From me Dear you....~Catch
me if you can!Sequel...~
"って夢を見たんだ!どう思う?"
三年前、親友が興奮したように話してくれた変な夢の話・・・。
その夢の話を、この時の俺は思い出していた。
あれは五年後の話だった気がするのだが・・・・・・それが三年で現実のものとなるとは、あの時の俺は思いもしなかった―
LAST...10.出逢えたことから全ては始まった
「・・・きょ・・・今日はおいそが・・・おしそが・・・お・・・おいそがすぃ・・・くそ!何で噛むんだ・・・!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
今、カンペを見ながら必死に挨拶の練習をしているのは俺の長年の(あくまで仕事)パートナーでマネージャーのジョーだ。
何だかコメディ映画から抜け出たような7・3分けに真っ白なタキシードを着て、
汗を拭いている、その姿はまるで結婚式の司会者のようでもある。
でも今日のジョーはコメディ映画に出演するのでも結婚式の司会をするのでもない。
いや・・・・・・・・結婚式に出るには出るが司会ではなく、"新郎"として出るのだ。
(俺の中で今日という日はアルマゲドンだと思っている)(ォイ)
「本日はおひぎゃ・・・・・・・・・・・・・・・ン!ン!ほ、本日はお日柄も良く・・・・・・・・・・・・・・・」
「ぁれじゃあ、お見合いに付き添ってるオバサンの台詞だよね」
「ああ・・・・・・・・かなり緊張してるな、ジョーの奴」
レオとトビーは顔を見合わせ、ちょっとだけ苦笑した。
「でも、まさかトビーのあの変な夢が現実にはるとはな・・・・・・」
「おいおいおい。俺を見くびってもらっちゃっちゃー困るよ、レオナルドくん♪」(偉そう)
「・・・・・・偶然だろ?」
「チッチッチ!あれは俺の予言夢さ!俺はノストラダムスよりも凄いかもなーーあはは!」
「・・・・・・・・・・・・・・・(また古いネタを)」
一人得意げになっているトビーにレオは思わず半目になった。
でもまあ・・・・・・・・・・・・・・・当たってるっちゃ当たってるか
だって現に俺とには―
バン!
「ダディ!」
「おぅ、マーク」
新郎の控室のドアが勢いよく開き、バタバタと駆けて来た小さな男の子を抱き上げレオは笑顔で尋ねた。
「はどうした?」
「あのね、ママは巨体のおばさんに捕まって話し相手にさせられてるんだ」
「巨体のおばさん・・・・・?誰だ?」
「ジョーのママ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「お♪俺の夢の通りだね!」
「うるっさいよ、トビー・・・・・・」
隣でキャイキャイと騒ぐトビーを睨み、レオは軽く溜息をついた。
(まあそれも・・・・・・・・・・・・・・・嫌なくらい当たってるんだけど)
ジョーの母親は今日、初めて会ったのだがやはりと言っていいほど(!)の巨体。
しかもトビーの言ったとおり強烈なキャラだった。
会った瞬間、
「本物のレオナルドだわー♪いつも息子がお世話になって!」
なーんて言いながらレオにガバっと抱きついてきた。
これにはさすがのレオもビックリして挨拶もそこそこにジョーの控室に逃げてきたというわけだ。
それでなのか新婦に付き添ってるが捕まってしまったのだろう・・・・・・
(後で助けてやらないと・・・・・・は優しい上に人がいいからいつまでも話し相手にさせられてしまう)
そう思いながらレオは膝の上の我が子、マークに目を向けた。
レオに似た柔らかい毛質に少し明るめのブロンド、そして切れ長の青い瞳。
だが笑ったりするとの柔らかい感じの雰囲気などがソックリで、上手い具合に二人に似たようだ。
トビーの夢ではマークは五歳でマセガキだったようだ。
が、実際、マークは今、三歳半だがかなりのマセガキに育っている。
今日だって確かにジャックの散歩をした時、同じ歳くらいの女の子と知り合ってすぐに仲良くなっていた。
それを見ながらレオとジャックは(!)思わず半目になったくらいだ。
(はぁ・・・先が思いやられる)
軽く溜め息をついたレオはマークを下ろして煙草に火をつけた。
マークはジっとしているという事はなく、未だブツブツ言っているジョーをからかったり、トビーと遊んでもらったりして楽しそうだ。
「ねーねー。トビーは結婚しないの?」
「ん~?俺?俺はねー花の独身生活を送っているからまだいんだよ~?」
「ふーん。でもダディはトビーが"選り好み"ってのをしてるからだって言ってたよ?」
「(むっ) そんな事はないけどね~?やっぱ結婚するなら可愛い子の方がいいだろ~?」
「うん!僕、可愛い子、大好きだよ?」
「そーか、そーかー!お前のダディも大好きだったんだぞぉう?しかもナイスバディな子ばっかり!」
「――ぶ・・・ッ」
「えーほんと?ダディ!」
「・・・・・・ゴホッ」
トビーのチクリにレオは煙草の煙で咽てしまった。
だがマークは無邪気に聞いてくる。
「お、おい、トビー!マークには余計なこと言うなっていつも言ってるだろ?!」
「へへーん。それはちゃんにバラされるからだろー?次々に過去が暴かれるからなーレオは♪」
「ぐ・・・!(もっそい殴りたい)」
「ねーねーダディの"過去"って何?ダディ、過去に何したの?」
「マ、マーク!俺は別に何も―」
「ママのこと泣かしたの?」
「う・・・・・・」
「あー泣かした、泣かした!そりゃーもーいーっぱ・・・・・・ぅぐっ!!」
「それ以上、口を開いたら上からガムテープ貼るぞ・・・・?」 (ゴルゴ?)
「ひゃ、ひゃい・・・・・・分かりまひたゃ・・・・・・」
レオはトビーの両頬を手でグニっと掴むと、さすがにトビーも白旗を上げた。
だがマークは気になるのか、しきりにレオのスーツを引っ張ってくる。
「ねーねーダディ、ママを泣かしたの?」
「お、おいマーク。こんなバカの話をまともに聞くな。嘘に決まってるだろ?俺はを泣かしたことはないよ」
「怒らせたことは何度もあったけどねー?」 (懲りない奴)
「・・・おい、トビー・・・(冷気が漂うほどの冷たい視線)」
「は、はい・・・」
「お前、いい加減にしないと、もう遊んでやらないぞ・・・?」
「ぇ!」
「(寂しがり屋の)お前が一番!嫌いな着信拒否にするぞ、それでもいいのか・・・?」
「い、嫌ですぅーー!!ボクが悪かったよ、ダディ・・・!」
「誰がお前のダディだ!!!」
とことんアホなトビーの頭をゴン!っと思い切り殴り、レオはソファから立ち上がった。
「はぁ・・・ここにいると疲れるからちょっとのとこに行って来るよ・・・」
「じゃあ僕はここでトビーと遊んでるね?」
「ああ、そうしてろ。 あ、でも―また余計なこと言ったら・・・」
そこで指をバキッと鳴らし、トビーを睨めばにへらっと笑って手を上げている。
「ま、任せて!もう何も言わないよ、ウン!」
「そうしてくれ。っつか二人でジョーをリラックスでもさせてろ」
「アイアイサー☆そんな事、お安いごようさ!」
トビーは呑気に笑いながらレオに手を振り、マークの事を抱っこしている。
それを見つつ、レオは思い切り溜息をついて部屋を出たのだった。
パタンとドアが閉まるとトビーは思い切り息を吐き出し、マークを見た。
「はぁ~~~~!お前のダディは相変わらず怖いよなー」
「うん。怒ったら凄い怖いよ?僕もジャックも、いーっつも怒られるんだ」
「・・・だろうなぁ。俺も昔っからよく怒られてるし・・・(オイ) ってかマークは何して怒られる?」
トビーは頼まれたジョーのことなど、すっかり忘れ(!)何故か三歳半のマークと真剣に語りだす。
マークは特に深くも考えてないのだろう。
トビーの質問に、ん~と首を傾げつつ、思い出してるようだ。
「んーとね、あ、昨日はジャックと庭で遊んでたらジャックが興奮しちゃったんだ」
「うんうん」
「で、家の中まで僕を追いかけて来ちゃって暴走するから、それを止めようとしたママが転んじゃったんだよ。
そしたらダディ、凄い怖い顔で僕を叱ったんだ!ハシャギ過ぎたのはジャックなのに!」
マークは、その時の事を思い出したのか、怯えた顔でトビーを見上げる。
それにはトビーもウンウンと頷き、相づちを打つ。
「あーなるほどねー。レオの奴、ちゃんの事になると尋常じゃいられなくなるからな・・・」
昔を思い出したのか、トビーは遠くを見ながら、そう呟いた。
するとマークが身を乗り出し、トビーにしがみ付く。
「そうなんだ!この前だって僕と遊園地に行く約束してたんだけどママが熱出しちゃって・・・
それでダディ凄い慌てちゃってママに付きっきりで看病してたんだけど・・・
"遊園地はまた今度な"なんて言うから僕は嫌だ!って駄々こねたら、
"お前はママが熱出してるのに遊びに行きたいのか?"って凄い怖い顔で言うんだよー!
ちょっとした子供の我がままなのに本気で怒るんだ!大人気ないよね?」
そう言ってマークはプクーっと頬を膨らませている。
だがトビーはちょっとだけ遠い目で、
「分かる・・・分かるよ、俺には!あいつは昔からちゃんの事になると可愛いジョークでも本気で怒るんだよっ」
と、だんだんエキサイトしている。
それにはマークもノリノリで、「だよねー?」と相づちを打っていた。
とても三歳と三十路過ぎの会話とは思えないほどにスムーズに話が進んでいる。
「ねぇ、トビーは何してダディに怒られるの?」
「俺?俺は・・・まあ色々あるけど・・・やっぱ一番怖いのはちゃん絡みだな・・・」
「え?ママ?トビーはママに何したの?」
「いや。"ナニ"もしてないんだけどね?(ニヤニヤ)」
「???」 (※まだ三歳児です)
「あーいや何でもないよ。あはは!えっと、そうだなぁ・・・まあ俺としてはだな・・・
マークのダディになってたかもしれない、とだけ言っておこう(!)」 (大嘘つき)
「え!何でトビーがダディなの?!」
マークは子供らしく目をまん丸にして問いかける。
それに何故か気分を良くしたトビーはニヤリと笑って手を顎にかけた。(どこかの悪徳代官か)
「それはだな・・・。まあ俺はちゃんと最初に会った時、ビビビーッ!と来たんだよ!あまりに可愛いからさ」
「そりゃー僕のママだもん!ダディもいっつも言ってるよ?"はほーんと可愛い"って。僕の前でも構わずチューしてるし」
「・・・・・・ああ、俺も何度となくその光景を見せ付けられたよ・・・。だけど俺は諦めなかった!」(ヲイ)
「え?ママを?」
「ああ、そうさ!何かにつけ二人の家に遊びに行ったんだ。しかもレオのいない時間を見計らってな?」(ヲーイ)
「・・・ぅあ・・・結構、姑息だね・・・」
「お!何だ、マーク!難しい言葉知ってるな!」 (そういう問題じゃ)
「まーねー。僕だって今から勉強してるんだ」
そこはちょっと得意げな顔を見せるマーク。
そしてトビーはと言うと・・・・・・かなりの被害妄想な一面を発揮していた。
(以下の会話は子供と大人の会話です。(多分))
「おっと、話がそれたな。で・・・俺は甲斐甲斐しくちゃんの手伝いをしてたワケさ」
「手伝い?」
「そうだ。夕飯の買い物に代わりに行ってあげたり、ジャックの散歩をしてあげたりな」 (人はそれを"パシリ"と呼ぶ)
「ふーん。そうなんだー。僕、お手伝い好きじゃないからダディにも怒られるんだけど・・・トビーはえらいね」
「だろう?それもまた愛ゆえだ」 (そんなもんあったんか)
「でも、じゃあ何でママは優しいトビーじゃなくて、あんな怖いダディと結婚したんだろう?」 (子供視線の素朴な疑問)
「それはだな・・・。まあ出逢う順番を間違えたって言うか・・・。それにお前のダディは昔っからかなり強引だったからな・・・」
「え!じゃあダディが強引にママを押し倒したってこと?!」 (待て、三歳児)
「・・・な・・・なかなかするどいな・・・ってか何でそんな言葉を知ってるんだ?」 (さすがにちょっと引いてる)
「違うよー。"知ってる"んじゃなくて"見てる"んだ。だってダディ、いっつもママを押し倒しては強引にチューしてるからね!」(!)
「そ、そっか。まあ・・・大人だからな。チューの一つや二つ・・・それとあんな事やこんな事をしてお前が生まれたわけだし・・・」(!!)
「何のこと?」 (やはりそこは子供)
「い、いや!まだ知らなくていいんだ!マークには十五年ほど早い話だ、ウン」 (ぇ)
「ふーん、まあいいや。あーでも僕、トビーがダディなら良かったなー」
「お♪そうか?そう思うか?!」
「うん。だってトビーは遊んでくれるし怖くないもん」 (要するに同じレベルってこと)
「そーか、そーか♪そうだなー俺がマークの父親なら仕事もそっちのけで遊んでやるのにな?」 (それはダメだろ)
「ほんと?じゃあー今からでも遅くないからママと結婚してよー」
「え♪そう?いや、でもなーお前のダディ、ほんと怖いからな・・・・・・・・」
「でも、もしかしたらママもまんざらでもないかもしれないよ?トビーがそんなに優しいんなら」
「えYそ、そうかな」 (単純)
「うん!あーでも・・・・・・」
「でも、何だ?言ってごらん?(ダディにY)」 (気持ちはすっかりパパ)
一瞬、言葉を切ったマークにトビーはニコニコと身を乗り出す。
そんな彼にマークは泣きそうな顔を見せると―
「もしママに手を出したら・・・トビー、翌朝にはマリブの海の底だね、きっと・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ゴクッ)」
その時。
ヒュゥゥゥ・・・・・・っと冷たい空気が二人を包んだ気がした。
その横では未だにブツブツと呟いているジョーが一人・・・
とても同じ部屋にいるとは思えないほどの距離が、この三人にはあった・・・
一方、自分のネタで盛り上がってるなんて知りもしないレオは愛しい妻の下へと急いでいた。
「はぁ・・・何だか式の前に疲れたよ・・・。あの二人、どことなく息が合ってるから怖い・・・・・」
そんな独り言を言いつつ、新婦の控室へと到着。
ドアを軽くノックすると、すぐにが顔を出した。
「あ、レオ。どうしたの?」
「いや・・・に会いたくなってさ」
「そんな・・・。一時間前に別れたきりじゃない」
「もう一時間も経ってるよ?」
レオはそう言っての頬に軽くキスをする。
「あら、マークは?」
「ああ、今頃、トビーとジョーのことからかってるんじゃない?」
「もう・・・またトビーに押し付けたんでしょ」
「違うよ・・・。あの二人といると体力使うから逃げてきただけ」
そう言って可愛く頬を膨らませているを抱き寄せる。
するとは恥ずかしそうに辺りを見渡した。
「こ、こんなとこで・・・」
「いいだろ?俺達は夫婦なんだしさ?」
「でも業界関係の人だっていっぱい来てるし・・・」
「いいんだよ。どうせまた"おしどり夫婦"とか"愛妻家"なんて記事が載るだけだ」
レオはそう言って笑うとドアの隙間から中を覗いてみた。
「そう言えば・・・彼女、どう?」
「あ、ちょっと緊張してるみたいだけど・・・今はジョーのお母さんと話してるわ?」
「そっか。まあ、あんな姑なら大変そうだな、彼女も。まあ・・・うちも姑が大変だろうけど」
「そんな事ないわ?お義母さんは優しいもの」
「・・・・・・にはね・・・。ったく変わった姑だよな、嫁に優しくて息子には鬼のよう・・・」
「誰が鬼ですって?」
「――っ!!」
「あ、お義母さん!」
ギョっとして振り向けば、そこにはイルメリンが怖い顔で立っていた。
「や、やあ、母さん。久し振り」
「全く!久し振りじゃないわよ。人のこと鬼だの姑だのと!」
「いや鬼は・・・謝るけどさ・・・。実際、姑だろ?」
「そんな老け込んでないわよ?!」
「だから見た目とか年齢とか関係ないから!」
レオは思わず、そう突っ込んで軽く目頭を押えた。
(もう嫌だ・・・と二人で静かな場所で静養したい・・・)(!)
結婚してから早、三年半。
どうやら不毛な結婚生活が続いていたようだ。(!!)
「ところで・・・可愛い孫はどこかしら?」
イルメリンはレオの突っ込みなど大して気にもせず、キョロキョロと辺りを見渡した。
「あ、今はジョーの控室です。トビーと遊んでるみたいで」
「あら♪私の(!)トビーも来てるの?」
「・・・何だよ、私のって・・・。トビーは俺の友達。分かってる?」
「何よ。いいじゃない、トビーは私のボーイフレンドなんだから!」
「ボーイフレンドって・・・」
「時々、デートもしてるのよ?あんたが知らないだけで!」
「あっはっは!とうとうツバメちゃんを飼うようになったのか?イル!」
「「「――――っ!!!」」」
そこへ一際、明るい声が響き、三人は驚いて振り返った。
すると、そこには何とも派手な紳士が―
「Buon giorno~!!」
陽気なイタリア語で挨拶をしたジョージは、大きく両手を広げてレオやイルメリンではなく、何故かの方に歩いて来た。
だが、それにいち早く気づいたレオがすぐにを抱き寄せる。
「何する気だよ、父さん!」
「何って可愛いお嫁さんに熱い抱擁を―」
「しなくていいよ!何だよ、熱い抱擁って!!つか、そのスーツ、新郎より派手だろ!」
「そうか?だってイタリア製だぞ?」 (そういう問題では)
本人は呑気に自分の格好を見下ろした。
その様子にレオは思い切り溜息をついている。
「あのな・・・どこに人の結婚式で紫のスーツに黄色いネクタイしてくる奴がいるんだよ・・・」
「ここにいるじゃないか」 (!)
「真剣な顔で主張するな!もっとジミなの着て来いよ!黒っぽいのでいいから!」
レオは呆れたように、それでも何とかそう言うと、初めてジョージの顔から笑みが消えた。
「私はあんな地味~な色は嫌いだ。私はそう・・・こう艶やかな色を好むのだよっ。まるでイタリアの国旗のような!」
何故か胸を張り、堂々と自分の好みを主張するジョージ。
それにはレオもさすがに堪忍袋の緒が切れた。
「あんたの好みなんて聞いてない!今日は主役はジョーなんだ!」
「あ、あのレオ・・・あまり怒らないで・・・久し振りに会ったんだし・・・ね?」
「・・・う・・・」
にそう言われてはレオも何も言えず、渋々頷いた。
だが傍で聞いてたイルメリンは怖い顔でジョージの方へ歩いて行くと―
「それより・・・さっきの暴言は何なの?誰がツバメちゃんを飼ってるですって?」
「ん?ああ、だって君は若い子とデートしてるんだろう?もう君の歳じゃ若い子を連れ歩いてたらそう思われても仕方な―」
「何ですってぇぇぇっ?!!」
最後まで言い終わらないうちに、かぶり気味に切れたイルメリンにジョージもギョっとしている。
「あんただって若い子連れ歩いては隠れてデートしてたじゃないの!そんなの周りから見ればパトロンのオヤジよ!」
「んな!!何だってぇ?!私はオヤジなどという下等なものじゃないぞ?!」
「オホホ!何?まーだ若いつもりでいるの?ジョージなんて、とっくにオッサンよ、オッサン!」
「オ・・・オ・・・オッサン?!!」 (激しくプライドが傷ついたらしい)
二人のそのやり取りにだけはオロオロしていたが、レオはグッタリ溜息をついた。
「、ちょっと向こうに行こう?」
「え?で、でも二人が―」
「この二人なら大丈夫だよ。いつもの事だしそのうち終るから」
レオはそう言っての手を引き、二人を残して早々に立ち去った。
だがエキサイトしている二人は、レオとがいなくなった事など気づくはずもなく―
「だいたい、あなたは若作りなのよ!なぁに?その趣味の悪ーーいスーツ!」
「何だと?!これは天下のヴェルサァーーーーーーチだよ!」
「へーならジョージのスタイリングが悪いって事よね、きっと!」
「き、君こそ、その若作り~~なドレスは何だ?!ヒールも高すぎだぞ?!」
「あら。私は似合うからいいのよ。ジョージと違って!」
「どこが似合ってるんだ!それじゃ、趣味の悪いオバサンだぞ?!」
「オ、オバサン?!」 (かなり地雷を踏んだらしい)
「あーそうだとも!もう、そう呼ばれる歳なんだよ、君は!」
「あなたが!でしょ!!だいたい、ジョージは昔からナルシストだったわ!」
「君こそ、ナルシストじゃないか!それに昔は―」
・・・相変わらずの元夫婦。
通りがかる人達が皆、驚いたような顔で二人の言い合いを見ていく。
このまま二人は係員が止めに来るまでの10分間、休む間もなく互いをなじりあってたそうな・・・・・・
「おめでとう~~!!幸せにね~!!」
「ありがとーー!!!絶対、幸せになるぞー!!」
皆がお祝いの言葉を投げかけると、ジョーは赤い顔ながらも嬉しそうに叫んで手を振っている。
無事に式も終わり、その後のパーティも今さっき終わったのだ。
ジョーはすっかり緊張してワインを飲みすぎベロベロになってしまった。
だが愛しい妻、シェリーに介抱され、何とか会場を出ることが出来たのだ。
これから二人で部屋に上がり、初夜を迎えることになる。(!)
「はぁ・・・行っちゃった・・・」
「ああ。まあ、いい式だったな?」
「ええ、そうね?ジョーさん、とっても幸せそうだった」
「またケツ破いてたけどな?」
「もう・・・レオっ」
レオの言葉には文句を言ってみるものの、やはり顔は笑っている。
そう、今夜のパーティでジョーはまたしてもタキシードのお尻を破いてしまったのだ。
「わぉ♪俺の夢通りだ!凄いぞ!こりゃ正夢!予知夢だ!」
案の定、トビーはそんな事を言ってはしゃいでいた。
レオもさすがにそこまで当たるとなるとちょっと驚いたが、まあジョーの事だ。
容易に察しやすいというか、トビーがそんな印象を彼に持ってるのなら、その夢で同じ事をしてもおかしくはない(!)
「さ、帰ろうか」
「うん。ああ、マークったらすっかり寝ちゃってる」
「疲れたんだろ?大人に混じってはしゃいだから」
「そうね。帰って寝かさないと・・・」
そう言っていると後ろからイルメリンとジョーが歩いて来た。
相変わらず言い合いをしているようだ。
「あなたホテルに帰りなさいよ!」
「どうしてだ?たまに遊びに来た時くらい、息子夫婦の家に泊まったっていいだろう?」
「ダメよ」
「だから何でだ!」
「私も泊まるから」
「「――!」」
二人の会話にレオとは顔を見合わせた。
「あ、レオ。悪いけど今夜、泊まるわね?」
「は?」
「ああ、レオ。私も泊まるぞ」
「ちょ、ちょっと父さんまで―」
「ちょっとジョージ!だからホテルに泊まりなさいよ!」
「そっちこそ自分の家に帰ればいいだろう?」
「嫌よ!私、今夜はマークと寝るんだから」
「私だって孫と寝たいんだよ!」
「あーーもう!ストップ!!!」
「「――っ?」」
聞くに耐えられず、レオは思い切り手を上げて二人の会話を止めた。
「はぁ・・・もう分かったよ・・・。泊まれよ、勝手に・・・」
「で、でもレオ!」
「いいだろ?一緒でも!嫌なら泊めないけど?」
「「う・・・」」
レオの言葉に二人は言葉につまり、互いにチラっと視線を合わせる。
「分かったわ・・・。一緒でいい」
「うん・・・仕方ないな・・・」
「じゃあ決まり!それと―」
「何よ、まだあるの?」
顔を顰めるイルメリンをレオはジロっと睨んだ。
「今夜、泊めるのはいいよ。ただし・・・二人にマークの面倒を見てもらうから」
「「え?」」
「レオ・・・?」
レオの言葉にジョージとイルメリンはキョトンとし、は驚いた。
するとレオはの肩を抱き寄せてニッコリと微笑む。
「俺と、最近、二人きりで出かけてないんだ。いつもマークが一緒だったしね」
「それで・・・?」
「だから・・・今夜これから二人でデートしてくるし、その間マークのこと二人で見ててよ」
「あら、そんなこと?」
「それなら・・・お安い誤用さ!」
「ちょ・・・レオ・・・」
ジョージとイルメリンはそんな簡単な事、と軽く引き受けた。
だがは心配そうな顔でレオを見上げる。
「悪いわよ・・・二人とも疲れてるのに・・・」
「いいんだよ。どうせ孫と一緒にいたいんだろうし。それよりデートしたくない?」
「え?」
「ここんとこ俺も忙しかったし・・・まあジョーの式の予定のせいだけど。と二人きりで過ごす時間もなかっただろ?」
「レオ・・・」
「さ、決まり!ほら、行こう?」
レオはそう言うとの腕の中で眠っているマークをイルメリンに渡す。
「はい、しっかりお守して」
「もちろんよ?可愛い孫ですもの」
「心配しないでいいから二人で楽しんで来なさい」
ジョージはそう言うとにニッコリ微笑んだ。
「はい、じゃあ・・・宜しくお願いします」
「気をつけてね?」
イルメリンもマークを抱っこしながら笑顔で手を振ってきて、は軽く頭を下げた。
するとトビーがフラフラと歩いて来て、イルメリンと何だか盛り上がっている。
「あーあ。きっとトビーも家に行くな・・・」
「そうね?でも、その方が安心じゃない?」
「・・・まあ・・・でも誰がいても二人はケンカすると思うし・・・ああなるとトビーが少し可哀相かもな」
レオはそう言って笑うと車のドアを開けた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
未だ、それに慣れないはちょっと照れくさそうに微笑み、車に乗り込んだ。
レオもすぐに乗り込むとエンジンをかける。
そんな彼を見ながらはふと疑問に思い、顔を上げた。
「でも・・・デートってどこに行くの?」
「ん?まあ・・・前からちょっと見せたいものがあったんだ。だから、そこにね」
「見せたいものって・・・?」
「それは・・・まあ行って見てからのお楽しみ」
レオはにチュっとキスをしてから軽くウインクをした。
それにはもますます首を傾げている。
そんな彼女を見ながらレオは勢いよく車を出した。
暫く走っていると、懐かしい景色が見えて来ては思わず窓を開けた。
「レオ・・・ここ・・・」
「久し振りだろ?まあ・・・実家に時々来てるから、そうでもないけど・・・こっちの道はさ」
「でも、どうして・・・」
レオの言葉には少し驚いたように振り返った。
その道は過去に何度か通った事がある。
そう、まだ二人が付き合う前に・・・
驚いているをよそにレオは車を飛ばし、見慣れた、でも懐かしい門の前で一旦、車を止めた。
「到着!」
「ちょ・・・レオ・・・ここは・・・」
「そう。前の俺の家」
そう、そこは前にレオが住んでいたビバリーヒルズの家だった。
「どうして・・・」
「ま、とにかく入ろう」
「え?」
レオはちょっと笑って再びハンドルを切るとリモコンで門を開け、車を中へ進めて行く。
はどういう事なのか分からず、ただ驚くばかりだ。
「ちょ、でもこの家にはもう別の人が―」
「今はいないよ?」
「い、いないって・・・」
「ほら、ついたよ。下りて」
レオはエントランス前に車を止めるとエンジンを切り、外へと出た。
そしてすぐに助手席のドアを開けてくれる。
はワケが分からなかったが、とりあえず車から下りるとレオはすぐにキーを取り出した。
「それ・・・」
「そう、この家の鍵」
「レオ・・・どうして?」
彼が一体、何をしたいのか分からず、は首を傾げた。
だがレオはその問いに答えず、まず先にキーでドアを開ける。
そしてを中へと入れると―
「この家・・・買い戻したんだ」
「え・・・?」
「前に住んでた人が引越したって言うからさ」
「で、でも何で―」
は驚いてレオを見上げた。
何故、今になって、この家を買い戻したのか見当もつかない。
だがレオはその問いにもっともシンプルな答えを口にした。
「ここから引越す時に、言ってたろ?"あの家には思い出がるから"ってさ」
「うん・・・だって・・・ここは・・・レオと出逢った頃の思い出が沢山あるもの」
はそう言って懐かしそうに家の中を見渡した。
そしてリビングに入っていくと、
「最初に来た時は・・・レオと一緒にNBAの試合を観に行った時だった」
「うん・・・」
「次は私が・・・レオに借りた服を返しに来て―」
「裏の門をよじ登った」
「そう!」
「あの時は驚いた。帰って来たら外でが寝てるからさ。でも・・・凄く嬉しく思ったのを覚えてる・・・」
レオはそう言ってそっとを抱き寄せる。
「俺も・・・そんな思い出とか詰まった場所に時々帰りたくなってさ・・・」
「え・・・?」
「ほら・・・今の家は近いからって色々な人が出入りするだろ?母さんとかトビーは特に」
「う、うん・・・」
「だから・・・ちょっと二人でいられる場所が欲しいなぁって思ってたんだ」
「二人で・・・いれる場所・・・?」
「そう。で・・・近くで隠れ家じゃないけどさ。ちょっとした家を探してたんだけど・・・偶然この家が売りに出されてるって聞いて」
「じゃあ・・・それで?」
「うん。売りに出てるって聞いていても経ってもいられなくて見に来たんだ。そしたら凄く懐かしくなって・・・この家に戻りたくなった」
レオはそう言って軽く部屋を見渡した。
「ここは自分で初めて買った家でもあるしと最後に過ごした大切な家でもある。だからすぐにこの家にするって決めたんだ」
「レオ・・・」
「何もここに住むってわけじゃないしさ。時々こうして二人になりたい時に来たらいい」
「・・・うん・・・そう・・・だね・・・」
「な、何で泣くの・・・?」
不意にの頬に涙が零れ、レオは慌てて指で拭った。
だがは軽く首を振り、レオの胸に顔を押し付けている。
「どうした・・・?」
「だって・・・嬉しいんだもん・・・」
「・・・」
「凄く嬉しい・・・。また・・・この家に来れるなんて思ってなかったから・・・」
はそう言って顔を上げた。
レオはそんなに優しく微笑むと軽く口付け、すぐに彼女を抱き上げる。
「レオ・・・?」
「二階だけ、もう家具も入れてあるんだ」
「え?」
「他の家具は明日、届く事になってる」
「い、いつの間に・・・」
はレオの素早い行動に驚き、目を丸くした。
だがレオはちょっと笑うとを抱いたまま、二階へと上がっていく。
「前にもこんな風にを抱いて、この階段上がった気がするよ」
「そ、それは私が寝ちゃったから・・・」
「うん。あと他にも・・・無理やりベッドルームに連れ込んだ時・・・かな?」
「――っ」
レオがおどけてそう言うとは顔を赤くして俯いてしまった。
そんな彼女に笑いを堪えながらベッドルームに入る。
中を見れば懐かしい記憶が蘇えってくる。
その部屋はあの頃と同じ配置で全ての家具が揃っていた。
「わぁ・・・ほんとに・・・今すぐ住めるみたい・・・」
「そうだよ?だから・・・今夜は泊まって行こうと思ってさ」
「え?でも・・・」
「いいんだって。どうせ母さん達が泊って行くって言うの分かってたし・・・その時はを連れて来ようって思ってたんだ」
レオはそう言うとをそっとベッドに押し倒した。
するとは照れくさそうに、それでも上目遣いでレオを見上げる。
「ビックリさせようと思って黙ってたの・・・?だから最近ちょっと遅かったり連絡取れなかったりしたの?」
「その通り。驚いた?」
「驚くに決まってるじゃない・・・!もう・・・・・・何だ・・・」
はそう言って少しホっとしたように息を吐き出した。
「ま、ジョーの結婚式のおかげで早くを連れてこられた。暫くオフだしさ」
「そうだね・・・じゃあ・・・明日からは少しの間、一緒にいれる・・・?」
「ずーっと一緒にいるよ?が嫌だって言っても」
レオはそう言って優しく唇を重ねた。
唇から頬、そして額にチュっとキスをすると、の髪を掬って、そこへも口付ける。
何年経ってもこの家でと過ごしてたあの頃と、ちっとも変わらない想いがそこあった。
「・・・これからもずっと傍にいて。あの頃と同じ想いのまま・・・」
「レオ・・・」
「これからも俺のへの想いは変わらない」
「・・・私の・・・レオへの想いも変わらないわ・・・?レオに逢えて・・・本当に幸せだから・・・」
の言葉にレオは嬉しそうに微笑むと、もう一度ゆっくりと唇を重ねた。
出逢えたことから全ては始まった
あの出逢いに感謝しながら、これからも二人で幸せになっていこう
Fin...
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ふぁーーやっと終りました!>Catch
me の続編。
というか、続編って終わりのないものなので(笑)
ちょうど10話目というところでキリもいいし、これで最終話とさせて頂きますm(__)m
今まで、"From Me Dear You"を読んで下さってた皆様には大変感謝しております。
本当は、この続編、書く予定ではなかったのですが、"Catch
me if you can!"の続きが見たいと
言って下さる方々が多く、それで連載を始めたのでした。
そう言って頂けた事も本当に嬉しく思っています。
何となく終わりのない終わり方ですが、この二人に関しては全て書き尽くしたという気持ちなもので、
こんな曖昧なラストとなってしまいました^^;
なので時々、ふと短編などで、この二人を書くかも・・・かもですが(ォイ)
もし、その時はまた読んでもらえたら・・・と思っています。
このシリーズを最後まで読みきって下さった、そこの貴方!本当にありがとう御座いました!感謝vv
本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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