6月24日・・・・・明日は彼女の誕生日だ。 「あー酔っちゃった!」 隣を歩く彼女はそう言って気持ち良さそうに腕を伸ばしている。 その横顔を眺めながら僕はちょっと複雑な気分になった。 きっと彼女は僕の事を"男"として意識していない。 だからこそ、こんなに無防備に酔えるんだろうなって思う。 まあ・・・彼女とは長年、友達なんてやってるんだから当たり前なんだけどさ。 今日は久し振りに会う約束をして二人で食事をしたあと軽く飲みに行くつもりが、こんな時間になってしまった。 久し振りに会うから話が尽きなくて時間の許すまで互いの話で盛り上がったから楽しかったんだけどね。 (それに・・・まあ明日もオフだし) 明日と言えば・・・ 「ねぇ、は明日、どうしてる?」 「え? 明日は~特に用事なんてないけど」 「そうなの? だって誕生日だろ?」 「わ、覚えててくれたんだ!」 「当たり前だよ。は大切な・・・友達だからね」 「うわ、嬉しいこと言ってくれちゃって!」 はそう言って笑うと肘で僕の事を突付いてくる。 そんな彼女を見て、僕はまたしても複雑な気持ちになった。 あーあ・・・また余計なこと言っちゃったよ。 ほんとは・・・"大切な友達"じゃなく、"大切な人"って言いたかったんだけどさ。 (でも今の関係は壊したくないから何となく言いそびれた) 「しっかし誕生日なのに祝ってくれる男もいないわけ?」 「わー今度はムカツクこと言ってくれちゃうのね。悪かったわね、フリーで」 「別に悪いなんて言ってないけど」 「ふーん。あーオーリィはモテモテだし余裕なんだ!」 「ち、違うよ。別にモテモテなんかじゃないし!」 「あらら、慌てちゃって!見たわよ?」 「は? 何を?」 「昨日、発売のタブロイド!"オーランド・ブルーム、新人女優とデート!"なんて書かれてたじゃない?」 「あああれは違う!違うってばっ」 「そんな言い訳しなくてもいいわよ」 彼女はそう言ってクスクス笑うと風に吹かれた長い髪をそっと手で抑えている。 その時にチラっと見えた白くて細い首筋にドキっとしたのと、今の言葉でギュっと痛くなったのが同時で 凄く胸の奥がモヤモヤして気持ち悪い。 言い訳かぁ・・・言い訳じゃないんだけどな・・・ こんな時って何て言っていいのか分からない。 恋人同志なら徹底的に否定して分かってもらうけど、友達同士の場合、あまりムキになって否定しても変だし・・・ でも、いつまでも、こんな事してたんじゃ、いつまで経っても友達から恋人になんてなれるはずもない。 そうだよ!ここは一発、勇気を出して――! 「あの―」 「ねぇ、オーリィ」 「な、何? (せっかく決心したのに!)」 ふとが立ち止まって僕の事を見上げてきた。 少し酔ってるから、ほんのり赤い頬とかすかに潤んだ瞳が、これまた可愛いくてドキっとしてしまう。 だけど彼女は何だか少し目を伏せて言いにくそうな感じで、 「明日・・・とか・・・って空いてないよ・・・ね?」 「え? 明日? あー分かった!寂しいからお祝いして欲しいんだろ」 「そ、そういう訳じゃ・・・」 ドキドキしてるのがバレたくなくて、わざとおどけてそう言えば何だかはスネたように口を尖らせた。 それを見て僕は内心、"しまった!"と思ったけど彼女の方から、そう聞いてくれたのは嬉しい。 (だって僕も別れ際、聞こうと思ってたからさ) でも僕の心とは裏腹には小さく息をついて再び歩き出した。 「ちょ・・・待ってよ、」 「もういいよーだ」 「も、もういいって何だよ!」 「だから他の人でも誘う」 「な・・・!」 (そ、それは困る!ってか他の人って誰だよ!男か?!) 「ちょっと待てって」 家に続く裏路地を必死に追っての腕を掴んだ。 こんな本気で焦ったのって何年ぶりだろう。 しかも人目をはばからず、仮にも俳優なんて仕事してる僕が女の子一人を必死に追いかけてるなんて。 (ああ、擦れ違う人達の視線が痛い・・・) 僕の必死の形相にまでが少し驚いたような顔をしている。 だけど今はそんな事よりも聞きたいことがあるんだ。 「他の人って誰?」 そう、たったこれだけのことなんだけど。 まずは、それを聞かないことには。 だって恋人はいないはずだから・・・ だけどは僕の質問にキョトンとした顔で、 「・・・友達だけど・・・」 「・・・友達? その友達って・・・女? 男?」 (僕の他にも誕生日を祝ってくれる男友達なんていたら、かなりショックだ) 恐る恐る、そう聞けばはますます眉間に皺なんて寄せて、 「女の子よ? どうして?」 なんて逆に聞き返され、ホっとしたと同時に僕は答えに困ってしまった。 こんな焦った後に、冷静になってみれば、かなりバレバレなんじゃないだろうかとさえ思う。 他の子だったらきっと簡単に、そうもっとカッコよく誘えたり口説けたりするのにどうしてにはカッコ悪い姿ばかり見せてしまうんだろう。 映画の役のように抱きしめて"愛してる"なんて言えれば苦労しないよ、ほんと。 ああ、でももう、こうなったら・・・・・・ 「・・・オ、オーリィ・・・?!」 腕を引き寄せギュっと抱きしめたの声がくぐもって聞こえる。 だけど僕は腕を離すことは出来なくて、そっと彼女の髪に顔を埋めた。 はもう何も言わなかった。 ただ僕の腕の中でジっとしていて、かすかに震えてるような気がする。 気が付けば人通りも途絶えて静かな空間だけが、そこにあった。 その時、ふと思い出し、腕時計をチラっと見れば、すでに午前0時を数秒過ぎている。 この瞬間から友達と恋人の境目を越えた気がした。 「・・・」 「・・・ぇ?」 不意に名前を呼べばドキっとしたように返事をする彼女の耳元で、「さっきの答え」 と呟き― 「Happy Birthday........and........I Love You....」 そう言って少しだけ体を離せば、の頬から大きな涙がポロっと零れ落ちていく。 一瞬悪い方へ思考が働いたがが僕の胸に顔を押し付けてきたのを見て、それが嬉し涙なんだというシンプルな答えにいきついた。 「な、泣くなよ・・・」 「だって・・・」 「に泣かれたら・・・困る」 「オーリィが泣かせたんでしょ・・・?」 「そ、それは・・・」 「遅いんだから・・・」 「え?」 「その言葉・・・・・・ずーっと待ってたんだからね・・・」 彼女はそう言って顔を上げると、ちょっとだけ微笑んだ。 そう・・・やっぱり彼女は笑顔がよく似合う。 Let's become a lover from the frend そして明日も君と笑いあえたらいい ※ブラウザバックでお戻りください。
常連様のお誕生日という事で、管理人からささやかな夢のプレゼントですv
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