パシャ!パシャ!
廊下にシャッター音が小気味よく響いている。
僕は買ったばかりのカメラを構えながらドアの隙間から小さな口を開けて発声練習をしているを気分よく撮っていた。
(人はこれを盗撮という)
「ん〜♪結構、いいアングルで撮れたな!今度は、こっちから・・・・・・」
僕は今度はその場にしゃがむと角度を変えて思い切りズームにしてみた。
かなり高性能なカメラを買ったのでのかわゆい笑顔が僕の視界の中でアップになり、ちょっと顔がニヤケる僕なのさ。
「お♪今の笑顔はいいぞ〜〜」
パシャ!
の自然な笑顔を逃がすものかとシャッターを切り、またもニヤケる。
その時、休憩の声が聞こえて来て、僕は慌ててカメラを肩から下げると隣の空いてる教室へと飛び込んで隠れたのだった。
「ふぅ〜危ない、危ない。見つかっちゃったら怒られちゃうからなぁー」
そう呟きつつドアを少しだけ開けて廊下を見れば、がこの前会ったジェンとキャリーの二人に囲まれ教室から出て来るのが見えた。
この時間の休憩だと10分ほどしかないので、女の子達はトイレかどこかに行くのだろう。
3人は何か話しながら廊下を歩いて行き、僕も静かに廊下に出ると彼女たちの後をコッソリとついて行った。
(人はこれをストーカーと呼ぶ)
ふんふん・・・も友達が出来て嬉しそうだなぁー
それに彼女たちと一緒にいれば、あの小僧だって早々にに近づいては来ないだろう!
ちょっと安心しながらもカメラを構え、友達と楽しそうに話しているを撮ろうとした、その時―――
ポンポン
「ぅ・・・っっ!!」
「お兄さんじゃないですか!」
その声に振り向けば、そこには小僧が憎らしいほどの笑顔で立っていました・・・・・・
僕に天使が舞い降りた...04
「いやぁー驚いちゃいましたよー。トイレ行こうと思って廊下出たら前にお兄さんが歩いているから」
「・・・・・・あっそ」
(くそぅ・・・・・・を見失ったぢゃねーかっ)
「どうしたんですか? あ、ちゃんの様子を見に来たとか?」
「・・・・・・それ以外で来る用事はないっ」
(特にお前の顔は見たくもなぁいっ)
「そうですよねー。あ、今日、ちゃん誉められたんですよ?」
「な、何?!な、何て?」
(それを早く言えっ)
僕は立ち止まり、小僧の胸倉を掴む勢いで問いかけた。
するとショーティは驚きつつも笑顔を見せて、
「えっと・・・・・・最初に挨拶代わりで台詞を言わされたんです。舞台に立ってると思って言えって」
「それでっ?」
「それでちゃんも当然、順番が来て台詞を大きな声で言ったんですけど、それが凄く通る声で」
「そ、そうだろう? は小鳥のような声だからなぁーv」
「え?」
「・・・・・・な、何でもないよ!それで?!
「あ、それで・・・。一瞬で役に入り込んで、それだけ台詞を言えるのは大したもんだって指導員の方が・・・・・・」
そこで掴んでいた手をパっと離し、僕は顔がニヤケそうになるのを必死に堪えた。
ふふふ・・・・・・そっかぁーーー!!さっすが僕の!
やっぱり才能があるんだなぁ♪
「あ、あの・・・・・・お兄さん・・・? 何笑って・・・・・・」
「う、うるさいよ!」
知らず顔が適度に緩んでいたらしい(!)
それをショーティに突っ込まれ、僕はすぐに咳払いをすると顔を元に戻した。
「まあ・・・・・・に才能があるのは分かってたんだ。君もを見習って精進したまえよ?」
「はい!僕も頑張らなくちゃって思ってたんですよー。お兄さんのように早く舞台に立てるように」
「ふーん。まあ並みの努力じゃ無理だけどねっ」
「はい、頑張ります!」
(この青春ヤロウ・・・・・・ほんと暑苦しいよ・・・・・)
やる気満々爽やかスマイルを炸裂させているショーティを見て内心溜息をつきつつ自分の仲間の所へと戻ったのだった。
「よう、オーランド!盗撮は終ったのか?」
「バ、バカなこと言うな!ジョン!」
戻った早々、マットに継ぐハイエナ同然(酷)の友人、ジョンが笑いながら声をかけてきた。
それを聞いて周りの友達も大笑いしている。
「やーだ、オーリーったら。また可愛い妹のお尻を追いかけてたの?」
「エ、エミリー!別に、そんなんじゃ――」
「最近、付き合い悪くなったと思えばあーんな可愛らしい妹が出来たから、なんてねー」
「キャサリンまで!俺はただ・・・・・・」
「プレイボーイの名を欲しいがままにしてたオーリーがロリコンに走るとは思わなかったわぁ〜♪」
「ぐ・・・っ」
好き勝手、言いたい放題の仲間達に僕は言い返そうにも言葉が出てこない。
だが、そこで気づいた。
いつもならこのノリに便乗して僕をいじめてくる男がいないということに・・・・・・
「そ、それより!マットのアッフォーはどこだよ? もうリハ始まるだろ? 今日で最後なのに・・・・・・」
「ああ、マットなら・・・さっきオーランドが飛び出して行った後に一人でブラっとどっかに行ったぞ?」
「何? どこに?」
「さあ?」
ジョンは本当に知らないのか肩を竦めて首を振った。
それには僕も嫌な予感がして、すぐに踵を翻す。
「お、おいオーランド!!どこ行くんだ? もうリハ始まるぞっ?」
「すぐ戻るよ!」
僕はそう言うと講堂を飛び出し、急いで廊下を駆けて行った。
そしてのいる教室の廊下を曲ろうとした、その時――
「君はここで何をしてるのかね?」
「うぉ!!」
廊下の向こうで何だか見た事がある光景がくり返されていた・・・・・・。
「なぁーそんな怒るなよ、オーランド!」
「うるさい!ったく!人の目を盗んでを覗いてるなんて最低だぞ、マット!!」
「だからぁ〜ごめんって言ってるだろぉ?ちょっと頑張ってるちゃんを見たくなったんだってー」
「見なくていいよ!だいたい、あんなドアからコソコソ覗いてるなんて!」(人のことは言えない)
僕はリハが終った後、マットをステージに正座させて説教をしていた。
下の席では仲間がそれを楽しむように見学している。
「おい、マット!お前までいつからロリコンになったんだぁ?」
「ほーんと!しかも指導員に見つかって怒られるなんて恥ずかしいったらないわぁー?」
「しかもマットの奴、変質者に間違えられたんだってー」(誰かさんと同じ)
「あはは!最悪ーー!」
「うるさい!お前等!!」
皆の野次にマットは顔を真っ赤にして怒っているが、僕としてはちょっぴり耳が痛かった・・・(そらそうだ)
「コホン!と、とにかく!今後一切、には近づくな!」
「ち、近づいてないだろ? コッソリ見てただけじゃん」
「コッソリもダメー!がお前のいやらしい目で見られてるかと思うと俺は・・・っっ」
「い、いやらしい目って失敬な!俺はただ純粋に可愛いなぁ♪と思って――」
「嘘つけ!お前、頭の中で変な想像しながら見てたんだろっ」
「ふぐ・・・っ」
「やっぱり・・・!!このエロエロ大魔王!野獣!鬼畜!二度とを視界に入れるなよ?!」
「な、何だよー! そこまで言わなくても・・・!それにちょっと見るくらい・・・」
「ダーーーーーメーーだぁーー!!」
「あ、オーリィ!」
「はいはーーい♪」
「「「「 うぉい!!! 」」」」 (皆の突っ込み奇麗に決まる)
僕はの声に瞬時に気づき、つり上がってた眉が一瞬でへにゃっと下がった。
見ればは笑顔で手を振り、こっちへ走ってくる。
僕はステージにマットを置き去りにして、ポンと下へ飛び下りた。
(マットはを見て一瞬デレっとしたが正座したまま動けず)
「どうした?もう終ったの?
「はい、だからオーリーを迎えに来ました」
「そうかー♪俺も終ったんだ。だから帰ろう?」
「でも・・・マットさんと何かお話されてたんじゃ・・・」
「え?ああ・・・今のは・・・・個人練習に付き合ってあげてたんだ!あいつ、ヘタクソだからさー(嘘つけ)」
「そうなんですか? じゃあ終るまで待ってます」
「あーいいの、いいの。もう終ったからねー。一緒に帰ろう?」
そう言っての頭をナデナデすると、僕を白い目で見ている仲間を尻目に二人でその場から立ち去った。
一方、残された仲間達は・・・・・・
「ねぇ・・・オーランドって、あんなキャラだったっけ・・・?」
「さあ・・・。でも、かなり重症みたいね・・・」
「でも、あの子、あんな可愛かったんだなーー!俺、驚いたよ」
「お、おいジョン!お前まで、そんな・・・」
「何だよ、マット!お前だって最初は、あんな子供なんて言ってたクセに!いつの間に追いかけてたんだ?」
「そ、それは・・・!」
「何よ、あんた達!全く、オーランドパート2ね・・・。ちょっと可愛い子見るとこれなんだから」
「ほーんと!近くに美女がいるってのにねー?」
キャサリンとエイミーはそう言いながらジョンとマットを半目で見つつ、呆れたように溜息をついたのだった。
それから三日後の、とある日の休日。
僕は可愛いの写真をアルバムに飾っていた。
昨日の朝、今週、撮りまくったの写真を現像に出し、今日の朝一番で受け取ってきたのだ。
「ふふふ・・・可愛いなーあ♪これからもっと増やしていかなくちゃ」
写真のをニヤケながら見つつ、ベッドにゴロンと転がった。
そして時計を見ればそろそろが起きてくる時間で慌てて起き上がる。
「いけね!が起きる前に"アレ"を処分しないと・・・!」
急いで部屋を飛び出しキッチンへと向う。
「あ、オーリィ、おはよう御座います」
「!!」
まだ寝ていると思っていたが、すでに起きていたことにギョっとした。
「あ、お、おはよう!もう起きたの?
「はい。お休みだと思うと嬉しくて目が覚めちゃいました」
「そ、そっか。あ、じゃあ・・・紅茶でも淹れようか?」
「あ、私がやります。今、そうしようと思って・・・・あ・・・」
「ど、どうしたの?」
ヒヤヒヤしながらの様子を伺っているとは足元にある"アレ"を見つけたのかその場にしゃがみ込んでいる。
「この奇麗な箱は何ですか?」
「そ!それは!!触っちゃダメだよ!」
「え・・・?」
思わず大きな声を出してしまい、はビクっとして立ち上がった。
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
「え?あ、違うんだ・・・。えっと、それは・・・危険なものだからさっ」
僕に怒られたと思ったのか、の大きな瞳には涙が浮かんでいて僕は慌てて首を振った。
そしてすぐにの方に行くと屈んで顔を覗き込む。
「大きな声出してごめんね? 怒ったんじゃないんだ・・・。を怖い目に合わせたくなかっただけで・・・」
「こ、この箱、怖いんですか・・・?」
「うん、そうなんだ。だからは絶対に近づいちゃダメだよ? 危ないからね?」
「は、はい。分かりました。近づきません」
「んー♪はいい子だね!」
涙目になりながらもコクンと頷くが可愛くて、僕は頬にチュっとキスをした。
も僕のスキンシップは"愛情表現"だと思っているので前ほどには驚かず、
それでも照れくさそうにニコっと微笑んでくれる。
「じゃあ俺がこいつを成敗するから、はリビングに非難しててくれる?」
「はい、オーリー頑張って下さいねっ」
「もちろんさ!のために頑張るよ!」(何のこっちゃ)
そう言ってをリビングに連れて行くと、体を抱えてソファに乗せてあげる。
「じゃあ、ここで待っててね♪」
「は、はい・・・オーリー気をつけて下さいねっ」
不安げな顔でそう言ってくれるに笑顔を見せて、僕はキッチンへと戻って行った。
そして一気に肩を落とすと息を吐き出す。
「はぁーー危なかったぁ・・・。これ覗かれてたら大変なことになってたよ・・・」
そう呟きつつ、その場にしゃがみ、例の"アレ"。
"ゴキブリ・ポイポイ"を持ち上げる。
「うわぁ・・・今日も元気に捕まってるね、キミタチ・・・」
中を覗けば、カサカサとうごめく黒い物体。
こんなのが見れば失神してたかもしれない(!)
「今度はの目に付かない場所に置いておかないとなぁ」
そう呟くと僕は箱を袋に包み、ダストシューターへと投げ入れ、いつものようにお祈りを捧げる。
その時、キンコーンとチャイムの音が聞こえて来てドキっとしてすぐにリビングに戻った。
するとがソファに立ったまま(可愛い♪)「だ、大丈夫ですか?」と聞いてくる。
「うん、もう大丈夫だよ?」
「よ、良かったです・・・。あ・・・誰か来ました」
ホっとしたように息をつくと、はエントランスの方に顔を向ける。
僕はそのままの方に行くと同じように抱き上げて下へと降ろしてあげた。
「俺が出るからいいよ。は紅茶淹れてくれる?」
「はい!美味しいの淹れて来ます」
は笑顔で頷くとパタパタとキッチンの方に走って行った。
その姿を見送りがいなくなると、途端に僕の顔から笑顔が消える。
「ったく・・・誰だ? と二人の休日を邪魔する奴は!」
ブツブツ言いながらエントランスの方に行くとドア越しに耳を済ませる。
シーンとしていて、それがまた何とも不気味だ。
まさか・・・前に関係のあった子とかじゃないよな・・・・・・(最低)
あ、もしかしてマットかも・・・!くそぅ・・・もしマットだったら追い返してやる!
そう決心して僕はドアノブに手をかけた。
「どちら様ーー?」
「Hi!オーランド」
「ぅげ・・・っ!!」
思い切りドアを開け放せばそこに立っていたのはマットでも昔、僕が手をつけた女の子でもなかった。
「なななな何だよ、どうしてここにいるんだ!」
「あーら。遊びに来てあげたんじゃない」
「くく来るなよ!!今すぐカンタベリーに帰れ!」
「嫌よ。あんたが可愛いにえげつない事してないか偵察に来たんだもの。あ、入るわよ?」
「ちょ・・・勝手に、オイコラ、サマンサ!!!!」
僕を押しのけ勝手に入っていく姉、サマンサに軽い眩暈を起こしながら慌てて後を追った。
前にも一度、ここへ来た事があるサマンサはリビングを見渡し、を探している様子。
「〜? どこ〜?」
「おい、サマンサ・・・」
僕が文句を言いかけたその時、サマンサの声を聞きつけがキッチンから走って来た。
「サマンサお姉ちゃん!」
「あ、〜!久し振りねー」
サマンサはそう言って走り寄って来たをギュっと抱きしめた。
それを横目で見つつ、ちょっとムカつく僕がいる。
「どうしたんですか? サマンサお姉ちゃん!」
「が心配で様子を見に来たのよ〜? どう? 弟に何か変なことされてない?」
「おい、サマンサ―!」
「いいえ。オーリーは凄く優しいです!」
「ほぅら、見――」
「ほんと? お風呂とか覗かれてない?」
「バ・・・バカなこと言うな!」
「そんなことありませんよ?オーリーはいつもお風呂上がると髪を拭いてくれます」
「ねー? ーv」
「(軽く無視) ほんと? 何か嫌なことされてるなら、心配しなくていいから私に言ってね?」
「嫌なことなんてありませんよ? 私、オーリー大好きです!」
「〜〜(半泣き)」
僕はの言葉が嬉しくてサマンサへの怒りなんてプシュンと萎んでいくのを感じた。
だがサマンサは納得がいかないのか、ジロっと僕を睨んでいる。
「あんた、ちゃんが純粋だからって騙してるんじゃないでしょうね?」
「はぁ? 俺が何でを騙すんだよっ」
「変なマインドコントロールとかしてるんじゃないのぉ?」
「バッカなこと言うなよ!俺はちゃんとを害虫から守ってるし凄く大事にしてるんだっ」
「どーだか!全く・・・私は反対だったのよ。をあんたに預けるなんて」
「ム!でもパパが俺にって――」
「さんはあんたの素行の悪さを知らないからね。
息子の面影に似てるからって性格まで同じだと信じてるいい人なのよ」
「い、言わせておけばぁ〜〜〜っっ」
「あら、何よ。やるっての?」
サマンサは僕の前にいつもの様に仁王立ちすると怖い顔で腕を捲っている。
僕は一瞬、怯んで逃げ腰になったが、ここで引けばとの生活を守れない!と思い、愚姉を睨み返した。
だが僕らの前にが突然、出てきて、
「ケンカしないで下さいっ」
とサマンサに抱きついたのを見て驚いた。
「え? あ、あの・・・」
「サマンサお姉ちゃんとオーリーは姉弟でしょ? ケンカしちゃダメですっ」
「・・・・・・」
「姉弟は仲良くしないと・・・」
は必死にそう言ってサマンサを見上げている。
サマンサはチラっと僕を見ると、軽く息をついてギュッとを抱きしめた。
「分かったわ。ごめんね? もうケンカしない」
「・・・・・・ほんとですか?」
「うん。私は・・・ただが心配なだけよ?」
「オーリーは優しいから・・・心配しなくて大丈夫ですよ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
キョトンとした顔でそう言ったにサマンサは困ったような笑顔を見せて肩を竦めた。
「どうやら、お姫様は我が愚弟を王子様と勘違いしてるようだわね」
「ぬ・・・・・!一言、余計だぞ・・・・。そこは素直に頷いておけよ」
「はいはい。まあ・・・・あんたがを大事にしてるなら・・・それでいいんだけど」
「だから、してるって言ってるだろ?今朝だってゴッキーファミリーからを守ったばかりだっ」
「はあ?何よ、それ」
事情の知らないサマンサは呆れたように溜息をつき、かわいそうな子を見るような目で僕を見ている。
(これ、かなりムカつく)
「と、とにかく!これで分かっただろ?!俺はを大事にしてるって事が!分かったなら早く帰れ」
「バカなこと言わないでよ。せっかくロンドンまで出てきたんだからすぐに帰るわけないじゃない」
「は?」
「暫く滞在するんで宜しく♪」
「よ、宜しくって・・・サマンサ、学校は・・・?」
「ああ、私、こっちで演劇学校、探して転校することに決めたの。だから見つかるまで泊めてもらうから」
「は、はぁ〜〜?!泊まるって・・・・・・ここに?!」
「当たり前でしょ? ホテルだったらお金かかるじゃないの。ママもそうしなさいって」
「う、嘘だろ? 絶対、やだね!」
「やだって言ってもあんたに決定権はないの。断ったら仕送り止めるようにママに言うわよ?」
「うっ!!(そ、それは困る・・・!!)」
な、何て悪魔な姉なんだ!!デヴィーーール、ゥーーメーーーーンだな!!
つか"メン(Man)だな!こいつは!
怒りのあまり、プルプルしている僕を尻目にサマンサはと楽しそうにおしゃべりしている。
「サマンサお姉ちゃんも一緒に住むなんて嬉しいです!」
「私もよ〜? 毎晩、一緒に寝ましょうねぇ〜? 」
「な・・・い、一緒って――」
「はい!嬉しいです!一人じゃ、ちょっとまだ怖かったんです」
「そ、そんな・・・(言ってくれれば俺が・・・!)(うぉい)」
「そうでしょーねー? 一つ屋根の下に狼がいればねー?」
「おぉい、誰が狼だ、誰が!」
「違うんです。狼じゃなくてゴ・・・ゴキブリがいるんですっ」
「あー♪そうねー。どっちかと言えばしぶといからゴキブリかもしれないわねー?(と俺の方をニヤリと見る)」
「おい、サマンサ、誰がゴキブ――」
「(軽く無視) 大丈夫よ、。ゴキブリなんて私が踏み潰してあげるからね〜?」
「ほ、ほんとですか?サマンサお姉ちゃんは怖くないんですか?」
「あははー!サマンサに怖いものなんてないって・・・うぅぎゃっ(足を踏まれたらしい)」
「を守る為なら怖いけど大丈夫よ? ずっとついててあげるからね?」
「はい、ありがとう御座います!」
「ちょ・・・――」
「あーもう、こんな時間だわ?お腹空いたし何か食べに行きましょうか」
「はい!この近く、美味しいお店いっぱいあるんです。ね?オーリー」
「え? あ、そ、そうだね・・・っ」
やっとの視線がこっちに向いて僕は満面の笑みで頷いた。
だがサマンサはの手を繋ぐと、
「ああ、オーランド。あんた、私の荷物、の部屋に運んでいおいて。私達、食事に行って来るから」
「は?何で俺がサマンサの荷物なんて運ばないといけないんだっ」
「あーら。英国紳士はレディーの荷物は運んでくれるわよぉ?」
「ほんとのレディーならね!サマンサなんてレディって言うよりゴッドマザ・・・わ、分りました・・・運んで置きます・・・」
殺気を込めた目で睨まれ、僕は渋々頷いてしまった。
それにはサマンサもニーッコリと微笑む。
「宜しい。じゃ、、行きましょうか」
「はい、でも・・・オーリーは・・・・・・」
「ああーいいの、いいの。オーリーはお腹空いてないんですって。後でポテトでも与えておけばいいわよ」
(ぬ!何が"与えておけば"だ!!俺は犬っころか!!)
そう怒鳴りたいのをググっと堪えていると、が僕の前にトコトコ歩いて来た。
「じゃあ・・・行って来ます。オーリーの大好きなマフィンお土産に買ってきますね?」
「う、うん。ありがとー!行ってらっしゃい♪」
ニッコリ微笑むが可愛くて僕は彼女の頬にチュっとした。
その瞬間、背中に殺気を感じ、悪寒が走ったが気のせいだと思うことにする。
「じゃあ・・・行ってくるわね。(キスするんじゃないわよっ)」
「ああ・・・。(うるさい!帰ってしまえっ)」
(一瞬、視線だけで会話する姉と僕)
僕のキスしたの頬を何気に服の袖で拭いているサマンサを睨みながら僕はプイっとそっぽを向いた。
サマンサはに見えないように僕にべぇーっと舌を出すと、そのまま二人は食事へと行ってしまい急にシーンとなる。
「はぁ・・・・・・寂しい・・・・・・」
さっきまで至福の時だったのに一瞬で悪夢へと変わった。
「あぁーー!!何で、こうなるんだ!!今日は休みだからと仲良く朝食を取って一緒に動物園に行って
帰りにはラブラブでディナーに行こうと思ってたのにぃぃ〜〜〜っっ!!!!」
その場で地団駄踏みながら、僕はエントランスに置いたままのサマンサのトランクをガンっと蹴飛ばした。
「ぃでぇ!!」
蹴った瞬間、足の小指に当たり、ものすっごい激痛が走って僕はその場に蹲った。
「うぬう・・・・・・こ、これも全て愚姉のせい・・・・・・っっ!!」
僕はそのまま床を張っていき、自室へ戻ると壁に貼り付けた五箇条を眺めた。
「くそう!このままじゃダメだ!これを変えてやる・・・っ」
小指の痛みを我慢して立ち上がると、五箇条を壁からベリっと剥がした。
そして、その中の一つを訂正し、太ペンで新たな言葉を書いて行く。
『今年の五箇条』
@次の舞台では必ず主役の座を勝ち取る
A台詞を噛まない
B舞台でカツラを飛ばさない
C骨を折らない
D必殺!害虫駆除! 一撃必殺!!害虫&愚姉も駆除!
1994年。オーランドくん、17歳の春に分かった事。それは―――
渡る世間は鬼ばかり。
そう・・・・・・生きると言う事は、日々これ鬼との戦争なのだ。
一つ書くと、気分が、その話モードになるので続きも書けたりするんですよねー(笑)
なので続けてアップしちゃいました。
この後くらいから・・・色々、おきるのではないかと・・・(人ごとかっ)
日ごろの感謝を込めて…
C-MOON管理人HANAZO
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