好きな人を通して見えてくるもの
それは自分自身。
大切な人が出来た時、気づいていなかった自分を知ることがある。


良いところも 悪いところも 強いところも 弱いところも




















E s s e n c e














夜、家の倉庫を片付け終った俺は家に戻り、テレビをつけた。
冷蔵庫からビールを出し、ソファに座ってそれを飲む。
煙草に火をつけ煙を吐き出しながら、ふと時計に目をやれば夜の11時になるとこ。


はもう家に帰っただろうか。


今日、彼女は友達に誘われ出かけてるはずだ。
今朝、会った時、"リリー達に友達のライヴ誘われてるの。行ってもいい?"なんて聞かれた。
正直、心配で本当なら行って欲しくはなかったが、あまり束縛しても可愛そうだし、
彼女だってたまには友達と遊びたいだろうと、10時までに帰るなら、という条件でOKした。
(まあ父親みたいって笑われたけど)
ちょっと前の自分なら考えられない。
でもと出会って自分にも、こんな優しい感情があるんだって初めて知った。


前の俺は、どこか孤独で誰とも心を開いて接してはいなかったし、どうでもイイ奴ばかりだと思っていた。
そんな俺をただ一人信じて好きになってくれた彼女・・・
だけ傍にいてくれればいい。




「電話でもしてみるか・・・」




ちゃんと無事に家についたら電話しろよって言っておいたが、10時になってもかかってこない。
でも、あまりうるさくしても・・・とイライラしながらも電話が鳴るのを待っていた。


まあ・・・イライラしすぎて倉庫の掃除までしてしまったけど。(しかもちゃんとコードレスフォンは持って)


もう11時・・・一時間も過ぎれば電話してもいいだろう。
もしかしたら忘れてるだけかもしれないし・・・



そう思ってコードレスフォンを手にした。
その時、突然電話が鳴り出し、ドキっとする。





「ビックリしたぁ・・・」





かけようと思った時にかかってくる電話は少し心臓に悪いと思いつつ、からかも、とすぐに出てみた。








「Hello?」
『・・・・・・ク・・・?』
「Hello? よく聞こえない・・・。か?」




何だかくぐもった声と後ろでする車の音に俺は耳を済ませた。





『ジーク・・・私・・・』
?! どうした? 今、外からか?」
『ぅん・・・あの・・・ね・・・』























電話の後、俺はすぐに家を出て車に飛び乗った。
エンジンをかけ思い切り吹かしてからグっとアクセルを踏む。
気ばかりが焦って、かなりスピードを出し、夜の道をかっ飛ばした。




(ったく!だから行かせるのは心配だったんだ・・・!)




そう思いながら煙草を咥え、少し落ち着こうと火をつけた。


彼女の話はこうだった。
リリー達に誘われライヴに行った。
だが終っても帰してもらえず、そのバンドのメンバー主催の打ち上げパーティにまで連れていかれ、
酒を飲まされたあげく、友達達は気に入ったメンバーとどこかへ消え、もギターの奴に無理やり家に連れて行かれそうになり必死に逃げたそうだ。
だが酔ってるし、この時間ではバスも何もなく歩いて帰ろうとしたが途中で動けなくなり、俺に電話をしてきたらしい。


それを聞いて俺はそのギターをぶん殴ってやりたくなったが、まずはを迎えに行かないと、とアクセルを更に踏んだ。
彼女がいるのは、その打ち上げパーティをしたパブの近くの公衆電話。
そのパブは知っていたので俺は車を飛ばして、そこへ向った。


10分ほども走ると、そのパブの看板がはるか向こうに見えて、手前に公衆電話が見える。
そこへ車を寄せ、止めてすぐに外へ飛び出した。





!おい、、どこだよ?!」





公衆電話の前には誰もいなくて俺は焦りながら彼女を呼んだ。
すると公衆電話の後ろから女の子の足らしきものが見えてドキっとする。





?!」





すぐに後ろを覗けば、何と彼女は電話の後ろにもたれかかるようにして座り込んでいた。





「おい、!大丈夫か?」





ピクリともしない彼女に俺の鼓動がだんだん早くなっていく。
だが、そっと手で頬に触れるとかなり火照ってる。
しかも小さな寝息が聞こえて俺は一気に緊張が取れるのを感じた。





「な・・・何だよ・・・寝ちゃってんのか・・・?」





こんな時間にこんな場所で女の子一人が眠ってしまうなんて無用心もいいところだ。
まあ、だいぶ飲まされたようだし疲れて眠ってしまったんだろう。





「はぁ・・・お前のせいで寿命が縮んだよ・・・」




眠っているの鼻を指で突付き、そう呟く。
そして、そっと彼女を抱き上げ、車の助手席へと乗せると自分も運転席へ乗ってドアを閉める。
エンジンをかけ家へ帰ろうとハンドルを取ろうとしたが、ふと隣で眠るを見てから前のパブの看板へと目を向けた。






「借りは返さないとな・・・」






そう呟いて俺は思い切りアクセルを踏んだ。































「ん・・・」





何だろう・・・凄く暖かい・・・それにフワフワする。
さっきまで冷たくて固い場所にいたのに・・・ここはどこ・・・?
そう思いながらゆっくり目を開けると、何故か夜空が見えた。



ああ・・・まだ私、外にいる・・・?




ジークに電話した後、ずっと見上げていた夜空と同じだと思った。
だが何だか体が揺れるし暖かい気がして視線を彷徨わせると―








「起きたか?」


「―――っ!」








聞き覚えのある声と、ぼわんとした視界の中には大好きなジークの顔・・・
そこで一気に覚醒した。






「わわ・・・ジーク?!」
「おっと!あまり暴れるなって。落っこちるぞ?」





ジークは苦笑しながら、そう言った。
見てみれば私は彼の腕に抱き上げられ、目の前にはジークの家のドア。





「今、帰ってきたんだ。とりあえず俺んちに連れて帰ってきたけど・・・」





ジークはそう言うとドアを開け中へ入った。
そして私をそぉっとソファの上に寝かせてくれる。







「あ、あのごめ―」
「しぃ。いいから少し横になってろよ・・・まだ酔ってんだろ?」
「う、うん・・・頭がフラフラする・・・」
「ほら、横になって」





ジークはちょっと笑うと少し起き上がった私を再び寝かせてくれた。





「こんな酔ってるお前、家に送るのも何だし・・・さ」
「あ・・・うん・・・家にはりリーの家に泊まるって事にしてあるの・・・」
「え? 何だよ、じゃあ・・・外泊する気だったのか?」




ジークが怖い顔をして聞いてきたから私は慌てて首を振った。





「ち、違う・・・ほんとは・・・ライヴ終ったらジークの家に来ようと思ってたの・・・」
「え・・・?」
「明日は学校も休みだし・・・」




私はそう言って少しだけ目を伏せた。
すると頭にポンと手が乗せられ、見上げるとジークの優しい笑顔がある。





「そっか・・・なら許す。でも・・・もう二度とライヴになんて行かせないからな?」
「う、うん・・・ごめんね・・・」
「ったく・・・もし、あの男に攫われてたらどうするつもりだったんだ?」





ジークは怖い顔で私の鼻を指で突付いた。
凄く心配してくれたんだと言うことが分かり、自分のした事を後悔した。
どんなに誘われてもライヴが終ってすぐに帰れば良かったんだ・・・
そう思ってジークを見た、だが、ふと彼の唇の端が切れているのに気づき、そっと手を伸ばした。






「こ、この怪我・・・どうしたの? 殴られたの?!」
「え? ああ、これは・・・まあ。でも俺が勝ったけど」
「は?」
「あの男、まだパブで飲んでたからさ。しかも、すでに他の女、口説いてたから、その女の前で殴ってやったんだ」
「な!何?! もしかしてジーク、あのギターの人を・・・」
「ああ、あのバンド、俺も知ってるしギターの奴も前に会った事あるからさ」






ジークはそう言って軽く肩を竦めた。
だけど私は驚いて何も言葉が出てこない。


私の為に、あの人を殴ってきてくれたんだと思うと喉の奥が痛くなった。







「泣くなよ・・・」
「だ、だって・・・ごめんね・・・・・?」
「もう、いいよ。が無事だったからさ・・・。でももう行かせないけどな」
「ぅん・・・行かない・・・お酒も飲まない・・・」






そう言いながらギュっとジークに抱きついた。
すると、ジークは額に優しくキスをし、その後に唇にもチュっとキスをしてくれる。






「今までの俺は・・・何も怖いものはなかったけど・・・今はを失う事だけが怖いよ・・・」


「ジーク・・・」


「こんな弱い俺って情けないよな・・・」






そう呟くジークに思い切り首を振った。
するとジークは優しく微笑み―








といると優しい気持ちになるんだよな・・・こんな面が自分にもあるって初めて知ったよ・・・」







照れくさそうに、そう言ってくれたジークに私はそっとキスをした。













ジークの本質は・・・私だけが知ってる。





























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『Gentle reason only to her of him』の続編ですかねv
彼女一人に優しいジーク!
昨日、「パラサイト」を見た方が多いようなので、つい書いてしまいました(笑)
やっぱジークジョシュはカッコいいですよねーv


皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…


【C-MOON...管理人:HANAZO】