――――PARASITE
「ねぇ、」
「何?」
「彼と付き合ってて・・・怖くない?」
「え・・・?」
私の恋人―ジークは、周りの友達に、よく怖いと言われている。
それはどうしてなんだろう?
「どういう意味?」
「んー。だからぁ・・・彼、ちょっと怖くて話し掛けにくいって言うか・・・」
「そう? 凄く優しいよ?」
「えー? 嘘でしょー? 私、この前、廊下で話し掛けたら、すっごい無愛想だったわよっ?」
「そう?」
「そうよ!私、よく、あんな冷たい男とが付き合ってるわーって思ったんだから」
友達のリリーは、そう言いながら肩を竦めている。
(そんな力入れて言わなくてもいいじゃない)
「それにほら、彼ってドラッグとか売ってるんでしょ? もサッサと別れちゃった方がいいわよー?」
「ちょ・・・それは前の事でしょ? 今はそんなことしてないって言ってたもん」
「嘘ついてるだけよー。彼にしたらなんて騙しやすいに決まってるわ?」
(む。それってちょっと失礼だわっ)
「どうせ、ポヤンとしてるわよ・・・」
「だから心配してるんじゃない。きっと浮気でもされて捨てられちゃうわよ? 悪い事は言わないから
早く別れちゃいなさいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
(・・・大きなお世話よっ)
「ご忠告、ありがと!じゃね!」
「ちょっと―」
私はイライラしてきてリリーを置いて、そのまま廊下を歩き出した。
数人のクラスメートと言葉を交わしつつ、やっぱり少し不安になりジークはどこかと探してみる。
そこへ顔見知りの男の子が歩いて来た。
「あ、マイク。ジーク見なかった?」
「あー。えっとジークなら校舎の裏に行ったけど」
「え? 校舎の・・・・?」
「ああ、ほら・・・最近、転校してきた女と一緒だったけど?」
「・・・そ、そう。分かった。ありがとう」
(お、女って・・・あの派手な子?)
それを聞いて一瞬、不安になった。
ジークを信じてるけどリリーにも変なことを言われた後だったから尚更だ。
確かに・・・ジークは前は真面目な生徒とは、ほど遠い人だった。
悪い人と付き合ってドラッグだって校内で売っていたし、留年だってしてる。
でも私と付き合うようになってからは悪い事は一切しなくなったし、本人もまたそう言っていた。
それに・・・一緒にいるとジークは凄く優しい。
皆は怖いとか冷たいって言うけど、でも・・・私には凄く優しいのだ。
だから信じてるんだけど・・・.もしそれが彼の演技だったら・・・と思うと怖くなる。
彼の本当の姿を・・・私は知らないのだろうか。
私は外に出て、すぐに裏の校舎へと向った。
もし、その女と一緒にいて・・・それが浮気だったなら・・・私はどうするんだろう。
知りたいけど知りたくない彼の素顔・・・
でも行かずにはいられなかった。
自然と歩くのが速くなり、息が切れてくる。
そして、とうとう走り出した私は校舎の裏にあるグランドの手前で足を止めた。
キョロキョロと辺りを見渡して彼の姿を探す。
するとグランドから離れた場所にジークの後姿が見えて、ドキっとした。
確かに、あの派手な女の子と一緒にいる。
ジーク・・・ほんとに浮気なんてしてるの・・・?
ドキドキしながら、ゆっくりと近づいて行く。
不思議な事に帰ってしまおうとか思えなかった。
だって今日は学校が終ったら一緒に映画を観に行く約束をしているし、ジークは今まで約束を破った事がないから。
他の子と浮気するはずなんてないんだから・・・
そう思いながら二人に近づいて行った。
「だから、そんな話なら聞きたくないんだけど」
最初に聞こえてきた言葉がそれ。
何やら不機嫌そうな彼の声。
私はそんな声を殆ど聞いた事がない。
ジークは私に背を向けていて、まるで気づいていない様子だ。
その転校生の子もジークの陰になっていて私には気づいていない。
だからなのか甘ったるい声で彼に話し掛けている。
(ちょっと感じ悪い)
「どうして? いいじゃない、ちょっと付き合ってくれても」
(な!何ですって?)
その会話にドキっとして足を止めた。
この場面は私にとったら嬉しくない状況だ。
だけどジークは面倒そうに頭をかきながら溜息をついている。
「あなた、恋人がいるみたいだけど皆がどうせ本気じゃないって言ってたわよ?」
「あっそ。だから、あんたとも付き合えって?」
「そうじゃないけど・・・本気じゃない子なんだし少しくらい他の子と付き合ってもいいんじゃないかしら」
「へぇ、そんな自信あるんだ。ま、でも悪いけど俺は、あんたに興味ないし」
(何だか私は聞きたくない会話・・・それに私のこと本気じゃないって皆が言ってるなんて・・・知らなかった)
その事実に、だんだん落ち込んできたが、ジークはどうやら断っているようだ。
それだけは、ちょっとホっとした。
「もういい? 俺、彼女と約束してんだ。あんたとくだらない話をしてる暇ないんだよね」
「ちょ、ちょっと・・・!そんな言い方って―」
それを聞いて私は慌てて踵を翻し、その場から走り出した。
そして気づけば駐車場まで来ていて、そのまま足を緩めジークの車がある場所まで向う。
心臓がバクバクいって息苦しいのと、それでもジークがキッパリと彼女の告白を断ってくれたのが嬉しくて涙が浮かぶ。
皆が何て言ってようが構わない。
ジークが他の人に冷たくたって何だっていい。
ジークの車に寄りかかりながら、私は他の生徒が帰って行くのをボーっと見ていた。
暫くすると生徒が校舎の方から次々に歩いて来る中、私は人ごみの中に彼を見つけた。
ジークもまた私を見つけて、いつもの優しい笑顔を見せて走ってくる。
「、ここにいたのか? 教室に探しに行ったらいないから焦ったよ」
そう言ってジークは私の前に来るとクシャっと頭を撫でてくれる。
私はそれだけで胸の奥がギュっとなる。
少し息が荒いのは、きっとあちこち探し回ってくれたからだって、すぐに分かるから。
他の子から告白されても、すぐに私を探しに走り回ってくれた事実に喉の奥が痛くなった。
「? どうした・・・? 泣いてんのか?」
「ううん・・・泣いてない・・・。ちょっとジークに会えて嬉しいだけ・・・」
「何だよ。今朝も会っただろ? 変な奴だな」
ジークはそう言って苦笑すると私をそっと抱き寄せた。
先ほど見たような冷たい彼は、もういなくて、そこにはいつもの優しい彼だけがいる。
「ねぇ、ジーク・・・」
「んー?」
「どうして私に優しいの・・・?」
「・・・は? どうしたんだ? ほんとおかしいぞ?」
ジークは少し驚いたように私を離し、顔を覗き込んでくる。
そんな彼を見上げて私はちょっとだけ笑顔を見せた。
「友達に言われたの。よく、あんな怖い人と付き合ってるわねって」
「あー何だ。そういうことか・・・・・」
(あ・・・ちょっと眉が下がった・・・。これってジークは落ち込んだ時とかに、よくする表情だ)
「私は・・・そんなジーク見た事ないから分からないんだけど」
「そりゃ・・・お前に冷たくした覚えはないからな」
「・・・何で? じゃあ、やっぱり他の人には冷たくしてるの?」
「・・・・・・」
(あ・・・溜息ついてる・・・。呆れられちゃったかな・・・)
そんな事を思いながらジークを見つめていると、彼はちょっとだけ困ったように微笑んで私の額に軽くキスをした。
「あいにく俺は・・・大切な奴にしか優しく出来ないんだよ」
「え?」
「だから他の奴なんて、どうでもいいってこと。OK?」
少し照れくさそうに、それでも真剣な顔で、そう言ってくれた彼の言葉に私は泣きそうになってしまった。
「他の奴に・・・何言われても気にすんな」
「うん・・・ごめんね」
ちょっと不器用で照れ屋な彼が遠まわしに言ってくれた言葉。
それだけで、さっき芽生えた小さな不安がかき消されていく。
「ほら、早く行くぞ? 映画見るんだろ?」
「・・・うん。甘いラブストーリーね!」
「えぇー? アクションにしようって。俺、恋愛ものって苦手なんだよ」
「ダーメ!ラブストーリーがいいの」
そう言ってジークの腕に自分の腕を絡めると、彼は苦笑しながら車のドアを開けてくれた。
「はいはい。分かったよ・・・。その甘々のを見ればいいんだろ?」
「そうよ?」
「ったく・・・途中で俺が寝ても怒るなよ?」
彼はそう言いながら唇にチュっと軽いキスをくれる。
ほら・・・何だかんだ言ってもジークは私に優しい。
他の人に冷たくたって・・・誰に分かってもらえなくたって・・・私にだけ本当の彼を見せてくれるのは幸せ。
Gentle reason only
to her of him
それは私しか知らない彼の熱い想いだった
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自分にだけ特別に優しい男って女は弱いものですよね。
そんな会話を夕べしたので、、ふと、一人にだけ優しい男を書いてみたくなりまして(笑)
イメージ的には、やっぱジークかなぁ?
今度はジョシュでも書いてみたいけど・・・ジョシュって皆に優しいイメージもあるし(笑)
このイメージはブレンダンでも書けそうかなぁv
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