Vol.5...I want you to be always with smile...







There you are in a darkened room


And you' re all alone Looki'ng out the window


Your heart is cold And lost the will to love


Like a broken arrow...


I wanna feel you need me Just like the air you' re breathin'


I need you here in my life...








― 暗くなった部屋に 君がいて


ひとりぼっちで 窓の外を見てる


  君の心は冷え切って


折れた矢のように


  愛する意欲を失っている…


空気のように いつも 


 君が僕を必要としているのを 感じたい


この人生に 君が必要なんだ…










「ねえ、ジョシュ。今日、キスシーンあるって本当?」 


撮影現場に入って、最初の休憩の時、がいきなり聞いてきた。
僕は心の準備が出来ていなくて、思わず飲んでいたコーヒーを吹き出してしまった。


「…ンッ…ゲホゲホッゴホッ…!」
「だ、大丈夫?!」


は僕の背中を優しくさすってくれている。


「ゲホ…ッ!…だ、だいじょう…ぶ…ゴホッ…!」


僕は、水分が気管に入った、あの喉がかゆくなるような感覚を我慢しながら、「…だ、誰から…聞いたの?…」と声を絞り出した。


「…イライジャに…」


は一言、そう言って僕の顔を覗いている。
僕は顔が赤くなるのを感じた。  


(リジーのやつ…余計な事を…っ)


「大丈夫?」


が心配そうな顔でもう一度聞いてきた。


「あ、ああ…もう大丈夫…」


僕はそう言いながら、が聞いてきたことの答えを、どうやって答えようかと考えをめぐらしていた。
チラっとの方を見ると、彼女はまだ答えを待ってるようで、可愛い顔で僕の顔を覗いている。


(その子猫を連想させる瞳で見ないでくれ…!)


僕は心の中で、叫ぶと軽く一つ溜息をついた。
そしての方へと顔を向けて、「…ああ、あるよ。それも仕事だし…」と何とか言った。
するとは、「そう…」と拍子抜けするくらいアッサリと呟いて、僕の隣へと座ると黙ってコーヒーを飲みだした。
僕は、そのの反応に少々落ち込んだ。
何か言ってくれるかと思ったからだ。
僕は何だか話し掛けずらくなり、チラっとの方を見たがはまだジーっと前の方を見たまま動かない。
そこへイライジャが歩いて来た。


「Hi!お二人さん!」
「おぉ…」


僕は少し恨めしそうな顔でリジーを見た。


「そろそろ、ジョシュとローラ、スタンバイだって」
「ああ…。分かった…」 


そう言って立ち上がると、へ、「、撮影、見に来る?」と聞いてみる。


(ほんとは来て欲しくなかった…。このシーンだけは…)


すると、は顔を上げて、ニッコリすると、「ううん、まだ、ここにいるわ」と言った。
今はピッツバーグにあるスタジオの中での撮影だった。
スタジオの中の、ちょっとしたスペースを使って休憩できるような部屋を簡単に作ってあった。
ここからじゃ、撮影してるとこは見えない。
僕は少し,ホっとして、「そうか、じゃ、ちょっと行って来るよ」と、微笑むと、「リジーは?」と声をかけた。


「僕は,ジョシュの出番の少し後に行くから、もう少しとここにいるよ」
「そう?じゃ後で」


僕はそう言うと、撮影するセットまで歩いて行った。


、これ食べない?すっごく美味しいんだっ」
「うん、ありがとう」


そんな会話が聞こえて,僕は少し振り返ってみた。
すると、リジーとが楽しそうに話しながら,笑っている。


…楽しそうだな…。 すっかりリジーにも打ち解けたようだ)


そう思った瞬間、僕は少し胸が痛むのを感じた。 


(――何だ?こんな事くらいで…。こんなんで焼きもちなわけないよな…)


そもそも、僕は,が僕以外の男と楽しそうに話しているところを,今まで一度も見た事がなかった。
暫くの間、そんな事をボーっと考えていて、ハっとした。


(やべ…撮影に集中しないと…!)


僕は気持ちを切り換えてまた歩き出した。
セットの前までくると、すでに監督と僕の相手役のロ−ラが打ち合わせをしている。


「ああ、ジョシュ。もう少しで始まるから」


ロバートは僕に気づき、声をかけてくる。


「あ、はい。いつでもOKです」




僕はそう言いながら近くの椅子へと座り、ジークという役になるべく、目を瞑った。










***




――ジークとメアリー・ベスは、こっそり学校の備品室へと入って行く。
中へ入ると、ジークは煙草をくわえ、ジッポで火をつけた。
メアリー・ベスは、そんな彼に『何するの?』 と声をかける。
ジークは煙草を吸いながら、備品室の棚に置いてある薬品を品定めするように見たまま、


『買い物さ。   ――料理の材料をね』 


と答えた。
メアリー・ベスは意味が分からなかったのか、『何のこと?』 と問い掛ける。
ジークは顔をあげ彼女を見ると、『ドラッグの材料さ』 とニヤっと笑った。
メアリー・ベスは、そんな彼に、『実験用の薬品を拝借?』 と少し笑いながら聞く。
ジークは探す手を休める事なく 『というより泥棒だな』 と言って立ち上がり、彼女を見ると煙草の煙をはきだしながら


 『この国の崩壊を手伝ってる』 


と言うと、持ってた煙草を棚の上のビンへと落とす。
そして、ゆっくり彼女の方へと近付きながら 


『もし誰かが来たら――キスしてる振りを』  


ニヤリと笑い彼女の顔を覗き込むと、『罰は軽くなる』 と呟き、そっとメアリー・ベスの唇へキスをした。
そして少し離すと彼女の瞳を見つめながら、またそっと口付けた。


すると、その時、通風孔から声が洩れてきた。


『死体は勘違いさ』   
『じゃ、納得のいく説明が?』 
『先生たちがエイリアンなんて…』


二人は、その声に耳を傾け、そっと微笑み合う。


ジークはニヤリと笑うと、メアリー・ベスに、『しぃー』 と言って人差し指を自分の口にあてる。
彼女は、それを見て少し笑いながら、二人で静かに備品室を出て行った…




***






「はい、カー―ーーーーット!!」


ロバートの声が聞こえ、そこで僕は、そっと息をはきだした。


「よーし!今のでOKだ!じゃ、次、皆で集まって相談してるシーン、すぐいくから!」


と叫ぶと、スタッフが急いでセットを変えていく。
僕はセットが整うまで近くの椅子へと腰を下ろした。


(はぁ…。やっぱりキスシーンは苦手だ…) 


手に少し汗が滲んでいた。
そこへ相手役のロ−ラが声をかけてきた。


「お疲れ様!ちょっと緊張しちゃったね」と笑いながら僕の隣へと座る。
「ああ…。会って、まだ、まともに話した事もないのに、いきなりじゃね」と僕も苦笑いで返す。


「昨日は、クルーズ行ったんですって?」
「ああ、凄く景色が奇麗だったよ。ロ−ラも来れば良かったのに」
「ちょっと疲れが出ちゃって…。ずっと部屋で寝てたわ…。 ――妹さんは?」


「え?ああ…どこかな…。まだ休憩所の方かな?」


僕は周りを見渡した。
向こうでは、イライジャや、ショーン達が次のシーンの打ち合わせをしているのが見える。


「え?でも…私がスタンバイしてた時、妹さん、いたわよ?」


僕は、ふいの、その言葉に驚き、「え?!ど、どこに?!」と動揺したのを隠しもせずに聞いた。


「えっと・…。そこの椅子の辺り…かな?」


僕は、彼女が指を指した方へ視線を向けた。
確かにスタジオの端に椅子が数個、置いてある。


だが今はの姿はなかった。


(あそこからじゃ…今のシーン、思いきり見えてたよな…)


別にやましい事はしていなのに心の中で焦っていた。









「はい、お疲れさん!」


ロバートは皆に声をかけながら、スタッフとセットから出て行った。
僕たちは、エイリアンになった先生を、ドラッグで倒すというシーンを撮り終えたところだった。


「あージョシュ、びっしょりだねぇー」 


ショーンが笑いながら僕の肩を叩く。
今、撮った水槽が割れるというシーンで、僕は濡れてしまう設定だった。
だから今の僕は全身がずぶ濡れ状態。


「水もしたたる、いい男って感じだな!」 


ショーンがまたからかって笑っている。
僕も苦笑いしながら、タオルを探していると、「はい、ジョシュ。お疲れ様!」と声が聞こえ、僕は驚いて振り向いた。
そこには笑顔でタオルを持っているがいた。


「あ、…。ありがとう…」と言うとタオルを受け取り、頭を拭いた。


「凄かったねーー!今のシーン!凄く怖くて逃げ出しちゃうとこだったわ」


は、そう言いながら笑っている。


…。今の見てたの?」
「うん、そこで見てたよ。ジョシュが吹っ飛ばされた時、思わず声をあげそうになって慌てて口を抑えちゃった」


僕は少し苦笑いしながら、「あれは転んだ振りだからね、編集してから見ると、もっと、勢いよくぶっ飛ばされたように見えるよ」と言った。


「そうなんだーー。出来上がったの早く見たくなっちゃった!」


はニコニコしながら気の早い事を言っている。


「ジョシュ?早く着替えないと風邪ひいちゃうよ?」
「あ、ああ。着替えてくるよ…。、一緒に来る?」
「うん、行く」


そう言うとは僕の手を繋いでくる。
僕はその温もりに少し安心して、そっと微笑んだ。


(やっぱり…キスシーンの事は触れてこないな…)


僕は妙にその事が気になったが、自分から言うのも変なので、そのままにしておこうと思っていた。








僕は着替えが終ると、ホっと一息ついて、煙草へ火をつけた。
それはいつものマルボロやラッキーストライクじゃなく、映画の中でジークが吸っている【さんぷるな】というクローブ煙草だ。 
撮影用にスタッフから沢山もらったもの。
そこへイライジャが着替えて隣の部屋から出てきた。


「あーまずは一日目、終了だね…」


そう言うと横にあったパイプ椅子へと座る。


「疲れたなー。一日目から…」


僕もそっと呟いて煙をはきだす。


「ジョシュはいきなりキスシーンあったもんねー」 


とイライジャが笑った。
僕は、そう言われて、さっきのの言葉を思い出し、煙草を灰皿へと押しつぶすと、


「おい、リジー。に余計なこと言ったろ?」 


と責めるように言った。


「え?何のこと?」
「キスシーンのことだよ…。さっきに、いきなり"キスシーンあるってほんと?"って聞かれて焦ったよ…」


僕は渋い顔で文句を言った。


「ああ…! ―だって、もう知ってるもんだと・…。  ―何で言わなかったの?」


イライジャは不思議そうな顔で聞いてきた。
僕はそこで言葉がつまり、「え…?いや…何だか恥ずかしくてさ」と誤魔化した。


「ふぅーん。やっぱジョシュでも恥ずかしいんだ?妹にキスシーン見られるの」


イライジャはニヤニヤしている。


「うるっさいな!別に、それだけじゃないよ!」
「え?じゃ、他に何があるのさ?」


僕はまた、"う…"っと言葉がつまる。


「べ、別に何でもいいだろ? それより、サッサと帰るぞ。が外で待ってる」


僕は少しふて腐れながら、更衣室代わりに使っている部屋を出た。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


イライジャも慌てて追いかけてきた。


僕は何故か少しイライラして、また煙草へと火をつける。
それを見ていたイライジャが、「それ、ジーク用にスタッフが持ってきた煙草だよね?」


「ん?ああ、そう」
「変わってる煙草だね…。ね、僕にも一本くれる?」
「ああ、いいよ」


そう言うと煙草の箱ごとイライジャへ渡す。


「え?これくれるの?」
「ああ、まだ何箱もあるし。それやるよ」
「サンキュー」


イライジャは嬉しそうに、その【さんぷるな】をくわえる。
ポケットからジッポ(これも撮影用)を出して、イライジャへ火をつけてやった。
イライジャは煙をはきだしながら、「ありがと」と一言言うと、


「へー、この煙草、結構イケるね!今度から僕もこれにしようかなー」


と呑気に呟いている。
二人でスタジオの駐車場へと歩いて行くと、僕たちが最後だったのか、皆はすでに到着していた。


「遅いよ〜二人とも!」


ショーンが文句を言っている。


「ごめん、ごめん!」


僕とイライジャは走って皆のところへと行った。
そしてホテルまで移動するのに、皆それぞれ何台かの車に乗り込む。


は先に車の中で待っていた。


、疲れてない?」


車に乗り込むと、の顔を覗き込みながら聞いてみる。


「ううん!全然。楽しかったわ、撮影見てるの」


と笑顔で答えた。


「そうか…?」


僕はホっとしながら、の肩を抱き寄せた。
すると、それを見て僕の隣に乗り込んできたイライジャが、「いっつもジョシュはを大事そうにしてるよね」と言ってきた。
車の後部座席には、一番右に、真ん中が、僕、左にイライジャという形で座っている。
イライジャの言葉に、「当たり前だろ?本当に大事なんだからさ」と澄まして答えた。
それを聞いたイライジャは少し顔を赤くすると、「へーへー、ご馳走様!聞いてるこっちが照れるよ、まったく…」と苦笑い。
僕も少し笑うと、を見た、すると彼女も微笑んでいる。


「あー、おなかすいた!」


イライジャが大きな声で叫んで、大げさに、お腹を抑え、「やせ細っちゃうよ…」と呟いた。
それを聞いては笑うと、「じゃあ、皆で一緒にご飯食べに行く?」と聞いている。
「いいね!どこ行こうか?」とイライジャもノリノリ。


「まずはホテル戻ってから、皆に聞いてみればいいんじゃない?」


僕も呑気に答えると、「そうだね、そうしよー。早くつかないかなぁ…。僕のお腹はもうもたないよ…」とイライジャは、またも情けない顔で呟いたのだった…。













Ain't it funny how some feelings you just can't deny


And you can't move on even though you try


Ain't it strange when you' re feeling things you shouldn't feel


Oh, i wish this could be real


Ain'tit funny how a moment could just change your life


And you don't want to face what' s erong or right


Ain't it strange how face can play a part


in the story your heart...










― おかしいわよね 気持ちに嘘がつけないなんて


どんなに頑張っても 前に進めないなんて


 変よね 持ってはいけない感情を持ってしまうなんて


ああ これが現実ならいいのに


 おかしいわよね 一瞬で人生が変わってしまうなんて


何が正しくて 何が悪いのか考える気がなくなるなんて


  変よね あなたの心にある物語を


運命が操っているなんて…











外は、どしゃ降りだった。
風が窓に勢いをつけて向ってくる。
ゴーゴーと吹くたびに、何かが壊れる音が聞こえる。


今はまたスタジオに来ていた。
今日は朝から外でのロケをやるはずが夜中くらいから激しい雨で結局、ピッツバーグを発つ事なく、スタジオで他のシーンの撮影となった。
私はスタジオの更衣室として使っている部屋の窓から、ずっと外を見ていた。
ジョシュは今は監督と次のシーンの打ち合わせ中。その後にリハーサルを控えている。
私は邪魔にならないように、この部屋に一人で来ていた。
そして雨と風が吹き荒れる外を眺めて、そっと溜息をついた。
何だかあの日から、心の中で何かが疼いて自分でも訳の分からない感情に流されそうになる。


(そう…。ジョシュのキスシーンを見てから…)


私はあの日、イライジャから、その話を聞いて凄く驚いた。
ジョシュが何も言ってくれないから自分で聞いてしまったけど…。
ジョシュは、"それも仕事だから…"と言ったけど、私もそう思ってたので、あまり気にしないようにした。
それでもジョシュが撮影へと行った時…ちょっと心の中で何かがざわざわして落ち着かなくなった。
ほんとは見るのをやめようかと思っていたのに、自然と足が向いてしまったのだ。
そして…あのシーンを見た時、突然、胸がギューっと苦しくなって驚いた。
撮りが終ってすぐセットから飛び出し、少しの間、ここで休んでたのだった。
あれから、まだ胸の痛みは治まらない。
何かジョシュの顔を見るたびに、ちょっとづつ痛みが増していくようだ。
こんな痛みは他の誰にも感じた事がないので何なのか分からない。
そもそも、私は、ジョシュが私以外の女の子にキスをしているところなんて見た事がないのだ。
そんな事を考えてると、また胸の奥がズキンとする。


(ただ、ハッキリ言えるのは…ジョシュが他の女の人とキスをしているのが凄く嫌だって事…)


仕事なんだと頭では分かっているのに心が勝手に痛む。
私は…ジョシュの事を一人の男の人として見てるのかもしれない。


前に船で踊った時も、そう感じた。
ジョシュが私に、自分の事を、"お兄さん"と言ったのを聞いて、その時も、この胸の痛みに近いものを感じた。
それと同時に感じた違和感。
"お兄さん"という言葉が、しっくりこなかった。




そう言えば私、一度もジョシュの事、"お兄さん"って呼んだ事がなかった――


(そんな事を今さら気づくなんておかしいけど…)


私はそっと溜息をつくと、窓から離れて、椅子へと座った。
そこへメアリー・ベス役のロ−ラが入って来た。
そう…ジョシュとキスをした女優さんだ。


「あら、、ここにいたの?ジョシュが心配して探してたわよ?」


彼女は私を見て微笑んだ。
だが私はどうしても、ぎこちない笑顔になってしまう。


「そ、そうですか…。リハやってると思ったから邪魔にならないようにと思って…」
「そんな…邪魔なんて。いない方がジョシュは心配してNG出しちゃうかもよ?」


彼女はそう言って笑った。


「そんな事は…」


私は何故だか俯いてしまった。
するとロ−ラは、私の肩へと手を乗せて、「ねえ、。もしかして、あのシーンの事気にしてる?」と聞いてきた。
私は驚いて顔をあげた。


「やっぱり…。そうじゃないかなって。だって、あの日から、私の顔を見てくれないんだもの…」
「え…あの…。そんな事は…。ご、ごめんなさい…」


私は凄く悪い事をしたような気がして謝った。


「やだ、謝らないで。私、そんなつもりでいったんじゃなくて…。の気持ちが分かるから…」


その言葉に驚いて、私はローラの顔を見つめた。


…凄くジョシュの事、好きなのね?見てると、それが伝わってくるわ。
それにジョシュも、凄くの事を大切にしてるもの。端から見てると羨ましいくらい」


そう言って彼女は微笑んだ。
私は彼女は、ジョシュが好きなのかしら?と思った。
すると、その気持ちに気づいたのか、ローラは、


「あ、違うわよ?私、ちゃんと恋人がいるの。俳優さんでね。だから彼が他の女優さんとラブシーンなんてやってるのを見たら、やっぱり凄く嫌な気持ちになるわ。仕事だって分かってても…」


少し寂しそうに彼女は呟いた。


「あの…私の事…おかしいとか思わないんですか?」 思い切って聞いてみた。


「おかしい?どうして?」
「だって…私とジョシュは…あの…兄妹だし。 …そんな焼きもちなんて…学校の友達にはブラコンって言われるから…」


そう言うとロ−ラは少し微笑んで、


「そんな事ないわ。 ―お家の事情も少しは聞いてるの。それに誰かを大切に思う事って変な事じゃないわよ。
愛情なんて、こうじゃなきゃダメって事はないでしょう?決まりなんてないの。人それぞれ形は違うものよ。
誰にもの気持ちを否定する権利はないしね。人を思う気持ちって素晴らしい事だもの。
も、そんな小さな事は気にしないで、ジョシュに思い切り甘えていいと思うな。また彼もそれを望んでると思うわよ?」


そう言うとロ−ラは優しく微笑んでくれた。
私は、彼女のその言葉に涙が浮かんでくるのを感じていた。
私の中で何かが動いた気がした。




ジョシュを兄としてじゃなく、一人の人間…ううん、男性…として好きだと気づいた瞬間だった――








…!ここにいたのか?」


ふいにジョシュが部屋へと入ってきて私は慌てて、涙をふくと、ローラの方を見た。
彼女は軽くウィンクをして、部屋から出て行く。


「またね、ジョシュ!」
「あ?ああ…。 ―、ここで何してたんだ?」


ジョシュは私の方へ向き直り私の頬を優しく両手で包み、目線を合わせて顔を覗いてきた。
私は少し照れくさくて目を伏せた。


「えっと…邪魔にならないように、ここで待ってたの…」
「バカだなー。邪魔になんてなるわけないだろ?いないから探したよ…」


ジョシュは、そう言うと、私の頬に軽くキスをした。
いつもの事なのに、私は顔が赤くなるのを感じて、慌ててジョシュに背中を向けると、「あ、あの撮影は終ったの?」と聞いてみる。


「あ、うん…。 ―どうした?…。何か変だぞ?」


ジョシュは、また私の前へと来ると、頭を撫でる。


私は、ますます恥ずかしくなって、「べ、別に…。 ―じゃ、あの・・ホテルへ帰れる?」と聞いた。


何か話さないと動揺してるのがバレてしまう―


ジョシュは変な顔をしたが、「ああ…帰ろうか?、疲れたんだろ?すぐ、着替えるから待ってて」と微笑むと着替える為、隣の部屋へと入って行った。
私はジョシュがいなくなると、思い切り、息を吐き出した。


(ああ…もう今度は違う痛さに襲われるわ…)


胸を抑えると少し深呼吸をした。
そこに賑やかな声が響いて、他の皆も戻ってくる。


「あれ?、ここにいたんだー。さっきジョシュが慌てて探してたよ?」


そう言いながらイライジャが笑った。


「そうそう、あんな機材の後ろまで探したっているわきゃないっつってるのにさー」


ショーンも大笑いしながら、ジョシュに聞こえるように大きな声を出している。


「聞こえてるぞーー?!」


向こうの部屋からジョシュの怒った声が聞こえてきた。


「聞こえるように言ってんだよ!」


またもショーンは笑いながら言うと、私の方を見て、「ほんと、心配性だよね?」と今度は小声で言ってウィンクなんてしている。


私も、おかしくなって笑ってしまった。
すると横にいたイライジャが、


「そういうショーンだって夕べ、"彼女が電話に出ないんだ!浮気してるのかもしれない!"って大騒ぎしてたじゃないか!心配性は同じだよ!」


とケラケラ笑っている。


「うるさいな!それと、これとは別だよ!俺は離れてるから心配するんだ。ジョシュなんて、こーんな近くにいるのに心配してるから―」 




ゴン!




突然、切れたショーンの言葉と、鈍い音で、私は驚いた。
ショーンの後ろには着替えが終って出てきたジョシュが、手をグーにして怖い顔で立っていた。
身長が高いので、少しショーンを見下ろす感じが何とも迫力があった。


「いたっ!ジョシュ!ひどいよ、グーで殴るなんてぇー!」


ショーンは抗議の声をあげたが、ジョシュは澄ました顔で、「心配性で悪かったな。きっとお前の彼女も他の男に走ってるかもな」と言った。


「うわ!人が気にしてる事を、そこまで言うか!」


そう言うとショーンはジョシュの背中へ飛び乗り、ゲンコツでジョシュの頭をグリグリしている。


「いてててっ…ごめん、ごめんってば!ショーン、それ痛いよ…!」


ジョシュも苦笑いしながら逃げようと必死になっている。


私はそんなジョシュを見て皆と一緒に笑いながらも…これから…今までどおり、普通の顔でいれるかしら…と不安に思っていた。













「あー疲れた!全く…ショーンに付き合ってたら体力いくらあっても足りないよ…」


そう言いながら、ジョシュはソファーへと座って溜息をついている。
私とジョシュは、今ホテルへと戻って来たばかり。
私はいつもなら、ジョシュの隣へと座るのだが、何となく手持ち無沙汰に立ちながらも、ふと外を見る。 
まだ風が大きな音で吹いていた。


?どうしたの?」
「え?な、何が?」
「さっきから、何か変だよ?」
「そんな事ないわよ…」
「そう?じゃ、はい、ここ」


ジョシュはニッコリ笑うと、いつものように膝をポンポンと叩いた。
私は顔が熱くなるのを感じたが、ここで動揺したら変に思われてしまうと思い、いつものようにジョシュの膝へと座る。


するとジョシュは私を抱きしめて、額へとキスをしてきた。


私はドキドキして、顔が上げられなくなった。


(意識しちゃうと、こんなに恥ずかしいものなのか…)


それでも愛しい温もりの中に包まれていると、やっぱり安心する。


?どうした?やっぱり今日は少し変だよ?」
「そんな事ないよ、ちょっと眠いだけ…


私はそう言って微笑んだ。


「そう?には、いつでも笑顔でいて欲しいよ…」


ジョシュは、そう言うと今度は私の頬へ優しくキスをしてくれる。


「私も…」
「ん?」
「私も、ジョシュには、いつでも笑っていて欲しい…」


そう言うとジョシュは嬉しそうに、私を抱きしめた。
私も今度は照れずに、ジョシュの胸に顔を埋めて目をつぶった。
この腕の中が一番、安心して眠れる。


(ジョシュの香りに包まれてると、自然と眠くなっちゃうんだ…)


私は、そんな事を考えてて、ほんとに眠ってしまった―









それに気づいたジョシュは愛おしそうに彼女の頬へキスをすると、そのまま、そっと抱き上げて寝室へと行き、ベッドへと寝かせてあげた。




そして…「I want you to be always with smile...」と呟くと、今度はの唇へそっとキスをした。






私は、それに気づかず、暖かいジョシュの腕の中で眠る夢を見ていた。











Postscript


・・・・とうとうヒロイン、自分の気持ちに気づいた模様・・・。
何だか今日、これ書いてる間中、パラサイト流してたから、もうクラクラです(笑)
ジーク、何度見ても好きv
あのドラッグを入れた筒状の入れ物の蓋を口で開けて、それをプって、プって(しつこい)
吹くとこが最高に好きですよvv
因みに最後、ジョシュが呟いた言葉は・・・「いつも笑顔でいて・・・」というような事でしたv


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】