「ふーたりーのためーせーかいはあるのぉ〜♪ルルララ〜〜♪」



今日は朝からご機嫌な僕。
だってとお出かけするからさー☆



〜用意できたぁ〜?」

「はいっ。出来ました」



とっとこ走って来たは嬉しそうな笑顔を見せながら可愛い姿を披露してくれた。
真っ白なワンピに僕が前にプレゼントした白のミュール。

(何て可愛いんだ!!!MyBaby!!!)(違ぅ)

思わずニヤケる僕を可愛く見上げてくる天使に更にデレェーっとなりながら、

「じゃ、行こっか♪」

と言って、その小さな手を繋ぐ。

その瞬間、僕の笑顔をかき消す音が聞こえてきた。




キンコーンキンコーン!




「「―――っ?」」


(う・・・・・・何だ・・・?)


「?オーリー誰か来ましたね」

「う、うん・・・・・・」


(げげ・・・・・・だ、誰だよ、こんな時に!!!)




僕はに笑顔を見せつつ、嫌な予感と共にドアの前に立った――――


















僕に天使が舞い降りた...02






「はぁ?!同棲?!」
「うん♪そーなんだー!いいだろぉーー」
「って、てか、お前それ淫行じゃないか?ぁん?!」
「う・・・・・・な!何てこと言うんだ、マット!!俺とはそんな関係じゃないっ!」
「は?だって同棲すんだろ?って事は彼女とお前はすでに×××の関係に・・・・・・っ」
「バ、バカ!んなはずないだろ!ち、違うよ!に一人暮らしさせるのが不安だって両親から頼まれたんだよっ!」


はぁはぁと呼吸を荒げ、僕はマットの方に身を乗り出した。
ちょっと周りからの視線が痛いが、今はそんな事を言っている場合ではない。
(誤解を解かねば何を言いふらされるか分からん!)


ここは僕のフラットの近くのカフェ。
明日まで劇団は休みだったから、と二人で出かけようとしたその時、いきなりこいつが尋ねてきたのだ。
僕とが一緒にいるのを見たマットは激しく動揺し俺を家から連れ出した。
僕はに30分だけ待ってて?とお願いしてこうして昼下がりから男なんかとお茶をするハメになっている。
なのにこいつと来たら昼間から何てハレンチなこと言いやがるんだ!
だいたい17歳と16歳の間で何が淫行だ!
僕やマットが普段、行っていたパーティの方がよっぽど淫行じゃないかっ!(ここで、すでに自分も淫行してたと認めている辺り)

僕は口をポカンと開けている間抜け顔のマットを睨みながらビシっと指を差した。

「とにかく!俺との事は変なように言うな!分かったな?」
「・・・・・・ぷっ」

(ぷ?!)(ムカァッ)

「あははは!な、なーんだ!」
「な、な、なーんだって何だよ、マット!!お前が何だっ!なんなんなんだーーっっ!!」(いっこ多いぞ)

いきなり噴出すわ、バカにしたように笑うわで、僕はマットの失礼な態度にムカムカーっときた。
だがマットは相変わらずバカ笑いしながら肩を竦めている。

「そりゃー"同棲"じゃなくて、単なる"同居"だろぉう?バッカだなぁ、オーリーは!」
「ぬ!!お、同じようなもんだろ?一緒に暮らすんだからさ!」
「チッチッチ・・・・同棲は恋人同士がするもの。同居はあくまで単に一緒に住むというだけの関係。OK?」
「・・・・・・(ムカァ)」

マットの奴は偉そうに人差し指なんて立ててふんぞり返っている。
感じ悪い。
あー感じ悪い!

「あーっそ。でもいいよ。どっちにしろ一緒に住める事になったんだからさ!
俺はと毎日一緒にいれる事を喜んでいるんだしっ?」

そう言って紅茶をグイっと飲みほすと、僕は椅子から立ち上がり、

「じゃ、明日、劇団で。ごきげんよう、マット」

とシレっとした顔で言ってやった。
だが、マットは僕の腕をむんずと掴んできやがる。
そのせいで体がビンっと後ろに引っ張られた。

「何だよ、マット!俺は忙しいんだ!可愛いが寂しがってるかもしれないだろ?!」
「そんな子守りより今夜パーティがあるんだよ〜。お前も、もちろん来るだろ?」
「はあ?行かないよっ。俺は今夜、に手料理を作ってもらうのだからねーふふん♪」
「あぁ?!行かないだぁ?!バ、バカ、お前!今夜は、あのラナが来るんだぞ?」
「え?ラナって・・・・あのK高校のラナ?」
「そう!そのラナだ!お前、前に会いたがってたよなぁ?」
「ぅ・・・・・・っ」

マットはニヤっとしながら僕の事を見上げていて、その顔がちょームカツク。

そう、確かにラナには会いたいと思っていた。
ラナはこの近くのK高校に通う女の子で、凄い美人という噂だからか僕らの劇団の中でも有名なんだ。
バイトでモデルまでやってるということだし、前は僕も絶対に落としてみたいなんて軽く思ってたりした。
そのラナが今日のパーティに来る・・・・・・

「どうだね?オーランドくん。これで参加したくなっただろぅ?」
「ぬ・・・・・・」

得意げに鼻を伸ばしているマットに、僕はムカっときた。

「そんなお子ちゃまを子守りしてる場合ではないぞ?」
「子守りじゃないって言ってるだろ?だいたいマットはの可愛さを知らないからそんなこと言ってられるんだよ」
「へーまあ、ちゃんと顔を見た事はないけどさ。あんな細けりゃどうせ子供体型だろ?
俺はこうムチムチボィ〜ンでナイスバディの子の方が――」
「マットの好みなんて聞いてないよ!とにかく今夜は行けない。と約束したんだ。じゃね」
「あ、おい!オーランド―――!!」

僕はマットにキッパリ、お断りするとサッサとカフェを出てフラットへと向った。

全く!マットは、ほんと分かってない!あーーー分かってないねっ!
あのの可愛さは何者にも変えがたいものがあるんだ。


僕は早くのところへ帰りたくて急いで走って行った。











「あ、、デザートは何がいい?」

一通り、夕飯の買い物を済ませた帰り道。
買い忘れたものを思い出して僕はに笑顔を向けた。
すると一生懸命に考えている。
そして通り沿いにあるケーキ屋に顔を向けた。

「あそこのケーキがいい?」
「はい」
「じゃあデザートはケーキに決定!」

僕はそう言っての手を引きながらそのケーキ屋へと入って行った。
そこでの好きな苺のケーキ、あと他にも数個のケーキを買ってフラットへと向かう。

、疲れた?」
「大丈夫です」
「そう?そのミュール、だいぶ慣れたかな?」
「はい。カンタベリーで慣れるようにはいてました」
「そっか」
「はい」

(・・・くぁ〜可愛い♪)

僕はの笑顔にニヤケつつ、前に買って上げた白のミュールをはいてくれてる事で更に緩みが倍増した。

あーほんと今日の白いワンピースによく似合うなぁ。
清楚〜って感じでほんと頭に輪を乗せたら天使そのものだな!


一人心の中でうんうんと頷きつつ、僕の手をギュっと繋いでいるを見てニヤニヤしていた(かなり危)










「はい、到着〜♪」

ドアを開けてを中に入れると彼女は僕の持っていた買い物袋を受け取りキッチンへパタパタ走って行った。
これから手料理をご馳走してくれるらしい。
前に作ってもらった時、かなり美味しかったのを覚えている。

(あ〜これから毎日、の手料理が食べられるのかと思うと、僕は幸せだなぁ〜)

「オーリー」
「はいはーい♪」
「これ、ここにしまってもいいですか?」
「うん、いいよ?もうーの好きなように使って」
「え、でも・・・」
「いいんだ。俺はキッチン、そんなに使わないしさ。が使いやすいようにしてくれて構わないから」

僕がそう言うとは笑顔で頷いてくれた。
が夕飯の仕度をしてくれてる間、僕はリビングを簡単に掃除して先ほど買ってきた用の雑貨品をあちこちにしまっていく。
が使う部屋のカーテンも可愛いのに代えてあげた。
ハブラシやコップ、バスセット等と、必要なものが結構あるんだという事に気づき、それも全て買ってきた。
それらの物を一緒に選んでると何だか本当に新婚気――――もとい。
の兄貴のような気持ちになった。

きっとの兄貴もこんな風に可愛がったんだろうなぁ・・・・
そらーこんな可愛いと可愛がっちゃうよなぁ・・・・(謎)

物を片付けながらボケーっとそんな事を考えていた(え?アホかって?うるさいよ!)
そこへ突然、「キャ・・・・っ」というの悲鳴が聞こえ、僕は慌ててバスルームからキッチンへとドタドタ走って行く。

(下の人に迷惑とか、この際どーでもいい)




「ど、どうした、!指でも切っ―――」

「オ、オーリィ・・・・!!」

僕がキッチンへ飛び込んだのと同時に、いきなりが僕にガバーーーっと抱きついてきた!
それには驚いたが顔が必要以上に緩んでくるのは仕方ないのさ。ははんはん♪

「ど、どうしたの、・・・」
「あ、あそこ・・・・・・」
「え?あそこ・・・?」

僕の胸に顔を押し付けながら指だけ冷蔵庫前を差しているに僕も視線をそっちに向けた。

「? 別に何もないよ?」
「い、いるんです・・・っ」
「いるって・・・・・・何がいるの?」

怖がっているを宥めるように(顔はニヤニヤ)優しく頭を撫でてあげると、やっと涙目になった瞳が上に向けられた。

「ゴ・・・・・・」

「ゴ・・・?」

「ゴキブリがいますっ」

「へ?ゴキブリ・・・?」

今にも泣きそうな顔のままそう言うと、は僕の服をぎゅぅっと掴んできた(これまた顔がゆるゆる)

「だ、大丈夫だよ・・・。ゴキブリは人を襲わないんだから」
「で、でも気持ち悪いですーっ」

宥めようとしてもは首をぶんぶん振って僕から離れようとしない。
いや、離れなくてもいいんだけど(オイ)この体制じゃを怖がらせる不届き物(この場合ゴッキー)を退治出来ないからね!

「えっと・・・じゃあ、ちょっと離してくれる?今、俺がゴッキーを成敗してあげるから」

そう言うとはやっと力を緩めて僕から少し離れた。
だが相当、怖いのか今度は僕の後ろに回り、いつでもキッチンから逃げ出せる体制だ。

ふむ・・・そんなに怖いかなぁ、ゴッキー。
僕としては逃げ回るだけのゴキブリより、人間を指したり襲ったりする蜂とかムカデの方がよっぽど嫌だけど。

そんな事を思いつつゴキブリ用の殺虫剤を出すと、が言っていた方に向かって静かに歩いて行く。
後ろではが怯えたように固唾を飲んで見守ってくれていた。

「よぉーし・・・ゴッキーくん。観念して出て来い!」

自分でもアホかな?と思わないわけでもなかったが、これでが安心するならとゴキブリに声をかけつつ進んでいく。

「オ、オーリィ気をつけて下さいっ。さっき冷蔵庫の下に逃げましたっ」

(き、気を付けろってゴッキーは襲ってこないんだから大丈夫さ!MyBaby!)(だから違う)

の声援(?)を受け、僕は笑顔で頷きつつ、ゴキジェット(世界共通?)を握りしめ冷蔵庫の前で屈んだ。
だが別に何かが動く気配もない。

「あー。ゴッキーくんは他の家に行ってしまったようだよ?」
「ほ、ほんとですか・・・?」
「うん。下を覗いてもいないし」

そう言って最後に床に頬をつける形で冷蔵庫の下を覗いた。

「オ、オーリィ・・・?」
「大丈夫みたいだよ?よく見えないけど・・・」

そう言いながら奥まで目を凝らしてみた。
するとカサササ・・・っとかすかな音がした気がしてハっとした瞬間―――




、うあぁぁぁ!!!」

「キャァァ!!」




僕の悲鳴でまで飛び上がりキッチンから逃げてしまった。
だが僕はひっくり返りながら必死に顔にぶつかってきた黒い塊を手で振り払う。




※説明しよう。今、僕が下を覗いていたら黒い塊が凄い勢いで僕に向って突進してきて、もろ顔にぶつかったのだ!(ぞわゎぁっ)




「こ、こいつめ!脅かしやがってーー!!」

ボトっと床に落ちたゴキブリを殺虫剤片手に追い掛け回した。
だが奴はすばしっこいのを得意とするので、なかなか死んでくれない。
あげく、気づけばいなくなっていた(!)

「あれ?どこ行った?!」

キョロキョロしながら黒い物体を探すもキッチンには静けさが戻っていた。

「くそぅ・・・あいつを退治しないことにはがご飯作ってくれなくなるだろぉ?!」

それだけは避けたいと必死にゴッキーを探したが結局見つけられなかった。

「はぁ・・・仕方ない・・・」

ちょっと疲れ果て僕はヨロヨロと立ち上がるとリビングに歩いて行った。
するとが怯えた顔のままソファに上がっている。

「オーリィ・・・だ、大丈夫ですか?」
「う、うん。さっきは不意打ちくらっただけだよ?でも奴は僕がキッチリ退治したから安心して?」

そう言ってソファの上に立ったままの(かぁいいv)を抱え上げて下へと下ろした。

「あ、ありがとう御座います」
「い、いいんだ、そんな・・・。僕はあんなの怖くないしね?」
「オーリー強いんですね。凄いです」
「そ、そんな事はないよ〜」(デレデレ)
「だって私、昆虫類って凄く嫌いでいつも逃げ回るだけなんです・・・」

ちょっと俯いて悲しそうな顔をするに僕は慌てて笑顔を見せた。

は女の子だから、それでいいんだよっ?」
「そう・・・なんですか?」
「そうだよ!サマンサなんか平気で蜘蛛とかゴッキーを電話帳で潰すからね(!)あんな女性にだけはならないでね?」
「サマンサお姉ちゃんは素適ですよ?」
「あっはっは!それはにだけいい顔してるだけだからね〜?」

僕はそう言っての頭をナデナデしてあげた。
すると、だいぶ気分も落ち着いてきたのか、「じゃあ食事の用意してきます」と言っては僕から離れた。
きっと退治したと言ったので安心したのだろう。
そのままキッチンへと歩いて行く。
僕はあの逃げたゴッキーが再び姿を見せないように、と祈る思いだった。


だが、その数分後――――




「ひゃぁっぁ!オ、オーリィ!!」




の悲鳴を聞いて僕はまたしてもキッチンへ飛び込むハメになった。















「それで・・・夕べはずっとゴキブリ退治をしてたと・・・?」

「ああ、そうなん・・・ふぁぁぁぁ・・・・・・・」


特大の欠伸が出て目にはすぐ涙が溢れてきた。
それをマットは呆れたように見ている。

「ったく・・・。美味しいパーティの誘いを断ってゴキブリ退治?アホか、お前・・・」
「何だよ、マット!ゴッキーを野放しにしておいたらが怖くて眠れないだろう?!だから俺は必死で――」
「はいはい。お前のナイトっぷりは分かったから。だいたい怖がるならお前が添い寝してやれば良かっただろ?」
「え?そ、そうかな(!)やっぱそう思う?俺も"怖くて寝れない"って言われた時はそうしようかな〜って思ったんだけどさぁ〜v」
「・・・・・・・・・」

僕がにへらにへらしながらそう言うとマットは方向転換して歩いて行ってしまい、慌てて後を追い掛けた。

「人の話は最後まで聞けよ!」
「そんなロリータのノロケなんて聞いてられるか!」
「何おぅ?俺はロリータじゃないぞ?!」
「へーへー。自覚がないのが悲しいよ、俺は」

マットはそう言うとホールの中に入り、仲間の方へ歩いて行く。
だが、やはり気になるのかマットは追いかけて行った僕の方に顔を向けた。

「それで〜?彼女は?今日から入団だろ?」
「そうなんだー♪さっき新入団員のところまで送って来たよ?」
「ふーん。過保護だなあ、オーランドは」
「いいんだよ、それくらいで!変な虫がつかないように新入団員の男どもを脅さないといけないからね!」
「はぁ〜・・・。あんな子供、誰も相手にしないって」
「何だと?はすっごい可愛いんだぞ?マットは知らないだけだっ」

マットの無礼な物言いにカチンときて怒鳴ると奴は呆れたように肩を竦めた。

「可愛いって言っても意味が違うだろ?あの子は子供みたいに可愛いって―――」

「オーリー!」

「あ、〜♪」

マットの戯言を聞く前にが僕のところに駆けて来た。
今日は春らしいベージュピンクのトップスに白のサブリナパンツで、僕のプレゼントしたミュールを合わせていてむちゃくちゃ可愛いv

「もう挨拶は終わった?」
「はい。オーリーは今から公演のリハーサルですか?」
「そうなんだー。も、もう少しかかるだろ?一人で大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
「そっかーなら良かった♪」

僕がニコニコしながらと話していると何だか後ろからゾクっとするような念を感じ、バっと振り返った。

「マット!何こっちガン見してるんだよっ」

見ればマットが口をポカーンと開けたまま、じぃっとこっちを見ている。
いや・・・・・・・・・この視線の先は・・・・・・



「オーリーの、お友達さんですよね?」



だ!!



前にも顔を合わせたことのあるマットに気づき、が笑顔で声をかけた。
(前に嫌なことを言われたのにそんな顔を見せないなんて何ていい子なんだっ!)
だがマットはうんともすんとも言わず、ただ黙ってを見つめている。
その視線に僕は嫌なものを感じた。


「お、おいマット・・・!」

「オーランド・・・!」

「な、何だよ?」

「こ、この子は・・・っ?」

「・・・・・・・・はぁ?」

「まさか・・・・・・」

「まさかって何だよ」

「こ、この子があの・・・子・・・・?」


何を言ってるのかサッパリ分からん。
僕は首を傾げつつ、マットを見ると口をパクパクさせている。

「こ、この子があの・・・・今一緒に住んでるという・・・・ちゃん・・・・か?」
「は?何言ってんの?何度か会ってるだろ?昨日だって・・・・」
「三度とも帽子被ってたしちゃんと顔なんて見てねーよ!つか、めちゃくちゃ可愛くないっ?」
「な―――っ!」


(何を言ってんだ、今さらーーっ!!!!)


マットの戯言に一瞬の眩暈を感じ、よろめいた。
だがすぐに狼の魔の手から天使を救うべく、僕は立ち直りとマットの間に立ちはだかった!

「マット!に近づくな!」
「オ、オーリィ・・・?」
、こいつにだけは近づいちゃダメだっ」
「な、何だよ、オーランド!そんな言い方しなくたって・・・・っ」
「うるさーーーーーいっ!ダメだったらダメだ!」

に見惚れているマットを一喝すると僕は彼女の手を掴んで、そのままホールを出た。

「オ、オーリー、どうしたんですか?」

は僕の行動に驚きながらも必死についてきている。
だが速く歩きすぎたせいでが躓いてしまった。

「あ、危ないっ」
「キャ・・・・・・」

前に転びそうになったをすぐに抱きとめた。

「ご、ごめん!大丈夫?」
「は、はい・・・・・・ごめんなさい・・・・」
「そんな・・・・が謝ることないよっ?俺が悪い」

そっとを離してそう言えばはキョトンとした顔で見上げてくる。
その顔を見てたら自然に笑顔になった。

「ごめんね?驚かせて・・・・」
「いえ・・・大丈夫です」
「あ、もう戻る時間だろ?一人で行ける?俺、一緒についていこうか?」

ふと時計を見てそう言えばはふるふると首を振った。

「一人で行けます。早く慣れないといけないし」
「そう?じゃあ・・・俺は午後3時には終わるから、もしが早く終わったら―――」

「あ、ちゃん!」

「―――っ?」

だ、誰だ?MyBaby(いい加減にしろ)を馴れ馴れしく"ちゃん"づけで呼ぶ男わーーっっ!!!

目を吊り上げ、首の骨がグキっと鳴りそうなほどの勢いで振り向けば、そこには冴えない小坊主が笑顔で歩いて来た。

「お、お前は誰―――」

「ショーティ、どうしたんですか?」

「んな・・・っ?!」

その言葉に今度はぐりりんっとの方に首を戻した。(ゴキって鈍い音もこの際無視だ)

「ここに行くって言ってたけど遅いから迎えに来たんだ。そろそろ皆、集まってるよ?」
「あ、今行きます。じゃあオーリ――」
・・・!だ、誰だ?こいつはっ」
「え?あ、えっと・・・・・・」
「あ――!あなたはあの時のお兄さん?!」
「は?」

その小坊主はいきなり笑顔で僕の方に走り寄って来た。

「僕です、僕!あのオーディションの時にお会いした!」
「オーディション・・・・?ってあ―――!!」
「思い出してくれました?」

こ、この少年のような笑顔!(いや少年だけど)
この寝癖なのか、無造作ヘアなのか分からない髪形!!(いや、ほっとけよ)
こいつはあのオーディションの時に"僕にもおまじないして下さい!"とか何とか言ってきた、あの小坊主だ!!

「いやー久し振りですね!一ヶ月ぶりですか?」

(こいつ――――受かりやがったのか・・・・)(オイオイ)

「僕、ちゃんと一緒なんですよー」
「な、何だって?お前――」
「あ、僕、ショート・ラウンドですよ。忘れちゃいました?ショーティって呼んでください」
「・・・・・・・・・・・・」

ニコニコしながら何の悪びれもなく、そう言ってくる小僧に僕もつい条件反射で微笑んでしまった(!)

「あ、じゃあオーリー。終わったら、また来ますね?」
「え?あ・・・・」
「行きましょ?ショーティ」
「そうだね。あ、じゃあお兄さんもリハ頑張って下さい!」
「は?お、お兄さんって、おい―――」

「いやぁーちゃんのお兄さんってほんとカッコいいよね〜?オーディションで会った時、僕思わず見惚れちゃったんだー」

「ちょ、―――」

「そうなんです。オーリーはカッコいいんです!」

(えっ・・・v )(オイ)

に誉められ顔が緩んでいる間に小僧・・・じゃなくてショーティはそんな事を言いながらと一緒に講堂に戻って行った。

二人の姿が角を曲った時、我に返り、いかんいかん!と首を振る。

「おのれ、ショート・ラウンド・・・・。にちょっかい出そうとはいい度胸だ・・・・(!)」

握った拳をぷるぷるさせながら僕は何故か夕べのゴッキーとの死闘(!)を思い出していた。


そうだ。あいつもあんな風に●●●●えばいいんだ・・・っ!
夕べのゴッキーも今の小僧も大差はない!(え)
に近づく害虫もいいとこだ。
僕は害虫からを守る使命があるんだ!
夕べのゴッキーは、この前触れだったに違いない・・・・
そうか・・・・そういう事か―――!!(?)

そう・・・こなりゃ、あいつも夕べのゴッキーと同じように一気にシューーーーーーーーーーーーーっ(何ヲ)

この日から僕はに近づくオス(!)は"害虫"と見なし、退治をする事を決めたのだった。

「おい、オーランド!!!何、一人でニヤニヤしてるんだ!!リハ、始まるぞ!!!!」


ここにも一匹――!!


「黙れ!害虫(マット)!!!!」
「――が・・・っ!!!(ガーン)」





1994年、オーランドくん17歳の春―――




今年の目標、五箇条。

@次の舞台では必ず主役の座を勝ち取る。

A台詞を噛まない。

B舞台でカツラを飛ばさない。

C骨を折らない。

そして大事な大事な最後のDは――――


必殺!!害虫駆除!!!(by.を守るぞ大作戦)(作戦かよ)




そう―――僕の決意は固いのだ。



















ちょっとお久し振りにアップです。
とうとう二人の同居生活がスタートしました・・・・・・が(笑)
ちょっと幸先不安なオーランド兄貴・・・・・・(笑)
うーぬ。何だかコメディ路線に走りそうな予感です・・・(汗)

あ、今日から名前変換が苗字も出来るようになりました。
これも新しく登録しないと名前が変換できませんので、ご注意を・・・M(__)M


日ごろの感謝を込めて…


C-MOON管理人HANAZO