携帯を買って一週間。
僕は機械音痴を直すべく、毎日試行錯誤を繰り返していた。


やっと携帯も電話をかけたり受けたりするだけなら出来るようになって昨日はにも誉められた♪(嬉)









「すごーい、オーリィ!一発で出れたねっ」
「まぁーねー♪(ちょー得意げ) もう完壁だよ?」







僕はマネージャーからの電話を一発で出れた事を誉められ、ちょっと・・・いやかなり嬉しくなった。
え? 何で携帯で電話に出れた事を、そんなに喜んでいるかって?
だって僕は今までかけるのは一応マスターしたけど、かかってきた電話はいつも切れちゃってたんだ。
というのもボタンを間違えて、毎回、終了ボタンを押してたからなんだけどね!
(だいたい紛らわしいんだよ!あんな電話の絵だけじゃさ!)


それも手が勝手に、そのボタンを押してしまって何度か失敗してたんだけどもうバッチリさ!
今だって間違えずに電話に出れたしね。








「これで後はメールができれば完壁なんだけど」
「そ、それは無理!メールなんて高度な技(!)使えないよっ」
「そう? でもオーリィ覚えが早いし出来そうな気がするんだけど・・・」
「え? そう?」(単純)







にそんな事を言われて一瞬だけ心が揺らいだ。


だけど今の僕じゃ携帯をかけたり受けたりするだけで精一杯だよ・・・(すでに息切れ)


とりあえずにも、何時でも電話出来るようになったし、まずは約束を果たせたって事で僕はちょっとだけ自分を見直した。
その頑張った、ご褒美を貰うべく、隣にいるをそっと抱き寄せてゆっくり唇を重ねる。
そのまま彼女の体を押し倒し、さあ、これから愛の契りを―!と思った時、が突然、僕の胸を押してきた。








「どうしたの・・・?」
「私、今から仕事なの・・・」
「あ、そっかぁ・・・」
「ごめんね? オーリィ、せっかくオフなのに・・・」









は眉をへにゃっと下げて僕の頬にそっと手を置いた。
そんな可愛い顔を見ちゃったら、僕も我がままは言えない。
(だって、いつもは僕の方がを置いて仕事に行っちゃってるしね)








「じゃあ帰って来るまで起きて待ってるよ」
「ほんと? 今日は取材だけだから、そんなに遅くならないわ?」
「うん。分かった。じゃあ・・・終ったら電話してくれる?」
「うん。じゃあ・・・携帯にかけるね?」
「あははっ。俺も今そう言おうと思ってたんだ」






(僕の心理をよく分かってるなぁ・・・)


そう感心しながら僕はの唇にチュっとキスを送る。


何で家にいるのに携帯にって思うかもしれないけど、やっぱり買ったばかりだし
使いこなせるようになったから意味なくかけて欲しかったりするんだよねー♪(子供)
はその辺の僕の性格をよく分かってるようで、クスクス笑いながら仕事へ行く用意をし始めた。
そしてコートを手に戻って来た時、すぐに僕にキスをしてくれる。







「じゃあ行って来るね」
「うん。行ってらっしゃ―」
「あ!」
「え?!」







僕もキスを返そうとした時、突然が大きな声を上げた。







「ど、どうしたの?」
「ドラマ!」
「え?」
「今日、私の好きなドラマが放送するのよ」
「あーあれ? あの24時間、一時間ごとに話が進んでいく・・・」
「そう、それっ」








それなら、いくらテレビの見ない僕でも知ってる。
今、全米で話題のドラマだ。
が大好きでシーズン1から、ずぅっと見てたっけ。
へぇ、あれ今夜放送なんだ。





なんて呑気に考えていると、がとんでもなく恐ろしい事を言い出しだ。







「わーやだ、時間ないっ。ねぇ、オーリィ、録画しておいてもらっていい?」


「ぅえっ!!(驚きすぎ)」


「お願い!もうすぐマネージャー来ちゃうし・・・」


(彼女は新人の女優さんなのだ)



「わわ・・・むむ無理だよ、そんなの!だって俺、そんなビデオとか触った事ないし!」(オイ)








両手をぶんぶん振り回し、そう言うとは泣きそうな顔で僕に抱きついて来た。(このまま押し倒したい)(コラ)







「お願い!オーリィなら大丈夫よ!ほら、携帯だって説明書見て使えるようになったでしょ? ほんとは機械に強いのよ!」
「で、でも・・・!・・・・・・そ、そう・・・かなぁ? 」(やっぱり単純)
「そうよ!だって、すぐに覚えたし、きっとやれば出来るのよっ」






そう言いきられると僕もそんな気がしてくるから愛の力って凄い。(何か違)








「じゃ、じゃあ・・・ビデオの説明書って・・・」
「待ってて♪」







はそう言って僕の頬にチュっとキスをすると、すぐにテレビの隣の棚から一冊の説明書を出してきた。








「録画は簡単だから。えっと・・・ここ見てやればすぐよ? ビデオテープはそのまま先週の分が終ったところで止まってるし」
「えっと・・・ああ、この赤いボタンを押すだけ?」
「そう。ドラマが始まったら、このボタンを押してくれればいいの。出来る?」







にそう言われた日には僕も大きく頷くってもんだ。






「うん、任せて!俺も頑張るよ!」(大げさ)
「わ、ありがと!テレビのチャンネルは今、映ってるとこでOKだから!お願いね」
「OK!安心して仕事に行って来て!」







僕は張り切ってそう言うと、の唇にキスをして最後に彼女をぎゅぅっと抱きしめた。
そこに、お邪魔虫の如くキンコーンとチャイムの音・・・







「あ、来ちゃった!じゃあ行って来ます!」
「行ってらっしゃい!あ、!」
「え? ん・・・っ」







やっぱり、"行ってらっしゃい"のキスはちゃんとしておかないとね♪


そう思いながら、素早く彼女の唇を塞いで最後に軽く舐めてから、ゆっくりと離す。
するとの頬はかすかに赤く染まり、恥ずかしそうに微笑みながら僕に手を振って部屋を出て行った。
僕も笑顔で手を振りつつ、ドアが閉まると、おもむろに説明書を手にしてソファに座る。







「よし!ドラマは8時からだな!それまでに時間はあるしジックリ説明書を読んで覚えよう!」







さっきは、ついの可愛さに"うん!任せて!"なんて言ってしまったけど自分としては凄く不安だったのだ。




かくしてドラマの時間まで、僕は説明書と睨めっこをするハメになった。

























数時間後・・・・・・










「えっと・・・テレビはついてるしチャンネルもOK!それで・・・ビデオ・・・あ、一時停止にすれば簡単なんだっけ?」







僕はビデオのリモコンについている沢山あるボタンにウンザリしつつ、文字を確認していく。(ほんとおじいちゃんか? 俺)
その時、指が僅かにどこかのボタンに触れ、何だかビデオの本体の方でシュルルル・・・という音が聞こえてきてギョっとした。





「わわっ!なな何だ、何だ?!」






僕はそれだけでパニックになってしまい、急いでリモコンの唯一、大きなボタン、"停止"ボタンを押した。
すると、その音は止まり、心から安堵の息を洩らす。







「はぁ・・・ビックリしたあ・・・。何だったんだ? 今の・・・」








ちょっとドキドキしつつ、ふと時計を見れば、すでに7時56分!
ドラマが始まるまで残り4分を切ったところだった。






「いけね!もう始まっちゃうよ!」







僕は慌ててテレビの前にスタンバイしてリモコンをグっと握りしめた。


(まあ別にリモコンがあるんだから何も前に行かなくてもいいんだけど一応ね・・・)







ちょっとだけドキドキしてると、8時になり、あの聞いた事のあるデジタル音と共にドラマが始まった。






「今だ!えぃ!」






始まった瞬間、リモコンの赤いボタンをボチっと押すと本体の方で赤いマークが点滅して録画が始まったようだ。







「出来たぁ~!ってか、ほんと簡単じゃん!」







ちょっと汗をかきつつ、思い切り安心した僕はソファに座って、普段なら見ないドラマを見てみることにした。








が凄い面白いって言ってたしなぁ・・・。そんなに面白いのかな・・・。"ジャックが渋いの~♪"なんて騒いでたっけ」




まあ僕の方がイケてるとは思うけどさー。
何がジャックだよ、全く!








ブツブツ言いながら僕はソファに横になり、さっきが買って来てくれたチョコレートをつまみにドラマを見ていた。
だがハラハラドキドキな展開に次第に僕もジャックの気分でドラマの中に引き込まれていく。







「バカ!そいつ絶対、悪い奴だって!あーーダメだよー!信用しちゃ!」







誰が敵か仲間か分からない内容に僕はイライラしながら、テレビに向って叫んだりしつつ、
今度、このドラマ最初から見せてもらおうなんて思っていた。
そしてアっという間に一時間は過ぎ、いいところで終ってしまった。







「はあぁーーすっごい疲れるドラマだな・・・でも、ほんと面白いや」







何十年かぶりにテレビを真剣に見てしまいグッタリした僕はソファから何とか起き上がりリモコンの停止ボタンを押した。






「よし!任務完了!(ちょっとドラマの影響を受けている辺り・・・)」








からのお願いを無事に終えて心底ホっとしながら僕はが帰ってくるまで説明書を読みながら待つ事にした。
(結構、読み出すと面白かったり)


それから4時間後、から"帰るコール"がかかってきた。
その後、彼女が家に帰って来るまで僕はずっと説明書を読んで過ごしていた事になる。


















「ただいま、オーリィ!」
「お帰り!お疲れ様!」







仕事で疲れたであろうをギュっと抱きしめ、頬にキスをすると、彼女もチュっと頬にキスを返してくれる。
それだけで僕は幸せな気分なんだ。
それに今日は僕にしては難しい任務(?)を無事に終えることが出来たわけだから、これからまた、ご褒美をもらわないとね!








「ねね!ちゃんとドラマ、録画しておいたよ?」
「ほんと? 結構、簡単だったでしょ?」
「うん。まあボタン押すだけだったしねー」
「そうよ。それにオーリィ、やらないだけで結構、慣れればすぐ覚えちゃうのよ」
「そうかな?」
「うん。今度は録画予約でも頼もうかな?」
「任せておいて!もう説明書は全て読んだからさ」






僕が笑いながらそう言うともクスクス笑ってテレビの方に歩いて行く。







「オーリィ、一緒に見ない?」
「あー俺、実はさっき録画しながら見ちゃったんだ」
「え? そうなの? 珍しい!」
「まぁね、の言う通り、結構面白かったよ」
「でしょ? ジャック渋かったでしょ?」
「んー。でも俺の方がいいだろ?」
「やだ、オーリィってば」






僕がそう言って彼女を抱きしめると、はまた楽しげに笑っている。
あー何だかいいなぁ、こういうのって。






「あ、じゃあはドラマ見てて? 俺シャワー入ってくるし」
「うん。分かった。あ、ありがとう、オーリィ」
「いえいえ、どういたしまして!」






が可愛い笑顔と共にお礼を言ってくれて僕はそれだけでウキウキしながらバスルームへと入って行った。





ん~♪電化製品を扱えると、何だかちょっと大人になった気分だよなぁ~♪(オイオイ)
よし!今度からは最初から毛嫌いしないで、なるべく覚えていくようにしよう!
そうすればもきっと喜んでくれるに違いない!






シャワーを浴びながら、一人そんな事を考えてニヤニヤしていた。(危)






「はぁースッキリ!」






バスルームから出ると僕は髪を拭きながら、に夕飯でも作ってもらおうとリビングに戻った。








~ドラマどうだった~? 面白いだろ・・・ってあれ?」









リビングに入って行くと、てっきりまだドラマを見てると思っていたがテレビの前に座り込み何かをやっている。
手にはリモコンを持って何だか慌てたように再生と停止を繰り返していた。








、何やって―」
「・・・オーリィ・・・!!」
「ひゃ!」







僕がの方に歩いて行くと、彼女は突然、怖い顔で立ち上がった。












「ど、どうしたの・・・? 何怒って・・・」


「オーリィ、何したの?!」


「え? 何したって・・・録画したよ? ちゃんと・・・」


「そうだけど!どこに録画したのよ~~っっ」


「え? だからそのテープに・・・」


「前の回を潰しちゃったでしょ!」


「え!」
















彼女の言葉に驚き、僕は唖然としていると、はリモコンの再生ボタンを押した。
すると画面には僕がさっき見たドラマが映っている。







「・・・ちゃんと撮れてるよ?」







僕が恐る恐る、そう言うとは泣きそうな顔でぷぅっと頬を膨らませた。






































「違うのー!今日のは撮れてるけど、前回の上に重ねて録画しちゃってあるのよ~~~っ」


























「ぅ・・・ぇええええっ?!」





















その言葉に僕は頭に雷が落ちたかのような衝撃を受けた。



そ、そう言えば・・・録画を始める前に、どこかのボタンを押しちゃって変な音がしてたような・・・
あ、あれって巻き戻しだったのか?!(ガビーン!)

















「もぉ~保存版にしてたのにぃ~~~っっ」


「ご、ごめ・・・!ごめんね、~~っ」












とうとう泣き出したを必死に宥めながら僕はどうしたものかとオロオロするだけ。



そこで、いい事を思いついた。











「そ、そうだ!これDVD出たら全巻、買ってあげるから!ね? そしたら、もうビデオなんていらないだろ?」






「・・・・・・ほんと・・・?」




「う、うん、ほんと!もうシーズン1からぜぇーーんぶ揃えてあげる!明日、買いに行こう?」




「うん・・・」










そう言うとがやっと笑顔を見せてくれた。
(そんなに、このドラマが好きなのか・・・)


今回のシーズンは無理だけど、それは発売したら買うと言うことにして・・・
も僕に頼んだのが間違いだと諦めてくれたようだ。
(それもちょっと悲しいんだけどさ・・・)

















I'm sorry my sweet honey...















僕は一生、アナログ人間さ・・・ははは・・・







(この日を境に僕は機械に触れるのを止めようと決心したのは言うまでもない)



























※ブラウザバックでお戻りください。


あはは・・・機械音痴オーリィ二弾・・・^^;
ほんと機械ダメな人っていますよね。私のバイト先の上司もそうです。
録画予約を最近やっと出来るようになったけど携帯は未だかける受けるのみの人(笑)
電話帳の機能は使えず、いつも人に入れてもらってるから凄いわ、ほんと(苦笑)
そして保存版にしてたドラマに重ねて録画された日には・・・切ないっすよ・・・^^;
きっと経験ある方もいるはず・・・
機械苦手な人には触らせない。これが一番ですね(どんなオチじゃ)



皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…

【C-MOON...管理人:HANAZO】