The time of which has passed since the day of that rain?
Did I take a long circuit fairly?
It is to think of someone like this, and to love, so that it is
amazed...
Jumping over a far distance, I go you to welcoming
It feels lonely and I will greet you of with a smile
With today to me ...
―あの雨の日から、どれだけの時間が経ったのだろう。
僕らは、随分と遠回りをしたんだね。
こんなに誰かを想い、呆れるほどに愛してしまうなんて…
遠い距離を飛び越えて僕は君を迎えに行くよ。
寂しがり屋の君を飛び切りの笑顔で迎えよう。
今日から僕と…
2002年・5月―もうすぐ彼女と一緒にミネソタへ帰れる日が近付いて来た…
「ジョシュ、私、卒業決まったよ?!」
が嬉しそうに電話をしてきた時、とうとう、"その日"が来たなと思った。
僕は仕事を片付けてニューヨークに向かいながら少し緊張していた。
「ジョシュ、こっち!」
空港に到着した時、ロビーで手を振っているを見つけて笑顔で手を振った。
そのまま彼女の元へ歩いて行って思い切り抱きしめ頬にキスをする。
「元気だった?」
「うん。ジョシュは?」
「う〜ん…に会えなくて寂しかったかな?」
僕がそう言って笑うと、は照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑んだ。
「学校の方はどう?皆、卒業決まって浮かれてる?」
の肩を抱きながら到着ロビーの出口に向かいつつ聞いてみると、彼女も僕の方に体を寄せてくる。
「うん。もう連日パーティしたりして騒いでる人が多いわ?」
「パーティ?、まさか…」
「わ、私は出てないわ?そんな怖い顔しないでよ…」
「なら、いいけど…。大学生のパーティなんて行くなよ?泥酔して警察沙汰になるのがオチだ」
僕はちょっと怖い顔での額をつつくと、彼女も苦笑しながら見あげて来る。
「私は行かないわ?あのね。前に会ったミック覚えてる?」
「え?ああ…に言い寄って来てた奴?あいつが何?また迫ってきたとか…」
「ああ、違うの。そうじゃなくて…」
再び怖い顔をした僕を見ては軽く首を振って微笑んだ。
「あのね、そのミックが、あるパーティで飲みすぎちゃって泥酔したまま、同じ学科だった子を口説こうとしたらしいの。
でも、その女の子には恋人がいて、それでミックと、その恋人がケンカになっちゃって
最後は殴り合いにまでなったから警察に通報されたってアリーが笑ってたわ?」
「へぇ。懲りない奴だな?卒業間近になってハメ外しすぎだ。 ――あ、、先に乗って」
僕は苦笑しながらもタクシー乗り場まで来ると、ドアを開けてを先に中へ促した。
が乗り込んでからバッグを渡し、自分も乗り込むと、「リーガロイヤルホテルまで」と、滞在するホテルの名前を告げた。
「父さん達は前日に来るって?」
「うん。仕事が間に合わなかったみたいで…」
「そっか。じゃあ…それまでは二人でノンビリしよう?」
「うん」
僕の言葉に嬉しそうに微笑むの頬に軽くキスをすると、シートに凭れて彼女の肩を抱き寄せた。
も両親の事を考えると少し不安があるのか黙ったまま体を預けてくる。
の卒業に合わせて両親もニューヨークへ来る。
僕も今回、それに合わせてニューヨークに来たのだが少しでも二人でいたくて両親よりも早く来たのだ。
両親が来たら…との事を話さないといけない。
もう僕の心は決まっているが、やはり二人が悲しむかもしれないと思うと気が重いのだ。
きっとも同じ気持ちなのだろう。
チラっと隣を見れば、どこか不安げな瞳で窓の外を眺めている。
こうして彼女の横顔を見ていると不思議な感覚になる。
僕が知っていた妹としての彼女とは違い、今はもう一人の女性の顔になってる。
僕に頼ってばかりいた頃の彼女の姿はもういない。
一人で頑張りたいと、ニューヨークの大学に行く事を決めたは確実に成長したようだ。
それは嬉しい事でもあり、少しだけ僕を寂しくさせた。
(もう…前のようには甘えて貰えないかもな…)
そんな事を考えていると、不意にが僕の方を見た。
「…何?」
「え?」
「人の顔、ジィっと見ちゃって…」
「ああ…。ちょっと会わない間に奇麗になったから見惚れてたかな?」
「………っ」
そんな一言で少し頬を染めるところは前と変わってないようだ。
「な、何言ってるの…?」
はプイっと顔を反らし、少しだけ僕から離れようとした。
だが、直ぐに肩を抱き寄せ彼女の頭にキスをするとが顔を上げる。
「…ジョシュ…?」
「ほんとの事だよ?、奇麗になった」
「………………」
そこでまた少し顔を赤くして俯くに僕は素早くキスをする。
「何も心配しないでいいから…。そんな顔しないで」
「……っ」
僕の言葉に、は少し驚いた顔をしたが、すぐ笑顔を見せると黙って頷いた。
そして僕の方に寄りかかって目を瞑る。
そんな彼女を更に抱き寄せ、窓の方に視線を映すと、ニューヨークのビル街が、どんどん近くなってきたのが見えてきた。
The time of which was come by two persons in piles from the day
of that rain?
Although we did the detour and could
cook, we do not have the cloudy weather of one point, either and
thought of you
I thought of you, however it might be separated. Don't forget
Since it is a person more darling than whom
It feels lonely from you and a tight hug is early given to
Today to you, and two persons...
―あの雨の日から、どれだけの時間を二人で重ねてきたのだろう。
私達は遠回りはしたけれど一点の曇りもなく貴方を想ってた。
どんなに離れていても貴方だけを想ってた。
忘れないで 誰よりも愛しい人だから
貴方より寂しがりやな私を早く抱きしめて…
今日から貴方と二人…
私はジョシュの体に身を寄せながら窓の外の景色を眺めていた。
もう直ぐ、この街ともお別れなんだ…と思うも実感が湧かない。
それにミネソタに帰るという事は両親にもジョシュとの事を話さないといけないのだ。
それは私の固い決心と共に不安として残ったまま。
(二人を悲しませたくはない…)
でもジョシュとは、もう二度と兄妹の関係には戻れないから…素直に話すしかないのだ。
ジョシュも私も両親に隠したまま付き合うなんて器用な真似は出来ないから。
"反対されても絶対に諦めない"
前にジョシュが私に言ってくれた言葉を信じよう。
そう思いながら私はジョシュの手をギュっと握った。
「ん?どうした?」
ジョシュは優しい笑顔で私の顔を覗き込んでくる。
「ううん…。こうして…ジョシュと一緒にいる時間が…幸せだなぁって思ったの」
「……俺もだよ?」
ジョシュはそう言って微笑むと私の頬に軽くキスをしてくれた。
きっとジョシュも私の抱いてる不安を分かってる。
だって、それはジョシュの心の中に同じものとして存在するはずだから。
でも私の為に、なるべく、そんな不安な顔は見せないようにしてくれてるんだと思う。
そんな優しいジョシュが―――
「大好き…」
私が小さく呟くと、ジョシュは返事の代わりに、繋いだままの手をギュっと握り返してくれた。
その時タクシーが静かにホテル前に止まった。
「うん…。うん。分かった。ジョシュと迎えに行くね?…じゃあ…そっち出る時に、もう一度電話して?うん、じゃ、またね」
僕はテラスで煙草を吸いながら、が母親に電話をしてるのを聞いていた。
強い風が頬に冷たく吹き付けてきて、僕は顔を顰めると、煙草を消し、部屋の中へと入る。
広いベッドルームを抜け、リビングに顔を出すと、が携帯を切って振り向いた。
「あ、ジョシュ。お母さんたち、予定通りの便で、こっちに来るって」
「そっか。で、空港に迎えに来いって?」
「うん。一緒に夕食に行こうって。それとニューヨークの街も案内しろって言ってたよ?」
「全く…観光気分だな?母さんは」
僕はちょっと笑いながらを抱き寄せ、額にキスをする。
「さて…じゃあ俺達は今から、どこかに出かけようか」
「うん」
は嬉しそうに微笑むとソファーに座って雑誌を捲り出した。
「私、ここに行ってみたいの」
「ん?どこ?」
僕も隣に座り、が指さすページを覗いてみると、そこには有名なクラブの"ロット61"が紹介されている。
「ああ、このクラブか。前に行った事があるよ。業界人がパーティとかでも使うんだ」
「ほんと?前にテレビでも出てて、アリーと行ってみたいねって話してたの。でも女同士だと怖いから…アレクが時々誘ってくれてたんだけど…」
は、そこで言葉を切る。
僕が少しだけ怖い顔で見たからだ。
「そ、そんな顔しないでよ…。ジョシュ、きっとダメって言うと思ったから行った事ないわ?」
「当たり前だ。まあ…彼が一緒なら安心だけど…でもダメ」
「だ、だからジョシュに連れて行ってもらおうと思って我慢してたもん…」
は、そう呟いてチラっと僕を見上げてくる。
その表情が可愛くて、僕は唇に素早くキスをした。
「いいよ。じゃあ連れて行ってあげる」
「ほんと?!」
「ああ。どうせの事だから、その店の内装とかに興味があるんだろ?」
「あ…バレちゃった…?」
はそう言ってペロっと舌を出して笑っている。
僕もちょっと笑うと雑誌を手に取って見てみた。
「じゃあ…食事の後に行こうか。他には?行きたい場所ある?」
「え…?あ…じゃあ…ミュージカルに行きたい!」
「ミュージカル?」
「うん。あのね、"シカゴ"が面白そうなの」
は、そう言って大きな瞳をキラキラさせている。
「ああ、"シカゴ"か。あれは俺も観たかったんだ。いいよ、じゃあ明日、それ観に行こうか」
「ほんと?嬉しい!」
そう言った途端、僕に抱きついて大喜びしているに、僕も苦笑しながら頭に口付けた。
こうして甘えてくれると昔に戻ったようで嬉しく感じる。
前は僕にだけ頼りきりで大丈夫なんだろうか…と心配だったクセに、最近はがシッカリしてきたのを見て少しだけ寂しく思っていた。
勝手なもんだな…と自分で笑ってしまう。
「じゃ、用意して出かけよう。今日は風が強くて少し寒いから温かい格好しろよ?」
「は〜い」
は笑顔で変事をすると、すぐにベッドルームへと走って行った。
それを見ながら僕は部屋の電話を使い、フロントへかけた。
「あ、すみませんけど…明日、ミュージカルに行きたいのでチケットの手配をお願い出来ますか?」
『畏まりました。では係りの者に繋ぎますので、ミュージカルの名前をお申し付けください』
「はい」
そこで可愛らしいメロディが流れてきたが、直ぐに相手が出る。
『お電話変わりました。ご用件をどうぞ』
「明日、ミュージカル"シカゴ"を観に行きたいんですけどチケット二枚手配して貰えますか?」
『畏まりました。明日は日曜日ですので午後の2時と7時の二回公演になっておりますが、どちらの時間が宜しいでしょうか?』
「じゃあ…2時ので」
『では明日、午後2時、ミュージカル"シカゴ"ですね?二名様で手配しておきます』
「ありがとう御座います」
『手配でき次第、お部屋の方へ、お届けしますか?』
「えっと…今から出かけるので…明日、出掛けに受け取りに行きます」
『了解しました。では、そのように』
「宜しくお願いします」
『はい。では失礼します』
そこで電話を切り、煙草に火をつけた。
このホテルは最高級なだけに優秀なコンシェルジュがいる。
頼めば今のようにミュージカルのチケットの手配、なかなか取れない人気レストランの予約まであらゆるリクエストに答えてくれるのだ。
「ジョシュ?」
その声に振り向けば、が着替えて出てきた。
「用意出来た?」
「うん。こんな感じでいい?」
見ればは前に僕がプレゼントした"マーク・ジェイコブス"のジャケットを着て下は黒の可愛いフレアスカートを合わせている。
いつもの可愛らしい服装ではなく、少しだけ大人っぽいコーディネートにしたようだ。
「凄い奇麗だよ。よく似合ってる」
「ほんと?これならクラブに行くのも大丈夫かな?」
「もちろん。あの店はスマートカジュアルくらいで充分だよ?」
僕はそう言ってを抱きしめると頬にキスをした。
「じゃ、行こうか」
「うん」
僕もジャケットを羽織るとサングラスをしてキャップを被り、の手を繋いだ。
「明日のミュージカル、チケット手配頼んでおいたよ?」
「え?嘘…早い!」
「そりゃ人気あるミュージカルだしね。さっさと取っておかないと。明日の午後2時にしてもらったし、観た後はショッピングにでも行こうか」
「ほんと?わぁ、楽しみ!」
は嬉しそうに微笑んで僕を見上げた。
「もうすぐミネソタに帰るしね。その前に色々と遊びに行こう」
僕がそう言うともニコニコしながら頷いた。
いつもニューヨークで会う時は時間が足りなくて、そんなに二人で出かけられなかったからだろう。
「さ、まずは腹ごしらえだな。何食べようか?」
僕はと手を繋ぎながらエレベーターに乗り込むと、笑顔でそう聞いてみた。
「わぁ…凄い…」
私はラテンが流れている店内へと足を踏み入れた瞬間、思わず、そう呟いていた。
「外からだと想像できないだろ?」
「うん…。外観は、ただの倉庫だったのに…中は凄くセンスがいい」
私はそう言って笑顔でジョシュを見上げた。
この"ロット61"というクラブはチェルシーからハドソン川に向かった倉庫街に出現したハイパークラブだ。
有名な建築家、ラファエル・ヴィニョリと、モダンアートの奇才、ダニエル・ハーストが手がけた内装は、まさに芸術作品のようで見惚れてしまう。
全席ボディソニック完備のソファ席でハーストの壁画が飾られ、とにかくカッコよさはニューヨークでも随一と言われている。
なので一度来てみたかった店だ。
店員に席まで案内され、私はドキドキしながらも、まだ内装を見ては溜息をついた。
「はぁ…ほんと素敵」
「は、ほんと芸術品とか美術品とか好きだよな?」
ジョシュは笑いながら、そんな事を言って私の頭をクシャっと撫でた。
「だって…見てるだけでワクワクしてくるんだもの」
「前、ロケ先に来た時も皆で美術館とか行ったっけ。ショーンとかは全然、分かってなかったけどさ」
「あ、そうね!そんな事もあったわ?懐かしい〜!ショーン元気かな?会いたいなぁ…皆に」
私は、皆の顔を思い出しながらシートに凭れると、ジョシュは苦笑しながら、
「ショーンなら時々、電話で話すけど相変わらずバカ王発揮してくれてるよ。今度、また集まろうか」
「うん、会いたいわ?リジーは時々会ってるのにね」
そんな事を話していると注文を取りに来て、私はメニューを広げてカクテルを頼んだ。
ジョシュはバーボンを頼んでいる。
私はあとフードも少し頼んだ。
「あれだけ食べて、まだ食べるのか?」
「だって…何かつまみたいじゃない…」
「さっき、お腹苦しい〜って言ってたクセに」
ジョシュは、そう言って笑うと煙草に火をつけた。
私は少しだけ口を尖らせ、すぐに出てきたカクテルを一口飲むとジョシュを見上げる。
「だって、あそこの、お寿司凄く美味しかったんだもん」
「まぁね。あそこは気に入ったから、また行こう?」
「うん。私、オーナーオススメの、"まぐろの握り豆腐ソース添え"が美味しかった!」
「ああ、、4個は食ってたな?」
「そ、そんな食べたっけ…?」
「うわ、覚えてないの?」
ジョシュは苦笑しながらバーボンを口に運んでいる。
私は少し恥ずかしくなって、「ジョシュだって普段より凄く食べてたじゃない」と言い返した。
「ああ、あの平目の大葉捲きは最高だったかも」
「ほら。自分だって」
「男はいいの。はすぐ太った〜って言ってはダイエットするだろ?」
「そ、そりゃ…太るのは嫌だし…でも食べたいんだもん」
私は少し膨れてジョシュを見れば、何だか一人でクスクス笑っている。
「な、何がおかしいの?」
「い、いや…。女の子って大変だなと思ってさ?俺はが多少太ったって気にしないけど」
「ジョ、ジョシュが気にしなくても私は嫌なのっ」
「はいはい。分かったから、そんな口尖らせないで。キスしちゃうよ?」
「……………っ」
その一言で顔を赤くして黙ると、ジョシュは横目で私を見ながら何だか楽しそうだ。
「意地悪…」
「意地悪じゃないよ。素直に思った事を言っただけ」
ジョシュは澄ました顔でそう言うと顔を上げた私の唇にチュっと軽くキスをしてきた。
「ジョ…ジョシュ…っ。こ、こんなとこで…」
私は不意のキスに顔が真っ赤になって、慌てて周りを見渡した。
だが周りにはカップルも多く、そのカップル達も普通に寄り添ってキスをしたりしている。
「ほら、別に他の人も同じだよ」
「…………」
ジョシュはそう言って笑ってるけど、私にしたら人前でキスをされるのは慣れないし恥ずかしい…
そんな事を思いつつ、チラっと他の席に視線を移すと、知ってる顔を見つけて大きな声を上げそうになり慌てて手で抑えた。
「ん?どうした?」
ジョシュは私が息を呑んだのに気付き、身を乗り出してきた。
そんなジョシュの顔を見上げると奥の席を指差す。
「あ、あれ……あそこにいるの…アリーだ…」
「え?アリー?どこ?」
私が、そう言うとジョシュも少し前かがみになり、そっちの方へ視線を向けた。
「あ…ほんとだ。しかも…一緒にいるのって…彼…じゃない?アレク…って言ったっけ」
「う、うん…。そうよ…?嘘…いつの間に?」
私は驚きを隠せず唖然として二人を見ていた。
アリーとアレクは一緒にお酒を飲みながら何だか楽しそうに話をしている。
「へぇ、もしかして…付き合ってるの?」
ジョシュは何だか気にもとめていないように笑っている。
「そ、それは…分からないけど…。あ、でも…アリーは多分、アレクの事が好きなんだと思うの…」
「そう言ってた?」
「本人から聞いたわけじゃないけど…最近のアリーの様子を見れば…何となく?」
「そっか、でも…彼もまんざらでもないんじゃない?楽しそうだよ、凄く」
ジョシュは笑顔で二人の方に顔を向けてそう言った。
私もチラっと見て二人が笑いあいながら話してる姿を見ていると、そんな気がしてくる。
「告白…したのかな…」
「さあ…。もしかしたら…これからなのかもな?」
「え?」
その意味深な言葉に顔を上げると、ジョシュがニッコリ微笑んだ。
「今夜…デートの帰りに告白するとかさ?」
「あ…そっか…」
「ま、どっちにしろ上手く行きそうだよ」
「うん」
私は小さく頷いてジョシュの手をギュっと握ると、ジョシュも優しく握り返してくれる。
(アリー…頑張ってね…)
心の中で、そう呟いて私はそっとジョシュに寄りかかった――
「でね?すっごく良かったの!一度行ってみてよ」
「へぇ〜"シカゴ"、そんな良かったんだ。じゃあ僕も今度、誰か誘って行ってみるかな?」
「うん、そうして!デートにいいかもね?」
「それには、まず相手見つけないとさぁ」
私の言葉にハットリはそんな事を言いながら苦笑している。
今日は卒業論文を書くのに同じ科目を取っていたハットリと図書館に行った。
それを終えると大学内のカフェでお茶しようと言う事になり、そこで私は昨日ジョシュと見てきたミュージカルの話をしたのだった。
「それにしてもの兄貴も優しいよなぁ?その後はショッピングに付き合ってくれたんだろ?
で、ディナーは、かの有名なフレンチレストラン"カフェ・ブリュー"にエスコート!なんて凄いね?さすがだね?」
「そ、そんな事は…」
私はハットリの言葉に少しだけ頬が赤くなった。
「いやいやいや…。だって、それって普通は本命コースだよ?妹をエスコートするには凄すぎだよ」
「え?あ…そ、そう……だね…。アハハ…」
(そ、そんな風に言われると、ちょっと困っちゃうんだけど…)
私は笑って誤魔化しつつ、そっと紅茶を飲んだ。
いくら仲のいい友達とは言え、まさか"兄の本命は私なの"とは言えない。
「あ、、来てたの?」
「え?あ……」
不意に後ろから呼ばれ、振り向けば、アリーがトレーに紅茶とケーキを乗せて歩いて来る。
一昨日の夜の事を思い出し、私はちょっとドキっとした。
「ハットリとデート?」
「まさか!が僕とデートしてくれるはずないだろ?それに、そんな事したらの兄貴に殺されそうだ」
アリーの言葉にハットリが大げさに肩を竦めて見せる。
それにはアリーも、プっと噴出しつつ私の隣に座った。
「そうねぇ。きっとお兄さんに殺されちゃうわ?かなり溺愛してるから」
「ア、アリー…っ」
アリーの言葉に私は慌てて彼女の服を引っ張ると、「まぁまぁ、いいじゃない。本当に仲のいい兄妹で」と言ってウインクしてくる。
私はちょっと苦笑しながら息をついた。
「はぁ〜なら僕は早々に退散するよ。今からその兄貴が迎えに来るみたいだしさ?」
「え?お兄さん来るの?」
「え?あ…うん、もうすぐ…」
「そう。相変わらず仲がいいのね」
アリーはそう言って笑いながら紅茶を飲んでいる。
するとハットリがノートや資料をカバンに詰めて椅子から立ち上がった。
「じゃ、僕は先に帰るよ。次は卒業式でね?」
「うん。今日はありがと。助かっちゃった」
「いいって。じゃ、アリーも、またな?」
「バイ!」
ハットリは私とアリーに手を振るとカフェを出て行った。
「何?論文出来上がったの?」
「うん。ギリギリ間に合ったわ?さっき出してきた」
「そう、良かったね?」
アリーは、とっくに提出してるので最近は滅多に大学にも顔を出していなかった。
「あ、あの…アリー…」
「ん?」
「今日は…どうしたの?大学に用事でも…?」
気になった事を、さり気なく聞くと、アリーは少し視線を泳がせて、「べ、別に…暇だったから…」とだけ答えた。
だがスプーンをグリグリとまわしている姿は少なからず動揺しているように見える。
「アリー」
「な、何?」
「あのね…。一昨日からジョシュが来るって言ったでしょ?」
「うん…それが?」
「でね…?一昨日…ジョシュと二人で、その……チェルシーにあるクラブに行ったの……」
「え…っ?」
そこまで言うとアリーはドキっとしたように顔を上げて私を見た。
私はちょっと笑顔を見せると言葉を続ける。
「で……そのクラブって言うのが前にアリーと行きたいね…って話してたクラブで……」
私は、そこまで話して言葉を切った。
アリーの顔が見る見るうちに真っ赤になっていったからだ。
「あ、あの…」
「もしかして…見られちゃった…?」
「え?!あ……うん、ごめん……」
アリーの恥ずかしそうな顔を見ていると、何だか凄く悪い事を言ったような気がして私は、つい謝ってしまった。
するとアリーも困ったような顔で微笑む。
「そんな謝らないでよ」
「そ、そう…だね…。ごめん…あ…っ」
つい、また謝ってしまい、私は手で口を抑えた。
するとアリーも小さく噴出している。
「もう…には敵わないな…」
「あ…あの……」
私は困って何と言っていいのか分からないでいると、アリーは、ゆっくり紅茶を飲んだ後に息をついた。
「あの夜は……アレクから誘って貰ったの。前に私とで行きたがってたのアレクも知ってたでしょ?だから…」
「そ、そう…」
「うん。で……私は……アレクのこと……」
アリーは恥ずかしそうに俯くと、小さな声で、「好き…になっちゃったみたいなの……」と言った。
それには聞いてる私まで照れくさくなる。
でも私はちょっと微笑むと、アリーの手をギュッと握った。
「うん……。気付いてたよ?」
「え?き、気付いてたって……」
「アリーがアレクのこと好きなんじゃないかなって……」
「嘘…そんな分かりやすかった……?」
「う〜ん…まあ」
私がそう言って笑うと、アリーはますます真っ赤になってしまった。
「でも…付き合ってるの…?」
「え…?あ……それが……」
「あ、この前の帰りに告白されたとか…?」
「え?!」
ジョシュが言ってた事を思い出し、そう切り出すと、アリーは驚いたように顔を上げた。
「な、何で…?」
「何となく、そう思っただけよ?違うの?」
「ち、違わない…かな…?」
モジモジとしながら、そう言うアリーに私は笑顔になった。
「そう!良かった!おめでとう、アリーっ」
「ちょ……声が…」
「あ、ごめん」
私は舌を出して謝ったが、何だか微笑ましくて笑顔になる。
「でも…そっかぁ…。アリーとアレクなら、お似合いよ?ほんと良かったわ?」
「あ、ありがとう……」
「じゃあ…アリーはニューヨークに残るんだし、これからも会えるのね」
「うん」
嬉しそうに、そう頷くアリーに私まで幸せな気持ちになる。
やっぱり…女の子は好きな人の傍に居られるのが一番幸せなことなんだよね…
何となく、そう思いながら少し冷めた紅茶を飲んでいると、不意にアリーが顔を上げた。
「あ、あのね…」
「ん?」
「今まで言えなかったんだけど……実は私の初恋の人って、の……お兄さん…だったの…」
「………へ?」
突然のアリーのカミングアウトに、私は一瞬で固まった。
い、今…何て…?
アリーの初恋の相手が……ジョシュって…言った?!
私はアリーを見つめながら口を開けていると、「そんな驚かないでよ…。昔の話よ?昔って言っても何年か前だけど」なんて言って苦笑している。
「そ、それ…ほんと……?」
それが、やっと口を開いて出た言葉だった。
だがアリーは笑いながら頷くと、「高校の卒業式の日に……初めて、お兄さんに会ったでしょ?」と私を見た。
「あ…あの…雨の日…?」
「うん、そう。あの日にね…。一目惚れしちゃったみたいなの」
「嘘……だって、そんなこと一言も…」
「そんなこと言えないわよ。だって彼はの大切な、お兄さんで、しかも俳優さんよ?せいぜい憧れるだけで精一杯だったの」
アリーは懐かしいといった顔で、そう言うと恥ずかしそうに微笑んだ。
「これ、内緒ね?」
「う、うん……」
そう言われて私は驚きを隠せないまま何とか頷いた。
するとアリーは目を伏せて軽く息をつく。
「それで…他に好きな人も出来ないまま大学生活を送ってたけど…アレクと一緒にいると凄く楽しくて…気付けば好きになってたわ?」
「そう……。言ってくれれば良かったのに……」
「ごめん。でも自分で自覚するのにも時間がかかったのよ。でも…卒業も近くなって…会えなくなるかもしれないって思ったら自然と気持ちも見えてきて…」
「そうだったんだ…。で…一昨日、誘われたというわけだ」
私がそう言って微笑むと、アリーは嬉しそうに頷いた。
「帰り際ね、ほんとは自分で言おうかと思ってたの。でも言いかけた時に彼が…俺から言わせてって言ってくれて……」
そう言ったアリーの顔は本当に幸せそうで私は胸が熱くなった。
「かっこいいね、アレクも」
「体育会系だし?」
アリーはそう言って笑っていて、それには私も噴出した。
「そうね。じゃ、今日はアレクと約束でも?」
「ええ。アレクも論文ギリギリだって言って大学に行くって言ってたから…迎えに来たの」
「そう。って、噂をすれば…だわ?」
「え?」
カフェに入って来たアレクが見えて私は肩を竦めると、アリーは慌てて立ち上がった。
「あ、アリー…も一緒か」
「さっき会ったのよ?」
私は歩いて来たアレクに、そう言って椅子から立ち上がる。
「じゃ、私は行くから、アレク、ここに座って?」
「え?でも……」
「いいから。もう少しでジョシュが迎えに来るの。もう外にいないと…」
「そうか。じゃあ…また」
「…」
アリーも残念そうにしていて私は軽く息をついて微笑むと、アレクを見た。
「アリーを宜しくね?」
「え……っ?!」
「ちょ……っ」
焦る二人に手を振って私はカフェを出た。
きっと今頃、アレクもアリーも真っ赤になってる事だろう。
「おめでとう……」
私はそう呟いて正門の方に歩き出した。
卒業式の日の朝、あまりの天気の良さに僕は目を細めて空を見上げた。
「良かったわねぇ。晴れて」
「ほんとだな。高校の卒業式の日は雨降りで寒かったし」
母さんと父さんは、そんな事を言いながらワシントンスクエアの中を歩いて行く。
僕も、その後を歩きながら、今夜の事を考えていた。
両親は昨日の夕方、こっちへ到着した。
と二人で迎えに行き、僕と同じホテルに部屋を取ってあげた。
二人とも高級すぎるなんて遠慮していたけど、まあ、いつもあることじゃないからと笑うと、照れくさそうにお礼を言ってきた。
その後は4人で食事に行って、軽くニューヨークの街を案内してあげた。
二人とも子供みたいにはしゃいでて僕とは苦笑しながらも楽しそうな両親の顔に嬉しくなった。
そして今日、卒業式を迎えるは先にアリーと、このワシントンスクエア公園に行くと言って出て行った。
だから僕は二人を連れて、此処まで案内をしてきたのだ。
「なぁ、どこで見ればいいんだ?」
「まあ、その辺でいいんじゃない?高校と違って大学の卒業式は一緒に帰れないと思うしさ」
「そうだなぁ。も友達が沢山出来たと言うし、式の後は大学に戻って打ち上げみたいな事をやるんだろう?」
父さんは悲しそうな顔で、そう聞いてきて、僕は軽く頷いた。
「ま、そんな遅くはならないよ。夕飯までには帰って来るだろ?」
笑いながら、そう言うと二人とも仕方ないといった感じで顔を見合わせている。
僕は学生達が集まっている方に視線を向けて、がどの辺りにいるのかと探してみた。
が、あまりの人数にさっぱり分からない。
「もう少し近づいてみようか」
「ええ」
父さん達は、そんな事を言いながら前を歩いて行く。
そんな二人の後姿を見ながら、今夜、との事を話さなければいけない事を考えると少しだけ胸が痛んだ。
と…愛し合ってると言えば…二人は何て言うんだろう…
きっと…悲しむんだろうな…
でも、この長年の想いを素直に話すしかない。
どんなに怒られても詰られても…僕はを手放す事など出来ないから…
そう決心をしながら、がやっと卒業式を迎えられた事を心から嬉しく思っていた。
やっと…何にも遠慮せず…を愛してると言える。
この日を、どんなに待った事か知れない。
秘密の関係は…今日で終わるんだ。
「ジョシュ?早くいらっしゃい!式が始まるようよ?」
「ああ」
一人ボーっと歩いていると、母さんが笑顔で手招きをしてきて、僕は急いで二人の方に歩いて行った。
ニューヨーク大学の卒業式は5月に行われる。
大学にはキャンパスがない為、卒業式は近くの、ここワシントンスクウエア公園で行われる。
この公園は季節によって色々な姿を見せるが、卒業式の時には、NYUのスクールカラーである紫色のガウンで染まって一層の華やかさを見せる。
卒業式は、まず、卒業生が学部ごとに道路に2列に並んで公園に入場し、その後でNYU同窓生の方々と教授らが入場。
ワシントンスクウエアにある立派なアーチのてっぺんには、トランペット部隊がいた。
「何だか卒業式って感じがしないわねえ」
母さんがトランペット部隊を見ながら苦笑している。
僕は二人より少しだけ離れて、の姿を探していた。
すると、あの見覚えのあるドレッドヘアーの彼、アレクが視界に入り、ハっとした。
その近くを探せば、アリーが見えて、その隣にの笑顔が見える。
(いたいた…。紫色のガウンが、よく似合うな)
そんな事を思いながら両親にもの居場所を指でさして教えてあげる。
二人とも、を見て途端にカメラなんて出してパシャパシャ撮り出すもんだから笑っちゃったんだけど。
は何やらアリーとコソコソと話しながら楽しそうに笑っている。
その時、音楽が流れて皆で一斉に国歌を歌い出した。
国歌を歌った後は挨拶、卒業生からのスピーチ、賞の授与、そして、ニューヨーク大学の学長からのメッセージ。
その後の学部ごとのプレゼンテーションを聞き、NYUの歌をうたって公園を退場するのだ。
それから、すぐに教授らと会うために各学部の建物へ直行。
まずはそこに用意されていた美味しそうな食べ物をご馳走になって、それから好きな教授を見つけてツーショットの写真を取ったりする学生もいるらしい。
そして時間までにガウンを返却して、ニューヨーク大学の卒業式を全て終了する。
「父さん、母さん、そろそろ戻るよ?」
式も終わり学生達が一斉に移動しはじめたのを見て僕は二人に声をかけた。
「でも…に一言、おめでとうって言いたいわ?」
「それも分かるけど…ほら、他の親だって帰り始めてるだろ?」
「仕方ない。母さん、ホテルで待ってよう?」
悲しそうな母さんに父さんも苦笑交じりで肩を抱いた。
「あ、ジョシュとお母さんたちだ」
私はぞろぞろ歩いてる学生たちに見え隠れする3人を見つけて笑顔になった。
「話しかけてきたら?」
「うん。でも…まずは、これ置いてこないといけないし…」
そう言って着ているガウンを指で引っ張る。
「そうねぇ、でも、打ち上げは出ないんでしょ?」
「うん。ごめんね…?最後なのに…」
「いいわよ。仕方ないわ?今日は大事な日でしょ?と、お兄さんにとっては」
アリーは事情を知っているので、そう言ってくれた。
「、大丈夫?少し顔が強ばってるけど…」
「大丈夫…。ちょっと緊張してきただけよ?」
「そう?でも…許して貰えるといいわね?私も祈ってるから」
「ありがとう……」
アリーの言葉に私はちょっと胸が熱くなって涙が出そうになる。
「あらら。今から泣いててどうするの?」
「う、うん。そうだね……。卒業式でも泣かなかったのになぁ…」
私は慌てて手で目を擦ると頭にポンっと手が乗せられて顔を上げた。
「あ…アレク…」
「何、しんみりしてるんだ?元気出せよ」
「うん。ありがと」
「ま、この後の打ち上げは来れないみたいだけど…。またニューヨーク来た時は電話しろよ?ジェイクも誘って皆で集まろう?」
「うん。絶対に連絡するわ?」
アレクの言葉に笑顔で頷けば、アリーも嬉しそうに微笑んでいる。
そのまま3人で大学内に入り、私はすぐにガウンを返してきた。
「これで、この大学ともお別れね…」
私は正門の前で建物を見上げると、小さく息をついた。
最初は…不安だらけだった。
ジョシュに頼り切った自分に嫌気がさして、少しでも大人になりたくてニューヨークの大学に入る事を決めた。
最初のうちは毎日寂しくて後悔したりもしたけど、アリーと、他にも出来た友達に支えられて、ここまで来れたんだ。
自分がどこまで変われたのか、まだ分からないけど…前のように違う意味で、ジョシュにベッタリだった私はもういない。
そう…妹としての私も……
今は…ジョシュを愛している一人の女として生まれ変わったのだ。
「〜〜〜!!」
その声に視線を向ければアリーとアレク、ハットリの3人が手を振りながら走ってきた。
「良かった!まだいたっ」
アリーが私の前にきて笑顔でそう言った。
「ど、どうしたの?もう打ち上げ始まってるんじゃ…」
「最後に見送りたいってさ」
アレクが笑いながら私の頭を軽く撫でてくれる。
「、またニューヨークに来たら集まろうな?」
「うん。ハットリも…元気でね?」
「ああ、も」
「…メールするし電話もするから…」
「アリー…それより時々はミネソタにも帰って来てよね?アレクのそばにいたいのも分かるけど」
「ちょ…!」
私の一言でアリーとアレクは真っ赤になっている。
唯一、事情の知らないハットリだけがキョトンとしていて、「何だ、何だ?!おまえら、いつの間に!!」なんて騒いでいる。
私はちょっと笑いながらも堪えていた涙が一粒零れた。
「皆…ほんとに色々とありがとう……」
「何言ってんだよ。友達だろ?」
「そうそう!俺達は友達だ!」
アレクとハットリの言葉に、私は言葉が詰まる。
気付けばアリーも泣いていて私に抱きついて来た。
「きっと…大丈夫よ?幸せになれるわ?二人は、あんなに想い合ってるんだもの…」
「ん…ありがと…アリー…。頑張るわ…?例え反対されても…」
私はギュっとアリーを抱きしめて、そう呟いた。
それをアレクとハットリも笑顔で見ている。
私は、彼らに感謝しつつ、そっとアリーから離れた。
「じゃ……またね」
「ああ、また…」
「気をつけてな?」
「…もたまには電話してね?」
皆の言葉に頷き、私は涙を拭いて笑顔を見せた。
この4年で私は強くなった。
そう思いながら皆に手を振り、私は大学を後にした―――
「ねぇ、、遅いんじゃない?何してるのかしら…迎えに行った方が…」
「母さん、少しは落ち着けよ。まだ一時間しか経ってないだろ?」
僕は煙草を吸いながら呆れたように笑うと、父さんまでがソファーから立ち上がりソワソワしている。
「いや、でも打ち上げって、そんな遅いのか?ん?」
「そりゃあ…仲間同士でやるんだから…。積もる話もあるだろ?」
「でも…やっぱり迎えに行った方がいいんじゃない?ここは犯罪都市なのよ?何かあったら…」
「母さん…その犯罪都市に、は4年もいたんだよ?大丈夫だよ。ちゃんとタクシーで戻ると思うし…」
僕がそう言うと母さんも少し落ち着いたのか軽く息をついてソファーに座った。
それに続いて父さんも座りなおし、それでも腕時計を見ている。
(ったく…ほんと過保護なんだからさ…って人の事は言えないけど)
そんな事を思い苦笑しつつ煙草を灰皿に押し潰した。
その時、部屋のチャイムが鳴り、僕はソファーから立ち上がる。
「じゃない?」
「母さん…そんな早すぎるよ」
そう言って笑いながらドアを開けると、目の前には本当にが立っていた。
「あ、あれ??」
「ただいま、ジョシュ!」
はそう言って部屋の中に入って来た。
「まあ、!早かったのね?」
「そうだぞ?打ち上げだったんじゃないのか?もう少しいても良かったのに」
おいおいおい…さっきと随分、態度が違うんじゃないか……?
僕はドアを閉めてニコニコしている両親を横目で見た。
「うん、あのね。打ち上げには出ないで帰って来たの。一応、お世話になった教授とかにも挨拶してガウン返して…そのまま戻って来たわ?」
「そ、そうだったのか」
「うん。ごめんね?お父さん達もお腹空いたんじゃない?」
「い、いや、そんな事は…。あ、そうだ。、卒業、おめでとう」
「おめでとう、」
「ありがとう…」
両親から、改めて、そう言われても照れくさそうに微笑んだ。
すると父さんも母さんも何だか涙目になって手で慌てて擦っている。
「さ、さあ。もお腹が空いたろ?皆で食事に行こう?今日はお祝いだからの好きなものを食べに行こう」
「そうね?そうしましょ?」
「うん」
が頷くと二人は笑顔で出かける用意をし始めた。
そんな姿を見ながらが僕の方に歩いて来る。
目の前に来たの頬に軽くキスをして抱きしめると、「卒業…おめでとう……」と言った。
「ありがとう、ジョシュ…」
は嬉しそうにそう呟くとギュっと僕に抱きついてくる。
本当だったらここでいつもの様に唇にキスをしたいとこだけど、今は両親がいるから仕方なく額に唇を落とす。
「さ、食事に行こう?」
「うん」
僕とはそのまま手を繋ぎ、廊下に出ようとして二人の方を見れば、何だかアタフタと準備をしている。
「あ、あなた…お財布がないわ?」
「何?そんなはずは…。あ、私のジャケットに入ってた。お前が持っててくれ」
そんな事をやりつつ、やっと出かける準備が出来たので4人で部屋を出る。
「さ、何が食べたい?」
父さんが張り切って聞いた時、が笑顔で、「タイ料理!」と元気よく言ったところ、辛い物が苦手な父さんは思い切り顔を顰めたのだった。
「む……み、水…水をくれ…っ」
「は、はいはい」
父さんの悲痛な叫びに母さんが苦笑しながら水を渡している。
そんな中、は涼しい顔でチリソースたっぷりのチキンを食べていた。
「えぇ、それもダメなの?それ辛さで言えば1くらいだよ?」
「な、何?そうなのか?!父さんはてっきり激辛だと……」
辛さのあまり吹き出てくる汗を拭きながら父さんが目を丸くしている。
そんな父さんを見て、が悲しそうに目を伏せた。
「ごめんね?やっぱり普通にイタリアンとかにしたら良かったね?父さん、こんなに辛いの苦手なんて知らなくて…」
「そ、そんな事はないぞ?父さん、辛い物は大好きさ!」
の悲しそうな顔を見て焦った父さんは、そんな強がりを言って、いきなり海老など魚介類の入ったタイ風蒸し餃子をモリモリと頬張った(!)
それには、たっぷりとタイカレーソースがかかっていて、暫くすると父さんの顔が真っ赤になって行く。
それを見て僕は笑いを噛み殺した。
バカだよなぁ…無理して、よりによって、あんな辛い物食べる事ないのに…
あ〜あ…ヒーヒー言って水飲んでたらバレるっつーの。
「だ、大丈夫?お父さん!」
「だ、だ、だい…だいひょうふ…だ…よ…?」
あまりの辛さに舌が痺れてるのか、父さんは変なしゃべり方をしながらには笑顔を見せた。
だが目尻に涙が浮かんでいる。
それを見て母さんが慌てて店員に水を頼んでいた。
「もう!無理なんてするから…。はい、水飲んで」
「う、うむ…」
そろそろ限界にきたのか、父さんは水をグビグビ一気飲みして思いきり息をついている。
そしてジロリと僕を見た。
「おい、何が、おかしいんだ?ジョシュ」
「べ、別に…」
「ふん、こんな辛い物、食べ物じゃないぞ?頭が一瞬ポーっとなった。殺す気で作ってるのかもしれないぞ?」
「まさか!そんなわけないだろ?ったく大人気ないよな?」
「で、でも…お父さん、ほんとに死にそうなくらい顔が赤いわ?大丈夫?」
が心配そうに聞けば、父さんみたいな単純人間はコロリと機嫌が直る。
「大丈夫だ。父さんは殺されやしないぞ?」
「え?」
「ちょっと、あなた…」
おいおい…誰も殺す気なんて初めからないっての…
だいたい父さんを殺して、この店に何の得があるって言うんだ?
僕は心の中で密かに、そんな事を突っ込みつつ、ビールを飲んで溜息をついた。
ほんと父さんはには昔から甘いからなぁ…
それに独占欲も強いし…。ま、それは僕も同じだけど…。
さすが親子、変なとこが似てるよな…って凄く嬉しくない…
そう言えば…前ににしつこく電話をしてきてた高校の時のクラスメートにも何度も怒鳴ってたっけ。
にボーイフレンドなんて出来たら、きっと相手を、それこそ殺すんじゃないかと心配したもんだった。
いや、僕も同じ事を考えてた気もするけど。
って事は何か…?
もし僕とが愛し合ってる…なんて言ったら…、その"殺すリスト"に僕も入るって事かな…。そりゃマズイ……
何だか一人で色々と考えてると変な汗が出てきた。
「ん?どうした?ジョシュ…汗なんかかいて。ああ、お前も辛いから熱くなってきたんだろう?」
「え?あ、いや…うん、そうかな…?」
「何だ、どっちだ?」
「いや…大丈夫だよ。それより父さん、もっと他の辛くなさそうなもの食べたら?チキンとかでも辛くないものもあるよ?」
「そうだな。そうするか…」
父さんはメニューを広げて、なるべく辛くなさそうな料理を探し始めた。
その間もは大好きなトムヤンクンを飲んでいる。
「どうしたの?ジョシュ。食べてないね?ジョシュは辛い物平気でしょ?」
「ん?ああ…。ちょっと不吉な事を考えててね」
「……?」
僕の言った意味が分からなかったのか、は不思議そうな顔で首を傾げている。
その表情が可愛くて僕は素早くの頬にキスをすると、あっという間に頬が赤くなっていった。
「こら、ジョシュ。人前でキスしたらが恥ずかしがるだろう?」
父さんはメニューから顔を上げて、そんな事を言ってきて僕は、ちょっと苦笑いを浮かべた。
「仕方ないさ。俺はを愛してるからね?キスしたい時にするよ」
「「…………っっ」」
何気なく言った僕の言葉に、父さんと母さんが黙ったのを見て僕は顔を上げた。
すると二人と目が合い、その真剣な表情にドキっとする。
は慌てたように皆の顔を見ながら、どうしようと言った顔だ。
(もしかして…僕の言葉のニュアンスで、それが兄しての発言じゃないと感じたんだろうか……?)
一瞬、その場の空気が今までと変わり、僕は戸惑ったが、軽く息をつくとフォークを置いた。
今…切り出すにはいいのかもしれない。
僕は、言い出すキッカケが出来たと思い、小さく深呼吸をすると、父さんと母さんの顔を見た。
「二人に……話があるんだ…」
「ジョ、ジョシュ……?」
不安そうなと目が合い、僕は安心させるように微笑むと、「いいから…。今、話そう?」と言った。
するとも目を伏せて小さく頷く。
「何だ……?」
「父さん……俺…二人に隠してた事があるんだ」
「……………」
父さんも母さんも、僕の言った事に対し何も答えようとはしない。
ただ黙って僕の顔を見つめている。
その沈黙が緊張させる。
僕はゴク…っと喉を鳴らし、今まで隠してきた自分の想いを初めて二人の前で口にした。
「俺は……を…愛してる。妹としてじゃなく…。一人の女性として…愛してるんだ」
何も変わらなかった。
父さんも母さんも何も言わず、表情すら変えない。
ただ黙って僕を見ているだけ。
その様子に不安を覚える。
「あの…さ…父さ―」
「今は食事中だ。早く食べてしまいなさい」
「え…?」
思いがけない言葉に、僕は戸惑っての方を見た。
するとも悲しそうな顔で僕を見ている。
僕は目の前の父さんを見て、その固い表情にドキっとした。
怒って……いるんだろうか……?
いや…そう思うまでもない。
当たり前の事だ。
突然、妹を一人の女性として愛してるなんて言えば、どこの親だって驚くか怒るだろう。
例え血の繋がりがなくても………
それでも…怒られても、この想いを捨てるわけにはいかない。
そう思って、僕は軽く息を吐くと、もう一度口を開いた。
「いい加減な気持ちじゃない……。俺も…も同じ気持ちなんだ…。ずっと前から俺達は……」
「ジョシュ。話は後で聞く。今は黙って食べなさい」
「父さん……」
その父さんの言葉に思わず、母さんの方を見ると、母さんは、ちょっと微笑んで、「いいからお父さんの言う通りにして……?ね…?」とだけ言った。
「分かったよ……」
思い切り力が抜けて、僕は溜息をつくと、それだけ呟いた。
を見れば何だか泣きそうな顔をしていて思わず抱きしめてしまいたくなる。
(とにかく…話を聞く気はあるようだな…。後で…ホテルに戻った時でも、もう一度話そう…)
僕は、そう思いながら仕方なくフォークを持って料理を食べ始めた。
だが不安が押し寄せてきて何も喉を通らない。
早く…この食事の時間が過ぎ去ればいい…
この時の僕は、ただ、それだけを願っていた―――
レストランからの帰り道、皆、無言のままだった。
何だか重苦しい空気が流れ、は不安そうに僕を見上げてくる。
僕は目の前を歩いている両親の後姿を見て、の手をギュっと握りしめた。
ホテルにつき、父さんと母さんは真っ直ぐ僕の部屋へと向かう。
僕はきちんと話すべき時間が近づいてきて、さっき以上に緊張してくるのが分かった。
部屋の前まで来て僕はキーを出すとドアを開けた。
二人とも無言のまま部屋へと入っていく。
僕とは互いに顔を見合わせながら、その後に続いた。
父さんと母さんはジャケットを脱いでソファーに静かに腰をかけた。
そして僕とを見ると、「二人とも……座りなさい」と父さんが言ってくる。
僕はの手を握ったまま、ソファーへと腰をかけた。
父さんは軽く息をつくと真っ直ぐに僕を見据えてくる。
その視線にドキっとしつつも、僕も父さんの目を見返した。
「父さん…。さっき言った事に偽りはないんだ。僕はを妹なんかじゃなく一人の女性として愛してる。だから…
どんなに反対されても諦めるつもりはないから…。が大学を卒業するまで…待ってたんだ。ミネソタに戻ったら…俺はと一緒に住む」
一気に、そこまで言って僕は軽く息をついた。
だが父さんは黙ったまま、先ほどと同じように僕を見つめている。
だが僕も目を離さず真剣に父さんの顔を見た。
"絶対に諦めない" そう伝えるように…
すると、ふっと父さんが体の力を抜いたように肩を落とした。
「…分かった…」
「……ぇ?」
不意に今まで無言だった父さんの口から出た言葉に、僕は意味が分からず眉間を寄せた。
「分かったって……何が?俺の気持ちが…?それとも俺との事を許すってこと?」
父さんの気持ちが読めなくて不安だからか、僕は一気に、そんな言葉が口から出ていた。
すると父さんが困ったような顔で僕を見る。
「ジョシュ…」
「…何?」
「私と母さんが…何も知らなかったとでも…?」
「え?」
「知ってたよ…。お前たちの気持ちくらい…」
「な…っ」
苦笑交じりで、そう言った父さんの言葉に、僕は唖然とした。
も驚いたように僕の手をギュっと握ってくる。
「し、知ってたって…?ほんとに…?」
「ああ。当たり前だ。何十年、お前たちを見てきたと思ってるんだ…?」
父さんはそう言って、なあ?というように母さんを見る。
すると母さんも優しく微笑み、頷いた。
「気付いてたわよ?二人は、もしかして…って…。特にが高校を卒業した辺りからは…それが確信に変わったわ?」
「母さん……」
「これでも…お父さんと二人で色々と考えたのよ…?悩んだりもした。でもね……」
母さんは、そこで言葉を切ると、父さんの方に視線を向けた。
「お父さんが…親の勝手で兄妹になった二人だから…もし正直に話してくれる時が来たら二人を許してやってくれないか?って言ってきたの…」
「え…っ?父さんが…?」
「ええ、そうよ?俺の息子が、きっと唯一、愛した女の子だから…君の娘をジョシュと一緒にしてやって欲しいって…」
「父さん…」
僕は驚いて父さんの方を見れば、少しだけ視線を反らして頭をかいている。
それを優しく見つめながら母さんが言葉を続けた。
「それを言われた時…私は初めてお父さんに怒ったの。"俺の息子"とか、"君の娘"じゃないわって。どっちも…私の大切な子供なのよ?ってね。
その二人の幸せを…壊すはずなどないわ…?そうでしょ?だって…私は、あなた達の母親だもの…」
「お母さん…」
の頬に涙が零れた。
僕は、そんなの肩をそっと抱き寄せると、頭に口付ける。
「ジョシュ……」
「ん……?」
「を…幸せにしてくれる…?」
母さんは涙を溜めた瞳で僕を見つめている。
僕も真っ直ぐに母さんの瞳を見つめて頷いた。
「YES.....」とだけ答えて……。
「そう…。ありがとう…」
母さんは人差し指で、そっと頬に零れた涙を拭い微笑んだ。
その笑顔は最初に僕の家に来た時に見せてくれた優しい笑顔と同じだった。
「おい、ジョシュ!」
「は、はい…っ」
突然、今まで黙っていた父さんがいきなり大きな声を出して僕はビクっとした。
「いいか?俺の大事な娘をやるんだ!絶対に幸せにしないと許さんからな?!」
「――っっ」
父さんの顔は何気に赤くて、少し酔っているように見え、僕は唖然とした。
すると父さんは怒ったように、「分かったのか?!返事は!」と聞いてきて、僕は思わず、「はいっ!」と何とも素直な返事をしてしまった…。
「よし!なら持ってけ、泥棒!」
「………………」
おいおい、父さん……
どこで、そんな言葉を覚えたんだ……?
ああ、きっと母さんの母国語を変な風に覚えたんだね…
そんな事を思いつつ、ちょっと苦笑するとを見た。
も涙でいっぱいになった瞳を僕に向けてくる。
そんな彼女が愛しくて僕はそっと頬にキスをした。
「コラ、ジョシュ!」
「うぁ…っ。な、何だよ…っ。ビックリするだろ?」
またしても大きな声を上げた父さんに僕が抗議すると、父さんはフラフラと歩いて来た。
「いいか。一緒に住むのはいい…。だがな…結婚するまで、には指一本触れるな。分かったな?!」
「は…はあ?!な、何だよ、それ…っ」
「何だよ、じゃない!当たり前だろう!大事な娘と婚前交渉する男など許さんぞ!」
「あ、い、いや…あのさ…俺も父さんの息子なんだけど……」
「うるさいっ。息子でも何でも娘に手を出すのは許さんぞっ。いいな?結婚するまでダメだからな?!」
「ちょ…そりゃおかしいだろ?一緒に住むのはいいのに…手は出すなって、どういう条件だよ、それっ」
僕は父さんのメチャクチャな言い分に眩暈を覚えた。
今まで二人に許して貰うまで…と我慢してきたのに、許して貰っても手を出すな?冗談じゃない!
「つべこべ言うな!じゃなきゃ一緒に住むのもダメにするぞ?!」
「…ぐ…っっ」
それを言われると僕も言葉につまる。
はオロオロしながらも僕と父さんの会話に顔が真っ赤になっている。
すると父さんはを見て優しく頭を撫でると、
「いいか、。もし、このバカ息子がいやらしい顔で迫ってきたら殴っていいからな?」
「え…?で、でも…」
「でも、じゃない。いいな?ちゃんと結婚初夜まで操は守れよ?」
「―――っっ」
「あなた!!」
父さんの言葉に茹蛸みたいになったを見て、母さんも我慢の限界と思ったのか、突然怒り出した。
その声に今まで偉そうにしていた父さんもビクっとなっている。
「あなた、娘に向かって何バカなこと言ってるんですか?!」
「バ、バカな事じゃないだろう?大事な事じゃないか…っ」
「何言ってるんですか!一緒に住むんだからそんな事を言ったらジョシュが可愛そうでしょう?!」
そうそう!いいぞ、母さん、もっと言えっ
だいたい、一緒に住んでもいいけど手は出すな…なんて生き地獄に等しい。
それなら、いっそ一緒に暮らさない方が体にも精神的にも良さそうだ…(!)
僕はすでにアホらしくなり、心の中でそんな事を考えながら二人の言い合いを見ていた。
「だいたい、あなたは昔から頭が硬すぎます!今時の子なんて婚前交渉は当たり前なのよ?」
「な、何が当たり前だ!そんなハレンチな事は許さんっ」
「ハレンチじゃないでしょ?愛し合ってるんだから当然じゃないですかっ」
「あ、愛し合っていればいいという、その考えがだな、世の中の若者をダメにしているんだ…っ」
「…」
「え?」
「あっちに行ってよう…?」
「で、でも…」
「いいから。どうやら二人は相当、酔ってるみたいだから暫く放っておこう」
二人がギャーギャー言い合ってるのを横目に僕は、こっそりとの手を繋いで隣のベッドルームに避難した。
そして、そっとドアを閉めると少しは静かになる。
「はぁ〜……疲れた…」
との事を話し、緊張したのと、父さんのアホな言い草にドっと疲れた僕は大きなキングサイズのベッドに体を投げ出した。
「ありがとう…ジョシュ…」
「ん……?」
「ちゃんと…話してくれて…」
もベッドに登り、僕のところまで張ってくると、そう言って微笑んだ。
僕はの腕を引っ張り、ギュっと抱きしめると、体を一回転させる。
の上に覆い被さるように抱きしめ、そっと額にキスをした。
「変な条件付きだけど…許して貰えて良かった…」
「…ぅん……」
僕の言葉に、も嬉しそうに微笑む。
「まさかバレてたなんて驚いたけどな…?」
「…ほんと…。でも…よく考えればアリーにだってバレてたんだし…いつも私達を近くで見てた二人が気づかないはずないのよね…?」
「それも、そうだ…」
僕はちょっと笑うと、の前髪をそっと手で払い、もう一度額に優しく口付ける。
そしてコツンと額をあわせ、の奇麗な黒い瞳を見つめながら、「愛してるよ…。もう…離さないから…」と呟き、そっと唇を重ねた。
何度も触れては離し、時折、鼻にもチュっとキスをすると、もくすぐったそうにする。
隣では、未だに二人の言い合いが聞こえてくるけど、今の僕にはちっとも気にならなかった。
「今夜…父さん達を部屋に帰したら一緒に寝ようか…」
そう呟けば、も照れくさそうに微笑んで小さく頷く。
僕もちょっと微笑むと、もう一度唇を塞ぎ、今度は少しだけ深く口付けた。
バン………!
「こらーーー!!!何をしとるか、ジョシュ!!!」
「うぁ…!」
「キャ…っ」
突然、ドアが開き、父さんの怒鳴り声が聞こえて僕はガバっと起き上がった。
「い、今言ったばかりで、な、何してたんだ?!ん?!」
「な、何もしてないって!キスしてただけだろ?!」
「な、何だとーー?キスも許さーん!」
「はあ?そんな無茶苦茶な…っ」
「無茶もお茶もあるか!こい、!今夜は父さんと一緒に寝ような?!」
「え…え?」
「お、おい、父さん、何バカなこと言って…っ」
「うるさい、お前は黙ってなさい。おいで、」
「キャ…っ」
父さんは無理やりの手を引っ張り、ベッドルームから出て行く。
僕は慌てて、その後を追い掛けた。
「ちょ…母さん、何とか言って…ってあれ?!」
リビングを見れば母さんはソファーに転がりスヤスヤと眠ってしまっている。
久し振りに飲んだワインのせいで実はかなり酔っていたのだろう。
「おい、ジョシュ。今夜は母さんと一緒に寝ろ。私はと寝るからな?」
「ダ、ダメだよ、そんなの!を返せよ、酔っ払いっ」
「ぬ。私は酔ってはいないぞ?ひっく…」
「酔ってんだろ!」
何だか漫才みたいなツッコミをしつつ、父さんって酔うと、こんなキャラだっけ?!っと眩暈がした。
「あ…ジョ…ジョシュ…っ」
「…っ」
気付けば父さんはの手を引いたまま廊下に出てしまい、僕は慌ててそれを追いかける。
全く!せっかくと一緒に寝ようと思ったのに何で実の父親と取り合わないといけないんだ…っ
僕は必死に廊下を走りながら、それでも心のどこかで、との事を認めてもらえた事を嬉しく思っていた―――
Postscript
久々の更新ですー(汗)
何だか今回でラストとして書き始めたんですが無駄に長くなり(苦笑)
ラストは次回となります。
ああ、お父さんのキャラが壊れ、ジョシュまで壊れてしまいました^^;
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】