Vol.22...The start is a day of rain...





It is on the side indefinitely.


It will not change in years how many


With a smile if looking up there


It is on the side indefinitely.


From whom are you so on the side


It knows for a long time than you in case of you...






It is always on the side.


Positively by amazed


My hand is pulled and it walks.


It is always on the side.



From whom are you so on the side


It knows my thing for a long time than me.....







― いつまでも側にいて


何年経っても変わらない


 見上げれば、そこにある笑顔


いつまでも側にいて


 そう 誰よりも側にいて


君のことなら 君よりもずっと知ってる…






 いつだって側にいて


呆れるくらい前向きに


 私の手を引いて歩いて行く


いつだって側にいて

 
 そう 誰よりも側にいて


私よりもずっと私の事を知ってる…











何もかも打ち明けた、あのニューヨークの夜から一週間、僕とは両親と共にミネソタへと帰って来た。
そして僕が前から見つけておいた家に引越す当日、空は快晴……のはずが朝から冷たい雨が降っていた。


「何も、こんな日に引越さなくても…。もっと天気のいい日にしたら良かったんだ…」


さっきから隣でブツブツ言いながら荷物を運んでいる父さんに、僕は大きく溜息をついた。


「何言ってんだよ。何だかんだ理由をつけては先延ばしにさせてたクセに!これ以上、待てないからな?」
「な…!何も理由をつけてなど…!」
「よく言うよ。を手放したくないんだろ?」


僕はそう言いながら反対側のソファーを持っている父さんを睨んだ。
それには父さんも目を反らして口笛を吹いている。


「それより今のうちに家具だけ運んじゃうよ?今はやんでるけど、また降ってきそうだしさ」
「わ、分かってるよ…!ったく……いつから、こんな生意気に…」
「何だって?」
「何でもないっ」


父さんはムキになって口を尖らせると僕と一緒にソファーをリビングへと運ぶ。
そこに母さんが歩いて来た。


「何を言い合いしてるの」
「あ、母さん」
「ジョシュ、キッチンの方は片付いたわ?あとは二階と三階ね」
「ああ、サンキュ。は?」


僕はソファーを置くと手を払って母さんの方に歩いて行った。


は上にいるわ?三階のベランダを気に入ったみたいよ?」
「あはは…そっか。あそこはの部屋にしてもいいかな?」


僕はそう言って階段の方に行くと上に上がって行った。


前に住んでいたミネアポリスから、ここセントポールに家を買った。
父さんが、どうしても実家から近い場所にしろと、うるさいので渋々だ。
だけど、この家はも、かなり気に入ってくれたし自分でも気に入った。
建物は三階建てで、全体的に白い壁、コゲ茶色の屋根に、煉瓦造りの煙突。
二階のテラスを合わせると合計で4つもあり、中もかなり広い。
周りは静かで大きな木々が覆っているが裏には平屋作りの一軒家も建っていて、それほど寂しい場所でもない。
家の前には広いスペースがあって車が4台ほどは止められそうだ。


ここが僕との新居…


そう思うと自然に顔がニヤケてくるのも仕方のない事だった。


?」


まず二階のリビングを覗いてみた。
ここはと話して、大きなシアタールームにした部屋だ。
だが、そこにの姿はなく、それでもスッカリ片付いた部屋を見て僕は笑顔になった。


「へぇ…こうして家具を入れると雰囲気も変わるな…」


壁にかけられた大きなスクリーンと四方に置かれた大きなスピーカー。
そして真ん中に置かれた、かなり巨大なソファーベッド。
ベッドの上には沢山のクッションが置かれている。
僕は部屋の中を見渡して、それから次に奥の部屋まで歩いて行く。
そこはゲストルームにしようと二つほど部屋を開けてある。(ベッドもツインで用意してあるのだ)
だが、そこにもはいなかった。


?」


バスルームやトイレ、物置など、全てを覗いたが、どうやらは二階にはいないようだ。となると…
僕は二階の廊下から更に上へと続いている螺旋階段を見上げた。


「やっぱ三階か…」


ちょっと苦笑しつつ、階段を上がっていくと、三階にある二人のベッドルームへと行ってみる。
すでにキングサイズのダブルベッドを入れてあり、真っ白なブラインドやカーテンも設置してあるので今日からでも使えるようになっていた。


「ここにもいないか…」


軽く息をつきつつもベッドへ腰をかける。
今日からと二人、誰にも邪魔をされずに一緒に寝れるんだな…
ふと、そんな事を考えてホっとした。
本当は父さんに結婚するまでは別々の部屋で寝ろと言われたのだが、そこは何とか言いくるめたのだ。
三階には三つ部屋があり、このベッドルームの他に二つ、まだ何に使うか決めていない部屋がある。
一つはの個人用の部屋にでもして、もう一つは僕の部屋として使ってもいい。
も一人になりたい時だってあるかもしれない…と思ったのだ。
(まあ、僕はいつでもと一緒にいたいんだけど…)
そんな事を思いながら立ち上がる。


「さて、と。僕のお姫様は一体どこにいるのかな…?」


そう呟いてベッドルームを出るとの部屋にしようと思っている部屋に向かった。


?いる?」


そう声をかけて中を見れば窓が開いていて白いレースのカーテンが揺れている。


?」


僕は中へ入っていくと、窓の方に近づいた。
するとがテラスに出てボーっと景色を眺めている。
そんな後姿に僕は笑顔になると、そっと足を忍ばせ近づいた。


!見つけたっ」
「キャ……っ」


後ろから強く抱きしめ、そう言うとは驚いたように飛び上がった。


「ジョ、ジョシュ…!もぉ〜ビックリしたぁ…っ」
「ごめん。何してるの?」


僕は、ちょっと口を尖らせ、見上げてくるの額にチュっとキスをした。


「雨がやんだから景色見てたの。ここ眺めが最高!」
「ああ、だなぁ…。周りの家が、ここより低いからだろ?」
「ほんとね?凄く気に入っちゃった!」
「そう?なら良かった」


嬉しそうに微笑むに僕も自然に笑顔になる。


「ここはが好きに使えばいいよ。僕は向かいの部屋を使うから」
「ん〜でも一人で使うかなぁ?」
「一人になりたい時もあるだろ?それにこれからはも俺の事務所で働くわけだしさ。色々と疲れると思うけど?」


そう言ってを自分の方に向けて、今度は頬にキスをした。
だがは少し寂しげに目を伏せる。


「どうした?」
「ジョシュは…一人になりたい時があるの…?」
「え?」
「私は……ずっとジョシュと一緒にいたいもの…」


は、そう呟いて少しだけ口を尖らせている。
それには僕も苦笑いだ。


「そういう意味じゃないよ?そりゃ俺だってとずっと一緒にいたいけど…。は女の子だしさ。一人で使う部屋があってもいいと思っただけ」
「ほんと?じゃあ…一人でいたいと思わなければジョシュはずっと側にいてくれる?」
「いるよ?もちろん」


そう言って微笑むと、もホっとしたように微笑んだ。


「ここに戻って来たら…。また寂しがり屋に戻ったかな…?」


僕はそう呟いてそっとの唇を塞ぐと、彼女の体がかすかに震えたのが分かる。
それすら愛しくて強く抱きしめた。
その瞬間―


「おーーーい!!ジョシューーーーーー!何サボってんだぁ?!早く手伝え!」


と下から父さんのアホみたいな大声が聞こえて来て、僕はギョっとしての唇を解放した。


「ったく…ほんと、いいタイミングで来るよな…。わざとか…?」


僕が苦笑しながら、そう言うとも頬を少し赤くしながらもクスクス笑っている。


…笑いごとじゃ―」
「ジョシュ〜〜〜〜っっ!まさか、お前、に何かしてるのかぁ〜?!!」
「今行くよっ!!!」


今すぐに上がってきそうな勢いに、僕は慌てて返事をすると、の唇に、もう一度素早くキスをした。


「じゃ、ちょっと下を片付けてくるよ。は少し休んでて?それと今日は冷えるし風邪引くから窓は閉めてな?」
「うん。分かった」


は笑顔で頷くと、部屋に戻り窓を閉めた。
僕は急いで階段を下りていくと下では父さんが真っ赤な顔で立っている。


「遅ーーーい!!上で何してたんだ?!ん?!」
「別に何もしてないよ。が片付け終わった部屋を見てたんだ」
「ほんとか?!あのバカみたいにデカイにベッドに押し倒したりしてないだろうな?!」
「バ…!バカじゃないの?!そんな事してないよ!下に父さん達もいるってのに…っ」
「親に向かってバカとは何だ、バカとは!それに私達がいなかったら押し倒すとでも言いたげじゃないかっ」
「そんなこと言ってないだろ?!もう〜それより運ぶよ?こんな事してたら夜になっちゃうよ!」


僕はアホな事ばかり言って来る父さんを無視して外のトラックに歩いて行った。
後はダイニングテーブルと椅子のセットを運ぶだけだ。
僕が先に一人で椅子を下ろしていると、渋い顔をした父さんが出てきて何も言わずに手伝いだした。
ふとエントランスの方を見れば母さんが苦笑混じりの顔で、こっちを見ている。


(はは〜ん…さては母さんに怒られたな…?)


僕はそこに気づき、ちょっと噴出しそうになりながらも最後のテーブルを運ぶのに父さんを呼んだのだった。





















「ねぇ、お母さん。夕飯どうしようか?ここで食べてく?それとも、どこかに食べに行く?」


私はキッチンに行って片付けている母さんに声をかけた。


「そうねぇ。ここは今日からでも使えるけど…どうしましょうか」


母さんも顔を上げて困ったように息をつく。
だが、直ぐに笑顔で、「どう?上は片付いた?」と聞いてきた。


「うん。もう全部、家具も入ったし。三階のテラスは素敵よ?ジョシュが私の部屋にしていいって」
「そう。でも本当に素適な家をよく見つけたわ?私達の家からも近いし…いつでも遊びに来てね?」
「もちろん!色々、ジョシュの好物を教えてもらいに行くわ?」


私がそう言って舌を出すと母さんも楽しそうに笑った。


「いつでもいいわよ?今日からは、あなたがジョシュの健康管理もしていかないといけないんだから」
「う、うん…」
「ジョシュは一人だとジャンクフードばっかりだから、その辺は気をつけて?一緒に、そんな物ばかり食べてちゃダメよ?時々ならいいけど」


母さんは、そう言って私の頭を軽く撫でると、優しく抱きしめてくれた。


「まだ…こんな事を言うのは早いんだけど…。ジョシュと…幸せになってね?」
「お母さん……」


その言葉に私が顔を上げると、母さんは少し涙ぐみながらも優しく微笑んだ。


「ほんとなら…すぐにでも結婚していいのよ?ほんとに今のままでいいの?」
「お母さん…。それはこの前も話したでしょ?私、まだ22歳よ?結婚もしたいけど…もう少し色んなこと勉強したいし仕事もしたいの。だから―」
「そう…そうね。は、これからですものね…。それに結婚なんてしなくても…好きな人と一緒にいるだけで幸せよね?」


母さんに、そう言われて私は顔が赤くなった。


「俺は今すぐにでもを奥さんにしたいけどね?」
「…ジョ、ジョシュ…っ」
「…あら…お父さんも…」


振り向けば、そこにはジョシュが笑顔で、父さんが苦虫を潰したような顔をして立っている。


「何言ってる!結婚は、まだ早いっ」
「何だよ、父さん…。別に早くはないだろ?」
「何言ってるか!まだ22だぞ?」
はね。でも俺は24歳」
「そんな事は分かってるっ!」


ジョシュの言葉にまたしても顔を真っ赤にしながら怒鳴る父さんに、母さんも呆れ顔だ。


「ちょっと、あなた…大きな声出さないで?それより…夕飯はどうする?どこかに食べに行きましょうか?」
「う、うむ…。そうだな…。そうするか…」


父さんも、そこは頷き、私に微笑みかけた。


「じゃあ新居&引っ越し祝いに何か食べに行こう。は何が食べたい?」
「ん〜と……」
「あ、か、辛くないもので頼むぞ?」


この前ので懲りたのか、そんな事を言っている。
それには私もジョシュも、そして母さんも噴出した。


「じゃあ…お寿司がいいな?」


私が、そう言うと父さんもホっとしたように息をついて、「ああ、お安い御用だ」と笑顔を見せた。


「じゃあ…もう運ぶものはない?」
「ああ、全部終わったよ?リビングもダイニングも片付いた」
「そう。じゃあ、もう行きましょうか」


母さんは、そう言って荷物を持つと父さんを促し、エントランスへと向かう。
ジョシュはそれを見てから私の方に歩いて来て、ギュっと手を握ってくれた。


「父さん、酔わせて、サッサと帰そう?」
「え?」
「このままだと泊ってくとか言いそうだしさ」
「そ、そうなの?」


それには私も驚いて顔を上げた。
ジョシュも眉を寄せて苦笑しながら、


「さっき二階に上がってくのが見えて俺もこっそりついて行ったんだ。
そしたらゲストルーム見ながら、"いつでも泊れそうだな…"なんて呟いてたからさ」


と思い切り顔を顰める。
それを聞いて私も驚いた。


「そんなんじゃ実家にいるのと変わらない…」
「だろ?だから今日は何としてでも帰さないと…。一回泊れば、また次も来やすくなるだろうし、そうなると困る」


ジョシュは、そう言いながら、「ま、とにかくワインとか日本酒を沢山すすめて酔い潰そう。がすすめたら絶対、断らないから宜しくな?」
と私の頬にチュっとキスをした。
私もちょっとだけ噴出すと、「分かった。頑張るね?」と笑顔で頷く。
ちょっと父さんには可哀相かな…?とも思ったが、ジョシュと一緒に住む初日から親同伴というのも全然ロマンティックじゃない。


私は張り切って父さん達の待つエントランスへと走って行ったのだった――



















「ほら、お父さん…!車に乗って!」
「んん〜?何ぃ〜?車ぁ〜?」


父さんはフラフラしながら母さんに腕を支えられつつ顔を上げた。


「父さん、タクシーだよ。早く乗って」
「何お〜?俺は帰らんぞ〜?一緒にお前たちの家に行く!今日は泊るぞ〜!週末だしな!」


案の定、そう言いだした父さんに僕は呆れつつも、「だから二台に分かれていくんだよ。父さんは母さんと、この車に乗って」と母さんの方を見た。
すると母さんは僕にウインクをして、"任せて"というように微笑む。


「そ〜〜か〜。じゃあジョシュの家に行くんだな〜?じゃあ母さん早く乗ろう」
「はいはい。まずは、あなたが先に乗って?」


母さんは、そう言って父さんを車に押し込むと、僕らの方に振り向いた。


「全く…飲ませすぎよ?気持ちは分かるけど…」
「ごめん。だって絶対、泊るって言うと思ったからさ」
「まぁねぇ…。ほんと困った人だわ?許すって言ってみたり、でも手を出すなって言ってみたり…」


母さんは呆れたように肩を竦めると、は少しだけ頬を赤くした。


…」
「な、何?お母さん…」


母さんはの頬に手を添えると、


「お父さんのことは気にしないで…。そうしていい…と思ったなら、自分の気持ちに正直になっていいのよ?」


と言って微笑んだ。
その言葉の意味を分かったのか、は顔が真っ赤になってしまう。


「お、お母さん…っ」
「ジョシュも」
「え…え?!」


不意に自分にまでふられ、ドキっとした。
だけど母さんは真剣な顔で僕を見上げると、


「あなたがを大事にしてくれてるのは分かってるわ?だから二人の気持ちが自然にそうなった時は
父さんの言った事は気にしないでいいから。分かった?」


と言ってきた。
さすがに母親に、そんな事を言われて僕も顔が赤くなるも、そこは素直に頷いておく。
そんな僕に母さんも満足そうに微笑むと、「じゃ…今日は雨の中の引越しで疲れたでしょ?ゆっくり休んで」と言ってタクシーに乗り込む。
このまま父さんを家に連れて帰ってくれるだろう。


「お休み、母さん」
「お休みなさい」
「お休み。二人とも」


母さんはニッコリしたまま、そう言ってドアを閉めた。
するとタクシーはすぐに発車して見えなくなる。


「はぁ……。じゃ、俺達も帰ろうか」
「う、うん」


やっと二人きりになれて僕はの手をそっと掴むと、家の方に歩き出した。
家はここから10分くらい歩いたところにある。
父さんに飲ませるのに、僕も付き合って少しは飲んだからか、多少の酔いはあった。
ゆっくりと歩きながら夜風に吹かれると、少し気持ちいい。
だがはさっき母さんに言われた事を意識してるのか、急に黙ってしまった。
少し恥ずかしそうに俯きながら歩いているを見て僕はちょっと笑顔になると繋いだ手を離し、そのままの肩を抱き寄せる。


「こうして二人で同じ家に帰るって何だか嬉しいな?」
「え…?あ…。で、でも前だって、そうだったじゃない…?」
「ん〜。でも実家と二人の家っていうのは違うだろ?気持ちがさ。何だか凄く幸せな気分だよ」
「…そっか。そうだね?もう二人の家なんだ…」


僕の言葉に、もそう呟くと本当に嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔が可愛くて、僕は少し屈むと、の頬に軽くキスをした。


「ジョシュ…?」
「早く帰ろう…」


僕は、そう言って、また手を繋ぐと少しだけ足を速めた。


早く"二人の家"に帰りたかった。


と二人で………


これから、ずっと一緒なのに…と、自分に苦笑しながら。

















、出た?」
「うん」


ドアの開く音に僕が台本から顔を上げると、がバスタオルで髪を拭きながらリビングに入って来た。
台本をテーブルの上に置くとがいつものように膝の上に座り、首に腕を回してくる。


「次の映画の台本?」
「ん?ああ、これ?そうだよ」
「どんな映画?」
「ん〜。イギリス映画でさ。俺は美容師の役」
「ジョシュが美容師?何だか似合いそう」
「そう?」


の言葉にちょっと笑うとそのままの腰に腕を回しソファーの上に押し倒す。


「ジョ…ジョシュ?」


急に視界が一転したからか、は驚いたように目を丸くした。
その顔が可愛くてそっと額に口付ける。


「やっと二人で暮らせるなんて…夢みたいだな…」
「…ジョシュ…」


僕は今までの事を思い出しながら、今の幸せを感じて、そう呟いた。
は少し照れくさそうに、それでも笑顔を見せて小さく頷く。


「私も…」
「ほんと?」
「うん…。だって…前は、いつかジョシュと離れ離れになっちゃうんだって思ってたから…。今、こうして一緒にいれて凄く幸せ…」


は、そう言うと少しだけ目を伏せる。
の言葉に僕は胸が熱くなってちょっと微笑んだ。
そのまま顔を近づけの唇を優しく塞ぐと、小さな体が少しだけ緊張したのが分かる。
だけどもう僕を止める人はいないから、そのまま少しづつ求めるような口付けに変えていくとが胸元をギュっと掴んで来た。
その仕草が可愛くて更に深いキスをしながら口内までも愛撫していく。
このまま行けば確実に僕の理性なんて吹っ飛んでしまっていただろう。
だけど、そこに二人の甘い雰囲気を壊すような携帯電話が鳴り響いた。


「ん…ジョ…シュ…電話…」
「いいよ…。どうせ父さんだろ…?放っておこう…?」


僕はそう言って、もう一度の唇にキスしようとしたが、は顔を背けてしまう。
それには少し寂しくなったが、の顔が真っ赤なのを見て軽く息をついた。


「分かった…。出るよ…」


が恥ずかしそうな顔をしているので仕方なく起き上がり、テーブルの上に置いたままの携帯を手に取った、


(はぁ…もぅ、何で電話なんか…)


そう思いつつ通話ボタンを押した。


「Hello......?」
『Hello、Hello?ジョシュ〜?』
「…リジー?」
『そうそう!元気?!』
「あ、ああ…。元気だよって、この前電話で話しただろ?」


僕は古い友人の言葉に苦笑しながら軽く息をつく。
隣のも、リジーと聞いて笑顔で僕の腕にしがみ付いてきた。


「どうした?」
『うん、あのさ!引越し今日だって言ってただろ?だから、お祝いの電話かけたんだ』
「そっか。サンキュ」
『もう無事に終わった?』
「ああ、何とかね。雨で大変だったけど」
『そっかぁ〜。じゃあ、もういいよね?』
「………何が?」


リジーの言葉の意味が分からず、僕は首を傾げた。
その時、受話器の向こうで、『明日、ジョシュんとこ行くから泊めろよ〜〜ぉ?!』というバカでかい声が聞こえて来て思わず携帯を耳から離す。


「ショ……ショーン?!」


そのバカっぽい(!)声に聞き覚えがあり、僕は思い切り顔を顰めると、


『ピンポーン!ご名答!正解者にはミネソタはセントポールへの一泊旅行をプレゼント〜〜!』


なんて言う、またもバカ丸出しの声が聞こえてきた。


「ちょ…何の話だよ…っ!」


僕は嫌な予感がして、そう怒鳴り返すと、隣でニコニコしていたもギョっとしたような顔で見上げてくる。


『何の話って、そりゃ〜もちろん"二人の愛の巣を拝見しに行こう会"が発足されたんだよ〜!なぁ?リジー! ―うん、そうそう!―』
「バ…バカ言うなよ!!」
『バカなことじゃないだろう?や〜っと二人で暮らせるようになった&両親に認めてもらえたお祝いもかねてだなぁ〜、
友人として俺とリジーが行く事にしたんだよ!文句あっか?』
「あ、あるに決まってんだろ!!来るなよ!」


こんな住み始めたばかりで邪魔なんてされたくない!
そんな事を思いながら怒鳴ると受話器の向こうでは二人でコソコソと何か話している様子だ。


「お、おい!聞いてるのか?!」
『Ah〜Hello、Hello?ジョシュくん?』
「何だよ!」
『明日の夕方頃に着くから夕飯、用意して待っててね? ―あ、僕、日本食がいいな〜?宜しくぅ〜!―』
「お、お前等、ふざけんな!」


あまりに頭に来て、そう怒鳴ってみたものの、そこで電話は切れていた。


「う…嘘だろ〜?」


携帯を持つ手を下ろしガックリと頭を項垂れた。
するとが心配そうに僕の背中に手を置いてくれる。


「ジョシュ…どうしたの?リジーとショーン、何だって?」
「はぁぁ…。明日…来るって…」
「え?どこに?」
「……この家…」
「え?遊びに来てくれるの?!」


はそこで笑顔になり、僕は悲しくて顔を上げた。


「何で喜ぶんだよ…。邪魔しに来るって事だよ…?」
「でも会うの凄く久し振りじゃない!特にショーンなんて私が高校卒業した後から会ってないもの!」
「そうだけど……」


と言って言葉を切った。
は本当に嬉しそうにしているからだ。


はぁ…まあ…。にしてみれば僕意外で初めて打ち解けた奴等だし…久々に会えるのが嬉しいのかもなぁ…
でも…だからって何も明日、来なくたって…!


僕は本当に憂鬱になって溜息をついていると、が笑顔のまま顔を覗き込んできた。


「ねね。明日のいつ頃来るの?私、夕飯の準備するから」
「ああ、そんな事も言ってたな…。日本食が食べたいってリジーが…。来るのは夕方らしいよ?」
「そうなの?じゃあ明日マーケット行って買い物してこなくちゃ!あ、その前に家に行って、お母さんに日本料理のレシピも書いてもらおっと!」


はそんな事を言いながらウキウキしているようだ。
その嬉しそうな顔を見ていると僕もまあ、いっか…という気になってくる。
だけど…そうなれば…


「ヒャッ…ジョ、ジョシュ…?!」
「もう遅いし寝よう?」


を抱き上げると僕はそのままリビングの電気を消して階段を上がっていく。
それにはも驚いたように僕にしがみ付いてきた。


「あ、あのジョシュ…」
「明日になったら邪魔者がいて二人でゆっくり出来ないだろ?」


少し頬の赤いにそう言って微笑めばは耳まで赤くしてしまった。
の頬に軽くキスをすると三階にあるベッドルームの中へと入っていく。
大きな新しいベッドの上にを寝かせると、そのままさっきの続きのようにキスをした。


「ん…ジョシュ……」


は驚いたように目を見開いたが、優しいキスをくり返すと次第に体の力を抜いていく。
僕はゆっくりの上に覆い被さって少しづつ口付を深くしていった。
は少し怖いのか僕の胸元をギュっと握ったままでそれが凄く可愛い。


父さんは、あんな事を言ってたけど、実際に、こうして一緒にいるのに手を出すななんてきついよ…
この際、無視だ、父さんのことはっ。
母さんは、ああ言ってくれたんだし……
いや、でもは怖がるだろうか…。


そんな事を思いながら、僕の体もゆっくり熱を帯びてきて自然にキスも求めるようなキスに変わっていく。


「ん…」


の少し苦しげな、でも甘い声が響き、僕はそっと唇を離すと、「……愛してる…」と呟いて、もう一度唇を重ねる。
するとも完全に体の力を抜いた。
僕の理性も限界で、何度もキスをしながらパジャマのボタンに手をかけた…と、その時。
視界に何か不自然なものが飛び込んで来た。


「―――っっ?!」
「ジョシュ…?」


僕が唇を離し、驚いた顔をしているとが首を傾げている。
だけど僕は一気に体の熱が冷えていくのを感じていた。


「ジョシュ……どうしたの…?」
「いや……そこに…」
「え?」


僕の言葉に、が体を起こし、ベッドボードの方に視線を向けた。




「あ…!お父さん?!」
「ああ……」


僕は溜息をついてベッドに座ると、その大きく引き伸ばしてある写真を手にした。


そう、そこにあったものは――


なんと父さんの爽やかスマイル、しかも拡大した写真で、「いつでも見張ってるぞ!結婚までは手を出すな!」 というメッセージ付だった…


「な…何で、こんなものが…っ」
「きっと…昼間、こっそり置いてったんだよ…。ったく!ろくな事しないんだから…!」


僕は眩暈すらしての隣に寝転がり、特大の溜息をついた。


もう…最悪だ…。なんて親だよ、全く…!
勝手にベッドルームに、こんなものをコッソリ置いて行くなんて……!
おかげで、スッカリ、そんな気分じゃなくなったよ…っ


そりゃ、そうだろう。
父親の爽やかスマイルの特大版を見てしまったら、そんな甘い雰囲気も何も気持ちがまず萎える…


「はぁぁ…」
「ジョ、ジョシュ…?」


僕があまりにグッタリしていたからか、が心配そうに顔を覗き込んできた。
それには笑顔を見せてそっとを抱き寄せると額にキスを落とす。


「今日は大人しく寝よっか…」
「う、うん…」


も恥ずかしそうに頷くと僕の隣に寝転がる。
僕も体をの方に向けると、今度は唇にチュっと軽くキスをした。


「これからはずっと一緒だから…」
「うん…一緒だね?」


の言葉に微笑むと、僕は最後に軽くお休みのキスをしたのだった―























「ジョシュ、次は野菜のコーナー行こう?」


私はそう言って張り切ってカートを押して行くと、ジョシュが慌てて追いかけてきた。


、走ったら危ないだろ?俺が持つから…」
「でも…ジョシュが持ってたら目立っちゃうよ?」
「いいよ、そんな…」
「ダメだよ〜。ジョシュは俳優なんだから。こんな買い物カート押してるとこファンの人に見られたら、どうするの?」


私がちょっと口を尖らせ、そう言うとジョシュは困ったように微笑んだ。


「別に俳優やってるからって買い物カート押してちゃ変ってことはないよ?それに誰に見られてもいい。
そんな事より、が転ばないかって事の方が心配だよ…」
「あーまた子供扱いして…!私だってカートくらい押せるもん」


そう言ってカートを押して角を曲ると、目の前の人のカートにガン!っと当たって私は後ろに転んでしまった。


…!」
「ぃたた…」
「大丈夫か?」


ジョシュが慌てたように私を抱き起こしてくれて顔を覗き込んで来る。
私にぶつかったおばさんは、「気をつけてよねっ」と文句を言って巨体を揺らしながら歩いて行ってしまった。


「ったく…。あんな巨体にぶつかるなんて…」
「ご、ごめんなさい…」


ジョシュに頭を撫でられて私はガックリ項垂れると、急に抱き寄せられて驚いた。


「謝らなくていいけど…。ほんと危なっかしいから、これは俺が持つよ?」
「え?で、でも……ん…っ」


ジョシュの言葉に顔を上げた瞬間、唇にチュっとキスをされて頬が赤くなった。


「ジョ、ジョシュ…っ。こ、こんなとこで…」


誰かに見られたんじゃないかと周りをキョロキョロしていると、ジョシュがクスクス笑っている。


「誰に見られてもいいって言ったろ?ほら、行くよ?」


ジョシュはそう言うと私の手を繋いで、片方の手でカートを押していく。


も、もう……いつも気づけばジョシュのペースなんだから…
でも…それが今は何だか心地いい…


、野菜は何買うの?」
「え?あ……えっと…ジャガイモに…ニンジン、玉ねぎ…くらいかな?」
「OK!後は?」
「後は…豚肉と…鶏肉…。他は明太子に……海老?」
「そんなに買って何を作るんだ?」


ジョシュが笑いながら私の頭にポンっと手を置いた。


「さっき、お母さんに色々と聞いてきたの。作ってからのお楽しみね?」
「へぇ〜。じゃ、期待してようかな?」
「あ、あの…あまり期待されても…」


私が慌てて、そう言うとジョシュは小さく噴出して私の頬にキスをした。


「俺は何でもいいよ?が作ってくれるなら」
「――っ」


その言葉にすらドキっとして顔が熱くなってしまった。


「あ、ありがと…」


私がそう言うとジョシュは嬉しそうに微笑んで、またカートを押していく。
ジョシュの、そういう優しいところが大好き。
心の中で、そんな事を思いながら私はすぐにジョシュの後を追いかけた。















〜。そろそろリジーたち空港に着くから、俺迎えに行ってくるな?」


キッチンに顔を出して、そう言えば、は一人で忙しく動き回って夕飯の用意をしている。


「あ、ジョシュ。行ってらっしゃい」
「ああ。でも……大丈夫か?一人で…」
「大丈夫よ?それに、まだ4時でしょ?6時〜7時までの間くらいには出きると思うし」
「そう?じゃあ…帰って来たら手伝うからさ?」


僕はそう言っての腰を軽く抱き寄せた。


「ちょ…ジョシュ?」
「行ってらっしゃいのキスはしてくれないの?」
「え……?!」


僕が意地悪な顔でそう言えば、はすぐに赤くなってしまう。


「だ、だって…」


がそう呟いて俯こうとした。
だが、すぐに顎を持ってあげさせると僕の方からの唇にキスをする。


「ジョ…ジョシュ…?!」
からのキスを待ってたら時間がかかりそうだからさ?じゃ、行ってくる」


そう言って、もう一度チュっとキスをすれば、は頬を赤くして口を尖らせた。


「そ〜んな口してたら、またキスするよ?」


ちょっと笑いながらの顔まで屈むと、彼女は慌てて手で口を押える。
そんなが可愛くて、素早く頬にもキスをすると、「じゃ、行って来ます」と言ってキッチンを出た。


(きっと今頃、は真っ赤になてって少しスネてるかもしれないな…)


そんな事を考えると自然に笑顔になる。
本当に……可愛くて仕方がない。


「……愛してるよ…」


キッチンの方を見てそう呟くと、リジー達を迎えに行くべく車のキーを取った。















「ジョシュ!こっち、こっち!」


その声に導かれて人ごみを抜けて行けば、元気よくポンポンっと飛び跳ねているリジーと、その隣で大げさに手を振っているショーンを見つけた。
そして何故か、もう一人…。


「ジョシュゥ〜〜〜ゥ!!久し振りぃ〜〜〜〜っっ!!」
「うあ…オ、オーランド…!!」


僕は前に共演した事のあるオーランドまでが、ここにいる事に軽い眩暈を感じた。
オーランドは勢いよく走ってくるといきなり抱きついて来た。


「うわ、おい、オーランド…!」
「ん〜〜!!久々のジョシュだなぁーーー!日本で再会して以来だなっ!」
「う、うるさい!いいから離せって!」


僕はオーランドの頭をガスガス殴りながら、そう言えば、「何だよ、相変わらず冷たいな!」と頭を擦りながら離れた。


「うるさい!そ、それより何でオーリーまで、ここにいるんだよ!」


そう怒鳴ってリジーを見ればクスクス笑っている。


「いや実はさ〜。オーリーから昨日電話来て、ちょうどオフをロスで過ごしてるって言うし、じゃあ一緒に行かない?って誘ったんだ」
「そうそう。大勢の方が楽しいだろ?それに彼は俺と同じ匂いがする!」


ショーンは、そんな事を言ってオーランドと肩を組んでいる。


「い、いや…きっとバカなとこは似てると思うけど…」
「何だよ、ジョシュ〜!俺のどこがバカなのさっ」


(…そういうとこだよ、オーリィ…)


僕は口を尖らせているオーランドを見て心の中で呟いた。


「それにしたって急に来るなんて…」
「だって二人の新居も見たいしさ?ま、これからずっと一緒なんだしいいじゃん」


リジーはケラケラ笑いながら、そう言うと、サッサと歩いて行ってしまった。
僕は苦笑しながら軽く息をつくと、ショーン、オーランドと共に後からついていく。




「でも変わらないなぁ?ショーンもさ」


車に乗ってから、そう言って後ろを見れば、「そういうジョシュも全然、変わらないよ」と笑っている。
助手席のリジーも、「相変わらずとラブラブなわけ?」と言ってきた。


「ああ、まぁね」


そこは否定しない。
すると後ろの二人もリジーも大げさに溜息をついて苦笑した。


「嫌だねぇ〜ほんと!普段はデビルメーンのクセに、ちゃんの前じゃ、そんな顔見せないんだからさぁ〜」
「うるさいぞ、ショーン……」
「そうそう。優しい顔しか見せてないんだよ?」
「おい、リジィ…」
「へぇ〜俺、まだちゃんは写真だけで会った事はないんだ〜!あ〜早く本物に会いたいな〜!すんごい可愛かったからな〜!」
「オ、オーランド…!に手を出そうとしたら―」
「わ、分かってるから前見てよ、前!」
「あ、ああ…悪い」


オーランドの言葉に警戒心が沸き、慌てて振り向けば隣のリジーに怒られ、僕は小さく息をついた。


(ったく…こんなメンバー予想外だよ…)


少々ガックリしつつ、それでも懐かしいメンバーに気づけば笑顔になる。
そのままの待つ我が家へと車を飛ばした。














「へぇ〜ここ?!すっごい奇麗じゃん!」


リジーが家を見上げて口を開けている。
ショーンもオーランドも、


「うぉ〜〜いいな〜〜!ジョシューー!ここがちゃんとの愛の巣なんだぁ〜!」
「羨ましいなぁ!俺も恋人と一緒に住みたいよ〜〜っっ」


なんて言って騒いでいる。
僕はちょっと苦笑しながら、「入ってリビングで休んでてくれよ」と声をかけてから家へと入って行った。


?ただいま!」


家に入ると、いい匂いが漂ってきて、僕はすぐにキッチンに向かう。


「あ、ジョシュ…!お帰り!」


が鍋に蓋をして、僕の方に歩いて来る。


「リジーとショーンは?」
「ああ、リビングに…。それより、かなり出来たね?後は?手伝う事ない?」
「うん。後はサラダと…ミソスープだけだから。ね、二人に挨拶してきていい?」
「え?ああっと……実は…さ…。二人じゃないんだ…」
「え?どういう…」


が首を傾げた、その瞬間、「〜〜〜!久し振り〜〜〜!!」と叫びながらショーンが入って来た。


「あ、ショーン!」


も驚いたように、それでも笑顔で抱きついて来たショーンに、「久し振り!元気そうね?!」なんて声をかけている。
それには僕もギョっとした。


「お、おいショーン!を離せ!!」
「いだ!な、何だよ、ジョシュ〜!久々なんだからいいだろう?!」
「ダメだよ!!ったく油断も隙もあったもんじゃないっ」


僕はショーンの腕からを取り返すと、そう怒鳴った。
その時、一際大きな足音が響き、オーランドがキッチンに飛び込んで来た。


「あ!ちゃんだ!!」
「…え?!」


オーランドは僕の腕の中にいるを目ざとく見つけ、目の前までくると、


「俺、オーランド・ブルーム。前にジョシュと共演したんだっ」
「あ…はい、知ってます…。あの…リジーとも共演してましたよね?」
「あ、うん、そうなんだ!だから、今日はこうして誘って貰っちゃって!いやあ〜でも写真で見るよりも数倍可愛いなぁ〜!」


オーランドはそう言いながらの手を勝手に握りしめブンブンと握手をしている。
はといえば、やはり初対面の人には未だ緊張するのか、顔を赤くしながら僕の方を困ったような顔で見上げてきて思わず笑顔になった。


「こいつとショーンは似た部類だから、そんな緊張しなくていいよ?」


そう言っての額にチュっとキスをすると、が照れるよりも早くオーランドが奇声を発した(!)


「あぁぁぁ〜〜〜!!そんな目の前でヌケヌケと!!」
「う、うるさい、オーランド!!その突然叫ぶクセ直せ!!」
「あはははっ。オーリーには何言っても無駄だよ?」


そこにリジーが大笑いしながら入って来た。


「あ、リジー!」
「やあ、!久し振り!」


はリジーを見て笑顔になり、僕の腕を抜けてリジーの方に歩いて行ってしまった。
それが少しだけ悔しい…なんて思っていると、オーランドがニヤニヤしながら、「あは!リジーに大事なちゃんを盗られちゃったね?」
なんて言うもんだから軽く頭を小突いてやった。


「ぃたいよ、ジョシュ〜!」
「うるさい。いいからリビングに戻れ。ほらビールでも飲んで待ってて」


僕は冷蔵庫から、先ほど買ってきたビールを出してオーランドとショーンに持たせた。
すると二人は渋々キッチンから出て行く。


「何、、ほんとに日本食作ってくれたの?」
「うん。だってリジーのリクエストでしょ?ちょっと味は保証ないけど」


がそう言って笑うとリジーは優しく微笑んで、「僕も何か手伝うよ。これでも料理好きなんだ」と言って作りかけのサラダの入ったボールを覗いた。


「ほんと?じゃあ手伝ってもらおうかなぁ 」
「ああ、いいよ。あ…ジョシュ、いい?」


リジーは、そこで僕を見て聞いてきた。
それには仕方なく頷く。


「ああ、手伝ってやって。量も多いし。俺は二人の相手してるからさ」
「ほんと?じゃあ頑張って」


リジーはそう言って笑うと、と仲良く夕飯の準備にかかっている。
それを横目で見つつ、軽く息をつくとリビングに戻った。


「あれぇ?ジョッシュ、どうしたの?追い出された?」


リビングに行けば、"能天気コンビ"が何だか楽しそうに話している。
僕は何も答えず、ソファーにドサっと座ると、オーランドがススス…っと隣にやってきた。


「何、不機嫌な顔してるんだよ〜!久々に会ったんだから、もっと楽しそうにしてよ。はい、ビール」
「はいはい…。ったく……暫くと二人きりの予定だったのに…」
「まあまあ!これからはずっと一緒だろ?いいじゃん、たまにはさ!」


ショーンもそんな事を言いながら楽しげに笑っている。


「まあ、そうだけど…。ショーンもオーランドも恋人とかいないわけ?オフに会うようなさ」
「うわ、痛いとこついちゃう?」
「ほーんとだよなぁ?ちょっとちゃんと上手く行ったからって!」


事情はリジーから聞いたのか、二人は、そう言いながらブー垂れている。


「でもさぁ、結婚はしないの?」
「え?」


ふと思い出したようにショーンが僕を見て聞いてきた。


「いや…結婚は、まだ…かな?」
「そうなの?こうして一緒に住むんだから結婚したらいいのに」
「そうだよな〜?いつかはするんだろ?」
「何だよ。オーランドまで…。まあ、いつかはするよ?」


僕は煙草に火をつけて、そう言うと、「「えぇ〜?!いついつ?!もうプロポーズしたわけ?!」」と二人揃って奇麗にハモっている。
それには、ちょっと噴出した。


「まだ、してないよ?ちゃんとはね」
「そうなの?ダメじゃん!いってやらないと!」
「そうだよね〜?可哀相だろう〜?」
「な、何だよ…。だって、まだ結婚は早いって言ってるんだよ…」


そう言って少し顔を反らしながら、煙草の煙を吐き出すと、二人は同時に息をついて僕を見た。


「そんなの今はそうかもしれないけどさぁ…」
「そうそう。プロポーズくらい先にしといた方がいいよ?いつ他の男に攫われるかもしれないんだし。例えば俺とか♪」
「おい、オーランド!そのジョークは笑えない」
「は〜い」


僕がジロリと睨むと、オーランドはペロっと舌を出して肩を竦めた。
そこへが出来上がった料理を運んでくる。


「お待たせ!リジーが手伝ってくれたら、すぐ終わっちゃった!」
「うわー美味しそう!やっぱいいねぇ〜女の子が作ってくれた料理ってさ〜。ちゃん俺のお嫁さんにならない?」
「え?あ、あの……」
「おい、オーランド!」
「は〜いはい」


リジーの言う通り、こいつにだけは何を言っても無駄だと思いつつ、思い切り息をついていると、
「はいはい〜次々に運んでくるから、テーブル開けておいてねー」とリジーも料理を運んで来た。


が作ってくれたのは母さんが得意な肉じゃがやササミの天ぷら、海老パンシンジョウ、ジャガメンタイと他にも沢山あった。


「皆で飲むと思ったから、おつまみ系にしちゃった。あ、はいビールも」


がキッチンから皆のビールを出してテーブルに並べていく。
そして僕の隣にちょこんと座った。


「「ではでは二人の愛の巣に乾杯〜〜!!」」


いきなりオーランドとショーンが立ち上がって、そう叫ぶと、リジーも笑いながら、「乾杯!」なんて言いだした。
見ればは真っ赤な顔で僕の顔を見上げている。
そんなに優しく微笑むと、頬に軽くキスをして、皆には、「サンキュ!乾杯!」とビールを持ち上げた。
すると次々に、「おめでとう〜〜!!」と言われて、さすがに、こっちも恥ずかしくなってきたけど、皆の気持ちが今は素直に嬉しかった。












「あ、サラダ、まだあるけど食べる?」
「ほんと〜?ありがと〜。優しいね?ちゃんは〜」
「だろ〜?俺の天使だったんだ」
「おい、オーランド、ショーン。それ以上に構うな」
「「はいはい…」」


僕が二人を睨むと仲良く同時に返事をしてはビールを飲んでいる。
それを笑いながら見てたはサラダボールから小皿にサラダを取り分けるとそれをオーランドに渡した。


「いやぁ〜でもさ〜。あのロケの時から考えれば、ジョシュとが、こうして一緒に住む事になったなんて考えられないね?」


突然リジーが思い出したかのように話し出し、それにはショーンも大きく頷いている。


「そうそう!それに俺は二人が実は愛し合ってたなんて気づきもしなかったしさ〜!まあ、あの頃から恋人同士みたいではあったけど」
「ショーンは鈍いだけだろ?僕は知ってたもんね」


リジーは得意げにそう言うとは恥ずかしそうに目を伏せている。


「悪かったな!でも、あの頃は色々とあったなあ?特にジョシュの昔の彼女事件とかさぁ〜」
「お、おい、ショーン!」


思い出したくもない事を言われ、僕は慌てて腰を浮かせると、それを聞いたオーランドが興味心身で身を乗り出した。


「え?何?何?ジョシュの元カノ事件って!」
「オーランドはうるさい!そんな古い話いいって!」
「あらら。焦っちゃってるよ〜!ほんと凄かったんだよ?」
「リジー!!」


リジーまで悪乗りしだして僕は一気に変な汗が出て来る。
だが隣にいるもちょっと笑ってはいる。


、ごめんな?こいつらの言う事は気にするなよ?」
「え?あ…うん…。もう昔の事だし…いいよ?」
「そう?でも……」


と言葉を切ってショーンを見れば、面白おかしくオーランドに、あの時の事を話している。
それをオーランドは大笑いしながら聞いていた。


(ったく…笑い事じゃないよ…!あの時は本気で、どうしようかと…)


そう思った時、ふと思い出した。


そうだ…あの時…僕はへの本当の気持ちに気づいたんだった…。
ずっと…妹として可愛がってきたの事を…妹としてではなく一人の女の子として大切に想ってたんだということに。
あれから4年以上も経ったんだな…


そう思うと何だか懐かしくて胸の奥が痛くなった。


あれから色々な事があった。
ロケから戻って来たかと思えばの大学行きを聞かされ、かなり動揺したんだったっけ。
と出会ってからあんなに離れて暮らした事がなかったから当初は凄く辛かった。
毎日メールを出したり、電話したりしてた。
僕とは色々な事を二人で乗り越えてきたんだ。
そう思うと改めて、こうして一緒に暮らせるという事が夢のように思えてくる。


「懐かしいね…」
「え?」


不意にがそう呟いて僕を見上げてきた。
その表情はあの頃とは少し違って、4年もの月日が流れたんだと思わせるくらい大人びている。


「私…あの頃はジョシュがいないと生きていけないなんて思って、いつも頼ってばかりいた」
「そうだっけ?それはそれで俺も嬉しかったんだけど」
「そう?私、いつもジョシュのこと困らせてたよ?」
「困った事なんて一度もないよ?」


僕がの頭を撫でながら、そう言えば、は嬉しそうに微笑んだ。


「私…大人になったかな…?」
「え?あ、ああ。なったよ?凄く…。それが、ちょっと寂しいかな?」
「そう?そんなに大人になった?」


は少し照れくさそうに顔を上げて僕を見つめている。
僕は優しく微笑むと、そんなの頬に軽くキスをした。


「ああ…。凄く大人になった…」
「ジョシュの…お嫁さんになれるくらい?」
「え……?」


その言葉にドキっとして、を見れば顔が真っ赤になっている。
すると、それを聞いていたショーンとオーランドが、


「ジョシュ〜!ちゃんから言わせるなよ〜!」
「そうだ、そうだ!ちゃんとジョシュから、そういう事は言ってあげないと!」


なんて言って騒ぎ出した。
その言葉に僕も少し照れくさくて、から視線を反らしたが、それでも思い切っての手を握った。


「ジョシュ……?」
………」
「…?」
「今すぐにじゃなくていいから…。いつか俺と結婚してくれる?」
「――っっ」


僕が真剣に、そう言えば一瞬周りも静かになった。
は真っ赤な顔のまま、僕を見つめている。


「俺は…昔も今も…これから先もずっとだけを愛しているから…。その気持ちだけは変わらないから…いつか俺と結婚して欲しいんだ」
「ジョシュ…」


思い切って、そう伝えると、は大きな瞳に涙を溜めた。
そして握った僕の手をギュっと握り返し、小さく頷いて、


「私も…ジョシュのこと、昔も今も…そして、これから先もずっと大好きだから…。いつか…ジョシュのお嫁さんになりたい…」


と消え入りそうな声で呟いた。
僕はそれだけで胸が一杯になり、皆がいようと構わずを抱きしめる。
途端に、ショーン、リジー、オーランドが、


「「「Wow〜〜!!!!Congratulations〜〜〜〜〜っ!!!!」」」


と叫んで、僕らに抱きついて来た。


「やったな、ジョシュ〜〜!よく言った!!それでこそ男だぞ?!」
「いやほぉ〜〜!!結婚式には呼べよ?ジョシュ〜!!」
「あ、僕、友人代表で何かコメントしたい!」


それぞれ好き勝手な事を言いながらバンバンと僕の背中を殴ってきて、さすがに怒ろうかなと思ったが、
今は本当に胸が一杯でその皆の攻撃から腕の中で泣いているを守るのに必死だった(!)


「さぁ〜!じゃあお祝いにワインでも開けて、パァーーーーっと飲みますか!!」


ショーンは、そんな事を言ってキッチンに走って行くと、勝手にワインを出して持って来た。
それをグラスに注ぎ、皆に持たせると、


「ではでは…!ジョシュと、ちゃんの未来と…ジョシュの一世一代のプロポーズに乾杯〜〜!!」


なんて言ってグラスを持ち上げた。


「「「乾杯〜!!」」」


僕は苦笑しつつもグラスを持ち上げ、「サンキュ…」とだけ答える。
は涙を拭きながらもグラスを持って嬉しそうに微笑んだ。
そこへ…




キンコーン、キンコーン、キンコーン


「ジョシュ〜〜〜!!開けなさーーい!!お父さんだ!!の手料理食べに来たぞ〜〜〜う!」


「げ……っ」
「え?お父さん?」


大きな声が聞こえて来て、僕とは顔を見合わせた。




うるさい仲間に父さんが加わりこの夜は大宴会になったのは言うまでもない…。

















、終わった?」


ベッドルームに静かに入って来たに気づき、僕は本を膝に置いた。


「うん。もう片付け終わった。皆もグッスリ寝ちゃってるみたい」


はそう言ってクスクス笑うと、ベッドの上に上がってきて、僕の隣に座った。
そっと肩を抱き寄せ、頬にキスをすると、「ごめんな?疲れたろ?」との頭を優しく撫でる。
だがは小さく首を振ると、「ううん。凄く楽しかった。オーランドって本当に面白いお兄さんね?ショーンとそっくり」なんてクスクス笑っている。


「ああ、まぁな〜。あの落ち着きのない所がそっくりだよ、ほんと…。あげくは父さんまでが入って最悪だったな…」


さっきの父さんのはしゃぎようを思い出し、僕は苦笑しつつも肩を竦める。


「でも…父さんのあんな楽しそうな顔、初めて見た…。皆と年齢とか関係なく楽しんでたよね?」
「ああ、まあ…。あげく最初につぶれて、さっきリジーに手伝ってもらってゲストルームに運んだはいいけど大変だったよ、ほんと…」
「あはは。きっと明日は覚えてないね?」


はそう言うと僕の肩に、ちょこんと頭を乗せた。
僕も更にの肩を抱き寄せると、暫し沈黙になる。
辺りは静かでベッドルームを照らしているオレンジ色の小さな明かりが二人の影を大きく見せていた。


「あ…雨の音…」
「え?あ…ほんとだ」


静かになった時、外からかすかに聞こえてきた雨の音に、は笑顔で顔を上げた。
窓の方に張っていくと静かにカーテンをあけて外を覗いている。


「わ…結構、降ってきたよ?」
「ほんとだな…。、寒くない?」
「ん…ジョシュがいるから寒くないよ…?」


はそう言って僕にそっと抱きついて来た。
そんなが愛しくて、そのままギュっと抱きしめ軽く額に口付を落とした。
そして静かに窓を開けると、サァァァ…っという音と共に雨の匂いもしてくる。


「静かな雨…。あの日と同じだね…」


が小さな声で囁くように呟いた。
あの日…僕とが出会った日の事だ。


「ほんとだ……」


僕もそう呟いて少しだけ顔を出してみる。
小さな雨粒が顔にはねてきて、気持ちがいい。
辺りはシーンとしていて、まるで、この世に僕との二人だけという気がしてくる。


…」
「…ん?」
「さっき言った事…本気だからさ…」
「え…?」
「いつか…俺のお嫁さんになって?」
「…ジョシュ…」
「さっきは皆の前だったけど…。こうして二人きりの時にも言いたかったから…」


僕がそう言って微笑むと、の瞳に、また涙が浮かぶ。
それを唇で掬ってあげると、「愛してる……。初めて会った時からだけを―」と今の自分の気持ちを素直に伝えた。
その瞬間、の瞳からポロっと涙が零れてそれをもう一度唇で掬うと、「私も…ずっとジョシュだけを愛してた―」
と言って、は顔を上げてくれた。


その言葉が嬉しくて、初めて会った、あの日のように胸がドキンっと鳴った。


あの雨の日…僕は、たった一人の大切な子に出会った。


その奇跡に、全てのことに感謝をしながら、を思い切り抱きしめた―――














私はジョシュの腕に強く抱きしめられながら、静かに降り続いている雨の音を聞いていた。
ジョシュの体温が心地よくて、少しづつ眠くなって来てしまう。


あの頃と同じ体温なのに…あの頃と違うのは…
ジョシュと心の距離が近くなったから…
あの日と同じ雨の日なのに、あの日と違うのは…
兄妹としてじゃなく…ジョシュと愛し合えたから―


今まで築いてきた二人の思い出も何もかも…これからは一緒に、また増やしていける。


いつだって思い出をつくるときは、あなたと二人がいい…


過去も…今も…そして未来であっても―






いつかジョシュと結婚する日が来たら…また今日の日を思い出そう…




出会った頃と同じように、優しく抱きしめてくれた彼の腕の強さを…。




ジョシュの言ってくれた言葉の一つ一つを―









―――二人が結婚するのはまだ数年先のお話。








きっと、その日も…暖かい雨が降ってる――








Fin......





 

 

Postscript

うきゃ〜長かった、このシリーズもやっと最終話まできました(息切れ)
一時、書けなくて更新が遅くなったりしましたが、
これも、沢山の嬉しいコメントを頂いて、本当に感謝しています。
これは私が初めて書いたジョシュ夢なので、つたない部分も多々ありましたが、
最後まで付き合って読み終えて下った皆さん、
本当に、ありがとう御座いましたm(__)m
今後もまた新しい連載等を書いていくつもりですので
宜しくお願いします!
※この後に、ささやかな番外編は書くつもりですので待っててやって下さい^^


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】