寒すぎる台詞を吐く男
ピンポーン…ピンポーン…
「ん〜…うるさい…。誰よ…」
私はタオルケットをガバっとめくり、ボソっと呟いた。
「うぁ…暑い…」
むわっとする中、何とか体を起こすと、私はベッドから這い出て時計を見た。
「嘘でしょ…。まだ朝の7時じゃないの・…。こんな朝っぱらから誰ぇ?」
睡眠を邪魔された怒りで、私は、そう文句を言うと、未だ鳴り続けてるチャイムの音に顔をしかめる。
ピンポーンピンポーン…
「分ったわよ…っ。出ればいいんでしょ?出れば…!変な勧誘だったらぶん殴ってやる!」
朝から過激な事を言いながら、可愛いワンピース型のパジャマの上に、これまた、お揃いの可愛いガウンを羽織ると
私はドスドスと玄関の方へ歩いて行った。
「はい、どちら様?!」
ここは女の一人暮らしと言う事でドアを開ける前に、それなりに声をかけてみる。
だが外に居るはずの相手からは何も返事がない。
むぅ…人を起こしておいて返事もないなんて…っ。
顔見てやるわ!もし変態だったら殴ればいいし…(!)
私は覚悟を決めて鍵を開けると一気にドアを開けた。
バン・・・ッ!!
ガン・・・ッ!!
「ぶ・・・っ!!」
え……?"ぶっ…"????
しかも今、何かに当たったような…
私はドアを開けても誰もいないのにも驚いたが、その前にドアを開けた時に感じた衝撃と変な声が気にかかり、
ドアの向こうをひょいっと覗いてみた……
「オ、オーリー?!」
ドアの後ろにはオデコを抑えるようにして蹲っている隣の半住人のオーランドの姿があった。
半と言うのは、隣はオーランドの実家であり、オーランドは今は一人暮らしをしているのと
ACTORという仕事が忙しい為、隣には時々しか帰って来ない。
「うぅ〜…。ひどいよ、…。いきなり開ける事ないだろ…?」
「ご、ごめん…! …ってか、あんたが返事しないから悪いんでしょ?!」
私は呆れた顔でオーランドを見下ろすと、オーランドが額を擦りながら立ち上がった。
「だって…名乗ったら開けてくれないだろ…?」
「まぁね。それより・…こんな朝から何の用?!撮影でメキシコに行ってたんじゃないの?」
私は家の中に入りながら言った。
オーランドは嬉しそうに、ひょこひょこと後をついてきながら、
「昨夜遅くに戻って来たんだ!ロンドン帰る前に、に会いたくて、まず実家に戻って来たんだ。
昨夜も、すぐ会いに来ようと思ったんだけどさ?の仕事部屋に電気ついてたから朝にしようと思って早起きしたんだよね」
ニコニコと、そう言うオーランドに、は溜息をついた。
「来なくていいわよ・…。おかげで寝不足…」
「なら一緒に寝る?俺も眠いし」
ソファーに座ったの隣にオーランドも腰をかけると肩に腕を回しながら、そう言った。
私は顔が一瞬赤くなり、その腕を避けると思い切りオーランドを押しのけた。
「む・・・相変わらず冷たいな…っ」
「気安く触らないで!そ、それに何で私が、あんたと一緒に寝ないといけないの?!」
「何でって…。そりゃ好きな子と一緒に寝たいなって思うのは、世の男の常だよね?」
「はぁ?」
私は呆れた顔でオーランドを見たが、オーランドはニコニコ微笑むばかり。
「もう…いいかげんにして…。サマンサに言いつけるわよ?」
「それは勘弁して下さい…」
即答で言ってペコンと頭を下げるオーランドに、私は思わず噴き出してしまった。
「ぷ…っ。ほんとサマンサには弱いわね?嫌なら帰ってよ」
「それも勘弁して下さい…っ」
今度も即答で、しかも私の方にニッコリ微笑んでいるオーランド。
私は溜息をついてソファーから立ち上がろうとした時、オーランドに腕をガシっと掴まれて引き寄せられた。
「どこに行くの?」
「もう・…寝なおすの!手、離してよ…」
「やだよ。せっかく長いロケから帰って来て、やっと会いに来れたのに…もうちょっと話そうよ」
「話なんてない。それに眠い…」
「夕べも遅くまで原稿書いてたの?」
「まぁね…締め切り今日までだったし…。やっと仕上げて寝れると思ったのに朝から起こされたの!」
「ごめん…」
私が少し怒った顔で文句を言うと、オーランドも素直に謝ってきた。
そして少し悲しげな顔で私を見つめてくる。
はぁ…この顔に弱いのよねぇ…捨て犬みたいな目しちゃって…
オーリーってば昔から変わらない。
昔からそうだった。
明るくて皆から好かれて、友達もいっぱいいた。
もちろん女の子にもモテまくってた。
なのに・…彼はどうしてか昔から私に想いを寄せてくれてるようだ。
私が日本の小学校を卒業してすぐの頃、このイギリスに父の仕事の都合で引越してきた。
いきなりイギリスなんかに来て言葉も分らない中で学校でも友達が出来なかった私に、
お隣さんのオーランドは優しく接してくれた。
学校から帰って来て一人でいると、いつも遊びに誘ってくれたりして…
でもオーリーは中学を卒業してすぐに演技の勉強の為、ロンドンに引っ越して行った。
私は少し寂しく思ったけど、オーリーは週末になると実家に帰って来ては私に会いに来た。
そのたびに、だんだん大人びた事を言うようになって…
終いには、"好きだよ"とか、"早くロンドンで一緒に住もう"とか口説き文句を言うようになって…
私は子供の頃と少し違う、そのオーリーの態度に何だか身構えちゃうようになった。
中学生の頃とはワケが違う。
今はお互いに20歳を超えた大人になって…そんな言葉は冗談じゃ通じなくなる。
しかも彼は今ではハリウッドで成功しているACTORなんだから・…
「ぇ…ねぇ、ったら!」
「え…え?!」
いつの間にかボーっとしていたらしい。
オーランドが少し頬を脹らませて私を見ている。
「起こしちゃったから怒ってるの?」
「え?」
「だって・…ボーっとして上の空だしさ…?あ、それとも眠い?」
「さっきから眠いって何度も言ってるでしょ?」
「今度のは、誰の記事?」
「え?ああ・…ベッカム・…?」
「嘘!ベッカムの記事書いたの?じゃあ、取材に行ったんだ…?」
「うん、まぁ…ね…。編集長と一緒だけど…」
「え?!あのセクハラ編集長と?!大丈夫?何もされなかった?」
オーランドは慌てた顔で私の頬を両手で包んだ。
私はドキっとして、その手をすぐ離すと、「だ、大丈夫…っ。先輩のカメラマンも一緒だったから・…」と顔を反らした。
オーランドは、ホっとした顔で息をつくと、「良かった…っ。でも…ベッカムと会ったんだぁ…」と何やら不満顔。
私は首を傾げると、「何?オーリー、彼のファンだったっけ?サインでも欲しかった?」と聞いた。
するとオーランドは眉間に皺を寄せ、「まさか!」 と首をぶんぶん振っている。
「そうじゃなくて!が彼に会って好きになっちゃたら嫌だなぁって思ったんだよ。彼、カッコイイしね?」
「はあ?何言ってるのよ…。そんなワケないでしょ?彼には奥様がいるじゃないの」
「だって…分らないだろ?もし…口説かれたら、どうする?」
オーランドは横目で私を見ながらアホな事を聞いてくる。
私は少し苦笑しながら、
「あのねぇ…彼が私なんかを相手にする訳ないでしょ?」
「何で、私なんか、なの?は可愛いよ?」
「………っっ」
ど、どうして、こういう事をさらっと言えるわけ?!
ACTORになる前から確かに、こんな事は平気で言ってきたけど最近は前以上にさらっと言うようになったわ?!
初めてオーリーに、そう言われたのは…確か中学卒業間近だったっけ。
私が好きな人に振られて泣いてた時…
"泣かないで?は誰より可愛いんだから…。そいつの見る目がなかったんだよ"
そう言って優しく抱きしめてくれたんだった。
その時は何だか嬉しくて、そのオーリーの温もりが凄く安心した。
後で思い返して恥ずかしくなったんだけど…
大人になってから言われると、もっと恥ずかしいわよ…。
さっきの話でも分かる様に、私は今、スポーツライターという仕事をしている。
うちの小さな出版社は主にイギリスでも人気の高いサッカーの専門誌。
なので度々サッカー選手の取材へと出かけているのだけど、その度にオーリーは、"口説かれなかった?"と聞いてくる。
そんなワケないじゃないの、といつも言ってるんだけど、オーリーは、"は可愛いんだから心配だよ"と言うばかりで…。
「?どうしたの?眠いならベッドまで運ぶけど…」
またもボーっとしているとオーランドがいきなり私の顔を覗き込んできて、私は慌てて首を振った。
「い、いい!それよりオーリーも家に帰って寝たら?移動で疲れてるんでしょ?」
「大丈夫だよ?移動中は寝てきたし…夕べも少し寝たんだ。まだ時差ぼけはあるけどさ?」
「な、ならソニアママとかと、つもる話でもあるでしょ?久々に親孝行でもしてきなさいよ…」
「むぅ・…何で、はいつも俺を帰そうとするのさ?俺がいたら迷惑?」
オーランドはスネた顔で私を見ている。
私は思わず視線を反らしてしまった。
「そ、そんなんじゃないけど・…っ」
「じゃあ、一緒にいるよ。また両親、仕事でいないんだろ?」
「え?何で…知ってるの?」
「母さんに聞いたんだ。の両親、また仕事で海外に行っちゃって、のママもついて行ったって。
だから、寂しいかな?と思ってね?寂しいなら俺、オフの間中、ずっと一緒にいるよ?」
ニコニコとしながらオーランドが、そう言ってきて、私は苦笑した。
「寂しいって…。子供じゃないんだから…平気よ?それに一人は慣れてるもの」
「そんなの慣れるなよ。人間は独りじゃ生きていけないんだぞ〜」
ちょっと笑いながら私の顔を覗き込むオーランドに、私は顔が赤くなった。
「あ、あのねぇ…。だからってオーリーに一緒にいてもらわなくても結構です!じゃ、私は、もう少し寝るから。
オーリーも帰って寝なさいよ。じゃぁね?」
「あ、…?!」
そう言ってソファーから立ち上がると、私を呼ぶオーランドを無視して寝室へ向かった。
はぁ…寝起きからオーリーと話すと凄く体力使ったように疲れる…身構えちゃうからかなぁ…
前はこんな事なかったのになぁ…。
そんな事を考えながら寝室に行くと窓を少しあけて風通しを良くした。
今日は天気もよく、かなり暑い。
「これで寝やすいかな?」
そう呟いてベッドに入った時、いきなりドアが開き、オーランドが入って来た。
「!」
「キャ…!な、何よ…っ」
「何で、君はいっつも俺に冷たいんだよ。前はもっと優しかったぞ?」
何だかプリプリしているオーランドに私は驚いてベッドから起き上がった。
「な、何怒って…キャ…っ」
突然、抱きしめられて私は唖然とした。
「な、何よ…っ。離してよ!」
「やだよっ」
「何を怒ってるのよ…?!」
「が冷たいから」
「・・・・・・・・・・・っ」
私はベッドの上でオーランドに抱きしめられてると思っただけで恥ずかしくなってきた。
どうにか体を動かそうとするのに、オーランドの腕に力は強くて逃げ出せない。
「あ、あの…オーリィ…離してってば…。あの…私が悪かったから…冷たくしたわけじゃないのよ?」
何とか宥めようと、そう言うもオーランドは、まだ力を緩めてはくれない。
「あの…オーリーったら…。どうしたの?」
もう一度私が声をかけると、オーランドはやっと少し体を離して私の顔を見つめてくる。
その瞳は本当に悲しげで私は思わずドキっとして顔を伏せてしまった。
すると、ふいに額に暖かい感触を感じて、驚いて顔をあげると、今度は頬に同じ感触。
「キャ…な、何するの…?」
「何って…キス…」
「し、しないでよっ」
「何で?おやすみのキスだよ?」
「はい?」
私がもう一度顔を上げると、オーランドは私を離して、いきなりベッドに寝かせた。
「な、何よ…」
「疲れてるからイライラしてるんだよね?ちゃんと寝て疲れ取らないと!ささ、寝て寝て?俺が子守唄歌ってあげようか?」
「?! ………い……いいです…」
私は何だかグッタリして、そう呟くと、「何だ、俺がを寝かしつけたかったのにな?」 と微笑んでいる。
「独りで寝れるったら…っ」
「いいんだよ。俺が傍にいたいんだから」
「な、何よ、それ…っ」
「いいから、いいから!さ、早く寝て?」
(寝て?って言われても…オーリーが傍にいたんじゃ寝れないわよ…)
私は、そう思いながらゴロンと寝返りを打った。
オーランドはベッドの端に腰をかけていて、私にタオルケットをかけてくれる。
そして優しく頭を撫でながら、「何もしないから心配しないでね?」と微笑んだ。
私は目を瞑っていたが、その言葉にドキっとして慌てて目を開けた。
「何言ってるのよ…。そんな心配してないものっ」
「だって、そんな顔してたから…」
(う…ど、どういう顔してたんだろ、私…)
「と、とにかく!そんな事は思ってないから!」
「ん〜…。何だか、それも寂しい気もするけど…」
「は?」
「だってさ、それって俺の事を男として意識してないって事だろ?それはやだな…」
「何、バカなこと言って…」
「俺はに男として見てもらいたいし…。やっぱ何かしちゃおうかな?」
「………っ!」
オーランドは、怪しい微笑みで私の顔を見つめている。
私は真っ赤になったのに気付いて慌ててタオルケットをかぶってしまった。
「あれれ…。警戒されちゃったよ」
オーランドは、そんな事を言いながらクスクス笑っている。
「オーリーが変なこと言うからでしょ!バカ!帰ってよっ。独りで寝るっ」
「ダーメ。独りじゃ寝かさないって言ったろ?傍にいるよ。が寝るまで…さっきのはジョークだからさ?」
「うっ…もぉ……勝手にしろ!」
私は返答に困って、そう怒鳴ると苦しくなって顔を出した。
オーランドは楽しげに笑って私を見ている。
その顔が妙に憎たらしくて私は顔を背けて目を瞑った。
するとまた優しく頭を撫でる感触があり、ドキっとするも、もう何も言わず放っておいた。
その手の動きが本当に子供の頃、寝るとき頭を撫でてくれた父の手に似ていて、私は次第に安心していくのを感じ、体の力を抜いた。
途端に睡魔が襲ってくる。
こうして頭を撫でてくれるのって…今じゃオーリーだけね…
大人になったら父だって頭なんか、こうやって撫でてくれないし(当たり前だけど)
はぁ…でも…凄く安心するものなんだなぁ…こうやって頭を撫でられるのって…
私は、そんな風に思いながら眠りの中に静かに落ちていった。
「ん…暑い…」
私は、あまりの暑さに目を覚ました。
何だか薄暗くなってる気がして、目を瞑ったまま、もう夕方かな?と思った。
そう言えば・…オーリーはどうしたんだろう…
帰ったのかな?
私は、そんな事を思いつつゆっくり目を開けて、そして驚いた。
「…………ぅっっ?!」
スースー
っと目の前で寝息を立てているのはオーランドだった。
何でか私の隣に寄り添うように眠っている。
しかもスッポリと私を自分の腕の中に納めて…
な、な、何だ、何だ?!この状況は…っっ!
う…しかも暑いし…っ
この暑さはオーランドの体温だったんだっ
只でさえ暑い日に…
と、とにかく…この状況を何とかしないと…
私は動揺した頭で、そう考えて、目の前で気持ち良さそうに寝ているオーランドを起こそうと揺さぶった。
「ちょっとオーリィ…っ起きてよっ」
「むう〜……ん……むにゃ…」
(ね…っ寝ぼけてるし…っ)
私は途方に暮れたが、でもきっとオーリーも疲れてたんだ…と思った。
長いロケから帰って来たばかりで時差ボケも抜けないまま早起きまでして私に会いに来たなんて…
「バカじゃないの…?」
私は眠ったままのオーリーの額をツンと指でつついた。
すると、オーリーは、「むぅ…」 と変な声を出して、急に私を今まで以上に抱き寄せ更に抱きしめ固定してしまった。
「ちょ、ちょっと…っオーリー?暑いし苦しいよ…っ。ねぇ、オーリー?」
私はオーリーの胸に顔を押し付ける形になり、苦しいのもあったが、まず何より暑い。
もぞもぞ動くも一向に抜け出せない事に気付いた。
(ど、どうしよう…このままじゃ暑さと苦しいので死んじゃう…っ)(んな大げさな)
「オーリィ…っ。起きてってば!オーリィ…っ」
この際、疲れてて可哀相とか言ってられない・…っ
私は必死に声をかけてオーリーを起こそうとした。
でもオーリーは時折、「ん〜」 とか言うだけで起きる様子もない。
(もぉー嫌っ!何で、こうなるのよ…っ!勘弁してよっ)
私は心の中で、そう叫ぶと腕は動かないので足をバタつかせ、オーランドの足を蹴ってみた(!)
そして今まで以上に大きな声で叫んだ。
「オーリィ…っ!オー――――リー―――――っっ!!」
ドカッ!(もう一度蹴る)
「うわぁは、はいぃ…っっ。今行きます!!!」(?)
「…………?????」
オーランドは私の大声と蹴られた衝撃でパチっと目を開け、頭を上げた。
その瞬間・・・
「あれ?」
と呟き、「なぁんだ、夢かぁ〜。焦ったぁ〜」 と呟いている。
私は何だ、寝ぼけただけかと呆れると、私を抱きしめている事に気付いてないらしいオーランドを呼んでみた。
「ちょっとオーリィ…」
「え? ―うわっ」
「うわ、じゃない!離してよ!暑いし苦しいのっ」
「え?あ、あれ?!?ご、ご、ごめんっ」
オーランドは慌てて私の背中に回していた腕を緩める。
私は一気に離れて思い切り空気を吸い込んだ。
「はぁ〜〜〜〜っっ。苦しかった…!」
「ごめんね?あれ?俺、寝ちゃったんだ…」
寝ぼけた顔で、そう言うオーランドに、私も苦笑するしかなかった。
「そうみたいね?まったく驚いたわよ…目が覚めたら目の前にオーリーが寝てるんだもの…」
「アハハ…っ。の寝顔見てたら、俺まで眠くなっちゃって…ちょっと横になったら、そのまま寝ちゃったみたいだ」
呑気に笑うオーランドに、私は溜息をついた。
「寝顔なんて見てないで帰れば良かったでしょ?」
「え〜?だっての寝顔可愛いからさ?ずっと見ていたいなぁ〜ってね?」
あっさり言われて私は顔が赤くなってしまった。
慌てて起き上がると、
「そ、そういう事、あっさり言わないで!もう…っオーリーって照れるって言葉知らないの?」
「え?何で?ほんとの事だし照れないよ?」
「ぅ…っ」
(ダメ…この人に何を言っても無駄よ、無駄…)
私は軽く首を振ってベッドから出ようとした、その時、腕を引っ張られて、気付けばオーランドの腕の中に戻ってた。
「な、な、何よ…っ。離してよ…っ」
「や〜だ!もう一回一緒に寝よう?」
「は?」
「俺、まだ眠い…」
オーランドはそう言って私の頭に頬を擦り寄せている。
「ちょっと…っ私は抱き枕じゃないのっ。それに眠いなら自分の家で寝なさいよっ。隣なんだから!」
「ん〜…と一緒がいい…。凄く安心するから」
「あ、安心って…」
私は困ってしまって言葉に詰まった。
あ〜あ…無邪気なとこは昔のままなんだけどな…
でも…っ。もう子供じゃないんだし、大人の男と女が一緒にベッドに寝るなんて、やっぱりダメよ…っ
不健全だわ!(?!)
「オーリー…っ。こういう事は彼女にしなさい。私だって困る…」
「彼女がいるわけないだろ?俺は昔から一筋なんだからさ?」
「……っ」
そ、そう言われると・…本当に何て言っていいのか困る…
そう思っていると、急に体が離れ私が顔を上げると真剣な顔のオーランドと目が合った。
「な,何…?」
「そろそろ返事聞かせてくれる?」
「え?」
私はドキっとして顔が熱くなるのを感じた。
オーランドは、さっきまでと違う表情で私を見ている。
「あ、あの返事って…」
「だから…俺の気持ちは前から言ってるだろ…?もうお互いに大人なんだしさ…。ハッキリさせたい」
「ハ、ハッキリって言われても…」
「、好きな人でもいるの?」
「好きな人…は…いない…けど…」
「じゃあ、俺の事は?好き?嫌い?普通?」
(三段階で聞いてくるとこがオーリーらしい…)
「あ、あの…それ…は…」
「嫌いなら諦める。普通なら諦めないで、もっと頑張る。好きなら、今ここでキスしちゃう。さあ、答えて?」
「な…っ」
私はオーランドの言葉に顔が真っ赤になった。
(何て答えにくい…っ)
「?答えて?」
オーランドは更に真剣な顔で答えを迫ってくる。
私は胸がドキドキして視線を反らした。
私は…オーリーのこと…どう思ってるの?
今まで、そこまで真剣に考えてなかった。
ロンドンに行ってしまった時は寂しかったけど…
今ではハリウッドスターの仲間入りで凄く人気もあって、それもちょっと寂しいとは思ってたけど…
でもオフの時はずっと隣にいるしロンドンに戻ってる時は週末ごとに会いに来たし、
私もオーリーは、いつも近くにいてくれるもんだって思ってて…
私はオーリーのことは嫌いじゃない。
でも、それが男として好きか?と聞かれると…どうなんだろう?
「私…」
「うん」
(そんな、すぐ返事しないでよ…言いづらいじゃないっ)
「あ、あのね…?私は…オーリーのこと…す」
「す?」
「えっと……や、やっぱり普通!」
「えぇぇ〜〜〜?今、"す"って言ったよね?それって"好き"って言おうとしたんじゃないの?!もう一回言い直していいよ?!」
ちょっとムキになってオーランドは頬を膨らませた。
私は苦笑すると、
「もういいでしょ?普通だったら普通なの!だから離してくれない?」
「む…っ。分ったよ…。じゃあ、まだ可能性はあるってわけだね?普通から好きになる事だってあるしさ」
「はいはい。普通から嫌いになる事だってあるわよ?オーランドくん。この腕を離してくれないとね?」
私が笑いながら、そう言うとオーリーは慌てて腕を離し私を解放した。
「はぁ〜暑かったっ。さ、もう起きよう?」
私は、ホっとして、う〜んと伸びをしながら振り返ると目の前にはオーランドの長い睫毛があった。
チュッ!
「………っっっ?!」
「やっぱ嫌われてもいい。俺、それでも諦めないから」
「へ?」
私は、今起きた事で一瞬、頭が真っ白になったが、唇に残った感触だけは理解できた。
「ここまで想って来たんだ。絶対にを俺のものにしてみせるよ?」
オーランドは、そう言ってニッコリ微笑んだ。
私は一瞬、鳥肌が立って思わず固まった。
「覚悟しててね?マイハニー!」
そう言って今度は頬にキスをされ、私は思わず、オーランドの頭を殴ってしまった。
ごぃんっ!
「ぃたっ!何で殴るんだよ!人が熱い告白してるってのにっ」
「だ、だ、だってキ、キス…っ!」
「いいだろ?ホッペにくらい…」
「い、今のじゃなくて…っっさ、さっきの分よ!!」
「えぇ?さっきのを今?!」
「いいでしょ!さっきは驚いて殴り忘れたの!!」(!)
「ちぇっ。怒らないから、ラッキーって思ったのに・…」
オーランドは口を尖らせて、そう呟いた。
「な、何がラッキーなのよ!いきなりキスするなんて失礼じゃないのっ」
「だって…が、あまりに意地悪なこと言うから・…」
「どっちが意地悪よ…ッ。人の気も知らないで!オーリーのバカ!!」
私は、そう怒鳴るとベッドから出て寝室を出て行った。
その後ろをオーランドが慌てて追いかけてくる。
「待ってよ、ハニー!」
「私はあんたのハニーじゃないっ!(鳥肌)」
「いいじゃん、そうなるかもしれないだろ?近い未来にさ?」
「な・ら・な・い!」
私はずんずん歩いて一階に下りると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「あれ…誰かな…」
「むむ…まさか男じゃないだろうな?それだったら俺が成敗してやるっ」
「え?あ…ちょ、ちょっと!オーリー勝手に出ないで!」
オーランドは何故か男が来たと決め付けてプリプリしつつ玄関に歩いて行く。
私は慌てて後を追うも、オーランドは勢いよくドアを開けてしまった。
「俺のの家に来るな…っ………うぅ!」
ドアを開けた途端、変な声を出して後ずさるオーランドに、私は首を傾げた。
「オーリー?誰なの?」
そう問い掛けた瞬間、
「や〜っぱり、ここにいた!!」
大きな声がしてオーランドが耳を引っ張られている。
「ぃてててっ。痛いよ!サマンサ!!」
「サマンサ?!」
私は驚いて、すぐドアのところに走って行った。
「あ、こんにちは、!ごめんね?うちの愚弟が朝から押しかけたようで」
オーランドの姉、サマンサがオーランドの耳を離さないまま私に微笑んだ。
「あ、別に…いつもの事だし…」
「ぃたたっ。離せってっ」
「うるさいわねっ。もう、ほんとに!朝起こしに行ったらいないから驚いたわよっ。
いつまで経っても帰って来ないし・…そしたらママが隣じゃない?って呑気に言うもんだから来てみれば本当にいるなんて!」
「いいだろぉ〜?疲れて帰って来たら好きな子の顔が見たくなるんだよ!」
「あんたが好きだからって、は好きじゃないんだから、いい迷惑じゃないの!
もう!あんたみたいのをストーカーって言うのよ?今じゃっ」
「むぅっ失礼だな!俺はの家に忍び込んだりしてないぞ?!」
「何言ってるの。昔からのこと追い掛け回して・…ほんと、ごめんね?私が成敗しておくから」
私はサマンサの、相変わらずの迫力に圧倒されてて頷くのだけが精一杯だった。
「ほら、帰るわよ!たまに帰って来た時くらい、親孝行しなさいっ」
「ぃたたっ。わ、分かったから耳を離せ!伸びちゃうだろ?!あ、ハニー!また後でね!」
「後でなんて行かせないわよ!」
「サマンサには関係ないだろ?人の恋路を邪魔するなよ!牛に蹴られるぞ?!」
「それ言うなら馬でしょうが!に教えてもらったでしょ!」
「う・…っ。どっちでも同じだろ? あ、…今夜も一緒に同じベッドで眠ろうね?愛してるよ〜! ―うぎゃっ」
オーランドはサマンサに引っ張られて隣へと帰って行った。
姿が見えなくなっても声だけは聞こえて来てたのだが、最後の雄たけびは、きっとサマンサに何かされたのだろうか…
「はぁ…ほんと…台風一過って、こういう事言うのかなぁ…朝から疲れた…」
私はグッタリしつつも家の中に戻った。
もう午後の3時過ぎ…
はぁ…今日は休みになったし、昼から買い物に行こうと予定を立てていたのに…
あんな朝から起こされたから予定が狂っちゃったじゃないの…
私はソファーにポスンと座ると思わず苦笑した。
ほんと…オーリーが帰って来ると、賑やかになるわ…。
私だって、ほんとは会えて嬉しいのもあったんだけど…
"絶対にを俺のものにしてみせるよ?"
さっきオーリーに言われた言葉を思い出し、胸がドキっとした。
しかも、キスまでされてしまった…(油断した)
何だか久し振りに会ったオーランドは…凄く男っぽくて変に意識をしてしまう…。
だから冷たいそっけない態度になってしまったのかもしれないなぁ…
それにしても…どこで、あんな台詞覚えてきたんだろ…
ま、あの性格にACTORの世界は合ってるのかもね…
だって普段から、あんな寒ーーい台詞言えるんだから!
私はちょっと苦笑してソファーにコロンと横になった。
さっき、されたキスの感触を思い出し、また顔が熱くなる。
でもさすがに少しづつ睡魔が襲って来て、私はオーリーの手をふと思い出しながら、また夢の世界へと落ちていった。
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うむぅ・…お題夢オーランドバージョンで(笑)
何だか、よく分らない片思い〜(笑)
このタイトル見た時、すぐオーリーだな…って思いました^^;
まあ、レオ様でも良かったかな?とも今は思うのですが(笑)
とりあえずオーリーで発進ですv
これもレゴラスのと同じようにシリーズっぽく書いてく予定…(あくまで予定)(笑)
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