Vol.10...Better Half...







Show me the meaning of being lonely


Is this the frrling I need to walk with


Tell me why I can't be there where you are


There's something missing in my heart...






孤独の意味を教えてくれるのは君だから


ずっとこの気持ち  抱えてなきゃならないの?


どうして いつも一緒にいられないの?


教えてよ――


僕の心に ぽっかりと 穴が開いてる…











「はぁ…」


(また溜息をついてる…)


僕は彼女の後姿を見ながら、胸が痛むのを堪えていた。
は今、ベランダへ出て頬杖をつきながら夜空をボーっと眺めては何度も溜息をついていた。
僕はシャワーから出て来て、ベランダにいるを見つけてから、ずっとその寂しそうな後姿を見ていた。
だが上半身は裸のままだったから、だんだん寒くなり、思わずクシャミをしてしまった。


「…へ…クシュン…!」


僕は慌てて口を抑えたけど、当然は驚いた顔で振り向いた。


「ジョシュ?もう出たの?」
「…あ、ああ…もうって…結構経ってるよ?」


僕は苦笑しながらも、そのままベランダへと出て、そっと寂しげなの頬を手で触れた。


…顔、冷たくなってるよ…」
「ジョ…ジョシュこそ…上、着ないと風邪引いちゃうよ・…?」


が少し頬を赤くして俯きながら言った。


「さっき、監督と飲んだブランデーのせいで暑いんだ…慣れないもの飲むもんじゃないよな?」


そう言って笑いながら、そっとを抱き寄せた。
するとは体を硬くしたまま動かない。
不思議に思い、「…どうした?…」 と声をかけるも固まったまま何も答えなかった。
そのままを抱えると、部屋の中へと戻り、ソファーへと座った。


「ちょ…ジョシュ…?」


はそこでやっと声を出すも、僕は黙ってを膝の上に座らせると、の顔を覗き込んだ。


「どうしたの?急に黙っちゃって」
「そ、そんな事ないよ…?」


は少し頬を赤くして、チラっと僕の顔を見上げた。
僕はそっと微笑んでの頬へキスすると、「父さんたちに電話した?」 と聞いた。


「う、うん…」
「何か言ってた?」
「別に…もうすぐ帰って来るんだろって…。楽しみにしてるって」
「そっか…。そう言えば…来週だよな、帰るの…」


僕は少し寂しくて、を抱く手に力が入ってしまう。


「ジョシュは…いつ頃、戻って来れそう…?」


不意にに、そう聞かれ僕は、どう答えていいのか迷っていた。


「多分…。一ヶ月くらいか…少し遅いくらいだと思うよ?」


僕がそう言うと、は凄く落胆した様子で、「…そう…」 と呟いた。
僕は、そんなの顔を見ると、少しイジワルな質問をしたくなってしまった。


「…寂しい?」


その問いには顔を上げて僕を見つめると、「…うん…寂しい…」 と呟いた。
僕はの素直な言葉に胸が痛んでを抱きしめると、「…毎日、電話するから…」 と言って、また頬へとキスをした。
そう言うと、も少し微笑んで頷いてくれて僕は、ホっとして息をついた。


(ごめん…ちょっと…に、"寂しい"って言って欲しかっただけなんだ…)


僕はイジワルな事を聞いた事を後悔した。
は僕の膝から、そっと降りると僕の隣へと座って、テーブルの上のポットから紅茶をカップへと注いだ。


「はい、頼んだばかりなの」


は、そう言って僕へカップを渡してくれる。


「ありがとう」


僕は笑顔で、それを受け取ると、一口飲みながら、体を前のめりにしてテーブルの上の煙草へと手を伸ばした。
その時、が僕の背中へと抱きついて後ろから首に腕をまわしてきたので、僕は少し驚いて、


「ど、どうしたの?…」
「ん…寒そうだったから…。 こうしてたら暑い?」
「いや…もう大丈夫だよ…」


少しドキドキしながらも何とか普通に答えた。
上に何も羽織ってないので、直接、の体温を感じて顔が赤くなるのを感じつつ、落ち着こうと煙草へ火をつける。
するとが僕の左肩に彫ってあるタトゥーへ、そっと手で触れるのを感じて、またドキッとした。


「私…このジョシュのタトゥー好きなの」


がそう言って、肩に、そっと唇をつけたのが分かり、僕はますます顔が赤くなった。
そしてすぐに体を動かすと、の方へと振り返る。


「あ、あのさ…にプレゼントがあるんだけど…」


そう言うとは嬉しそうな顔で、「え?ほんとに?」 といつもの無邪気な笑顔を見せる。
僕は、ホっとして、「ほんと!ちょっと待ってて」 と言うと、すぐ立ち上がり寝室へと行った。
後ろ手にドアを閉めると、そこで思い切り息を吐き出す。


「はぁぁああ…」


心臓がいつも以上に早いリズムで動いてるのが分かる。


(こんなんじゃ心臓に悪いよな…)


そんな事を考えつつ、何度か深呼吸をすると、僕は急いでシャツを羽織った。
そして、に買って来ておいたプレゼントの箱をクローゼットから出す。
今日、撮影の合い間にがイライジャと裏の子犬の所へ行っている間、こっそり買って来たものだ。
僕はリビングへと戻ると、笑顔で、「はい、これ」 とへ、その箱を渡した。


「うわぁ、何だろ?開けるね?」 と、は笑顔で言うと、箱の包みを開けていった。
僕は、そんなの嬉しそうな顔に、そっと微笑むと、置きっぱなしにしていた煙草を手にとり、ゆっくり吸い込む。


「わぁ!奇麗・…!何?これ…香水と…ボディクリーム…?」
「ああ、も、卒業するし、そういうのもいいかなって。ほら、この前、お風呂上りにクリーム塗ってただろ?それ思い出してさ。買いに行ったら、その香水もススメられちゃって…ついね」


僕は苦笑しつつ、を見た。
すると、いきなりが抱きついてきて、「ありがとう!ジョシュ!嬉しい…大好きよ!」 と言って僕の頬へキスをした。
僕は少し照れくさかったが、嬉しそうなの顔を見れて満足だった。


「ちょっと、つけてみようかなぁ」 は、そう言うと香水を、シュっと自分の手首にかけて匂いをかいでいる。


「どう?匂いは…気に入った?」
「いい匂い!これ、何て言うの?…エ…エタニティ…?」
「ああ、カルバン・クラインのエタニティ。の年齢だったら、そのくらいのがいいかなと思って。あまり重い香りは似合わないだろ?」
「また子ども扱いする…」


と、ちょっとスネた顔で僕を見るが、その顔も、また可愛い。
「でも、嬉しいから今日は許してあげる」 とは僕を見て微笑んだ。
僕は笑いながら、「あー良かった!」 と大げさに胸をなでおろすと、ゆっくり紅茶を飲んだ。


「これ、お風呂上りに塗ろうかな」 とはクリームの方のキャップも開けて匂いをかいでいる。
「ああ、そうしたら?もう11時だし…早く入っておいで」


僕はの頬へとキスをして言った。


「うん、じゃ、ちょっと入ってくるね。起きてて待っててね?」 


そのの言葉に僕は苦笑いしながら、


「そんな新婚夫婦みたいなこと言わなくても、ちゃんと起きて待ってるよ」 


と笑った。
だが、僕のその言葉に、は顔を赤くすると、


「な、何言ってるのよ…新婚なんて…なれるわけもないし…」 


と言ってバスルームへと走って行ってしまった。
僕は唖然として、その後姿を見ていたが、我に返ると少し落ち込んだ。


(なれるわけもない…か…)


は別に深い意味で言ったんじゃないって分かってても…やっぱり少しは落ち込むよ…。
どんなに一緒にいても…触れ合っていても…
その先には…何もない…。別れる日を待つだけだ。
いつかを他の男に渡す日を待つだけ…。
僕が、どんなにを一人の女性として愛したところで、どうにもならない。


僕は…の兄貴なんだから ――


胸が軋むように痛んで、僕は息を吐き出した。
何で、人は誰かを愛すると、こんなにも弱くなるんだろう…


そこへチャイムが鳴った。
少し驚いて静かにドアの側へとよると、「....Whom is it?」と声をかける。
万が一、エレンだったら…と思って警戒した。


「僕、リジーだけど…」


だが聞こえたのはエレンではなく、イライジャの声だった。
ドアを開けると、「どうした?」 とイライジャへ部屋に入るよう促す。


「ごめんね?遅くに…。何だか眠れなくってベランダに出たら明かりがついてるのが見えてさ。ちょっと話したいなって思って…いいかな?」
「そうか…。ああ別に構わないよ?俺も誰かと話したいなって思ってたし」


そう言うとイライジャへ笑いかけ、紅茶を彼の分も入れると、テーブルへと置いた。


「あ、ありがと。 ――あれ…?は?」


イライジャが部屋を見回し訊いてくる。


「ああ…。今、シャワー入ってるよ」 
 

と、僕が煙草へと火をつけながら答えると、イライジャは心なしか頬が赤くなり顔を伏せて、「そ、そう…」と呟く。


…来週には帰るって?」


イライジャは顔をあげると不意にそんな事を訊いて来た。


「ああ…。もう学校始まるしな…」
「そう…じゃあ、ジョシュも寂しいだろ?撮影、ちゃんと出来るかな?」


イライジャが少し、からかうようにして僕を見る。
僕はいつものように笑えなくて、軽く溜息をつくと、「…どうかな…」 と呟いた。
イライジャは、そんな僕を見て少し驚いたような顔をしたが、「…僕も…寂しいよ…」 と言って少し寂しげに呟き、
今度は僕が驚いて、イライジャを見た。
するとイライジャは、「あ…あの、ただが心配で…」 と慌てている。


「心配…?」
「う、うん…。は…ジョシュがいないと眠れなくなるって言ってたし…帰った後のこと考えるとさ…。と、友達になったし…」
「ああ…そうだな…。俺もそれは心配だから…。 ―ありがとう…心配してくれて」


僕がそう言うとイライジャは少し照れくさそうに微笑んで、そっと紅茶を飲んだ。
そこへがバスルームから出てきた。


「あれ?リジー?」
「あ……お邪魔してる…よ…」


イライジャは、の方へと振り向いて、そこで言葉を切った。
僕もの方へと視線をやると、はバスローブ姿で、お風呂上りだからか、頬を少し赤く染めたまま立っている。
濡れた髪をタオルで巻いて…
僕はイライジャが顔を赤くして俯いてるのを見ると、慌てて、「、着替えておいで」 と声をかけた。


「えー…だって…出たばかりでパジャマ着たくないよ…暑いし…」


はスネたように唇を尖らしているが、僕はソファーを立ち上がると、を急いで抱き上げた。


「…キャ…!ちょ、ちょっとジョシュ?!」


が驚いて目を丸くしているが、僕はお構いなしにそのままを抱いて寝室へと行くと、
まだ驚いたままのをベッドへと降ろし座らせた。
そしての前に膝をつき、


…イライジャがいるのに、そんな格好でいたらダメだろ?イライジャも困るだろうし…」 


と優しく頭を撫でる。
するとが少し顔を赤くして、「そ、そっか…ごめんなさい…」 と俯いた。
そんなが可愛くて、そっと額へとキスをすると、「ちゃんとパジャマ着ておいで」 と微笑んだ。


「うん、分かった」


そう言って、もニッコリ微笑み立ち上がると、「じゃあ、着替えるから、ジョシュも出てってね」 と僕の背中を押しながら部屋から押し出す。
僕は苦笑しながら、「はいはい…」 と両手をあげてホールドアップしつつ、


「パジャマの上からカーディガンも羽織れよ?」 


と言って部屋から出た。


(いくらパジャマに着替えても、それだけじゃ心配だからな…)


のパジャマ姿さえ、他の男に見せるのは嫌だった。


俺も相当、焼きもちやきだな…
自分でも笑ってしまう。


またリビングへ戻ると、ソファに腰を降ろしイライジャへ、「悪かったな…」 と言った。
イライジャは、まだ顔は赤かったが、「い、いや…別に…」 と微笑んで紅茶を飲んでいる。


「そうだ、明日のセリフ、もう入ってる?」
「ああ・…うん、少し…ジョシュは?」
「一応、入れたけど…薬でラリる演技ってどうしたら、それらしく見えるんだ?」 
「ほんとだよね。 どうしようか考えてなかったよ」


と、イライジャも苦笑する。
明日は皆で薬を使って誰が寄生されてるか確認しあうシーンの撮りだった。
薬を吸う演技の後に、ラリったふりをしなくてはならない。
薬なんてやったことがないやつには、その感覚すら分かるはずもなかった。


「でもショーンなら、あのままでいけば軽くOKだよね、きっと」


と、イライジャが笑った。
僕も、「ああ、そうだな!あのテンションでいけばいいんだから」 と笑いながら煙草へと火をつけると軽く吐き出した。
そこへ着替え終わったが寝室から出てきた。


「何笑ってるの?」 


ちゃんとパジャマの上からカーディガンを羽織っていたので僕は安心しながら、


「ああ、ショーンなら、バカのままで演技した方が上手くいくって話だよ?」 


と、歩いて来たを抱き寄せて、頬へキスをした。


「あ…また、ひどいこと言ってる」


と、そう言いながらも笑っている。


「ショーン…セリフ入ってると思う?」


イライジャが、ふと思い出したように言った。


「ああ・…明日は大丈夫だろ?」


呑気に煙草を吸いながら答えるも、イライジャは、


「でもさ…さっき、また彼女と連絡取れないって落ち込んでたしさ…」


と、不安げに僕を見る。
僕も顔をしかめると、「…また?」 と呟いた、その時。
また部屋のチャイムが鳴った。
ドキっとしながら隣にいるを見ると、も少し不安げにドアの方を見ている。
イライジャは、「こんな時間に誰かな…」 と呟いていた。


ソファーを立ち、またドア越しに、「....Whom is it?」と声をかけると、
何だかくぐもった男の声が聞こえ、僕は少しホっとしつつ、ドアを開けた。
すると、そこには情けない顔をしたショーンが立っていて、「ジョシュ〜〜〜!」と言いながら僕へと抱きついてくる。


「うわ!な、何だよ、お前!」


僕は驚いて、ショーンをはがそうとするが、ガッチリと抱きついているので離れない。


「おい、ショーン、どうしたんだよ?!」


男に抱きつかれる趣味はない。
そこで、僕の問いかけに、やっとショーンが口を開いた。


「ジェニファーが…別れようって…さっき電話で〜〜〜!」
「はあ?!」


少々、驚きながらも、「と、とにかく…入れよ…ここじゃ他の部屋に迷惑だし…な?」 と」宥めると、ショーンを部屋の中へと入れる。
イライジャとも顔を見合わせて心配そうに、ショーンを見ていた。
僕は何とかショーンをソファーへと座らせると、紅茶を入れてやり、彼の隣へと座った。


「…で?どうしたって?」


ガックリと頭をたれているショーンの肩を抱いて優しく(!)声をかけた。
ショーンは少しだけ顔を上げると、「それがさ…さっき、やっとジェニファーに電話が通じて・・…」
と、重い口調で話し始めた。


ショーンの話は、こうだ。
何度か電話が繋がらなかったものの、さっき、やっと通じたと思ったら、いきなり彼女に、「別れたいの」と言われた。
ショーンが、「どうして?!」と訊き返すと、
「だって…ショーンが撮影に参加しちゃうと、いつも長い間、会えないし…待ってるのも寂しいの」 と言われ、
「それに…今、他の人と付き合い始めて…」 と最後にトドメを刺されたらしい。


何だか人事のように思えなくて、ショーンが可愛そうになった。
僕だって…撮影に行くたび、を長い間、一人にしてきた。
その間、には寂しい思いをさせてきたのも分かってる。
今後も同じようなことが続いたら、だって…いつか自分の側にいる男を好きになって僕の代わりに隣にいてくれる奴と付き合うかもしれない…。
だから…何だか他人事とは思えなかったのだ。


「そ、それは…つらいよな…。 でもさ…また素敵な人と出会えるよ!な?だから、そんな落ち込むなって…」
「そうだよ、ショーン!僕なんて一年くらい彼女いないんだよ?」


とイライジャも何とか励まそうと、自分のことまで話している。
も心配そうに、「ショーン…元気出して…?元気がないショーンを見るのは悲しいわ?」 と、ショーンの頭を撫でていた(!)
それが少し気にはなったが、今はショーンもつらいんだからと我慢して、


「そうだよ…お前は元気なだけがとりえなんだから・…(!)」 


と慰めるも言葉の中に少々の棘があるのは仕方のない事だった。
すると皆の励ましが嬉しかったのか、ショーンは嬉しそうに顔を上げると、


「皆…ありがとう…!」 


と言って、目の前で自分の頭を撫でてくれていたへと抱きついた…!


「キャ!」 


この、ふいうちには、いくら最近慣れてきた相手とは言え、も驚いて声を出す。
俺は頭で考えるよりも先に、手が出ていた――


ゴン!!!!


「っったぁ!!」


思い切りショーンの頭を、グーで殴って、「離せ!バカキング!!!!」 とショーンの腕をから、はがそうと引っ張った。
イライジャも驚いたのか、ソファーから立ち上がって心配そうに、様子を伺っている。
ショーンは殴られて痛かったのだろう。
意外にもすんなりと、を解放すると、「傷心の俺を殴るなよ…!」 と頭を擦りながら僕に抗議をしてきた。
だが僕の怒りは収まらず、


「お前のどこが傷心なんだ?大事なに抱きつく奴は許さないんだよ!」 


を奪い返し抱きしめながら怒鳴った。
そして、「?大丈夫か?」との頬を両手で包み覗き込むと、は以外にも笑顔で、「うん、平気だよ?」 と微笑んでいる。


僕はこの時、思った。


ああ…きっとはショーンを男として意識してないのかもしれない…だから怖がらないんだな…と…











The heart is given...


It is good handmade of you


A star etc. may not be visible if there is a place which cries


The voice to call only changes to sadness also in when


What by which it comes only proves no ugly me not coming


But it needs...


If it is me whom you cannot touch, since it is the same as what is not, it is...








心を与えて…


貴方の手作りでいい


  泣く場所があるのなら、星など見えなくていい


呼ぶ声はいつだって悲しみに変わるだけ


  こんなにも醜い私をこんなにも証明するだけ


でも必要として…


 貴方が触れない私なら無いのと同じだから……











私はショーンに怒っているジョシュを笑いながら見ていた。
そうやって怒ってくれることが、私には嬉しくて…
ここ暫く、私は凄く怖かったから。
来週にはミネアポリスへと帰らなければならない。
楽しかった日々が急に遠くなるように感じ、ジョシュと暫く離れることが物凄く不安で怖かった。
せっかく今、一緒にいるのに、怖くて怖くて時計の針の音でさえ、聞きたくないと思う。
それに…ジョシュの様子も少し変だった。
過保護が過激になったのもあるが…どこか…態度が以前と少し違うようにも感じる。
相変わらず優しいのだけど…
いつもと違うと不安になってしまう。
さっきも急に私から離れたかと思うと、いきなりプレゼントなんかくれたりする…。
どうしたんだろう?
兄離れをしろということなのだろうか…。


私は小さく溜息をついた。


(やめた…!今、せっかく楽しいのに、こんなこと考えたって落ち込むだけだわ…)


私は気を取り直し、紅茶を飲んだ。
すると今までショーンをイジメてた(!)ジョシュが、私の寂しそうな顔に気づいたのか、「どうした?」 と心配そうに顔を覗き込んできた。
私は少しドキっとしたが、すぐ笑顔をつくると、「ううん…」 と首を振る。


「もしかして・…ショーンのバカウイルスが移ったか?」 


とひどい事を言いつつ、私の頬へとキスをして、「消毒!」と微笑んでくれた。


「おい、ジョシュ!僕がウイルスなんて持ってるわけないだろ?それに何だよ、その"バカウイルス"って…どんな病気だよ!」


と頬を膨らませて怒っている。
ジョシュは無表情のままショーンを見ると目を細めて、「バカになる病気」 と一言言い放った。


「何じゃ、そりゃ!そのままじゃん!あるか、そんな病気!」 


とショーンは苦笑しながら文句を言っている。
イライジャも笑いながら、


「そんな病気、なりたくないよ…ショーン、可愛そうだな…早く治ることを心から祈ってるよ…アーメン!」 


と十字を切った。
私は、二人のショーンへの攻撃がおかしくて思わず吹き出してしまった。


「何だよ、リジーまで!ジョシュの悪魔宗教にでも入ったのか?」
「はあ?誰が悪魔だよ、コラ!」
「ジョシュア・ダニエル・ハートネット!」
「うわ!フルネームで呼ぶな!」 


そう怒鳴るとジョシュはショーンの首を絞めている。
私とイライジャは顔を見合わせると、そっと微笑みあって、


「うるさい二人だよね」
「ほんと…でも仲がいい証拠じゃない?」


と笑った。









、眠いの?」


ちょっと欠伸をした私にジョシュが頭を撫でながら顔を覗き込んで訊いて来た。


「ん…ちょっと…」


あれから散々盛り上がり、今はショーンとイライジャ、ジョシュも何故だかビールを飲み始めて、夜中の1時すぎとなっていた。


「そうか、じゃ、寝るか。 ―おい、が眠いらしいから今日はこの辺でお開き!」


と、二人へ言って、手で帰れとシッシと合図した。
ショーンは少し酔っているのか顔を赤くして、


「ええ〜何だよ…今夜は俺を一人にしないでくれよぉ〜」 


と寂しそうにしている。
それを見て、私は、「あの…先に寝るから、ジョシュ達は、まだ飲んでてもいいよ?」 と言うとジョシュは悲しそうな顔をした。


「俺はと一緒に寝たいんだよ…ショーンならイライジャが添い寝してやればいいさ」


その言葉に私は少し吹きだすと、イライジャも本気で嫌そうな顔をして、


「ええ…僕、ショーンとなんて寝たくないんだけど…。ほら、ショーン行くよ?、眠いんだからさ!」 


とソファーから立ち上がって、グダグダしているショーンの腕を引っ張った。


「分かったよ〜…。あーあ…今夜だけは一人でいたくないよ…」 


一人呟きながらもショーンは渋々立ち上がり、


「じゃ、僕が明日、撮影現場に行かなかったら、首でもつってると思って…」 


と恨めしそうな顔でジョシュに言った。


「ああ、そうなった時は泣いてやるから安心してつってくれ」 
「うわ、ひでぇ…。 ―それでは皆さん…今まで短い間でしたが、お世話になりました…おやすみなさい」 


そう言って頭を下げるとイライジャも笑いながら、そのショーンを引っ張って行く。


「ショーンは僕が部屋まで連れてくよ。じゃおやすみ、ジョシュ、
「おやすみ、リジー」 


も笑いながら手を振った。
ドアが閉まると、途端に五月蝿かった部屋の中がシーンとなる。
ジョシュは息を吐き出すと、「ほんと、あいつは退屈させないな?」 とへ微笑みながら言った。


「でも大丈夫かなぁ…ショーン、あんなに彼女のこと好きなのに…かわいそう…」 


するとジョシュは私の頭を撫でながら、「は優しいな…」 と言って頬へとキスをする。


「さ、寝ようか?もうすぐ2時になるよ」


ジョシュはそう言うと私の手を繋ぎ寝室へと行く。


「先にベッドに入ってて。俺、歯磨いて、部屋少し片付けてくるから。朝起きてビール瓶なんて見たくないし」
「うん、分かった」


私は大人しく先にベッドへと入ると、ジョシュはニッコリして寝室を出て行く。
そっと息を吐き出すと、ベッドサイドにある時計を見た。


(1時35分かぁ…。…また家に帰る日が一日近付いちゃった…)


別に二度と会えなくなるとかじゃないのに…少しの間、会えないからって何でこんなに辛いんだろう。
今まで、毎日のように一緒にいてそれが当たり前になっているから?
ジョシュの温もりがないと眠れなくなるのは、私が弱いだけなの?
ジョシュに触れていてもらわないと、どうしてこんなに心が寒いんだろう…。


さっき…ショーンの彼女の気持ちが痛いほど分かってしまった。
暫く会えなくなって、それを一人、待つのは辛い。
でも彼の仕事のことは分かっているから、寂しいとか、会いたいとか、泣き言も言えなかったんだと思う。
それは我がままになってしまうから―
だから、余計に想いは募る。
寂しくて堪らなくなる。
この痛みを誰かに埋めて欲しくなる。
そして…
そんな時に側に優しく抱きしめてくれる人がいたら…好きになってしまうかもしれない…。


私は…どうなんだろう?
いつかジョシュに会えない寂しさから…他の人を好きになってしまうんだろうか。
…ううん…ありえないわ…。私には…ジョシュしかいない。
ジョシュしかいらない…。


そこへ静かにドアが開いて、ジョシュが入って来た。
そして、そっとベッドへと入ってくる。
私はすぐにジョシュへと抱きついた。


「…どうした?…。寝てなかったのか」
「ん…ジョシュが来るのを待ってたの…」


そう言うとジョシュが私の頬へと優しくキスをして、そっと抱き寄せてくれる。


私はジョシュのその温もりを逃がさないように、ジョシュの胸の中へと顔を埋めた…












…辛そうね…?大丈夫?」


ローラが私の頭を撫でながら優しく微笑む。


「少し…キツイけど…どうしようも出来ないから…」


私も、そっと微笑むと紙コップに入った紅茶を飲んだ。
今はスタジオの裏に住み着いた犬をロ-ラと二人で見に来ていた。


「きっと…ジョシュも寂しいと思うわ…が帰っちゃったら…撮影現場に姿が見えないだけで大騒ぎなんだもの…」


と苦笑しながら、ロ-ラも紅茶を飲んでいる。
私は少し顔が赤くなり、「そ、そうですか?やっぱり最近、過保護度がアップしたかな…」 と笑った。


「ええ、クールなジークの役と正反対だわ」 


とロ-ラも笑う。
そして――


「ねぇ、。"Better Half " の伝説って知ってる?」
「え…?Better Half?」
「ええ」
「いえ…どういう意味なんですか?」 


私は首をかしげた。
するとローラは子犬の頭を撫でながら少しだけ空を見上げた。


「人は…皆、生まれ変わると私は思ってるの。前世が誰にでもあるって…。そして前世で関わった人は何かしらの形で、この世でも縁がある。
家族…恋人…友人…前世で縁の深かった人達は、こういう形で、また近くにいるものだって言われてるわ。
例えば…前世で愛し合った恋人同士が結ばれて…結婚をして…想いを遂げて、一緒に人生を終えた二人は、この世では家族になるの。
親だったり…兄弟だったり…その関係は定かではないけれど、この世でも一番近くにいるのね。
でも時に前世で深く愛し合っていても別れなければならなかった二人は…この世では、どうなると思う?」
「え…どう…なるんですか…?」
「…想いを遂げられなかった二人は…それでも家族になるんだけど、それは血が繋がらなかったり、
遠い親戚として、やっぱり近くにいることが多いんだって」
「…え…それって…」
「神様が前世では結ばれなかった二人をこの世では結ばれるように、そういう形で引き合わせてくれるってことなのかしらね?」


そう言うとロ−ラは優しく微笑んだ。
私はその話を聞いて胸がいっぱいになってくるのを感じていた。


「Better Half....。人間はもともと一つの球体だったのが二つに分かれたものだって言う人もいるわ。
そして…もう一つの分かれた自分…Better Halfを探しながら生きてるって…。
その人に出会うと何か知らずに強く惹かれたりして…それが恋なのかもしれないし…。
人は皆、自分の"Better Half"を探しながら生きてる。もう一度一つになろうとして…
それが近くにいるのか、凄く遠くにいるのか分からないんだけど…
もし出会えたのなら、それは奇跡よね?自分の分身と出逢えたんだもの…」


ローラは少し寂しげな顔で微笑んだ。
私は…知らずに涙が溢れてきた。


自分の分身・… "Better Half..."


「…?どうしたの?」


私は何だか涙が止まらず、次から次から零れていく涙を手で拭う。


「…泣かないで…」


ローラは私を優しく抱きしめると、そっと呟いた。


の…Better Halfが…ジョシュだと私は信じてるわ…」


その言葉に…また涙が一粒、零れた――












「じゃあ…電話するから…」


寂しそうな顔で、ジョシュは私の頬を両手で包むと、そう呟いた。
私は泣きそうになるのを何とか堪えて小さく頷く。


「…ちゃんと寝るようにしろよ?眠れなかったら…夜中でもいいから電話しろ…時差とかあるけど気にしないでかけていいから…」


そう言うと、ジョシュは私をギュと抱きしめる。


今はピッツバーグ国際空港、出発ロビーに、私を見送りにジョシュが来ていた。
事前に監督へ話しておいて許可を得て来てくれたのだ。
他の皆は今朝、ホテルでお別れを言って来た。
ローラやジョーダナ、クレアとも連絡先を交換して今度また会おうと約束をした。
イライジャとも電話番号を交換した。
ショーンは彼女を失った寂しさで涙もろくなったのか、お別れを言うとちょっと涙ぐんでいた。


「今度、ミネアポリスに遊びに行くから」 


そう言って頭を撫でてくれた。 
―その後、ジョシュに文句を言われてたのだけど…


「一人で…飛行機、大丈夫か?」


ジョシュが、まだ心配そうに言っている。
私は心配をかけないように、なるべく明るく、「大丈夫だよ?もう18歳なんだから」 と笑って言うと、


「何歳でも関係ないよ…のことは、いつだって心配だ」 


ジョシュはそう言いながら私の頭に頬を寄せてくる。
それが嬉しくて私はジョシュに抱きついた。
端から見て、私達は、どう見えるんだろう?
別れを惜しんでる恋人同士に見えるんだろうか…


その時―


『11時発…ミネアポリス・セントポール国際空港行きにご搭乗のお客様は…』と場内アナウンスが流れた。


「行かなくちゃ…。ジョシュも体に気をつけて…撮影頑張ってね!」
「ああ…出来るだけ早く終らせて…卒業式に間に合うようにはするから…」
「いいよ…無理しないで。ジョシュは自分の仕事のことを考えてていいから」


私は精一杯の強がりを言った。 
ジョシュに、いつまでも負担をかけたくなかったから。
でもジョシュは少し悲しそうな顔で、私を抱きしめると、「そんなこと…できそうにないよ…」と小さな声で呟く。
私は、ドキっとしてジョシュを見上げた。
すると唇にジョシュの暖かい唇が触れ、キスをされたんだと分かる。
そして、そっと離すと思い切り抱きしめてくれた。
私は堪えてた涙が零れそうになり、慌てて離れると、「じゃ・…私、行くね…」 と微笑み、
寂しげに微笑んでいるジョシュへ手を振って、国際線出発ゲートへと歩き出した。


何度も・…振り返りたい衝動を我慢しながら…





止めどなく襲ってくる寂しさを振り切るように、私は前だけを見て…心はジョシュへと向かいながら…

 

 

 

 

Postscript

やっとアップできましたが…やばげです(苦笑)
かなりスランプでした(汗)
思うように書けなかったので今回はいつもより短めかな?
でも私もジョシュのタトゥー大好きですvvウフv

しかし最近、息抜きしてないなぁ…
DVD見る時間がないので、これを書いてるとき無理やり流してました(笑)
【シャンプー台の向こうに】と【パラサイト】…
これでジョシュを見つつ…(笑)
ああー息抜きしなければ〜〜(涙)


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】