Vol.3...Near me...






All that I need is you..All that I ever need


And all that Iwant to do..... Is hold you forever...


Ever and ever...





― 必要なものは君だけ   いつも大切なこと


そして僕が君に望むこと   それは永遠に君と離れないこと


いつまでも  いつまでも…










「うわぁー…可愛いホテル…!」


は思わず声をあげた。
目の前に聳え立つ、ローズ・ビバリーヒルズホテルはビバリ―ヒルズの中心部から少し離れた住宅地にある12階建てのオシャレなホテルだ。


「ね?今日はここへ泊るの?」


は少し興奮しながら、ジョシュへ声をかけた。
僕は笑いながら、「ああ。こういう雰囲気、好きだろ?ここはブティックホテルだから、も気に入ると思ってさ」と微笑んだ。


「うん、こんな可愛いホテルに泊ってみたかったの!ありがとう!ジョシュ」


は嬉しそうに答える。




僕たちは今、ロサンゼルスはビバリーヒルズに来ている。
僕の今度やる映画のスタッフや、共演者たちと合流するためだ。
を連れてくるまでに、かなり大変だったのは言うまでもない。
あの日の夜、に"父さんに頼んでやる"と言ったことから、次の日は朝から父さんの説得。
何とか、毎日、電話をかけること、そして学校が始まる前までには、を帰国させる…という条件で、OKを貰った。
母さんは心配そうにしていたけど、の涙ながらの哀願で、渋々許可を出した。
それに僕がいないと、は情緒不安定になるのか、不眠症を引き起こしてしまう事がある。
母さんは、その事を心配していたので、結局、が体を壊してしまうくらいなら…と思ったようだ。
無事に両親の許しをもらい、も急いで用意をして、今朝、二人でミネアポリスを出発。
午後にはロスへとつき、すぐに宿泊先にと決めていた、このホテルへ来たというわけだ。
ホテルは僕のマネージャーに、リクエストをしておいて予約を取ってもらっていた。


僕とは最上階の部屋へと案内され、中へと入った。
とってもらった部屋は一つ。


(どうせ二つ取ったって、は一人じゃ眠れないからね)





だが、僕はその部屋に入って、少し驚いた。
広くて丸い感じのその部屋はオレンジ調の明るいストライプの入った壁紙に、オレンジのベッド。
ベッドカバーにいたっては花柄が彫られた感じの柄で、ついでにクッションも枕もオレンジ。
その、あまりに女性好みな部屋で、僕は何とも恥ずかしくなった。
「わーーっ。可愛い!ソファーもオレンジよ!」と、は思ったとおり、喜んでいる様子。
僕は苦笑いしながら、「に喜んでもらえて良かったよ」と言った。


「ね、ジョシュ。ベランダもあるよ。すっごく広い!」 


そう言うと、はベランダへと出て、また声をあげる。


「わぁ、可愛いテーブルと椅子まである!ね、ジョシュ、景色も奇麗だよ」


は、かなり、はしゃいでいる。僕もベランダへと出てみた。
は嬉しそうに、そのベランダに置いてある、足長の椅子へ腰をかけて、外を見ていた。僕はそのの嬉しそうな顔を見て思わず微笑む。


、お腹すかない?」
「え?ああ、ちょっと空いたかも…家で食べたきりだもんね」
「ああ。もう3時過ぎだしな…。夜のパーティーまで軽く何か食べておくか?」
「うん、そうだね」




夜は映画の関係者(出演者やスタッフ等)たちと親睦を深めるという名目の軽いパーティーがあった。
もちろん、もそこへ連れて行く。
僕はホテルの一階のラウンジ奥に、レストランがあったのを思い出し、そこへ行ってみようとに言った。
二人で部屋を出て一階へと向う。
そこへ僕の携帯が鳴った。
「ちょっと、ごめん、待ってて」 に声をかけ、電話に出る。




「Hello?」
『Hello?ジョシュ?』
「ああ、ロイか。なに?」


ロイとは僕のデビュー当時からのマネージャーだ。


『いや、無事にホテルへ着いたかい?』
「ああ、今、ホテルだよ。が相当、気に入ったようだ。ありがとう」
『そうか、良かった!そこなら治安もいいしな、ウィルシャーからも近いから。』
「ああ、そうだな。便利だよ。…ロイは、いつ迎えに来るの?」
『そうだな。パーティーは、6時からだから…5時半までには行くよ。あ、それとカクテルドレス、ホテル内のブティックに行けば
出してくれるように手配しておいたぞ。多分、好みも合ってると思う』
「そうか、悪いな、ありがとう。じゃ、また後で」
『ああ、ホテル着いたら、下から電話するよ』
「分かった。バイ!」


僕は電話をきると、に、「お待たせ」と微笑んで、彼女の手を取り歩き出す。


「今のはロイ?」
「ああ。そうだよ。ここも彼が手配してくれたんだ。そうだ。の今夜着るドレスも、もう用意してるってさ」
「ほんとに?わぁーどんなのだろう」


は、ドレスと聞いて、ワクワクしている。


「俺が一応、の好みと似合いそうな感じのイメージを伝えておいたから大丈夫だろ。食事したら、このホテル内のブティックに取りに行ってみよう」
「うん!楽しみ」


は僕に笑顔で、そう言うと、「お腹すいた!早く行こ?」と笑いながら僕の腕を引っ張ってエレベーターへとかけていく。
僕も苦笑しながら、そのまま、へ着いていった。














一階にあったレストランは朝食からディナーまで利用できるアメリカ料理のレストランだった。
店内はウッド調で、どこかリビングを思わせる作り。カウンターの中には、パイプで作られた棚に沢山のウィスキーのボトルが並んでいる。
僕とは、店の奥の窓際へと座って、さっさと食事を済ませた後に、食後のコーヒーを頼んでいた。


「あーお腹が落ち着いた」


そう言ってが美味しそうにミルクをたっぷり入れたコーヒーを飲んでいる。


「そんなんで夜のパーティーの食事が食べられる?」


僕は笑いながら、を見た。


「それは大丈夫!それより緊張して食べられないかも…」
「緊張なんてする必要ないよ。俺が傍にいるんだから。ロイだっているし。知った顔がいると安心だろ?」
「う…ん…。そうだけど…。映画関係者の中に、私がいても…ほんとに大丈夫?」


は心配そうに上目遣いで僕を見ている。
僕は少し微笑むと、「それは何度も言ったろ?他の俳優だって彼女とか家族を呼んでるから大丈夫だって」と言った。


「でも…ジョシュだって色々な人達と、お話あるでしょ?その間、私がいたら気になって話せないんじゃない?私、部屋で待ってても――」


そこまで言ったの言葉を僕は遮った。


…。そんな心配はしなくていいから。そりゃ色々な人と話すかもしれないけど、の事も皆に招介したいんだ。だからは僕の傍にいてくれなきゃ。僕が寂しいだろ?」 


そう言うと、は嬉しそうにニッコリと笑う。


「ジョシュが寂しいなら…傍にいる」


「ああ。そうしてくれなきゃ困るよ」と言って笑った。
ふと時計を見ると、もう4時半になるところだった。


「じゃ、もう行くか。ドレス受け取って用意しないとね」
「うん。でも…私、自分で着れるかな…メイクも、した事ないよ?」
「それならブティックの人に頼めるよ。ちゃんと着せてくれるしメイクもしてくれるから。まさか僕が着せるわけにはいかないだろ?」


そう言うとは顔を赤くして、「そ、それは…やだ…。恥ずかしいわよ」と俯いて、そっとコーヒーを飲む。
そのの赤くなった顔を見て、僕までが赤くなった。


(そ、そういうつもりで言ったわけじゃないんだけど…)


「じゃ、じゃあ、そろそろ行こうか?…」


何とか冷静を装って僕は席を立った。














が奇麗にメイクをして、ドレスで着飾った姿を見るのは長い間一緒にいて…今夜が初めてだった――





「ど、どぉ?変じゃない…?」


は、店内にあるメイク室から出て来ると、恥ずかしそうに、訊いてくる。
僕は暫くの間、見惚れていて、それをが勘違いして不安になったようだ。
僕は、に訊かれて、ハっと我に返ると、「あ、ああ…。奇麗だよ。ほんとに…!見惚れちゃったよ」と言ってを抱きしめる。


「ほんと?メイクも不自然じゃない?」 
「ああ…!すっごく奇麗だよ」


僕はそう言うと、を放し、頬に軽くキスをした。
は嬉しそうに微笑むと、「良かったぁ…」と安心したように息を吐き出した。
が着ている、白いドレスは、本当にのイメージにピッタリだった。
肩を大きく開けた膝までのカクテルドレスで、裾が波打つようなデザイン。
の細い首にはドレスと同じ生地で出来たスカーフが腰の辺りまでたれている。
胸元が少し開いていて、ジョシュは気になったが、スカーフで上手く隠れる感じとなっていて、
ヒールも高すぎず、が歩きやすいようなデザインだった。
メイクも白に生えるように目元に淡いピンクベージュのシャドウと、口紅も同じ色を合わせて艶やかに光っている。
長い黒髪は、ドレス用にアップにして、軽くカールしている髪が少しづつランダムにたらしてあり、耳には下げるタイプのダイヤのイヤリング。


(ロイの奴…センスいいんじゃないか?普段は、お洒落なんてしない奴だから、少し心配してたけどこれなら合格点だな…)。


僕はそんな事を考えつつ、を連れて店を出ると自分も着替えるべく部屋へと戻った――















Close your eyes give me your hand darling....


Do you feel my heart beating


Do you understand...


Do you feel the same


Am I only dreaming....


In this burning an eternal flame...




― 目を閉じて  あなたの手をあててみて.....


私の心臓がドキドキしているのが判るでしょう?


  あなたも ちゃんと判っているの


同じように感じているのかしら


私はただ 夢をみているだけなの......


  この炎は とこしえに消えることはないかしら…












部屋へと戻り、はジョシュが着替えている間、ベランダへと出て、夜空に浮かぶ、丸い月を見ていた。


(ああ…何だか緊張してきたな…)


ジョシュは大丈夫だと言ってくれるけど…。ジョシュの仕事場(?)に来るのは初めてだし出演者の人達とかにちゃんと挨拶しないと。
これから暫くは撮影する時に、何度も顔を合わせるんだしジョシュに恥はかかせられない。
私は心の中で、覚悟(!)を決めていた。
そこへ「?終ったよ?」と、ベランダへ顔を出し、ジョシュが声をかけてきた。
は振り向くと、目を見開いて驚く。


「う…わぁー…ジョシュ…。カッコイイわ!」
「え?!そ、そう?」


ジョシュは照れくさそうに微笑んでいる。
ジョシュは黒のシックなスーツに着替えていた。
スリムな形のダークなスーツは身長の高いジョシュに、よく似合う。
いつも大人っぽいけど今日は、いつも以上に大人って感じだ。


何だか胸がドキドキする…私、今、顔が赤いんじゃないかな…。
普段なんてスーツ姿を見ることはなかったものね…。


は、そっとジョシュに抱きついた。
?どうしたの?」と、ジョシュがの頭を撫でながら訊いてくる。


「何でもない…。ジョシュが、あまりにカッコイイから、ときめいちゃったのかな…」
「な、何んだよ、急に…」


の言葉に、ジョシュは顔を真っ赤にしている。


「…も…奇麗だよ、凄く…俺も、さっき胸がときめいたかな」


お返しとばかりに、ジョシュは、私の頬へとキスをして言った。
私は照れたけど、そのジョシュの言葉が嬉しくて、抱きしめる腕に力を入れた。
すると、そこへ携帯が、いきなり鳴って、驚いた私は、パっとジョシュから離れてしまった。
「あ、きっとロイだよ、もう着いたのかな」 ジョシュは、そう言うと携帯の置いてあるテーブルまで行き、すぐに電話に出る。


「Hello!ロイ?ああ。もう終ったよ。うん…じゃあ、今から降りる」


用件だけで済みすぐに電話を切ると、の方へ向き、「さ、行こうか?」と微笑んだ。










「ジョシュ!こっち!」


ロイはホテル入り口前に大きなベンツを止めて窓から顔を出し、手を振っている。


「久し振り!元気そうだな!」


ジョシュは、ロイに、そう言うと、へ、「ロイだよ、も久し振りだろ?」と言った。
「うん。今晩わ、お久しぶりです」と、私はロイに挨拶をした。
前に一度、ジョシュとの契約で、家に来た時に、はロイとは会っていた。


「やあ!!久し振り!そのドレス、凄く似合ってるよ!相変わらず奇麗だね!」
「あ、ありがとうございます…。あの色々と準備して貰っちゃって…」 
「いやいや!全然だよ。やっとが撮影現場に来れて俺も良かったしね。じゃないとジョシュは心配ばかりして、大変なんだ!」


ロイは大げさに両手を広げて言った。


「おい…一言余計だろ?」


と、ジョシュは渋い顔。
私は、おかしくて噴出してしまった。


「さ!乗って。もうすぐパーティーの時間だ。そろそろ皆も集まってきてるだろう」
「ああ。じゃ、、おいで」


ジョシュは私の手をひき、ロイのベンツのドアを開けると先に乗せてくれる。
そしてジョシュも乗り込むと、ロイが車を発車させた。
パーティーは、ここからすぐの、リージェント・ビバリーウィルシャーで行われる。
そう、あの【プリティー・ウーマン】で一躍有名になった豪華なホテルだ。




「なあ、明日は何時の飛行機?」
「えーと…明日は…確か昼過ぎ…1時半頃の便だったかな?俺も今日は、お前たちと同じホテルへ泊るよ。朝、起こしてやる」
「ああ。頼むよ」


ジョシュは、そう言うと私の方へ顔を向け、微笑んだ。
明日は、ここロスアンジェルスから、またひとっ飛びして、撮影現場となる、オハイオへと行く予定だった。


少し車を走らせると、すぐにウィルシャーホテルの立派な外観が見えてくる。
ロイはホテル前で車を止めると、「じゃ、先に会場へ行ってて。車、預けて俺も後で行くから」と言った。
私とジョシュは、そこで降りると、ホテルのボーイの案内で、パーティー会場となる二階の広間へと歩いて行く。
私はすでに心臓がドキドキしてきて、思わずジョシュと組んでる腕に力が入った。


…?大丈夫?」


ジョシュは少し心配そうに、私の顔を覗きこんでくる。


「う…うん…。ちょっと緊張してきただけ…。大丈夫…」
「俺が傍にいるから…」


そう言ってジョシュは軽く私の額へとキスをしてくれる。
私は少し安心してジョシュを見上げて微笑んだ。


「こちらになります」


ボーイが、大きな扉の前に来ると、そう言って軽く頭を下げ戻って行く。
ジョシュは、「さ、入るよ」と一言言うと、私の腰へ手をまわし、エスコートするように歩き出した。
私は、それに促されるまま、会場へと入った。
すると、そこへ―


「Hi!ジョシュ!こっちだよ!」と言う声。
「OH!イライジャ!」とジョシュも返事を返し、の方へ顔を向けると、「ほら…。イライジャだよ?」とウインクをした。




私は映画の中で見ていた、大きな青い瞳の男の子が歩いてくるのを、ボーっと見ていた。


「久し振り!元気だった?」
「ああ、顔見せの時以来だっけ?一ヵ月半ぶりか」
「ジョシュは全然、こっちに来ないからね!たまには遊びに来てよ。いっつも電話ばっかじゃん」


とイライジャは笑っている。
そしてジョシュの後ろに隠れるように立っているに気づいた。


「あれ?!ジョシュの彼女?!よろしく。僕、イライジャウッド。ジョシュとは最近、仲良くなったんだ」


そう言うと私に手を差し出してきた。


「イライジャ…は彼女じゃなくて、俺の妹!前に電話で話したろ?」
「ああ!そうか!じゃあ、君が?うわー話を聞いてて会って見たかったんだ!よろしく!」と、また手を出してきた。


私は恐る恐る手を出し握手をすると、「よ、よろしく…」と、何とか微笑んだ。


「ほんと、噂通り可愛いよ、ジョシュ!僕、てっきり、ただの妹バカかと思ってたけどさ」と言いながらケラケラ笑っている。
「お前な…。そんな風に俺を見てたの?」とジョシュもいや〜な顔。
私は、そんな二人の会話に少し赤くなった。


(ジョシュったら…私のこと、何て話してたんだろう…)


「他の皆は?まだ?」
「ああ、まだみたいだな・…。あ、僕らの席、こっちだよ」


そう言ってイライジャは二人を出演者用の席へと案内してくれた。


「席が何か多いと思ったら、そうかー、を連れて来たんだね!良かったじゃん、両親にはOKもらえたんだろ?」


「ああ、何とかね、説得したよ」 ジョシュは、そう言って苦笑いしている。
するとイライジャが、私の方へ、


「ジョシュさぁ、今回のロケで暫く故郷を離れるから、妹が心配だって、うるさかったんだよ?
僕は何でまた、そんな過保護なんだろうって思ってたけどね、今日、に会ってみて、その気持ちが少し分かったな」
「そ、そうですか?ジョシュったら…。そんな事まで話したの…?」


私は恥ずかしくなり、ジョシュに言うと、ジョシュは、「別に、本当の事だからな」と澄ましている。
そこでイライジャが、「普通は彼女の事をまず心配するのにさ、ジョシュって変わってるなーって思ったんだよね」と、笑っている。
その言葉に少し胸が痛くなったが、やっぱり周りには、そう映るのだろう…と気にしないことにした。


「うるさいな、リジー。それに俺は彼女なんていないよ。 ―?座ろうか」
「うん…」


そう言うとジョシュは私の椅子をひいてくれる。
私が座ると、ジョシュも私の隣へと座った。
「僕も、隣に座ってもいいかな?」 ふいにイライジャが私へ声をかけてきた。
「え?!あ、あの…」 驚いてジョシュの方へと顔を向けた。
「ああ、に触らないと約束できるならいいよ」と、ジョシュが助け舟を出してくれる。


「何だよ、それ〜!僕が、そんな男に見えるの?」 


イライジャは心外という顔。


「そういう意味じゃないんだ。…とりあえず座れよ」


ジョシュはイライジャへ座るように手で合図をした。
「はい、はい。全く、ジョシュって時々、変な事言うよねー」とイライジャも苦笑い。
私には、ジョシュが言った意味が分かった。


(きっと私を気遣ってくれたんだ…)




そこへ――


「Hey!お揃いだね〜!」と大きな声がした。
「おー!ショーン!久し振り!」 
「Hi!ショーン!」


ジョシュとイライジャは、その男の子へ声をかける。
そして、「、今度、共演するショーンだよ?」 と、ジョシュが私に教えてくれた。
イライジャと抱き合って挨拶をしていた、そのショーンがの方へと顔を向ける。


「ショーン、俺の妹のだ」
「Hi!よろしく、。僕はショーン・ハリス」と、手を出してきた。

私もさっきで、だいぶ緊張もとれてきていたので、笑顔で、「よろしく、です」と握手する。


「いやー、噂通り、可愛いじゃん、ジョシュ!」とショーンがジョシュの背中をバンっと叩いている。
「いて!いちいち叩いてないで、早く座れよ…」


ジョシュが顔をしかめて言った。
ショーンも笑いながら席へと着く。


(ジョシュったら…ほんと彼らに何を話したのかしら…)


私は少し恥ずかしくなり、俯いてしまった。
そこへ次々と共演者たちが集まってきて、同じように招介されて挨拶をしていった。
少しすると監督のロバート・ロドリゲスが登場して、会場内が拍手で沸く。
ロバートの簡単な挨拶で乾杯をしたあとは、皆、それぞれ色々な場所へとちり、談笑している。
私は、その場の雰囲気で圧倒されつつも、しっかりテーブルに揃った豪華な料理を食べはじめていた。
?あまり飲みすぎるなよ」 ジョシュが心配そうに声をかけてくる。


「うん…気をつける」


今日もワインが出てきたので、食事をしながら少しだけ飲んでいた。
そこへ、「やあ、ジョシュ。楽しんでるかい?」と、ロバートが声をかけてきた。


「あ、監督…どうも」
「ロバートでいいよ。それより、この子かい?今回連れて行くという妹君は」


ロバートは、そう言うと優しくへ微笑みかける。


「はい、妹のです」
「あの…初めまして…。です」


私はそう言うと席を立ち、ロバートへ挨拶をした。
するとロバートは、ニッコリ笑って、「こちらこそ、宜しく!ロケは大変だからね、ジョシュを励ましてやってくれよ?」と言った。


「は、はい。あの…いっぱい励まします…!」


私が張り切って、そう言うとロバートは楽しそうに笑い出し、「アハハ!可愛い妹さんだ!これなら大丈夫かな?」とジョシュへウインクした。
ジョシュも笑いながら、「はい…頑張らせてもらいますよ」と答える。
何か変な事言ったかしら・…と思いつつ、また席へと腰をかけた。
「それじゃ、楽しんでくれ」と言うとロバートは、また歩いて行って他の出演者にも声をかけている。


「面白い人ね?監督さんって、もっと怖いイメージがあったけど」
「ああ、彼は素敵な人物だよ。彼とは一度仕事してみたかったからね」とジョシュは微笑みながら言った。


「で…今度の映画って…どんなお話なの?」 


私は前から聞こうと思っていて忘れてた事を聞いてみた。
するとジョシュは噴出して笑い出した。


「ぷっ…アハハハ……知らなかったんだっけ?」
「もう!何で笑うの…?だって…ジョシュが一人でロケに行っちゃうって事で不安だったから、映画の内容なんて聞く余裕もなかったんだもの…」


私は少々スネて頬を膨らませ抗議した。


「そっか…。ごめん、ごめん。俺もちゃんと話してなかったな…」


そう言うとジョシュは私の頭を優しく撫でてくれる。


「…今度の映画は……エイリアンものだよ?」 


ジョシュは、そう言うとニヤっと笑った。
私は驚いて、「え?!こ、怖いやつ…なの?」と恐る恐る聞いてみる。


「まあ…怖いだろうなぁ。特に怖がりのにとってはね」 


ジョシュは、そう言って、私の頭を抱き寄せキスをした。


「だ、…大丈夫よ…。私だって最近は怖い映画くらい見れるもの…」
「そう?俺が前、レンタルビデオ店でバイトしてた時に、借りてきた【キャリー】だって怖がって見れなかっただろ」
「そ、そういうジョシュだって、ほんとはホラー苦手じゃないの」


そう言うとジョシュは情けない顔をして、


「だって心臓に悪いんだよ…。あの急に出て来るのや、音が大きくなるのは勘弁だよな…」


と、大げさに肩をすくめている。
私はおかしくなって笑い出してしまった。


「で?ジョシュは、どんな役なの?まさかエイリアン役?!」と聞いてみた。
「アハハ…違うよ。俺は留年してる不良学生の役」と、ジョシュは笑いながら答える。


「へぇージョシュが不良になるの?何だか似合わない」
「そうか?結構、この役気に入ったけどね」


私は、笑いながら言うジョシュを見つめて、ジョシュの不良の姿を思い浮かべてみた。


(うーん…想像できない…。でも…そういうジョシュを見れるのも新鮮でいいなぁ…)


そんな事を思いつつ、私は残りのワインを飲み干した。










監督のロバートと立ちながら談笑していたイライジャは、さっきから仲良さそうに話しているジョシュとを横目で見ていた。
「ほんと…話してたとおり、仲がいいですね」 イライジャが、そう言うとロバートも二人へと目を向ける。


「ああ…そうだね。今時、珍しいくらいだよ」
「何だか…兄と妹ってより…恋人同士のように見えてきましたよ」と、イライジャは苦笑する。
するとロバートが、イライジャの方へ向き直り、「ああ、あの二人、血は繋がってないようだよ?」と言った。


それには、イライジャも驚く。


「え?!そうなんですか?」
「何でも小さい頃に、ジョシュの父親と、彼女の母親が再婚したそうだ。だから二人に血の繋がりはない」
「そうだったんだ…。だから余計に仲がいいのかな…」
「そういう事もあるだろうね。ま、でも微笑ましい二人だよ」 


ロバートはそう言うと、優しい笑顔で二人の方を見た――












「…では、今日はこの辺でお開きとしましょう!皆さん、それぞれの親睦を深めましたか?明日はいよいよロケ現場へと旅立ちます。
今夜は、いくらロスへ来てるからと言って夜遊びに出ないで体を休めて下さい!それでは、今夜は本当にありがとう!」


ロバートの挨拶が終ると、一斉に拍手が起きた。
そして暫くすると、皆はゾロゾロと会場をあとにし始める。


「ジョシュ、この近くに泊ってるの?」


イライジャが席を立って聞いてきた。


「ああ。すぐそこのローズ・ビバリーヒルズだよ」
「ああ!あの可愛い作りの?の好みだろ?」
「まあね。そういうリジーは?どこに泊るの?」
「僕も近いよ、センチュリーだから」
「何だ。じゃ、俺らと凄い近いじゃん」
「移動が面倒だからね、近くにしたよ」


ジョシュ、、イライジャはホテルロビーへと歩きながら話していた。
そして外へ出ると、ジョシュはイライジャへ声をかける。


「じゃ、明日、空港で」
「ああ、明日ね!も、また明日」と言って、ふいに手を出してきた。
も、「また明日…」と言って握手しようとした…するとイライジャは、「おやすみ…」と言い、の手の甲へと軽く唇をつけた。


それに、はビクっとなり、バっと手を放す。
そしてジョシュの後ろへと隠れてしまった。
イライジャは驚きのあまり、その大きな瞳を丸くしている。
それを見て、ジョシュは慌てて、「おい、リジー…に触るなって言っただろ?…」と困ったような顔をした。


「え…あ、ごめんね!…そんな変な意味じゃないから…」


は軽く首を振ると、「私こそ…ごめんなさい…。驚いちゃって…」と謝る。
ジョシュは軽く溜息をつくと、「…先に車に乗ってて…」と、の手をひいて、ロイが、待ってるベンツへと乗せた。
「ちょっと待ってて」 とジョシュはロイへ声をかけると、ドアを閉めて、またイライジャの方へと戻る。


「ジョシュ…。ごめん。何だか怖がらせちゃったかな…?」


イライジャも、どうしていいのか分からない様子。


「いや…違うんだ…。リジーが悪いわけじゃない。俺がに触るなって言ったのは、ああいうスキンシップの事でね」


そのジョシュの言葉に、ますます意味が分からずイライジャは首をかしげる。


…握手とかは平気でも…ああいった行為とか…。俺以外の男に触れられるのを極端に怖がるんだよ…。
だから、リジーにも、ああ言ったんだ…悪かったな」


ジョシュがイライジャに謝った。
イライジャは少し驚いてたが、その説明で何となく分かったのか、


「そうだったんだ…。僕、知らなくて…やっぱり悪い事しちゃったね」
「いや…。悪くないよ。仕方ないんだ。は…」 


そこまで言うとジョシュは言葉を切った。


「とにかく…、悪気はないからさ…。ごめんな。気にすんなよ?」とイライジャの肩へと手を置いた。
「うん、僕は全然!これからは気をつけるよ!」とイライジャも笑顔で答える。


「ありがとう。じゃ、また明日…!」
「うん。Goodnight!ジョシュ」


お互いに手を振り、ジョシュは車へと戻り、の隣に座った。
それを確認すると、ロイが車を出す。




ジョシュは俯いているを優しく抱きよせた。


…?大丈夫か?」
「…ん…。リジーに…悪い事しちゃったね…。彼、凄く良い人なのに…」 が泣きそうな声で呟く。
「いや…イライジャも気にしてなかったよ…。逆に、に悪い事したって謝ってた」
「そんな…!彼は悪くない…。私が・…おかしいだけで…」
「そんな事ないよ…。気にするな」


ジョシュは、そう言うとの額へと優しく唇をつける。
も、そのままジョシュの胸へと頭を寄せて、よりかかかった。
ジョシュは、の頭を撫でながら、これからロケ中でも、気をつけておかないといけないな…と思っていた。
リジーは分かってくれたし、大丈夫だろうけど…。他の人は知らずに、ああいうスキンシップをとってくる事もあるだろう…。
そしたら、またが怯えてしまう。




ジョシュは、がジョシュ以外の男性を怖がるようになった原因を、母親から聞いていた。
の母さんと、本当の父親…そう…僕の父さんと再婚する前に、母さんが結婚していたの父親はとんでもない男だった。


離婚の原因となったのは、その男の暴力。
特に、が生まれて間もない頃から、酷くなったと言っていた。
その暴力は母さんから、今度は幼いへと向けられた。


母さんは涙を浮かべて話してくれた…。 ―"まるで…毎日が地獄のようだった"―と…
私の知らないとこで、を虐待していたかもしれないと…。
は、まだ小さかったから、はっきりと記憶にはないかもしれない。
でも…頭の奥底には、その記憶が残っている事は確かだ。
じゃなければ、あんなに怯えたりしないだろう。


僕は、その話を聞いて、その男を殴ってやりたいと心の底から思ったのを覚えている―
父さんたちが再婚して、皆で一緒に暮らし始めた頃…・・僕はの異変に気づいた。
普段は新しい家族に慣れてきたこともあり、よく笑う明るい女の子だったが、一度、父さんが、おやすみのキスをしようとした時、
物凄い力で父さんを突き飛ばした事があった。
父さんは訳がわからず、なだめようとするのだが、の目は心の底から怯えていた。
そして僕の方へと泣きながら抱きついてきた…。


は…何故だか僕に触れられる事は平気だったようだ。
多分…年齢も近かったせいもあるだろう。
だが…今ではと同じ年齢くらいの男の子まで怖がるようになっていた。


(あの時…本当なら、カウンセラーにつけて治療してやれば良かったのかもしれない…)




僕は、そっとの頭へとキスをした。


「ジョシュ…?」
「ん?」



「It is in a side...」



そう呟くと、は僕の胸に腕をまわして抱きついてくる。
僕は「I am here...」と言っての肩を強く抱きしめた。
そして少し顔をかがめて、の額へと唇で優しく触れる。




"私の側にいて…"  "僕はここにいるよ…"



そんな些細なやりとりでさえ、愛しく感じる。



こんなに愛しくて、堪らないのに…。
どう言えば伝わるんだろう… 


"It is very darling..." 


―僕はそう心の中で呟いて窓の外を見る。







空には青白い月が、ぼやけて見えていた…。









 

Postscript

やっとこ少し移動…(笑)ロスが舞台でした。
やっぱりロケまで行かないと…!と思った勢いで書いちゃった…(汗)
だってジョシュを好きになった"きっかけは〜【パラサイト】"ですから(笑)
なのでリジーまで登場です。
思わず書きながら【パラサイト】のDVD流してたり…
ジーク、カッコイイです…(涙目)


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】