Vol.7...Truth Heart..






You are likely to separate and it is fearful


How will be carried out and it will be uneasy like this


It will be why darling like this


Had I wounded you to not knowing without


Having noticed the answer having come out.........?










君が離れていきそうで怖いんだ


どうして、こんなに不安なんだろう?


   どうして、こんなに愛しいんだろう?


その答えが出ている事に気づかないで、僕は


  知らずに君を傷つけていたんだね・・・・











「お疲れ様!ジョシュ」


後ろから声をかけられて振り向いた。


「ああ、ロ−ラ、お疲れさま」
「今日は、かなり押したわね。明日は午後からで助かるわ」
「ああ、そうだね。 ・・・・ちょっと疲れたよ」


朝からの撮影が、予定よりも長引いて、今は夜の11時半過ぎになっていた。
撮影後のスタジオを、スタッフが忙しく走り回る中、彼女と二人で休憩所へと歩いて行く。


「あら?は?」
「ああ、何だか、さっき出番の終ったリジーと二人で外に犬を見に行ったよ」
「え?犬?」
「ああ、最近、子犬がスタジオの裏に住みついたんだってさ。 、動物に目がないから」


嬉しそうに子犬の話をしていたを思い出し微笑んだ。
ローラは、「そう」と言って微笑むと、休憩所の椅子へと腰をかけた。


「ほんとに・・・大切にしてるのね」
「え?!・・・ああ、そうかな。大切だよ・・・」


少し照れ笑いしながら椅子へと座る。
そして煙草へと火をつけると、「ロ−ラ、最近、とよく話してるね?・・・は・・・何の話をしてるの?」と、訊いてみた。
最近、の様子が、おかしいのが、やっぱり気になっていた。
ローラは僕の問いかけに、少し顔を傾け、そして黙ったまま立ち上がると、
テーブルの上にあるポットからコーヒーを出演者用に置いてあるカップへと注いだ。


「コーヒー、飲む?」
「え?ああ・・・ありがとう」


コーヒーを受け取り、それを飲むと、返事を促すように彼女を見上げた。
ローラは自分のカップにも、コーヒーを注ぐと、また椅子へと座り、一口飲みながら、僕の方へと視線を向ける。


「心配?」
「え・・・?」
のこと・・・そんなに心配なの?」
「・・・そりゃぁ・・・。最近・・・様子がおかしい気がして。どこか・・・よそよそしいし」
「そう・・・・」
「ロ−ラ・・・何か知ってるなら教えて欲しいんだけど・・・。 、何か相談とか・・・してるんじゃない?」


僕の質問に、ロ−ラは何か考えている様子。
僕は答えを待てず、心配している事を単刀直入に訊いた。


「あの・・・さ。 ・・・、好きな奴とか出来たんじゃないか・・・?」
「え?!」


ローラは少し驚いた顔で僕を見た。


「やっぱり、そうなのか?!」


彼女の驚き方に不安を感じて胸が絞めつけられる感じがした。


「それは・・・私の口からは言えないわ?に訊いてみたらいいのに」


僕は胸が苦しくなり、そっと溜息をつくと、ロ−ラの方へ視線を向ける。


「それが・・・に訊いたんだけど教えてくれないんだ。好きな人なんていないって言ったんだけど・・・やっぱり様子が変だし・・・」
「そう・・・でも、がそう言うなら、ほんとにいないんじゃないの?だって・・・ジョシュには隠し事はしないでしょ?」
「そう・・・なんだけど・・・今まではね。でも最近は分からない。たまに一人でベランダに出てボーっと空見て考え事してるし・・・何を考えてるか・・・」


ローラは僕の言葉に、少し考えているようだったが、ふいに僕を見て口を開いた。


「ねえ・・・前から気になってたんだけど・・・ジョシュは・・・の事どう思ってるの?」


ロ−ラのその問いかけに、心の底からドキッとした。


「・・・どうって、どういう意味?」
「だから・・・の事・・・妹として大切にしてるの? ――それとも、一人の女の子として大切なの?」
「な、何だよそれ・・・そんなの・・・妹としてに決まって――」
「じゃあ、何で、そんなにに好きな人が出来たかっていう事を気にするの?普通の兄妹なら、そこまで心配しないじゃない。も、もう18歳だし、好きな人くらい出来るわよ」


ローラは、そう言うとコーヒーを飲み、微笑んだ。
僕は、そのローラの言葉に動揺していた。
今まで、そんなにハッキリと、との事を他人に聞かれた事がなかったからだ。


「それは・・・は・・・僕以外の男を怖がるから・・・心配くらいするさ・・・」
「でも、スキンシップは無理でも好きな人は出来るし、相手が理解さえしてくれれば何とかなるんじゃないかしら。
それに上手くいけば、男性恐怖症も治るかもしれないじゃない?」


僕はローラの言葉に、ドキリとした。


確かに・・・そうかもしれない・・・。
が好きな人とうまくいけば・・・精神的な病気は治る可能性もある・・・。だが僕は・・・に好きな奴がいるとは思いたくなかった。
妹なのに・・・他の誰にも触れて欲しくないと心の底から思ったんだ。



「ジョシュ・・・?どうしたの?」


ふいに声をかけられ、僕はハっとした。


「あ、いや・・・何でもない・・・」


ローラは少しの間、僕の方を、ジっと見ていたが、軽く溜息をついた。


「ねえ…こんな事訊くのも変だけど・・・。ジョシュは、の事を妹としてじゃなく、一人の女の子として・・・見てるんじゃない?」


いきなり核心をついた質問にドキっとして急に心臓の鼓動が早くなる。


「バ、バカなこと言うなよ・・・!は・・・確かに血は繋がってないけど・・・俺の妹なんだ・・・そんな風に思うわけがないだろ?」
「あら、どうして?」
「どうしてって・・・」


僕はローラが何を言いたいのか分からなかった。


「血が繋がらないなら、ただの男と女でしょう?相手を異性として・・・意識したって何も変な事ではないわ。
むしろ一番近くにいるんだもの・・・。お互いの事を一番に理解しあえてるんじゃないかしら・・・
それで意識するようになったとしても、それは当然の事じゃない?」


そう言われて、僕は心臓の音が、ローラへ聞こえてしまうんじゃないかと心配になるほどだった。


「やめてくれよ・・・。 ――もし・・・例え・・・もし、そうでも・・・どうしようもないだろ?」
「周りの目が気になる?」
「そんなんじゃ・・・。 それに・・・・僕は、のことを、ちゃんと妹として見てるよ・・・」
「じゃあ、に恋人が出来ても平気?」
「え?あ、ああ・・・平気だよ?」
「じゃあ、結婚するって言い出しても?笑顔で、おめでとうって言ってあげられる?」


僕は、そこで黙ってしまった。


が結婚・・・?! そんな不吉な事、考えたくもない!)


そう思ったが、ローラが僕の顔をジーっと見ているのに気づき何とか、「あ、ああ。言えるさ・・・」 と言った。
ローラは少し黙って僕を見ていたが、軽く息を吐き出すと、「そう。・・・ごめんなさい、変なこと訊いて。気にしないでね」と言って微笑んだ。
僕は少し、ホっとして、


「あ、いや・・・別に・・・。俺も友達に過保護だって、からかわれるし・・・変に疑われたりしてたから慣れてるよ」


と言って苦笑いした。


「さて、と!じゃ、私は着替えてくるわ」 と言うと、ローラは椅子から立ち上がった。


「ああ、お疲れ」
「お疲れ様」 


ロ−ラは笑顔でそう言うと、廊下を歩いて行く。
そこへが子犬を抱きかかえて、リジーと歩いて来た。


「あ、ロ−ラ!見て、見て!可愛いでしょ?!」


は嬉しそうに子犬を、ロ−ラへと見せている。


「わぁ!ほんと、可愛い!まだ小さいわねー」
「野良犬が裏で産んじゃったみたいなの!この前からずっと鳴き声がしてて・・・他にも、まだ二匹、いるのよ?ね?リジー」
「ああ、すっごい可愛いんだ!」 
「でも、リジーは、この子達の母親に好かれちゃってるのよね!」 とが笑いながら言うと、
「あれには、まいったよ・・・!僕から離れないんだもん」 と渋い顔。
「そうなの?」 とロ−ラも笑っている。


「ロ−ラも今度見にきてよ、可愛いよ〜」


は満面の笑みでそう言うと、僕に気づき、「ジョシュ!」 と嬉しそうに僕の方へと走って来た。


「見て、この子が昨日、話してた一番、私になついてる子よ?」


そう言うと、抱きかかえていた子犬を僕の方へと差し出す。
僕は笑顔で、子犬を受け取ると優しく抱いて、頭を撫でた。


「ほんと、可愛いな、こいつ」
「そうでしょ?もう名前も決めたのよ?」
「へぇー、何てつけたんだ?」


僕がそう聞くと、リジーが歩いて来た。


「それがさー、聞いてよ、ジョシュ!ったら自分の好物の食べ物からとって、"マフィン"ってつけたんだよ?
それでもマシになったんだから。最初は、"ソーセージ"とか言うから笑ったよ!」


と言いながらケラケラと笑っている。
すると、が顔を赤くして、


「い、いいじゃないの!ソーセージマフィンが好きなの!そういうリジーだって自分の好きなアニメのキャラの名前つけてたじゃない!」
「僕のは、まだ人物の名前なんだからマシだろ?」


とイライジャも笑った。
僕も、の考えた名前に噴出してしまう。


「もう!ジョシュまで笑うの?」 は少し頬を膨らまして怒っている。
「ごめん、ごめん!だって、まさかソーセージマフィンから、つけるとは思わないだろ?」 と、僕は笑いを堪えながら、の頭を撫でた。


するとイライジャが、思い出したように口を開いた。


「そうそう!さっきショーンが犬を見に来て、勝手に名前つけてたんだけどさ、何てつけたと思う?」


イライジャは、そう言って僕の方を見た。


「さあ・・・?  何て、つけたんだ?」 


僕はショーンがつけたんじゃ、きっとバカな名前なんだろうと思いつつも聞いてみた。


「それがさ!ぷ・・・っ!ショーンってば、メスの子犬見て、こいつ、彼女に似てるって言い出してさ!
自分の彼女の名前つけちゃったんだよ・・・! ぷぷぷ・・・ジェニファー!愛してるよぉー!って叫んで抱きついてキスなんかしてさ!相手、犬なのに!バカだろ〜?・・・アハハハ!」


そう言うとイライジャは堪えきれなくなったのか、思いきりお腹を抱えて笑い出した。
僕も、それを訊いて思い切り噴出した。


「・・・!あいつ、最強だな!バカの帝王だよ!」
「そうだよねー?まさに帝王だよね!」


僕とイライジャが二人で大笑いしていると、は、「ちょっと・・・!笑いすぎよ?二人とも・・・」 と自分も笑いを堪えながらも言ってくる。
いいかげん笑い疲れて、僕とイライジャは、深呼吸をした。


「あーほんと、ショーンは退屈させないな・・・」
「ほんと!一家に一台じゃなくて一人だね」
「俺、あいつに惚れそうだよ・・・」


僕はそう言うと、また少し笑った。
そこへも少し笑いながら、


「ジョシュ、この子、お母さんのとこへ返してくるね?心配してるかもしれないし・・・」
「ああ、そうだね。じゃ、その間に着替えちゃうよ」 


僕はそう言うと抱いていた子犬をの腕の中へと戻した。


「うん、じゃ行って来る」


は子犬を抱くと、笑顔で廊下を歩いて行った。


「あー僕、笑ったらお腹すいちゃったよ・・・」


イライジャがお腹を抑えて呟いた。


「サッサと戻るか・・・」


僕は椅子から立ち上がると、イライジャへと声をかけ、二人で更衣室へと歩いて行った。



更衣室へ行くと、すでにショーンは着替えて寛いでいた。
僕とイライジャは顔を見合わせ、ニヤリとすると、
静かにショーンの後ろへと周り、いきなり、「ジェニファー!愛してるよぉー!」と言って抱きついた。


「うわ・・・!!」


驚いたショーンは大きな声をあげて飛び上がっている。


「な、何だよ!お前ら!人の彼女の名前を気安く呼ぶなよ!」
「何、言ってんだよ?犬に気安く彼女の名前をつけたクセに!」


僕が、そう言って笑うと、ショーンは顔を赤くして、


「な・・・!何で知って・・・・!・・・・リジー?!バラしたな!」
「アハハハハ!あんな笑えるネタ、僕が黙ってると思う?」
「うるせーー!」


ショーンは顔を赤くして怒っている。


「ショーン、まだ振られてなかったんだ?良かったな」


僕は澄まして、そう言うと着替える為、隣の部屋へと行った。


「ああ、おかげさまで!」


ショーンがフテくされて怒鳴っているのが聞こえ、また笑いをかみ殺した。
僕は素早く着替え、また皆のとこへと戻ると、「あ、ジョシュ、帰ったら皆で何か食べに行こうよ」とイライジャが言ってきた。


「ああ、そうだな・・・」
「ジョーダナ達は先にホテルへ帰ったから、戻ったら部屋に電話してみよう」


ショーンも機嫌が直ったのか、笑顔だ。
そこへ、「ジョシュ?終った?」 とが戻って来た。


「ああ、終ったよ?じゃ、帰るか」


と言って、と手を繋ぐと駐車場へと歩いて行った。
その後ろを、イライジャとショーンもついてくる。


、お腹すいたろ?帰ったら皆で食事に行こう」
「うん、そうだね」


は微笑んで僕を見あげて来る。
そんなが可愛くて、優しく微笑んだ。
すると後ろから、「あーあー!ジョシュはにだけは優しいよなー!その優しさを半分、僕にも下さいな!」とショーンが、ふざけて言ってくる。
僕は苦笑いしつつ振り向き、「はあ?やだよ。 何でショーンに、俺の優しさを分けなきゃならないんだ?全部、のものだよ」と言ってやった。
すると、が顔を赤くして僕を見上げてきて、僕は微笑んで、の額へ軽くキスをした。


すると、またしても後ろで、「相変わらず、ラブラブですね!全く、その愛を分けろっつーの!」 とショーンも苦笑いしている。
僕も笑いながら、「分けないっつーの!」 と言い返した。 は顔を赤くしながらも笑っている。
すると、その会話を訊いてたイライジャが、


「でもさ・・・ジョシュがショーンに愛を分けたとして・・・オデコにキスするのは、ちょっと見たくないな・・・・」


と、ボソっと呟いた――!
それを聞いて、ショーンは、「わ!それは俺もやだ!そういう"愛"はいらない!」 と言って、額を抑えている。

僕は思わず気分が悪くなり、「・・・おぇ・・・」 っと呟いた・・・。











「ああーこれで、ゆっくり眠れるね!」
「結構、いっぱい食べたしな」
「私、苦しい・・・」


皆、それぞれお腹を抑えて唸っていた。
今、皆と近くのレストランへと行って夕食を取り、ホテルへと帰って来たところ。
ついつい食べ過ぎて、皆でダウン状態だった。


「今日は、サッサと寝よう・・・」


イライジャもお腹を抑えつつ呟く。
そして皆でエレベーターと乗り込もうとしたその時、僕の携帯が鳴った。
皆、一斉に僕の方へ振り向いたので、僕は、「先に上がってて。エレベータ内だと圏外になるし」と言った。
「ああ、じゃ、先に戻ってるよ」 とイライジャが言うと、
も、「じゃ、先に部屋へ行ってるね」 と笑顔で手を振る。
僕も微笑んで軽く手を上げると、エレベーターのドアが静かに閉まった。


僕はポケットから携帯を出すとディスプレイを確認して、顔をしかめ、すぐに通話ボタンを押した。


「Hello.....」
『Hello?ジョシュ?』


エレンだった――


「もう電話してこないでくれよ・・・」


僕は溜息をついて、そう言った。


『言ったでしょ?諦めないって・・・・』


エレンは、そう言うと、『それより・・・私、今どこにいると思う?』 と意味ありげに訊いてくる。


「え・・・?・・・・どこって・・・・ロスだろ?」
『ふふ・・・違うわ』


僕は、その言い方が気になり、「何だよ?ハッキリ言えよ」 とイライラしながら言った。


『あら、そんな怖い顔、しないでよ』
「え・・・?」


その彼女の言葉の意味が一瞬、分からなかった。


(顔・・・?どうして俺の表情まで分かるんだ?)


すると電話の向こうで、またクスクスと笑う声が聞こえ、『妹さん、可愛いわね』 と、エレンが言った。
嫌な予感がして、「エレン・・・・・今、どこにいるんだ?・・・」 と言うと――




『・・・・・私はここよ?』 


と、すぐ隣でも声が聞こえ、二重で僕の耳に響いた・・・。
バっと顔を横へと向けると、エレンが歩いてくるのが見えて、一瞬眩暈がした。




「ハーイ!ジョシュ」
「な、何やってんだよ?!何で君がここに?」


僕は動揺していた。


「・・・私も仕事で、ワシントンDCまで来たの。仕事が終って、時間もあったから会いに来ちゃった」


悪びれもしない彼女の言い方に、僕は唖然とした。


「ふざけるなよ・・・・!会いに来られたって困るよ!」
「まだ諦めないって言ったでしょ?それに、私は会いたいと思ったら、すぐにでも会いたいの、知ってるでしょ?」


エレンは魅力たっぷりの笑顔でジョシュの肩へと手を乗せた。


「・・・やめてくれよ・・・!」


その手を振り解くと、


「とにかく・・・・帰ってくれないか?俺だって仕事で来てるんだよ。そこでモメ事はごめんだ」
「あら・・・だって私も、ここへ泊まるんだもの」
「はあ?!」
「だから帰れないわ?それに今夜はもう飛行機も飛んでないし」


それを聞いて僕は思い切り溜息をついた。


「ちょっと私の部屋で話さない? ―それともジョシュの部屋へ行く?」


頭が痛くなった。
がいるのに、彼女を連れて行けるわけがない。
エレンは、それを分かって言っている。


僕は、また溜息をつくと、


「話すのはいいけど・・・。君の部屋へは行かないよ。ホテルの中庭で話そう。それがイヤなら俺はのとこへ戻るよ」


僕は気持ちが固いという風にキッパリと彼女へ言った。
するとエレンは、それでもニッコリ微笑んで、「いいわ。中庭でも」 と言った。


僕は少しホっとすると、「じゃ、サッサと行こう・・・」と言って、先にホテルの中庭の方へと歩き出した。










It is merely fearful....


That the feeling which you are likely to separate from when or me


And cannot say at all is painful,


And is touched by you It is merely fearful...








― ただ怖くて…


あなたが、いつか私から離れていきそうで
  

  何も言えない気持ちが痛くて


あなたに触れられるのが ただ怖くて…
 








私はジョシュが遅いので一人でロビーへと戻ろうとしていた。
エレベーターのドアが開いて、降りようとした時、
少し先にいるジョシュの後姿が、私の目に飛び込んで来た。
私は思わず、声をかけようと、「ジョシュ・・・」 と言いかけた時―


一人の女性がジョシュの方へと近付いてくるのが見えて言葉を飲み込んだ。
その女性は、嬉しそうに微笑み、ジョシュへと声をかけている。
奇麗な長い黒髪を手でかきあげながら、女の私から見ても魅力的な笑顔で、ジョシュの肩へと手をかけた。
そこで顔をそらしてしまった。
胸にするどい痛みが走る。


(あの人だ・・・。きっと・・・電話の後ろでジョシュに囁いてた人・・・)


直感的に、そう思った。


何で、その人がここにいるの・・・?
もしかして・・・ジョシュが呼んだの・・・?


激しい胸の痛みに顔をしかめ、手で胸を抑える。
思い切り深呼吸をして、もう一度、そっと二人の方を覗いてみた。
すると二人が歩きだしたので、は慌ててエレベーターを降りると、そっと二人の後をついて行った。


二人に見付からないように、そっと後をついて暫く歩いて行くと、二人はホテルの中庭へと出て行く。
私もそれに続き、少し離れて中庭へと出た。
二人は中庭の人気のない奥へと歩いて行く。
胸が苦しくなるのを我慢しながら、やっとの思いでついて行った。
すると、奥へと来た所で二人は止まり、何やら話をしている。
二人から少し離れたところで、その様子を見ていた。
でも少し遠いので二人の会話までは聞こえなかった。


(ジョシュ・・・、まだ彼女と・・続いてるの?)


そう思うだけで胸に痛みが走るのを覚える。


凄く・・・奇麗な人だった。
スタイルも良くて、長い黒髪をかきあげる仕草も凄く似合ってた。
大人の女性・・・
ジョシュより、少し上だろう。

やっぱり・・・ジョシュは大人の人がいいのかもしれない・・・
ジョシュは歳のわりには凄く大人だし・・・ああいう女性となら話も合うのかも・・・


そう考えるだけで苦しくなってそっと息を吐き出した。
すると、その女性がジョシュの肩へとまた手をかけているのが見える。
それを見て、また視線を反らしてしまった。


―― やだ・・・やめて・・・ジョシュに触らないで・・・!


は心の中で悲しい叫びをあげていた――













僕は誰かにエレンと一緒のとこを見られたくないので、中庭の奥の方へと歩いて行った。
今頃、ロイを呼べばよかったと後悔したが、もう遅い・・・そんな事を考えながら、ここなら大丈夫だろうと思う場所で足をとめた。


「ジョシュ?」
「ここで話そう・・・」
「・・・ええ」


僕はそっと深呼吸をすると、エレンを見た。
彼女は、いつもの強い視線で僕を見つめている。


「エレン・・・。この前も言ったけど・・・もう僕は君とやり直す気はないんだ。だから・・・こういう風に会いに来たり電話をかけてくるのは―」
「どうして?私の事が嫌いになった?」
「そういう事じゃないよ・・・。好きとか嫌いとか・・・もう、そんな感情すらないんだ。分かってくれないか・・・」
「何もないなら、また最初から始めればいいわ・・・。あの頃の二人に戻れるわよ」
「・・・無理だよ・・・。それに・・・俺はロスへ戻る気もないし・・・遠く離れていて、平気な人じゃないだろう?君は・・・。
あの頃も、"会いたい時に会えないとイヤ"だって言ってたじゃないか」
「そんなの私がミネアポリスまで会いに行くわ。引っ越したって構わないのよ?」


それを訊いて僕は少し溜息をつくと、


「・・・どうして、そこまで俺に固執するんだよ?前はもっと色々な男と遊んでただろ?
知ってるんだよ、俺と付き合ってた時も他の男とデートしてたのくらい」
「あの時は・・・ジョシュが妹ばかりを心配してるから・・・私の心配もして欲しかったのよ・・・だから色々な男と遊んだ・・・。でも・・・ジョシュは気づいても何も言ってくれなかったわね・・・」


僕はそれを聞いて少し驚いた。
エレンが、わざと他の男と?
あの頃の僕は、そんな事すら気づかなかった。
僕は、エレンが色々な男と遊びまわってるのを知った時でも・・・の心配ばかりしてた・・・。


「ジョシュ・・・私を身代わりにしたの・・・?」


いきなり、そう言われて驚いた。
彼女は悲しげな瞳で僕を見ている。


「身代わり・・・って・・・どういう意味?」
「・・・さっき・・・ロビーで妹さんと一緒のとこ、見たわ・・・。 ――私と同じ・・・長い黒髪だった・・・」


そう言われて僕はドキっとした。


「・・・は関係ない!」
「そう?ほんとは彼女と雰囲気が似てるから…私と付き合ったんじゃないの?」


そう言われて、ハっとした。
彼女は強い瞳で見つめたまま、そっと僕の方へと歩いて来る。


「・・・私、それでも構わないのよ?」


そう言うと僕の肩へと手を乗せる。
「構わないって・・・?」 僕は耳を疑った。
するとエレンは、少し顔をあげて僕を見上げると、もう一度、「それでも構わない。 例え、妹さんの代わりでもいいの」 と言った。


「な、何、バカな事言ってんだよ・・・!」


僕は動揺して視線を反らした。


「そうよ!バカみたいよ? でもそうさせてるのは、あなたじゃない!私だって変だと思うわよ!どうして妹の身代わりになるのか・・・!あなた達は兄妹でしょう? おかしいわよ!実の妹に似てる女を選ぶ、あなたも・・・!実の兄が側にいないと眠れなくなる、あなたの妹も・・・!」


そこまで言われて、カっとなった。


「実の妹じゃない・・・!!」
「―――っ?」


大きく溜息をつくと、もう一度エレンの顔を見て、言った。


「俺と・・・は・・・血が繋がってないんだ・・・。父さんが、の母親と・・・再婚したんだよ―」


そう言うとエレンは驚いた顔で僕を見つめた。


「・・・小さい頃、が家に来た時・・・俺は彼女を一生・・・守ってあげたいって思った。
彼女は・・・時々・・・凄く悲しそうな顔をするから・・・笑って欲しかった。俺がずっと側にいて・・・彼女を笑わせてあげたかった・・・大切なんだ。今でも・・・それが、どんな想いだろうと・・・関係ない。大切なことに変わりはないから。
――誰にも分かってもらえなくても・・・・許してもらえなくても構わない・・・」


僕は、エレンに、そう話しながら・・・胸の奥が痛くなるのを感じていた。
今まで口に出して言えなかった思いを、一気に話したことで、何か重荷が取れたような・・・そんな感覚だった。
僕は言葉を切って少し黙っていた、その時いきなり顔に、ふわりと風を感じたと思った瞬間、
エレンが僕の首へ腕をまわし唇へとキスをしてきた。



「・・・やめてくれよ・・・!」


慌てて彼女の腕を掴んで、体を離した。
するとエレンは悲しそうな顔で僕を見て、「そんな・・・そんな言葉なんて聞きたくないわ!」 と叫び、走って行ってしまった。
彼女の後姿を見て、その場へ、しゃがみこむと思い切り溜息をつく。


に・・・会いたい・・・


一人になった瞬間・・・そう思った――














は慌ててエレベーターへと乗ると、15階のボタンを押した。
そして、そのまま床へとしゃがみこんでしまう。


何・・・?今の・・・
あの人が・・・ジョシュに・・・キス・・・してた・・・。


は心臓が鷲掴みされたような激しい痛みに胸を抑えた。
「痛い・・・・っ」 は息苦しくなるような、その痛みに顔を歪める。


胸が痛い・・・
ジョシュ・・・助けて・・・
私を一人にしないでよ・・・
私じゃない人と・・・キスなんてしないで・・・


涙が溢れてくるのを感じて、は目をつぶった。
その時、エレベーターは、15階へとつき、ドアが開く。 
そこへ――




?!」


自分を呼ぶ声が聞こえて、はそっと顔をあげた。
すると、目の前には驚いた顔のイライジャが立っている。


「リ・・・ジー・・・」
「どうしたんだよ?」


イライジャは、胸を抑え泣きながら、しゃがみこんでいるの前に自分もしゃがみ、「どこか苦しいの?」と訊いた。
は何も答えられず首を振った。


「と、とにかく・・・部屋へ戻ろう?・・・立てる?・・・あの・・・ちょっと触るよ?」


イライジャは、そう言うとの肩をそっと支え、を何とか立たせて、部屋へと歩いて行った。
はイライジャが肩を抱いても、怯える事もせず、そのままイライジャへと寄りかかり力なく歩いている。
イライジャは、がまた怯えるんじゃないかという心配をして肩を抱く力を、なるべく弱めにしていた。
部屋の前まで来ると、イライジャは、の顔を覗き込んで、「鍵・・・持ってる?」 と訊いた。
その時、いきなりがイライジャへと抱きついてきた。


「ちょ??! 」


イライジャは驚いて両手を少しあげる。 普段からを怯えさせないようにと気を使っていた事で、反射的なものだった。
それでも、はイライジャの胸に顔を押し付けて泣きだしてしまった。
イライジャは、何が何だか分からず、おろおろとして、「ね、ねえ?・・・?ど、どうしたの?何があったの?」 


必死に声をかけてみるが、はそれには答えない。


(どうしよう・・・何で泣いてるんだろ・・・というより、ジョシュはどうしたんだ!肝心な時に何をしてるんだよ・・・!)


イライジャは心の中でに何があったのか考えてみたが、一向に思いつかない、それにジョシュの事も気になった。


(いつもの側にいるのに・・・どうしたんだ?どこに行ってるんだろう・・・)


その時、が小声で何か呟いた。


「・・・え?何?どうしたの・・・?」 


イライジャは、優しく問い掛けた。


「・・・るしぃ・・・」
「え・・・?」
「・・・も・・・う・・・ジョ・・・シュの側にいるのが・・・苦しい・・・の・・・」


の声が、かすかにイライジャの耳へと届いた。


・・・」




イライジャには、その言葉の意味が分かった気がした。


いや・・・もうずっと前に分かっていたのかもしれない・・・。
初めて・・・あのパーティーで二人を見た時から――


・・・泣かないで・・・」
「・・・苦し・・・い・・・。 胸が痛・・・いの・・・たすけ・・・て・・・。リジィ・・・」


の悲痛な訴えが、イライジャの胸に痛み走らせる。
イライジャは、あげてた腕を静かに下ろし、そっとの背中へとまわすと、彼女を優しく抱きしめた。
はそのまま怯える事もなく、イライジャへと体を預ける。


・・・そんな風に・・・泣かないでよ・・・」



イライジャはそう呟くと、そっとの額へと唇をつけた――











僕は遅くなってしまったので急いでホテルへと戻り、エレベーターへと飛び乗った。


が心配してるかもしれない・・・)


そう思うと僕はイライラしながら、エレベーターがつくのを待つ。
・・・12階、13階、14階、15階―


やっと到着すると、ジョシュは、ゆっくりと開く扉にも待てないように、手で少し無理やり開けると急いで廊下へと出て、足をとめた。




何だ?何やってるんだ?
あれは・・・と・・・リジィ・・・?




僕は今、自分が見てる光景が幻かと思った。
がイライジャに抱きしめられてるその姿に、ジョシュは胸が締め付けられる感じがして顔を顰める。


その時、イライジャがの額へとキスするのが見えた――


呆然としてそれを見ていた。
そして慌ててエレベーターへと戻り、適当にボタンを叩くと扉が閉まった。
するとエレベーターは勝手に動き、下の14階へとつき、扉が開く。
フラっとそこで降りると目の前にあった非常階段と書いてある扉の鍵を開けて外へと出た。
ビュゥっと突風が吹いてきて、ジョシュは顔を伏せる。
14階の高さで外に出ると当然、風も強い。
後ろ手で重い扉を閉めると、その場にずるずると座り込んで顔を手で覆った。


(何だったんだ?さっき・・・僕が見たのは・・・が何でリジーと・・・)


僕は混乱していた。
初めて溢れてくる、どす黒い感情に、戸惑っていた。




嫉妬・・・
僕は・・・リジーに対して・・・嫉妬してる・・・




がどうして彼のことを怖がっていないとか、そんな事を考えるよりも嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。
その時、僕は、さっきロ−ラが言っていた言葉を思い出した。


"好きな男性と上手くいけば、男性恐怖症も治るかもしれないじゃない・・・?"


・・・やっぱり・・・リジーが好きだったのか・・・?)


そう思った時、僕はを渡したくない・・・と思った。 
そして、その気持ちの意味は・・・を妹としてではなく、一人の女性として愛しているんだ・・・という事。
何で、あんなに愛しいと感じていたのか・・・今、やっと、その答えが全て見えたような気がした。


僕は心の中で苦笑した。


バカか、俺は?
今頃、こんな事に気づくなんて・・・
ずっと前から・・・出逢った時から・・・
答えは出ていたはずなのに・・・


最初から・・・兄と妹になると分かっていて出逢ってしまったから・・・
知らない間に、心のどこかでセーブをしていた。
感情に流されないように・・・
兄として・・・に接してきた。


どこかで・・・との関係にラインを引いてたんだ・・・。
失いそうになった今になって・・・そんな大切なことに気づくなんて・・・
こんなに愛してるのに。


僕は、彼女を失うかもしれない・・・


一番、恐れていた事だったのに――



僕は少しづつ強くなってくる、胸を焦がすような嫉妬と息苦しさで溺れそうになっていた――










Postscript

あぁぁぁ・・・・何も言わないで下さいぃぃ・・・・
何ですかね・・・ここのお話は前から考えてたんですけど・・・・
何だか上手く書けませんでした・・・・
因みに今回は歌詞は使いませんでした。オリジナルです。思うような詞がなかったため・・・
しかし・・・とうとうジョシュまでが気づいちゃいました。自分の気持ちに・・・
え?遅いって?すみません・・・(苦笑)
でも、まだ終わりじゃありません〜テヘv あ、いや・・・多分・・・ 


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...

【C-MOON...管理人:HANAZO】