::::::::::PARASITE::::::::::














天使の寝言















隣に眠る人を抱きしめるため、







静かに寝返りをうつ私―――




















頬に温かい物が触れた。



それが彼の温もりだと気づいた時、私は無意識に寝返りを打っていた。







「おい、起きろって」





少し擦れた低い、その声が好き。






「ん・・・・・・もぅ少し・・・・・・」






まだ温もりを感じていたいから。






「ダーメ。ってか、いつ潜り込んだんだよ?」







もちろん、あなたが寝てからよ?







〜?」








ジークは呆れたように私の鼻をギュっと摘んだ。



ゆっくりと目を開ければ、そこには苦笑交じりの彼の顔。



えへへ・・・と笑えば放される彼の手。



そしてジークは困ったように眉を下げ、軽く息をつく。








「お前、いい加減、夜中に忍び込んでくるのやめろよ?親にバレたら俺が殺されるだろ?」


「いないじゃない」


「俺じゃなくて、のだよ」




ジークは、そう言って再び私の隣に寝転がった。


彼は私のお隣さんでいわゆる幼なじみ。
両親は、もうこの家にはいないからジーク一人で生活をしている。
だからかな・・・いつからか心配で、ジークの事を放っておけなくなったのは。
だってジークってば母親が出て行ってしまってからは人が変わったようになってしまったんだもの。


昔はもっと明るくて友達だって沢山いたのに。
今の高校では一匹狼の如く一人でいる事が多かった。
時々、悪い事をしてるのも知ってる。
でも本当は優しい人だって分かってるから――――放っておけない。




「ねぇ・・・いいの?留年しちゃうよ・・・追試を受ければ―――」


「いいんだよ、別に」


「だって・・・私と同じ学年になっちゃうよ?」




そう言って彼を見れば、ジークは黙ったまま目を瞑っている。
その顔をじぃっと見ていると、不意に目が開き、ジークはベッドサイドのボードから煙草を取って咥えた。
カチっと音がして、すぐに独特の匂いと共に煙がゆらゆら天井へ上がっていく。



「ジーク・・・?」


「ん〜?」


「・・・・お腹空いたね」


「・・・・・・帰れよ」




ジークは煙草の煙を吐き出しながら私を見た。
でも私は動けない。
何だか・・・・・・ジークを一人にしたくないのだ。
だって、気づいてしまったんだもの・・・・・・彼への気持ちに。





「私、何か作ろうか?」


「ん〜・・・俺はお腹空いてない」



そう言って体を私の方に向けた。
至近距離で見つめられてドキっとするけど、それは顔に出せない。



「お前もいい加減、年頃なんだから、こんな風に男のベッドに無防備に寝るのはやめろよ」






ジークはあっさりと私が傷つく事を口にする。





でも、それは顔には出さないで、いつもの様に笑顔を見せた。







「ジークなんだからいいじゃない」


「どこが。俺だって男だぞ?」


「うん、知ってる・・・」




さり気なく、でも、わざとそう言ってジークを見た。
だけど彼はちょっと笑っただけで体を起こし、煙草を灰皿に押しつぶした。



「だったら少しは警戒しろよ。いつか襲っちゃうぞ?」




いいよ・・・ジークなら・・・



そう言いたいのに言葉が出てこない。
そんな事を言えばジョークとして流せないから。





「へぇ、私のこと女として見てないんじゃなかったの?」



「まぁな。でも、そのうち欲求不満になれば、そうなるかもよ?」




ジークはそう言って笑うと私の方を見た。



それは彼なりの虚勢だって知ってる。
そう言って私を遠ざけようとしたって無駄なんだから。




「ジーク、彼女いないの?」


「そんな、煩わしいのいらないよ。ヤレれば誰でもOK」


「ふーん。じゃあ先生でも?」


「は?」




つい口から出てしまった。


不安に思ってたから・・・




「バーク先生。彼女には異常に冷たいよね?どうして?」


「別に、そんな事ないよ。ただ見ててイライラするんだ、いい子ちゃん過ぎてさ。それに、あんな女、色気もないしヤリたいとも思わないって」




ジークは私から目を反らして、そう言うとベッドから抜け出した。



「そろそろ家に戻れよ。学校、遅刻するぞ?」


「・・・・・・ジークは?」



「俺?行くよ?ちゃんと。でも行く前にやる事がある」



「また倉庫に篭るの?」



「・・・・・・・・・・・・・・・」



「あそこで何してるの?」



「いいだろ?別に何もしてないって」





ジークは、そう言うと私の腕を引っ張って体を起こした。

その時、かすかに煙草の匂いがして、私の胸がギュっと掴まれたような感覚になる。



まだ・・・・・・・・・・・・・・・一緒にいたい―――








?どうしたんだよ。今日、変だぞ?」


「・・・・・・まだ・・・・・・」


「え?」



「・・・・・・眠ぃ・・・」




そう言って掴まれていた腕を振り払うと、もう一度ベッドの中に潜り込んだ。




「おい、、起きろよ・・・」



「・・・・・・」



?」




ジークは隣に横になると布団の中を覗き込んできた。
その瞬間、ジークの匂いに包まれて私は彼の胸に顔を押し付け、



「まだ一緒に寝てて」



と我がままを言ってみる。
すると軽く溜息をつくのが聞こえた。



ああ・・・・・・呆れられちゃったかな・・・?



そう思った時、ジークの腕が私の背中にまわってきてギュっと抱きしめられた。





「ったく・・・いつまで経っても甘えん坊だよな、は・・・」




ちょっと苦笑いしながら、私の好きな低い声が、そう呟いた。





違う・・・・・・寂しいんだよ・・・・・・




それはジークも同じだよね?





ほんとは・・・・・・あなたが誰よりも寂しがり屋だって・・・・・・私、知ってるよ?





















「あ〜ほんとに寝ちゃったよ・・・・・・」




隣でスヤスヤ眠る彼女を見ながら、俺は苦笑を洩らす。


でも迷惑なわけじゃない。


いや・・・・・・ちょっと理性が危ないから、ある意味は迷惑かもな。




「ったく、人の気も知らないで・・・・・・」




そう呟いての鼻を軽く突付いた。


むにゃむにゃと寝ぼけたように口を動かし、俺の胸に更に顔を埋めてくる。


健康な18歳の男としては、これは、かなりキツイ。




しかも、その相手が唯一、大切な女の子なら尚更だ―――





大切だからこそ、素っ気無くしてんのに、ちっとも分かってくれない彼女に俺は、このところ本当に困っていた。




「何がバーク先生だよ・・・・・・何を勘違いしてんだか・・・・・・」




正直、があんな事を言うなんて驚いた。
追試を受けろ、受けろと、真面目だけが取り得の、あの女教師に最近よく付きまとわれていた。
それが、うっとーしくて冷たくしてただけなんだけど、の奴、それを変な風にとったらしい。



いつからだろう?
隣の子を、"一人の女"として見るようになったのは・・・・・・
そう・・・きっと母さんが出て行った頃だ。
彼女は俺に同情したのか、あの頃から、よく家に出入りするようになった。
夕飯を作ってくれたり掃除をしに来てくれたり。
最初は同情なんていらないと、よく追い返したりしていたが、は懲りずに何度もやってきては俺の世話を楽しそうにしている。
そのうち気づいたんだ。


本当の俺を見てくれてるのは彼女だけなんだ、という事に――




は俺が何をしようが信じてくれている。


どんなに悪い事をしたって全然、動じない。




それが、ただ単純に嬉しかった。



だけど、こんな留年が決まりそうな不良学生に何が出来る?
彼女を幸せになんて出来る訳がない。
それにだって別に俺の事を兄貴のように慕ってるだけだ。
そう、が、こうして時々俺の家に来たりベッドに潜り込んで来るのも甘えてるだけ、後は心配してくれてるだけなんだ。


俺を一人には出来ないって。


それは俺にだって分かる。




だからこそ気持ちを押し殺してるってのに・・・・・・





無邪気に眠っているを見つめながら、空しい溜息が出た。





「ほんと・・・・・・襲うぞ?」





いつまでも兄貴のフリをして、こんな事を続けている自信がない。
だって年頃で、それなりに女っぽくもなってきている。
他の女で紛らわすのも、もう限界だ。




「・・・・・・」





ゆっくり体を起こし、の上に覆い被さるも、彼女は何も気付かずスヤスヤ眠ったまま。



自然に開いた唇に、目が行くのも仕方がない。



そっと唇を指でなぞれば、柔らかい感触が指から脳に伝わり、鼓動が早くなる。



ゴクっと喉が鳴り、彼女の寝息すら甘い囁きに聞こえてしまうから重症だ。




ゆっくり顔を近づけていけば、その囁きは、より鮮明に耳を刺激する。




あと数センチ近づければ、唇が重なり合う、と思った、その時・・・・・・





















「・・・・・・ん・・・ぅ・・・ジー・・・ク・・・」













「――――っ」
















ドキっとして少しだけ離れた。



だが起きた気配はなく、少し顔を動かしただけのようだ。









「あぶねー・・・」






マジで理性を失うとこだった。



つか失ってたけど。







こんな事で嫌われたくはない。





でも・・・寝ながら名前を呼んでくれたのは俺にとっては嬉しい事だった。








そう思った、その時、再び彼女の口がわずかに開き、俺の名を呼んだ。







「・・・ジーク・・・・・・」







全く・・・ほんと俺の理性を崩す女だよな・・・




苦笑気味に、の上から避けて寝顔を見つめれば、まるで天使が隣にいるような錯覚を起こす。





そう・・・彼女は俺にとっては天使そのものだ。



無邪気で汚れのない天使。




俺の中にある黒いものを、いつも白に変えてくれる存在―――














「・・・ジー・・・ク・・・」







「・・・なんだよ」





眠りながら何度も俺の事を呼ぶ、彼女に笑みが零れ、つい返事をしてしまった。


























「・・・・・・好・・・き・・・」

















「・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?」


















今・・・・・・何つった・・・・・・?









一瞬、頭が真っ白になり、寝てるに聞き返してしまった事すら気づいてなかった。


だがの耳に届いたんだろうか。




再び彼女の口が開かれた。




















「・・・・・・好き・・・・・・だよ・・・・・・ジーク・・・・・・」
























まさに、 "Unbelievable "














寝てる子に告白されるなんて生まれて初めてだった。










俺は固まった体を何とか動かし、彼女の寝顔を覗き込んだ。





は起きている様子もなく、再び気持ち良さそうに寝息を立て始める。






そんなを見て俺はちょっとだけ噴出してしまった。











「何だよ・・・・・・ほんと驚かせるの得意だよな、お前は・・・・・・」










そっとの頭を撫でながら自分の胸に優しく寄せた。

















「俺も好きなんだけど・・・・・・って聞こえてないか・・・・・・」





















こう言う場合、どうしたらいいんだろうな?











起きた時、どんな顔でお前と向き合えばいい?


















の額にそっと口付けながら、頭に浮かぶのは、そんな事ばかりだった―――












俺の天使が最高の寝言を呟いた。
























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うひょー何故か突如、書きたくなって書いちゃいました>パラサイト夢(笑)
アンケート処にも、ジョシュじゃなくジークの夢が見たいとありましたしねv
一応、短編です。
人に勧めたら、ふと見たくなっちゃってDVDなんぞ見ながら書いてましたv
あーやっぱジークジョシュはカッコいいよぉーーvv>▽<