Vol.18...On the way to you...





You may not cry any longer


To the wind which makes noise To cold rain


Thing not collapsing In this hand...






―もう泣かなくていいよ


さわぐ風にも 冷めた雨にも


  くずれないもの この手に…











と気持ちが通じ合った夜、僕らは前のように寄り添うように寝て一緒に朝を迎えた。
今日は二人で実家に行く日だ。
どんな顔で帰ればいいのか分らず、どこか照れくさかった。
だけど両親にとの事を、いつ話すかと考えると少しだけ怖くなる。


もし…もし反対されて引き離されでもしたら…


それが一番怖かった。
に会えなくなる事…それだけが―










「まあ、お帰りなさい、!」
「ただいま、お母さん!」


は僕の腕から一瞬、離れて母さんに抱きついた。
そして次に父さんとも抱き合うと、また僕の腕の中へと戻ってくる。


「お帰り、ジョシュ。または先にジョシュの家に行ったの?」
「ああ、まぁ…さっき…ね」
「そう」


母さんは、それ以上、追及せず僕とに紅茶を出してくれた。


、少し痩せたんじゃない?ちゃんと向こうで食べてるの?」
「え?痩せた?ちゃんと食べてるんだけどな…。やだな…」


は、そう言うと、ちょっと悲しげに自分の胸元を見ている。
その様子に疑問に思って聞いてみた。


「何で嫌なの?女の子は皆、痩せたがるのに…。ま、は痩せすぎだけどな?軽すぎるし」
「も、もう…気にしてること言わないでよ、ジョシュ…」


はそう言って僕をちょとだけ睨む。


「何で、そんな怒るんだよ…?」
「だ、だって…」
「そんな気にすることないだろ?ちょっと痩せてるからって…」
「気にするもん…。それにジョシュが私に、もう少し胸を大きくしないとって言ったんだよ?!」




「「ぶほ…っ」」


「キャ…ジョシュ?!あなたまで!」




紅茶を噴出した父さんと僕に母さんが慌ててタオルをくれた。


「あ、ああサンキュ…」
「すまない…」


僕と父さんは何だか気まずい顔で顔を拭きつつ、互いに見合った。


「もぅ…二人して何で、そんな驚くの?」
「お、おい、が変なこと言うから…っ」
「変なことじゃないもの…。それにジョシュが…」
「おい、ジョシュ!お前、に、そんなセクハラ発言したのか?!」


父さんが何だか怖い顔で僕を睨んでくる。


「ちょ、ちょっと待ってよ、父さん…。俺は別に何も…」
「嘘!言ったじゃないっ」
「えぇ?い、いつ?!」
「だから…私がニューヨークに行く前…。ジョシュに初めて大学に行くって言った時に…」
「そ、そんな昔のことなんて忘れたよ…」


僕は困ってしまって頭をかいた。
するとが悲しげな顔で俯く。


「わ、私はずっと気にしてたんだもの…」
「え?お、おい…、泣くなってば…」


僕は慌ててを抱き寄せた。
その間も父さんは怖い顔で僕を睨んでくるし、ほんと参ったよ…


「おい、ジョシュ…。お前、妹の気にすることを言ったらダメじゃないか!まぁ何だ…大きいに越した事はないけどもだな…」
「は?」
「い、いや…何でもない!そ、それよりだ…。?そんなジョシュの言う事は気にするな…な?自分の好きな人に言われたならともかくだな…
兄貴の言う事なんて気にすることはない。きっと細身のお前が好きだって言ってくれる男性が、いつか現れるから…な?」


僕は父さんの慰め方にクラっときた。
も何だかピタっと泣き止んで顔を赤くしている。


「そ、そうだよ。は細くて可愛いんだから、気にするなって…」


と何だか僕まで父さんに便乗してしまった。


「お、お前が言うな、お前が!気にする事を言ったのはお前だろう?全く…」


父さんは汗を拭きながらブツブツ文句を言っている。
きっと娘と、こう言う話をするのが初めてで照れくさいのだろう。
母さんも、さっきからクスクスと笑ってばかりだ。


「まぁまぁ…うちの男性陣はダメね?ほんとデリカシーないんだから…。
女の子は皆、体の事で色々な悩みを持ってるものよ?それをからかったりしちゃダメ。分った?ジョシュ」


(げ…俺かよ…っ)


母さんの言葉に更に眩暈を感じた。


「あ、あの…さ…。ちょっと部屋で休んでくるから…」


僕はそう言ってソファーから立ち上がった。


「そう?じゃあ、夕飯の時にでも呼ぶわ。今日は一日遅れで、の誕生日を祝わないとね?」


母さんがニコニコしながら言った。
そこへ弟のジョーの母さんを呼ぶ声が聞こえた。


「あらら…昼寝から起きちゃったみたい」


母さんは苦笑しながら弟の部屋まで走って行く。
父さんは何だか呑気にテレビを見始めた。
それを確認してからの手をギュっと握ると、はドキっとした顔で僕を見上げる。


"部 屋 に 行 こ う…"


声には出さず口だけ動かして、そう言うと、も嬉しそうに微笑んだ。
そして僕の手を一度離すと自分のバッグを持って、父さんに声をかける。


「お父さん…私も部屋で休んでるね?ちょっと移動で疲れちゃったの…」
「ん?ああ、そうか?そう言えば顔色も良くないな…。じゃ少し横になりなさい。夕方には起こしてあげるよ」
「うん、ありがとう。じゃ、上に行ってるね?」


はそう言って、すでに階段のとこまで来ていた僕の方に駆け寄ってきた。
父さんはすでにテレビのニュースを見始めて僕らの方に背中を向けている。
それを見つつ、二人で二階に上がった。
僕の部屋のドアを開けてを先に入れると静かにドアを閉め、一応鍵をかける。






「はぁ〜ちょっと緊張しちゃ…キャ…っ」


そう言って振向いたを抱き寄せ構わず力いっぱい抱きしめる。


「ジョシュ…?」
「ん?」
「どう…したの?」
「どうもしないよ?を思い切り抱きしめたっただけ…」
「……ぇ…?」
「それと…」
「それ…と…?」


そこで言葉を切ると僕を見上げてくるの唇を優しく塞いだ。


「ん…っ」


は驚いたように目を見開いたけど、ゆっくりと目を閉じていく。
体が少しだけ震えてるのが分って、そんなが可愛くて愛しさが溢れてくる。
今まで我慢してた分を埋めるかのようにの腰を更に抱き寄せて少しづつキスを深くしていった。


「んぅ…ん…」


は苦しげに眉間を寄せて僕にしがみ付いてくる。
片目を開けてそれを確認するとゆっくりの唇を解放した。


「あ…っと…大丈夫?」


は体の力が抜けたのか唇を離した途端、僕に寄りかかってしまって慌てて支えてあげた。


「ご、ごめんなさい…」


は真っ赤になって俯いてしまい、僕はちょっと微笑んだ。
こんなソフトキスでも、ほわんとしているが可愛くて僕は彼女の赤くなった頬にも、チュっとキスをした。
するとが恥ずかしそうに上目遣いで見上げてくる。
僕はをベッドの上に座らせると今度は優しく抱き寄せた。


「そんな顔されたら、またキスしちゃうよ?今度はもっと濃厚なの」
「…えっ?!」


僕が苦笑交じりで、そう言うとが体を固くしたのが分った。


「そんな緊張しなくても…。嘘だよ?」


僕はの顔を覗き込んで頬にキスをすると、は真っ赤な顔で僕を睨んだ。


「も、もう…ジョシュの意地悪…」
「意地悪って…そんなつもりないけどさ…。だって、さっき変なこと言うから、俺、母さんに睨まれちゃったよ?」
「え?」
「ほら…胸がどうのって話?」
「あ…」


苦笑しながらの顔をもう一度覗き込むと、は慌てて視線を反らした。


「あれ…は…つい…」
「そんなに気にしてたの?」
「え?!」
「だから…」


僕も何だか照れくさくなって赤くなった顔を見られないようにの頭をギュっと抱きしめた。
は腕の中で少し動くと、


「き、気にしてた…もん…。ジョシュって大きい人が好きなのかなぁ…って…」
「えっ?!そ、そんなこと言ってないだろ?あ、あれはジョークだよ…。本気で言ったわけじゃ…」
「でも…私、最近痩せたし…もっと小さくなったらジョシュ…嫌いにならない…?」
「…は?」


の言ってる意味が一瞬、分からず僕は変な声を出してしまった。


「な、何が嫌いになるって?」


少し体を放して顔を見ようとするといきなりが顔を上げた。
顔は真っ赤だが、その目は真剣だ。


「だ、だから…私の…こと…」


恥ずかしそうに、そう聞いてくるに僕は眩暈がした。


「あ、あの……?俺が胸の大きさでを嫌いになると思う…?」
「だ、だって…」
「いったい何年、を見てきたと思ってるんだよ…。そんな事で嫌いにならないよ?
って言うか俺はがどんなになっても嫌いにならない。 ―もっと好きになる事はあってもね?」


僕がそう言って微笑むと、の大きな瞳に涙が浮かんできて僕は慌てて頭を撫でた。


「な、泣くなよ…」
「だって…ジョシュの…前の彼女…凄くスタイル良かったし…。あんな人が好きなのかなって…」
「え?」


突然、エレンの話をされて僕は驚いた。


、まだ彼女のこと気にしてたのか…)


僕はちょっと息をつくと、の頬を両手で包んだ。


…彼女のことは気にするなって…。僕が好きなのは…しかいないよ?」
「ほんと?」


そう聞いてくるが可愛くて愛しさが溢れてくる。
僕の腕にスッポリと入れてギュっと抱きしめると、頭にキスをして、「ほんと! ―愛してるよ?」と言って額にもキスをした。
するともギュゥっと僕に抱きついてくる。
その温もりが愛しくて僕は少し体を離し、の頬に口付けると、はゆっくりと顔をあげた。
そのまま自分の気持ちに逆らわず、の小さな唇にも口付け、ペロっと舐めた。
はビクっとして僕にしがみ付いてくるから、更に優しく口付けて何度も離しては、また口付ける。
唇を擦るように愛撫しながら時折、軽く唇を噛むと、の鼻から甘い声が洩れてきた。


「ん…っ」


その声を聞くと体が熱くなって更に深い交わりを求めたくなったが、そうなると歯止めが聞かなくなる。
そう思って僕は名残惜しいと思いながら、最後に、チュっと音を立てての唇を解放した。
はすでにトロンとした顔でゆっくりと目を開けて僕を見上げてくるから思わずドキっとしてしまう。


ここが実家で良かった…
もし自分の家だったら…このまま押し倒してたかも…っ


僕はちょっと視線を泳がせると、の背中にまわした腕を離した。


…?眠くなっちゃった…?」


がまた目を閉じて僕に寄りかかってきたから、そう声をかけた。


「ん…ちょっと…」


は目を擦りながら小さく頷く。
そんなが可愛くて思わず顔が綻んだ。


「じゃあ、寝ていいよ?夕方には起こしてあげるから…」
「ん…でも…ここで寝たら、お母さんたちに…」
「大丈夫だよ…俺が起こしてあげるから…寝ていいよ?それとも自分の部屋で寝る?」
「……ジョシュの傍がいい…」


小さく呟くが愛しくて、頬に軽くキスをすると、そっと彼女をベッドへ寝かせてあげた。
肩まで布団をかけると僕に擦り寄ってくる。


「ん?どうしたの?」
「ジョシュ、どこにも行かない…?」
「行かないよ…?ここにいるから…心配しないで寝ていいよ?」
「ん…」


は目を瞑ったまま、そう頷くと僕の手をキュっと握って、少しすると小さな寝息を立て始めた。
暫くその寝顔を見ていたが、僕も少しだけ眠くなっての隣に潜り込む。
そのままを腕の中へ抱き寄せ、目を瞑った。


部屋の鍵はかけたよな…
ま、見付かっても別に何とでも誤魔化せるか…




僕はそんな事を考えながらも、すぐに眠りに落ちていった―













It does not get damaged any longer



It sleeps in this sea. Light is held



Connected warmth Since it does not detach...






―もう傷つかないように


この海でねむる 光りを抱いて


  つないだぬくもり 離さないでいるから…








私は少しづつ意識が戻ってくるのを感じて静かに目を開けた。
部屋の中は少し薄暗くて夕方だと分る。
目の前にはジョシュの大きな胸があって一瞬ドキっとしたが、気持ち良さそうに寝ている顔を見て笑顔になった。


(何だ…結局ジョシュも寝ちゃったんだ…)


私はちょっとだけ顔を上げて時計を見ると、午後4時半になるとこだった。


そろそろ、お母さん起こしに来るかなぁ…
でも、まだ夕飯には早いか…。


そんな事を考えながらジョシュの体温を感じてホっとする。
この腕の中でずっと眠りたいと思った。
私はジョシュの唇に顔を近づけてチュっと軽くキスをした。
その時、ジョシュの瞼がかすかに動き、「ん…」 と寝返りを打とうとして体が動く。


「わ…」


ジョシュの体が私に覆い被さってきて無意識なのかジョシュは私の体を更に抱き寄せると私の頭に頬を寄せてくる。
私は恥ずかしくなり少し体を動かした。
その時、ジョシュの目がパチっと開いてドキっとする。


「あれ…?…?」


ジョシュが少しだけ寝ぼけたように私を見た。


「お、おはよ…」
「ん…おはよ…。もぅ起きてた…?」
「う、うん…ついさっき…」
「そっか…」


ジョシュはそう言うと私の体をスッポリと腕の中に納めギュっとしてくる。


「ジョ…ジョシュ…?」
「……ん?」
「起きないの…?」
「……ん〜…もう少しこのままがいい…」
「で、でも…お母さん来たら…」
「……別に…いいよ…」
「え…?」


私はジョシュの言葉に少しドキっとして顔を少し上げた。
ジョシュは目を瞑ったまま、「別に…見付かってもいい…。話す手間が省けるし…」と呟いた。


「ジョシュ…」


私はドキドキしてきて胸が苦しくなった。
するとジョシュは目を瞑ったままで私の頬にキスをしてくる。


は…?」
「ぇ…え?」
「バレるの…怖い…?」
「わ、私…は…ずっと騙すのは…嫌だけど…」
「……俺もだよ?」
「ジョシュ…」


ジョシュは、そう言うと、そっと目を開けて私を見つめた。
至近距離で目が合い、顔が赤くなってしまう。
ちょっと目を伏せると、額に温もりを感じてキスされたんだと分かる。
少しドキっとして目をキュっと瞑った。


…」
「…え?」


名を呼ばれて私は、また目を開けるとジョシュの方へ顔を上げた。


が…大学、卒業したら…父さんと母さんに、俺達のこと話そう?」


ジョシュは、そう言って私の鼻先にチュっとキスをしてくれる。
その感触がくすぐったいのと恥ずかしいので顔が熱くなったが、ジョシュの言葉が嬉しくて小さく頷いた。
それでも少しの不安もよぎる。


「で、でも…反対されるよね…?きっと…」


私がそう呟くと、ジョシュは優しく微笑んで、また鼻先にチュっとキスすると、


「もし反対されても…俺は諦めないから…。を手放す気はないよ?」


と言って今度は少し起き上がると、ゆっくり顔を近づけて、そのまま私の唇を塞ぐ。
ジョシュは何度も啄ばむように私に口付けながら、時々唇を舐めたり軽く噛んだりして愛撫してくれる。
私はその感触を唇に感じるたびにドキっとして心臓が跳ね上がるのを感じた。
前とは違う、その熱いキスに、まだ慣れないからか顔が熱くなってくる。
でも、そのうち気持ち良くなってきて胸の奥…もっと深いところが熱くなって体の力が抜けてきてしまう。
ジョシュはそれに気付いたのか少し押し付けるように口付けながら唇を私の頬、耳と這わせて、そのまま首筋の辺りに顔を埋めてきた。


「…んっ」


耳の下辺りの首筋にジョシュの唇を感じて体がビクっとなった。
それにはジョシュも少し顔を上げたが私は恥ずかしさから目をギュっと瞑ってジョシュの胸元を掴んだ。
するとジョシュは、また首筋に顔を埋めて、チュっとキスをしてきて私はゾクっとしたものが体を走った。
ジョシュはそのまま首筋に何度もキスをしながら、どんどん唇を下げて、鎖骨の辺りにも、チュっと口付けた…と思った瞬間、
そのもう少し下の辺りにチクリとした痛みが走った。


「ん…ジョシュ…?」


私が思わず目を開けるとジョシュは顔を上げて少し強引に私の唇を塞いで、そのまま求めるようにキスをしてくる。


「んん…ぅっ」


私は驚いたが鼻から抜ける自分の声が恥ずかしくてジョシュの胸元をギュっと強く掴んでしまった。




その時―









「ジョシュ〜?!起きてる〜?」


階段の下で、お母さんの声が聞こえてきた。
私はその声でドキっと心臓が跳ね上がる。
でもジョシュは、ゆっくりと名残惜しげに、チュッ…と音を立て私の唇を解放すると、


「残念…タイムアウトだな?」


と呟き、最後にまたチュっとキスをして体を起こした。
私はすでに顔が真っ赤で恥ずかしくて慌てて横を向くと、ジョシュは、ちょっと微笑みながら私の頭をクシャっと撫でる。
そしてベッドから下りてドアを開けた。




「起きてるよ…っ。何?!」
「あのね、シャンパンとワイン買って来てほしいの!父さん、寝ちゃってて…」
「OK!今、下りる!」


ジョシュは、そう言ってからドアを閉めると、ベッドの方へ歩いて来た。


「だってさ?ちょっと買い物行ってくる」


体を起こして見上げた私にジョシュはそう言って微笑むとベッドの端に腰をかけ、そのまま優しく私を抱き寄せる。
そして耳元で囁いた。


「もっととキスしてたかったけど…呼ばれて良かったかな?」
「…え…?」


私は意味が分からず顔を上げると、チュっとキスをされた。


「あのままにキスしてたら、俺、理性飛びそうだったからさ?」


そう言ってジョシュは少し笑うと、真っ赤になった私の頬にもキスをして立ち上がった。
私は恥ずかしくて何かを言いかけたけど言葉にならない。
ジョシュはコートを手に持つと、私の方に振向いて、「買い物行ってくるけど、、何か欲しいものある?」と聞いた。
私はちょっと考えてすぐ思いついた事を言った。


「……ジョシュ?」
「…え?」


私がニコっと微笑んで、そう言えばジョシュがドキっとした顔をして頬が薄っすらと赤くなったのが分かった。
でも嬉しそうに微笑むと私の手を掴んで引っ張っりギュっと抱きしめる。


「じゃあ…一緒に行く…?」
「…うん」


私が頷くと、ジョシュは少し体を離して額にキスをした。
そして、ちょっと微笑むと、「じゃあ、行こう」と私のコートをとってくれる。
私がコートのボタンを止めながらドアの前で待ってるジョシュのとこまで行くとグイっと肩を抱き寄せられて顔を上げた。
するとジョシュはちょっと微笑んで、


「さっき言ってたけど…俺はもうのものだから欲しがる必要はないよ?」


と言って軽く頬にキスをした。


その言葉に、今度は私の顔が赤くなってしまった――
















「じゃあ、二十歳の誕生日おめでとう!
「ありがとう」


はシャンパンのグラスを持って、そう言うと、父さんが、「乾杯!」 と言ってグラスをチンと当てた。
そして一気にシャンパンを飲み干し、「うん、これは上手いな!ジョシュが選んだのか?」などと言って笑っている。
因みに、まだ5歳のジョーは大人しくオレンジジュースを飲んでいた。


「父さん、一気に飲むなよ。酔っちゃうぞ?」
「何言ってる。たかが一杯くらい一気したからって酔いはしないぞ?…ヒック」


言ってる傍から父さんの顔が赤い。
僕は苦笑しながら、そのシャンパンを飲むと、がケーキの蝋燭を吹き消した。


「おめでとう、
「…ありがと」

僕がそう声をかけると嬉しそうに微笑んだ。
そこに母さんが一度奥に引っ込み、また戻ってくる。
手には大きな箱を持っていてそれをに差し出した。


「はい、お父さんと私から…誕生日プレゼント」
「あ…ありがとう…」


は笑顔で、それを受け取ると、その包みの紋様を見て、「え?これ…ヴィトン?!開けていい?」と聞いた。
それには父さんもニコニコしながら、「ああ、開けてみろ」との頭を軽く撫でた。
はその箱の包みをとり蓋を開けた。


「わぁ…可愛いバッグ!」


はバッグを箱から出すと嬉しそうに顔を上げた。
父さんは笑いながら、


「まあ、二十歳になったし大学生なんだから、そういうバッグも揃えていった方がいいだろう?」


と言ってシャンパンを飲んでいる。


「うん、嬉しい!ありがとう!お父さん、お母さん」


母さんもちょっと微笑むとキッチンに行って、の好きなモッツァレラチーズとハムのパニーニを運んで来た。


「さあ、じゃ食事にしましょ?」
「わ、お母さんのパニーニ!これ食べたかったの」

は嬉しそうに、そう言うと早速食べ始めた。
母さんも嬉しそうだ。

「あ、ジョシュの好きなマルガリータもあるわよ?」
「ああ、もらうよ」

僕は母さんの切り分けたピザを受け取り、一口食べて、「やっぱ母さんのピザが一番美味しいかな?」と言った。


「どうせジョシュは宅配ばかり頼んでるんでしょ?」
「まあ、そうかな?だって生地からは作れないだろ?」
「それもそうね?じゃ、食べたくなったら帰って来なさい」
「はいはい」


僕は笑いながら最後の一口を口に入れると、チラっとを見た。
猫舌のは、熱いのか、ふぅ〜っと吹きながら母さん特製のラザニアを食べている。
それを見て、僕はちょっと笑ってしまった。


あんな目の前に料理並べちゃって全部食べられるのかな…
それを見てジョーまでがマネして口の中に、いっぱいチキンを頬張ってるし…


「おい、ジョー。そんな口に入れたら喉詰まるぞ?」


僕が笑いながら声をかけると、ジョーは、「エヘへ」 と笑ってジュースで流し込んでいる。


「うげ…お前、よくジュースとチキン、一緒に飲めるな…」


僕が苦笑すると、母さんも呆れた顔でジョーを見ている。


「この子、いっつもなのよ?」
「ああ、でもジョシュも子供の頃はそうだったぞ?」
「え?!」


父さんに、いきなり言われて僕は顔が赤くなった。


「そ、そうだったっけ?」
「ああ、俺がよく注意したものだ。でも、なかなか直らなかった」
「俺、よく覚えてないかも…」
「まあ…そうかもしれないな?あ、でもな、が来てから、それがなくなった気がするな…」
「「え?」」


父さんの言葉に、僕とが同時に驚いて、互いに顔を見合わせた。
父さんは昔を思い出すように、口を開いた。


が…ここへ引越してきて初めて皆で夕食を食べる時、ジョシュはの世話ばかりしていて、
飲み物にまで手が回らなかったんだろうな?」
「そ、そうだった?」


僕は何だか照れくさくて視線を反らした。
も、どことなく恥ずかしそうだ。


「ああ、がちょっと零したりしたら、お前がサっと拭いて上げて終いには何だったかな…何か食べさせてやってたんだが…」


そう言って父さんが首をかしげると母さんが顔を上げた。


「そうそう!あれよ、グラタン!」
「おぉ、グラタンだったな!」


二人して思い出したことに喜んでいる。


「グラタン…?」


僕が聞き返すと、母さんが笑顔で僕とを交互に見た。


「ええ。あの日…皆で初めて食事するし…と思って、ジョシュに好物を聞いたの。そしたらの好物でいいって言ってくれて…
凄く優しい子だなって思ったんだけど…食事中もの面倒見てくれるし、が猫舌なのを知ると、ジョシュが熱いグラタンを
ふぅって吹いて、に食べさせてくれたのよ。
それを見て私は、"ああ、こんな優しい子が息子になるなら、きっと大丈夫…。上手くやっていける"って思ったのよ?」
「そ、そう…」


僕は母さんの優しい笑顔にドキっとして頭をかいた。


「ジョシュは、あの頃からには特別優しかったわね?今も変わらないし。ほんとにの事を愛してくれて…」


僕は母さんの言葉に、ドキっとした。
も慌てて顔を上げると、僕の顔を見あげて来る。
母さんの言う、"愛してくれてる"とは兄が妹を…って意味合いだとは分かってるけど、さすがに動揺してしまう。
特に、と気持ちを伝え合ってからは…


「どうしたの?二人して赤い顔して…」
「「えっ?!」」
「ああ、シャンパンで酔っちゃった?」


母さんは呑気に笑っている。
僕は無理に笑顔を作ると、「ああ、でもワインもあるから飲まないとね?」と言って椅子から立ち上がった。
キッチンへ行って皆のワイングラスを出して、ワインの栓を抜いてると、そこにが入って来た。


「ジョシュ、運ぶの手伝う」
「ああ、サンキュ。じゃ、そのグラス頼むよ」
「うん」


は笑顔で頷くと4人分のグラスを持って歩いて行きかけた。


…」
「え?」


僕はを呼び止め彼女が振向いた時、素早く唇に口付けてすぐに離した。


「ジョ…ジョシュ…あの…んっ」


もう一度、今度はの腰を軽く抱き寄せて手に持ってるグラスを落とさない程度に少しだけ深く口付ける。
気持ちが満たされる頃にそっと唇を離して、最後に軽くチュっとキスをした。
気付けばは真っ赤な顔で僕を見上げている。


「も、もぅ…母さん来たら、どぅするの…?」


は恥ずかしいのと見付かったら…と不安なのか困った顔で口を尖らせた。
僕はちょっと苦笑して、「ごめん。と二人きりになると我慢出来なくてさ?」とちょっと舌を出した。
それにはも、ますます顔を赤くして、「し、知らないっ」と言うとダイニングへと戻って行った。
僕も笑いを我慢したまま、それに続く。


「お待たせ。はい、ワイン」
「おぉ、ありがとう。上手そうなワインだな?どこのだ?」
「これはの好きなスペインワインだよ?」
「何?…お前、二十歳になる前から飲んでたのか?」


父さんの目がキラリと光った。
椅子に座ったはドキッとした顔で僕を見るが、僕は苦笑しながら父さんの肩を叩いた。


「よく言うよ。クリスマスとかには父さんだって飲ませてただろ?」
「そ、それはそうだが…。まあ、いいか…。こうして無事に成人になったんだから…」


父さんも、そう言って苦笑いしている。
僕はを見て軽くウインクするともペロッと舌を出した。
そして父さんにワインを注いで貰いながら嬉しそうに微笑んでいる。


それを見て、この仲のいい家族が僕達の関係のせいで壊れなければいいな…と、ふとそう思った。


僕がを妹としてではなく、一人の女性として愛していると分かれば…父さんは母さんに申し訳ないと思うんじゃないか…
何となく、そう考えてドキっとした。
でも…仕方ない…。


この気持ちはもう…止められないし、嘘もつけない。


が大学を卒業して、ここミネソタに戻って来たら…二人に本当の事を話そう…




僕はそう思いながら、父さんの注いでくれたワインを口に運んだ―














コンコン…


私はお風呂から出ると父さんと母さんが寝室に入ったのを確認してからジョシュの部屋をノックした。
すぐにドアが開いて、ジョシュの優しい笑顔が視界に入る。


「二人、寝ちゃった?」
「うん」


ジョシュは私の手を引っ張って部屋へと入れるとすぐに抱きしめてくれた。


、いい匂い…」
「ジョシュもだよ?同じシャンプーの匂いがする」


そう言って顔を上げるとジョシュが額にキスをしてくれた。


「まだ、顔が熱いな…。ワイン飲みすぎただろ?」
「ん…。ちょっとだけ…」

私がそう言ってジョシュの胸に顔を埋めると、いきなり抱き上げられた。


「ひゃ…っ」


ジョシュはちょっと微笑むと私を抱いたままベッドに腰をかけて膝に私を座らせた。
そして背中に腕をまわして落ちないように固定してくれる。


「ジョシュ…?」
「ん?」
「今夜も一緒に寝ていい?朝、ちゃんと戻るから…」
「ああ、いいよ?朝は俺が起こしてあげる」
「うん…」


私が嬉しそうに頷くと、ジョシュもニコっと笑って私の唇にチュっとキスをした。
そして私の体を少し抱き寄せ、首筋にも口付けてくる。


「ん…ジョシュ…?」


首に感じる刺激が恥ずかしくて体を少し動かしたがジョシュは更に私を抱き寄せ、反対側の首筋にも唇を這わせる。


「ん…っ」


感じた事のない刺激を感じたからか体もさっきよりビクっと跳ね上がった。
ジョシュはそのまま唇を下のほうへ這わせると、私のパジャマの一番上のボタンを一つだけ外し、そこにもキスをしてくる。


「ん…ジョ…シュ?ぃ…っ」


チクっとした刺激を感じてドキっとした。
するとジョシュが顔を上げてもう一度私の唇を優しく塞いできた。
私はしがみついてた腕の力が抜けそうになる。
ジョシュはキスをしながら、そっと私をベッドへ寝かせると、そのままゆっくり覆い被さってきた。


「ん…ゃ…」


ジョシュの体の重みを感じて少し怖くなり、服をギュっと掴んでしまう。
それに気付いたのかジョシュは私の唇を軽く舐めると、チュっと名残惜しげに離して、額にコツンと自分の額をつけてきた。


「何もしないよ…?」
「…ぇ?」


その言葉にドキっとして顔を上げると優しい瞳と目が合い顔が赤くなる。


、今少し体固くしただろ? ―怖かった?」
「…う、うん…ちょっと…だけ…。ごめんなさい…」
「何で謝るの?」


ジョシュは驚いた顔で私を見つめた。
私は顔が真っ赤になっていくのが分かり、少し視線を反らすと、


「あ、あの…だって…怖いなんて…思っちゃダメだよね…?」


と言って、チラっとジョシュを見た。
するとジョシュは苦笑しながら、首を振ると私の額にそっとキスをして、


「そんな事ないよ?は女の子なんだから…怖いって思うのも当然だしね?」


と言った。
そして、「でも今は何もする気はないから安心して寝ていいよ」と言うと、今度は頬にチュっと口付ける。
私はその言葉に首をかしげると、ジョシュは困ったように笑った。


「俺は…を愛してるけど…に何かするのは父さんと母さんに俺達の事を認めて貰ってからにしたいんだ」
「え?」


その言葉にドキっと心臓が跳ね上がった。
ジョシュも少し恥ずかしいのか視線を反らすと、


「今は…こうして傍にいてくれるだけで俺は幸せだよ?」


と呟き、私の隣に寝転がって優しく見つめてくる。
私はその言葉が嬉しくて自分からジョシュの胸の中に顔を埋めた。


「ジョシュ…」
「ん?」
「私も…ジョシュが傍にいてくれるだけで幸せだよ?」
「ほんとに?」
「うん…。 ―それにキスされると、もっと幸せ…」
「…え?」
「ジョシュにキスされると…胸の奥があったかくなるの。凄く幸せな気持ちになる…」
…」


私の言葉にジョシュが驚いたように体を離して私の顔を覗き込んだ。
そのジョシュの頬が薄っすらと赤くなっている。
私はちょっと微笑むと照れくさいのを我慢して自分からジョシュの唇にチュっとキスをした。


「おやすみのキス…。 ジョシュからもしてくれる?」


少し恥ずかしいのを我慢してそう呟くと、ジョシュも恥ずかしいのか一瞬視線を反らした。
でも、すぐ唇にジョシュの温もりを感じて私は心が満たされていく。
その温もりは、すぐ離れたけど、またすぐに感じる。
何度もくり返されるキスに、私は体の力が抜けていった。
ジョシュは私を抱き寄せて少しづつ口付ける時間も長くなり、私はだんだん朦朧としてくる。


ジョシュが唇を離すころ、私は半分、眠りの中にいた。




…愛してるよ…。 ―おやすみ」







意識を手放す前に、かすかにジョシュの声が聞こえた気がした―








 

Postscript

ちょうど一ヶ月ぶりの更新です〜うひゃ〜^^;
他の連載でいっぱい、いっぱいでした(汗)
そろそろ、このお話も残り少なくなってまいりました。
ラブラブな兄妹の運命はいかにぃ〜…(楽しんでないか?)(笑)


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】