいないだろ?」 「ぬ!リジーまで、そんな呑気な!ほんとに聞こえたんだよ!クスクスって笑い声がした後に…"貴方を呪ってやるわ"ってさぁ!」 いつものようにクールな顔でケラケラ笑っている四男のイライジャに、オーランドもぷっと頬を膨らませ、そう抗議をした。 するとイライジャの隣で朝食をとっていた、この家のお姫様で末っ子のは苦笑しながら紅茶を口に運んだ。 「でもオーリーは誰かから恨まれるようなことしてないじゃない?増して女の子からなんて…」 そのの発言にギョっとしたのは、レオ、イライジャ、そしての隣で静かに朝食をとっていた三男のジョシュだった。 皆、何気なく首を振りつつ、 (いや、それは違うぞ?…。オーランドなんて人から恨まれるような事ばかりしてきたんだから…) なんて事を言いたげだ。 「〜!そう言ってくれるのは嬉しいんだけどさー!でもほんとなんだよ!不気味な女の声でクスクスって…」 「ふん…だったら本当にどっかの女から恨まれてるんだろ?」 「な!レオ〜!怖いこと言うなよ〜!」 「まあまあ、オーリー。そんな気になるんだったら今まで付き合った子に手当たり次第、電話して謝り倒せばいいじゃん」 「ぬ、リジィ…」 次々に家族からそんな事を言われ、オーランドは口を尖らせた。 「昔、付き合った子たちの連絡先なんて、もう覚えてないよ…っ」 「ああ、オーリーは携帯持ってもすぐ壊すし使いこなせないからね。じゃあ放っておくしかないんじゃない?」 「そんな!もし明日の朝もかかってきたら、どうするんだよ?!」 「さあ?とりあえず受話器に向かって付き合ってきた子たちの名前で呼びかけてみれば?許してくれってさ」 「…そんな!名前なんて覚えてないよ…!」 「「「――そこは覚えとけよっ!」」」 そこで、レオ、ジョシュ、イライジャの声が見事にそろい、綺麗に突っ込む。 が、だけは軽く頬を膨らまし、 「酷い、オーリィ…。付き合った子の名前すら覚えてないなんて…」 と怒ったように椅子から立ち上がり、リビングに行ってしまった。 それにはオーランドも更に真っ青になり、慌てて愛しい妹を追いかけていく。 「わー、〜!怒らないでよ〜!」 そんな声がリビングから響いてきて、残された3名は互いに顔を見やり苦笑を漏らす。 「ったく…相変わらずアフォだな、オーランドは」 「ほんと。付き合った子の名前くらい覚えとけっつーの」 レオとジョシュはそんな事を言いながら、食事を終えたのか椅子から立ち上がった。 すると同じように立ち上がったイライジャが訝しげな顔で腕を組むと、 「でもさ…。その電話がほんとだとしたら…誰なんだろ」 「………あ〜」 「…それも…そうだな」 その一言で3人は再び顔を見合わせ首を傾げる。 「確かに…オーランドはアフォだけど女の子に恨まれるような別れ方はしてないんじゃねーの?」 「だよなぁ。だいたい酷い振られ方してるのはオーリーの方だし…」 「だろ?でもさ、オーリーが振られたのはオーリーが彼女よりを大切にするからで、少なくとも相手の子も傷ついてはいるんじゃない?」 「「…………」」 イライジャの一言に、再び固まるレオとジョシュ。 「って事は…もし、ほんとにオーリーに恨みを持ってる女がいたとして…も危ないって事か…?」 「そういう…事になるな…」 「マズイよ…」 どうも笑ってられない状況だと気付いた3人は、暫しその場で考え込んでいた。(もはやオーランドの危険など、少しも心配していないあたり) 「はぁ…朝から疲れたな?」 スタジオへ行く途中、ジョシュはそう言っての頬に口付けた。 それをバックミラー越しに見ていた、のマネージャー代理、ジョージ・ファレルは、 「相変わらず仲がいいね、二人は!あっはっは!」 と朝からウザいくらいの爽やかさで笑っている。 ジョシュはそんなジョージを軽く無視して、笑いを堪えているの肩を抱き寄せた。 「も気をつけろよ?もし変な奴が近づいてきたら――」 「もう、ジョシュ…そんな心配しないで?それに何でオーリーにイタズラ電話がかかってきて、私が気をつけるの?」 「あ、いや、それは…だからさ…」 に首を傾げられ、ジョシュは言葉に詰まった。 まさか、その"恨みます女"がの事まで狙うかも…とは言えない。 (はぁ…ただでさえデライラの事もあるってのに…参るよ、ホント) 今朝は結局、今一緒に仕事をしているジョシュが常に目を光らせておくという事で意見が一致した。 だが撮影に来れば一人のシーンの時もあるし、とずっと一緒、というわけにもいかない。 それならマネージャーに頼めばいい話なのだが、この能天気なイタリア人は何となくを任せていいものか信用が出来ないのだ。 デライラのことも気になるジョシュとしては、自分が傍にいない時くらい任せておきたいとは思っているのだが… (彼はかなり自己中でマイペースだからな…。を守る事より、仕事を取ってくる事に命を燃やしている…そんな男に任せられない) そう考えると、やっぱり早くスタンリーに戻ってきて欲しい…とジョシュは思った。 スタンリーは…何だかんだ言っても、の事を一番に考えてくれてたし、任せておいても安心出来たんだよな… まあ…事務所の意向も分かるが、そろそろ、この陽気なイタリアンを引き取りに来て欲しい… ジョージの返品(!)を考えていると、車が静かに停車して、当事者である陽気なイタリアンが満面の笑みを浮かべて振り向いた。 「さあ!到着だ!今日から新しいスタジオだし張り切って行こう!」 「はあ…」 (逆に萎える…) 何故にそんなテンションが高いんだ?と首を傾げつつ、ジョシュはの手を引いて車から降りた。 そこへ、もう一台、車が入ってきて顔を上げる。 「あれ…あの車…」 見たことがある、と思って立ち止まったジョシュに、も驚いて足を止める。 「どうしたの?ジョシュ…」 「いや…あれスタンリーの車じゃないか…?」 「え…?」 その言葉にも驚いたように、今入って来た車へと視線を向けると、 運転席からスタンリーが出てきて、後ろのドアを開けているのが見えてハっとした。 「あ、ほら、やっぱり! ――おい、スタンリー!」 ジョシュが大きな声で呼びかけると、スタンリーは一瞬キョロキョロと辺りを見渡してから、二人に気付き、驚いたような顔をしている。 そしてミシェルが降りてくると、スタンリーは二人の方へと歩いてきた。 「どうも。え、ここで撮影なんですか?」 「ああ、今日からね。前のスタジオじゃ少し狭くてセットが入らなくて急遽、変更になったんだ」 「そうですか」 は二人の会話を聞きながら、スタンリーに会えた事で緊張してくるのが分かった。 ここ一ヶ月は会ってなかったので普通に声をかけることも出来ない。 そこへ少しスネた顔でミシェルが歩いてきた。 「もう、スタンリー。置いてくなんて酷いじゃない…。―――あ♪さん、お久しぶりです〜」 「おはよう、ミシェル。お久しぶりね」 ミシェルはに気付くと、すぐに笑顔を見せて可愛くなついてくる。 が、それを見ていたジョシュは、"かなり、強かな子だな"と思った。 「さんと同じスタジオになれて嬉しい〜♪ね?スタンリーも嬉しいでしょ?」 「…それより遅刻するから早く行くよ」 「あん、待ってよ、スタンリー」 「じゃあ、俺達行きます。また」 「ああ、またな」 スタンリーはジョシュに声をかけると、事務所の先輩でもあるジョージにも挨拶をして、そのままスタジオ内へと入っていった。 ミシェルはその後を追いかけながら、スタンリーの腕に自分の腕を絡めて歩いていく。 そんな光景を見て、は胸が痛むのを感じていた。 (何よ…話しかけてくれたっていいじゃない。それにミシェルには優しい言葉かけちゃって…) スタンリーが自分以外の女の子に触れられてるのを見るだけで重苦しい嫉妬が心の奥から湧き上がってくるのを感じ、軽く首を振った。 「どうした?…」 「あ、何でもない…。行きましょ」 ジョシュが心配そうな顔をしたが、は無理に笑顔を作って、彼の腕を引っ張っていく。 だがこれから同じスタジオで撮影なら今よりもっと会えるかもしれない、と思うと少しは心も軽くなったのだった。 〜〜♪〜〜♪〜〜♪ 「おい、レオ。携帯鳴ってるぞ?」 「ああ、悪い」 ロケ先で休憩してるところへレオのマネージャーが携帯を持ってきてくれた。 それを受け取り、少し人から離れると近くの木に寄りかかり通話ボタンを押した―― 『――あ、レオ兄貴?』 「え…?」 受話器の向こうから能天気な声が聞こえてきて、レオはビックリした。 『俺ですよ、キース!今、話してても大丈夫ですか?』 「あ、ああ…。それは大丈夫だけど…どうした?」 レオはスタンリーの親友で現モデルでもあるキースからの電話に驚き、尋ねた。 彼は前に家で"映画鑑賞会"をやった時にスタンリーが連れてきた事から知り合ったのだ。 その時に聞かれて電話番号を教えた記憶はあるものの、あれから一ヶ月は経っている。この突然の電話に驚くのは当たり前だろう。 何の用だ?とレオが首を傾げていると受話器の向こうから軽く咳払いをする声が聞こえた。 『んっんっ。…早速だけど…レオ兄貴、今夜空いてる?』 「え?今夜?」 そう言ってクルーの方へと目を向けた。 残り3シーンほど撮ればロケは終わりで明後日にはスタジオでクランクアップする予定になっている。 なので今夜は比較的早めに終わるだろうと思っていた。 「空いてる事は空いてるけど…何で?」 『お♪空いてる?ラッキー☆』 「……(コイツ、人の話聞いてないな…?)」 さすがオーリーとキャラがかぶってるだけの事はある…とレオは目を細めた。 が、そこはやはりオーランドと違うのか、その理由をすぐに話し始めた。 『いや実は例のパーティが今夜、フォーシーズンズホテルであるんですよ♪』 「例の…パーティ…?」 『やだなぁ!忘れちゃったんですか?前に、女の子紹介するって言ったじゃないですか!』 「あ…」 キースの一言で、"そう言えば…"とふと思い出した。 家に来た時、確かそんな話をした気がする。 『んで、最近、俺も仕事で海外とか飛んでて連絡できなかったんですけど、帰ってきて早々にその話を聞いたんで、即効で兄貴に電話したわけで☆』 「……おい。その"兄貴"ってヤメロ…」 『え?嫌ですか?カッコいいのに…』 「そういう問題じゃない…。お前のキャラで俺の事をそう呼ぶと、ほんとに俺のパシリか弟分みたいに思われるだろ…」 溜息混じりでそう言うと、キースはケラケラ笑いながら、 『やだなぁ♪実際そうじゃないっスか♪』 と能天気な事を言っている。 それにはレオもガックリと頭を項垂れた。 (ダメだ…こういうトコはやっぱりオーランドとかぶってるだけあってアフォの兆しが伺える…) 何とも失礼な事を考えつつ、軽く息をつくと、 「…悪いがキース…今夜は――」 『あ!いっけね!俺の出番だ!今、ファッションショーのリハ中なんですよ!あ、じゃあ今夜、迎えに行くし待ってて下さいね〜♪』 「え?!あ、おい、キース――!」 ブツッ…ツーツーツー 「……………」 まさに嵐の如く、自分の言いたい事だけを言って切ってしまったキースに、レオの手がぷるぷると震えた。 くっ…実は呪われてるのって俺なんじゃないのか…? どうして俺の周りには、こう"アフォキャラ"が寄ってくるんだ…(オーランドは寄ってきたわけじゃないが) だいたい、迎えに行くって俺がどこでロケしてるか知ってんのか…?アイツ… 「はぁぁ…」 レオは携帯をポケットにしまうと大きく溜息をついて、その場にへたり込んだ。 「でさ。その女がこう言ったらしいんだ。―――"貴方を呪ってやるわ…"」 『へぇ〜』 「で、オーリーが朝から騒ぎまくって凄くうるさかったんだ」 『アイツはいつもうるさいだろうが』 イライジャの言葉に受話器の向こうの、野太い声が答えた。 「まあ、そうなんだけどね。でもオーリーって、どうしよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜もなくアフォだけどさ」 (オイ) 『あっはっは!まあ、その通りだな!アイツはアフォだ、うん!間違いない!ぬぁっはっは!』 「……でも女の子から呪ってやるって言われるほど恨まれるようなキャラじゃないと思うんだよ」 『ぬ…そうか?』 「うん。あの人は天然アフォな才能を持ってるから(!)人を怒らせたり呆れさせたりするのは得意だけど、恨まれるとなると少し違う気がして」 『は〜そぉーかー?』 「ドム…今、耳ほじってるでしょ…」 『ぬぉ!ななな何で分かった?!』 「いや何となく…ね。 (ドムのやる事なんて全てお見通しだよ)」 『凄いな、リジー!お前、俺様の事をよっぽど愛してるん――』 「でさ、考えたんだけど」 『…軽く無視かっ!!――で、何だよ…?』 「…もしかしたら…今回の件って………僕らがよく知ってる奴が絡んでないかなって思ったんだ」 『…と言うと…?』 「ドム、やったでしょ」 『な――!!!何だとぅ?!貴様ぁ〜!!この俺様がそんな小ざかしい電話をすると思うのか?あぁん?!』 「うん」 『!!!!』 アッサリと肯定され、ドムもピシーっと固まったに違いない。 それでもイライジャは淡々と話を進めた。 「どうなの?ドム。"呪います電話"かけてない?」 『バ!バカヤロ!お、俺様がかけられるわけないだろう!そもそも電話してきたのは女だろ?!』 「そうだけど…ドムなら声を変えてかけてきたのかな、と思って」 『バーカ!俺様がイタ電かける時は正々堂々と地声でかけるわっ!!』 (それ言葉の使い方違うんじゃ) 「…ドム…イタ電かけてる時点で正々堂々じゃないよね?分かってる?」 『んぐ…っ。わ、分かってる!しかしな、俺様が貴重な睡眠時間を削ってまで何でオーランドごときにイタ電かけないといけないんだっ』 ドムはそう怒鳴りながらハァハァと息も荒く、ソレを聞いていたイライジャは少し気分が悪くなってきた。 だが、そこはグっと堪え、その"疑う理由"を述べるべく、軽く深呼吸をする。 「あのさ、ドム」 『な、何だよ…』 「…眉毛、生えた…?」 『―――ッ!!!』 そう、イライジャは思い出したのだ。 あの一ヶ月前の惨劇の朝の事を。 "映画鑑賞会"と銘打ったのに何故か"飲み会"に変わってしまった、あの日。 ドムの汚い寝顔のせいで(!)オーランドが"おいた"をしてしまった。 そこでイライジャが珍しくガッツリとオーランドを怒鳴りつけたのだ。 それがあまりにショックだったのか、オーランドはその怒りの矛先を"おいた"の原因になったドムへと向けた。 そしてオーランドのささやかな復讐は速やかに実行されたのだ。 そう、その復讐とは…ドムの"立派な眉毛を半分、剃っちゃいました"という何とも下らない、でもかなり笑えるものだった。 実際にイライジャも眉が半分ないドムを見て爆笑したし、レオやジョシュだって腹を抱えて笑っていた。 そしてドムはと言えば、眉毛が生え揃うまでには会えない…と、それからピタリと音沙汰がなくなったのだ。 それにはレオやジョシュも予想外だったらしく、いつもは怒り、殴り倒している(!)オーランドを誉めまくった。 元々、チョーーーーーーー単純なオーランドは皆から珍しく誉められたので、この一ヶ月は、かなり調子ぶっこいていた。 そう、豚もおだてりゃ木に登る状態で登りすぎて、少々姿が見えなくなるくらいに。 そして、そう多分…いや必ず、この被害者のドムにまで自慢の電話を入れたはず。 自分の眉毛を剃り落とした事でオーランドが誉められていると知ったドムは内心、怒りの炎がメラメラと燃えていただろう。 いつか…いつか復讐してやる――! そう思ったに違いない。 いや、ドムとは、まさにそんな男なのだ。 だからこそ、一通り犯人は誰だ?と考えた時、イライジャは、ふとドムの事を思い出した。 ドムのように犯罪のプロなら(オイ)きっと足が着く事もなく、オーランドに向けて密かに復讐を実行出来るだろう、と。 だから聞いてみたのだ。 "眉毛は生えた?"と―― 『ななな…俺様の眉毛がどうしたって?!』 「だから…ちゃんと生え揃ったの?」 『あ、ああ…バババッチリさ!俺様の眉は今じゃふさふさだぞ?!ふっさふさ!!』 どこか動揺した声だな、とイライジャは思った。 が、ドムもつかさず、そこで、 『だ、だからって俺がオーランドにいちいち声色使ってイタ電するはずないだろがっ』 と完全否定の姿勢をあらわした。 『いいか?リジィ…神に誓ってもいい。その電話は俺はかけてない!』 「…そっか。何だ…じゃあ僕の推理も外れたって事だね」 ドムのあまりに真剣な言葉に、イライジャも軽く息を吐き出すとソファに寝転がった。(今日は一人オフなのだ) 『お、おいリジー』 「ん?」 『そんな下らない事で電話してくんな!俺様は忙しいんだっ。だいたい親友の俺を疑うなんてどうかしてるっ』 「疑われるようなことを普段からしてるし」 『う、うるさいな!ったく失敬な奴だ。もう切るぞ!』 ドムはそう言って本当に電話を切ったのか、すぐにツーっという音が聞こてきた。 「なーんだ…違うのか」 電話が切れたあと、イライジャはつまらなそうに呟き、携帯をポンと放り投げる。 「はぁ〜ま、でも少しは暇つぶしになったかな?」 そう言いつつ小悪魔のような笑みを零すと、テーブルから煙草を取って咥えた。 彼はただ単に暇でドムを相手に暇つぶしをしてただけらしい。 「ん〜でもじゃあ、ますます分からなくなったなぁ…。他は…誰か怪しい奴いたっけかな…」 そんな事を呟きつつ、イライジャは体を起こすと、再び携帯を手にして怪しい奴はいないかと探し始めた。 「お疲れさん、くん!」 「あ、ありがとう」 1シーンを撮り終え、セットから出ると、ジョージがニコニコしながらジュースを持ってきた。 ほんとは紅茶が良かったのだが、仕方なくそれを受け取り、隅にある用意された椅子へと腰掛ける。 次はジョシュ一人のシーンの撮影だ。 「いやぁ、今の演技も良かったよ〜!どんどん上手くなるね、くんは!」 「はあ…」 あれこれと話しかけてくるジョージに内心、嫌気をさしつつ、軽く相槌を打っておく。 その時、スタジオのドアが僅かに開き、本当ならここにはいない人物の顔が見えた。 「あ…」 「ん?どうしたんだい?」 思わず椅子から立ち上がると、隣に立っていたジョージが訝しげな顔をする。 が、の視線の先に顔を向け、歩いてくる人物を見た時、軽く息をついた。 「スタンリー、どうしたんだ?」 「いえ、ちょっとに用事があって…」 「え…?」 突然やってきて、そんな事を言うスタンリーに、は驚いた。 「な、何…?」 「ああ、今ちょっといい?」 「うん、大丈夫…」 「じゃあの控え室で」 スタンリーはそう言ってジョージに軽く挨拶をすると、そのままスタジオを出て行った。 それに続こうとも歩いていこうとすると、急に腕を掴まれる。 「待ちなさい、くん」 「な、何ですか?」 「今は私が君のマネージャーだ。前の担当と二人で話すのは――」 「放してください…。それにスタンリーは、まだ私の担当ですから」 「な、何を…あ、おい、くんっ」 早くスタンリーの元へ行きたくてはジョージの腕を振り払い、そのままスタジオを飛び出した。 一瞬、監督と打ち合わせをしていたジョシュが心配そうな顔をしたが、相手がスタンリーなら大丈夫だろうと思った。 廊下に出て少し歩くと、他のスタジオと繋がっている交差した場所にスタンリーは立っていた。 が歩いていくと、彼は吸っていたタバコを廊下の灰皿に押しつぶし、 「ジョージに何か言われなかった?」 と心配そうに尋ねてくる。 彼の声を身近に聞くのは凄く久しぶりで、ドキドキしてるのを悟られないように軽く首だけ振った。 「そっか。ああ、控え室ってどこ?」 「あ、こっちよ?」 スタンリーを促し、廊下を歩いていく。 時々すれ違うスタッフもとスタンリーが一緒にいる事に驚いているが、皆はもちろん顔見知りなので、 「久しぶり、スタンリー!」 「おう!もう戻ってこれたのか?」 なんて元気良く声をかけていく。 皆と言葉を交わしてるのを背中で感じながら、は久しぶりに会えた事を幸せに思っていた。 「どうぞ?」 中に入ってソファをすすめると、スタンリーは真っ直ぐ紅茶のセットが置いてあるテーブルに行って顔を顰めた。 「あれ、何でいつもの紅茶葉がないんだ?俺、用意しといたろ?」 「え?あ…それが…ジョージってば紅茶淹れられないみたいで…」 「マジで?はぁ…」 スタンリーは軽く溜息をつくと、その場にあった、多分スタッフが用意してくれたのであろう、普通の葉で紅茶を淹れてくれた。 「はい」 「あ…ありがと…」 前と同じように紅茶を淹れてくれた彼に少し感動しつつカップを受け取る。 スタンリーも自分の分のカップを持つと、ソファにゆったりと座り、「あぁ…あんま美味くないな、これ」と苦笑を零した。 でもは久しぶりにスタンリーが淹れてくれた紅茶をゆっくり味わうように一口飲んでみる。 「そう…?美味しいよ?」 「そうか?」 「うん。スタンリー、紅茶淹れるの上手いもんね」 「だってが大好きだって言うし、これでも覚えたんだよ…」 そう言って照れくさそうに顔をそらす彼に、は何だか胸の奥が苦しくてそっと息を吐き出した。 仕事とはいえ、自分のために、わざわざ、そんな事までしてくれた事が本当に嬉しかった。 「あ、あの…それで?話って…何?」 「え?あ、ああ…。てか…座れば?」 スタンリーはそう言って自分の隣を指差した。 内心、隣に座りたいけど、どうしよう…と思ってたはそう言われて思わず笑顔になる。 そのまま言われた通り、彼の隣に座ると、懐かしい香水の匂いがした。 「ブルガリ…」 「え?」 「ブルガリの匂い、変わってない」 「ああ…だって俺、ずっとそれしかつけてないし」 スタンリーはそう言って苦笑すると、「どうした?暫く会わないうちに大人しくなっちゃって」との頭をクシャっと撫でた。 それだけで顔が熱くなるのが分かり、は少し俯くと、 「そ、そんな事ないわよ…」 「そう?仕事はどうなんだよ。順調に進んでるのか?撮影」 「うん…。もう半ばまで撮ったの。そっちは?」 「え?」 「ミシェルと上手くやってるみたいだけど…」 先ほどの光景が頭に浮かび、ついそんな言い方をしてしまう。 だがスタンリーは軽く苦笑を漏らしただけで、「まあ、何とかね」と肩を竦めた。 「それで…話って?」 スタンリーの言葉に再びチクリと胸が痛み、顔を反らした。 (前は我がままで大変だ、なんて言ってたクセに…) 嫉妬から、ついそんな事を思ってしまう自分が嫌になる。 スタンリーはそんなに気付かないようで、煙草を咥えて火をつけると、暫く黙っていた。 その横顔は少し険しいもので、はそこで初めて小さな不安を覚える。 (何の話だろう…。もしかしたら戻ってこれるっていう話かも、なんて期待してたけど、この表情はどうやら違うようだ) 考え込んでいるスタンリーの横顔に、少しづつ不安は広がり、さっきとは違うドキドキ感が襲ってくる。 まさか…もう私のマネージャーには戻らない、なんて…そんな話だったらどうしよう… もし、このままの状態で、と言われたら…私は絶対に"YES"と言っちゃいけない。 そう心に決心して、はスタンリーの方に体を向けた。 「あの…スタンリー?」 「ん?あ、悪い」 ボーっと煙草を咥えていたスタンリーはハっとした様子で慌ててそれを灰皿に押しつぶした。 その仕草を見てるだけで、は緊張してくるのを感じ、小さく息を吐き出す。 その時、スタンリーがふとの方へ視線を向けた。 「あの…さ」 「う、うん…」 「実はに話してなかったんだけど…」 「…な、何…?」 その言葉に声が震えた。気付かれただろうか… 何とか平静を保ちつつ、目の前の彼を見る。 スタンリーはどことなく言いにくそうにしてて、その表情だけでも不安が大きくなっていくようだ。 その時、スタンリーが顔を上げて、真っ直ぐにを見つめた。 「俺、何年か前に…家族を事故で亡くしたんだ…」 「………ッ」 そう切り出したスタンリーには驚いた。 その事は事務所の子から聞いて、は知っていたが、スタンリー本人は言いたくないのか、その事実を彼女には隠していたからだ。 「あ、あの…」 「で、今、俺の家族は妹だけなんだよね」 「…あ…妹さん…」 胸の奥がドキドキする。 スタンリーはいったい何故急にこんな話をしだしたのか… 「ああ、アネットって言うんだけど…」 スタンリーはそこで言葉を切ると、軽く息を吐き出した。 「…助かったけど…ずっと植物状態でさ…。今も入院してる…」 「………っ」 はキュっと唇を噛み締めた。 スタンリーの辛そうな顔が、妹への愛情を物語っている。 何て言えばいいんだろう…私は、彼に何て声をかければ… いつかは聞いてみたいと思っていたけど、まさか、こんないきなり話してくれるとは思ってなかった。 は何も言えないまま、ギュっと膝の上で手を握り締めた。 するとスタンリーは、ふと顔を上げて悲しげに微笑む。 「そんな…顔するなよ…」 「だ、だって…」 「ごめん。に嫌な思いをさせる気は――」 「ち、違うの…!そうじゃない…っ」 「…?」 は慌ててスタンリーの腕を掴むと思い切り首を振った。 どう言えばいいの?そんな辛そうなあなたに… 何て言えば… 「…どうした?」 「何でもない…ごめん…」 何も言葉が浮かばず、彼から手を離して唇を噛み締めた。 すると頭にポンと手を乗せられ、ドキっと鼓動が跳ね上がる。 「は…優しいよな…」 「…え?」 その言葉に驚いて顔を上げれば、スタンリーは優しい瞳で彼女を見ていた。 「俺の気持ちとか…考えてくれてるんだろ?」 「…スタンリー」 スタンリーはそう言ってちょっと笑うとソファに凭れかかった。 「最初、父さんや母さんの事故を聞いた時凄いショックだった…。いきなり逝かれて、どうしたらいいのか分からなくてさ。 でも…幸か不幸か…アネットだけが助かった…。それを聞いた時、どんな事をしてでも妹を助けてやんなくちゃって思って…」 静かに話し始めたスタンリーの声が耳に響く。 どうして急にそんな話を自分に聞かせるのか、とか色々と聞きたいことはあったが、今は黙って彼の話を聞いていたい。 「だから時間が自由にならないモデルはやめた。出来るだけアネットの傍にいてやりたかったし…」 「そう…だったの…」 「…でも…」 スタンリーはそこで言葉を切った。 もふと顔を上げると、スタンリーは視線を反らし、気まずそうに眉を寄せる。 その表情を見て、まさか妹さんに何かあったんじゃ…と思った、その時。 ―――ドンドンドン…! 「「――――ッ?」」 突然、控え室のドアが叩かれ、二人はビクっとした。 「ちょっとスタンリー!いるんでしょ?」 少しイライラしたような声で叫んでいるのはミシェルだった。 その声を聞いてスタンリーは軽く溜息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。 「ったく…先輩の控え室なのに、あんな風に叩いて…困ったもんだよ」 そう言って苦笑するスタンリーにも笑みを零す。 「いいの。それより…」 「ああ、悪い。話は…また今度」 「あ…そう…だね」 もそこは素直に頷き、立ち上がる。 実際のところ、こうして中断した事にホっとした。 あの話の先を聞きたいようで聞くのが怖いのだ。 「あ、じゃあ…また」 がそう言うと、スタンリーはちょっと笑って彼女の頭を軽く撫でた。 その行為を前にも時々やってくれていたのを思い出し、は胸の奥が暖かくなったのを感じた。 〜〜♪〜♪〜♪ その時、スタンリーの携帯が鳴り出した。 「キース…?何だよ…こんな時に…」 スタンリーはディスプレイを見て顔を顰めると、苦笑しながらの方を振り返った。 「じゃあ…俺、行くよ」 「うん。お仕事…頑張って」 「ああ。も」 スタンリーはそう言うと未だ叩かれているドアを思い切り開けて、そのままミシェルの元へ戻っていった。 「ちょっとー二人で何してたの〜?スタンリーは今、私のマネージャーでしょー?」 廊下から、そんな声が聞こえてきて、は思わず苦笑した。 (あの分じゃ、スタンリー、大変かも…) そう思いながらソファに座ると、はカップを持って、そっと口をつける。 スタンリーが久しぶりに淹れてくれた紅茶は、少しだけほろ苦い味がした―― ―――その次の日の朝方…… ――プルルル…プルル… 「…………ッ!!」 また同じ時刻に電話が鳴り出し、オーランドも今回はすぐに目が覚めた。 どこかビクビクしながら寝てたので、昨日と違い、すぐに頭もさえて来る。 「ほ、ほんとに来た…!」 オーランドはモソモソと布団から顔を出すと、暗闇の中で緑色のライトを放つ電話を恐る恐る眺めた。 この電話は俺だけのプライベート用だ…だから番号を知ってる人間なんて限られてるはずだ… 思い出せ、オーランド…!俺を恨んでそうな女の子を――! ――プルルル…プルル… あれこれ悩んだが、過去5年ほどの彼女は本気で名前が思い出せない子もいてオーランドは困ってしまった。 「くそぅ…俺に昔の彼女の名前を思い出せ、なんてムチャ言うなよ…」 普通は交際してた相手の名前くらい覚えているのだが、長く付き合った子もいれば、ほんとに一瞬で別れた子もいて、なかなか全員は思い出せない。 オーランドは頭を抱えたが、その間も鳴り響く電話の音に、キィ〜っとなってきた。 「ふん!怖くないぞ〜?相手は女の子だ!」 とうとう決心し、オーランドはガバっと布団から出ると、震える手を受話器へ向かって伸ばした。 そして一気に子機を取ると、ピっとボタンを押す。 「――も…もすもす…」 (!) 実は相当怖かったらしい。第一声は、思い切りナマってしまった。 が、これも昨日と同様、受話器の向こうは無言のままだ。 そこでオーランドは生唾をゴクリと飲み込んで、思い切り深呼吸をしてから子機を握り締めた。 「もも、もすぃもすぃ?!だ、誰だよ!アンジェラ?ジュリア?それともエリーかい?!よく分からないけど俺が悪かった!だからもう電話は――!」 『 ――It has a grudge against you..... 』 「ひぃぃっ!!Σ(|||▽||| ) 」 この数時間後…気絶し、ベッドの下に落ちていたオーランドを、イライジャが発見する事になった―― わー手直し以外では、ほんと久々に家族夢、本編を更新です! 今回はリハビリもかねて(オイ)つなっぽい内容ですが、 視点は特に出さず、書いてみました。 でも個人別に視点があった方がいいですかね?σ(o^_^o) ではでは、ずっとサボってた最近の人気投票から…
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