柔らかな風が吹く頃・・・・・・・・・・・・・・・
待ちに待ってた"日"がやってきた。
僕に天使が舞い降りた...01
「え?ほんと?!」
『ええ、大丈夫?』
「ぜ、全然、大丈夫だよ!ってか是非、行きたい!」
僕は受話器を握りしめ、思い切り声を張り上げた。
すると受話器の向こうで思い切り溜息をつく声が聞こえてくる。
『・・・ちょっとオーランド・・・もう少し声のトーン落として話してちょうだい』
「ご、ごめん、だって・・・」
『とにかく、ちゃん明後日には一度そっちに行くから一緒に部屋を探してあげてね?』
「うん、分かってる!ちゃんと安全なとこ探してあげるよ!あ、えっと電車って何時だったっけ?」
『午後1時着よ?あ、それでちゃん携帯を買って貰ったみたいだから番号教えておくわね?』
母さんはそう言って携帯の番号を教えてくれた。
「サンキュ!じゃあ俺に全て任せてよ!」
『まぁ・・・ちょっと心配だけど・・・』
「ぬっ!何が心配なのさ!」
『色々よ。あんた、ちゃんに変なこと教えないのよ?ちゃんと劇団でも出来るだけ面倒見てあげて?』
「それは任せてよ!そこだけは信用していいよ?」
僕は自信満々、胸を張って言い切った!
『はぁ・・・・・・』
「・・・・・・・・」
(ぬぅ・・・・・失敬なママンだなっ!)
『じゃあ、本当に頼むわね?ちゃんの両親も一緒に行くみたいだから失礼のないようにね?』
「OK!じゃあの両親にこっちのアパートメント紹介すればいい?」
『ああ、それが・・・今凄く仕事が忙しいみたいで・・・。出来ればあんたがちゃんに教えてあげて』
「え?じゃあ・・・ご両親は・・・?」
『ロンドンまでついていって劇団の入団手続きを済ませたら帰らないといけないんですって』
「ああ、そっかぁ・・・。じゃあ一人じゃ危ないよね。OK、俺がビシっとエスコートするから大丈夫だよっ」
そう言って僕は不安そうな母さんを宥めつつ電話を切った。
「ふふふ・・・やった!やっとに会えるよ!」
この日をどれだけ待ち望んでいたか!
が帰って行ったあの日から一ヶ月!
僕はずっと毎日カレンダーを見ながらが来るのを待っていたんだ。
そして劇団の入団式まで残り10日!となった時、先ほどの母さんからの電話。
"ちゃんがそっちで暮らす部屋を探しに行くから、あんた一緒に行ってあげてくれる?"
これには飛び上がったね、僕は!
ほんとはもっと早く探しに来る予定がの両親の仕事の都合がつかなくて延びてしまっていたらしい。
それでやっと少しの時間を作り、明後日とロンドンに出て来るそうだ。
そっか、でも両親は仕事ですぐ戻らないといけないからって僕に頼んできたんだな!
僕、頼られてるんだ〜の両親に♪(単純)
よぉし!こうなったらのアパートメントを早速ピックアップしてあげなければっ!
思い立ったら吉日。
僕は本屋で物件探しの雑誌を買いに行く為、家を飛び出したのだった。
その笑顔を見た時、僕は本気で抱きしめたくなった。
「オーリー!」
「!」
その少女はホームに降り立ち、眩しいほどの笑顔を見せてくれた。
あの一時の別れの日以来、どんなけこの瞬間を心待ちにしてたことか!
久々に見たはちっとも変わらず可愛かった。
ついつい条件反射からか、両手を広げてしまいそうになったが、
の後ろから優しそうな女性と男性が歩いて来るのが見えて慌てて手を引っ込めた(!)
「やあ、初めまして。君がオーランドくん?」
「あ、ど、どうも!初めまして。オーランドです」 (カ、カッコいいパパだな、おい!)
「君のお母さんからよく話は聞いてるよ。あ、それとからもね」
「え?ほ、ほんとですか?」 (何て話したのかな?嬉)
「この前は本当にありがとう。娘も凄く楽しかったって言ってました」
「い、いえ、そんな・・・僕の方こそ・・・」 (わぁ、奇麗なママさんだなぁ)
僕はの両親と挨拶を終えるとやっとの方に向き直った。
「久し振り!元気だった?」
「はい!オーリーは?」
「俺はいつも元気だよ?」
「なら良かったです」
はそう言ってニッコリ微笑んでくれた。
その笑顔は久々に見てもとびきり可愛くて僕の頬を緩ますには十分過ぎるほど。
だけどの両親の前でニヘラニヘラもしてられず、僕は何とか緩みそうな顔をビシっと引き締めた。
「あ、えっと・・・劇団に手続きに行くんですよね?」
「ああ、そうなんだ。ちょっと時間がなくてね。それが終わればすぐに引き返さないといけないんだが・・・」
「あ、母から聞いてます。の住めそうなアパートメントは数件、ピックアップしてあるんで後は僕が彼女について行きますよ」
「え・・・?そんな事までしてくれたのかい?」
パパは僕がすでに部屋まで探してある事に驚いたように目を見開いて、ママと顔を見合わせている。
「あ、あのお二人は忙しいと聞いたんで・・・。比較的、安全な地域とか僕は住んでるから分かりますし」
「ああ、そうか。いや助かるよ・・・。ありがとう、オーランドくん」
「い、いえ・・・そんな・・・」
パパに、お礼を言われ僕は少々照れくさかったけど凄く嬉しかった。
(はぁ、いいなぁ・・・父親って、こんな感じなのかな・・・?)
僕は父がいない。
幼い頃に亡くなってしまったからだ。
いや・・・血は繋がっていない父さんだったんだけど・・・
そう・・・僕の家はちょと複雑なんだ。
「あ、じゃあ・・・シアターの方に行きましょうか」
僕はそう言って笑顔を見せるとタクシー乗り場へと歩いて行った。
「じゃあ・・・娘の事を頼みます」
「はい!任せて下さい!」
パパに、そう言われ僕は張り切って答えた。
入団の手続きも終わり、のご両親はトンボ帰りをしなきゃならないようで劇団の前からタクシーで駅まで行くようだ。
僕はタクシーが通るのを待ちながら早くと二人きりになりたいなぁv(オイコラ)なんて思っていた。
は何だかママさんにベッタリくっついていて少し寂しげに見えるんだけど。(やっぱ実際に親と離れるのは寂しいのかもなぁ)
「ああ、オーランドくん、これ部屋を借りる時の必要な物だ。君に渡しておくよ」
「あ、はい」
パパが差し出したのは部屋を借りる際に必要になる保証人用の書類やらだった。
僕はそれを受け取るとパパさんはの方をチラっと見た。
「オーランドくん」
「はい?」
「・・・あの子は・・・人一倍、寂しがり屋でね・・・。君さえ良ければ・・・時々はどこかへ遊びに連れ出してやってくれないかな?」
「え・・・?」
パパさんの言葉に僕はドキっとした。
そんなのは頼まれなくてもする気満々だったし、きっと時々なんてもんじゃなく、が寂しいなら毎日でも会いたいと思っている。
「君も忙しいとは思うんだが・・・」
「い、いえ!全然、そんな事ないですから!あの・・・の事はちゃんと僕が守りますっ」
何だか恋人のような事を言っているような気もしたが、パパさんはキョトンとした後、ぷっと噴出し僕の肩にポンと手を乗せた。
「いや、ありがとう。そう言ってくれると私としても安心だよ」
「いえ・・・僕ものこと心配ですし・・・なるべく側にいるようにします」
「そうかい?でも・・・いいのかな・・・。君も恋人くらいいるだろう?」
「いえ!全然いませんから!大丈夫ですよっ」
「そ、そうかい?」
張り切ってそう言うとパパさんは少し引き気味になりつつも笑顔を見せてくれる。
「君は本当にいい人だね・・・。が言ってた通りだ」
「え・・・?いや、そんな事は・・・・」
その言葉にちょっと照れくさくて頭をかいていると、パパさんは少しだけ空を見上げて息をついた。
「の言う通り・・・・冬夜によく似てる・・・」
「え・・・?トウヤ・・・?」
「の・・・兄だよ。聞いてないかい?」
「あ・・・」
パパさんにそう言われてドキっとした。
(そうだ・・・の兄貴は・・・・)
パパさんは優しく微笑んで僕を見た。
「国は違うのにね・・・。君の笑顔は冬夜の笑顔とダブって見えたよ」
「・・・僕も・・・会ってみたかったです」
「そうだね。きっと、いい友人になれただろうな。君と冬夜は何だかムードが似てるよ」
「そうなんですか・・・」
パパさんはちょっと悲しげな顔でを見ると、
「あの子は心の奥にまだ傷を持っている。それが心配でね・・・かと言って、いつまでも手元に置いておくわけにもいかない」
「・・・・・・・・・」
「この入団をキッカケに・・・少しでも元気になってくれる事を願うよ」
「・・・はい。僕も出来る限りのことはします」
「・・・ありがとう、オーランドくん」
パパさんは嬉しそうに微笑むと、ちょうど走って来たタクシーに手を上げている。
それに気づいたタクシーは僕らの目の前に静かに停車した。
「おい、行くぞ?」
パパさんはママさんにも声をかけての方に歩いて行く。
「じゃ・・・、頑張れよ?」
「はい。頑張ります。お父さんもお仕事頑張ってね?」
「ああ。何かあれば、すぐ電話してこい。ロンドンとカンタベリーなんて近いんだからな?」
「はい」
パパさんの言葉には笑顔で頷いている。
「、あまり無理しないでね?あなた、まだ体が・・・」
「おい、やめろ」
「そ、そうね・・・。じゃあ・・・オーランドくん、を宜しく頼みます」
「あ、は、はい」
ママさんは僕の手をギュっと握って少し涙目になっている。
そんな姿を見て僕まで胸が痛くなった。
「それじゃ・・・私達は、これで・・・」
二人はそう言ってを抱きしめるとタクシーに乗り込んだ。
僕は二人に軽く頭を下げてからを見れば、彼女の大きな瞳には涙が溢れている。
「お父さん、お母さん、気をつけてね!」
窓に向ってそう叫ぶと二人はに笑顔で手を振った。
その後、タクシーはゆっくりと走り出し少しすると見えなくなってしまった。
「・・・・・・大丈夫?」
「は、はい・・・ごめんなさい・・・」
はタクシーを見送っているとポロポロと泣き出してしまったのだ。
だけど僕が声をかけると慌てて手でゴシゴシ目を擦り出した。
「、いいよ・・・我慢しなくて。ずっと一緒だった親と離れるんだ。悲しいのは当たり前だよ」
「・・・オーリィ・・・」
僕がギュっと手を握ってあげると、は驚いたように顔を上げた。
そんな彼女に優しく微笑んであげる。
「でも今日からは俺がの側にいるからさ。寂しくないよ?」
「・・・・はいっ」
「よし!じゃあの住む部屋を見に行こうか!一応、何個か選んで連絡してあるからすぐに見て回れるよ?」
「わぁ、ほんとですか?」
「うん。が安心して住めるような部屋ばっかりだと思うから今から見に行こう?」
「はいっ」
(くぅーやっぱ可愛い・・・!)
涙で濡れた顔のままニッコリ微笑むはもうギュっとしたくなる。
僕もに微笑み返し手をしっかり繋ぐと、そこから二人で部屋探しへと出発した。
「どうですか?結構、いい部屋でしょう?」
「NO!ダメ!次!」
「えぇ〜〜〜っ。またですかぁ〜〜〜〜?」
僕の一言で不動産屋のおじさんはウンザリしたような顔をした。
「当たり前だよ!この部屋、確かに日当たりはいいけど、両隣が男ってのが気に入らない」
「そ、そんなこと言ったって仕方ないですよ、それは〜・・・」
「だめだよ!そんな左右に若い男が住んでる中にを置くことは出来ないからねっ」
僕はおじさんにビシっと指を差し、そう告げればはワタワタと慌て出す。
「あ、あのオーリィ・・・そんな怒らないで・・・」
「だってさぁ・・・」
僕はの困ったような顔を見てへニャっと眉を下げた。
さっきから部屋を見てまわる事6件。
全くいい物件がないんだからイライラもしてくる。
電話でちゃんと、"女の子の一人暮らしだから安全で清潔。
なおかつ劇団からも近くて男の入居者が少ないとこ"って言っておいたのに、
さっきから見せられる部屋は一階だったり(問題外)日当たりが悪かったり(キノコが生えそうだった)
壁が薄かったり(隣の女(男)が男(女)を連れこんだ時、にあんな声や、こんな声が聞こえたらどうすんだっ)
ちょっと遠かったり(夜、一人で歩かれたら凄い心配だ)とろくな部屋がない。
あげく、ここは近くて部屋も奇麗だし日当たりも最高。
なのに女性よりも男の入居者が多いときてる!(しかも両隣が20代の男!が襲われたらどうすんだ!)
僕が気に入らないのは仕方のない事だった。
「もぉ〜ほんと、ここが一番、条件に合ってると思うんですけどねぇ・・・」
「どこが?!俺は"男の入居者が少ない"ってのも条件に入れておいたはずだよ?」
「だけど、そんな危ない事は・・・」
「危ないよ!見てよ、ほら!こーーんな可愛い子が隣に住んでるって分かれば誰だって声をかけるだろう?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 (それはお前だろ、と言いたい)
はぁはぁと息を荒くしつつ、両手を広げれば、ものすっごい冷たい目で見られた。
「そんなに彼女が心配なら・・・・・・いっその事あなたが一緒に住んであげればいいんじゃないんですか・・・?」
「な・・・!何言ってんだよっ!か、か、彼女だなんてそんなんじゃ・・・!」
おじさんの言葉に僕は動揺して顔が真っ赤になりつつも反論した。
だが、おじさんは呆れたように溜息をつき、
「とにかく!これ以上、条件の合う物件はないですから。気に入らないなら他を当たってください」
と冷たく言い放ち、部屋を出て行ってしまった。
「あ、ちょ、ちょっと――――」
「オーリィ・・・」
「・・・・・・・・」
僕とはその場に置いてきぼりにされ、互いに顔を見合わせた。
心なしかの顔は不安そうだ。
「ご、ごめんね?こんなに条件の合う部屋がないとは思わなくて・・・その・・・」
「ううん・・・いいです。オーリー心配してくれてるんですよね?それに私も気に入りませんでした」
「そ、そう・・・?なら・・・いいけど・・・」
の優しい言葉に僕は胸が久々にキュンキュンと鳴り出した!
だが時計を見れば午後6時になるとこで、これから違う不動産屋をまわるわけにもいかない。
本当なら今日、部屋を契約すればすぐにでも入れるようにはなっていたのに。
一人暮らしで使う家具類や食器類はすでに両親が用意してくれてるようで部屋が決まったと言えば、すぐに送ってくれる事になってるそうだ。
「どうしよう・・・とりあえず疲れたろ?俺の家に行こうか・・・」
「でも・・・いいんですか・・・?オーリーも疲れたでしょ?今日ずっと私に付き合ってくれてたし・・・」
「ううん、全然平気だよ?あ、それともホテルとか取っちゃったのかな・・・?」
「はい。お父さんが二日ほどはホテル住まいになるだろうって言って予約だけはしてくれました」
「そっかぁ・・・。じゃあ・・・ホテルに戻る?」
僕は少し寂しくなったが仕方なく、そう尋ねてみた。
ほんとなら今日は前のようにが泊まってくれるかなと思って昨日一日かけて掃除もしておいたんだけどな・・・
そう思いつつを見れば彼女は何だかモジモジしながら俯いている。
「あの・・・?」
「え、えっと・・・私・・・オーリーと一緒がいいです・・・・」
「え?」
「ダ、ダメ・・・ですか?ダメならホテル行きます・・・・」
「・・・・・・!!」 (ズキューーーン!)
何かが僕のハートを撃ち抜いた!
少しウルウルした瞳で見上げてくるの可愛さといったら!!
ほんと理性がガラガラ崩れて、ふっくらほっペにカプっとしたくなったよ!(危)
「オ、オーリィ・・・?」
ハッ!!
見ればは僕が黙ったままだからか、泣きそうな顔になっていた!
それを見て僕は慌てて首を振り、の手をギュっと握った。
「ダ、ダメなもんかっ。を一人でホテルに泊めるなんて心配だよっ」
ムキになってそう言えばは嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔に更にズキュンバキュン!と撃ち抜かれつつ(!)僕もニッコリ微笑み返した。
「今日は俺の家に行こう?ちゃんと前の部屋はあのまま開けてあるからさ」
「はい!行きますっ」
(くぁーーー!か、可愛いっ)
「じゃ、じゃあ、帰ろうか。歩き回って疲れたろ?」
「はい。オーリーと帰ります」
ニコニコしながら頷くが可愛くて勝手に手が彼女の方に伸びていくのを引っ込めるのに苦労した(!)
今までのようにスキンシップ炸裂させたらきっとは真っ赤になってしまう。
極力、我慢しよう!と誓っていたのだ。 (この僕には拷問に等しいけど(!))
そんな事を思いつつ、ニコニコと僕を見上げてくるにニヤケつつ、心の中で葛藤をしていると―――
「お客さぁーーん・・・・早く出てくれないと困るんだけどねぇ〜?」
外で待っていた不動産屋のオヤジがウンザリした声で顔を出した・・・。
『えぇ?そ、それでちゃんを家に連れて来たってわけ?!』
「うん。そうだよ?」
『ま、全くあんたって子は!!何考えてるの!ちゃんの部屋はどうするの?!』
母さんは何だか一人エキサイトしてものすっごい大きな声で怒鳴られた。
だが僕にだって言い分はある。
あんな部屋にを一人暮らしさせるわけはいかないのだっ!
そう、これは僕の使命なんだ。
の両親に、の事を頼まれたのはこの僕なのだから―――!
(頑張れ、オーランド!この鬼ママを説得するのだ!!)
そう心に決心して、僕はんっんっと咳払いをした。
「あのさ、母さん。ロンドンというとこはカンタベリーよりももっと都会で危ない場所なんだよ。
そんな中でが安全に暮らせる部屋を探すって言うのは本当に大変な事なんだ。
変なとこ借りてに何かあったら困るだろ?僕はが安心して暮らせるようにって完壁な条件を出したのに、
今日見た部屋は全てその条件を満たしてなかった。だから連れて帰ってきたんだ。それの何がどういけないのかな?」
キッパリと、そう言って少しスッキリした。
だが受話器の向こうからは特大の溜息が聞こえてくる。
力説した僕としてはかなり感じ悪いぞ、ママン。
『・・・そんな、もっともらしいこと言って・・・。ほんとはどうせあんたがちゃんと一緒にいたかっただけなんじゃないの?』
「――なっ!!」
(・・・何で分かった?! )(オイ)
「ち、違うよ!だから俺は・・・」
『分かったわ?部屋が気に入らないって事はね?でもホテルは今回予約してあるのにわざわざ自分の家に連れ帰ったって事は?』
「そ、それは・・・さ・・・。だから・・・が俺と一緒がいいって言うから・・・寂しいのかと思って・・・」
『え・・・?ちゃんが?そう言ったの?』
「ぅん・・・。俺だってホテルに連れて行こうと思ったんだ。でも・・・泣きそうな顔するからさ・・・」
僕はチラっとキッチンの方に目を向けて軽くソファに凭れた。
は今、僕の為に紅茶を淹れると言って、張り切って紅茶葉から淹れてくれている。
だんだん、いい香りがしてきた。
『そう・・・分かったわ?』
「え?」
(何が?)
ボーっとしていると、突然、母さんの声がして僕はドキっとした。
まさか、を今からホテルに連れて行けなんて鬼のような事を言うはずじゃないだろうな?
いや、母さんは間違いなく鬼だけど(!)
「分かったって・・・何だよ・・・?」
僕は少し警戒しつつ、そう尋ねてみた。
すると母さんは軽く息をついて、
『私からちゃんのご両親に、そう言っておくわ?』
「え?」
『ちゃん本人が、そう言ってるんだから仕方ないし。それにご両親、ほんとはオーランドに遠慮してホテルをとったのよ』
「え、遠慮って・・・?何が?」
『だから・・・本当は前のようにちゃんの事をあんたに預けたかったの。
だけどまた頼むのも悪いからって言って今回はホテルをとったのよ?』
「な・・・そ、そうだったんだ・・・。そんなの全然、気にしなくてもいいのに・・・・」
『私もそう言ったのよ。知らない街で暮らす事になるんだから不安になるのは当たり前だし・・・
それにあんたには懐いてるようだったから、今回もオーランドのとこに泊めさせれば?って。
だけど二人はオーランドくんにも自分の生活があるんだから悪いって言うからね。それじゃ案内だけでもさせますって言ったの』
「そう・・・そうだったんだ。俺は・・・ほんとが部屋が見つかるまで泊まってくれて構わないよ?
ってか、このまま一緒に住んでも構わないってほどの勢いさっ!」
『な、何バカなこと言ってるの?!全く、あんたって子は・・・』
「バ、バカな事じゃないよ!いい部屋が見つからないし、なら別に部屋だって開いてるんだからここに一緒に住んだっていいだろ?!」
『はぁ・・・そんなこと出来るわけないでしょ?家族でもないあんたと年頃のちゃんを一緒に住まわせるなんて・・・』
「な、何だよ!俺は別にに変なことしないよ?!それに俺にとってはは妹同然なんだ!凄く可愛いんだよっ」
母さんの言葉にカチンときてそう言い返せば一瞬、母さんも言葉を詰まらせている。
だが、暫くすると溜息をつくのが聞こえた。
『・・・分かったわ。それは私から一応、両親に伝えてみる。だけど・・・
反対したらちゃんとちゃんが住める部屋を探してあげなさいよ?分かった?』
「母さん・・・」
その母さんの言葉に僕は飛び上がりそうなほどに驚いた。
僕は例え話で言ったのに(いや半分本気だったが)まさか母さんがの両親にそう話してくれるなんて・・・っ
『全く・・・あんた、ちょっと変わったんじゃない?』
「え?」
母さんは苦笑混じりに呟いた。
「変わった・・・かな・・・?」
『変わったわよ。前なら自分の部屋に人を入れるの嫌がったじゃない?
私やサマンサがロンドンに行った時、泊めてって言ってもあんたは"嫌だ!ホテルに泊まれよ"なんて言っちゃって』
「あ、あれは・・・さ・・・」
『ま、オーランドがちゃんを凄く可愛がってるって事は分かったわ?その様子じゃ頼まなくてもちゃんの面倒はみそうだし』
「も、もちろんだよ!ちゃんと劇団でもなるべく側にいるっ」
張り切って、そう言えば受話器の向こうからクスクス笑い声が聞こえてくる。
『―――どう?聞こえた?うちのバカ息子の気持ち。 ――ああ、しっかり聞かせてもらったよ――』
「――――ッッ?!!」
(い、今、かすかに聞こえたこの声は・・・・・・・・?)
『オーランド?ちょっと代わるわね?』
「え?ちょ・・・・・」
(代わるって、誰に?!)
『やあ、オーランドくん。先ほどはどうも』
「!!!」
突然、受話器の向こうから聞こえてきたのは、なんとパパの声だった――!!
「あ、あの・・・え?!」
僕はすっかり動揺してしどろもどろになっていると、パパはクスクス笑っている。
『いや実はさっきからお邪魔していたんだよ。それでソニアが電話を途中からスピーカーに切り換えてくれてね?』
「んなっ何で・・・っ」
ス、スピーカーだって?!
じゃ、じゃあ・・・今までの僕の熱弁は全て聞かれてたってわけか?!(ガーンガーン・・・)
一気に顔が赤くなり、軽い眩暈を感じていると、パパは笑いながら口を開いた。
『いや、オーランドくんの心遣いには驚いたよ。本当にありがとう』
「え、い、いや、その・・・」
『確かにロンドンに一人娘を一人で暮らさせるってのも正直、凄く心配だったんだ』
「は、はあ・・・」
『でも、まさかオーランドくんにの事を頼むのも悪いと思ってね・・・』
「い、いえ、そんな事は全然・・・っ」
『ああ、さっき君の気持ちは聞かせてもらったよ。のこと凄く可愛がってくれてるようだね。ありがとう』
「・・・・・・・・・・」
(は、恥ずかしい・・・・・・・・!)
『そこで・・・その言葉に甘えさせてもらってもいいのかな?』
「へ?」
『君に・・・の事をお願いしたいんだが・・・・・・』
「はあ・・・僕に、ですか・・・・?」
(お願い・・・お願い?)
その言葉の意味が分からず、首を傾げた。
それって・・・部屋が見つかるまでここに泊めてやってくれって事かな?
そんなのお安い御用なんだけど!
「あ、あの・・・俺・・・いや僕なら全然、構いませんよ!を守るって約束しましたしっ」
もう、ここはアピールしかない!(何のだ)と思い、張り切ってそう言いきれば、パパは嬉しそうに、
『そうか!いや、それなら私も安心だよ。じゃあ・・・の荷物は君のフラットに送ってもいいかな?』
「はい、もちろんで――・・・ぇ?荷物・・・ですか?」
(何の?)
一瞬、意味が分からなくて思わず聞き返してしまった。
するとパパは驚くような事を口にした――――!
『ああ、家具類とか食器類は二人で暮らすには今あるのじゃ足りないだろう?多くない程度に送らせてもらうよ』
「はあ・・・・・・家具類と食器・・・・・・・・足りない・・・・・・です・・・・・・けど・・・・・・え?」
(今・・・・・・何つった?足りない・・・・・・・・・・・・二人で暮らすなら・・・・・・・・・・・・って・・・)
どえぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!!
ふ、二人で暮ら、暮らすっ?!!
僕はその言葉に卒倒しそうになった。
後は何をパパと話したのか、よく覚えていない。
ただ、「はい!はい!」と相づちを打ってただけだ。
気がついた時にはすでに電話を切り、ボーっとソファに座っていた。
そして、人の気配に顔を上げれば、の笑顔。
目の前に美味しそうな紅茶のカップが置かれていた。
「はい、オーリー。やっと淹れられました」
「・・・」
「・・・?どうしたんですか?ボーっとして・・・」
大きな瞳をクリクリさせながら僕の顔をキョトンと見ているに僕は胸の奥が熱くなるのを感じた。
これから目の前にいる子と一緒に住むんだ・・・
もうを一人にするとか心配しなくていいんだ・・・!
そうさ!なんて言ったって、ご両親からOKもらったんだから!!ラリルラ〜〜♪(心はすっかり同棲生活)
「ーーーーーっっ!!!!」
「ひゃっ!」
僕は思い切り目の前のに抱きついてギューーーっと抱きしめた。
僕の突然の行動には飛び上がって驚き、腕の中でジタバタしている。
「ど、どうしたんですか?オーリィ・・っ」
「!もう一人で暮らさなくていいよ?!」
「え?」
「パパがをここに置いてくれってさ!」
「・・・ぇっ!」
僕の言葉にの動きがピタっと止まり、モゾモゾと顔を動かし見上げてきた。
「ほんと・・・ですか・・・?」
「うん、ほんと!はそれでいい?」
笑顔で彼女の顔を覗き込めば、次第にの頬が綻んでくるのが分かった。
「で、でも・・・オーリー迷惑じゃ・・・・」
「そんな事あるはずないだろ?俺が一番、嬉しいよっ!は?!」
僕が張り切ってそう尋ねれば、は顔を赤く染めつつ恥ずかしそうに俯いた。
「あ、あの・・・・・・私も・・・・・・嬉しぃで・・・・・・ひゃ・・・っ」
その言葉を聞いた瞬間、僕は再びをギュっと抱きしめた。
「これで怖くないし寂しくないよ?」
「はい・・!」
「毎朝、一緒にご飯食べて劇団行こうね?」
「はい!」
(うぅ〜可愛い・・・・・・vv)
僕の言葉に素直に頷くが可愛くて、つい僕は調子に乗ってしまった。
「何なら・・・・・・毎晩、一緒に寝る・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ぇっ」
この一言にが茹蛸のように真っ赤になったのは言うまでもないだろ?
それさえも可愛くて、つい可愛いほっペにチュってしちゃったんだけどね。
それでは湯気が出そうなほど赤くなっちゃって、僕の理性がガラガラと崩壊しそうになったのは内緒の話。
柔らかな風が吹く春・・・・・・・・
僕の元に・・・一人の天使が舞い降りた――――
オーリィ、来日記念夢〜♪
これは10titleで書いたお話の続きです(この時はオーリィ来日決定記念)
シリーズでノンビリ気が向いた時にアップする予定ですので、
気楽にお付き合いくださいませ・・・・・・vラリルラ〜♪
日ごろの感謝を込めて…
C-MOON管理人HANAZO
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