台本を読むフリをして、僕の瞳は君を捕らえる。 彼女も顔を上げ、僕の視線に気づくと、ニッコリと可愛い笑顔をくれた。 これだけで今日も一日、頑張れるんだ。 「リージィ!」 「うぁ!」 撮影後、着替えに戻ろうとした時、後ろから抱きつかれて前のめりになった。 でも犯人は分かってる。 こんな事をするのは彼しかいない。 それを裏付けるように金色の髪が僕の頬にバサバサ当たってるんだから。 「離してよ、オーリィ・・・。重いよ」 「ふふふ・・・見ちゃったんだよねー」 「は? 何を?」 彼と話がかみ合わないのはいつもの事だから僕も普通に聞き返す。 彼―このオーランドとは、この映画で初共演(まあ彼は新人だし)してるんだけど、 もう前からの知り合いのように打ち解けている。 それもこれも、全部、彼の懐っこい性格のせいなんだけどね。 今だって、まだ僕の後ろからおぶさるようにしていて、端から見れば 僕がオーランドに抱きしめられてるように見えるだろう。(最悪だ) 「リジィさぁー」 「うん」 「さっき撮影前にさー」 「うんうん」 「をチラチラ見てただろ?」 「うん・・・う・・・っ?!」 不意をつかれた質問に僕は一瞬、言葉がつまってしまった。 動揺が出てバっと後ろを振り返れば、そこでムカツクほどの笑顔を見せるオーランドと目が合って溜息が出る。 「あはは☆図星だった?」 「ななな何がさ?」 「だぁーからぁー。リジィがを見て――ふぐっ」 (彼の声の大きさに思わず手で口を塞いでしまった!) 「声が大きいよっ」 「ふぐぐぐ・・・ッ」 「あ、ごめん!」 (苦しそうに訴える彼に急いで手を離してやる) 「プハー!なーんだよ、リジィ!」 「な、何だよって僕の台詞だろ? 変なこと言うなよっ」 「だって見てたじゃん」 「見てないよ!」 「嘘、見てたって」 「見てない!」 「見ーてーたー!」 (クソ!しつこいな) だいたい、そのエルフの格好で子供みたいに口なんて尖らせちゃって! この人、これで僕より年上だからね? おかしいよね? 「誰が誰を見てたって?」 「あ、ヴィゴー♪」 「げ・・・」 そこへ、このクルーの中で誰よりも観察力のあるヴィゴが歩いて来た。 (むむむ・・・こりゃマズイぞ・・・。ヴィゴは何でもお見通しだからな・・・) 「や、やあヴィゴ。お疲れ様」 「お疲れ、イライジャ。で? 誰を見てたって?」 (う・・・!この顔!絶対に見透かされてる・・・) ニヤニヤしながら歩いて来るヴィゴに僕は絶望すら感じていた。 だいたい、この人もアラゴルンの格好のままだし変な集まりになってるよ! 「い、いや、あのオーリーの勘違いだよ。ね? オーリー」 「えー? 違うよ!俺はしっかり、この目で見てたんだから」 「(まだ言うかっ!)・・・・そのコンタクト、汚れてるんじゃない?」 「はー? んなわけないじゃん!」 (あーあー。頬まで膨らませて・・・とんだエルフの王子だよ、全く) 「聞いてよ、ヴィゴ!リジーってばのこと見てたくせに見てないとか言うんだよ?」 「ちょ!オーリィ・・・!」 「あーなるほどなぁ? でも私も気にはなってたんだ。イライジャの視線の先に」 「ぐ・・・っ」 (や、やっぱりバレバレかよ!) 「な、何のこと? 僕は別に―」 「お疲れ様です!」 「・・・!」 そこへ当の本人が歩いて来た。 彼女はいつものように可愛い笑顔で皆に挨拶をしている。 (この瞬間のヴィゴとオーリーはほんと憎たらしいほどニヤーっとして僕を見ている。つか僕を見るな!) 「やあ。今日も元気だね」 「はい、撮影も無事に終りましたしね。それより3人とも着替えないんですか?」 「ああ、そうだな。着替えるとしよう。じゃあ行くぞ? オーランド」 「え? あ、そ、そうだねー。俺も着替えようーっと!じゃ、リジーまったねー!」 「え? ちょ・・・僕も行く―」 (わざとらしいよ、二人とも!) ニヤニヤしつつ手を振る二人に僕は少し顔が赤くなってしまった。 だってに気づかれたら困る! 「リジーは着替えないの?」 (ほーら見ろ!変に思われたじゃないかっ) 「う、うん・・・着替えるけど・・・さ」 「?」 はキョトンとしながら僕を見ている。 何となく意識して目が合わせられない小心者の僕は、ふと視線を落としの手元に目がいった。 彼女は衣装係のスタッフで手に裁縫道具を持っている。 だが目がいったのは裁縫道具でもなく小さな可愛い彼女の手。 その手の指先には沢山のカットバンが貼られている。 「手の傷・・・何気に増えてない・・・?」 「え? あ、これ? そうなの・・・。私ドジだからすぐ針刺しちゃって・・・」 はそう言って可愛く舌を出した。 (いや、ほんとに可愛いから) 「あの・・・気をつけてね?」 「え・・・?」 「あ、いや・・・ほら、の手、凄く奇麗だしさ・・・。傷なんてつけちゃもったいないって言うか・・・」 「リジィ・・・?」 (あー!何言ってんだ、僕はっ!) 変な事を言ってしまって僕はつい赤面した。 だけどはニッコリ微笑み、少しだけ照れくさそうな顔をする。 「ありがとう・・・。そんな風に言ってくれるのってリジーだけかな」 「そんな事は・・・ないんじゃない?」 の笑顔に僕の鼓動はドキドキしっぱなしだ。 でも、ふと周りを見渡せば、そこには僕との二人だけになってて更に心臓がバクバクいいだした。 うわ、もうスタッフも車のとこまで戻っちゃったのかな・・・ マズイ、急がないと・・・ でも、こうして二人きりになれることなんて滅多にないし、すぐ戻るのももったいないよなぁ・・・ 「リジィ・・・? どうしたの? 皆もいないし早く戻らないと」 「え? あ、そ、そうだね、うん」 にそう言われて僕は渋々、一緒に歩き出した。 はぁ・・・この幸せな時間も終わりか・・・ もう少し一緒にいたかったなぁ・・・。って僕、フロドの格好のままなんだけどさ。 そんな事を考えつつ、僕はチラっと隣を歩くを見た。 彼女は身長も小さく、僕よりも少しだけ低い。 まあ僕だって大きい方じゃないし、ちょうどいい身長差だとも思ってるんだけど。(つかお似合い?) あ・・・そうだ。 明日は撮影、オフだしをデートに誘おうかな・・・ こうして二人きりになれたのも何かの思し召しかも・・・!(ただ単に仲間二人のおかげなんだけど) そうだ、このチャンスを逃がす手はない! 何だか突然、そう思い立ち、僕は立ち止まった。 そんな僕にも驚いたように足を止める。 「どうしたの? リジィ、行かないの?」 「うん、いや・・・戻るけど、その前に・・・」 (あぁ・・・不思議そうな顔してるよ・・・。その顔も可愛いなぁ・・・) 辺りはシーンとしていて、時々小鳥の声が聞こえてくるだけ。 こんな誘いやすいシチュエーションに僕は感謝した。 「あ、あのさ・・・。、明日のオフの予定は・・・?」 「え? 明日? 明日は・・・特に何も・・・。きっと寝て終わりかも」 はクスクス笑いながら肩を竦めている。 それを聞いて僕は心の中でガッツポーズをした。 「じゃ、じゃあさ・・・。が良ければ明日、僕と―」 「うぉーーい!リジィ~~~!!!迎えに来たよ~~ん!」 ―――――っっ?! そのアホな叫びに振り返れば普段の格好に戻ったオーランドがヴィゴと歩いて来るのが見えてギョっとした。 (つか着替えるの早いよ!) 「あれれーー? 二人で何をしてたのかなぁ? ホビットくん!」 「あまりに遅いから迎えに来たんだ。スタッフが心配してるぞ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「あ、ごめんなさいっ」 二人の言葉には慌てて謝ると、笑顔で僕を見た。 「じゃ私、先に戻ってるね!リジーも早く着替えに戻った方がいいわよ?」 「あ――」 僕は引きとめようと手を伸ばしたが、ヴィゴとオーランドの二人にニヤっとされ、その手を引っ込める。 (ったく!二人きりにしてくれたんじゃなかったのかよ!) 「リジィ~~♪どうだったぁ?」 「は?」 「ちゃんとデートに誘えたのか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 この二人、絶対に確信犯だ! 「別に!そんな話なんてしてないよ。何か勘違いしてるんじゃない?」 「嘘つけ。好きなんだろう? の事が」 「好きなんだろう? の事が♪」 ヴィゴの言った言葉を真似てオーランドもジリジリと僕に寄って来る。 (ほんと、うっとーしぃったら!!) 「さあ正直に答えろ。イライジャ・ジョーダン・ウッドくん」 「さあ、正直に答えてね? イライジャ・ジョーダン・ウッドくん♪」 (あんたはオウムか!同じ事をくり返すなよっ!つか何でフルネームなんだ!) しつこく質問してくる二人を無視して僕は着替えに戻るべく、スタスタと歩き出した。 だけどその後から二人もついてくる。 「ついてこないでよ」 「まあまあまあ」 「まあまあまあ♪」 「うるさい!真似するな!」 「"うるさい!真似するな!"」 「おい、オーランド。今のちょっとイライジャに似てたぞ?」 「まぁねい!俺はモノマネは得意なんだ☆」 (もう、やだ、こんな仲間・・・・・・・・・・・・・・・) 愛しい君と愉快な仲間達 僕の恋はいつ実るんだろう・・・・・・? ※ブラウザバックでお戻りください。
懐かしいNZネタで相変わらずリジィの片想い話なんぞ(笑)
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