Vol.9...It is not made to language...





Cause without you beside me


I can't want to try


If you're keeping me warm


Each and every night


I'll be alright


BecaUse I need you in my life...








君がそばにいなければ


僕は生きる気力をなくしてしまう…


夜ごと 君の  ぬくもりがあれば


それだけで 生きていける


 どうしても 君が 必要なんだ…









雨の振る景色の中 とある体育館の入り口で、ショーンとクレアが、そっと口付ける。
僕とイライジャは、それを横目で見ながらニヤニヤしていた――


…と言っても別に実際に、二人がラブラブになってキスをしているのではない。
今は、オハイオでのロケで、ある学校内を借りての撮影中。
クレア…ストークリーはショーン…スタンの唇を、そっと解放すると、「…後悔したくないから…」 と呟く。
それを聞いて、スタンは少し微笑むと、雨の中、一人で外へ出てグランドの方へと走り去って行った…







「OK!カーーーット!今ので完璧だ!」


ロバートは笑顔でショーンに合図した。
その声に、僕らも息を吐き出し、各自がモニターの前へと集まってくる。


「はぁー何だか緊張するねー、やっぱり」


ショーンは、また走って来て皆のところへ戻ると、一言言った。ガラにもなく照れている。
クレアの方は、「別に、ショーンとキスしたって何も感じないわよ」 とケラケラ笑っていた。


「うわ!ひど…!そんな事言っちゃう?!傷つくなぁ、それ!」


と、ショーンは大げさに嘆いて見せた。
僕とイライジャは笑いながら、「まあ、男として見られてないって事だろ?」 と追い討ちをかけると、
ショーンは、「二人まで、そんな事言ってくれちゃうんだ?何だよ、ジョシュだってキスシーンの時は困った顔してたクセにさ」 とスネてしまった。


僕は思い出したくない事を言われて顔をしかめた。 
が近くで聞いていたからだ。


「…お前…うるさいよ?」


低い声を更に低くしてショーンを睨むとショーンは慌てて、「〜助けて!の兄ちゃん、怖くてさ!」 と
何故か撮影を見学してたの後ろへと隠れる始末…。
もイライジャと同じくショーンにもなついているので楽しそうに笑っている。


だが僕は慌てて、「バ…バカ!お前、から離れろよ!」 と怒鳴ると、ショーンは、ますます怯えた顔をした。
そしての肩を後ろから掴むと、


「来るな!僕に指一本、触れてみろ…。 ――このままにキスするぞ?!」 


とアホさ加減ほどよく…ではなく、全開にして叫んだ――


それにはも少し驚いた顔をしてショーンを見上げたが、彼の性格は把握しているので冗談だと思って呑気に噴出している。
だが僕にだけは、その冗談は通じなかった…(!)
ショーンの方へ歩き出し、「おい…!!やめろ…」 と怒鳴りかけた、その時。
ショーンの後ろから鉄拳が飛んで来て、ショーンが叫んだ。




ゴン!!




「いたっ!!」


僕は驚いて、ショーンの後ろを見ると、ショーンの後ろから怖い顔をしたロ−ラが握りこぶしのまま立っていた。


「何してるの?ショーン!はショーンのオモチャじゃないのよ?!何、人質にしてるのよ!」
「…ったぁ…。ロ−ラ…何も、グーで殴らなくても…」 


ショーンは後頭部をさすりながら悲しげに呟いた。


「何言ってるのよ、本当なら、そのカチンコで殴ろうかと思ったんだから!」 


とのロ−ラの言葉に、ショーンは怯えた顔で、助監督が握っているカチンコを見つめた。
僕は心底、ホっとして、のとこまで行くと軽く抱き締める。
そしてロ−ラへ、「ありがとう、助かったよ」 と息を吐き出し、御礼まで言うと、ロ−ラは微笑んで、
「どういたしまして!それには私にとっても可愛い妹みたいなものなのよ」と言ってくれた。


だけは不思議そうに、「ジョシュ…冗談よ?ショーンが言うことに、そんな心配しなくても…」 とキョトンとした顔で僕を見あげて来る。


「例え、そうでも心配なんだよ…。誰にも触れさせたくないんだ」 


そう言っての頬に軽くキスをした。
ローラは、それを見て、「あらら!あてられちゃったわ!」 と笑いながら、次の自分のシーンの打ち合わせのため監督の方へと歩いて行った。
は真っ赤な顔をして、


「…最近、ジョシュったら過保護になったね…前からだけど…最近はもっと過保護だわ…」 


そう言われてドキっとした。
そう…確かに僕はへの気持ちに気づいてから、ますます彼女に過保護になった。
女性陣はいいとしても…他の男には触れて欲しくない。 
自分が、こんなにも嫉妬深いとは思わなかった…。


こうして皆で同じシーンを撮影している時はいいが、僕だけの撮影の時とかは、はイライジャとかと楽しそうに撮影を見学している。
そういう姿が、チラっとでも視界に入ると、僕は演技どころじゃなくなる時もあった。
プロがこれじゃいけないと思って撮影の時だけは、無心になって役になりきるようにはしたのだが…。


ほんと…心配だよ…。
僕のお姫様は仲の良くなった人達に対しては全くと言っていいほど警戒心というものがないんだから…


僕は少し苦笑すると、さっきショーンが触れていたの肩の辺りを軽く払ってあげた(!)
は不思議そうな顔をしたが、僕が笑いかけるともニッコリと微笑んできた。


そこへ、「…ごめんね?冗談だからね?」 とショーンが近付いてきて謝っている。
僕は、サっとを自分の後ろへと隠し、ショーンを睨んだ。


「…な、何だよ、ジョシュ…。そんな警戒しなくても…」 
「ショーン、私、何とも思ってないわ?冗談だって分かってたし。逆に面白かったもの」 


が僕の後ろから顔を出してショーンへ頬笑みかけた。  
――その笑顔だって、ショーンへ捧げるなんてもったいない!という気持ちになる(!)


だが、そんな僕の気持ちには気づかず、ショーンは、の言葉に感動している様子で、


「ありがとう!!悪魔のようなジョシュとは違って、は天使だよ!」 


なんて大げさに言うと、またの方へ寄ってこようとする。
それを見た僕はを後ろから思い切り抱き締め、ジロっとショーンを睨んだ。


「来るなよ?それ以上、近付いたら何をするか分からないよ?どうせ俺は悪魔らしいからな」 
「うわ…怖っ!は天使のようなのに、何で兄ちゃんは、こんなにデビルマンなのかねーー」 
「うるさいよ!それには"天使みたい"じゃなくて、天使なんだよ!」 


その時、後ろで呆れ顔で見ていたイライジャが、「皆…そろそろ撮影始まるよ…」 と呟いた。










「ジョシュ!」


僕はロケバスへと着替えに向う途中、そう声をかけられ振り向いた。


「何?リジー」


イライジャが撮影が終ったと同時に笑顔で駆け寄ってきた。


「あのさ、今夜、皆で食事行こうって話してたんだけど行かない?」
「あ、悪い…今夜はちょっと・…」
「何で?」 
「いや…もうすぐ、学校が始まるからさ。帰らなくちゃならないし…その前に色々と連れて行ってあげたいんだ。今日も撮影が早く終ったら、美術館や,博物館に連れてく約束しててさ。 ―今日は、もう終わりだろ?」


今日は一日、オハイオのクリーブランドへと来ていた。
2日ほど泊りがけでのロケである。
昨日は夜中過ぎまで撮影が続いたので、今日は早めの夕方5時には、撮影は切り上げていた。


「そっか!そうだよね。…あ!じゃあさ、皆で行こうよ!皆もどこか出かけたいって言ってたしさ」
「え…?!皆で?!」


僕はそう言われて焦って声をあげてしまった。
と二人きりで行きたかったからだ。
だがイライジャは不思議そうな顔で、「…皆と一緒だと…何か問題あるの?」 と訊いてきたので、
「べ、別にないよ?そうだな…じゃ、皆で行くか…?」 と、つい言ってしまった。


そこへローラ達と談笑していた、が笑顔で歩いて来た。


「ジョシュ!もう撮影終わりってほんと?」


僕はを軽くハグしながら頬へキスをすると、「ああ…もう終ったよ。だから美術館でも博物館でも、どこでもお供するよ?」 と微笑んだ。
「ほんとに?!嬉しい!」 とも満面の笑みで僕を見上げる。


「あのさ、、僕達も一緒に行ってもいいかな…? 」 とイライジャが声をかけた。
「うん、もちろん! ――じゃ、ロ−ラやショーン達も誘ってみる?」 
「ああ…そうだね。…でもショーンは無視しよう」 


僕が軽く言うと、は口を尖らせ、「ジョシュ…そんなイジワル、ダメだよ…」 と言った。
そんなが可愛くてその尖らせている唇に、軽くだけどチュっとキスをして、


「冗談だよ?でもショーンに美術館へ連れて行っても、あいつに芸術が分かるとは思えな―」 


と僕はそこまで言うと言葉を切った。
が顔を真っ赤にして俯いているからだ。
それを見ていたイライジャまでが、何故か顔が赤い。


…?どうしたの…?」 


と僕がの顔を覗き込んで聞くと、は慌てた様子で、「ううん…!何でもないの…」 と顔を上げる。
その顔は、まだ赤かったが、チラっとイライジャの方へと視線をやるに、


(ああ…人前で口にキスしたから恥ずかしかったのかな?)


と気づき、何故か僕までが赤くなってしまった。 


(つい、いつもの調子でやってしまった…)


と言うか以前は兄貴として気持ちをセーブしていたから、が16歳になった頃、マウストゥーマウスでのキスはしないようにしてきた。
でも最近は気持ちの箍が外れて、つい無意識で唇へも普通にキスしてしまう自分がいた。


「ほ、ほんと…仲がいいよね、二人は…!アハハハ…」 


とイライジャが顔を赤くしたまま、空笑いしている。


「じゃ、僕はこれで…!き、着替えてくるかな〜」 


イライジャはそう言いながらロケバスの方へと歩いて行ってしまった。
僕はイライジャが行ってしまうと、「…ごめんな?恥ずかしかった…?」 と顔を覗き込んだ。


「え…?!う、うん…ちょっと…」 


は、またも恥ずかしそうに俯く。
その様子を見て、僕も少し恥ずかしくなったが、そんなを見て内心首をかしげた。


…前は、こんなに照れたりしただろうか…?
前は学校に迎えに行った時とかに友達の前でキスをしても別に嬉しそうに微笑んでたのに…。
最近は妙に恥ずかしがったりする。 
やっぱり18歳ともなると年頃だからな…それなりに照れくさいのも出て来るのかもしれない…


そんな事を考えつつ、の手を取ると、「さ、早く戻って出かけようか」 と微笑んだ。






その頃、イライジャはロケバスへ戻り、着替えをしていた。


ああ、ビックリした…。 
いくら仲がいいって知ってても、あんな風に唇へキスしてるのを目の前で見せられると、こっちが照れちゃうよ…
まあ…兄妹だって言っても…血は繋がってないんだし別に、お互いを好きになったっておかしくはないんだけど・・…


イライジャは、の気持ちに気づいていた。
多分…あの時に言っていた言葉は…女性としての気持ちなんじゃないか…と。


あの時は何とか誤魔化して、何も知らないフリをしたけど…。
ジョシュは…?ジョシュは、どうなんだろう…
を妹として見てるのか…それとも女性として見てるのか…


これはイライジャにも分からなかった。


ジョシュは顔にあまり出さないからなぁ…。
のことを大事にしてるのは伝わってくるし、ジョシュの態度を見ても凄くへの愛を感じる。
ただ、それが、どういう愛情なのかは、イライジャには量りかねるところ。


ま、確かにこの前の、【元カノ(モデル・26歳)押しかけチュー事件】(!)以来、ますます過保護になった気はするけど…。


(以前のジョシュなら、人前で頬や額にはしても、唇へキスするなんて事はしなかったんじゃないか…?)


その時、イライジャの胸がツキンとかすかに痛んだ。


(僕は…のこと、好きになってるかもしれない…)


この前の一件以来、イライジャはそう感じていた。


ジョシュを必死に想うに惹かれるなんて、おかしいと自分でも思ったけど…
だいたい他の男を必死で想ってる子に心惹かれる事態で変だよな…
でも…あんなに辛そうな彼女を見てしまうと…どうにかしてあげたいと思ってしまう。


だが不思議とジョシュに対する嫉妬の気持ちはなかった。
だから、さっき目の前でとジョシュがキスしたのを見ても、辛いとかは思わなかった。
まあ、どこかで兄妹として見てはいるんだろうけど…
二人はラブラブの恋人同士でキスをしたわけではなく、あくまで兄から妹へのスキンシップの一環だ。
例えもしジョシュものことを女性として好きではあっても、それでも二人は恋人同士ではない。
そう思うとイライジャは不思議と嫉妬の気持ちは沸いてはこなかった。
それにに告白をする気もなかった。
これからも友達として相談に乗ったりしてあげたいという気持ちの方が強いからだ。


(こんな僕はおかしいのかな…)


イライジャは、ふと、そんな事を思ったが、ふっと微笑むと素早く着替えていく。
その時、ジョシュがロケバスへと入って来て、外に手を振っている。
きっとは女性陣のロケバスへと行ったんだろう。


イライジャは嬉しそうに手を振るジョシュを、そっと優しく微笑みながら見ていた――










「ほんと凄かったね!あの美術館!」


ショーンが興奮したように声をあげる。
今、僕と、イライジャ、ショーン、ローラ、ジョーダナの6人で美術館、そして博物館を見学してからの帰り。
どこかで食事でも…と歩いてる所だった。
クレアは恋人が会いに来てくれたので、今夜は二人でデートに行ったようだ。


「ほんとに分かったのか?あのモネや、ゴッホの作品を見て」 


僕は少し笑いながらショーンの方へと振り向いた。


「な、何だよ!失礼な…僕にだって少しは分かるさ」 とショーンはスネながらも訴えている。


「それと今、見てきたロックン・ロール・ホールの博物館も感動だよ!」 
「ほんと、ジミヘンやプレスリーの展示品には涙が出たね!」


ロックファンのイライジャとショーンは興奮気味に言った。
今はクリーブランドのダウンタウン、ノースコースト地区に来ていた。
最初はが見たがっていたクリーブランド美術館を見に行ったのだが、帰りにイライジャと、ショーンが、
どうしてもロックン・ロールホールへ行きたいと言い出し、皆も面白そうだと行って今さっき見学してきた所。


そのロックンロール・ホールとはクリーブランドで一番大きなアトラクションで、
アメリカ文化と言うべき"ロック"を取り上げた博物館である。
ジミヘン、プレスリー、ビートルズから、ローリングズトーンズ、ジョン・ボンジョビまでと、
数え切れないスター達に関する展示品が揃っている。
マドンナやマイケル・ジャクソンのステージ衣装も見逃せない。
その他にシアタールームまでがあり、貴重なライヴ映像まで見せてくれるので、イライジャとショーンは、すっかり興奮して盛り上がってしまった。


は分かった?ロックミュージシャンの映像」 


僕はショーン達の盛り上がりように笑いながら、へ声をかけた。


「うーん…ボンジョビや、マドンナ…ビートルズは好きだけど…ジミーヘンドリックスまで行くと、さすがに分からないかも」
「アハハ…そっか。それには、どっちかと言うとヨーロッパの音楽の方が好きだもんな」
「うん!やっぱりラテンよ!あのノリが燃えてくるでしょ?体が」 


一瞬、ドキっとするような事を言う。
ジョシュは苦笑いしながらも、「じゃ、今度、一緒にスペインに旅行でも行こうか」 と言うと、
は瞳を輝かせて、「ほんとに?!ほんと?うわぁ、嬉しい!行きたい、ジョシュと!」 と抱きついてきた。
少し照れくさかったが、の喜んでいる顔を見てると嬉しくなり、そっとを抱き寄せて額に唇を触れる。
すると、いきなり振り向いたショーンが、

「ああ!またイチャイチャしてるよ!そこ!離れなさーーい!」 


と博物館のパンフレットをメガホンよろしく丸めて叫んでくる。
僕は笑いながら、「うるさいよ、バカ!妬くな!」 と言い返してやった。
皆も笑いながら、「そうよ、ショーン、うるさいな!」 とショーンの頭をこづいている。


「何だよ、皆で!は僕の天使になったんだから、悪魔の腕の中にいるなんて許せないだろ?」 
「俺のを勝手に自分の天使にするなよ!」


苦笑いしながら叫び返すと、「ほんと、あいつバカだよな?」 とに微笑んだ。
も大笑いして、おなかを抱えている。


「アハハ…ショーン、面白い…私、ショーン大好きよ?」


僕はその一言にカチンときた。


「……ダメだよ、そんな事、ショーンに言ったら…。何をされるか…それには俺の事だけ好きでいればいいんだよ?」 


と、笑顔で言っての頬へ軽くキスをした。
その言葉に、は目に見えて顔を赤くした。
僕は驚いて、「…?」 と顔を覗き込むと、は、「う、うん…ジョシュが一番大好きよ?」 と呟いた。
そのの様子に首をかしげたが、の一言が嬉しくて、また頬に軽くキスをすると、
「ありがとう。僕もだけが、大好きだよ」 と言って微笑んだ。
はまた顔を赤くしたが、嬉しそうに微笑むと、僕の手をギュっと繋いでくる。
それが嬉しくて、「さ、おなかすいたろ?早く、レストランに行こう」 と言うとと手を繋いで皆の方へと急いで歩いて行った。






「わぁ…ほんとに広いレストランね!」


ジョーダナが驚いて店内を見渡している。


「ほんと…窓の向こうに川が見えて奇麗だし」


ローラも感激した様子で呟く。
席へと案内されて、僕達は料理を待つ間、その店の雰囲気を楽しんでいた。
ここは先ほどのロックン・ロール・ホールから、程遠くないフラット地区のオールドリバーロードの一角にあった。
丁度ロックンロールホールと僕らがクリーブランドで泊まっているルネッサンスホテルとの間くらいにある。
目の前には、カヤホ河が流れていて窓際に座った僕達は、その奇麗な眺めに見惚れていた。
ここは、もともと倉庫だったのをアメリカンレストランにしたとの事だった。
店内にはキルトが掛かっていて可愛い雰囲気。夏には外でも食事が出来るようになっている。
まずは先に頼んだ飲み物が来ると、各自それぞれグラスを、もち、皆で乾杯した。


僕とはチリワインをフルボディで頼んで一緒に飲んでいた。


「うわぁ、美味しい!チリワインって本当に美味しいね!値段は凄くリーズナブルなのに」


が嬉しそうに僕へと微笑みかけた。


「ああ、ほんと。その辺の高いフランスワインより、全然美味しいよな」


すると、それを聞いてた隣に座っているショーンが、「え?何?それ美味しいの?僕にもちょうだい?」 とへ声をかけた。


「おい…ショーン…。お前はシャンパンだろ?それにこっちを向くな…と言うか、を視界に入れるな」 
「何だよ、それ?ひどいな…!だってさ、このシャンパン、甘いんだよ!これ、女の子用じゃないか?」 


と顔をしかめてシャンパンボトルを持ち上げたが、僕はそのシャンパンのラベルを見て笑ってしまった。


「それ、アスティだろ?凄く甘いシャンパンなんだよ、知らなかった?」 
「え…?そうなの?知らなかったよ〜。 俺、ローラに任せちゃったもん」 
「いいでしょ?私、このアスティの甘さが好きなんだから」
「だってこの甘さハンパじゃないよ?ジョシュ、飲んでみて!もうジュースみたいだからさ」 


と自分のグラスを僕に渡そうとする。


「い、いいよ…!俺、それ前に飲んだことあるし…そのシリーズは対外が甘くて俺、苦手なんだ…」
「え?それ飲んだことない…飲んでみていい?」 
「ちょ、、ダメだよ!それはショーンの飲んだグラスだろ?こっちの新しいのに注いで飲んで」 


僕はそう言うと慌てての手からグラスを奪った。
だがはキョトンとした顔で、「何で?別に気にしないのに…」 と呟いた。
それでも大人しく僕の注いだ新しいグラスでシャンパンを飲んで、


「あ、甘〜い。でも美味しいね!どんどん飲めちゃいそう」 


と、ロ−ラと微笑みあっている。
それを見てホっと息を吐き出すと、ショーンと、イライジャ、そしてジョーダナが、僕の顔を見てニヤニヤしているのに気づいた。


「な、何だよ?お前ら…ニヤニヤしちゃって…」 
「ジョシュ、今、が僕と関節キスしそうになったから焦ったんだろぉ〜?」 
「あの焦りようは凄かったわねぇ〜」 


とジョーダナまでがニヤリとしている。
それが聞こえたが、「…え?!か、関節…?」 と顔を赤くして振り向いた。
僕は焦って、


「…うるさいな!当然だろ?の唇がけがされたら、どうするんだよ!バカもうつるかもしれないしさ…」 


と開き直って文句を言った。


「うわ!そういう事言っちゃう?!ひどいねー、俺の事なんだと思ってるわけ?」 


とショーンがスネたように聞くと、僕だけじゃなく、その場にいた、以外の人間が、一斉に、


「「「「スペシャルバカキング」」」」 


と奇麗にハモって答えた。


「何だよ!皆で気持ちいいくらいにハモるなよ!」 


とショーンも少し笑いながら文句を言っている。
皆も驚いて顔を見合わせて笑った。


そこにやっと料理が運ばれて来て、僕達は一旦おしゃべりを中断して料理を食べ始めた――









「はぁ〜苦しいね…」


が溜息をつきつつ呟いた。
今はホテルの部屋に帰って来てソファーで寛いでいた。
は僕の隣でゴロンと横になって苦しがっている。


「そりゃ、そうだよ。 だってってばマフィンを欲張って二つも食べたんだからさ」 
「だって…ソーセージの他にベーコンエッグがあったんだもの…。つい、そっちも食べたくなっちゃって…」
「アハハ…だから他のサラダとかポテトとか、メインのお肉も食べられなくなったんだろ?は安上がりでいいよな?マフィンで満足してくれるんだからさ」 


そう言って頭を撫でると、「むうぅ…ジョシュってばバカにしてる?」とは可愛くスネたようだ。


「してないよ?そういうも可愛いなと思ってさ」 


そう言うと、寝転がっているの顔の横へそっと手を置き、顔を近づけると彼女の頬へ素早くキスをした。
そのままの体勢で、ジっとの顔を見つめる。


「…どうしたの?ジョシュ…」 


顔を上に向けて、が不思議そうに僕を見上げる。


「いや…、もうすぐ家に戻っちゃうんだなぁ…と思ったら寂しくてさ…」 


と呟くと、も寂しそうな顔で、「帰りたくないな…帰るならジョシュと一緒がいい…」 と言った。
その言葉に少し胸が痛くなってしまった。


「それは…ダメだよ…。、卒業式があるんだから…」 
「…そんなのいいよ…出たくない…」 


は目を伏せた。
僕はもう一度の頬へキスをすると、「ダーメ!ちゃんと卒業して、やっと大人の仲間入りするんだからさ…」 と言って頭を撫でる。


「…でも…ジョシュ、卒業式は出てくれないの…?」


それには僕も言葉が詰まる。


「…出きれば出たいな…。それまでに撮影が終ってたら…」 


今の撮影は予定ではロドリゲスが余裕を見て半年と踏んだが、思った以上にスムーズに撮れているので、
もしかしたら卒業式までには間に合うかもしれない…と僕は思った。
だがハッキリと分からない以上、には期待させるだけで、約束を守れなかった時が可愛そうなので、その事は黙っていた。


「もし…撮影が終ってたら…その時は卒業式に来てくれる…?」


は哀願するように僕を見上げる。
僕は少しドキっとしたが、何とか冷静になろうと、そっとの上から避けて体を起こした。


「ああ、その時は絶対に行くよ」 


そう言って微笑んで煙草に火をつける。
するとは嬉しそうに体を起こすと、「ほんと?ほんとに撮影が終ってたら来てくれる?」 と訊いてきた。


「ああ、その時は父さん達と一緒に行くよ」


と言って微笑むと、も嬉しそうに僕の膝の上に頭を置いて腰に手をまわすと、「…早く…卒業したいな…」と、一言呟いた。


「…どうして?学生の方がノンビリ出来ていいだろ?社会人になったら大変だよ?」 
「でも…早く大人になりたい…」 


僕の言葉にがそう呟いてドキっとした。
このくらいの年齢にもなると…早く大人になりたいと思うのだろうか。
まあ、僕だって二年前のことだから、少し思い出して考えてみると、確かに早く卒業して大人になりたいと思ってたのかもしれない。
でも僕はには学校にいてもらった方が安心は出来た。
確かに共学だけど、に、いくら男が近付こうが、の男性恐怖症は治らない…。
その点では学生という若さに安心はしていた。
いくらのことが好きでも、何かをしてあげられるほど大人じゃない。
でも社会へ出て仕事を始めると、色々な人間がいるし、も色々な男性と知り合うだろう。
そして沢山のことを学んでいきながら、自分のことを見つめる時がくるかもしれない。
いつまでも、このままじゃいられないと思う時が…。
そして本気でのことを救おうと思う男も現れるかもしれない…


僕はそれが怖かった。


いつまでも、このまま二人でいれるわけじゃないから――




「ジョシュ…?どうしたの?ボーっとして…」 


ふいに声をかけられ、僕はハっとして視線を戻すと手の煙草がもう少しで燃え尽きるところだった。
僕は煙草を消して、「何でもないよ…」 とへ微笑んだ。


「そう?…私、シャワーに入ってくるね」 


はニッコリ笑うと僕の膝から起き上がり、バスルームへと行こうとする。
そのの手を僕は思わず掴んだ。


「ジョシュ?…どうしたの?」 


不思議そうな顔で振り返るを、僕は強引に引き寄せ、そのまま後ろから抱き締めると、「暫く…このままで…」 と呟いた。


「…ジョシュ…?」 


が小さな声で僕の名前を呼ぶのが聞こえるが、僕は言葉に出来ない想いを押し殺し、
だけど愛しいの温もりを感じて、そっとの頭に頬を摺り寄せて口付けた。
一瞬、が体を硬くしたのを感じた。
そっと力を緩めると、を僕の方へと向かせて、少し赤くなっているの額に優しく唇をつけた。
は少し潤んだ瞳で僕を見上げて来て、僕は慌てて、


「シャワー入っておいで」 


と、笑顔で、そう言ってを解放した。
は不思議そうな顔で首をかしげたが、「…うん…」 と言って素直にバスルームへと歩いて行く。
がバスルームへと入ったのを確認すると、僕は一気に息を吐き出した。


「はあぁぁ…」


…思わずキスしそうになった。
いや…普段からしてるけど…そうじゃなくて…いつもよりも深いキスを…
危なかった…!もう少しで理性が飛んでいってしまうとこだった…


うるさい位にドキドキしている胸を抑えて、また息を吐くと、ソファーへと寝転んだ。



もう少しで…離れてしまうかと思うと不安が押し寄せてくる…。
だからと言って撮影を放り出してしまう事は出来ない。


僕はACTORという仕事が好きだった。
に言われて…決めた仕事だったけど。
もともと僕は画家になりたいとも思ってた。
一枚の絵で、あんなにも感動を与えられるなんて素晴らしいと思う。
だけど演じることも好きだった。
自分じゃない誰かを演じる事が楽しかった。
人に見せて何かを感じてもらうというところはACTORも画家も似ているとこがあるのかもしれない。


今は本当にこの仕事が楽しくなってきていた。
それに…が嬉しそうに僕の映画を見ているのは嬉しかった。
あの笑顔を見たいがために、僕は必死でオーディションを受けたんだったっけ…。


僕はさっきが呟いた、「早く大人になりたい」 という言葉を思い出していた。
本当に…大人になった時…は僕の側にいてくれるんだろうか…。
今はベッタリでも…高校を卒業して社会へと出て行ったら、生活もそれなりに変わっていく。
僕だって、これからもっと忙しくなるかもしれない…。
そうなった時、に何か変化があったとしても気づいてやれない。
それにだって、僕じゃない誰かを頼っていくかも…。


そう思うと、どうして別の形で出会わなかったんだと思う。
もっと…違う形で出会っていれば…
この次から次へと溢れてくる想いも…素直に言葉に出して言えるかもしれないのに…
こんなに胸が痛くなるほどを愛していても…それを・…


言葉に出来ない…


また胸が軋んで…僕は静かに目を閉じた――
















Ever since I met you


You ' re the only love I' ve known


And I can't forget you


So I must face it all alone....




― あなたに会ってから


愛していたのは あなただけ


  忘れることもできないし


ひとり 耐えるしかないのね…









そっと、泡を両手ですくって、「ふぅ…」っと吹くと、ふわりと泡が散らばって飛んでいく。
私は、その泡を見つめて、お風呂の中へと潜った。


「…ぷはぁ…」 


思い切り顔を出すと私は手で顔の泡をとった。
泡風呂で気持ちを鎮めようと思っても、どうしてもドキドキが止まらなくて、私は、またお湯へ顔をつけた。
ぶくぶくと潜っている間だけ、ジョシュのことを考えないで済んだ。
でも、すぐに息が苦しくなって、顔を出す。
私はタオルをとって顔を拭いた。
そして顎のとこまでお湯につかると、そっと息を吐き出した。


さっき…ジョシュが、何だか、いつもと違って見えた。
確かに最近のジョシュは前以上に過保護にはなったけど…
そういうのじゃなくて、凄く…情熱的というか…
何だか、本当に知らない男の人みたいに見えて、ドキっとした。
私がジョシュを男の人として意識してるからかな…。
だから違って見えるのかもしれない。


でも、さっき…ほんとはキスされるのかと思った…。
ジョシュの方へ向いた時に一瞬だけど…ジョシュの瞳が熱くて…
今までのお兄さんとしてのジョシュじゃなくて…一人の男の人の瞳に見えた。


まさかね…そんな事ないか。
ジョシュは私を妹としてしか見てくれてない…。
どんなに、ジョシュの言葉や態度に愛を感じても、それは肉親を思う愛情なんだから…。


そんな事を考えてると涙が出そうになって、私は慌てて、また潜るとお湯の中で、両手で足を持ち丸くなった。


このまま…お湯の中に溶けてしまばいいのに…
泡になって消えちゃえば、どんなに楽だろう…。


私は、胸の奥の焦付きそうな想いに溺れそうだった…。








「ジョシュ…?」


私はバスルームから出て、静かなのが気になり、ジョシュを呼んだ。


(寝ちゃったのかな…いつもなら待っててくれるのに…)


私は寂しくなり、ソファーの方へと歩いて行った。
すると、そこに寝転がってるジョシュがいる。
そのまま寝てしまったようだ。
私は、そっと微笑むと、ソファーの横へと膝をつき、ジョシュの寝顔を覗き込んだ。
スースーと静かな寝息が聞こえて、私はそれさえ愛しいと感じた。
そっと指でジョシュの唇に触れる。


「ジョシュ…大好きよ…」 


小さく囁くと、私は、そっとジョシュの唇へキスをした。
ジョシュは、「…ん…」 と顔を少し動かした。
私は唇を離すと、今度はジョシュの頬へ軽くチュっと唇を触れる。
するとジョシュが、そっと目を開けた。


「…あれ……?」
「…おはよ、ジョシュ。こんなとこで寝たら風邪引くよ?」 
「…ああ…。俺、待ってる間に寝ちゃったんだ…」


ジョシュは、そう言うと、ゆっくりと体を起こした。


「今日、朝早かったし…夕べも遅かったから寝不足なんじゃない?」 
「…そうかな…。でもも同じだろう?俺と同じスケジュールで動いてるんだから…」


ジョシュは、そう言って微笑むと、私の額へとキスをしてくれる。


、いい匂い…。もしかして泡風呂に入った?」
「うん…やっぱりシャワーだけだと疲れが取れないから」
「そっか。俺も入ろうかな…」 


と言ってジョシュは思い切り伸びをした。


「じゃ、私が用意してあげる!」 と言って立とうとした時、「あ、ちょっと待った!」 とジョシュが私の腕を掴んだ。


、その格好でいたら風邪引いちゃうだろ?着替えなくちゃ」 


私は、まだバスローブのままだった。


「あ、そっか…じゃ、着替える前にミルクローション塗らなくちゃ」


私はそう言うとバスルームへと戻り、ローションの小さな可愛い形の瓶を持ってきた。
そしてソファーへと座って自分の腕に塗っていく。
「そういうの、やるようになったんだ」 とジョシュは何だか感心している。


「当たり前でしょ?私だって、もう18歳なんだから、お肌のお手入れくらいするわ」


と済まして答えた私を見て、ジョシュは笑いながら、


「そっか、女の子って、そういうもんなんだ。 ―貸して?足は、俺がやってあげる」


と私の手からローションの瓶を取ると、それを手にとって、私の足に、そっと塗っていってくれる。
私は何だか凄く照れくさくて顔が真っ赤になっていくのが分かった。
でもジョシュは、そんな私には気づかず、優しく足をマッサージしながらミルクローションを塗っている。


(ジョシュって、ほんとに優しい…)


私は、そんなジョシュの手の優しさに深い愛情を感じていた。


「はい!終わり!じゃ、早く着替えておいで?」
「う、うん…」 


私はジョシュの優しいマッサージが気持ちよくて暫くボーっとしていたので、そう声をかけられて慌てて立ち上がった。
素早く寝室へと行くと急いでパジャマに着替える。
そしてリビングへ戻ると、ジョシュはベランダへ出て煙草を吸っていた。


「ジョシュ?寒くないの?」


そう声をかけると、ジョシュはハっとして振り返り、「…ああ、寒くないよ?」 と微笑んだ。
私もベランダへ出るとジョシュの隣で、奇麗な街の夜景を覗き込む。


…湯冷めしちゃうよ?」


ジョシュは相変わらず心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
私は、そんなジョシュの顔が大好きで、思わずジョシュの腕を掴んで寄り添った。


「…こうすれば寒くないもん」


それを聞いてジョシュはちょっと笑って私を見ると、また視線を夜景へと戻した。
私は、そのジョシュの、いつものクセを見て、胸がキュっとして息を吐き出した。
私の白い息が、ジョシュの口からふわっと出る煙草の煙と重なって空へと舞っていく。
それが奇麗で、夜景がボヤけて見えた。


「…二年後も…こうして一緒にいれるかな…」


思わず口から出てしまった。
二年後…私は20歳になっている。
今のジョシュと…同じ歳…。
今より…大人になってる私は…ジョシュの隣に、こうしていられるのかな…。


ジョシュは、その言葉に少し驚いた表情で、私を見つめた。
 

「…当たり前だろ?何でそんな事言うの…?」


ジョシュは悲しそうな顔で私を見つめている。


「…何となく…そう思っただけ…二年後も…こうして一緒にいたいなって思ったから…」


私が、そう呟くとジョシュは急に煙草を投げ捨てて私を強く抱き締めた。
私は驚いて、「…ど、どうしたの…?」 と声をかける。
それでもジョシュは何も答えず、私を抱き締めたまま。
私は、その温もりに、そっと体を預けた。


愛しくて…愛しくて…溶けそうになるくらいジョシュが好き…


暫く黙ったまま、そうしていると、ジョシュが抱き締める力を緩めた。
私がそっと顔をあげると、まだ悲しそうな表情でジョシュが私を見つめている。


「ジョシュ…?」 


思わず、声をかけると、ジョシュは、優しく私の額に唇をつける。
そして、また私を抱き締めると、


「…。二年後も…三年後も…この先、ずっとと一緒にいたいのは俺の方だよ…?」 


と呟いた。
私はその言葉に胸が苦しくなってジョシュの背中へ腕をそっとまわして、私も彼を抱き締めた。


「ほんと…?私が何歳になっても…例えおばあちゃんになっても一緒にいてくれるの?」 


私の問いに、ジョシュは少し笑いながら、


「…ああ…例え、がおばあちゃんになっても」
「今みたいな私じゃなくなっても?…嫌いになったり…しない…?」
「…ああ、どんなになってもだろ…?嫌いになんてなるはずないよ? ―どんどん…好きになる事はあっても…」


私は、そのジョシュの言葉が嬉しくて涙が滲んできた。
するとジョシュが、そっと体を離して、私の顔を覗き込んでくると涙で潤んでいる瞳に少し驚いた顔で、
でも優しく頬へとキスをしてくれた。
私は、心の中で、ジョシュへの想いに押しつぶされそうになりながら、その温もりに顔を埋めた。




―想い焦がれて死ぬなんて…この世に、ほんとにあるのなら…私なんて、とっくの昔に、1000回は死んでるよ…


その時、ジョシュが、そっと呟いた。


「…泣かないで…僕が…いつも傍にいるよ…を笑わせるから…いつも笑顔でいてほしい…」


その言葉に、「...feeling same as me...」 と呟いて、そっとジョシュを抱き締めた。






月明かりの中、二人の白い息が消えていくのを見ながら…






…今夜の月は赤くて…妖しく光ってる――










Postscript


最近重かったもので前半は少し明るめにしましたが…
どうしても、このお話は最後は重たくなってしまいますね。


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】