Vol.19...A sweet heart...





I will give you everything


There's nothing in this world


I wouldn't do


To insure your happiness


I cherish every part of you...





―君のためなら


どんなことでもしてみせる


君が幸せでいられように


君の全てを慈しむ…










「え…っ。一緒に住む…?!」


リジーは大きな瞳を更に大きくして驚いた。
僕は煙草に火をつけると、ちょっと苦笑して、「やっぱ驚くか…」と呟いた。
リジーは口をぽかんと開けたまま、まだ僕の顔を見ていたがハっと我に返り目の前のビールを一気に飲み干した。


「お、驚いたって言うか…。いつの間に二人は、そんな事になってたのさ?」


リジーは少し目を細めて僕を見てくる。


今日は仕事でニューヨークに来ていた。
そこでニューヨークでロケをしていたリジーに連絡して久々に一緒に飲むことにした。
何となく思い出話なんかしながら、少し酔いも回ってきた頃、僕はとの事をリジーに話した…というよりは相談しようと思ったというところか。


「いつの間にって…。何となく…かな?ずっと妹として見てなかったって気付いただけだよ?も同じ気持ちだった」
「そう…。でも…僕は知ってたよ…?」
「えっ?!し、知ってたって?!」


今度は僕が驚く番だった。
煙草の煙が変なとこに入りそうになって咽そうになったほどだ。
だがリジーは、そんな僕を見て苦笑した。


「誰だって気付くと思うよ?あのロケで、ずっと二人を見てたんだ。僕は…がジョシュの事を好きなのは気付いてたしね」
「嘘だろ…?いつ?」
「いつって…ほんと撮影しだして…半ば過ぎかな…?ほら、ジョシュの前の恋人が来たとかで騒いでた事があっただろ?あの辺り」


リジーの話を聞いて僕は思い切り息を吐き出した。


「何だよ…。気付かなかったのは俺だけか?」
「まあ…そういうこと。案外、ジョシュも鈍感だよね?」


リジーは、そんな事を言ってクスクス笑っている。


「で?いつ一緒に住むの?」
「ん?ああ…。が大学卒業したらってとこかな?」
「そっか。まあ、あと2年残ってるもんな…。でも、それまで待てるの?」


リジーが、からかうように僕を見てきた。
僕はちょっと肩を竦めて、


「待たないと仕方ないだろ?どっちみち遠距離なんだし…親にだって、ちゃんと話さないといけないんだからさ」
「まあ、そうだけど…。親は…反対しそう?」
「さあ…どうだろうな…。驚く事だけは確かだけど…一応、兄妹なんだし反対はされるかも…」


僕はちょっと息をついてビールを飲んだ。
少し温くなっていて気の抜けた味がする。


「すみません。ビール、もう一本」


店員に声をかけると、すぐに新しいビールを持ってきてくれた。


「ありがとう。 ―リジーは?」
「ああ、じゃ僕ももらおうかな?」
「畏まりました」


店員は、そう言ってリジーにもビールを運んでくる。


「でもさ…。もし反対されたら…どうするの?」


ビールを受け取り、リジーは一口飲むと、そんな事を聞いてきた。
僕は一瞬、考えたが軽く首を振った。


「どうするも何も…僕はを手放す気はないんだ。何とか説得してみるよ?」
「そ、そっか…」


何だかリジーは頬を赤くして煙草に火をつけている。


「何でリジーが赤くなるんだよ」


僕は苦笑して軽く頭を小突くとリジーは口を尖らせた。


「痛いなぁ…。だって、そんなハッキリ言うから…。一応、解かってたとは言え、僕だって二人の事は兄妹として見て来たんだし…照れるだろ?」
「はいはい。でも本心なんだから仕方ない」
「ぅわ、ヌケヌケと言っちゃう?」


リジーは苦笑しながら僕をチラっと見ると、「僕も…のこと…好きだったんだけどな…」と言い出して驚いた。


「え…?好きだったって…?」
「そんな顔しないでよ。別に告白しようとも思ってなかったしさ。これからだって言う気もない。友達として付き合ってくよ?」


僕はリジーの言葉に唖然とした。


「そんな…いつから…?」
「ん〜。そうだなぁ…がジョシュの事で悩んでるのを見てるうちに…何となく…かな?放っておけなくてさ?」
「リジィ…」
「あ〜もう。だから気にしないでってば。僕はほんと二人が上手くいって嬉しいんだからさ」


リジーはそう言って僕の背中をバンっと叩いた。


「…サンキュ。リジー」
「いいって。それより早く両親に話して許してもらえよ?」
「ああ。そうだな…」


素直にリジーの気持ちが嬉しかった。


「あ、そう言えば…は?まだ休みだろ?実家にいるの?」
「ああ。休みが終るまでは実家にいるよ。俺もミネソタで撮影してるしさ」
「そっか。じゃあ、暫くは一緒にいれるんだ。良かったね」
「うん。俺も明日、すぐミネソタまで帰るよ。その前にリジーに会っておきたくてさ」
「あ〜ちょうど良かったよ。ロケもそろそろ終るから僕も来週にはロスに帰るんだ」
「そっか。ま、じゃあ今度はロスで会えるな。俺も今の撮影が終ればロスで仕事だし」
「そうなんだ。ジョシュも忙しいよね?期待の若手だからかな?」
「からかうなよ。自分だって忙しいだろ?」


僕とリジーはそう言いあって苦笑するとビールの瓶をチンと当てて乾杯した。














空港に降り立ち、僕はタクシーで、すぐに自分の家に向かった。
ニューヨークから朝一の飛行機で飛んできたので多少眠かったが、が僕の家で待ってると言うので早く会いたかった。


「あ、ここでいいです」


運転手に、そう言って支払いを済ませると、僕は急いで車を降りた。
時計を見ると昼に近い。
は、もう来てるだろうか。
一応、玄関まで行き、チャイムを鳴らしてみる。
すると、すぐドアが開いてが笑顔で顔を出した。


「お帰りなさい!」
「ただいまっ」


僕がそう言うとは思い切り抱きついて来た。


「寂しかったっ」
「そんな一日だけだろ?」


僕が苦笑しながらもを抱きしめ、頭にキスをすると、彼女は少し口を尖らせたまま顔を上げた。


「一日でも…ジョシュがいないと眠れないもん」
「それは俺も同じだけどね?」


そう言っての唇にチュっとキスをすれば、も嬉しそうに微笑んだ。


「ジョシュ、疲れてるでしょ?少し休む?」
「ん〜。の顔見たら疲れも吹っ飛んだ」


そのままの肩を抱いて家の中に入ると、テーブルの上にランチが置いてある。


「あれ?どうしたの、これ」
「あ、これ、お母さんがジョシュが帰って来たら一緒に食べなさいって今朝作ってくれたの」
「ああ、そっか。じゃ、食べないで待っててくれたの?」
「うん。一緒に食べたくて…」


は、そう言って僕の腕に自分の腕を絡めて微笑む。
そして僕をソファーの方へを押しながら、「ジョシュ、座ってて!私、紅茶入れるから」と言ってキッチンの方に歩いて行く。
僕は言われた通り、ソファーに座ると後ろの窓を少し開けて空気を入れた。


「はぁ〜やっぱミネソタの空気が一番いいな…」


煙草の火をつけながら僕は、そんな事を呟いた。
どうも都会の雰囲気が僕には向かないようだ。


「はい。ジョシュ」
「ん?ああ。サンキュ」


が紅茶を運んできてくれて、すぐ僕の隣に座り体を寄せてくる。
の肩を抱き寄せ、頬にチュっとキスをすると、くすぐったそうに顔を上げた。


「ねえ、ジョシュ…」
「ん?」
「明日から…また撮影でしょ?」
「ああ、そうだな…。ちょっと郊外でやるから寒くて大変だよ?」
「そうかぁ…。じゃあ終ったら家に帰って来るでしょ?」
「うん。まあ、遅くなっても…帰って来るよ」
「じゃあ…私、ここで待っててもいい?」


は不安そうに僕の顔を見あげて来るから、そのまま彼女の額にキスをした。


「いいけど…。あまりここにばっか来てると、母さん達が心配するだろ?
久々に帰って来たんだから少し母さんや父さんの相手もしてやらないと。あとジョーもね」


そう言ってちょっと笑うと、は俯いて僕の腕にしがみついてきた。


「だって…お母さんたちとも一緒にいたいけど…ジョシュの方が会えないんだから会える時くらいは一緒にいたい…」
…」
「学校が始まれば…なかなか会えないし…。ジョシュもロケに出ちゃうでしょ…?」


そう言って悲しそうに見上げてくるを僕はギュっと抱き寄せた。


「でも…卒業したらずっと一緒にいれるよ?ちゃんと父さんと母さんに話すから…。もし反対されても…許して貰えるまで何度でも話すよ」
「ジョシュ…」


腕の中のの体が少しだけ震えた。


「だから…心配しないで…。少しの我慢だから…」


僕は、そう言って体を離すとの唇に優しく口付ける。
唇で唇を噛むように何度も触れながら、僕はを強く抱きしめた。


僕にも不安な気持ちはある。
だけど…今は、の前で、そんな顔は出来ない。


を安心させるように、僕は抱きしめる力を強くした。

















I 'd live a thousand lives


Each one with you right by my side


But yet we find


Ourselves in a less than perfect circumstance


And so it seems like we'll never have the chance.....







―1000の人生を歩き


1000回、あなたに側にいてもらう


でも 完壁な状況で出会えなかった私達


こんな夢なんて叶えられそうにない…











「え?一緒に…?!」


アリーは驚いた顔で口まで開けて私を見ている。
私は紅茶を一口飲んで、ちょっと笑った。


「やっぱ驚くよね…」


そう言うとアリーは、ハっとした顔で軽く息を吐き出した。


「う、うん…あの…ちょっと…」
「そうだよね…」


私は少し目を伏せて、そう言うと、アリーは慌てたように首を振った。


「あの…でもね…っ。何となく…そうじゃないかな…って…思ってたから…」
「え?」


今度は私が驚いて顔を上げると、アリーはちょっと微笑んだ。


「もしかしたら…二人はお互いに兄と妹としてじゃなく…異性として想い合ってるんじゃないかなって…そう思った事があるの。だから…」
「アリー…」
「やっぱり…そうだったね。おめでとう。お兄さんと気持ち通じ合って良かったね」


アリーは、そう言うと私の手をギュっと握ってくれた。
私は嬉しくてアリーに思わず抱きついて、「…ありがとう…」と言った。
だけどアリーが少しだけ悲しそうだったのは気付かないままだった。


今日は、ジョシュも撮影に出ていて私は一緒にミネソタに戻って来たアリーの家に遊びに来ていた。
そこでアリーにだけは本当の事を話そうと思って、ジョシュとの事を打ち明けたのだった。




「じゃあ…卒業したら…はミネソタに戻るんだね」
「うん。アリーは?戻って来ないの?」
「私は…出来たらニューヨークで就職したいと思ってるの」
「え…?そう…なの?」
「うん。ちょっと心理学の道に進みたいなぁなんて思ってて…」


アリーは紅茶を飲みながら照れくさそうに呟いた。
私はアリーの言葉に少し驚いていた。


そうか…アリーも将来の事をちゃんと考えてるんだ…
そうだよね…。
もう、そういう事を考える年齢なんだ。
いつまでも子供じゃいられないもの…


は?」
「え?」


突然、話を振られて私はドキっとして顔を上げた。
アリーは私の顔を伺うようにして、「は将来、何になりたいの?」と聞いてきた。


「私は…」


何になりたいんだろう…
そんなこと考えた事なかったかもしれない。
私は…ずっとジョシュの側にいられれば…って、それしか考えてなかった。


「私は…何も…。したい事がないの…」
「そうなの?」
「うん。小さな頃から…これと言って何になりたいとか、やりたいとか考えた事がなくて…。ダメね、こんなんじゃ…」
「そんな事ないわ?それこそ大学、卒業したらお兄さんと結婚したらいいじゃない」
「け、結婚…?」
「そうよ?両親を説得して…。はそれが望みなんじゃないの?」


アリーに、そう言われて私は考えてみた。


ジョシュと結婚…?
そんな現実的な事を考えた事もなかったけど…でもジョシュと、ずっと一緒にいたいって思う気持ちは変わらない。
そうすると行き着く先は…結婚なんだろうか。


…?どうしたの?」
「え?あ…ううん」
「そんな深く考えないで。ね?とりあえず今はお兄さんと一緒にいられる時間を大切にしたらいいわよ」
「うん…。そうね?ありがとう、アリー」
「いいってば。それより今日は久し振りに一緒に買い物でも行こうよ」
「そうね…。じゃ、用意しよ?」


私とアリーは急いで出かける用意をした。























、どこに行くの?」
「あ…ジョシュのとこ…」


私は母に呼び止められてドキっとして振り向いた。


「またジョシュのとこに行くの?最近、ずっとじゃない」


母は呆れたように、そう言うと、


「たまに帰って来た時くらいは家にいてちょうだい」
「でも…今日はジョシュ、早く帰って来れるって言うから夕飯作ってあげるって約束したの…」
「あら、そうなの?じゃあ家に呼べばいいじゃない。皆で食べましょうよ。、夕飯の準備するの手伝って?」
「え…」


母に、そう言われて私は困ってしまった。


(どうしよう…私はジョシュに作ってあげたいのに…)


それに二人きりでいたい…と思った。
もうすぐ休みも終るのに、ジョシュは撮影で帰りも遅い。
だから最近は、ゆっくりと二人で会う時間がなかったのだ。
でも今夜は撮影が早めに終ると電話がきて、夕飯を一緒に食べようと言われた。
それで今から夕飯の買い物に行こうと思ってたのだ。


?どうしたの?」


母は変な顔で私を見ている。


「あ、あの、お母さん…。ごめんなさい。今日はジョシュの家で食べてくる」
「え?あ、ちょ…?!」


私は母が呼ぶのも気にせず家を飛び出した。
そのまま一気に大通りの方まで走って行く。
胸がドキドキしてきた。
あんな風に強引に出て来たなんて初めてのことだ。
私は大通りに出ると足を止めた。


お母さん…変に思ったかな…?
でも…前から私がジョシュにベッタリなのは知ってるし…いいよね…?
そんな怒られる事はないだろう。


「はぁ…」


ちょっと深呼吸をしてからマーケットの方に歩き出した。
















「はあ…やっと着いた…」


僕は、そう呟き、車のエンジンを切ると、すぐに下りて家に向かった。
リビングからは明かりが洩れている。
が待っていてくれてるんだろう。
約束の時間よりも一時間は遅くなってしまった。


(ったく…こんな時に渋滞なんだから…)


僕はちょっと溜息をついて家のドアの前に立った。


怒ってるかな…
せっかく撮影が早く終ったのに、これだし…
とにかく謝ろう…


一息ついて思い切りドアを開けると、「ただいま!?」と声をかけて家の中に入って行った。
するとキッチンの方からパタパタとが走って来た。


「ジョシュ!お帰りなさい!」
「ただいま。ごめん、遅くなって」


そう言ってを抱きしめると、ぎゅぅっと抱きついて来た。


…?どうした?」


僕は心配になって少し体を離し、顔を覗き込むと、は小さく首を振った。


「何でもない。早く会いたかったの…」


そう言ってニッコリ微笑むが愛しくて唇に軽くキスをする。


「渋滞にハマちゃって…。ほんと、ごめん」
「ううん。ジョシュのせいじゃないもの。あ、それよりお腹空いたでしょ?夕飯の用意出来てるよ?」
「ほんと?楽しみだな」


そう言って今度はの頬にチュっとキスをすると、が恥ずかしそうに微笑んでキッチンに戻って行った。












「ご馳走様!美味しかったよ」
「ほんと?」
「ほんと!上達したんじゃない?」


僕がそう言うとは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑んだ。


「お母さんに色々と作り方を教えて貰ったから…ジョシュの好きなもの」


そう言ったの頬にチュっとキスをして、


「嬉しいよ。もう、いつでも奥さんになれるね?」
「え…奥さんって…」
「何?俺の奥さんになるのは嫌?」


僕がちょっと意地悪で、そう言うとは頬を赤くして首を振った。


「嫌なんかじゃ…」
「そう?なら良かった。俺の奥さんになるのはしかいないからさ」
「ジョシュ…」


は僕の胸に顔を押し付けてきた。


「今夜…帰りたくないな…」
…でも父さん達も心配するだろ?」
「だって…最近、ジョシュ撮影が忙しくて、あまり一緒にいれないんだもん…」


確かに、そうだった。
ここんとこ撮影で遅くなる事が多くて、こんな風にと一緒に夕飯を食べるのも久し振りだった。
せっかく同じミネソタにいるのに…と歯痒い気持ちにさえなる。
それに…は、もうすぐニューヨークに戻らないといけない。
僕はぎゅっと抱きついてくるの体を少し離し、額に軽くキスをした。


「…解かった。父さんには俺から電話で話すよ。は今日は泊めるって…だからそんな顔するなよ…?な?」


優しく、そう言えばもやっと笑顔を見せてくれる。
彼女の顎をそっと持って優しく口付け、チュっと音を立てて離すと少しだけの頬が赤くなった。


「待ってて。今、電話してくるから」
「うん…」


僕が、そう言うとも体を離して頷いた。
そのまま受話器をると、実家の番号を押して少し待つと母が電話口に出る。


「あ、母さん?俺」
『あ、ジョシュ?今、私も電話しようと思ってたのよ。、そっちに行ってるんでしょう?』
「ああ、いるよ。それで…さ。今夜は、こっちに泊めるから…」
『え?でも…あなたも明日、また撮影なんじゃ…』


母は心配そうに聞いてきた。


「そうだけど明日は午後からだし大丈夫だよ?心配しないで。それに…も、もうすぐニューヨークに帰らないといけないだろ?
だから少しでも一緒にいてやりたいんだ」
『そう…?まあ…ジョシュがいいならいいけど…も最近、少し元気がなかったし…。じゃ、お父さんには私から言っておくわ?を宜しくね?』
「ああ、解かってる。じゃ、お休み」
『お休みなさい』


そこで電話を切った。
は僕の後ろで心配そうな顔をしている。


「ど、どうだった?」
「うん。いいってさ。、最近元気なかったからって」
「だって…ジョシュと、ゆっくり会えなかったし…」
「そうだね。でも今夜はずっと一緒にいれるよ?」


そう言っての唇にチュっとキスをして抱きしめる。


…ニューヨークに戻るの…今週末だろ?」
「…うん…」
「必ず見送り行くからさ…?」
「ほんと?」


僕の言葉に、が不安げに顔を上げる。


「ほんと!その為に今まで撮影も頑張ってきたんだからさ…。ちゃんと行くよ?」


ちょっと微笑んでを抱き寄せれば腕の中でかすかに頷くのが解かる。


きっと…ニューヨークに戻るのが嫌なんだろうな…
僕だって…気持ちが通じ合った、すぐ後に離れるのは凄く寂しいし不安もある。
仕事があるからが寂しい時に側にだって行ってあげられない。
でも…が卒業するまでは、どうしようも出来ないから…


…」
「…ん?」
「卒業式には…俺が迎えに行くから…待ってて」
「…ジョシュ…」


僕の言葉には少し驚いたように顔を上げた。
そんな彼女にニッコリ微笑むと、もう一度優しく唇を塞いで深く深く口付けた。


「今夜は…一緒に寝ようね」


そっと唇を離した後に、そう言うと、は嬉しそうに微笑んだ。


「うん…明日は私が起こしてあげるね?」
「え?、起きれる?」
「あ、バカにして…。ちゃんと起きれるもん。」


は口を尖らせ、僕の事を見あげて来る。
その顔が子供みたいで可愛くて、また軽くキスをした。


「はいはい。じゃ、明日の朝はに起こしてもらおうかな?」


僕がおどけて、そう言えばもちょっと微笑んでくれた。



















カチカチカチ…


ふと目が覚めて時計の音が聞こえてくる。
ゆっくり目を開けると隣にはジョシュがグッスリ眠りこんでいるのが見えた。
私の事を包むように抱きしめながら眠っていて私は顔をジョシュの胸に埋める。
最近、いつもこんな風に夜中に目が覚めてしまう。
ジョシュとゆっくり会えない日が続いて少し不安だったのもあるのかもしれない。
それがクセになってしまってるのか、今日はジョシュの腕の中で安心して眠っていたのに、また目が覚めてしまった。


はぁ…こんなんでニューヨークに戻って、ちゃんと頑張れるのかなぁ…
暫くはジョシュに会えないって言うのに…


その事を思うと胸がギュっと苦しくなり、そっと顔をあげた。
ジョシュは相変わらず静かな寝息と共に熟睡している様子だ。
私はそっと指でジョシュの唇に触れた。


こんなに愛しいと思える人は…他にいない…
このまま…何の障害もなく一緒にいられればいいのに…


そんな事を考えていると、不意に涙が浮かんできた。


「やだ…今から泣いてて、どうするのよ…」


私は、そう呟いて指で涙を拭うも、一度緩んだ涙腺からは、どんどん涙が溢れてくる。
喉の奥が熱くなり、胸も痛んだ。
"離れたくない…"
心が、そう叫んでいるようだ。
その時、少しジョシュの体が動いた気がして私は顔を上げた。


「ん……?どうした…?」


泣いていたからか、ジョシュを起こしてしまったようだ。


「…泣いてるの…?」
「うう…ん…大丈夫…」
「大丈夫って…泣いてるだろ…?」


ジョシュは目を擦りながら上半身を少しだけ起こし、私の顔を覗き込んできた。
そっと指で零れる涙を拭きながら、額にキスをしてくれる。


「…どうしたの…?泣かないで…」
「ジョシュ…私…」


そこで言葉が詰まって出てこない。
これ以上話せばきっと我侭を言ってしまう。
だから何も言えなくなってしまった。
だがジョシュは私の気持ちに気付いたのか、優しく微笑むと、


「寂しいのは…俺も同じだよ…?と…ずっと、こうやって一緒にいたい…」


と言ってくれる。
その言葉に私は頷く事しか出来ない。


…愛してる…。これから…暫く会えなくなるけど…この気持ちだけは変わらないから…信じてて?」
「ジョ…シュ…」
「ほら、泣かないで…。そんな風に泣かれると…俺、心配でをニューヨークに行かせたくなくなっちゃうから…」
「ご、ごめんなさ…い」


私は何とか涙を止めようとギュっと目を瞑ると手で目を擦った。
すると、その手をジョシュがそっと外し、優しくキスをしてくれる。
何度も触れながら擦るようなキスに、私もやっと落ち着いてきて涙が止まるのを感じた。


…愛してるよ…。二年後は…必ず一緒に住もうね…?」


少しだけ唇を離し、小さな声で、そう言ったジョシュは、最後にまた、


「愛してる…」


と呟くと、私の頬をそっと撫でて、もう一度優しくキスをしてくれた。
その温もりに、さっきまで感じていた不安が少し和らぐのを感じると、途端に睡魔が襲ってくる。


「あれ……?眠くなっちゃった…?」


そう呟くジョシュの声が聞こえたが、私は体の力が抜けて答える事が出来ない。
返事の変わりに私はそっとジョシュの手を握って、そのまま体を摺り寄せた。


「ジョシュ…愛してる…」


それだけ呟いたが、本当に声に出ていたのかは解からない。


だけどかすかに感じた唇の感触で、それがジョシュの返事だと解かった時には私はすでに夢の中だった。
























「うわ、寒い…」


私はジョン・F・ケネディ空港から一歩出ると、あまりの寒さに首をすぼめた。


「ほんと寒い…っ。ミネソタと対して変わらないわね?」


アリーも苦笑しながら首に捲いてたマフラーを顔まで引っ張る。


「さっさとタクシーに乗っちゃおう」


私はトランクを押しながらタクシー乗り場へと急ぐ。
アリーも小走りでついてきた。
一台、タクシーを見つけて、すぐに乗り込むと私は寮にの住所を告げた。
そのまま車は走り出し、私は久々のニューヨークの街並みを眺めながら軽く息をつく。
それに気付いたアリーが心配そうに聞いてきた。


…大丈夫?」
「え?」
「凄く辛そうだから…」


アリーは私の手をギュっと握りながら、そう言った。
私はちょっと微笑むと、アリーの手を握り返し、「大丈夫。そんな心配しないでよ」と言った。


「…お兄さんも辛そうだったわ?離れたくないって顔してた…」
「アリー…」


私とアリーをミネソタの空港まで送ってくれたのはジョシュだった。
そこで私は最後に、つい泣いてしまった。
ジョシュはちょっと困った顔で微笑みながら私を抱きしめ、何度もキスをしてくれて、やっと泣きやむ事が出来たが、
ほんとなら、そのままジョシュとミネソタに残りたいくらいだった。
それをアリーは見ていたので心配してくれてるんだろう。


「でも…今はどうにも出来ないって解かってるから…我慢するしかないの…」
「そうだけど…。でも、お兄さん、またこっちで仕事がある時は会いにきてくれるでしょ?」
「うん。そう言ってた。でも…ちょっとロケに行くかもしれないって言ってたから暫くは会えなさそう…」


私は、そう言って窓の外を眺めた。


ジョシュもミネソタでの撮影が、もうすぐ終る。
その後は次の大作映画の役作りの為に軍のキャンプに参加すると話していた。
その事が私の心配ごとでもあるけど、ジョシュは大丈夫だと笑うだけだった。


夏の終わり頃には…会えるのかな…
今の私には…夏は凄く遠いと感じる。
だって…まだニューヨークは冬だから…


沢山のビル街を見ていると、知らず溜息が零れる。
空も、どんよりとしていて、まるで今の私のようだ。


「ニューヨークって…灰色よね…」
「え?」
「ううん…。何でもない…」


私は、そう呟き、また窓の外を眺めた。
すると運転手が、「あ…雪だな…」と呟くのが聞こえた。


「あ…アリー」
「わぁ…雪だ…」


窓の外を眺めていると、どんよりと曇った空から白いふわふわしたものが舞い落ちてくる。
タクシーは、どんどん街中に入っていき、外を見ると皆が寒そうにして肩を竦めながら歩いて行く。




それを見ていると、ますます夏が遠く感じられた。









Postscript

久々の更新ですね(汗)
何だか書けなくてウダウダしてました。
申し訳ないです。
このお話もそろそろ終わりに近づいてますね。
あと1〜2話ほどかと。
何だか長くなってしまいました^^;


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】