Ned Kelly―――




















「もし・・・・・・俺が死んだら・・・・・・はどうする?」









あなたはそう言った。








私は笑って・・・・・・


ただ笑って――――何も答えなかった。



















さよなら さよなら


あなたが去った後 恥ずかしがり屋の彼の魂のように




ささやく風に出会ったの―――――























・・・・・・俺のこと好きか・・・・・・?」



ある夏の暑い日。
幼なじみのジョーが、そんな事を聞いてきた。



「な・・・何よ、急に・・・・・・」



激しく動揺しながら視線を反らせば、ジョーは煙草の煙を空に舞い上げ、低い声で笑ってるだけ。
人の心を見透かしたような、その冷たい視線が好き――








「お前、俺のこと好きだろ?」




とっくに知ってるよ・・・って言いたげにジョーは私に微笑んだ。
私もとっくにバレてるなんて知ってるから、赤い顔を隠しながら笑顔になった。



その後・・・・・・その後は・・・・・・・・・?












今、思い出しても心の奥が一気に燃え上がるようなキスをしてくれた・・・・・・





今、思い出したら・・・・・・・・・心の奥が引き裂かれそうなほどに熱いキスを――――


















その日は、とても雨風が強くて私は攫われていく髪を抑えながらジョーが来るのを待ってた。
いつも落ち合う場所で。
迎えに来てくれるのを。


時々かかる雨水に顔を顰めながら。




そんな雨と風の激しい日――――あなたは逝ってしまった。
























「最低・・・・・・」



ポツリと呟いた自分の声が、まるで他人のように聞こえる。
誰が気づくわけでもなく、私はもう一度口を開いた。




「置いて行くなんて・・・・・・最低―――」




ギュっと握りしめた拳。
言いようのない苦しさ。



ふと隣を見れば、おばさんも、子供たちも・・・・・・ただ黙って土に埋められていくジョーを見ている。



ネッドは捕まり、皆は射殺された。
犯罪者だからと、遺体を返してくれるのが遅くなった事で、私はまだ彼の死を受け入れられていなかった。
戻って来た彼を見ても眠っているようにしか見えなくて何度も声をかけた。
顔だけ見れば・・・・・・体が冷たくなければ・・・・・・ジョーは生きているようにしか見えなかった。




あの日・・・・・・最後に会いに来てくれたあの日・・・・・・
私も一緒に行けば良かった。



「必ず・・・・・・迎えに来るから」



それだけ言い残し、去って行くジョーを追いかければ良かった。
あんな事を言われたのに・・・・・・私は心の不安をわざと打ち消したのだ。








せめて・・・・・・一緒に逝きたかった――――












頬に熱いものが零れた。
それが涙だと気づく前に、ジョーの体が視界から消えた。
そこで繋がれていた二人の糸がプツリと音を立てて切れた気がした―――


何も感じなくて何も考えられなくて・・・・・・



ただ真っ黒なワンピースが風でバタバタ揺れているのだけは知っていた。






今日もまた・・・風は強い―――































「――――え?」


「一緒に・・・・・・来るか・・・?」





真剣なジョーの言葉に私はドキっとした。




「い、一緒に逃げるってこと・・・?」
「ああ・・・が・・・良ければ、の話だ」




ジョーはそう言って照れくさそうに視線を反らした。
それは女馴れしてるジョーが、私にだけ見せる顔だった。







「いいの・・・?私が行っても・・・・・・足手まといになるんじゃ―――」


「俺達は暫く戻って来ない。姿を消すんだ。だから・・・・・・」








"と離れたくない・・・"




そう呟いてジョーは私をそっと抱きしめた。




「ジョー・・・でも――」


「ここで・・・永遠にさよならしたくないんだ・・・・・・」


「え・・・・・・どういう・・・・・・・意味・・・・・・?」





ジョーは暫く何も答えなかった。
だけど見えない不安から私が彼の手を強く握った時、ジョーはゆっくりと口を開いた。














「もし・・・・・・俺が死んだら・・・・・・はどうする?」



























あの時、あなたはそう言った。



私は笑って・・・・・・




ただ笑って――――何も答えなかった。



彼の胸に顔を埋めながら、そんな事が起きるはずがないと願いながら。



その後・・・口を開いたのは彼だった。
少しおどけたように、今の言葉は冗談だよ、とでも言いたげに。













"もし―――そうなったら・・・俺が風になって傍にいてやる・・・・・・お前を守ってやるよ"














私はそれでも笑って・・・・・・何も言えなかった。


あなたが死ぬなんて・・・考えたくもなかったの。




















ごめん ごめんね


わたしの元を去ったあなた


わたしはいつでも信じてた











あなたが傷つかないことを―――――

















風でもいいの わたしの傍にいてくれるなら


もう悲しまない あなたは知ってるはずよ


わたしがこんなにも愛してることを


私は今、あなたのように 風の中に生きてるわ






苦しまないで 私は知ってるから


あなたは風になったけど


あなたは風になったけど

















わたしをこんなにも愛してくれることを――――































―――風でもいいの・・・










































――僕のことを思っているの?なかなか寝付けないね


















ゴト・・・ッ







酒の瓶が床に転がった。
そして次の瓶に手を伸ばす彼女。


彼女は朝から泣きどうしだ。





「ジョーのバカ・・・・・・」





俺が死んだだけで・・・・・・こんなに泣いてくれる彼女が愛しくてたまらない。


あ〜あ・・・・・・また酒を煽ってる。












「私を連れに来てよ・・・・・・約束したじゃない・・・・・・」






そう言いながら俺のあげた指輪を握りしめてる。






「早く迎えに来てよ・・・・・・私がそっちに行く前に―――」







・・・そこで寝たら風邪引くよ・・・・・・

















――あなたが目を閉じていても僕はいつもそこにいるのに



僕のところに来なくていいんだよ 僕はいつもあなたの傍にいるから

















   幻を抱いて泣かないで











僕はあなたを探し 風となってあなたを包み込むから
















I will stay for you... 

 







あなたの心の中にいる でも触れられないんだ























あなたが僕のことを忘れても 僕はいつまでもあなたを守ります―――



























――――I will stay for you....








































「ジョー・・・!」



実際に、そう声に出したのか分からない。
薄っすらと目を開けるとカーテンの隙間から太陽の日差しが入り込んでいた。
私はソファに凭れて眠っていて体のあちこちが痛い。
あげく二日酔い特有の頭痛が襲ってくる。



「はぁ・・・・・」





彼が傍に居る夢を見た。
私に優しい笑顔で話し掛けていた。


"泣かないで――"



そう囁く彼の声が聞こえたのに。




時計を見れば止まっていた。
あの日、落として壊れた時計。
虫の知らせのように割れて砕け散った時計・・・・・・。

















――あなたが去った後 私の部屋の時計は止まってしまったよ




ぜんまいを巻いても何をしても、もう動かない




明るい日差しで溢れた窓で 育てた鉢植えも成長を止めてしまったよ―――


















「ジョー・・・?そこにいるの――?」







"泣かないで――"






「お願い・・・・・・一緒に連れて行って・・・・・・」






"僕はここにいる"











胸に響く彼の声が・・・痛くて苦しい・・・・・・・・・・・。
どこにいても何度生まれ変わっても・・・・・・私の傍にいてくれる――?









「私・・・・・・まだジョーに伝えたいことがあったんだよ・・・」










"僕もだよ・・・"













「"愛してる"さえ・・・言えてないんだよ・・・・?」


















"・・・そんなの昔から知ってるよ・・・"
















「時間を戻して・・・・・・言わせてもくれないの―――?」
















"・・・・・・愛してる・・・・・・"






























―――時計を戻したら帰れるかな?愛し合ったあの時へ




ごめんという言葉も 愛してるという言葉も



まだ伝えていないことが多いのに




何度すれ違っても いつか必ずまた会おうね




その日まで愛している









風になっても 私を守ってくれると言った言葉









それだけは絶対忘れないでね―――

























 

 

 


あなたは戻るかしら―――?








もう一度・・・抱きしめてくれる―――?

 

 

 

 

 

 

 

時計をまわしたら・・・・・・


 

 

 


一人で逝かないで―――――













































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お初ですねーネッドケリー(笑)
これ映画夢かコネタ夢で迷ったんですけど、話にしては短いので、
コネタ夢にしました。
これは「僕の彼女を紹介します」のサントラの曲を使ってのショートストーリーです。
映画の内容が内容なので凄く切ない歌詞ばかりの曲が多くて、
凄く好きになりました。
それで、その詞のSSを書きたくなって、ネッドケリーで書いてみました。
詞の所は分かるようにしてあります。
タイトルの「風でもいいの」は曲の題名です。
あとは「Wind of Soul...... I will stay for you....」と、「時計をまわしたら」の合計3曲を
使って書いたものです。
詞を見ると何だか話のように繋がってる気がしたので・・・。
気になったらサントラ、是非聴いてみて下さいv ほんといいですよ!
因みに、これは、「Knockin'on Heaven's door」を聴きながらしみじみしつつ書き上げました^^;
この曲が、また切ない・・・(><。)。。
「僕カノ・・・」の宣伝CMでも流れてましたねー(うるる)

 

 

 

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