「ふんふーん♪ふふふふ〜ん♪ グビグビ〜 ぷはーーっ」

鼻歌を歌いつつ、ビールを口に運びながら僕は時計を確認した。

いつもののバスタイム。
そして僕はいつものようにバスタオルを持って待機していた。
それはがお風呂から出た後に、僕が髪を拭いてあげる為で、もう今では恒例となっている。

カチャっと音がしてがバスルームから出たのが分かり、僕はササっとソファから立ち上がった。



「オーリー、お風呂から上がりました」

「はいはーい♪」



その可愛い声に僕はニコニコしながらバスルームに向おうと歩き出した、その時。




ふげ・・・っ!




突然、今まで静かに雑誌を読んでいたサマンサにむんずと首ねっこを捕まれ、息が止まりかけた(!)

「な・・・なにずる・・・」
「私が行くからいいわ。あんたはのために冷たいジュースでも用意してあげなさい」
「んな・・・っ。ご、ごれは俺がいつも・・・ぐぇ・・・っ」
「いいから!」
「わ・・・わがった・・・・・・がら離じで・・・っ」




更に首が絞まり、僕は一瞬、天国のダディが笑顔で手を振っているのが見えた気がした・・・(HELPME...!)












僕に天使が舞い降りた...05





「へぇ、オーランドの姉さん!今、来てるんだ!」
「・・・ああ、まぁね・・・・・・」

僕は舞台で着る衣装を脱ぎながら思い切り溜息をついた。
だがマットはニヤニヤしつつ、僕の肩に腕を回してくる。

「今度、紹介しろよ」
「は?サマンサを?」
「ああ。お前の姉貴なら、きっと美人だろ?」
「まさか!あんな恐ろしい女はいないよ!」
「そんなに怖いのか?」

僕が必死に訴えるとマットも微妙に怯えた顔を見せる。
そんなマットにサマンサがどれだけ理不尽で暴力的な姉なのか、僕は赤裸々に告白した。

「怖いし、えげつないし自分勝手で最悪なんだ!聞いてよ、マット!
夕べだって俺がの髪を拭いてあげようとしたら"私がやるから、あんたはジュースでも用意しとけ"なんて言うんだよ?!
俺はセバスチャンかっつーの!!俺はサマンサの執事でも召使でもないってのにさ!
それにその後もを独り占めしてずーっと離さないんだから!
せっかくと一緒に見ようと思って借りてきた"101匹ワンちゃん"だって結局俺との間にサマンサが座って見るハメになったんだ!
しかもが"ワンちゃん可愛いなぁ、欲しいなぁ"って言ったら、あいつ、何て言ったと思うっ?!」

一気に不満をぶちまけ、ゼェハァゼェハァと息を切らしながらそう尋ねると
マットは少し下がり気味になりつつ、引きつった笑顔を見せた。

「さ、さぁ・・・?な、何て言ったんだぃ?」

「それが言うに事欠いてサマンサの奴ぁ・・・
"あーら♪ここに駄犬が一匹いるからいいんじゃない?"なんて言いやがったんだよ?!」

「へ、へぇ・・・そりゃ・・・酷い・・・(的を得てるな・・・さすがオーランドを長年見てるだけはある)」

「俺が駄犬?!ふざけんなって感じだろ?!自分なんて犬からもビビられるアイアンウーマンのクセにさ!」

「そ、そんなに凄いのか?お前の姉ちゃんは・・・・・・」

「もちろんだよ!何が凄いって子供の頃、あの凶暴なドーベルマンを一撃でノックアウトした経歴の持ち主さ!」

「・・・・そ、そりゃ凄い・・・(ほ、ほんとに女か・・・?)」

「だろぉう?!それにサマンサは腕力だけじゃなく、めちゃくちゃ意地悪なんだ!
俺がまだ6歳のいたいけな少年だった頃なんて寝てる俺の枕元にでぇーっかい蛙を置いたこともあるんぞ?!
蛙を触れるとこですでに女じゃないね!ってか目が覚めて蛙が目の前にいたらどんなけビビるか知ってるか?!」

「い、いや・・・知らないな・・・(むしろ知りたくない)」

「イボイボだらけの姿で"ゲェー!ゲェー!"って鳴いてたんだ!(鳥肌)
しかも俺のほっペに寄り添って・・・ぐぁっ(どうやら鮮明に思い出したらしい)
そ、それだけじゃない!俺の初恋の相手のメリーちゃんにも"オーランドってまだオネショしてるのよぉ?"なんてチクった事もある!
それで俺は見事にメリーちゃんに振られたんだからなっ?!どこに弟の初恋を壊す姉がいる?!あぁん?!」

「そ、そうだよなあ・・・酷いよなぁ・・・(お前、小学校でオネショしてたのかよ・・・ぷっ)」

「その後も俺の気に入ってたオモチャを踏んづけて壊すし、オヤツは取るし、殴られてお小遣いを奪われた事もある!
それって恐喝だろ?そんな数々のイジメにも似た肉体的暴力、精神的暴力に耐えに耐え抜いてきてるんだ、俺は!」

ゼェゼェと息を荒げつつ、幼少の頃からの自分の不幸を切々と訴えぬいた僕はグっと握りこぶしを固め、熱く叫んだ。
すると突然、周りから拍手がおきて驚いて見渡せば、一緒に舞台に出る仲間達が何だか、
うんうんと頷きながら僕に暖かい拍手をしてくれていた。

「いやぁー今の感じ、いいんじゃない?それ舞台に生かせるよ!」

「そうだぞ、オーランド!その調子で本番も熱入れてくれよ!しかし面白い姉ちゃんだ!」

「ほんとだな?まあ切ない幼児期を過ごしてたんだなぁ、オーランドは!あはははっ」

「でも俺も弟なんて生意気で可愛くもないし、めちゃくそイジメてるぞ?昨日はトイレに閉じ込めてやったんだ」

「あはは!弟ってイジメられる運命なんだよなー!」


「・・・・・・・・」(お前等も外道だ・・・)


僕は皆の言葉にちょっとだけ半目になり、心の中で冷たい風が吹き抜けていったのを感じた・・・

(皆のカツラの毛をコッソリ抜いといたろか!)












「まあ元気出せって!」

劇場からの帰り道、マットは呑気に笑いながら僕の背中をバンっと叩いた。
だけど僕は溜息しか出ない。

「元気なんてないよ・・・。帰ったらサマンサがまたを独り占めしてるんだから・・・」
「ま、まあ寂しいかもしれないけど・・・ちょっとの間だろ?」
「そうだけど!俺は毎日、ずーっとと二人でいたいんだよ!
今日だって朝、チラっと会ってから数時間は経ってるし、そろそろ禁断症状が出てきたよ・・・っ」
「はいはい、分かったよ・・・」

マットは苦笑いを浮かべつつ、お手上げといったように手を広げた。
僕はそんなマットを睨みつつ、また溜息をつく。

そう・・・今朝だって僕が"例の作業"をしている間にサマンサの奴はを勝手に連れ出し出かけてしまった。
"を送ってくるわね♪"なーんてニヤリとしたサマンサの顔を思い出すだけでムカつく。
まあ・・・今日、僕は舞台も近くて劇場でリハがあったしシアターには行かなかったからなんだけどさ・・・

「はぁ・・・」
「何だよ、また溜息ついて!あ、そうだ!どうせ帰ってもちゃん独り占めにされてるんだったら今夜パーティに来ないか?」
「・・・パーティ〜〜? ん〜・・・・・・」
「いいじゃん、たまにはさ!お前、ここ暫く参加してなかっただろ?それに彼女も来るぞ?」
「彼女・・・?」
「ほら!ラナだよ。K高の!」
「ああ、彼女・・・!」

それは僕が前に一度、お目にかかりたいと思っていた、この辺でも美人だと有名な子だった。
バイトでモデルまでやってるようだし期待は持てるってものだ。

「な?来いよ!ほんっと美人でスタイル良かったぞぉ〜?この前のパーティでは誰ともくっつかなかったしな」
「へぇ、そうなの?」
「ああ。皆、彼女を口説いてたけど、まあ少しお高い感じでさ。俺もちょっと話しただけで終ったし」
「珍しいな、お前にしちゃ!」
「ん〜俺は美人は好きだけどさ。もっと可愛らしい性格の子の方が好みだね」
「ぬ!それはのことか?」
「まあ・・・そうとも言う・・・って、そんな睨むなよ・・・」

僕がジロリと睨むとマットは少し後ずさりながらホールドアップした。

「まあ、とにかくさ!一度くらい来て彼女を見てみろよ。お前の好みには間違いないから」
「う〜ん・・・パーティねえ・・・。ま、考えておくよ。まずは帰ってみて様子を伺ってみないとさ」
「どうせ、そのアイアン姉ちゃんに邪魔されるだけだろ?」
「うるさいよ!っつか何でついてくるんだ、マット!」

ふと気づけばマットも一緒に僕のフラットの方に歩いている。
嫌な予感がして立ち止まりマットをじっと見れば、奴はまたしても僕の肩に腕を回した。

「まあまあ!俺も今日はちゃんの可愛いお顔を拝見してないしね。ちょっと寄ってっていいだろ?」
「ダメに決まってんだろ?!誰がお前なんかにを会わせるか!」
「ケチだなぁ!ちゃんはお前のものじゃないぞ?」
「俺のだよ!は俺の天使だからなっ!ほんとの妹みたいに可愛いんだっ」
「でも本当の妹じゃないだろぉ? なぁあ、ちょっとだけ!挨拶したらすぐ帰るって!
それにお前の姉ちゃんにも会ってみたいしさ」
「・・・・・・物好きだな、マットも・・・」

そう言いつつ、まあサマンサもいるし別にマットもに変なことはしないだろう・・・と思い直した。

そう!それにマットにサマンサの相手をさせておけば僕はと二人きりに――!(姑息)

そこに気づき、僕はニヤリとした。



「んっん!マットくん」
「あ?何だよ、気持ち悪いな」
「まあ・・・そこまで言うなら・・・。一緒に来てもいいよ?」
「何?ほんとにいいのか?」
「ああ、ただし!に指一本、触れちゃダメ!握手もハグも挨拶のキスも禁止!OK?」
「何だよ、それ・・・。まあ・・・仕方ないし、それでもいいけど・・・」
「よぉーし!じゃあ一緒に来たまえ!」
「偉そうだな・・・」
「何だって?」
「別に〜。じゃあお邪魔するかな」

マットはそう言いながら、ノコノコと僕についてきた。

ふふふ・・・お邪魔する?お前にはほんとに"お邪魔虫"になってもらわないとな。
もちろん・・・とサマンサのね!


僕はニヤニヤしつつ、上手く行けば隙を突いてを連れ出そうとすら考えていた。











「たーだいまぁ!」

部屋につくと元気よくドアを開けた。
だが何だか奥から人の笑い声とかが聞こえて来て首を傾げる。

「何だ・・・? 随分と賑やかだな・・・」
「どうした?誰か来てるのか?

マットも後ろから顔を出し、奥の様子を伺っている。

「ああ、そうみたいだけど・・・誰だ?」

僕はちょっと嫌な予感がして、すぐにリビングに向った。
すると、そこには――



「あら、お帰り、オーランド」
「あ、オーリィ、お帰りなさい!」
「お帰りなさい、お兄さん!」

「げっ!お前は・・・!!」

パタパタと走って来たに顔が緩みそうになるもソファに座っている面々を見てギョっとした。

「「お邪魔してまーす♪」」

「君たち・・・確かの・・・」

「はい。この前、遊びに来ていいって言ってくれたんで来ちゃいました」
「お姉さんにもシアターの方で会って紹介されたんです〜」

そう言ってキャリーとジェンは笑顔で立ち上がった。
その横には何故かショーティまでいてサマンサがニヤニヤしている。

を送っていったついでにシアターで見学してたの。それで皆と仲良くなっちゃったから家に呼んだのよ?」
「へぇ・・・そーなんだ」

(か、勝手なマネを!!彼女たちだけなら、まだしも何故にショーティまで・・・!!)

そこが気に入らず、僕は引きつった笑顔を見せつつ彼女たちに挨拶をした。
そこへマットもやってきて僕のフラットは途端に賑やかになる。

「オーリィ、お疲れさま!どうでしたか?劇場の方は」
「ん〜ただいまv !劇場の方は結構、広くていいとこだったよ?
「そうですか!楽しみですね、そんな広い舞台で演技出来るなんて!」
「うん。も絶対に見に来てね?」
「はい!絶対行きますっ」

は可愛い笑顔でそう言ってくれて、僕はといえばいつもの如く鼻の下が3センチは伸びた(!)
そこへサマンサがやってきて、僕は一瞬で現実に戻される。

「ちょっとオーランド、彼は?」
「え? ああ・・・あいつはマット。同じシアターの奴で今度一緒に舞台に立つんだ。友達だよ」
「ふーん。まあ、あんたの友達だからどうせろくでもない奴なんでしょうけどっ」
「何だとぅ?
「だって、ほら。もう彼女達にとりいってる」
「・・・・・・っ」

その言葉にバっと振り向けば確かにマットはキャリーとジェンの間に座り、(ショーティを隅に追いやっている)
楽しげに話しているようだ。

まあ僕としてはにちょっかいだされるより全然いいんだけど。
サマンサの目には軽い男としか映らないんだろうな。
ほら、今だって呆れたように溜息をついてる。

「あんた、もうちょっと友達、選びなさいよ?」
「はあ? そりゃ自分もだろ?」
「何ですって? 私の友達のどこがいけないって言うの?」
「ブランド物しか興味なくて、男だって金持ってないと問題外ってな女ばっかだろ?」
「そんなの当たり前じゃない!少しシビアに見てるだけでしょ?何がいけないのよっ」
「たいしていい女でもないのに、それすら分かってないで高望みしすぎなんだよ!もっと自分を見直せばいいのに」
「言ったわねぇ〜〜!」
「何だよ!」

「ケンカはダメです・・・!」

「「――っ」」

一触即発・・・のところで、いきなりが間に入り、この前のように僕を悲しげな顔で見上げてくる。
その顔を見てしまうと僕もサマンサも言葉につまり、何も言えなくなってしまった。

「ご、ごめんね?・・・」
「もうケンカしないわ?」

楽しく話してた皆も驚いたように、こっちを見ていたがが嬉しそうにニコっと微笑むと、
その場の空気が一瞬で和んだ気がした。

「なら良かったです。あ、オーリィ、紅茶飲みますか?」
「あ、うん。手伝うよ」
「はい」

僕はサマンサをその場に残し、さっさとを連れてキッチンへと向った。
皆もケンカが終わりホっとしたのか、また楽しそうに話し出したようだ。

は今日も発声練習?」

一生懸命、カップに紅茶を注いでいるを見ながら尋ねると、いつもの可愛い笑顔が僕を見上げてきた。

「はい。でも今度、新人だけで小さな劇をやるみたいです。それのオーディションの話も聞いて来ました」
「ああ、そっか!そんなのもあったね!、もちろん受けるんだろ?」
「はい!頑張ります」

嬉しそうに微笑むに僕までが笑顔になり、軽く頭を撫でると素早く額にキスまでしてしまった。

「オ、オーリィ・・・.?」
「もし役が取れたら絶対に見に行くからさ!」
「はいっ。私もオーリーに見て欲しいです。あ、はい、紅茶」
「ありがとう」

僕はカップを受け取るとその場で一口飲みながらリビングに戻りたくないなぁと思っていた。

だいたい、お邪魔虫が多すぎなんだよな・・・
サマンサだけでも手強いのに、あんなに来られちゃとゆっくりする時間もないよ・・・
でもの友達だし(ショーティは除いて)仕方ないんだけどさ。


「ちょっとオーランド!早くこっち来てお客さんの相手しなさいよ。彼女たち、待ってるわよ?」


そこへサマンサが顔を出し、僕は思い切り溜息をついた。

「今、行くよ・・・」
「早くしてね。あ、、後で一緒に夕飯の買い物に行きましょうね?」
「はい!」
「・・・・・・・・・・・・」

(その仕事は本来なら僕の仕事なのに・・・・・・・!)

今日もまたサマンサにを独り占めにされると思うと本当に姉が憎らしく思えてきた。

(こうなりゃ、ほんとにマットとパーティに出た方がいいかもな・・・・)

そんな事を考えつつ、と一緒にリビングに戻ると、キャリーとジェンが笑顔で僕に手招きしてくる。

「お兄さん、ここ座って下さい」
「そうですよー。私達、お兄さんに会いに来たんですから」
「え?で、でも君たちはの――」
「早く!早く!」
「あ、う、うん・・・・・・」

キャリーという子にグイグイと腕を引っ張られ、僕は仕方なく二人の間に座った。
それをサマンサは呆れたように見てるし、マットはマットでニヤニヤしながら見ていて感じ悪い。

「あのっ」
「え?」

女の子二人に挟まれ、なんとも居心地の悪さを感じていると不意に服を引っ張られた。

「お兄さんのこと、オーランドって呼んでいいですか?」
「あ、ああ・・・。うん、いいけど・・・」
「やったー!に聞いたら本当のお兄さんじゃないって言うし、じゃあお兄さんって呼ぶのも変だと思って」
「そ、そうだね・・・うん」
「でも、じゃあ何で二人は一緒に住んでるんですか? 親戚か何か?」
「いや、それは・・・」

ポンポンと質問が飛んで来て僕は困りながらも答えていった。
その間、はサマンサやショーティ、マットと楽しそうに話していて時々心配になる。

クソゥ・・・何で僕だけのけ者なんだ!
マットも、ここぞとばかりにに話し掛けやがってぇー!
こっちも少しは手伝えってんだ!女好きだろう? お前わっ!

「ねぇねぇ、オーランド。今度、私達と順番にデートしてくれません?」
「え? いやでも―」
「いいじゃないですか。私達、これでもお酒も飲めるし大人向きなデートも出来ますけど?」
「・・・は?」

何だかジェンという子は意味深な事を言ってキャリーとクスクス笑っている。

こ、これは・・・誘ってるんだろうか・・・?
は!い、いやいや!ダメダメ!彼女たちはあくまでの友達なんだ。
の友達に手をつけるわけにはいかないぞっ。

「オーランド? ダメですか?」
「え?あ・・・じゃ、じゃあ・・・今度も一緒に4人で映画にでも・・・」
「えぇーー?どうして?二人きりじゃダメなんですかぁ〜?」
「う・・・・・・」

ジェンはそう言いながら僕の腕に自分の腕を絡めてきた。
大きめな彼女の胸が僕の腕にプニプニと当たるからちょっとドキっとする。

(最近、健全な生活してたし、とんとご無沙汰してるからなぁ・・・)(ヲイ)

「い、いや、だからさ―」
「おい、オーランド!美女二人を独り占めにするなんてずるいぞ?俺も混ぜろよっ」
「あ・・・マット・・・っ」

返事に困っていると、そこへ救世主かのようにマットが登場した。
まあ、どうせ腕なんか絡められてるから、スケベ心で来ただけだろうけどね・・・

「デートするなら俺もいれて4人でどう?」
「えーどうしようかなぁ〜」
「ねぇ〜?」

マットの言葉に彼女たちはクスクス笑いながらそんな事を言っている。
僕は内心、4人でも、この状態は無理だと思った。
の友達をマットの餌食にするわけにもいかないしね。

「そ、そうだ、マット!もうパーティの時間だろ?遅れるぞ?」
「え?」

この場から脱出するにはこれしかない。
僕が出かければ彼女たちもと楽しい時間を過ごすに違いないんだ。

そう思いながら僕はマットの方に目配せをした。

「何、お前パーティ参加するのか?」
「あ、当たり前だろ?ほら早く行くぞ?」
「あ、ああ・・・じゃあ・・・行くか」

そう言って二人で立ち上がると僕は彼女たちにニッコリと微笑んだ。

「じゃ、じゃあ俺達は出かけるけどゆっくりして行ってよ」
「えぇーオーランドが出かけるなら私達も帰るわ?」
「ねぇ? 行こうか、ジェン」
「え?ちょ、ちょっと二人とも・・・」

二人は急に帰ると言い出しソファから立ち上がった。
それには僕も驚いてを見る。

「あ、ジェンもキャリーも帰っちゃうんですか?」
「ええ、また明日、シアターでね?」
「バイバイ、。あ、オーランド、さっきの話、考えておいて下さいね!」
「ちょ、ちょっと・・・!」

二人はそう言うとサッサと帰ってしまった。
しかもショーティを置いて・・・・・・

「な・・・何なんだ・・・?」

と殆ど話もしないで帰ってしまった彼女たちに僕は呆気に取られた。
も少しだけ寂しそうな顔をしてドアの方を見ている。

「あ、ショーティ、さっき言ってた小説、持ってきます」
「うん、ありがとう」

はそう言って自分の部屋へと走って行った。
それを見ながらサマンサは軽く溜息をついて僕の方に歩いて来る。

「あの子達・・・ほんとにの友達なの?」
「え?」
「私には、そんな風に見えなかったけど」
「どういう意味だよ?」

サマンサの言葉に僕は顔を顰めるとそこへマットも入って来た。

「お前、ほんとに気づかなかったのか?」
「あ? だから何だよ?」

二人に変な事を言われ、僕はムっとしてマットを見た。
するとマットとサマンサは互いに顔を見合わせ、軽く溜息なんてついている。
初対面同士のクセに妙に息がピッタリで気持ち悪い。

「バカね、オーランド・・・。彼女たちの目的はじゃなくて、あんたよ、あんた!」
「は?」
「そうそう。俺はすーぐ分かったけどな!」
「な、何だよ、それ」
「だからぁ〜彼女たちはを利用してあんたに取入ろうとしたってこと!OK?」
「な・・・!まさかそんな・・・」

「僕も・・・そう思います・・・」

「「「・・・・・・っ?」」」

小さな声が聞こえて一斉に振り向けばそこにショーティが気まずそうな顔で立っていた。

「どういうこと・・・・・・?」
「実は・・・今日も僕とちゃんがオーディションの事とかで話していたら突然、彼女たちが話し掛けてきて・・・」
「お、お前、と二人で話してたのか?!
「え? あ、はい・・・」
「おい、オーランド・・・そこは流せよ・・・」
「・・・流せるかよっ」

僕はムっとして顔をそらしたが、確かに今はそんなことは言っていられない。
小僧とが二人で話してたという事実はムカつくがグっと怒りを抑えこんだ。(大人だ、俺)(?)

「それで?」
「あ、はい。それで・・・ジェンがいきなりちゃんに"今日、家に遊びに行っていいか"って聞いてて・・・
ちゃんは嬉しそうに返事をして、そこで僕のことも誘ってくれたんですけど・・・」
「へー・・・。(聞いてねーよっ)(大人気ない)」
「その時、彼女たちが"お兄さんは今日、早く帰って来る?"とか色々聞いてたんでおかしいなって思ったんです」
「俺のこと・・・?」
「はい。僕はどうしてちゃんと遊ぶのにそんなにお兄さんの事を気にするんだろうなって思ってたんですけど・・・
さっきの彼女たちの態度を見て気づきました。
きっと彼女たち、ちゃんに近づいてお兄さんとも仲良くなろうとしてるんじゃないですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


じゃないですか?と聞かれても困るぞ、小僧。
俺は別に彼女たちと仲良くなろうなんて思ってないし、いやと友達になってくれた子達だから大事にはしようと思ってたけど。
でも、それだけで下心なんてないぞ、決して!
い、いや、待て!それじゃ何か?彼女たちはを利用しただけか?
本当は友達になるつもりなんてなかったって事か・・・?(遅)

「やっと分かったようね、オーランド」

「・・・・・・っ」

サマンサは溜息交じりで僕を見ている。
だけど僕はサマンサよりも、彼女達に怒りを感じ、そして同時にの気持ちを考えると凄く悲しくなった。

は・・・・・・気づいてる?」
「いえ・・・。ちゃんは二人と友達になれたって喜んでました・・・・」
「そっか・・・。じゃあ・・・このことは黙っててくれるかな」
「はい、もちろんです!」

ショーティはそう言ってチラっとの部屋の方を見た。

「あんたって何故か昔からモテてたもんね」
「あーそうそう、今でもモテますよ?ムカツクくらいに」
「あら、そうなの?やっぱり一人暮らしして女連れ込んだりしてたんだ」
「そーなんですよ、お姉さん!」

(ぬ・・・サマンサもマットもベラベラと勝手な事を・・・!)

何だか気が合ってる二人をジロっと睨みつつ、それでも言い返すほどの元気もない。
ただに悪い事をしたような気がして、僕は彼女の部屋へと行った。



・・・?」
「あ、オーリィ」

はさっき言っていた小説が見当たらないのか、一生懸命に本棚を探している。
僕はゆっくりの方に歩いて行って、後ろからそっと小さな細い体を抱きしめた。

「オ、オーリィ?どうしたんですか?」
「・・・ううん・・・ちょっと抱きしめたいなぁって思っただけだよ?」
「・・・な、何かありました?オーリィ・・・元気ないです・・・」

は声だけで、いつもの僕と違うのを感じたのか、心配そうな声を出す。
僕はギュっと彼女を抱きしめるとすぐに離して自分の方に向けた。

「そんなことないよ?俺はいつも元気だろ?」
「はい・・・でも・・・」
「大丈夫だって!ほら!」

まだ心配そうなに僕は笑顔を見せて顔を覗き込んだ。
するとへニャっと下がっていた眉が少しだけ上がり、もニコっと微笑んでくれる。
その笑顔だけで僕は元気になれるんだ。

「本、見つからないの?一緒に探そうか」
「あ、大丈夫です。確か、この辺の奥に・・・あ、あった!」

は棚の奥に手を入れて目当ての本を引っ張り出すと笑顔でそれを僕に見せた。
その笑顔が本当に可愛くて、僕はもう一度を、今度は正面から抱きしめる。

「オ、オーリィ・・・?」
「最近、こうやってをギュって出来なかったからちょっとだけね?」
「は、はい・・・」

は恥ずかしいのか僕の胸元に顔を埋めるように頷いた。
彼女の体は本当に細くて少し力を入れると折れてしまいそうで怖くなる。

「オーリィ・・・?」
「ん?」
「今日・・・ご飯何が食べたいですか?」
「・・・へ?」
「もう少ししたらサマンサお姉ちゃんと買い物に行くから何がいいかなぁと思って・・・」
「そ、そぅ・・・だなぁ・・・」

こんな状態で、そんな事を聞いてくるに僕は自然と笑顔になった。

(こんな可愛いを利用するなんて許せないよ、ほんと・・・)

「じゃあ・・・今夜はの作った日本食がいいかな?」
「日本食、すっかり好きになりましたね? オーリィ」

クスクス笑うをそっと離し、額にチュっとキスをするとすぐに驚いたような顔で僕を見あげて来る。

「そりゃが作ってくれるものは何でも美味しいからね?」
「そ、そうですか・・・?」
「うん。はいいお嫁さんになれるよ?」
「なら・・・嬉しいです・・・」

照れくさそうにそう言うが可愛くて僕は少しだけ赤く染まったほっペにもチュっとキスをした。
そこへ、いきなりドアが開く―


「ちょっとオーランド、何して・・・って、あんた、ほんとに何してんのよ!」

「げ、サマンサ!」


ちょうど、ほっペにキスをしてるとこを見られ、僕は硬直した。

「ちょっと目を離せば、すぐセクハラして!を離しなさいよ!」

「やだね!サマンサが来てから俺はと二人の時間をもてないんだぞ?少しくらい返してくれたっていいだろっ!」

「何言ってるのよ!私が来るまであんたが独り占めしてたんでしょ?!」

「当たり前だろ?同棲してるんだから!」

「バッカじゃないの?あんたがしてるのは"同棲"じゃなくて、ただの"同居"よ!
さ、、こんなバカでいやらし男は放っておいて一緒に買い物に行きましょ?」

「こら!サマンサ!誰がバカでいやらしいんだよ!に変なこと吹き込むなよっ」

「あら。自覚してないって怖いわぁ〜。さ、、押し倒される前にオーランドから離れなさい?」

「だ、誰が押し倒すんだよ!そんなことしないよ!」

「いーや、こいつはするかもな・・・」

「ぐ・・・マット!!」


そこへマットまでが乱入してきて僕は更に血圧が上がった。
だけど腕の中にいるは僕らの言い合いに困ったような顔をして、しきりに僕の服を引っ張ってくる。

「オーリィ・・・ケンカしないって、さっき言ったのに・・・」
「そ、そうだったねーー?うん、しないよ!ケンカなんてさ!俺は大人だしね?」
「体だけはな?」
「オイ、コラマット!!」
「オーランド!を早く返してよ!」
「うるさい、誰が返すか!べぇー!(めちゃ子供)」

何だか3人乱れてのケンカになり、誰が誰に文句を言っているのか分からない状態。

それをコッソリ、見ていたショーティは・・・・


「あ、あの僕、そろそろ帰りますね・・・・・・」


「「「勝手に帰れ!!」」」


「は、はいぃ!」





皆に怒鳴られ、から借りるはずだった本すら忘れて部屋を飛び出して行ったそうな・・・









愚姉が来てからろくなことがない。


そう、今、この家には天使と悪魔が同居している。


もちろん"天使"はで、"悪魔"は・・・・・・








Iron elder sister






こんな姉を誰か早く引き取って下さい・・・(切実)


















何だか騒がしくなっております・・・(苦笑)
いつになればオーリィに安息の日々が戻るのでしょう・・・


日ごろの感謝を込めて…


C-MOON管理人HANAZO