「お前・・・心なしか・・・やつれてない?」
マットはそう言いながら少しだけ眉を寄せた。
周りにいる友人達も何だか気の毒〜な顔をして僕を眺めている。
よしてくれよ、同情なんてさ・・・
いくら僕が悪魔に摂りつかれてるからって・・・ははは(渇笑)
「何だか顔色も悪いし・・・お前ちゃんと寝れてるのか?」
「いや・・・どうだろ・・・。自分では寝てるつもりなんだけどね・・・気づけば今日もガムテープで口を塞がれててさ・・・はは・・・」
「は?ガムテープ?」
マットの奴は心底、驚いた顔で、アホの子みたいに口を開けている。
いや、分かるよ、マット・・・その驚く気持ち・・・
そうだろう?驚くだろう?!
僕だって驚いたさ・・・っ!
そう、今朝も何か息苦しいなぁ〜なんて思って目が覚めたら自分の口にガムテープなんて貼られてるんだからさ!!
これって立派に犯罪だよね? 法律に違反してるだろ?
「・・・つーか殺人未遂だよ!!バカ姉貴!!」
「「「「「!!!!」」」」」
そう心で(のつもり)叫び、ドン!っとテーブルを殴ると、周りの奴等は皆、ビク!っとして首を窄め怯えた顔を僕に向けた。
全く、よくもまあ、次から次にイタズラ(イジメ?)を思いつくよ、ほんと!!
だいたいを独り占めしてるだけでも許しがたいっつーのに!
「おい・・・大丈夫か? オーランド・・・(恐る恐る)」
「・・・何が?」
「何がってお前・・・急に殺人とか言うから・・・(ビクビク)」
「え?俺、そんなこと言った?」
「言っただろ?つーか怒鳴ったよ・・・。なあ?皆・・・」
マットがそう言って皆の方を振り向くと全員がウンウンっと頷いた。
それを聞いて僕はフっと微笑み、軽く息をつく。
「そっか・・・そりゃ悪かったな・・・。ちょっと心底、怒りを感じてたんだ・・・」
「おい、オーランド・・・大丈夫か?さっきから額の血管がピクピクしてて、ちょー怖いんだけど・・・」
「そんな血管の一本や二本、ピクろうが切れようが、どうってことないさ・・・。サマンサのイジメに耐え抜いてる僕にしたらね・・・」
「・・・・・おい、オーランド・・・目が据わって・・・って、ちょ・・・どこ行くんだ? その格好で・・・」
「どこって帰るんだよ・・・。あの悪魔の住み着いた家に・・・天使はどこかに飛んで行っちゃったからさ・・・」
「そ、そうか。それは気の毒だな・・・(だいぶ脳が破壊されてるな・・・) でも・・・帰るなら衣装とカツラは置いていけ・・・?」
「・・・・・・・・・・」
マットの言葉に自分の姿を鏡に映してみると――
自分では気づかなかったが、僕はまだ変なカツラと衣装を身に着けていて、
尚且つ自分のリュックをしっかりと背中に背負っていた・・・(ちょっとかっこ悪い)
僕に天使が舞い降りた...06
「らららーん♪ららららー♪」
私は機嫌よく鼻歌なんてハミングしながら野菜や果物を切っていった。
これを今からミキサーにかけて"サマンサ特製、フルーツジュース&野菜ジュース"を作るのだ。
「これでよし、っと♪さぁーて、ミキサースタート〜」
まずはフルーツから入れてスタートボタンを押すと、ウィンウィーーンとミキサーが回り始める。
苺も入れたので薄っすらとピンク色になっていき、可愛い色のジュースが出来る。
「これは用ね。はピンク好きだし喜ぶわぁ、きっと♪」
あの可愛い笑顔で飲んでくれる事を想像しつつウキウキしながら出来上がったジュースをガラスのアイス用ポットに入れていく。
それを冷蔵庫に入れて、ふと時計を見てみるとそろそろが帰って来る時間だった。
早く帰って来ないかなあ。
毎日、家でお留守番してると暇なのよねぇー。
やることは終っちゃったし。
そう、本来の目的であるロンドンの演技学校への件はとっくに解決していて本当はもうロンドンにいる用はない。
だからオーランドのフラットに住み着く必要も全くないのだ。
でもここですんなりと帰ってしまってもバカオーランドを喜ばせるだけだということはよぉく分かっている。
だから用事は終ってないと嘘を言って、もう暫く留まる事にしたのだ。
ふふん。こっちにいる間はをずっと独り占めしてやるわー。
見てらっしゃい、オーランド!
(心底、弟いじめが好きな女だわ、私ってば♪)
「るるるるー♪らら〜♪っと、よし今度は野菜ジュース!」
ノリノリで切った野菜をミキサーの中へと放り込み、あと色々な隠し味用に薬味(?)も入れていく。
どうせオーランドなんて不摂生な生活をしてたに違いないんだから栄養をつけてあげないとね!
「これはアホなベジタリアンのオーランド用っと♪ポチ!」
ウィンウィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン〜〜〜〜ガリガガリバキッガリィ〜〜ゥィ〜〜〜〜ン〜〜
キッチンにほんとに野菜の砕ける音か?というほどの騒音が響き渡っているが
私はこのジュースが出来上がるのが楽しみで自然に顔も笑顔になる。
「さて、こんなもんかな? うふふふふ・・・♪いい色になったわぁー」
私はこれを飲んだ時のオーランドの顔が楽しみで思い切りニヤリと笑ったのだった。
「あれ?ちゃん、どこ行くの?」
「あ、ショーティ」
シアターを出てが歩いて行こうとした時、後ろからショーティが走って来た。
「こっちは家じゃないだろ?どっか寄り道?」
「はい、えっと・・・ここに・・・」
そう言ってが出したのは一枚のメモ。
そこにはどこかの劇場の名前と住所が書かれてあった。
ショーティはそれを見ると、「ここへ行きたいの?」との顔を覗き込む。
(ショーティは177センチもあるので小さなと目を合わすには覗き込むしかないのだ)
するとはコクンと頷き、少しだけ目を伏せる。
その様子にショーティは首を傾げ、もう一度メモを見た。
「ここに行って何か見るの?あ、もしかして―」
「はい・・・。オーリィがそこに・・・」
「ああ、そうだったよね!今、お兄さん達は劇場で通し稽古中だっけ!え?お兄さんに会いに行きたいの?」
「はい・・・迎えに行きたくて・・・」
「あ、そっかぁ・・・でも・・・ここ、ちょっと遠いよ?一人で行ける?」
「・・・・・・・・・・・」
ショーティがそう尋ねるとは泣きそうな顔でジっと彼を見つめている。
それにはショーティも苦笑いを浮かべ、の頭にポンっと手を置いた。
「僕が連れて行ってあげようか」
「・・・いいんですか・・・・?」
「いいよ。今日はバイトもないしさ。それにちゃん一人で行かせても心配だしね」
「あ、ありがとうっ」
ショーティの言葉にはやっと笑顔に見せた。
そんなにショーティも笑顔を返し、そのまま一緒にバス停まで歩いて行く。
「でもどうして劇場まで迎えに行きたいの?家で会えるだろ?」
ショーティは歩きながら気になっていた事を聞いてみた。
するとは少し目を伏せ小さく首を振る。
「最近・・・ゆっくりオーリィと話してなかったし今はシアターにも来ないから帰りに一緒にアイスを食べに行く事も出来ないの・・・」
「そっかぁ・・・。家でだけじゃ時間もないんだ」
「オーリィ最近疲れてるようなんです・・・。帰りも遅いし・・・私が寝てから帰って来る事もあるから会えるのは朝ちょっとだけで」
「それで寂しくなったの?」
「・・・・・・・・・・・・」
ショーティの問いにはコクンと頷いた。
そんなを見てショーティは、ちょっとだけ笑顔を見せる。
「そっか。ちゃんはお兄さんが大好きなんだね」
「はい、大好きです・・・っ」
「きっと、お兄さんもちゃんのこと大好きだと思うよ?」
「そうかなぁ・・・。私、いつも迷惑ばかりかけちゃうから・・・」
「そんなこと思ってないよ。きっと会いに行ったら凄く喜んでくれると思うな!」
ショーティがそう言っての顔を覗き込むと、は嬉しそうに微笑んだ。
「なぁ、ちゃんは元気なのか?」
僕がやっと衣装から自分の服へ着替え終わって(時々意識を失いそうになった)出て来るとマットのアホが待ち伏せしていた。
(そんなに俺が好きか、お前)
「何で、そんなこと聞くんだよ?」
僕はとっとと帰ろうと控室を出て裏口へと歩いて行くと、マットも後ろからついてきた。
今週はずっと会場となるホールで通し稽古中だ。
「いや・・・先週、お前の家に行って以来、とんと会ってないからなー。シアターの方には行ってるんだろ?」
「うん。頑張ってるよ?朝食の時に俺にもちゃんと毎日、何をやったとか教えてくれるし・・・ただ邪魔者が・・・っっっ!」
例の如く僕の頭に憎たらしいサマンサの顔が浮かんできてググっと握りこぶしを固めた。
(しかもアカンベェしてる顔だから最悪さっ)
「わ、分かった・・・分かったから落ち着け!な?」
そんな僕を見てマットも心中を察してくれたのか、肩をポンポンとしてくれる。
僕は何とか怒りを静め思い切り深呼吸をした。
「でもサマンサの邪魔も凄まじいけど・・・最近は俺も遅くなったりするだろ?通し稽古で」
「ああ、まあ、そうだなぁ」
「だから帰ってもは先に寝ちゃった後とかで、まともに会えるのも朝食の時だけなんだ・・・」
「そうなのか?そりゃお前にしたらキツイだろ」
「すっごいキツイよ!しかも帰って寝る前にの寝顔を見に行こうとしただけでサマンサの蹴りが俺のお尻に炸裂するんだっ」
「け、蹴り・・・?!」
「"あんた、が寝てるのをいいことにセクハラするつもりね!"とか言ってさ!俺がそんなことするような男に見えるか?!」
「・・・(ウン♪) い、いやあ・・・どう・・・かな?」
「だろぉう?!なのにサマンサの奴、悉く俺との邪魔をしくさって朝の貴重な時間でさえ最近、危ういんだ!」
そんなことを話していると再び怒りが復活してきて俺の拳はぷるぷるしている。
「ま、で、でもさ・・・ちゃんも俺達の舞台は見に来てくれるんだろ?」
「うん!それだけは楽しみなんだよ!その頃には多分サマンサの奴も帰ってると思うしさ」(そこは笑顔になるゲンキンな俺)
「そ、そっか。じゃあ良かったな・・・って、あれ?あの子・・・ちゃんに似てないか?
二人で外に出るとマットの奴が不意にそんな事を言い出し、顔を通りの向こうに向けている。
それを聞いて僕は人差し指を立てて否定してあげた。
「チッチッチ!分かってないねぇーマットは!のように可愛らすぃー女の子がそんなにいるわけないだろ?」
「いや、でもソックリなんだけど・・・ほら、あの男と一緒に通りの向こうに立ってる子・・・」
「はあ?男ぉ?それこそ大馬鹿者だな、マット!がこんな時間に男と一緒なわけ・・・ってげげぇっ!!」
(ちょっと目が飛び出た)
何気なく通りの向こうに目をやるとそこには確かにがいた。
しかも僕に気づいて笑顔で手を振っている。
そのあまりの可愛さに一瞬ですさんでいた僕の心が癒されていった。
が・・・!ムカツク事にと一緒の男とはあのショーティだった!
「ほーら!やっぱりちゃんだ!一緒にいるの、この前のショーティとか言う奴だろ?」
「うううるさい!ななな何で、あいつとが一緒にぃぃ〜〜っっ」
「さあ?でも、お前の姉ちゃんはいなさそうだぞ?」
「え?あ・・・・」
そこに気づき、僕は心の中でガッツポーズをした。
(そうだ!サマンサがいないなら少しだけでもとの時間が取れるかも・・・!!)
「ほら、行くぞ!オーランド!・・・って何ニヤニヤしてんだ?気持ち悪ぃーな」
「チ・・・っ」
「あ?」
(邪魔者は何もサマンサだけじゃなかったぜ・・・と気づいた僕の気持ち=舌打ち)
まあ、それでも何でもが今、目の前で手を振っているという事実が僕を幸せにしてくれた。
その笑顔に答えるべく、すぐに通りを渡りの方に走って行くと、は嬉しそうに僕の方に駆け寄って来てくれる。
「オーリィ!もう終ったんですか?」
「ー♪どうしたの?こんなとこまで!」
「ぅひゃっ」
を目の前にした僕の理性なんてたかが知れている。
すぐにを抱き上げ、その場でくるくると回ってあげた。
「あ、あのオーリーを迎えに・・・」
「え!ほんと?俺を迎えに来てくれたわけ?」
「はい・・・.ひゃ・・・お、下ろして、オーリィ・・・っ」
「あーごめん、ごめん!」
僕はちょっと笑いながら怖がるを下へと降ろし、代わりにむぎゅうっと愛情たっぷりのハグをしてあげた。
「んー♪こうしてをギュってするのも久し振りだなぁーー!!」(ちょー満喫)
「おい、オーランド!離してやれって!ちゃん苦しいだろ?」
「あ、っと・・・、大丈夫?」
マットに頭を小突かれムっとしたものの、の顔が僕の胸に押し付けられているのに気づき慌てて離す。
するとは「ぷは・・・」っと顔を上げてそれでもニッコリ微笑んでくれた。
「大丈夫です・・・」
「そう?でも・・・こんな時間にこんな遠い場所まで来て危ないだろ?」
「はい・・・でもショーティがここまで案内してくれて・・・」
のその言葉に後ろを振り返ればショーティがニコニコしながら立っている。
まあを無事に送り届けてくれたのだから今日は怒るまい・・・
そう思いつつ、僕はショーティに笑顔(でも引きつってる心狭い男)を見せた。
「やあ、ショーティ。俺のを送ってくれて、どうもありがとう」(小さい)
「い、いえ!ちゃん一人で行こうとしてたんで危ないなぁと思っただけです」
「そ、そう・・・(え?ってば一人で俺を迎えに来ようとしてくれたのかーー!か、感激!)」
僕はその事実を知り、またへの愛情がMAXへと達した。
「あ、あのお兄さん・・・」
「ん?何だい? (ちょっと機嫌がいい)」
「いえ・・・ちゃん・・・寂しがってたんです・・・」
「え?」
「最近、お兄さんとゆっくり話す時間もなかったって・・・。だから今日、迎えに来ようと・・・」
「・・・そ、そうなの?・・・」
僕はショーティの言葉に驚き、腕の中にスッポリ納まっているの顔を覗き込んだ。
するとは少しだけ目を伏せてコクンと頷く。
「そっか・・・。ごめんね?俺が最近、遅かったから・・・」
「う、ううん・・・いいんですっ。オーリーは舞台の稽古で忙しいんですから」.
「・・・」
必死にそう言ってくれるに僕の胸は熱くなった。
すると今まで静かだったマットがグスっと鼻を啜っている。
「い、いい子だなぁ・・・ちゃん・・・。こんな奴のために、そこまで考えて我慢するなんて・・・」
「おい、マット・・・。一言、余計だ・・・」
「あ、悪い・・・」
ジロっとマットを睨むと奴は鼻を啜りつつも引きつった笑顔を見せる。
(ったく!どいつもこいつも!)
ちょっと怒りを覚えつつ、でもがそんな風に思っててくれたことが嬉しくて僕はをギュっと抱きしめた。
「じゃあ一緒に帰ろうか・・・」
「はい・・・帰りましょ?」
(うぅ〜♪かぁいぃ♪)
の嬉しそうな笑顔を見ただけで僕は残り二人の存在はすっかり消え去ったも同然のように顔が緩んでいく。
だが現実には後ろにいるワケで・・・・・・
「あ、お兄さん。ちゃん、一緒にアイス食べたいって言ってました」
「あ、俺もアイス食べたいなー。おいオーランド!アイス食ってこうぜ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・(邪魔なんだよ,お前らわっ!!)」
その邪魔な声に再び僕の額がピクピク動き出したが、隣には可愛いがいるから少しは耐えられる。
「じゃあ帰る前に、いつものアイス屋さんに寄って行こっか♪」
「はいっ」
「よし、行こう!早くしないと閉まっちゃうしね」
僕は時計を見ながらそう言うとの手を引いて近くのバス停まで急いで歩いて行った。
(出来れば二人を振り切りたかったが、奴らはピッタリマークのディフェンダーの如くくっついてきやがった!)
ちょうど来たバスに皆で飛び乗り、20分もすると僕のフラットの近くのバス停が見えてきてそこでと一緒に下りる。
何故かマットとショーティまでもが下りてきて今度は"ピクッ"ではなく"ピキッ"っときたが、これも我慢、我慢、我慢・・・・
ラッキーなことに、いつもとアイスを買いに来る店はギリギリ開いていた。
そこで僕はの大好きな苺アイスを買ってあげる。
「はい、アイス」
「わぁ、ありがとう御座います、オーリー」
僕がアイスを渡すとは嬉しそうに微笑んで、それを受け取った。
その笑顔に全身の筋肉がへニャっとなっていると、何故かまだつい来ていた二人も一緒にアイスを買っているのが見える。
「おぉー♪うまそぉー」
「おい、マット・・・何、二段のアイス買ってんだよ・・・お前は子供かっ」
「何だよーいいだろー?大人は二段にしちゃいけない法律でもあんのか?」
「へーへー。ないですよ!さ、、あそこに座って食べよう?」
屁理屈王のマットを交わし、僕はの手を引いて店の前にあるオープンになっている席へと座った。
まあ案の定、二人も向かい側に座り、僕はほんとにウンザリしたんだけどねっ。(少し離れて座れっ)
「美味しい?」
「はい、美味しいです」
「そっか。良かったねー♪」
リスのように小さな口でアイスを食べるに僕はその名の通り、ふにゃふにゃになりつつ、彼女の頭を撫でてあげる。
それを見て呆れ顔のマットなんて軽く無視だ、このヤロウ。
(つか二段アイスを嬉しそうに頬張っているお前が分かんないよ、マット・・・)
「ここのアイス美味しいですね。今度、僕も買いに来よう」
「・・・お前も甘いもん好きなわけ?」
ショーティまでが嬉しそうにアイスを食べていて僕はちょっと呆れつつ尋ねると、彼はニコニコしながら頷いた。
まあ、僕も好きだけどね。
そんな嬉しそうな顔してまでは食べな―
「はい、オーリィ。苺も食べますか?」
「うん、食べるよー♪」(オイコラ)
から差し出されたスプーンをパクっと口に入れると一気に口の中が冷たくなる。
そして苺の甘い香りが僕を包んだ。
「ん!美味しい!」
「ね?美味しいですよね?」
「ねー?」
の笑顔を見ながら僕もニコニコ(デレデレ?)しているとマットの溜息が聞こえた気がした。
(ふん!僻むな、僻むな)
その後、皆でアイスを食べ終わると、そこでマットとショーティは自分の家へと帰って行った。
僕はやっとと二人きりになれたのが嬉しくて、何だか家に帰りたくなくなってしまう。
「少し遅くなっちゃいましたね・・・」
「んーでも大丈夫だよ。サマンサは一人で全然、生きていけるしね」
「でも・・・心配してるかも・・・」
「あー気にしない気にしない。俺も一緒なんだしさ!こうして一緒に寄り道するのも久し振りだろ?」
僕はそう言っての頬に素早くキスをするとは恥ずかしそうに俯いてしまった。
ちょっと頬が赤くなったりしてめちゃくちゃ可愛い。
あーほんと帰りたくない・・・
いや、サマンサがいないなら速攻で帰ってと家でノンビリとビデオでも見たいとこなんだけどさ。
ぐぅぅ・・・
「・・・・・・っ」
「あれ・・・もしかして・・・お腹空いた?」
「は、はぃ・・・」
可愛い音がして思わず笑顔で尋ねればは恥ずかしいのか、耳まで真っ赤になっている。
あーもう、ほんとに可愛すぎるんだから。
仕方ない・・・この二人きりの時間をもう少し満喫したかったけど、がお腹空いたんじゃ帰らないわけには行かないよね。
「じゃ、急いで帰ってご飯食べよう?」
「はい」
僕はの手を引いてそこから5分のところにあるフラットに急いで戻った。
が・・・ドアの前まで来た時、ちょっとゾクっとして足を止める。
「どうしたんですか?オーリィ・・・」
「ん?ああ、いや・・・ちょーっと悪寒がね・・・でも大丈夫だよ!」
心配そうなに笑顔でそう言うと僕は覚悟を決めてドアを開けた。
「たーだいまぁー!」
「・・・遅かったわね」
「うぉ!」
元気よく家の中へと入れば目の前にサマンサが仁王立ちしていて飛び上がった。
「なな何だよ!心臓に悪いだろ?!」
「何言ってんの!こんな遅くまでを連れまわして!心配するでしょ?!」
「そりゃ悪かったね!でも今日はが俺を迎えに来てくれたんだよ!」
「だったら電話くらい出来ないわけ?!もしかして誘拐されたんじゃないかって捜索願いだそうと思ったのよっ?」
「あー悪かったよ!今度からそうする!」
とせっかく楽しい時間を過ごしてきたのにここでサマンサと長々モメて気分を台無しにしたくない。
そう思って僕は不安げに僕らを見ているを連れてリビングに戻った。
サマンサもの様子に気づいたのかそれ以上、文句は言ってこなかった。(珍しいこともあるもんだ)
だがは僕らがケンカになったのは自分のせいと思ったのか、僕の手をそっと離すとサマンサの方に歩いて行った。
「あ、あの・・・ごめんなさい、サマンサお姉ちゃん・・・」
「え?どうしてが謝るの?」
「私が・・・オーリィを迎えに行くって電話するの忘れてたから・・・」
「・・・いいのよ?こうして無事だったんだし。だから、そんな顔しないで。ね?」
サマンサもが相手だと悪魔の顔は隠し、まるで聖母のような微笑みを見せる。(この二重人格めっ)
もそれで安心したのか、「着替えてきます」と自分の部屋へ入って行った。
するとサマンサは僕の方に振り向き、これまたビビるほどの笑顔を見せる(!)
「ねぇ、オーランド」
「な、何だよ・・・(この笑顔がむちゃくちゃ怖いよっ)」
「お腹空いたでしょ? 夕飯出来てるから」
「え?あ、そ、そう・・・サンキュ・・・(何、企んでやがる?)」
僕はちょっと怖くなりそれでも同様、空腹だった為、キッチンへと向う。
するとテーブルの上に何だかピンク色のジュースとちょっと不気味な色のジュースが置いてある。
「サマンサ・・・これ何?」
「ああ、これ?フルーツジュースと野菜ジュースよ。あんた健康になんて気を使ってないんでしょ?だから作ったの」
「へぇ・・・」
ちょっと引きつりつつ椅子へ座るとそこへが着替えて戻って来た。
「あ、、お腹空いただろ?一緒に食べよ!」
「はい」
はトコトコと歩いて来て自分の椅子へと座った。
するとサマンサがピンク色のジュースをの前に置く。
「はい、これ。フルーツジュースよ?の好きな苺も入ってるわ?」
「わぁ。奇麗な色!ありがとう、サマンサお姉ちゃん」
「いいのよ?ビタミンいっぱいとってね?」
サマンサはの頭を撫でながら何故か僕の方にニッコリと微笑んだ。(マジ怖いから)
はそれでも嬉しそうにジュースを飲んでいる。
「美味しい!」
「そう?なら良かった。ほら、オーランドも飲みなさい?」
「う・・・っ」
サマンサはそう言って不気味な色の方を僕の前に置く。
それに気づいたが不思議そうな顔をした。
「オーリーのジュース・・・何で色が違うんですか?」
「あ、これ?これはねーオーランドが大好きな野菜のジュースなの。だから色が違うのよ?」
「野菜ジュースですか」
「そう。これは栄養もあるしオーランドの体の事を考えて私が作ったのよ?」
「そうなんですか。サマンサお姉ちゃんは優しいですね」
「あら、そうでもないわよー?」
「・・・・・・」
サマンサはそう言って高笑いをすると怯えている僕の背中を小突いてきた。
「ほら、オーランド。早く飲みなさい? 体にいいものばかりだから」
「で、でもこれ・・・ちょっと色が・・・ヘドロ色って言うか・・・それに何だか凄く匂う―」
「いいから!味は美味しいのよ?」
「・・・・・・っ!(嘘つけ!こんな色が美味しいはずないじゃないかっ)」
ゴク・・・ッ
僕はちょっと震える手でその目の前に置かれたヘドロ色のドロドロした液体が入っているグラスを持った。
本来なら絶対に飲まないんだけど、今はが見ているしここでまたケンカをすればきっと彼女は悲しむだろう・・・
それが分かっているだけに僕はすでに匂いで吐きそうだったが、そのグラスを口に近づけた。
(うっ!!な、なんて匂いだ、おい!つか何を入れてあるのか聞くのが怖いよ!!!)
「ぅ・・・ぅぇ・・・」
「何ですって?」
「い、いえ・・・い、いただきます・・・・・・」
無邪気な顔で僕を見つめるに引きつりながらもニッコリ微笑み、そのままグラスを口に持っていった。
ゴクゴク・・・・・・・・・
「!!!!!○・・・×・・・△□×・・・っっっっ!!!!!!」(すでに言葉にならない)
「どう?オーランド♪」(ニヤリ)
「美味しいですヵ?オーリー」(ワクワク♪)
「〜〜〜〜〜っっっっ!!」
ガタン!ゴン!バターーーンッ!!
二人の問いかけに答える前に僕はそのまま椅子から立ち上がり(というか蹴倒した)速攻でトイレへと駆け込んだ。
「おぉうぇぇぇぇえええ・・・っっ!!!」
Oh ! My ! God !
It is dying unpalatable...!!
どうやら姉はこの殺人的に不味いジュースで僕を殺す気のようだ。(誰か殺人未遂で逮捕してくれ!)
何だか意味のない話になってしまいました(笑)
ちょっとサマンサの弟イジメを書きたかっただけ・・・(オイオイ)
次回からは周りの人も、もっと絡んでくると思われますがな( ̄m ̄)
日ごろの感謝を込めて…
C-MOON管理人HANAZO
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