Vol.1. Rainy...





Rainy days....Never say....goodbye to desire....


When we are together...


Rainy days growing in your eyes


Tell me where's my way......







― 雨の日   さよならなんて言わないで


   ふたりでいる時の欲望に 逆らわないで


雨の日 君の瞳が見つめる先には


   一体何があるんだろう・…













「あ…。雨…」


彼女はそう言うと、窓の外を眺めている。
僕はそんな彼女の後姿を見ているのが好きだ。




…僕の…大切な…妹――




あれは、いつだったっけ…確かが、僕の家に初めて来た時も雨が降ってた。
父さんが日本の女性と再婚をするといって招介のために連れてきた彼女の後ろに、恥ずかしそうに隠れていたよね。
僕が挨拶すると…嬉しそうに顔を覗かせて微笑んでくれた。


僕はそれだけで凄く嬉しくて…。


あの日以来…は僕の大事な宝物。それは今も同じ。
僕が劇団で舞台をやるのを初めて見た時、は僕の演技をするところが大好きだと言うから、もともと演じるのが好きだった僕は俳優の道を選んだ。
いつでもが僕に笑っていてくれるように。

そして…お互いに大人になっても、それは変わらないはずだった――












「ねえ?ジョシュ。今日は泊って行ってもいい?」


は少し僕の顔色をうかがうように訊いて来る。


「どうした?何か家で嫌な事でもあった?」 


僕は、いつものように優しく問い掛ける。


「ううん…。そんな事ないよ…。ジョーが、うるさいけど」 


そういうとはニコっと笑った。




ジョーとは僕の父さんとの母さんとの間に出来た…いわば僕達の弟だ。
はジョーが生まれてから、それまで以上に、僕にベッタリになった。
ジョーだけが唯一、父と母の血をわけあった子供だからだろうか。
僕とは血の繋がりはない。は自分と同じ立場の僕といる事で安らいでるんじゃないか…。
時々、ふっとそんな事を考えてしまう。




「ダメ…?」


が、また呟く。


(そんな潤んだ目で頼まれるとダメとは言えないよ…)

――僕は苦笑いしながら、「いいよ」と一言、言った。
すると途端に嬉しそうな顔で抱きついてくる。
そんなが可愛くて仕方がない。友達にも、からかわれるが、ある意味心配してるんだろう。
血の繋がりはないとは言え…は僕の妹だから。


僕はの頭を撫でながら、外を見た。少しづつ雨が激しくなる。
どうせ、こんな雨の中、を帰らせる訳にはいかない。


「ジョシュ…。今度はいつロスへ行っちゃうの…?」


が僕の胸に顔を寄せながら聞いてきた。


「ん?ああ…。この前の映画の話か…。そうだな…。あと二週間もないかな…。どうして?寂しい?」
「ん…。ジョシュがミネアポリスにいないと…息苦しいよ…。空気がなくなったみたいに…変かな?」
「いや…俺も同じかな…。がいないと心配で苦しくなる時があるよ…。
は学校も、もう卒業だろ?そしたら撮影現場に連れて行くからさ。寂しくないよ」
「ほんとに?連れて行ってくれるの?」


は嬉しそうに顔をあげる。
そんな顔を見ると愛しさでいっぱいになるんだ。
僕は、そっと返事の代わりに、の額にキスを落とす。
そうするとは安心したように目をつぶる。
僕は優しく彼女を抱きしめた。


いつからだろう?僕の演技を観るのが好きだと言っていたが、僕が撮影のため、
ミネアポリスから離れる時になると「行かないで…」とせがむようになったのは…。


僕はを連れて行きたかったが、彼女はまだ高校生になったばかりだった。
父さんも反対した。
僕は一時、仕事のためにと、ロスに住んでた事もあったが、が心配なのと、やはり自分の故郷が落ち着くからとミネアポリスに戻ってきた。
その時、は高校二年生になっていた。
それからは、ここ一年、いつも以上に僕の一人暮らしをしている、この家へ学校帰りを利用しては来る様になった。
その方が僕も安心なんだけどね。学校は共学だから、変な男に言い寄られてないか、色々と不安にもなる。
今のとこ、まっすぐ来るんだからボーイフレンドなんて、いないんだろう。
も今年18歳。そろそろ女の子じゃなく、女性として扱わなければならない年齢だ。


(それでも甘えてこられると、こうして甘やかしてしまうんだけど…)


そっとの顔を覗き込んだ。


…?寝ちゃった?」 


僕の腕の中に、すっぽりと収まっては目をつぶったままだ。


「んん…起きてるよ…。ジョシュが暖かいから…心地いいの…」


はそう言うと顔をあげて微笑む。


僕は笑って、「まだ夕方の6時だよ?寝るには早い。、お腹すかない?」
「あ…すいたかも…」


はそういうとお腹を抑える仕草をした。


「じゃ、何か作る?それとも何か食べに…って言っても、外は雨が凄いしなぁ…」
「ね、デリバリーがいい!家であまり食べさせてくれないから」
「ああ…そっか。父さん、ああいうの嫌いだしなあ。じゃ、好きなもの頼んでいいよ。メニューはキッチンの引き出しの二段目に入ってるから」


「うん。ジョシュは?何がいい?何でもいいの?」と、は僕の腕から離れ、キッチンへと歩いて行った。


「ああ、の好きなものでいいよ。オレ、特に食べたいのないし」
「じゃあねー、やっぱり普段食べられないからピザがいいな」


僕は笑って、「ああ、いいよ」と答え、愛煙しているマルボロへ火をつけた。




「あの〜もしもし…」


キッチンの方で電話をかけるの声が聞こえてきた。
僕は煙草の煙を吐き出しながら、また窓の外を見る。


(家に…連絡だけは入れておかないとな…。父さんも母さんも心配する)


父と母は、が僕に懐いた事でホっとしたようだけど。
でも――他の事では心配していた。
僕とは血が繋がっていないから…。
僕は馬鹿なことを言うなって怒ったけど、ほんとのとこ、ドキっとしたのを覚えている。


知らないうちに僕はを妹としてではなく、一人の女の子として見ていたんだろうか。
血が繋がらないからこそ、大事にしていたつもりが。


確かに友達にも「普通じゃないよな」とは言われる。でも、そもそも"普通"ってのが分からない。
が来るまでは僕は一人っ子として育ってきたのだから。
可愛い妹を可愛がって何がいけないんだ?と最初は思っていたけど、最近は自分でも普通じゃないんだなと感じている。
は…どう思ってるのか…聞いた事もないし、そんな事、聞けやしない。


は無邪気な顔をして、僕の心をたまに揺さぶるんだけどね…)




外は、一段と雨が激しくなってきていた―――














Please say that my name sun shines...Through rain ...


Very solitary whole life etc.


You next ...Please come to lighten the pain.



I do not want to lose this feeling....










―― 私の名前をつぶやいてみて


雨の中に太陽の光が射し込んで来たみたい


   これまでずっと 寂しくてたまらなかったのに


あなたが現れて苦しみを忘れさせてくれる


   この気持ち  いつまでも身をまかせていたいわ…










私は電話を切ると、リビングの方へと目を向けた。
ジョシュが煙草を吸いながら、ジーっと窓の外を見ている。
私は、ジョシュの、その横顔が好きだった。
煙草を吸うしぐさも好きだ。あの大きな手で撫でられるのも、優しい瞳で微笑まれるのも…。
私の友達は、「ブラコンね」と笑うけど、そんなの気にしない。
友達はジョシュを紹介して欲しいから、私に兄離れをすすめるだけだという事も分かっていた。


でも…絶対に招介なんてしない。


ジョシュ…私の…大切な…お兄さん――




あれは母さんに初めてジョシュの家に連れて行かれた雨の日…ジョシュは恥ずかしくて顔を出せない私に優しく「ようこそ」って言ってくれた。
その一言が凄く嬉しくて思わず微笑みを返した。
あの日から私にとって、ジョシュは大事な大事な宝物になった。


ジョシュが初めて自分の舞台に私を招待してくれた時、あまりにジョシュが輝いていて、
それからはジョシュの演技をしている姿を見るのが大好きになった。
そしてジョシュは俳優となった。


私は嬉しかった反面、凄く寂しくなった。

――もう私だけのジョシュじゃなくなる…
そんな気がした。大勢の人がジョシュの映画を見て、ジョシュを好きになる――それが怖かった。
そう思うと、ジョシュと離れているのが凄く苦しくなって…こうしてジョシュがミネアポリスに戻っている時は、つい学校の帰りや休みの日に入り浸ってしまう…。
ジョシュにも自分の生活があるのだから…と思うのに…どうしても傍にいたくて、ジョシュの腕の中に包まれていたくてこうして甘えてしまう。


「そんなんじゃ、お兄さん、彼女も作れないわよ?」



――そう友達に言われて、胸が酷く痛んだ。


お互いに、もう大人の年齢だ。ジョシュは20歳。私は18歳。
それぞれ恋をしていても、おかしくはない。
なのに――


私は他の男の人が怖かった。ジョシュ以外の人に触れられるのが、凄く怖い。
何度か学校の男の子や、隣の学校の男の子に交際を申し込まれた事もあったが…
あの私を見る目が…凄く嫌で嫌悪感を感じた。
告白された事、ジョシュには言えないけど…心配かけたくないから。
ジョシュがロスに引っ越して行った時、私は凄く苦しくて毎日、眠れなかった。
母さんが知らせたらしく、そんな私を心配して、ジョシュが時々帰って来てくれるようになって…
気づいたらジョシュは、ミネアポリスへと戻って来ていた。
それからも私はジョシュの傍が一番安心できる…。


父さんや母さんは何か心配してたようだけど…。いいじゃない…別に心配するような事じゃない。


もともとは他人だったのだから――


普通じゃなくたって構わない。この世の人全てが普通だなんて言いきれない。
普通で在る必要もない…。




ふいにジョシュが私の方を見た。
優しく微笑んで、自分の膝をポンポンと叩いている。
それはジョシュの合図…。 ―ここへおいで― そう言ってる。
私も微笑んで、すぐにジョシュの膝の上に座る。




「ちゃんと電話できた?」


ジョシュが私の頬に優しくキスをして聞いてきた。


「もう…子供じゃないんだから、デリバリーくらい頼めるわよ…」


と、私は少し口を尖らせて文句を言うと、ジョシュは、いつも頭を引き寄せて、私の頭にもキスをしてくれる。
私は、ジョシュの首に腕をまわして、いつもの様に抱きつき、顔をジョシュの胸に埋めた。


…?家に電話しなくちゃ…。連絡しないと二人とも心配するから―」
「ん…。そうだね…。私、かける…」
「いいよ、俺がちゃんと上手く話すから。は明日から冬休みなんだから大丈夫だろ?」
「うん。一応、来る前にも電話は入れておいたけど…」
「なら、尚更、もう分かってると思うし…」


私は腕を放して、ジョシュの膝から、そっと降りた。
ジョシュが電話の方へと歩いて行く。
私は、その後姿を見て、そっと微笑んだ。
そして窓の方へと顔を近づけ、激しい雨音を聞いた。
私は雨の日が嫌いじゃない。この音を聞いていると、何とも心地がいい。
まるでジョシュと一緒にいるような気になる。―優しい音…
窓を開けると、雨の匂いが、かすかにして小さな雨粒が私の顔に飛んでくる。
私は目をつぶって、その雨粒を顔一杯に受ける。


(気持ちがいい…)


寒い風も逆に気持ち良かった。














「―ああ…分かってるよ。うん、心配しないで。あとさ…今日だけじゃなく暫く、を、うちに泊めてもいい?
え?そうじゃないけど…俺、もうすぐ映画の撮影でロスに行くからさ…。ああ、その前に一度一緒に家に行くよ。
うん、じゃあ。母さんに宜しく伝えて。…バイ…」




そう言うとジョシュは電話を切った。


(さて…これで特に心配する事もなくなったかな…)


僕は少し安心して、紅茶を入れようとお湯を沸かした。
そっとリビングを見てみる。


(ああ……また寒いのに窓なんて開けて…)


僕は苦笑しながらも、に声をかけた。




?寒くない?」
「うん…気持ちいいくらい!ね?父さん、何だって?」
「ああ、OK貰ったよ。」
「ほんとに?!」


が嬉しそうに、振り向いた。


「ああ。ついでに冬休みだからってんで、暫く泊めていいかって言ったら、渋々OKくれたよ。ジョーの相手だけで疲れるらしいからさ」


僕は笑いながら、カップへと今、沸いたばかりのお湯を入れた。


「うわーーほんとに?!やった!ありがとう、ジョシュ!」


はほんとに嬉しそうに微笑んだ。


…紅茶入れたけど…飲む?」
「うん、お砂糖…」
「二つだろ?」


僕は笑いながら、のカップにもお湯を入れ砂糖を二つ落とした。


「さすが、ジョシュ」


は、そう言って、また窓の外を見ている。
僕は、そっとカップを二つ持って、ソファーの前のテーブルへと置いた。


「はい。。熱いから気をつけろよ?」
「ありがとう…あったかい…」
「寒いから、窓閉めようよ…」


僕は情けない顔で頼んでみた。


すると――


は僕に、寄り添って座りなおす。




「こうしたら暖かいよ…」


そう言いながら、そっと紅茶を飲むの横顔はもう少女ではなく、大人の女性のようだ。
僕は少しドキっとしながらそれを見せないように煙草へと火をつけた。
するとは僕の方を見あげて来る。


「あ…煙い?」
「ううん!私ね、ジョシュの煙草を吸う姿、凄い好きよ…」


はそう言うとニッコリと笑って、また紅茶を飲んでいる。
に好きよ…と言われるのは慣れているが…今の流れで言われたりすると凄く照れる。
僕は照れ隠しでそっとの頭を抱き寄せ、キスをした。
もそのまま僕に寄りかかってくる。


「ねえ、ジョシュ…今度やる映画って、どんな人と共演なの?」
「んーと…イライジャウッドとか…」
「え!イライジャと共演なの?知らなかった!」


は驚いたように顔をあげた。


、イライジャの映画、何本か見てたよな」
「うん。イルカのやつが好き」
「ああ…フリッパーだろ?、動物ものとか好きだよな」
「だって…癒されるもの…。動物は嘘もつかないから…」


その言葉に、ドキっとした。
は時々、こういう事をポロっと言うようになった。
色々と大人になってくると、見たくないものまで見てしまったりする。
できるだけ、を、そういうものから遠ざけたいとは思っているけれど…。


そこへ家のブザーが鳴った。




「あ!ピザよ、きっと」


が急いでインターホンに出て応対している。
ジョシュはそのまま玄関へと出て、配達してくれた人へピザ代とチップを払い、ピザを受け取り、戻ってきた。


「うーーん。いい匂い…」
「あ、これ、俺の好きなチーズピザ?、頼んでくれたの?」
「うん、私も大好きだし、ジョシュも大好きでしょ?」


嬉しそうに言うの顔に、ジョシュも微笑を返した。


「あ、私、お皿出すわ」


は、そう言うと、キッチンへと歩いて行った――












…おい…ここで寝たら風邪ひくよ…」
「ん…わか…た…」


ジョシュは自分の膝の上で眠ってしまったの頬をそっと手で撫でた。


「まったく…」


そう言いながらも微笑んでしまう。
寝る前に少しだけテレビを見るというので一緒に見てたんだけど案の定、は先に寝てしまった。
時計を見ると、もう夜中の2時…。今日は朝から学校だったからな…眠くもなるか。
僕は、そっとを抱きかかえると、寝室へと運んで、ベッドへ寝かせた。
そして、まだ少し起きてようかとリビングへと戻ろうとした時、服がピンっとはって僕は振り返った。


「どこ…いくの…?」
…起こしちゃった?ごめん…どこも行かないよ…リビングで本でも読もうかなって…」


と言い終わらないうちに、ぐいっと服を引っ張られ、僕はベッドへの方へよろけて膝をついた。


「おい……服がのびるって…」


僕は苦笑いしながら、服を掴んでいるの手を離そうとした。


「やだ…一緒に寝ようよ…一人じゃ眠れない…」


は寂しそうに呟いた。


「そっか…分かったから…。手を離して…。テレビ消してくるから」


僕がの額にキスをしてそう言うと、「ん…」と、は微笑んで掴んでた手を離す。
それを見て僕はまた微笑んで、リビングへと行き、付けっ放しのテレビを消した。
リビングの電気も消して、真っ暗になる。
そっと寝室へと入って軽くパジャマ代わりのトレーナーの上下に着替えると、そーっとベッドへと入った。
は起きて待っていたのか、すぐに抱きついてくる。


「どうした?いつも以上に甘えんぼだな…」


僕はそう言って笑うと、は「だって…ジョシュと一緒に寝るの久し振りだから…」そう呟き、顔をあげて微笑んだ。
僕はドキっとしたがそのままを抱き寄せ、「おやすみ…」と言って額と頬にそっとキスをした。
も、「おやすみ…」と呟き、僕の腕の中へともぐって、すっぽり入った体勢のまま暫くすると静かに寝息を立て始めた…。




僕は暫く起きていた。その愛しい温もりを抱きしめながら――




外では、まだ雨音が響いていて、いつしか僕を眠りの中へと誘い込んでいった―――






 

 


Postscript

キャー、ジョシュ初夢です…ああ…何だか怪しげですけど(苦笑)
少し切ないお話を書いてみたいなと思って…
でもちょっとイチャイチャさせたかったり…(笑)
これもリジー夢のようにシリーズで書いていきたいと思っております…。
ジョシュ好きな方に喜んで頂けると嬉しいな。


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】