Catch me if you can.......~A
real love ?... or... fake love?...~
2001年転10月下旬――
「はい、カット!! ―OK!今ので今日の撮影は終了だ!」
俺はその声と同時に思い切り伸びをした。
WEBCLAP...出逢い
撮影を終えた俺は監督やスタッフに挨拶を済ませるとすぐに控室の方に歩いて行く。
今日はティナと初めてのデートだ。
遅れるわけにはいかない。
俺は控室に戻ってすぐにシャワーを浴びて髪を乾かしていた。
そこへノックの音が聞こえて、メイクのダンが入ってくる。
「よぉ、レオ」
「お疲れ、ダン。どうした?」
「いや、今夜良かったら一緒に飲みに行かないかと思ってさ?」
「あ~悪い。俺、今夜は約束あるんだ」
俺はドライヤーのスイッチを切って後ろを振向いた。
「何だ、そっか。え?また女とデートか?」
「まぁね」
俺はちょっと笑いながらソファーに腰をかけて煙草に火をつけた。
ダンも苦笑しながら隣に座ると俺の肩へ腕を回してくる。
「今の彼女…誰だっけ…。あの…女優さんだっけ?」
「ああ、彼女とは、もう別れたんだ」
「え?!もう?!まだ…半年…経ったか経ってないかくらいだろ?」
ダンは驚いた顔で俺を見た。
俺はちょっと笑って煙をはきだし肩に回ってるダンの腕を外した。
「それが最近、束縛が酷くなってきてさ…。いい加減嫌になったって言うか…」
「束縛?」
「ああ、毎日電話してとか、撮影現場に行っていいでしょう?とか…?」
「アハハ。まあ、一ヶ月も付き合えばそんなもんだろ?女なんてさ?」
「そんなもんかな。俺、嫌なんだよね?毎日電話したり…ましてや撮影現場に彼女を連れてくるなんて…」
「何で?別に他の奴だってロケには自分の恋人とか連れて来てるだろ?」
「ああ、でも俺は…そこまで一緒にいたいって思わないしさ」
「何だ、そうなのか?じゃあ、そこまで好きじゃないって事だ」
「そうなのかな?別に普段、休みの日とかに会えればいいって思うだけだよ?」
「う~ん…。まあ、でもさ、凄く凄く好きな子だったら一分一秒でも離れたくないって思うだろ?」
「そうなの?俺、そんな風に思った事ないかも…」
「え?うそ!ないの?レオ」
ダンは大げさなくらい驚いて俺の顔を覗き込んだ。
「な、何だよ…。そんなに驚く事か?」
「い、いや…だっていくら遊んでても一度くらいは誰でもそう思えるほどの恋愛はしてるだろ?…レオはないの?」
「う~ん…俺はいつでも真剣なつもりなんだけど」
「お前のはただ単に好みの子に一目惚れなパターンだろ?
それだから相手が思ってた人と違うと、すぐに我慢出来なくなって別れるんだよ。
お前、一度でも相手の中身をみて惚れた事あるか?」
俺はダンにそう言われて少し考えたが、
「う~ん…ないかも。いつも一瞬で相手を好きになってたかなぁ?」
と苦笑した。
ダンは溜息をついて俺の肩にポンと手を置くと、
「一度くらい相手の外見だけじゃなく中身も知ってから好きになった方がいいぞ?その方が深い付き合いができるしさ」
と何だか恋愛の教祖様みたいな事を言ってくる。
それには俺も肩を竦めた。
「はいはい。そういう素敵な女性が現れたらね?じゃ、俺は急ぐからそろそろ行くよ」
「ほんと分ってるのかね…。 ああ、急ぐならスタジオの奥の通路を通って行った方が駐車場は近いぞ?」
「ああ、でも、ジョーが危ないから通るなって言うんだ…。ま、今日はいないしいっか」
俺はそう言うと、「じゃ、また明日ね」 とダンに軽く手を上げた。
「ああ、デート、頑張れよ!」
後ろからダンの声が聞こえてきて俺はちょっと笑いながら手を振ってスタジオへと歩いて行った。
スタジオへ行くとまだスタッフが忙しく走り回りながらセットの後片付けをしている。
俺は邪魔にならないように挨拶を交わしながらスタジオの端を歩いて駐車場へ続く通路へと向かおうとしたその時―
目の前にあった大きな柱を外していたスタッフが俺が後ろにいる事に気付かずそれを肩に担いだ。
俺は思わず、
「危ない…」
と声を出してしまって、それに気付いたスタッフが、「え?!」 と言って振向いた(!)
その瞬間、その大きな柱がぶんっと動いて俺の方へ迫ってくるのが見えた。
そこから俺の記憶は飛んでしまった――
(ん…何だか眩しい…)
俺はかすかな意識の中で、そんな事を思った。
(あれ…俺…寝てたのかな…)
思考回路が今の状態を上手く伝えてくれない。
その時、腰の辺りに何かを感じて少し頭がハッキリしてきた。
「ん…誰…?」
ゆっくりと目を開けて声になっていたのか分からないが、ぼわ~っと見える目の前にいる人影に、そう言ってみた。
するとその人影は少し後ずさって行くのが見えて俺の視界も次第にハッキリしてきた。
その人影は真っ白で何か光に包まれている。
それが凄く奇麗で白い物が頭に乗っているのが光に反射していても分った。
「…天使…?」
俺は思わず、そう呟いた。
真っ白なイメージの中に立っているその目の前の女性が天使かと本気で思った。
するとその天使がいきなりしゃべった。
「あの…ここは病院です。…聞こえますか?」
(え…病院…?何を言ってるんだ?)
俺はそう言われて未だボーっとしている視界の中に視線を彷徨わせた。
するとまたその天使がしゃべった。
「あの…私の顔が見えますか?」
俺はさっきよりも近くに来た目の前の天使をジィ~っと見つめてみた。
するとだんだんと視点もあってきて彼女の顔がハッキリと見えてくる。
「君…誰…?」
俺は知らない女性が目の前で俺の顔を覗き込んでるのに一瞬、驚いた。
「あの…ここは病院です。 ―あなたは胸を強打して気を失ってたんですよ?」
(…え?胸を強打…)
そう言われてみると…と思い出してきた。
ああ、さっきスタジオを通った時だ…あれにもろにあたってしまったのか。
そう思いながら俺は自分の置かれてる状況に気付いた。
何故かズボンのチャックを下ろされていてギョっとする。
(な…何でこんな状況に…?!)
その時、その女性が、「大丈夫ですか?」 と俺の前に手を翳してきた。
俺はその状態に恥ずかしくなったが、とりあえず彼女を見つめてニッコリと微笑んだ。
その後は彼女が…看護婦さんだと分ったが俺の体を触るしシャツは脱がすしで正直参った。
目覚めたら突然、ズボンのチャックは下ろされてるわ、シャツは脱がされるわでいくら俺だって恥ずかしくなる。
しかも目の前に彼女の顔が来て俺は少し変な気分になった。
少しでも顔を動かせばキスが出来るくらいの距離…
だから思わず、
「…女性に脱がされるってのも新鮮でいいね」
なんて意地悪な事を言ってしまって彼女に睨まれたくらいだ。
彼女は真っ赤になってしまってそれが凄く新鮮で可愛いと思った。
あんな事で赤面する女なんて俺の周りにはいなかったからだ。
だからつい彼女が出ていこうとした時、勝手に手が動いていた。
思わず彼女にキスをしてしまって、その後は思い切り引っぱたかれたんだけどそれがまた驚いたよ。
だって女性にキスして引っぱたかれたのなんて初めてだったから。
その衝撃が俺の胸に残った。
彼女の名前が知りたいと思って…その後はもっと彼女の事が知りたいと…何となくそう思って…
これが近い未来、本気で愛する事になる彼女との運命の出会いだって事は、この時の俺は気づきもしなかった―
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【C-MOON...管理人:HANAZO】
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