我が家の朝は、とにかくうるさい。
普通の家庭がどんな朝を迎えてるのかは見た事もないし知らないけど、
我が家はやっぱり他の家と比べたとしても爽やかな朝は迎えられてないと思う。
家族が6人もいれば、とても静かな朝なんて迎えられるわけもないんだけどさ。
だって6人全員が、マイペース過ぎるんだから――そういう僕もだけどね。
まず最初に。
一度はちゃんと起きて来るのに、何故か迎えが来るのを待つ間、二度寝をしてしまう父。
「お父さん?マイクが迎えに来たわよ?お父さん!起きて!」
「…ん?!あ、そ、そうか…!分かった…!じゃ行って来るよ!―!Have
a nice day!」
ドタドタドタ…! バタン!…ガチャ!ゴンッ……「ぃたっ!」…(?!)
…と、こんな感じで、に起され、慌てて出て行く父ハリソン。
次に朝から妙なハイテンションの二男。
「おっはよ〜!My Little Girl!今朝もお花のように可愛いよ〜!」
「ありがとう、オーリー。オーリーは今日も朝から元気ね?」
「そりゃ朝から我が家の姫の笑顔を見れるからね〜!」
そう言ってスキンシップの嵐…。 ――おいおい!そんなにキスするなよな…!とは僕の心の声――
それを眠そうな顔で、のそっと起きてきたのに、オーランドのスキンシップを見るやいなや目を剥いて阻止する長男と三男。
「おい、オーランド!朝からに、まとわりつくなよ!」
「そうだぞ?離れろ、早く!」
そう怒鳴りながら二人とも、オーランドを無理やりから引き剥がす。
「うわ、な、何だよ!二人して…!」
「が可愛そうだろ?朝から暑苦しい…!」
そう言って自分は、ちゃっかりの頬へ"おはよう"のキスをするレオ。
「おはよ、」
それに続く、ジョシュ。
「おはよう、!」
「おはよ、レオ、ジョシュ!」
それを素直に喜んで可愛く微笑む、我が家の末っ子で妹兼、僕らのお姫様の。
そして…それを見てイジケながら僕の隣にチョコンと座るオーランド…。
「全く朝からイジメなんて、何てダークな家族なんだ…」
隣でブツブツ文句を言っているオーランドに僕はちょっと同情しつつも吹き出してしまった。
(全く…我が兄ながら情けない…)
え?そういうお前は誰だって?僕は、この兄貴達の弟で四男のイライジャさ。
僕は、毎朝、出かける前にリビングでコミックを読むのが好きなんだけど…
いつも、このうるささで集中できやしない。
ま、今日はやっと一日オフを貰ったからのんびりできるしいいんだけどね。
僕はコミックに視線を戻し、また読み始めようとした、その時――
「リジ〜!何読んでるの?それ、何のコミック?」
オーランドが今度は僕の方へ興味を示し、いきなり抱きついてきた。
「うるさいなぁ…。あんたは朝からテンション高すぎ!静かに読書したいのにさぁ…」
「何だよぉ〜相変わらず冷たいな…」
僕は、そんな事を言いつつ寂しげなオーランドから離れて、ソファーから立ち上がり暖炉の前に移動した。
そこではレオがを後ろから抱きすくめる形で、二人仲良くテレビを見始めている。
その隣ではジョシュが寝転がってマネージャーに電話をしているようだ。
「あ、もしもし?俺。うん、あのさ、今度のプロモーションで日本に行くだろ?ああ、それでレオとも来る事になったから同じホテルに部屋、追加しておいて欲しいんだけど…うん、そう。ほんと?ああ、Thank
you!じゃ、後で」
ジョシュは電話を切ると、
「ホテル、二人の分も予約しておいてくれるってさ!」
「ほんと?やった!楽しみ〜!ね?レオ」
「ああ、俺とは仕事じゃないし色々遊びに行こうか?」
と言ってレオはの額にキスをしている。
僕は二人の隣へと座ると、「ええ〜ズルイよ!僕も一緒に行くからね!」 と言った。
「リジーは仕事があるだろ?大事な映画のプロモーションが!インタビューに、記者会見、テレビ番組出演、そして夜は関係者から豪華な接待…てな風に延々とね」
レオは笑いながら、ほんとに、そうなりそうだと不安になるほど僕の一日のスケジュールを言い切った。
「うげぇ…。仕事はやるけどさ・…。接待って別にいいよなぁ…。知らない人に気を使われて食事したりするのも疲れるし」
「俺もそれは嫌だな…。接待は断っていいんじゃないの?」
とジョシュも寝転がったまま溜息をついている。
そこへ懲りないオーランドが、「何?何?何の話?」 とやってきて、僕の隣に座った。
「いや、日本に行った時にさ、夜の接待はいらないよなって話?僕らで好きな所に行った方が楽しいだろ?」
「ああ、そうだよね。じゃ、僕とリジーだけ抜け出す?どうせリヴやドムも一緒なんだし二人に任せちゃおうか!」
とオーランドは呑気に笑っている。
「それは…悪いだろ?それに、が来るならさ…ほら、ドムが…」
僕は溜息交じりで呟いた。
「あ…!そ、そうだ…忘れてたよ…!」
僕とオーリーは顔を見合わせて、の方を見た。
は、レオやジョシュと楽しそうに朝のニュース番組で流している"今日のハリソン一家"のコーナーを見て笑っている。
「あ!これお父さんの車!うわ、門に入る前にカメラに向って手を振ってるわ!ほんと余裕なんだから」
「全く…パパラッチをからかって遊んでるよ、この人…」
と苦笑するジョシュと、「今度、俺もやろっかな〜」 と呑気に笑っているレオ。
僕とオーリーは、そんな3人に背を向けて、コソコソ話を始めた。
「どうする?リジー。また、この前みたく飲ませちゃう?…でも俺、もう一気はしたくないなぁ…」
「ああ…。それにもリヴに会いたがるだろ?やっぱ、どう考えても会っちゃうよ…同じホテルなんだしさ」
「じゃ、皆で必死に阻止する?ドムがに近付くの…」
「うん…それしかないな…。ま、4人で守れば何とか大丈夫なんじゃない?」
「でもさ、ドムの奴、この前は、かなり本気モードで、俺に"に告白してもいい?"って聞いてたしさ…ヤバげだよ?」
オーランドが顔をしかめて僕を見る。
「げっ…。告白?! ――いっそのこと、告白させて振られるの見た方がいいんじゃない?」
僕も苦笑いしながら言った。
「あ、それいいな…!どうせドムは振られるに決まってるんだから…」
「誰に?」
「…?!」
「…うわ…っ!」
いきなりが僕の後ろに来ていて僕の肩越しから覗き込んでくる。
「…いや…何でもないよ?」
僕は何とか笑顔を作って言った。
「何を二人で、コソコソと話してるの?何だか怪しいなぁ〜」
は、そう言うと僕の背中から首に腕をまわしておぶさってくる。
僕は目の前で明らかに顔に出ているオーリーに目で合図を送った。
「あ、ああ…別に大した話じゃないよ?今日は俺たち、オフだから、どこかに行こうかって話してたんだ」
オーランドにしては上手い言い訳だった。
も別に疑うことなく、「そうなんだ!私も出かけようかなぁ〜」 と言って、
「あ、そうだ、サラに電話してチケットの事、頼んでくるね?」
と、僕の頬に軽くキスをすると、パタパタと自分の部屋にかけて行った。
それを見届けると、僕とオーリーは息を吐き出した。
「あ〜ビックリした!」
「ドムの話、聞かれなかったよな?」 と話していると、レオとジョシュも、「何のこと?」「ドムがどうしたって?」 と聞いてくる。
「いや、今回のプロモーションは、リヴとドムも一緒なんだ。も日本に行くって分かったら、ドムがまた暴走するかもしれないだろ?」
「え?何、ドムも行くの?そりゃ、マズイな…」
ジョシュは顔を顰めて呟く。
「ああ、この前のの誕生日パーティーの時、まとわりついてたしな…。いきなり"お兄様”って呼ばれて驚いたよ」
レオも苦笑して肩をすくめた。
「僕なんて会う度に"弟よ!"なんて言われてるんだよ?これ以上、兄貴なんていらないっつーの…特にアホな兄貴はオーリーだけで十分だよ」
僕がちょっと笑いながら、そう言うと、「むっ…何だよ、それ?俺がアホだってぇ?」 とオーランドが膨れている。
「ああ、そりゃ言えてる」 とレオも同意。
「そうだな、間違いないよ、そこは」 とジョシュも同意して、うんうんと頷いている。
「全く朝から嫌な家族だよ…!」 とオーランドは膨れたままソファーへと寝転がった。
そこにエマが、顔を出した。
「皆、朝食は?」
「ああ、俺、もう少しで仕事だから軽く貰うよ」 とレオが笑顔で言うと、
「あ、俺も雑誌のインタビューがあるんだ…何か食べてくよ」 とジョシュ。
「そう?じゃすぐ出来るから。オーリーとリジーは?いいの?」
「僕は今日はオフなんだ。だから後でゆっくり貰うよ」
僕はそう言うとソファーへ戻り、寝転がっているオーランドの足を押しのけると隣へと座った。
「ぃたいなぁ…。 ――あ、僕は一個インタビューがあるから食べてくよ」
とオーランドはソファーから立ち上がると、レオ、ジョシュと共に、ダイニングへと歩いて行く。
「あれ?オーリー今日はオフじゃなかったの?」
「ああ、さっき思い出したんだけどさ。"ブラックホーク〜"の方で一つインタビュー入ったって今朝マネージャーから電話来たんだ」
「ふぅん。ま、頑張って!」
僕は軽く手を上げると、さっき読んでたコミックを、また手にとった。
「くっつくなよ、オーリー!」
「何だよ〜冷たいなぁ〜ジョシュ〜」
「うるさいよ…オーリー」
皆が騒ぎながらもリビングを出て行くと、急に静かになる。
ああ〜…これが本来の静かな朝なんだよなぁ…。
今日は皆、いないみたいだし、ゆっくり出来そうだ。
久々に家でノンビリでもするかな…それともと二人で買い物にでも行こうかな。
そんな事を考えつつコミックに目を通していると、「あれ?皆は?」とが戻って来た。
僕は笑顔になると、「ああ、皆は仕事あるからって朝食食べに行ったよ」 と言った。
は僕の隣に来て座ると、
「あれ?でもオーリーもオフなんじゃなかったの?」
「ああ、何だか一つインタビュー入ってたの忘れてたんだって。ほんと呑気だよね?」
僕はちょっと笑うと、「あ、それで?チケットどうだった?」 と聞いた。
「あ、そうだ!チケットまだあるって!一枚だとなかなか行く人も見付からなかったみたい。リジーも行くって行ったら喜んでたわ?」
「やった!ラッキィ!」
僕は思わずコミックを放って両手を上げると、
「でもチケット、どうして3枚あったの?誰かもう一人行くハズだった?」
「うん、でも、その子が仕事入っちゃって行けなくなったのよ。だから困ってて」
「そっか〜。僕もそんなに彼の曲は知らないけど、あのラテンのノリは楽しそうだよなぁ〜」
僕がそう言うとも瞳を輝かせて、
「そうよ!もう凄く楽しいわよ?会場全体が、もう踊りまくりだし。初めてサラに連れて行ってもらった時は興奮しどおしだったわ?」
「そうそう!あの時、ったら凄いノリノリで帰ってきて!会場で買った彼のプロモ流して叫んでたんだよな?"キャーRicky!ってさ。
僕も皆も驚いちゃって、特に、レオなんて、"こんな腰振ってる男のどこがいいんだ"とか言ってムっとしちゃっててさ〜が、"カッコイイじゃない!彼のサルサは最高なのよ?"って言い返してたんだよな?」
「そ、そうだった?」
は少し恥ずかしそうに笑うと、僕の肩に頭を乗せて寄りかかってきた。
僕はの額にそっとキスをすると、
「そうだ、今日さ、買い物行かない?僕、プロモーション行く時に使うバッグが欲しいんだ。前のは取っ手のとこが壊れちゃってさ」
「うん!いいわよ?久々に私も買い物したいわ」
とが嬉しそうに微笑んだ。
ホっとして、「じゃ、午後にでも出かけようか。それまで一眠りしてくるよ。また眠くなってきたし…」 との頭を撫でながら言った。
「そうね。夕べも…と言うより朝方に寝たし眠いかも。私も少し寝ようかなぁ…。どうしても一度、朝早くに目が覚めちゃうのよね」
とも肩をすくめるとソファーを立つ。
「父さんも起さないといけないし?」
「そうそう!何で二度寝しちゃうのかしら?」
僕らは笑いながら自分の部屋へと戻って行った。
「じゃ、昼過ぎに起きろよ?」
「うん、目覚ましかけておく」
「OK。じゃ後でね」
「うん」
そう言いあって僕とは部屋へと入っていく。
僕はすぐに自分のベッドに潜り込んだ。
そして思い出したようにリモコンを使って好きな音楽をかける。
ちょっと眠気を誘うような静かなバラードが部屋の中にかすかに流れ始めた。
(はぁ〜…父さんの二度寝しちゃう気持ち、少し分かるよなぁ…)
一度起きた後に感じる気だるさが、また何とも言えず眠くなる。
僕は寝返りをうって天井を見上げた。
天井には僕の大好きなビートルズのポスターが貼ってある。
と買い物なんて久し振りだよなぁ…。
ここんとこ、ずっと忙しくて家にもいれなかったし…。
帰って来た時でも仕事は入るから戻りは真夜中になってた。
こんなんじゃ、それこそデートなんてする暇もないよ。
と言う前に彼女もいないんだけどさ…。
僕より10歳近く年上の彼女と終った後も、何人かの人とデートはしたものの付き合うまでにはいかず、ずっとフリーのままだ。
でも、あの付き合いも…そんなに真剣な付き合いになったわけでもない。
彼女は…ニュージーランドから帰ってきた後に参加した映画で共演した女優だった。
最初は年齢も離れてるからそんなに話した事もなかったんだけど、撮影も半ばまで来ると一緒にランチをとる位までには仲良くなれた。
彼女は、やっぱり僕の家族に興味津々で、色々と聞いてきたっけ。
――皆、ほんとに仲がいいの?
――皆は普段、どんな兄弟なの?
――ハリソンはいい父親?
それで僕も普段の皆の仲の良さとか、レオの素行の悪さ(!)オーリーのアホさ加減(?!)ジョシュは意外にもドジだって話…
そしてが、どれだけ素敵な妹かって事まで、彼女に話すようになった。
彼女は楽しそうに僕の話を熱心に聞いてくれてた。
ある日、また彼女が家族のことについて聞いてきたから、"ほんとに僕の家族に興味あるんだね"って言ったら、
彼女はちょっと微笑むと、"私が興味あるのは、あなたよ?エルウッド" って言ってきて、
さすがの僕も驚いた。――エルウッドも僕の愛称で仕事場ではこう呼ばれている――
まさか10も上の女性に、そう言われるとは思わないだろ?
どうせ子ども扱いしかされないと思ってたしさ。
それでも彼女は、その後も僕を食事に誘って来たリして、何度も会ってうるちにいつの間にか、そういう関係になってた。
でも運の悪い事に、デートしてるとこを、僕らに張り付いてた奴にパパラッチされてしまって、
すぐに世間には、もちろん家族の皆にもバレてしまったんだ。
父さんとレオにはニヤニヤな顔で、「お前、何だかんだ言って、結構やるよな?年上キラーか?」 ってからかわれるし、
オーリーはオーリーで、「リジィ、お前ツバメちゃんにだけはなるなよ?」 とワケの分からない事を言って頭の悪さをアピールするし、ジョシュには、「お前って案外ストライクゾーン広いんだな…」 なんて苦笑されるし…。
あげく僕が一番バレたくなかったには、
「リジーったら素敵!愛に歳の差なんて関係ないわよね!世間が何を言おうと私は応援してるわ!」
な〜んて言って僕の手を握ってくるしで散々だったっけ…。
彼女も名の売れた女優だったし、その彼女が、"ハリソン一家"の、しかも末の弟と付き合ってるなんて知れば、
そりゃあマスコミも飛びつくネタだ。
おかげで連日連夜、家の周りには普段以上に、蚊(パパラッチ)が張り付いちゃって家族の皆にも迷惑かけてしまった。
その中でも彼女は僕に会いたがり、こっそりと約束をしては隠れてデートをしてたっけ。
彼女には色々な所に連れて行ってもらった。
彼女の行きつけのバー。その近くにあるオヤジしか行かないような大人だらけのビリヤードパブ。
彼女の家の近くの高級レストラン…
ハタチになったばかりの僕には刺激的な事も多かった。
それに、あんな年上の女性と付き合った事もなかったから凄く勉強にもなった。
女性のエスコートの仕方とか、食事の時の注文の仕方、ダンスの仕方……そしてベッドの中までのサービス付き。
友だちに、「いいよなぁ、年上の彼女ってさ!色々と勉強になるだろ?」 と言われたが本当にその通りだった。
ただ…やっぱり年齢差だけは埋められない。
趣味だって全然違ってくるし、生活パターンだって違う。
会話も、何だかズレてくるし、僕は、そのうち疲れてしまったんだ。
彼女と一緒にいても安らげないって思った。
と一緒にいる時の居心地の良さが彼女といる時は全く感じられなくて…
"俺、ほんとに彼女が好きなのかな?"
なんて思うようになった。
それはずっと一緒にいたと、付き合い始めて間もない彼女…そんな違いがあるからだと思ってたんだけど…。
僕にとって彼女は恋人と言うよりは、色々と教えてくれる、そう学校の先生みたいな存在になってたんだ。
会話をしてても、どこかで緊張してたのを覚えてる。
そのうち会うのが、億劫になって…電話もしなくなった。
彼女は何度か「ちゃんと会って話をしましょう」って言ったけど僕の中で答えは出ていた。
だから話す事もなく、ただ「君と一緒にいると僕は無理をしちゃうから疲れるんだ。もう別れたい…」 とだけ言った。
ほんとは好きだったのか、どうかも分からないんだけど…嫌いになったわけでもないので、ここが困るんだ。
でも僕は変に優しい言葉をかけて逃げるって事はしたくなかった。
よく嫌われたくないからか、良い人だと思われたいからか、「君は僕にはもったいない」とか、「嫌いになったワケじゃない」って変に優しい言葉をかける男がいるが、こういうのは大嫌いだった。
だから、酷いかもしれないけど、ハッキリ言った方がいいって思った。
別れる時の優しさなんて女性に対して無意味なんだ。優しさってものを勘違いしてる男が多いけどね。
どんなに酷くてもハッキリ言った方が相手も冷静になった時に理解出来るんだと思った。
これは女性にも言えること。だって僕なら相手から振られる時は、ハッキリ言って欲しいから。
変に気を持たせるような事はして欲しくないんだ。
ただ…僕の別れの言葉の後、彼女が電話口で泣いたのも驚いた。
僕は、彼女は気まぐれで僕と付き合ってるのかな?と思ったりもしてたからだ。
でも彼女は、僕に、「ごめんなさい…。私も悪かったわ。無理な事を色々とさせて…」 と呟いた。
僕はちょっと胸が痛くなったが、それ以上、彼女に何かを言う気にはなれなかった。
変に優しい言葉をかけちゃダメだって思ったから、「色々とありがとう。さよなら」 と言って電話を切った。
僕は、この時、振る方も辛いんだって事を初めて知った。
結果は別れることになったとしても一緒に過ごした間に情だって湧く。
だから僕も暫くは胸が痛んだけどね…。
その後からが大変だった。
どこで聞きつけたのか、マスコミが僕らの破局報道を一斉に流したからだ。
家族の皆からは色々と詮索されるし、友だちからも、
「何で別れたの?やっぱり年下は頼りないとか言われた?」
なんて言われる始末。
僕は本当の事を話すのも嫌で、別れた理由は趣味が合わなかったからとだけ答えておいた。
そして…大変だったのはマスコミだけじゃなかった。
僕が彼女と別れたという話が広まっていた中で他の女優や、モデル…そう皆が年上ばかりなんだけど、
彼女達から猛烈なアタックをしかけられて、僕は閉口したんだ。
彼女達は僕が年上の女性が好みなんだと勘違いしてたようだ。
別に嫌いでもないけど絶対に年上じゃなくちゃって思ってるわけでもない。
それなのに…何故か誘ってくる女性陣は、皆が僕よりも年上ばかり。1つ2つ離れた女性から10以上まで…ほんとに驚いた。
その中でも何人かとデートをした事もあった。
そしてその中の、ほんの数人とは関係も持った。
でも僕はやっぱり彼女達に安らぎを感じなくて、最後は同じ結果に終ってしまったんだ。
きっと彼女達が本当の僕を見てくれてないって感じたからかもしれないし…
僕が家族…特に妹のを大事にしすぎる事も気に入らなかった女性があまりに多かったからってのもある。
焼きもちも少しなら可愛いけど、度を超すと酷いもんだ。
大事なをののしる女性もいた。もちろん、その女性とはその場で別れたよ。
僕がや友だちを優先するのが嫌だって言われても困るってもんだ。
そんな事のくり返しで僕は疲れ果ててしまった。
僕にはがいればいいって思うようになってしまったんだよね。
だって一緒にいて安らぐし居心地がいいし、何より僕を理解してくれている。
家族なんだから当たり前なんだろうけど、それを他の人に求めるのは酷ってもんなんだろうけど、
あんなにピッタリと波長の合う女性は、なかなかいるものじゃない。
だから僕はそこから抜け出せなくなってしまっただけなんだ。
こればかりは、どうしようもないんだ。だって僕の心がそう言ってるんだし。この気持ちを動かすだけの女性が出てこない限りは…。
まぁ、長々と語ってしまったけど…そんな、こんなで僕についたあだ名が、"年上キラー"…
全く…勘弁してくれって感じだろ?
僕は別に年上が大好きってわけじゃないんだから…
それをに言われると一番へこむ。
誰だ?最初に、そんな事を言い出した奴は…
僕はそんな事を考えつつ、気づけば夢の中でスース―と気持ち良く眠ってしまっていた…。
「あ、リジー!これなんて、どう?可愛くない?」
「どれどれ?」
僕はが可愛いと言ったバッグを見にのとこまで引き返した。
今、僕とは近所(ビバヒル)の"キットソン"へ買い物に来ていた。
この辺ならファンに囲まれる事もなく静かに買い物が出来るからだ。
この"キットソン"は何でもありのキュートな店で、洋服、バッグ、コスメ、フレグランス、雑貨など何でも揃っている可愛い感じのお店だ。
は、この店がお気に入りで、よく買い物に来ているようだ。
僕はが手にしているバッグを見て、「あ、これなら大きさも丁度いいかな?」 と言って自分も手に取ってみる。
「でしょ?前のバッグと似た感じだし大きさも同じくらいじゃない?」
「そうだね!、よく分かってるじゃん、僕の好み!」
「当たり前でしょ?ずっと見て来てるんだから」
とはクスクス笑っているが、僕は本当に嬉しかった。
これなんだよなぁ…本当に居心地がいいって言うか、分かってくれてるって思うと凄く安心するんだ。
こんな些細な事でさえ、僕は嬉しくなってしまう。
「じゃ、バッグはこれにしようっと。は?何か自分でも買いたいものないの?」
「私は日本行き用にボディケアグッズが欲しいの。ここのは天然素材を使用してるから肌にもいいのよ。あとは…サングラス!」
「そっか、サングラスなら専門店の"シー・バイ・カリーナ"で買おうよ。僕も欲しいのあるんだ」
「そうね?じゃ、ここで早く買い物済ませて行こうか」
「うん、じゃもボディケア選んでおいで?」
「うん。もういくつか目をつけてたのがあるんだ」
はそう言うと急いで自分の選んだ商品をカゴへと入れていく。
僕もバッグを買いにレジへと行った。
お金を払ってると、が、カゴの中に大量のボディケア商品やら、コスメ類まで入れてレジへとやってきた。
「うわ、凄い数だね?」
と僕が笑うと、「何だか、あれもこれも欲しくなっちゃって」 とも舌をペロっと出して笑っている。
「じゃ、これも一緒に」 と僕は店員へと声かけてカードを出した。
僕らは現金は、殆ど持ち歩かないで、いつもカードで支払いを済ませる。
アメリカはカード社会。
現金よりもカードを持ってる人間の方が信用される。――カードを作るには検査が厳しいのだ――
「え?いいよ、リジー。自分で払うわ?」
「いいから、いいから!今日は買い物に付き合ってもらったしさ!これくらい大切な妹に買ってあげたいだろ?」
と僕は笑いながらサインをした。
は苦笑すると、
「リジーったら…。レオと同じこと言うのね」
「え?そうなの?」
僕は商品を受け取ると、の肩を抱いて店の外へと出た。
「だってレオも何にもイベントないのに、よくプレゼントくれるから」
「ああ、そうだっけ?レオって絶対に年取ったら若い子に貢ぐタイプだよなぁ。あ、でもにだけだから違うか」
「え?貢ぐかな?そんなこと言ったらレオ怒るわよ〜?それに私だけじゃなくて自分のガールフレンドにだって買ってるんじゃない?」
「そんな事はないと思うけど…。それにレオのガールフレンドって言ったって…」
と僕は、そこで言葉を切った。
(いけない、いけない。こんな事をに言ったなんて知れたら僕もいじめにあうからな…)
「何?リジー。レオのガールフレンドがどうかした?」
「ううん!何でもないよ?レオのガールフレンドは幸せだって思ってさ!」
僕は心にもない事を言って自分で苦笑してしまった。
少し歩くと、サングラスの専門店"シー・バイ・カリーナ"に到着。
落ち着いた店内の壁にモダンな棚が並んでいて沢山のサングラスが置いてある。
グッチ、シャネル、ミュウ・ミュウ…などなど80年代のヴィンテージ・サングラスを扱っている店だ。
オーナーのカリーナ氏自身もデザイナーであり、彼がデザインしたサングラスはセレブの間でもかなりの人気を持っていた。
「わぁ、ねえ!これ凄く素敵!」
が一つのサングラスを手に取って嬉しそうに僕の方を見た。
「どんなの?」
と、僕もそのサングラスを見てみた。
が手にしてたサングラスは、エミリオ・プッチのヴィンテージ・サングラスで、レンズがちょっと大きくて四角い形のデザインだった。
うっすらと鼈甲の模様が入っていて、なかなか可愛い。
「それに似合いそうだね?かけてみてよ」
僕は笑顔で、にサングラスをかけてあげた。
「どう?」
「ワォ!すっごい似合うよ、!それなら顔半分隠れるし、だってバレないんじゃない?普段も使い勝手良さそうだよ?」
「そうかな?…じゃ、これにしようかな?」
は嬉しそうに言うと、「リジーは?どんなのがいいの?」 と店内にあるサングラスを見ている。
「僕はねレンズの色が濃いめのやつがいいんだ。僕の目ですぐ僕だってバレるからさ。目が透けないくらいのやつ」
「そっかぁ〜、リジーは瞳にインパクトあるからね!―じゃ、これは?」
「もうちょっと形が小さいのがいいな」
「じゃこっち?」
僕とは暫くの間、サングラスを探すのに夢中になっていた…。
「はぁ〜疲れた!こんなに近いのに何でかなぁ?」
「普段、車で移動するのに慣れてるからよ?」
はクスクス笑うと、僕に紅茶を入れて目の前にカップを置いてくれた。
「ありがとう、」
(ほんと…は気が利くよなぁ〜)
その紅茶を一口飲むと、今買って来たばかりのバッグやらサングラス、洋服をソファーの上に出していった。
「これくらいあればいいかな?」
「そうね?私も少しづつ日本行きの用意を始めなくちゃ! ―あ、でもこれまで買ってもらっちゃってありがとう、リジー」
は先ほど気にいったと言ってた、エミリオ・プッチのサングラスを手にとって僕に微笑んだ。
さっきの店でサングラスも、つい買ってあげてしまったのだった――案外、僕もレオと同じで貢ぐタイプだったりして――
「いいってば!そんなお礼なんて」
僕はそう言うとソファーへゴロリと横になった。
「すっかり薄暗くなちゃって…冬は日が沈むのが早いよなぁ…」
「ほんとね?まだ7時なのに」
「皆は今日も遅いのかな?」
などといってる矢先、玄関の方から、「た〜だいま〜!」 と能天気な声が聞こえてきた。
「オーリーだ」
と僕が呟くのと同時に、オーランドがリビングへと入って来た。
「あ、〜ただいま!」
と言うと、すぐの頬へとキスをしている。
「おかえり。オーリー!インタビューはどうだった?」
はオーランドの分まで紅茶を入れてあげる。
「あ、ありがと、! ――インタビューは楽しかったよ?あっという間に終っちゃった」
「そう。お疲れさま!」
は笑顔でそう言うと僕の隣に座って、自分の分の荷物を出している。
「あれれ?何?二人で買い物行ったの?」
目ざとく、僕のバッグやらサングラスを見て、オーリーが聞いてきた。
「うん、ちょっと近所までね。今度のプロモーションで持っていくものとか?」
「ええ〜俺も行きたかったなぁ〜。俺も買い物したい…!」
オーリーはそう言って僕に抱きついてきた。
「何だよ、くっつくなってば!」
それでもオーリーはめげずに僕の肩に寄りかかってくると、「今から一緒に行ってくれないかなぁ〜?リジー?」と、捨て犬のような瞳で僕を見てくる。
「ええ?やだよ!ついさっき帰って来たばかりなのにさぁ〜。オーリーは一人で行ってきなよ」
「そんな冷たいこと言うなよ…。俺、一人で買い物するのとかって苦手なんだよ〜…」
と、情けない顔で、まだ僕に甘えてくる。
(はぁ〜…この人は…買い物くらい一人で行こうよ…!)
すると、が顔をあげて、「私、付き合うよ?オーリー」 と笑顔で言った。
「え?!ほんと?!」
オーリーも途端に僕から離れての隣へと座る。 ――ほんとに素早い――
「うん、別に近いしね」
「は優しいなぁ〜!さすがに僕の天使!My
Little Girl だ!」
オーランドは、そう叫ぶとに抱きついて頬にキスをしている。
僕は慌ててオーリーを引っ張ると、
「分かったよ!僕も付き合うからさ!行くなら早く行こう?」
「え?リジーも来るの?別にと二人きりで行くからいいよ?」
オーリーは目を細めて僕を見ると、そう言った。
「いいから!だってほんとは帰ってきたばかりで疲れてるんだからさ!僕が車出すから早く行くよ!」
僕はすぐソファーを立つとオーリーの腕を引っ張った。
「何だよぉ〜さっきは嫌だって言ったクセにさ…」
とオーリー何やらブツブツと文句を言っている。
「リジー、ほんとに行くの?」
「うん、僕も付き合うよ。近いけど車で行こう?もう歩くの嫌だしさ。パパラッチも増えてたし面倒だろ?」
さっき買い物へ出る時も帰ってきた時も歩きだったので裏口から出入りした。
それでも何人かは裏口の方にも張っているので、捕まりそうになったのを何とか走って家の敷地内へと逃げたのだった。
「まあ、リジーが車出してくれるならいいかな」
オーリーは偉そうに、そう言うと、やっとソファーから立ち上がった。
僕は溜息をつきながら、駐車場へと歩いていって自分の愛車のエンジンをかける。
は、「私、後ろでいいよ」 と後部座席に座ると何故かオーランドまでが、「じゃ、僕も後ろに座ろうっと!」 と言っての隣へと座る。
僕はオデコの辺りがピクっとしたが、ここはグっと我慢して車を出した。
素早く門を開くと一気に駆け抜ける。
一瞬、フラッシュがたかれパパラッチが何人かで車を追いかけてくるも僕はグっとアクセルを踏んでスピードをあげると、それもすぐに見えなくなった。
「どれにしようかなぁ〜」
店につくとオーリーは商品を色々と手に取って選んでいる。
僕は、もう買うものもないので、ただプラプラと店内を見てまわっていた。
店内には数人の客がいて、何やらオーリーの方をチラチラと見ている。
(ああ…オーリーってば、すぐ出て来ちゃったから帽子もサングラスもしてない…!あれじゃ一発でオーランドだってバレるよ…)
僕とはしっかりと帽子、サングラスをしていた。 ――それでも怪しいから目立ってしまうんだけど――
は早速、さっき僕が買ってあげた、エミリオ・プッチのサングラスをしてきている。
「あのぉ〜オーランドですよね?」
「え?あ、はい…」
「キャー!やっぱり!凄くカッコイイ人がいるなって見てたら、オーランドなんで驚きましたぁ〜!」
僕の心配した通り、すぐに声をかけられているオーランド。
"カッコイイ…"と言われて少しニヤケている(!)
(はぁ…やっぱな…こうなるよな…。一人バレると、絶対に僕とだってバレるんだよな、芋づる式にさ…)
僕は入り口横にあるディスプレイの陰にそっと隠れてオーリーの方を伺っていた。
「あの握手して下さい!!」
「はぁ、いいですよ…?」
と、オーリーは、その女の客と握手をしているが、僕とを探すようにキョロキョロとしている。
そこにが歩いて来た。
ああ…!今行ったら…そう思った瞬間。
「あ!…ええ??うそーー?可愛いーーーー!」 と、その女の客が騒ぎ出した。
「あ…どうも…」
も驚いたのか、オーリーの後ろへちょっと隠れるように下がってしまった。
「あの、この前のドラマ、凄く良かったです〜」
「ありがとう…」
「今度の映画も見に行きますね!!」
「あ、ありがとう」
も何とか笑顔で答えているものの、手はオーリーの服をギュっと掴んでいる。
オーリーも、その女の客が、ベラベラと話し掛けてくるので買い物が出来なくて困っている様子。
(はあ…やっぱ、ここは僕が行くしかないか…)
僕は軽く溜息をつくと二人の方へと歩いて行った。
「オーリー。早く選んじゃえよ」
「あ、リジー!」
オーリーは天の助けと言わんばかりに笑顔になった。
「ええ?!イ、イライジャまで?!うわぁ〜感激です!!」
僕は目の前で大きな声を出されて、ちょっと引いてしまった。
オーリーは、こっそり後ずさると、買い物をすべく店の奥へ歩いて行ったようだ。
は今度は僕の後ろへと来て腕を組んできた。
「キャ〜一緒に買い物なんて、本当に仲がいいんですね!雑誌で読んだとおりだわ〜」
まだ興奮して騒いでいる、その女性に、「あの僕ら買い物の途中なんで、これで…」 と言うと、
「え?あ、そうですよね!ごめんなさい! ――あ、最後に握手して下さい!」
その女性は僕との二人と握手をすると満足したのか、「ありがとうございました」 と言って店から出て行った。
僕は思い切り溜息をついて、「、大丈夫?」 と声をかけた。
「うん、あの勢いに驚いちゃったわ?」 とは苦笑している。
「きっとすぐ友達とかに電話してそうだよな?"ハリソン一家に会っちゃったわ〜"ってさ」
僕は笑いながら、と二人でオーリーのいる方へと歩いて行った。
オーリーは、まだ悩んでいるのか、洋服を二つ手に取って、「う〜ん…」 と唸っている。
「オーリー、まだ?早く帰ろうよ…。また他の客に見付かりそうだよ…」
「あ、ごめん!もう面倒だし欲しいの全部買ってくるね」
オーランドは、そう言うと手に持ってた全てのものをレジへと持っていった。
「、車で待ってよう」
「そうね。もう終わった様だし」
「あ〜もう帰ったら絶対にソファーから動かないぞ…」
僕は溜息をつきながら、そう呟いた。
「は〜もう疲れた!!」
僕はソファーへと倒れこむように寝転がるとハート型のクッションをギュっと抱きしめた。
「ありがとね〜。リジー!」
「うん…たまにはいいよ…」
「じゃ、これしまってくるよ」
と言って、オーリーは自分の部屋に買ってきた荷物を持っていった。
は喉が渇いたのか、バドワイザーを、プシュっと開けると、ちょっと飲んで僕にも、それを、「リジーも飲む?」 と差し出した。
「うん、ちょっとちょうだい。僕も喉が渇いちゃった…」
と苦笑しつつ、起き上がるとからバドワイザーを受け取り、ゴクゴクと勢い良く飲んで一息ついた。
「それにしても何だか、こういう買い物すると旅行気分よね?」
が笑いながら隣へと座る。
「そうだねぇ。それには初めての日本だからワクワクするだろ?」
「うん!ほんと早く行ってみたいな」
「たぶん東京近辺しか行けないけどね。ほんとは僕、京都ってとこに行きたいんだけどさ。前は時間なくて行けなかったんだよね」
「京都って?」
「う〜ん…何だか日本特有の街並みで凄く感動するんだって。前に友だちが言ってたんだ」
「そうなんだぁ。そういう、その国特有の場所とかって行きたいなぁ」
はバドワイザーを飲みながら息を吐き出した。その時――
「ただいまぁ」
と声が聞こえて、ジョシュがリビングへと入って来た。
「あ、ジョシュ、お帰り!」
「ただいま、!」
ジョシュは軽くを抱きしめて頬にキスをした。
「お帰り、ジョシュ」
「ただいま…何だ?リジー疲れた顔してさ。今日はオフだったんだろ?」
ジョシュは向かいのソファーへ座るとを膝の上に抱えながら言った。
「ちょっとねぇ…久々に買い物行ってファンに捕まっちゃってさぁ…」
「え?買い物?」
「そうなの。今度のプロモーションに行くのに使うバッグを見に行ってきたの」
「リジーと二人で?」
「うん、でも帰って来たらオーリーも買い物行きたいって言うから、またさっき行って来たんだ」
「そうなの?そっか、そうだなぁ…。そろそろ用意しなくちゃだな…俺も買い物行って来ようかな…」
「僕は付き合わないよ?」
僕はすぐさま、そう言うと、ジョシュも笑いながら、
「何?オーリーに付き合ってって泣きつかれた?」
「まぁね…」
「全く…買い物くらい一人で行けよなぁ…まぁ、ファンとかに捕まったりすると一人で対処するのも嫌なんだろうけどさ」
ジョシュは苦笑するとの頬にキスをして膝から降ろし、「ちょっとシャワー浴びてくる」 と言った。
「あ、私も入ろうかな?」
「え?!」
そのの一言に何故だかジョシュは赤い顔で振り向いている。
「歩き回って汗かいちゃったの。ちょっと入ってくるね」
と、笑顔でそう言うと、ピョンとソファーから立ち上がってはリビングから出て行った。
ジョシュは何だか息を吐き出して、「ビックリした…」 と呟いている。
僕は、そんなジョシュを見て吹き出しそうになった。
きっとジョシュは今のの言葉で一緒に入ろうかなって言ったのかと勘違いしたんだ。
そんな事はあるわけないのに…
まあ、今のは僕もちょっとだけ、ギョっとしたけどね…
ほんと僕らは妹一人に右往左往して笑ってしまう…。
でも…それがやっぱり心地いいんだよなぁ…
僕はちょっと笑うと、またソファーに寝転がって、朝、読んでいたコミックを手にとり、続きを読み始めた…。