僕にはライバルがいる。




そう、とても強力な。



















久し振りのロンドン。
街並みも何もかも懐かしく思えて僕は車の中から外の景色を眺めていた。
そして前方に見えて来た彼女のフラット。


やっと会える。


僕は愛しい彼女の笑顔を思い出し、胸が高鳴るのを覚えた。




















キンコーン




ドアの前に立ち、ドキドキしながらチャイムを鳴らした。
きっと彼女は素適な笑顔で僕を出迎えてくれるだろう。
少し照れくさそうに、はにかみながら僕に抱きついてくるに違いない。


一人ニヤニヤとしながら(危ないな、僕)ドアが開くのを待っていた。


数秒後・・・ガチャっと音がしてドアが開き、僕は愛しい恋人を受け止めるため、サっと両腕を広げた――










「オーリィ?」



、会いたかっ―」



























ぶっ
















「ぅ―!」



















「わ!コ、コラ、平次!ダメよ、かじっちゃ!オーリィ、大丈夫?!」



















目の前にいたのは確かにだったけど僕の足首には一匹、デブ猫が噛み付いていて彼女に抱きつく間もなかった・・・










































++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

















「ごめんね、オーリィ・・・」




は僕をリビングに通すと泣きそうな顔で謝った。
でも僕は心の広ーい人間だ。
愛しい彼女の愛猫に本気で怒るわけないじゃないか。






「ううん。全然、大丈夫だよ? 平次も相変わらずだなぁ!アハハ!」






そう言って彼女の愛猫を撫でようと頭に手を伸ばした。














フーッ









「・・・・・・・・・・・・・・・」






「コラ、平次!」














こ・・・このバカ猫!!






彼女の腕に抱っこされてる、この"ヘイジ"という変な名前の猫は僕の愛するの愛猫だ。
だけど、そのの恋人=僕のことだけは異常に敵視している。
僕が遊びに来ると、もうこんな風に威嚇してから離れようとしないんだ。
って僕、猫にライバル視されてるのか?








「オーリィ、お帰りなさい!ロンドンも久し振りでしょ?」
「う、うん。ちょっと懐かしかったかな。早くに会いたかった」
「オーリィ・・・」






の隣に腰掛け、そう言うと彼女は照れくさそうに微笑んだ。
何となく、"そんな空気"が流れて僕はそっと顔を近づけていく。
もゆっくり目を閉じて、後は二人の唇が重なるだけ―











「・・・・・・・・・・・・・・・」














見てる・・・・・・・・・・・・・・・


嫌な視線を感じ、顔を近づけながらも僕は少しだけ視線を下に移してみた。
するとの腕に未だ抱っこされているデブ猫が僕の事をじぃ~~~っと見ていた。
その顔は何ともフテブテシイ顔で目なんかすわっちゃってるんだ。
(しかも凄いデブだから顔がまん丸だし余計にフテブテしく見える・・・チッ)
口を「へ」の字にしちゃって無言(?)のまま半目で僕を見つめているし・・・
この分じゃにキスしたら、あの見事な爪で僕の顔くらい引っかきそうだ。



暫く猫と見つめ合い(!)僕は仕方なく溜息をついた。
するとがパっと目を開けて首を傾げる。





「オーリィ、どうしたの・・・?」
「あ、いや・・・あの・・・こいつの視線が・・・」
「え? あ・・・そうだったね。はい、平次、あっちで遊んでおいで」





は苦笑しながら、そう言うと猫を床の上に下ろした。
だが猫は「あっち」には行かず、すぐにソファに上がり、わざわざの膝の上に前足を乗せ、座り込む。
その様子はまるでボディガードさながらだ。
そして僕の方をジロリ(僕にはこんな風に見えた)と睨むと大きな口を開けて欠伸をしている。(ちょっとムカつく)





「はぁ・・・もう、この子、ほんとに甘えん坊でダメね・・・」
「いや・・・こいつは、わざとなんだ・・・」
「え?」
「あ、な、何でもないよ、うん!あ、そうだ!じゃあ久々に今日は二人で食事にでも行かない?」





そうそう!そうだよ!家にいるからいけないんだ!
と二人で、どこかへ出かければ邪魔者(猫)は手も足も出ない・・・!ふふふ、いい考えだ!




僕は半分、眠りかけてる猫を見て内心、ニヤリとした。
だが、アッサリと僕の計画はつぶされる事となる。







「あ、あのね。私、今日はオーリィにお料理作ろうと思って材料買って来ちゃったの・・・。ほらロケ行く前に約束したでしょ?」


「あ・・・」







そうだ!そうだぞ、僕!思い出した!
前は、いつも外に食事に出てたから、僕が「たまにはの手料理が食べたいなぁ♪」なんて言ったんだった!
そしたら「じゃあオーリィがロケから帰って来たら美味しいもの作ってあげるね」とが言ってくれたんだっけ・・・・・・
そ、それなら断れない・・・・・・・・・・・(だって手料理せがんだのは僕だし、本当にの料理が食べたいし・・・)



そう思いながら未だの膝の上に太い前足を乗せ、半分丸くなってる(体も丸いけど)猫を見た。
奴はその事が分かっていたかのように呑気に欠伸をしてからチラっと僕を見てニっと笑った。(気がした)



(く、くそう・・・こいつは何で、"何でも知ってるよ"みたいな顔をしてやがるんだ・・・っ)





「オーリィ・・・? あの・・・外に食事に行く方がいい?」
「え? あ、そ、そんなことあるわけないじゃないか!の手料理食べたくて飛んで帰ってきたんだからさ!」
「ほんと? じゃあ今夜は頑張るね」





は可愛い笑顔を見せ、僕の頬に素早くキスをしてくれた。
それだけで僕は顔がゆるゆるになってしまうけど・・・・・・・・・・・・・・・僕は見逃さなかった。
















が僕にキスした瞬間、平次の尻尾がぶわっと膨らんだのを・・・・・・・・・・(猫って怒ると尻尾が膨らむみたいだ・・・)

















++++++++++++++++++++++++++++++++












「美味しい?」
「うん、美味しい!最高だよ、!」







僕はが頑張って作ってくれた料理を口に入れ、幸せを噛み締めた。
の手料理は想像以上に美味しくて、もう今すぐプロポーズしちゃいたいくらいだよ!
おおっと待てよ・・・・・・・・・・・・・・・
それはいいけど、もしと結婚するとなると・・・"あいつ"も、もれなくついてくるな・・・。




そぉっと足元を見れば毛ダルマのような体を屈めて平次がムシャムシャとご飯を食べている。
その姿を見て僕は毎晩、こいつに邪魔されるのかと思うと、ちょっと切なくなった・・・。






「ね、ねぇ、
「ん?」
「こいつ・・・じゃなくて平次なんだけどさ」
「平次がどうかした?」





は口に運んだスプーンを置いて首を傾げた。
その表情が可愛いなぁなんてデレっとなりかけた僕は慌てて爽やかな笑顔を作る。





「う、うん、あのさ。平次は・・・にしかなつかないの?」
「・・・ん~そうねぇ・・・。でも私の友達とかにはなついてるわよ? リンダとかメアリーには」
「へ、へぇ・・・」






全員、女じゃないか!
・・・こいつ、オスだし、やっぱ同姓(?)にはなつかないんだろうか・・・
スケベ猫だな、うん。(同じオスとしては気持ちは分かる辺りツライ・・・)








「どうして? あ、オーリィになつかないから気にしてる?」
「え? あ、いや。そんなことじゃ・・・」
「大丈夫よ。今後も会ってればなつくわ、きっと」
「そ、そうだね・・・。ハハハ・・・」



(も、もうの家に来るようになってから半年なんだけどな・・・)(!)




に、そう言われ、僕はから笑いをしたが、ふと下を見れば平次は猫が食後に必ずやるグルーミングをしている。
手を舐めたり、顔を手で擦ったりと、何とも満足げだ。
だが、ふと僕の視線に気づくと、いつものフテブテしい顔に逆戻り。



むむ・・・なかなか手強いな・・・



そう思っていると、平次は思い切り体を伸ばしてからリビングの方へとノソノソ歩いて行ってしまった。
多分、お腹がいっぱいになって眠くなったのだろう。
僕はやっとと二人きりで楽しい夕食を取る事が出来た。
















++++++++++++++++++++++++++++++++













食事も終わり、二人でリビングに行くと、平次はソファの上で、まさに字の如く、大の字で寝ていた(!)
普通、猫は丸くなって寝るものじゃないか? と首を傾げたくなるほど、平次は●マ全開で仰向けになって寝ている。
両腕を伸ばし、体を少しだけ斜めにして足なんて、おっぴろげもいいとこだ。


その姿に僕は思わず、半目になってしまった。
だがは見慣れてるのか、ちょっと笑って僕の方を見る。





「平次ってば熟睡しちゃってるみたい」
「そ、そうだね」







全く警戒心のない猫だ・・・と思いつつ、とソファに座った。





「オーリィ、紅茶でも淹れる?」
「あ、うん・・・」









・・・は!そうだ!今のうちに・・・


横目でチラっと見れば平次は目を覚ます気配もなくグッスリ眠っているように見える。
それを確認して僕は内心ニヤっとした。
そう・・・鬼(デブ猫)のいぬ間にって奴だ。


僕はこのチャンスを逃がすまいと、すぐにを抱き寄せた。






「オ、オーリィ・・・?」
「まだにキスしてなかった」
「え? ん・・・」





そう言って、すぐに我慢してきた思いをぶつけるように、の唇を塞いだ。
(久し振りに会ったと言うのに家に来てから三時間、キスも出来ないなんて僕にしたら拷問もいいとこだったよ・・・)




何度かチュっチュっと軽く口付けながら、少しづつ深くしていくとも体の力を抜いて僕の背中に腕を回してくる。
そうなるとすぐに体が熱くなり、気分も盛り上がって来た。








「あっちの部屋に行こうか・・・?」







少しだけ唇を離し、にそう言えば彼女も恥ずかしそうに微笑んで小さく頷いてくれる。
それを確認し、僕は彼女をひょいっと抱き上げると、そのまま寝室へと行った。
そしてをベッドに、そっと寝かせると、もう一度キスをしかけていく。
彼女に何度もキスをしながら、やっととの甘い時間が過ごせる、と張り切って彼女に覆い被さった。


その時。






















ジョリジョリ・・・















ぶわっ(鳥肌)












突然、耳をヤスリのようなもので擦られたような痛みが走り、僕はガバっと起き上がった。
すると枕元に、いつの間に来たのか平次がチョコンと座っている。(しかも何気に目がすわっていた)










「平次・・・!起きたの?」





それにはも驚いて体を起こす。
すると平次は目が点の僕を無視し、の頬に体を摺り寄せ、「ブニャァァ・・・」と一声鳴いた。
そして彼女の横にゴロリと寝転がり、ふぁぁぁ・・・っと大欠伸をすると、そのまま目を瞑ってしまった。



















「・・・・・・・・・・・・・・・」




「ご、ごめんね、オーリィ・・・・・・」




「ぇ?あ、いや・・・・・・こいつも寂しかったのかなー? ハハハ・・・・・・」












一気に体の熱が引いていき、寝室に僕の乾いた笑いと空しい空気だけが流れた・・・・・・


































僕がデブ猫に勝てる日は来るのだろうか。



















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くだらなくて、すんまそん・・・;;
うちの猫があまりに家庭内ストーカーをするので、何となく書いてみました(苦笑)
うちの猫も私が移動するたびに、ついてくるんですよ・・・・・・
ソファからベッドに行けばベッドに来て横に寝るし、ベッドからソファに移動すれば
猫も一緒に移動して、またしても横で丸くなるし・・・・・・ほんと邪魔・・・・・・(苦笑)(つか暑いんだけどね)
かなり寂しがり屋で甘えたさんです。もう二歳半になるというのに・・・あ、まだ子供か・・・(¬。¬; )
さ、次は途中で放置したままの連載でも書きます・・・( ̄∀ ̄*)イヒッ!


皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…

【C-MOON...管理人:HANAZO】