Only one...
―――俺と結婚して下さい
オーリィにそうプロポーズをされた夜の次の日、私はイギリスへと帰国した。
オーリィも移動があるから空港まで一緒に来てくれて、
「俺も一緒に帰りたいよ〜!」
なんて騒ぐから大変だったんだけど・・・(マネージャーさんが)
それでも何とか無事に次の仕事の為、モロッコへと旅立って行った。
今度の映画は前に一緒に仕事をした監督の作品らしく、オーリィは凄く張り切っていたけど、ロケが長引きそうだと少し落ち込んでいた。
暫く会えないのは寂しいけど、私もイギリスに帰って早々、仕事が待っていて寂しいと言ってる暇もプロポーズの余韻に浸ってる間もない程だ。
だけどオーリィは私よりも大変なくせに毎日、毎日電話をかけてくれる・・・
『あー早く帰りたいよぉ〜!』
「また、そんなこと言って!撮影、楽しいんでしょ?」
『うん!すっごく楽しい!って言うか、ほんと凄いよ、監督はっ』
そう言ってオーリィは興奮したように今の仕事の話を楽しそうに話してくれる。
それを聞いてると、ああ、ほんとにオーリィはこの仕事が好きなんだな・・・って思う。
するとオーリィは一通り話し終え思い出したかのように、
『そう言えば・・・・・・オーエンに会った?』
「あ・・・ううん。まだよ?今はCLやってる最中だからオーエンも、あちこち飛び回ってるわ。私も他のチームの取材があるし・・・」
『そっかぁ。まあ、でも・・・ちゃんと会って話さないといけないもんね』
「うん。来週、こっちでオーエンのチームが試合するし、その時に行くと思うから、その後で話すわ」
私がそう説明すると、オーリィは急に声のトーンを下げて、『・・・ちょっと心配だなぁ・・・』なんて呟いている。
そんな彼に私はちょっとだけ笑ってしまった。
「何よ。私の事が信用出来ないの?」
『ち、違うよ・・・!そうじゃないけど・・・さ・・・』
「じゃあ何?」
『オーエンは・・・諦めてくれるかなぁ・・・なんて・・・』
「オーリィ・・・大丈夫よ? 彼は私の気持ちを一番に考えてくれたからこそ、会いに行けって言ってくれたんだと思うし・・・」
私がそう言うと、オーリィも少しホっとしたように息をついた。
『・・・だよね!じゃあ・・・もう心配しない』
「うん。大丈夫よ?それよりオーリィ、そろそろ切らないと怒られるんじゃない?」
『あ、いけね!もう戻らないと!あ、じゃあまた明日、かけるね!も無理しない程度に仕事頑張って』
「うん。オーリィも怪我しないように気をつけてね? じゃあ・・・」
『あ、!』
「え?」
切ろうとした時、オーリィに呼ばれて再び電話を耳に当てた。
すると―
『・・・愛してるよ!』
「・・・・・・っ?」
いきなり、そんな事を言われて言葉を失ったが、電話はすぐに切れてしまった。
ツーツーっという発信音にハっと我に返り、電話を切るも顔が赤くなってしまい、慌てて辺りを見渡す。
すると隣に座っていた同僚がニヤニヤしていてギョっとした。
「な、何よ・・・・・・」
「別にぃ〜♪愛しのダーリンとの電話が楽しそうだわぁ〜って思ってただけ」
「ちょ・・・やめてよ・・・その言い方!」
私は恥ずかしくて思わず顔を背け、パソコンに向った。
今は取材してきたものを記事にするべく会社で仕事をしているのだ。
オーリィからの電話は向こうが空いた時間にかけてくるので、いつ何時に、とかは決まってなく、今のように突然かかってくる事が多い。
時と場所を選ばないので周りに仕事仲間がいたりすると凄く恥ずかしいのだ。
こっちに戻ってきてもマスコミは私とオーエンの関係をまだ信じてたようで相変わらず勝手な記事を書かれてたりした。
前はそれで放っておいたが、今はそうもいかない。
嘘とは分かっていてもオーランドだっていい気分はしないだろうし、ずっと嘘の噂が世間に流されても困る。
だから私は帰ってきて早々、マスコミに否定のコメントを出した。
ノーコメントで通してきた私がハッキリと「オーエン選手とは付き合っていません」と言った事で、
また何度か騒がれもしたけど、今はやっと落ち着いてきたようだ。
同僚の皆も心底、驚いてたけど私の本当の相手は"前に編集長に食って掛かってた彼"だと気づいたらしい。
それがまさか、あの"世界の恋人、オーランドブルーム"だとまでは気づいてないようだけど…
「さ、仕事仕事…」
独り言のように呟いて私は再びパソコンへと向かった。
「!」
約束のバーで待っているとオーエンが笑顔で歩いてきた。
「ごめん!取材が凄くて遅くなった」
「いいのよ。そんなに待ってないわ?」
隣に座ったオーエンにそう言うと彼はホっとしたようにビールを頼んだ。
「ほんと今日はおめでとう。いい試合だったね」
「ありがとう。結構コンビプレーが上手く機能してホっとしてるよ」
オーエンはそう言って笑うと目の前に出されたビールグラスを私のグラスにチンと当てた。
今日の試合はオーエンのチームが勝利。
私は試合後、いつものように取材に行ったが、次が詰まっているのですぐに終わらせ、先にここへ来て待っていたのだ。
彼に…オーランドとの事を報告するために…
「で、どうだった?ロスは」
どうやって切り出そうかと考えていると、不意にオーエンの方から切り出した。
少しドキっとしたが、ここで誤魔化しても仕方ないと軽く目を伏せる。
「…楽しかったよ?凄く気候も良かったし」
「そっか。羨ましいよ。こっちなんて雨ばっかりで試合するのもキツかったんだ」
オーエンは苦笑交じりでそう言うとビールを軽く飲んで息を吐き出した。
「で…彼とは…会えた?」
「……ぅん」
ついにその話が出て私は小さく頷く。
「そう…。それで…ちゃんと話した?自分の気持ち」
そこで顔を上げて彼を見れば、オーエンは少しだけ寂しげな笑みを浮かべている。
その顔を見て言葉に詰まったが、彼には全てを話さないといけないと思い、静かに口を開く。
「話したわ…?そして…オーリーは私を受け入れてくれた…」
そう告げた時、オーエンは軽く目を閉じた。
「そうか…良かった」
「…マイケル…」
ふと見ればオーエンは明るい笑顔を見せてくれている。
それだけで喉の奥がギュっと痛くなって来た。
「そんな顔するなよ…。は笑っててくれなくちゃ」
「…………」
最後まで優しいオーエンの言葉に私の瞳から一粒、涙が落ちた。
彼の想いが、優しさが痛いほど伝わってきたから―
「俺の事なら気にしないで、また普通に取材にも来て欲しい。ね?」
「…う、うん…」
何とか頷くとオーエンは嬉しそうに微笑んで私の濡れた頬を指でそっと拭った。
「は…前に"自分は臆病なだけ"なんて言ってたけど…俺は凄く勇気があると思ってる」
「…え?」
そんな事を言われて私が顔を上げるとオーエンは優しく微笑んだ。
「誰だって…人を好きになれば弱くなる事だってあるよ。自分の事さえ分からなくて相手の事も信じられなくなったりね。
でも…少しだけ勇気を持って前に進めば…良くも悪くも"答え"が見つかるんだ。は今回それを実行していい方向へ答えが出ただろ…?」
静かに話す彼の言葉に頷けば大きな手が頬を包んだ。
「俺もそうしたから…何の後悔もないよ。を好きになれて…良かったって思ってる」
「でも私は…あなたにその勇気をもらったの。凄く感謝してる…」
私がそう言うとオーエンの瞳がかすかに揺れた。
でもすぐに笑みを浮かべると、おどけたように肩を竦める。
「なら感謝のキスくらい貰えるかな?」
「…え?」
「なんて、ね。ジョーク―」
私が少しだけ身を乗り出し、彼の頬にキスをすると、オーエンは驚いたように私を見つめた。
「……あ、あの…ほんとに…ありがとう…」
「……」
「また…これからも宜しくね…?」
恥ずかしいのを我慢しながら、そう言うとオーエンも少し照れたような笑顔を見せた。
「こちらこそ…宜しく」
そっと差し出された手を握り返す。
本当に彼には沢山の想いをもらった。
彼の事を好きになろうと思った事だってある。
でも――決まっていたんだ。
最初から…私の心の中にいたのは…たった一人…オーランドだけ…
オーリーが…昔も今も…私の中での"Only one..."
これからもずっと―――
Fin...
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中途半端なラストですんまそん;;
でも私の中では前回の章で終了してました(苦笑)
幼馴染という関係のせいで遠回りをしてしまった二人ですが
この先はきっとラブボケ王子に守られて末永く幸せな日々が待ってることでしょう゜*(人*´∀`)
最後までお付き合い下さいまして本当にありがとう御座いました(●´人`●)
皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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