When we turn out the lights
The two of us alone together
Something's just not right
But girl you know that I would never
between the two of us
'Cause no one else will ever take your place...
明かりを消して
二人きりになったのに
何かが違う
これだけは分かって欲しい…
誰も二人を邪魔することはできない
君以外 考えられないから…
外は、まだ小雨が降り続いている。
最近は、雨が降ったり止んだりと天候が変わりやすくなっていた。
季節の変わり目だからだろう。
僕は部屋へ戻り――今までショーンとイライジャの部屋で男同士、軽くお酒を飲んでいたのだ――外を見ながら明日の天気を心配していた。
明日は、久し振りに撮影はオフ。一日、ゆっくり出来るから、と、どこかへ出かけたかった。
ルームサービスでとったブラックコーヒーを飲みながら、僕はソファーへと腰を降ろす。
は今、最近、仲の良くなったローラの部屋へと行っている。
ジョーダナや、クレア達と集まって、あっちも女同士で話してるんだろう。(僕としてはちょっと複雑な気分だ…)
最近、は少し様子がおかしい。
たまにだけど、どこかよそよそしい感じがする。
まさか今頃、思春期ってわけじゃないだろうけど僕がいつものようにを抱きしめたり、キスをしたりすると、は体を硬くするようになった。
(今までは、そんな事はなかったのに…)
男性恐怖症がひどくなり、僕のことまで怖くなった…とかではなさそうだけど。
夜、一緒に寝る時は前以上に甘えてくるし、おやすみのキスとかも嬉しそうに微笑んでくる。
ただ、普段、急に抱きしめたりすると体がビクっとなって驚いた顔をする。
(何でなんだろう…?)
僕は少し不安だった。
(兄離れの年齢なのかな…)
この撮影に来てから、は色々な人と接する事に慣れて来ている。
僕以外の男でも普通に話せるようにもなってきたし―まあ、スキンシップは無理だけど―
リジーとも仲良さそうに二人で買い物へ行ったり出来るようになった。
そうなるとなったで、僕は寂しい…と思った。
そのうち本当にボーイフレンドを連れてくるかもしれないと思うだけで、何故か胸が痛くなる。
僕は溜息をついて、煙草へ火をつけ、思い切り煙を吐き出した。
部屋の中が妙に静かで、が側にいないだけで、こんなに広く感じる。
時計を見ると、すでに夜の10時になろうとしていた。
そんなに遅くはない時間だが、僕は少し心配になり、ロ−ラの部屋へ電話してみようか…と思った時、部屋のドアが静かに開いた。
「…?」
僕はハっとして声をかけた。
「ジョシュ?先に戻ってたのね。 ―ただいま」
が笑顔で入って来る。
僕はの顔を見て、心底ホっとした。
そして、そのままソファーへと座っている僕の前まで歩いて来たの手を思い切り引き寄せ、強く抱きしめる。
「…ジョ…ジョシュ?!どうしたの…?」
が驚いて声をあげる。
「いや…。ちょっと…がいなくて寂しかっただけだよ…」
そう言うと、はそのまま僕を抱きしめ、「ごめんなさい…話し込んじゃって…」と、か細い声で謝った。
僕はの腰を抱き寄せ、自分の膝の上へと座らせると、の頬へキスをした。
「…どうしたの?ジョシュ、何だか変だよ?」 と、は不思議そうな顔で僕の顔を見あげて来る。
そんなが可愛くて思わず、昔のように、の唇へと軽くキスをした。
「……っ。ジョシュ…?! よ、酔ってるの?!…」
は大きな瞳をさらに大きくして驚いた顔。
「そんな酔ってないよ。 ――たまにはね!」
僕はそう言って、また軽く唇へとキスをする。
は顔を真っ赤にして、
「だ、だって、この前は私がしたら、ジョシュ物凄く慌てたじゃないの…。だから――」
「昔は、よくしただろ?だって、そう言ったよ?」
僕は笑いながら言った。
「そ、そうだけど…」
は、そう言うと、それでも少し恥ずかしそうに俯き、「もう…ジョシュのイジワル…」 と呟いた。
そんなが愛しくて、また軽く抱きしめ、今度は額へとキスをすると、「で、は、こんな時間になるまで、ロ−ラと何を話してたの?」 と聞いた。
すると、は目に見えてドキっとした顔で、「べ、別に…」 とまたも俯いてしまう。
「何?俺にも話せないこと?」
「そ、そうじゃないけど…。あの…ローラやジョーダナの恋人の話を聞いてただけよ…」
「え?ああ…。 ―、そんな話したの?ロ−ラ達と」
「う、うん。そう…。ちょっと女同士の話よ…」
僕はの、その言葉に少しドキっとした。
―女同士の話…。恋人の話…。
だって年頃なんだから、普通は、そんなのは当たり前なんだろうけど、が、そういう事を言うのを今まで聞いた事がない。
学校の友達の事でさえ、あまり話してくれないし、友達と、どこかへ出かけるよりも、僕の家に来る方を優先していたんだから。
「ふぅーん。も、そんな話するようになったんだ。 もしかしても、ロ−ラに恋の相談でもしてたの?」
僕は少し気になり、だけど冗談のつもりで言った。
…が――僕のその言葉には明らかに動揺した。
「そ、そんなわけないじゃない…っ」
そう言うとは僕から、パっと離れ、「シャワー入ってくるね!」と慌ててバスルームへと行ってしまった。
僕は、あっけにとられて、の後姿を見ていた。
(今の動揺ぶりは、おかしい。まさか…、好きなヤツでもできたのか?!)
僕は今まで考えたくもなかった、その現実を考え、胸が痛くなった。
(誰だ?…今、一緒に撮影してる中の誰かか?)
僕は一人で、あれこれ、が好きになりそうな男を次々に思い浮かべていった。
まさか…リジー? 最近、妙に仲がいいし…。
ショーンは彼女がいる事は知ってるだろうし…ないよな…。
それとも渋いところでロバート?
他は皆、妻帯者だしな…
いや、でもやっぱりリジーが一番怪しい…(!)
僕はそう思うと、ほんとに具合が悪くなるくらい、胸が締め付けられてくる感覚になり、ソファーに倒れ込んだのだった。
「ジョシュ…?寝ちゃった?」
「え?!…あ、いや…」
の声に、ハっとして、僕はソファーから起き上がった。
結局、今まで、が好きになったかもしれないやつを、思い浮かべていって、すでに頭が痛かった。
「起きてたよ?」
僕は少し笑顔で答えると、タオル生地の大きなパジャマをに着替えたを抱き寄せた。
「ジョシュもシャワー入ったら?スッキリするよ」
は微笑みながら、そう言うと僕の膝の上に座る。
「ああ、そうするかな・…。 ―、先に寝てる?」
僕は、の頬へキスをしながら聞いた。
「ううん!起きて待ってる。明日は休みだし、少し夜更かししてもいいよね?」
「…ああ、いいけど…。 今朝、早かったし眠くない?」
「うん、眠くないよ。一緒にビデオ、見ようよ。さっき、ジョーダナに面白そうな映画のビデオ、借りてきたの」
と、は少し意味ありげに微笑む。
「え?何を借りたの?」
その問いかけにはニッコリ笑うと、「ジョシュの実質上のデビュー作!」 と嬉しそうに言った。
「えっ?!もしかして…"ハロウィン"…?」
「そうよ!ジョシュが見せてくれなかったって言ったら、ジョーダナが、"あ、それ持ってきてるわ"って貸してくれたの」
「な…!何で、ジョーダナ、そんなもの持ってきてるんだ?!まだ公開もされてないぞ?」
「知り合いから貸してもらったんだって。ほら、ジョシュが前に持って帰って来た関係者の人に配るビデオよ!
ジョーダナは共演する人の映画は見る様にしてるんだって。どんな人なのか気になるみたいで」
笑顔で答えるの言葉に、僕はガックリ頭を垂れた。
すると、が心配そうに僕の顔を覗いてくる。
「ジョシュ…。そんなに見られたくないの…?【Debutante】は見せてくれたのに…」
「あ、いや…。そうじゃないけどさ。それって思いきりホラーだし…。その…が怖がると思って…、13日の金曜日だって見られないだろ?」
(それに…確かこの【ハロウィンH20】には…僕の"キスシーン"もあったはずだ…)
僕は、ますます頭が痛くなった。
「怖いけど、ジョシュと一緒に見れば大丈夫だよ?それに映画の中でもジョシュ出てくるし」
そう言うとは、また可愛い笑顔で微笑む。
僕も、そんなの笑顔を見ると、ダメとは言えなくなってしまった。
(ほんと僕は、この笑顔に弱いよな…)
心の中で苦笑いすると、の頭を撫でながら、「分かったよ。じゃ、すぐシャワー入ってくるし、その後に一緒に見ようか」 と微笑んだ。
そう言うと、「うん!早くね!」 とは嬉しそうに微笑んで、僕の膝から、パっと降りると、
「私も待ってる間に、髪乾かしちゃおう」 とドライヤーを取りに行く。
僕は、そんなを見て微笑むと、シャワーへと入るべく、バスルームへと歩いて行った。
It seemed to be like the perfect thing for you and me......
It's so ironic you're what i had pictured you to be
But there are facts in our lives
We can never change
Just tell me that you understand and you feel the same.......
二人にとって これがベストなんだと思っていた…
皮肉ね 今のあなたは私が思い描いてた理想の人
だけど人生にはルールがあるの
人は決して変ることなどできない
ねえ 同じ気持ちだって言って…
「…大丈夫か?再生押すけど…」
ジョシュの腕をしっかり握りしめながら、まだ何も映っていない画面に見入っている私に、ジョシュは苦笑いしながら問い掛けてきた。
「だ、大丈夫…だと思う…」
私は小声で声を震わせながらも答える。
ジョシュは、その声を聞いて微笑むと後ろから抱きしめている腕に力を入れて、そっと私の頭へ唇をつけた。
今、私たちは寝室のベッドの前のテレビを向け、ジョーダナから借りてきた【ハロウィン・H20】を見ようとしているところ。
「じゃ、再生するよ?心の準備して」
ジョシュが笑いながら、そう言うとリモコンのボタンを押す。
このホテルの部屋にはテレビが寝室にも置いてあり、しかもビデオが見れるようになっている。
最近ではホテルでもビデオが見れるというのは当たり前。ホテルによってはフロントでビデオの貸し出しなんかをやっている所もあり、
宿泊者には一本無料で貸してくれたりする。
ジョシュはクッションを背もたれにして寄りかかり、私を前に座らせ後ろから抱えるようにして映画を見ていた。
私はやっぱり怖いので、「布団の中に入る…」と言って、しっかり顔の前まで布団を引っ張る。
ジョシュが、この映画を撮った後、関係者だけに配られる、このビデオを持って帰った時、
私は見たがったのだが、ホラーという事もあり、ジョシュは怖がりの私には見せられないと言って笑ってたっけ…。
あれは…今年の初め。
もっと経っている気がしてくる。
あの頃も…無邪気にジョシュに甘えてばかりだった。 (今だって変わってないけど…)
さっきは驚いた。
"ローラに恋の相談でもしてたの?"と言われて、ドキっとした。
確かに…ローラに相談…というより、ジョシュを意識してしまって、今まで通りに出来ないと話してたのは事実。
ローラは「いきなり態度を変えたら、ジョシュ、落ち込んじゃうわよ?照れるのも解るけど素直にならないと!」と言ってくれた。
それを聞いて、ジョシュが落ち込むのを見るのは嫌だと思った。
そう言われてみると最近、突然抱きしめられたりすると、私はドキっとして体が緊張してしまってた…。
それを少なからずジョシュは気づいて、「どうしたの?」と少し悲しげに私を見てきたっけ…。
あんな悲しそうな顔させたくないのに…。
だから、なるべく今まで通りにふるまわないと!なんて決心して意識しないようにしようと思いながら戻ってきたのに…
さっきの突然の唇へのキス……心臓がとまるかと思った――
顔が赤くなるのが自分でも分かった。
確かに前はよくしてたし――この前は私からしたけど――自分の気持ちに気づいた今となっては、ほんとに、普通に好きな男性からされてるのと同じ事で…やっぱり照れてしまうのは仕方がない。
今だって抱きしめられてる背中が熱い。
目の前にあるジョシュの腕を掴んでる手も…。
そんな事を考えていたら、映画の中では、冒頭のシーンになり、私は少し怖いので布団を、そっと顔まであげる。
一人の女性が帰宅してきて家の中が荒らされてるのを見つける。彼女は泥棒だと思い、外へ助けを求めに行くと、隣人の少年達に会う。
そして、その少年の一人は女性が止めるのも聞かず、その女性の家の中へと様子を見に入っていく。
そして少年が部屋の中を確認して誰もいないことを確めると、外で、待ってた女性に、誰もいないことを告げる。
その女性は安心して自分の家へと入った。
だが…そこに一つの影が浮かぶ――
「ね、ねぇ…ジョシュ…。これ、いきなり、ワっとか出ない?…」
私は怖くなり、ジョシュへ声をかけた。
「ああ、どうかな?ホラーお決まりのパターンでは来るはずだけどね」
ジョシュは少し笑いながら答える。
そう聞くと、ますますジョシュの腕を掴む手に力が入る。
すると映画の中では、その女性が怪しい影に気づき、家を飛び出すと隣の、さっきの少年宅へと助けを求めている。
しかし、そこで女性が見たものは――
「キャァ!」
私は少年の無残な死体のアップに、思わず声をあげ、ジョシュの胸へと顔を埋めた。
ジョシュは苦笑いしながら、「ほら…やっぱり怖いだろ?」 と言って私の頭を撫でてくれる。
「だ、だって今のは…反則だわ…!あ…頭に、スケート靴が刺さってたよ…?!」
私は恐々と顔を画面へと戻した。
そこにはもう怖い死体は映ってなく、物語のキーと思われる色々な新聞記事や写真が壁に貼られているシーンが映っていた。
「、ホラーは全部、反則みたいなもんだよ」
そう言ってジョシュが、また笑っている。
「だって…初めから、あんなのが出るとは思ってなかったんだもん…」
「これから、もっと怖いよ?」
「そ、そうなの…?」
「ああ、もっと叫びそうなシーンがね」
ジョシュは、そう言って私の頬へ軽くキスをした。
そこで画面に、いきなりジョシュの顔が映る。
「あ!ジョシュだ!」
私は振り返り、ジョシュを見上げると笑顔でそう言った。
ジョシュは何だか恥ずかしそうに微笑んでいる。
「これ、今年の初めに、撮ったんでしょ?懐かしい。あの頃のジョシュだ。今もあまり変わってないけど」
私はちょっと舌を出して笑うと、また映画へと集中した。
(そうだ…。この時のロケで、ロスに行かれるのが寂しくて、思わず"行かないで…"と我がまま言ったんだったな…)
ふと思い出す。
ジョシュは困ったような顔をして、でも優しく抱きしめてくれて、「毎日、電話するから」と言ってくれた。
ジョシュは、ほんとに毎日、電話をしてきてくれたっけ。
そうか、あの時、このシーンを撮ったりしてたんだ。
そう思うと、私は何だか自分の知らなかったジョシュの撮影の日々を垣間見れたような気がして、少し嬉しくなった。
あの頃、私が、"ジョシュは今、何をしてるのかなぁ"と思ってた時、このシーンを撮ってたもかもしれない。
そう思うと、私はつい笑ってしまった。
「?どうしたの?」
「ううん、私の知らないジョシュの時間が見れた気がして、嬉しくなったの」
「え…?そ、そぉ?」
ジョシュは、またも照れくさそうに笑っている。
私は、そっとジョシュの顔を見上げると、ジョシュの頬へ、軽くキスをした。
「わ、な、なに?」
ジョシュは顔を赤くして驚いている。
私からキスなど、あまりしたことがないからだ。
いつもジョシュからしてくれてるから――
「何でもない。したかっただけ」
私はそう言うと、ちょっと微笑んで、また映画へと目を戻した。
後ろでジョシュが、コホン…と咳払いをして、それで照れているのが分かる。
私はそんなジョシュが堪らなく好きだと感じた。
(ジョシュ…大好きよ…)
私は心の中で、そっと呟く。
今まで知らなかった想いが、私の胸にどんどん溢れてくるのが分かった。
僕はからキスをしてきたのに内心ドキドキしていた。
それに――そろそろキスシーンじゃなかったっけ…と考えて焦っていた。
別にガールフレンド役の子と軽くキスするだけなんだけど、でもやっぱりと一緒に見るのは嫌だった。
僕は画面に、ジョン役の僕が、朝、学校へ行くところが映り、校内で彼女を見つけるシーンまでくると、いきなり、「あ!ここ…!」 と叫んだ。
すると、は驚いて、「キャ…!な、何?!」 と言って僕の胸に顔を埋めてくる。
「な、何?今のとこで何か出て来るの?!」
は、そのまま顔を埋めたままで聞いてきた。
僕が画面を見ると、ちょうどジョン(僕)とガールフレンドが軽くキスをしているシーン。
そして二人は学校内へと歩いて行った―
(はぁ…危なかった…)
そのシーンが無事(?)に終ると心の中で、ホッとしながらも、まだ僕の胸に顔を埋めて、
「ジョシュ?怖いの終った?」と聞いてくるへ、「終ったよ!」 と言って笑った。
すると、は顔をあげ、「何が出てきたの?そんなシーンじゃなかったのに…」 と少し不思議そうな顔で僕を見上げてくる。
「ちょうどマスクをつけた男が手にナイフを持って出て来る映像がチラっと映っただけだよ」
僕は澄ました顔で答えた。
「そうなの…?」
も、そう言うと、また画面へと目を戻した。
僕は心の中で、あと、もう一回あったような気がする…と思い出しつつ、次は何て言って誤魔化そうか…と考えていた――
「…大丈夫?」
僕は泣きながら抱きついてくるの頭を撫でながら声をかけた。
「う…ん…。だ、だいじょ…ぶ…」
は必死に涙を止めようとしている様子。
は、案の定、後半、襲ってくるマスクの男に絶叫して、最後には泣き出してしまった。
「だから怖いって言ったのに…」
僕は苦笑いしながら言った。
「だ、だって…ジョ…ジョシュが刺されちゃうんだもん…」
は涙を溜めた瞳で僕を見上げる。
「あれは、お芝居だから痛くなかったよ」
僕は笑いながら、涙でいっぱいのの瞳へ唇をつけて言った。
「わ、分かってるけど…。 あんなの…嫌だな…」
は僕に抱きつき、そう呟く。
その言葉に僕はちょっと微笑むとを抱きしめた。
(ほんと、可愛いよ、は…)
は確かにマスクの男にも怖がっていたが、僕がそいつに足を刺されてしまうシーンでそれまで以上に絶叫し、そして泣いてしまった。
すでに画面ではヒロインの女性が、マスクの男と最後の対決をしているシーンになっている。
「?映画見ないの?」
やっと泣きやんだへ聞いた。
「ん…見る…」
は、そう言うと、僕に抱きつきながらも、また少し顔を画面へと向ける。
僕は二度目のキスシーンも何とか誤魔化していたので(!)安心して見ていられた。
チラっとの顔を見ると真剣な表情で映画を見ている。
マスクの男がナイフを持って、後を追ってくるシーンでは、体をビクっとさせたりしているが、もう泣く事はなかった。
僕はそっと煙草へと火をつけ、心の中で苦笑した。
自分で自分が出てる映画を見るのは何だか変な気分だった。
もちろん撮り終わった後は、関係者全員で見ることは見るけど。
その後は公開されても見たりはしないし、こうして、わざわざビデオを見ようとも思わない。
この作品の前の映画も、にせがまれて見るには見たけど、やっぱり照れくさかったのを覚えてる。
その前はテレビドラマ…CM…。
は何故か、僕と一緒に見たがった。
その前は舞台だったから、もちろん一緒に見ることは出来ない。 (僕は舞台の上にいるからね)
(こうして映画となると、あとから見れたりするから、僕としては少し困るんだけど…)
僕の演技しているところが好きだと言ってくれた少女は、大人になった今でも同じように思ってくれているんだろうか…。
やっとエンドロールまでくると、私は、ジョシュを見上げて、「はぁ〜怖かったね!」と言った。
「そうか?俺は知ってるから大丈夫だよ?」 と笑う。
私は気になった事を聞いてみた。
「ね、ジョシュ。このマスクの男は、ほんとに死んだの?」
「ああ…。そりゃ首を飛ばされたんだから…。死んだんじゃないかな?」
「ジョシュも知らないの?」
「監督に別に説明されたわけじゃないからね」
ジョシュが笑いながら答える。
「へぇーそんなものなんだ!」と私は驚いた。
「、眠くないの?もうすぐで1時になるけど…」
ふいにジョシュが聞いてくる。
「うん!今ので眠気なんて、もっと飛んじゃった」
「あんなに叫べば眠気も飛んじゃうか…」
ジョシュは笑いながら、私の額へとキスをすると、
「じゃあ、もう少し起きてる?どうせ明日は休みだし、雨も止みそうにないから」
「うん、明日は出かけないで、一緒に寝てようよ」
私が微笑みながら、そうジョシュに言うと、
「じゃ、ワインでも飲む?さっきルームサービスで、コーヒー頼むついでに一本持ってきてもらったんだけど」
「え?ワイン?飲みたい!」
「じゃ、開けよっか」
ジョシュは笑顔で、そっと私を腕から解放すると、寝室を出て行った。
私は、そのままベッドへと軽く横になる。
ジョシュがいたところが、かすかに暖かい。
私は、その温もりに頬をよせてゴロゴロしていた。
すると、「?ワイン、そっちで飲むの?」とジョシュの声。
「うん。眠くなったらすぐ眠れるもん」 そう答えると私は少し体を起こす。
「そのまま寝たらダメだよ。ちゃんと歯を磨いてからじゃないと虫歯になるからね」
ジョシュが笑いながらワインを持って戻ってきた。
「はーい…。寝ちゃわないように気をつける…」
「寝たら起こしてあげるよ」
ジョシュは、そう言うとソムリエナイフで手馴れたように、上の蓋の部分を切ると、ワインのコルクを抜き、グラスへと注いでくれた。
「はい」
「ありがとう…。あ!これ、私の好きなスペインワイン?」
私はワインボトルのラベルに気づき、聞いた。
「そうだよ。の好きなワインあったから、これにした」
「わぁ、嬉しい。ありがとう、ジョシュ」
私も微笑みながらグラスを受け取る。
ジョシュはベッドの横へ腰をかけ、自分のグラスへもワインを注ぎ、「じゃ、乾杯」と笑いながら私のグラスへ、チンっと当てると美味しそうにワインを飲んだ。
私も、ゆっくり飲むと一気に喉の奥が熱くなり、顔がほてってきた。
「はぁー何だか、ほんとに寝れそう」
「おいおい、まだ一杯目だよ?」
ジョシュは笑いながら、私の頬へ軽くキスをした。
「でも、お店とかで飲むより、こうして部屋で寛いで飲んでる方が酔うの早くない?」
私はワインを飲みながら聞く。
「ああ…。そうかもね。店とかだと少しは緊張してるし…」
とジョシュは私の肩を優しく抱いて
「部屋だと好きな体勢で飲めるし安心するから酔うのも早いよ」
「そうかぁ。気持ちの問題なんだ。安心してると酔っちゃうのって」
「ああ、外だと帰らないといけないって頭にあるから知らずに、ある程度は酔うのをセーブしてるんだよ」
「でも、この前、監督とかと皆で食事に行った時は、ショーン、ダラダラだったわね」
と、私は、その時の事を思い出して笑いながら言うと、ジョシュも笑って、
「ああ、あいつはバカだから、セーブするっていう機能が働かないだけさ」
「アハハハ…。ジョシュ、ひどい事言って」
「だって、ショーンのヤツ、昨日の撮影でも自分のセリフじゃなくて、リジーのセリフ言いやがってさ!驚いたよ!
しかも何故か自信満々な顔で言うもんだから、俺も一瞬分からなくってセリフ続けたら、リジーが、あの大きい目をもっと大きくして、
"ショーン!それ僕のセリフだろ?!"って怒りだしてさ」
そう言うとジョシュも思い出したのか、一人で大笑いしている。
私もおかしくて一緒になって笑った。
―ああ、私が居眠りしちゃった時に撮ってたシーンだ。
皆の大笑いする声で目が覚めたんだった。
「まったく…あいつは現場のいいムードメイカーかもな」
と、ジョシュは少し笑いながらワインを飲み、「俺も中に入ろうっと」と言ってベッドの中へと入ってきた。
そして私を抱き寄せると、頬へキスをして、「も、だいぶ皆に慣れて来たね」と優しく微笑んだ。
「うん。皆良い人ばかりだし…。とっても優しくしてくれるよ?」
「は可愛いから、皆にとっても妹みたいなんだよ」
「…妹…」
私は笑顔で言ったジョシュのその言葉に少し胸がツキンと痛んだ。
("皆にとっても" やっぱりジョシュにとっても私は"妹"でしかないのかな…)
そう思うと、私は胸が苦しくなり、少し顔をふせた。
するとジョシュは、それに気づき、心配そうに、「どうした…?。眠くなっちゃった?」 と私の顔を覗き込んでくる。
「ううん…。そんなんじゃないよ…」
「そうか…?何か…心配事でも…?」
いきなり、そう聞かれて、私は驚いた。
「え?ど、どうして…?」
「だって…。最近の、少し様子が変だし…。俺も気になってたんだ」
ジョシュは、本当に心配そうに私の顔を見つめている。
私は何て答えていいのかも分からず、また俯いてしまった。
すると――
「…もしかして…。誰か好きなヤツでも出来た…とか…?」
ふいにジョシュが心配そうな顔で聞いてきてドキっとする。
「え…?!」
「いや…別にちょっと気になってさ…」
ジョシュが少し苦笑しながら言った。
私は顔が赤くなっていくのが分かった。
(ど、どうしよう…。何て誤魔化せば…)
私は頭の中が真っ白になり黙ってしまった。すると、それを、ほんとに好きな人が出来たと勘違いしたのか、ジョシュが言葉を続ける。
「もしかして…リジーとか?」
私は、その言葉に心の底から驚いた。
「え?!な、何でリジーなの?!」
するとジョシュも驚いた顔をして、「え?違うの?じゃ…まさか・…ショーンじゃないよな?」ジョシュは凄く嫌な顔をして聞いて来た。
私は、その顔におかしくなり、笑ってしまった。
「アハハハ!ち、違うよ…!ショーンは彼女がいるじゃない」
「そ、そうだけどさ…人を好きになるのは理屈じゃないだろ?だから―」
そう言うとジョシュは少し照れくさそうに、私の顔をチラっと見て視線を外すと頭をかいている。
私は、そのジョシュの"クセ"を横目で見つつ、そっと微笑んだ。
―そのジョシュのクセが好き…。
相手をチラっと見てすぐに視線を外すクセ。
――ハートネットグランス…。共演者の皆や監督がそう言って、からかってたっけ。
そして頭をかくクセ…全てが愛しく感じる。
そして私はジョシュの言葉を思い出していた。
―人を好きになるのは理屈じゃない
その言葉に私はドキっとした。
相手のことを色々と調べて、"この人は好きになっても大丈夫"と安心してから好きになったりするものじゃない。
気づいたら好きになってしまってる…そういうものだ。
そう言うと不倫をしている人みたいだけど・…。
でも人を好きになる心はとめられるものではないし、どんな関係でも心が動く時はある。
私とジョシュみたいな関係でも…。
いつか別れる時が来ると分かっていても。
いつかジョシュは、私じゃなく、本気で愛した女性と結婚だってするかもしれない。
私はジョシュにとっては、可愛い、"ただの妹"でしかないんだから―
それを笑顔で祝ってあげなくちゃならない日がくるかもしれない。
それに私とジョシュは血の繋がりはどうであれ、世間的には兄妹だ。
好きになる事も…ましてや結婚なんて許されるわけがないんだから。
この想いは・…隠しつづけなければいけない…。
――私は本気でそう思っていた。
「?どうした?」
私がずっと黙っていたからか、ジョシュが心配そうに顔を覗き込んできた。
私は、ハっとしたが、すぐに笑顔で、「ううん、何でもない。ちょっと酔っちゃったかな…」 と微笑んだ。
「そう?俺が変な事、聞いちゃったから気にしたんじゃない?」
「そんな事ない。それに私は好きな人なんていないもの…。リジーもショーンも良い人だけど、それ以上の感情はないし…」
私が、そう言って微笑むと、ジョシュは大げさに息を吐き出し、「ああ〜!それ聞いて安心した!」 と私の額へとキスをして抱きしめてきた。
私は胸がドキドキしたが、それがバレないように何とか微笑んだ。
「な、何で?ジョシュが安心するなんて、そんなに心配?私に好きな人が出来たら…」
「そりゃ、そうだよ!大事な俺のだからね。 誰にも触れて欲しくないんだよ…」
ジョシュはそう言って少し微笑むと、また私の顔を覗き込み、軽く私の唇へキスをする。
そして、強く抱きしめた。
私は顔が赤くなったのを気づかれないように、ジョシュの胸へ顔を押し付けた。
苦しい。
胸が苦しいよ…ジョシュ…。
―そんな事言わないで…優しい事を言わないでよ…そんな風にキスしないで…
ジョシュを好きな気持ちが揺さぶられるから…。
思わず言葉にしてしまいそうになるから―
でも…それは出来ない…言ってはいけないの…
―こんな誰からも許されない想いは、ジョシュに知られたくない。
「…どこにもいかないで…」
ジョシュが… ――また胸に突き刺さるような言葉を呟いた………。
――もうそろそろ口を閉じて…
分かり合えてるかどうかの答えは多分どこにもない……
それなら身体を寄せ合うだけでも――
優しいものは とても怖いから泣いてしまう 貴方は優しいから――
Postscript
昨夜、【ハロウィンH20】のDVDを見つつ書きましたv
夜中にホラーですよ(笑)でも、あのジョシュも好きです。制服姿がカッコイイですねv
それと私も大好きです!ジョシュのクセ!(笑)ハートネットグランス(相手をチラ見するジョシュのクセをそう呼ぶ(笑)
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】 JASRAC(日本音楽著作権協会) ※著作権は製作者にあるわけではなく、各アーティスト本人にあります。