子供の頃、台風が大好きだった。
大人たちは大慌てなんだけど子供の私は学校も休みになるし何だか凄く得した気分で、
まるで楽しいものでもやってくるかのようにワクワクしていた。
だけど大人になってからは、あの頃のワクワクした気持ちが薄らいで――

















Rain Storm
















ガタガタと音を立てて雨風が窓を叩く。
その音にすらビクっとなって、つい窓の方を確認してしまう。





「もう・・・脅かさないでよ・・・」




独り言を呟きながら私はリモコンでテレビの音を大きくした。
別に面白い番組というワケではなかったが何か音がないと怖くて仕方がない。
それでなくても最近、学校内で変な事ばかり続いていて精神的にも不安になっているのだ。





「こんな日に留守番なんて最悪・・・」





先ほど淹れたホットチョコレートを口に運びつつ、軽く息をついた。
今日は金曜日。
両親は前から予定していた旅行に昨日から出かけてしまった。
おかげで、こんな心細い夜に一人で過ごす事になっている。






「はぁ・・・やっぱりジークに来て貰えば良かったかなぁ・・・」





あんな強がり言うんじゃなかった。




"俺、家に行ってやろうか?"



学校が終わり、さあ帰ろうとして外に出たら、この大雨。
それで少し不安になった私に彼はそう言ってくれた。
私が極度の怖がりなのを知っているから彼なりに心配してくれたらしい。
それに、そう・・・最近は本当に学校で不気味な事ばかり続いていたので、それも心配なんだろう。
だけどジークは今日、大事な補習があった。
それをサボれば成績にかなり響くと言われ、そうなれば、また卒業が危なくなる。
だから私は、「大丈夫!帰ってしっかり戸締りするから」と断ってしまった。
ジークは、それでも心配そうにしていたが、私が無理やり補習に行かせたのだ。
本当はジークを一人、学校に残すのも心配だったんだけど・・・


ここのところ学校では変な空気が流れている。
今まで明るかった友人も、どこか物静かになり、ちょっと違和感を覚えた。
先生たちも何となく様子がおかしい。
ジミだった先生が急に派手になったり、優しかった先生が急に冷たくなったり・・・
ただ、それだけなのだが何となく不気味なものを感じていた。






「はぁ・・・ジーク、もう家に帰ったかな・・・」






ふと彼に会いたくなり、カップをテーブルに置くとカーテンを少しだけ開けて外を見た。
雨はまだ強く振っていて、あまり遠くが見えないくらいだ。
この雨では今からジークの家に行くのも無理だろう。






「あれ・・・?」





カーテンを閉めようとした時、家の門の外に人影が見えた気がして、ふと手を止める。


まさか・・・ね。
こんな大雨で風も凄いのに人がいるはずない・・・




そう思いながらも何となく気になり、窓に顔を近づけ目を凝らしてみた。
すると突然、雷が光り、稲光の中に確かに人影を見た気がしてバっと窓を離れる。





「今の・・・校長先生・・・とウィリス監督・・・?」





一瞬だったが稲光の中、門の前に立って、こっちを伺っているのは高校の校長とアメフト部の監督だった気がした。





「な・・・何で、あの二人が・・・私の家に・・・」





まさか!きっと見間違いだ。
学校の事を考えていたから、そんな風に見えただけ・・・
そうよ。きっと大きな木の影を人に見間違えたんだわ。





何とかそう思い込みながら、それでも気になり恐る恐る窓に近づく。
そしてカーテンをめくろうとした、その時―










キンコーーン・・・ドンドン!







「きゃ!」






いきなり、チャイムの音とドアを激しく叩く音に私は飛び上がった。


やっぱり、あの二人が?! 


そう思って急いで窓から離れ、エントランスの方を覗いてみる。







ドンドン!







「ひゃ・・・っ」





またしてもドアを叩く音に私はビクっとなってリビングに逃げようとした。
だがすぐに、





!いるんだろ? 俺だよ!」


「ジ、ジーク?!」





まさに会いたいと思っていたジークの声に私はすぐに走って行き、ドアを開けた。






!良かった・・・ちゃんと家にいたか・・・」
「ジーク!こんな濡れて・・・あ、早く入って・・・っ」





大雨の中、びしょ濡れのジークに驚いて私はすぐに彼の手を引っ張り、中へと入れた。
その際に外をザっと見渡したが、先ほど見た人影は今は影も形もない。


やっぱり見間違いだったんだ・・・


少しホっとしながらドアを閉め、しっかり鍵をかけると、タオルを持ってジークの濡れた服を拭いてあげた。





「サンキュ・・・はぁ・・・凄い雨だな・・・。こうなりゃ台風と一緒だ・・・」




ジークはそう言いながら私の額にチュっとキスをすると、急に真剣な顔になった。





「何か・・・変なことはなかったか?」
「え? 別に・・・。そ、それよりジーク、どうして・・・」
「いや・・・やっぱり心配だったからさ。補習終ってから様子見に来たんだ。車、止めて玄関まで走ってくるまでに、このザマ」





そう言って肩を竦めて笑ったが、ジークの様子が少しおかしい事に気づいた。
どこか不安げに窓の方を気にしている。





「ジーク・・・学校で・・・何かあった・・・?」
「え?」





私がそう聞くとジークはハっとしたような顔で私を見つめている。
だがすぐに息をつくと、そのままソファに座った。





「いや実はさ・・・。補習受けて帰ろうとしたらバーク先生以外に校長が教室に来たんだ・・・」
「え? 校長が?」
「ああ、それに・・・ウィリス監督もな・・・」
「な・・・何で? 補習に全然、関係ないじゃない・・・」
「だろ? 俺も変だなって思って隙を見て逃げてきたんだ。それにバーク先生がやたらの事を聞いてくるし心配になって・・・」
「え? 私のことって・・・何?」
「だから・・・いつから付き合ってるんだ、とか、どんな子なのってさ。それも、おかしいだろ?」
「そう・・・ね。私、バーク先生とは、そんなに話した事ないし・・・」






そう言って首を傾げると、ジークは私の肩を抱き寄せ、頬にキスをしてくれた。





「だから、ちょっと不安になって様子見に来た。それに一人じゃ心細いかなって思ってさ」
「あ、ありがと・・・。ほんとは・・・ちょっと心細かったの・・・」





そう言って彼を見上げると、いつもの優しい瞳と目が合う。




「やっぱりな。そうだと思ったよ」
「な、何よ・・・」
「怖いなら素直に俺に言えばいいのに」
「だ、だってジークは補習があったから―」
「まあ・・・気を使ってくれたんだろ? 分かってるよ」





ジークはそう言って微笑むと、少し顔を屈めて私の唇を塞いだ。
たったそれだけで一気に全身が熱くなって胸の奥がドキドキしてくる。







「今夜は一緒にいるからさ・・・」
「うん・・・」






ギュっと抱きしめてくれるジークの胸に顔を埋め、そこでやっと安心するのを感じた。


やっぱりジークといると、こんなにもホっとする。
彼はいつも、こうして私が不安な時には傍にいてくれるから、ただそれが嬉しい。


でも・・・やっぱりさっきのは校長たちだったのかな・・・と、ふとジークの話を聞いて思い出した。
そう考えると何か胸の奥に不安が押し寄せてきて、私はギュっとジークの服を掴んだ。





「どうした?」
「・・・ううん・・・何でもない・・・。ずっと、こうして一緒にいたいだけ」
「いるよ? 俺はずっとの傍にだけ」
「・・・ありがとう・・・」





暖かい彼の体温に包まれていると小さな不安も消し飛ぶ。


たまには、こんな大雨もいいかもしれない。
ジークと一緒なら何も怖くない。













そう思った瞬間、雷が近くで鳴ったのと同時にパっと部屋の電気が消えた。






「キャ!ジ、ジーク!」
「わ・・・、おい・・・っ」





あまりに驚いて私はジークに思い切り抱きついた。
その勢いで二人はソファの下に落下する事になる。






ドサ!




「キャっ」
「ぃて!」






思い切り背中を打って私は顔を顰めたが、隣にいるジークが心配になり、何とか体を起こした。





「だ、大丈夫? ジーク・・・」
「ぃてて・・・何とかね・・・」





ジークも無事だったようで、苦笑しながら軽く手を上げた。
真っ暗なので、かすかにしか見えず、私はその手をギュっと握って手探りで彼の位置を探す。






「おい、くすぐったいってば」
「あ、ご、ごめん・・・」
「ったく・・・停電で、こんな驚かれると思わなかったよ」
「だ、だって・・・ひゃ!」






掴んでいた手を逆に引っ張られ、私は気づけば再び床の上に横になっていた。






「な、何? ジーク・・・」
「せっかく真っ暗だからさ」
「・・・へ?」





ジークの声が何だか上から聞こえ、そこで私の体に彼の体重がかかるのを感じ、顔が熱くなった。





「ちょ・・・ジーク? 何して・・・」





そう言いかけた時、何か暖かいものが額に触れてドキっとした。
そして、その温もりはすぐに頬、唇のすぐ端へと下りてくる。





「ジーク・・・?」


「暗闇に好きな子と二人きりなんて、俺の理性がもたないんだよな」


「――っ」





その言葉の意味が分かった時には、すでに唇を塞がれ、私は何も抵抗出来ないまま彼からの深いキスを受け止めた。




外では雷と雨の音がさっきよりも強くなっている。



その時、さっきの不安がチラっと頭をかすめたが、それもすぐジークによって遮断されることになった。









今だけは何もかも忘れて彼の体温だけ感じていたい。



























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本日、台風なので、そんなネタを書こうと思ったのに・・・撃沈(TДT)ノ
でも不安な時に好きな人が駆けつけてくれたら嬉しいし感激ですよねー(≧m≦)
ちょこっと映画のネタも入れつつ書いてると(意味なし&オチなし)(待て)
ふと連載を考えていたのを思い出した。(忘れてたんかっ)Goddam....!!


皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…

【C-MOON...管理人:HANAZO】