は今まで付き合った子の中で一番、意地っ張りで、そして泣き虫な女の子だった。
俺が彼女を好きになったのは弱いクセに強がる姿がとてもいじらしく見えたから。
凄く泣き虫なクセに、いつも必死に涙を堪え頑張っている、そんな彼女が可愛くて気づけば放っておけなくなってたんだ。
付き合い始めて三ヶ月。
これまで小さなケンカはあったけど、今日のは今まで以上になりそうな気配。
だって久し振りにロケから帰ってきたって言うのにはまだ一言も俺と口を聞いてくれないのが、その証拠だ。
原因は床に転がっている一冊の雑誌。
いわゆるゴシップ雑誌ってやつだ。
なかなか会えない上に、こんな俺のゴシップが出回り彼女の怒りはMAXに達したらしい。
「、これは全くのデタラメなんだから気にするなって」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
はぁ・・・何度目の無視だろう。
かれこれ二時間は経っている。
俺はソファに座り、もう何本吸ったか分からないけど、また煙草に火をつける。
煙を出すのに少しだけ開けた窓から涼しい風が吹いてきて、彼女の奇麗な黒髪がなびくのを見ながら俺は軽く息をついた。
窓の外からは車の走り去る音や道を行く人達のザワザワとした音が、テレビの音だけ響く、この部屋にも聞こえてくる。
今日は週末だ。
本当なら久し振りに会えた彼女と天気のいい中、一緒に出かけたりしたいと思っている。
それに来週にも、すぐまた次の撮影で家を開けないといけないから少しでも彼女と楽しい時間を過ごしたい。
だけど今のこの雰囲気がそれを許さない感じだ。
「なあ・・・俺のことが、そんなに信じられないわけ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
やっぱダメか・・・・・・・・・
煙草の煙を吐き出しつつ、軽く頭を項垂れる。
はテレビの前に置いてある大きなクッションに座りながら黙ったままテレビに映る、つまらなそうな番組を見ている。
いや、本当に見てるのかどうか・・・・・・・・・
どうやら本気で怒ってるようだ。
それとも本気で俺を信用していないってことか?
これって俗に言う"三ヶ月目の危機"ってやつかな・・・
(もし、そうなったら、かなりへコむかも)
「・・・そのモデルとは友達の付き合いで一緒に飲んだだけだって」
それは本当だった。
友達がモデルの子と付き合い始めて、紹介するって言われたので出かけて行った。
そしたら、そのモデルの友達まで何故か一緒で、まあ友達のデートに付き合わされたってだけのこと。
結局、食事の後に、そのホテルのバーに4人で行って、ちょっと飲んで帰ってきた。
だけど運の悪い事に、そこをパパラッチに撮られて、この始末だ。
しかも載ってる写真は友達と、その彼女がちょうど切れてて俺と彼女の友人の子の2ショットというオマケつき。
これじゃ確かに俺がその子と二人きりでバーで飲んでるように見えるから怖い。
まさかがこんな雑誌を見てしまうなんて・・・・・とガックリ来た。
その時、不意にが立ち上がり、俺はドキっとして顔を上げた。
しかも彼女は俺の方を見ないで、そのままリビングを出て行ってしまった。
俺はすぐに立ち上がり、彼女の後を追うように奥にあるベッドルームへと向うとドアがかすかに開いている。
そっと中へ入ると彼女はこっちに背を向けてトランクに荷物を詰めていて驚いた。
(まさか出て行く気か?!)
「ちょ・・・・? 待てよ。何も出て行くことは―」
そう言って彼女の方に歩いて行くと荷物を詰める手を止めた。
だが、彼女が持ってた服を見て、その手を引っ込める。
「え・・・これ・・・俺の・・・?」
「・・・そうだよ?」
二時間ぶりに口を聞いてくれたのは嬉しかったが、はまだ俺の方を見ようとはしない。
(もしかして・・・俺に出て行けって事だろうか?)
「えっと・・・? 何で俺の服なんて・・・」
「だってジョシュ、来週すぐに・・・ニューヨークでしょ? だから・・・」
「・・・え?」
その言葉に驚き、の体を自分の方に向ける。
すると彼女は俯き、キュっと唇を噛んでいた。
これはが泣くのを我慢している時に、よくする表情だった。
「・・・そんなに怒ってるのか?」
「・・・・・・・・・」
無言のまま彼女は首を振った。
怒ってない・・・なら、どうして口も聞いてくれないんだろう。
そう思った瞬間、ポロっと彼女の瞳から大きな涙が零れてハっとした。
だがはすぐに手で涙を拭うと俺の胸に顔を押し付けるように抱きついてくる。
「・・・・・・どうした? まだ誤解してる?」
「・・・ちが・・・そんな・・・ことじゃなぃ・・・」
(え? そんな事じゃないって・・・どういう事だ?)
てっきりが不機嫌なのは、あの雑誌の記事を誤解してのことだと思っていた。
俺は彼女の小さな体を抱きしめながら、その涙の理由が分からなくて途方にくれた。
「えーと・・・・・・? じゃあ・・・何で泣いてるの?」
「・・・って・・・また・・・行・・・ちゃぅから・・・」
「え?」
「・・・ジョシュが・・・」
小さく呟かれた言葉は俺の耳にしっかりと届いた。
"また・・・ジョシュが行っちゃうから・・・"
泣くのを堪えながら、そう呟いた彼女の言葉に俺は胸の奥が痛くなった。
何だ、そういう事か・・・
彼女が不機嫌になったのは・・・・・・あの雑誌のせいでも何でもなくて・・・
俺がまたロケに出てしまうから寂しいって、そう思ってくれてたんだ。
確かに・・・あの雑誌の話をする前に来週またニューヨークに行かなくちゃいけないと話したんだった。
その後すぐに、あの雑誌を部屋の中で見つけて俺が勝手に慌てて弁解をしただけ。
が怒ってるのは、てっきりゴシップ記事のせいだと俺が思い込んだだけだったんだ。
そう思うとが凄く愛しくなり、ギュっと強く抱きしめた。
「ごめんな・・・? また少しの間、一人にしちゃうけど・・・」
「ぅぅん・・・私も無視してごめ・・・.んね・・・。何か話すと・・・泣いちゃいそうだったの・・・」
「・・・」
震える声で、そう言ってくれた彼女が本当に可愛くて愛しくて思い切り抱きしめ、額に優しくキスをした。
そのまま少しだけ体を離し、の顔を上げさせると涙で潤んだ瞳が俺を見上げてくる。
そんな顔を見ると自然に笑顔になってしまう。
(と言うか綻んでしまった)
「は泣き虫なんだから泣きたい時は我慢しないで泣いていいよ・・・」
「・・・な、泣き虫じゃない・・・」
「泣き虫だろ?」
「・・・泣かせてるのはジョシュだもん・・・」
(・・・確かに)
「ごめん・・・」
彼女の濡れた頬を指で何度も拭いながら、チュっとそこへキスを落とす。
だけど、そうすると、ますます彼女の涙腺は緩むようだ。
「あーあ・・・ほんと子供みたいな顔になってるぞ?」
「・・・む・・・子供じゃないも・・・」
「はいはい。好きなだけ泣いていいよ?」
そう言って俺は微笑むとの頭をナデナデしながら可愛い唇にもチュっとキスをする。
そのたびには恥ずかしそうな顔をして俯くけど、それをまた上げさせて未だ涙で濡れる頬にも何度もキスをした。
「ジョシュ・・・」
「ん?」
「ほんとに・・・写真の人とは何でもなぃ・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
(やっぱり、そっちも気にしてたのか・・・・・・)
そこに気づき、思わず笑顔になった。
「もちろん。俺がを失うようなことするわけないだろ?」
「・・・・・・ほんと?」
「ほんと!俺が好きなのはだけだから」
そう言って、もう一度唇に軽くキスをした。
泣き虫で意地っ張りの、でも俺にとっては、とても大切な恋人に分かってもらうまで、何度でもキスをする。
彼女の涙には・・・いつも俺への想いが溢れてる。
その三日後、私の恋人はニューヨークへと旅立ってしまった。
「はぁ・・・また当分、一人ぼっちか・・・」
ガランとした部屋を眺めながら私は溜息交じりでソファに座った。
朝起きて、ジョシュがいないと、本気で気分が沈む。
彼が帰って来るまで、この憂鬱は続くのだ。
やだ・・・また寂しくて泣いちゃいそう・・・(ダメな女だわ・・・)
気分転換に出かけようかなぁ・・・・
寝起きのボーっとした頭で、そんな事を考える。
だけど体が動かない。
だって・・・
Reason
for her tears.....
あなたがいなきゃ気持ちはブルー お洒落したってつまんない 鏡に映る乱れた髪に ブラシを入れる気も起きないの
...END...
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意地っ張りって直らないんですよねー(笑)
寂しいくせに寂しいって素直に言えなかったり・・・
まあでも相手が忙しい人で心配とかかけたくないから私はいつも意地を張ってた気がするなぁ。
いつも「大丈夫」なんて強がってた可愛くない私(笑)
でも人一倍、泣き虫なんですよね。あはは☆
そして好きな人と会えないと、ほんとお洒落をする気にもならないんです。
皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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