友人と一緒に映画を見た帰り、小雨が降ってきて私は思わず溜息をついた。 もうあと少しで家だというのに・・・ 濡れたくなくて少しだけ足を速めて暗い夜道を歩いて行く。 コツコツコツっとヒールの音だけが響いてちょっと不気味だ。 ああ、もう!こんなんだったらホラーなんて見なきゃ良かった。 帰りはタクシーでって思ってたのに、週末だからか全然つかまらないし、結局バスで帰るハメになったし、それにこの雨・・・ 最悪にもほどがあるわ! そう、それに今日は本当なら恋人のオーリィとデートのはずだったのに。 いつもの如く急な仕事が入って、それもダメになり同情してくれた友人が私を映画に誘ってくれた。 だけど週末の映画館なんて人だかりの山で一時間も並んで最終でやっと座れたのだ。 だから帰る時間がこんなに遅くなってしまった。 しかも・・・その見た映画が最悪にも「リング2」だから嫌になる。 いや・・・どっちかと言うと私はホラーは好きだ。 怖いもの見たさってやつで結構、レンタルでもホラーを借りたりもする。 だけど・・・好きだからといって怖くないか?と問われれば、それは違う。 怖いものは怖いのだ。 特に、そんなものを見た後に、こんな暗い夜道を一人で歩いている時なんかは。 時計を見れば午後11時半を回っている。 バスも最終でギリギリだったし、まあ仕方のない事なんだけど・・・ この時間じゃ・・・オーリィは帰ってないかなあ・・・ はあ・・・忙しい恋人を持つのも考えものよね。 普通だったら、こんな時は迎えにだって来て貰えるのに。 「ふん、だ!オーリィのバカ!」 ブツブツ文句を言いながら歩いて行くと、やっと我が家が見えて来た。 だけど真っ暗で電気もついていない。 ということは・・・オーリィもまだ帰ってないということだ。 やっぱり、いないか・・・ ちょっと寂しくなりながらもバッグから家のキーを取り出す。 そしてドアの前に立ち、すぐに開けると中へ入った。 その瞬間・・・・・・ 「お~か~え~り~」 青白く照らされた顔が暗闇に浮かび、私は一瞬で凍りつく。 そして脳裏に先ほど見てきた映画のワンシーンがフラッシュバックした。 となれば――当然、私はパニックに陥った。 「ぎゃ、ぎゃあぁぁぁっぁぁぁぁ~~~~~~!!!」 逃げようと振り向いたが暗い中でドアのノブがどこか分からずガタガタと音を鳴らすだけ。 そこで私はソファの後ろにまわり、手に触れたものを手当たり次第、その化け物(?)に投げつけた。 「出てけーーーっ!!ば、化け物~~!!」 「ちょ・・・!俺、俺だってば――」 「ぎゃーーー!!こっち来ないでぇーー!!」 「ぃだ!ちょ・・・・・・てっ!」 ボフ!バフ!ゴン!という見事な音が部屋の中に響く。 だが最後にテレビのリモコンらしきものを投げつけた時―― ガコンッ! 「ぅぎゃ!!」 「――?!」 どこかで聞いた事のある声・・・・・・とそこで初めて気づいた。(遅!) そして後ろにあるはずの電気のスイッチを手探りで探し、すぐに押してみる。 カチ・・・っと音がして部屋の中が明るくなった。 そこで私が見たものは―― 「オ・・・オーリィ?!」 「~~~・・・・・・っっ」 色々な物が散乱している中で鼻を抑えて蹲っている私の恋人の姿だった・・・・・・ 「何してんの・・・・・・」(呆れて半目) 「な、何って・・・を待ってた・・・」(赤くなった鼻をさすりつつ涙目) 「へぇ・・・待ってたんなら、その手に持ってる懐中電灯は何なの?」(額の血管がピクピク) 「ご、ごめん・・・がホラー見に行くって言ってたから驚かせようと・・・・・・」(笑って誤魔化す) 「・・・・誰のせいでホラー映画なんて見に行ったと思ってるの?」(更に血管が浮き出てきた) 「お、俺・・・?」(一応ニコっと微笑む) 「そうね・・・・"俺"がドタキャンするからよね? それ分かってて、こんなイタズラを?」(怖さをそそるほどの笑み) 「ご、ごめんなさぃ・・・・・・」(叱られた子供) 「・・・・・・・・・・・・・・・」 その場にちょこんと正座をして謝るオーリィに、私は思い切り溜息をついた。 イタズラ好きな恋人には愛の篭った制裁をしなくちゃね。 Don't Play A Trick! そう、でも、その前に甘い"お帰り"のキスでもしてもらおうかしら。 ※ブラウザバックでお戻りください。
すみません・・・・・・イタズラ好きなオーリィなんぞ・・・・・エヘv
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