THE BOURNE SUPREMACY


















「・・・でね、その犬がずっとついてきて離れないの。だから急いで車に乗ったんだけど―」





そこで言葉を切るとジェイソンは私の淹れたコーヒーをカップに注ぎながら、不思議そうに首を傾げた。






「どうした?もっと聞かせてよ」
「でも・・・私ばっかり話してるよ?退屈じゃない?」






そう言うとジェイソンは優しい笑顔を浮かべて私の頬に軽くキスをした。






「そんな事ないよ。が楽しそうに話してるのを聞くのが好きなんだ」
「そう・・・?でも・・・ジェイソンも何か話してよ」
「・・・俺?俺は・・・何も話すことないよ」






彼はそう言って少しだけ目を伏せると、ゆっくりとコーヒーを飲んで再び笑顔で私を見た。






「美味しい・・・。の淹れたコーヒーが一番美味しいよ」










その言葉が嬉しくて私も微笑み返すとジェイソンの肩に頭を乗せて寄りかかった。


時々、ジェイソンは悲しげな表情を見せる。
その度に過去の事を思い出してるのかと思うと胸が痛んだ。
でも彼の前では、なるべく笑顔でいる事にしている。
私が笑顔でいるとジェイソンはとても嬉しそうな顔をするから・・・


こうして静かな時を過ごせればいい。
ジェイソンと二人で、いつまでも・・・






誰も・・・邪魔しないで欲しい―









膝に乗せた彼の手をそっと握りしめた。







さっきの話の続きをする為に―

































「きっと、あの犬、誰かが捨てたのよ。だって可愛い首輪してたし。酷いよね」







そう言って少しだけ頬を膨らませたは俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
その仕草が可愛くて俺は彼女の髪に軽く口付ける。






は犬が好きなの?」
「うん。と言うより・・・動物が好きなの。何だか癒されるでしょ?人間みたいに裏切らないし」






"人間みたいに裏切らない"






その言葉が胸を痛ませる。
自分もかつては裏切られたかもしれない人間だ。
誰も信用出来ないと思って生きてきた。
未だ完全には戻らない記憶には・・・そんな俺の全てが詰まってる気がした。







「ジェイソン・・・?どうしたの、難しい顔して・・・」
「いや・・・何でもないよ。で、その犬はどうしたの?」
「あ、そうそう!それで―」







は思い出したように言葉を続けながら再び俺の肩に頭を乗せた。
楽しげに話す彼女に俺も自然と笑顔になる。


は子供のように、くるくると表情をよく変えるから、俺までつられてしまうんだ。


笑ったと思えば、すぐにスネたり、怒ったり・・・
とても感情が豊かなんだと思う。


傍にいると、とても安心して心が癒されていく。



そしてまた愛しいという想いが増えていく――。

















「・・・で、首輪を見てみたの。もしかしたら飼い主の住所が書いてると思って・・・」
「書いてたの?」
「ううん。住所は書いてなかったの。でもね、その犬の名前が書いてあって―」
「へぇ・・・どんな名前?」







コーヒーカップをテーブルに置き、彼女を見る。
するとは、さも楽しいといった感じで笑うと、俺の膝の上に両肘を置いた。
下から見上げてくる姿は本当に可愛らしい少女のようだ。






「聞きたい?」


「そりゃここまで聞けばね」






肩を竦めて、そう答えるとはクスクス笑い出した。







「あのね、"ジェイソン"・・・・・・ぷっ・・・あはは・・・っ」



「・・・・・・What?」





突然が俺の名前を呼んで笑い出し、意味が分からず首を傾げる。
だがはまだ笑いながら体を起こし、俺の唇にチュっと口付けた。






「だから〜ジェイソンって書いてあったの!」


「え・・・?」





ちょっと驚いてを見れば、彼女は笑いながら俺に抱きついてきた。
そんなが可愛くて、細い腰に腕をまわし、俺も彼女を抱きしめる。



いや、だけど今のは・・・・・・











「・・・さっきから聞いてた・・・その"真っ黒でボッサボサで、いかにもみすぼらしい犬"の名前が・・・俺と同じ名前ってわけ?」


「そうよ?それ見た時、大笑いしちゃった!"ジェイソン"がビックリして尻尾を股の間に隠しちゃったわ?」


「へぇ・・・・・・・・・・・・・・・」







まだ笑って話す彼女に俺は思わず苦笑を洩らす。
そして、そのままソファにを押し倒した。






「あ、怒っちゃった?」


「いや・・・・の笑顔が見れて嬉しいよ」





そう言って彼女の額に口付ける。
するとは上目遣いでちょっとだけ笑顔を見せると―







「じゃあ・・・・・・飼ってもいい・・・?」


「え?」





の言葉に驚いて少しだけ体を起こすと、が眉を下げて口の端を上げながら庭の方を指さした。



その方向へ顔を向けてみると―























ゥッ!」




「・・・・・・・・・・・・・・・」





















確かにの話の通り・・・・・・





"真っ黒でボッサボサで、いかにもみすぼらしい犬"が尻尾をブンブン振りながら庭に座ってこっちを見ていた。


































「・・・・・・コーヒー淹れなおしてくるよ・・・」


「あ、待ってよ、ジェイソン!」


「ワゥ!」


「お前じゃない!」


「クゥン・・・」















俺がそう怒鳴ると、その犬はガックリ頭を項垂れてしまった。



その様子がほんと情けなくて俺もつい噴出してしまう。


隣ではも舌をペロっと出して笑ってた。















俺の大好きな笑顔で。






とても楽しそうに。













































































 

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Postscript


ボーン夢第三弾〜(笑)
ちょっとほのぼの昼下がりなボーンも書きたくなりました( ̄∀ ̄*)
日記でも書きましたが、「私もマット好きです♪」な方、コメント待っております(笑)
(詳しくはDays...にて)


本日も皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて...


【C-MOON...管理人:HANAZO】