君の為に....

















僕は朝スッキリと目覚めて大きく伸びをした。


「ん〜〜〜っ。今日もいい天気だなぁ・・・・・。 ―おはよう、





いつものように隣の彼女の部屋に向かって声をかける。




僕が隣に越してきた異国の少女・・・・に恋をして、どのくらい経つんだろう?
最初に会ったのは僕が小学校を卒業してすぐの頃だ。
家に一度挨拶に来た時に、僕は初めて見た外国人に胸がときめいた。
でもを一目見た時、僕は、あの奇麗な黒い瞳に吸い込まれるような気がして視線を反らしてしまったんだけどね?
黒くてサラサラの長い髪に触れてみたいと、いつも思ってた。
そのうち学校から帰って来ると、が近くの公園のベンチで一人寂しそうにしてる姿を見かけるようになった。
僕は気になったけど話し掛けるのも躊躇われて、少しの間は遠くから見てるだけだった。
でも、ある雨の日・・・僕は傘がなくて走って家に帰って来た時、は濡れたままで自分の家の前に立ってた。
僕はそこで初めて心配になり話し掛けたんだけど・・・


言葉が通じなくて、ほんと参ったよ。
だってもこっちに来たばかりで英語が全く通じなかったから・・・・
それでも一生懸命に僕の話す言葉を理解しようと耳を傾けてくれたんだ。
僕も彼女の話す生まれて初めて聞く日本語を必死に聞き取ろうと頑張った。
結局、あの日、彼女は鍵を落として家に入れないって言うのが何となくだけど分って、その時は凄く嬉しかったっけ。
だから両親が帰って来るまで僕の家にいるようにジェスチャーも交えて伝えた。
母さんも姉さんも、凄く喜んじゃって、の事を、「お人形さんみたいねぇ?」 と言って可愛がったりして・・・


そのうち学校から帰って来て、が公園にいるのを見かけると話し掛けるようになった。
やっぱり言葉が通じなくて大変だったんだけど、が悲しげな顔をするもんだから、
僕も何だか日本語を勉強して必死に話し掛けたもんだった。
は言葉のせいで学校に友達が出来なかったようだ。


それで、僕が初めて、こっちでの友達になるって必死に言ったら、
やっと笑顔を見せてくれるようになって・・・あの時は本当に嬉しくて胸が熱くなったのを今でも覚えている。
そのうち僕が日本語を覚える前に、は英語を話せるようになってた。
初めて互いの話す言葉が理解できたのは・・・最初に会ってから半年は過ぎ去ってた気がする。




最初は片言の英語・・・・
そのうち日常会話まで二人で話せるようになってた。
あれは・・・・中学の一年が終る頃だった。




それからにも少しづつ友達が出来るようになって・・・
もう公園で一人でいる姿を見かけることもなくなっていった。
それでも付き合いは変わらず、時々休みの日には一緒に買い物に行ったり一緒に勉強したりしてたんだ。




僕が・・・・彼女の事を異性として初めて意識したのは・・・・やっぱり、あの時だろう・・・。
が中学三年の頃、初めて失恋して泣いていた時だ。
いつものように僕が学校から帰って来ると、久し振りにが公園のベンチにいるのが見えた。
話し掛けようと歩いて行った時、ハっとした。
は・・・・声を出さず、静かに泣いていたからだ。
あんな風に泣く女の子を、僕は初めて見たんだ。
僕は声をかけられず、立ちすくんでいると、が先に気づいた。
そして僕を見て涙で濡れた顔で微笑んだんだ・・・・
あれには、さすがに驚いた。
そして一言 "振られちゃった・・・"って呟いてポロポロ大きな涙を零すもんだから・・・・


僕は思わず彼女を思い切り抱きしめてしまった。
何度も、"泣かないで・・・"って言ったのを、かすかに覚えてる。
あの時、を初めて異性…女の子なんだ・…と意識した。
を抱きしめてる時、凄く胸がドキドキして体が熱くなったんだ。
彼女の体の温もりを腕や胸に感じて…
僕の腕にスッポリと納まるに、女の子の体って、こんなに小さくて柔らかいんだ・・・と思った。




その後すぐに中学を卒業して、僕は前から決めていたロンドンの演劇学校へ通うのに実家を出てロンドンへ引越した。
僕はACTORになりたかったんだ。
小さな頃からの僕のたった一つの大切な夢…
それを叶える為に僕はロンドンで必死に頑張った。
その頃に色々な遊びも覚えて、色んなパーティーにも参加しては女の子とデートしたりするようになった。
何人かと付き合って、大人の関係にもなった。
それでも何か違うような気がして長くも続かなくて…それが何かは…久々に実家に帰って来てに会った時、分ったんだ。




ロンドンの学校に入学して半年ほど過ぎ、週末に、たいして面白くもないパーティーに出て
好きでもない女の子と寝るのにも飽きた頃、
母さんから、たまには戻ってきなさいという催促の電話がかかるようになった。
それで僕は久々に週末の休みを利用して、こっちに戻って来たんだ。
その時、にも久し振りに会った。


彼女は女の子から女の人って言ってもおかしくないくらいに奇麗になってた。
子供の頃から伸ばしてた黒い髪が腰まで伸びてて、それをかきあげ微笑む彼女に僕は一発で恋に落ちた。
ロンドンで女の子と付き合うたびに感じてた違和感の原因を、この時、僕は初めて知ったんだ。


そうだ…どんなに可愛い子や奇麗な子と寝ても…
初めてを抱きしめた時ほど胸が熱くならなかったんだ。
今、思えば僕は…あの時にすでに彼女に恋に落ちてたのかもしれない。
あの胸のドキドキが何のか、あの時の僕には分らなかっただけなんだ。


でも彼女に恋に落ちた僕に、すぐ障害があることが分った。
高校生になってたには大学生の恋人がいたんだ。
それを知ったときの僕のショックといったら・…
が気になって気になって毎週ロンドンから、こっちに戻るようになったほど。
母さんや姉さん達は、そんな僕に驚いてたけど、そのうち理由がバレて呆れられたっけ。




"ちゃんが、あんたを相手にするはずないでしょ?"


"彼女、この辺の男の子達から凄いモテてるのよ?"




可愛い息子OR弟に、こんな意地悪な事を言う母と姉に僕は殺意を覚えたね。
そりゃ、は可愛いし神秘的な魅力もあるから、モテるのは分る。
でも…彼女は、自分がモテてるって自覚がないから心配なんじゃないか。
それに凄く純粋なんだ。
好きな人の為なら何でも頑張っちゃうし…だから遊び人の多い大学生とかなんて、には向いてない。
案の定、浮気をされて結局、は自分から、その男に別れを告げた。
その夜、僕は沢山のお酒を持参しての家に押しかけた。




"一人にしてっ"って怒られたけど、心配で一人になんて出来ないって思ったし、
一緒にヤケ酒飲もうよと言ったら、そのうち苦笑いしながら、"ありがと…"と言って微笑んでくれた。
そのうち酔って来て、また泣いちゃったのを僕が慰めることになったんだけど…
それでも僕は嬉しかったんだ。
の為に何かできる事があるなら何でもしてやりたいって思った。




"が泣いてたら、どんな遠く離れてても飛んでくるからね?"って、あの夜帰り際に言ったら、

は、"慰めるのに、そんな嘘なんて言わなくていいわよ"って笑ってたけど少し顔が赤かったのだけは見逃さなかった。




あの時に言った言葉は嘘じゃない。
僕は今でも、そう言う気持ちでを想ってるんだ。




その頃からかな…?
僕がに"好きだよ"って自分の気持ちを、ハッキリ言うようになったのは…
だって、ちゃんと言葉にしないと、は鈍感だから、全然気付いてくれないんだ。
だから彼女にはストレートな方がいいって思った。
離れてるのが嫌で、"ロンドンで一緒に住もう"って言った事さえある。
それでも、には軽く笑われてお終いだったんだけど・…


何でジョークにとられるんだろう?と悩んだ事もしばしば・…
僕がニュージーランドに長いロケに出た時だって一緒に行こうと誘ったのに、さくっと断られたし…
僕がACTORになってからは、前以上に信じて貰えなくなった気がする…。






僕が、こんなに好きなのにさ?






でも、この前、僕のこと、好きか嫌いか普通かって聞いた時、は、「す…」 って言いかけて、
その後にアッサリと「普通」 って言い直してたんだけど、僕は、あれは信じてないんだ。
もきっと僕の事を好きになってくれる…いや好きなはずだと信じてる。
だって唇に、ほんとに一瞬の触れるか触れないか程度のキスをした時に、本気では怒らなかったからね?



だから僕は諦めずに、今まで通り強引でも何でも、に会いに行くし、自分の気持ちも言いつづけるつもりなんだ。


あの時、に、"絶対にを俺のものにしてみせる"って言ったのも本気の本気なんだから…




サマンサ(俺の愚姉)に言わせると、「あんたのやってることはストーカーよ!」 って事らしいんだけどさ。
失礼しちゃうよなぁ…

こんな愛情篭ったストーカーなんて、いる訳ないだろってのにさっ。




な〜んて思ってると、その愚姉のゴズィーラ並みの声が下から聞こえてきた。
















「オーリーーーーっ!!朝ご飯よ!!早く起きてきなさいよぉーーっ!!」


「今、行くよっ」





ったく気持ちのいい朝から、これだよ…
せっかく人がとの思い出に浸ってたのに…


僕はブツブツ言いながら階段を下りて行った。





「Good morning〜!ご機嫌いかがですかな?サマンサ姉ちゃん!」




ゴィンッ!




「ぃでっ!!」

「何が、サマンサ姉ちゃんよ!変な呼び方しないで!」
「い、痛いな!!何も朝っぱらからグーで殴る事はないだろ?!」
「あんたがアホだからでしょ?」




サマンサは、ツーンと、そっぽを向いてコーヒーを飲んでいる。
僕は殴られた頭をさすりながら椅子に座ると、


「ったくさぁ…。せっかく久々に帰って来てる可愛い弟を労うって事ができないのかよ…」


とブツブツ文句を言って、またサマンサに睨まれた。




「うるさいわねぇ…。労うほど、疲れてるわけ?」
「疲れてるとかって問題じゃないだろ?少しは優しく出来ないのかって言ってるの!」
「優しくしたら調子に乗るじゃないの。それに帰って来て早々ストーカーしに行くような弟に優しくなんて出来ませぇん!」
「ぬ…っ。俺はストーカーじゃないっつーの!は未来の俺のハニーなんだからさぁっ」
「そんなの、あんたの悲しい片思いでしょ?!だって相手にしてないわよ、きっと!」
「ぬぬぬぅ…っ。言わせておけば…!」




僕はあまりに腹が立って椅子から立ち上がると、後頭部にまたしても衝撃が走った。




ゴンッ




「ぃだっ!!」





「あんた達、朝っぱらから、うるさい!もっと静かに食べられないの?!」
「ぐ…っ。母さん…!何も殴らなくても…っっ」
「あんたには言葉よりも鉄拳の方が早いのよ」
「そ、そんな…っ」
「いいから早く座って食べなさい」
「はぁい…」




俺は母さんを怒らせると怖いのは知ってるので、すぐに大人しく椅子に座って朝食を食べ始めた。
サマンサも、それは同じで大人しくしている。
僕らの母、ソニアは、そこで静かに椅子に座ると黙ってコーヒーを飲みながら新聞を読みはじめた。





はぁ…朝から殴られちゃったよ…
相変わらず母さんは怖いよなぁ…
ま、父さんがいない分、男らしくなったってとこだろうけど。




この母さんも怒れば怖いが普段は大抵の事では怒らない、どっしりとした人だ。
小さな事では動揺せず、子供の頃から僕や姉さんを放任していたし、今では大人なんだからと、
常識と責任のある行動をしていれば何も文句は言わない。
それに…最近は母さんも密かに、僕との恋を応援してくれてる気がする。
だって僕がの家に行こうが何しようが、サマンサみたいには怒ったりしないし逆に行って来たら?と言う事もある。




まあ、母さんはの事を子供の頃から可愛がってたし、の両親が出張が多く留守がちなのもあって
が一人だと分ると、「オーランド、ちゃん呼んで来なさい。今夜はうちに泊めましょう?」 と言ってくれたりする事があった。

まあ、今ではも大人で立派な社会人になってるので、そんな事は言わなくなったが僕がこうして家に戻ってくると、
に最近あった出来事などを、さりげなく話してくれたりする。
僕には、それが嬉しかった。






「オーランド」
「え?何だい?母さん」




僕は名を呼ばれ、オムレツを切ってたナイフを止めて顔を上げた。
母さんは新聞から目を離さないまま、


「今日は天気もいいし、ちゃん誘って出かけてきたら?ちゃん休みに入ったんでしょう?」


と言った。





ほらね?やっぱり母さんは僕との事を応援してくれてるんだよね。





僕は母さんの言葉に、ニッコリ微笑んだ。




「うん。特集記事、一つ仕上げて3日間は休みだって言ってた。そうだね?こんなに天気もいいし、とデートでもしようかな?」




僕がそう言うと母さんはチラっとこっちを見て、ちょっとだけ微笑んだ。
すると、そこにサマンサが口を挟んでくる。




「ちょっと、母さん!だって休みの日くらい、ゆっくりしたいんじゃない?オーリーなんて行かせたら迷惑よ…」
「ぬ…っうるさいな、サマンサ!そんなの誘ってみなきゃ分らないじゃないかっ」
「何言ってるのよっ。あんたは断られても、諦めないでしつこく誘ったりしてるじゃないのっ」
「だって、若いのに休みの日に家に篭りっぱなしじゃもったいないだろ?だから俺が外に連れ出してあげてるんだよっ」
「だから、それが迷惑だって言ってるの!」
「何だとぉ?」
「ちょっと、あんたたち…」




母さんが呆れた顔で新聞をとじると顔を上げた。





「どうして、そうケンカばかりなの?それとサマンサ…。だって今の仕事してからは休みの日は出かけずに
ほんとに家に篭りっぱなしなのよ?少しくらい男性と外でデートした方がいいわ。あんな奇麗なのにもったいないもの」
「でも母さん…その相手が何もオーランドじゃなくても…」
「ぬ…っ」
「いいのよ。この子が一番、ちゃんの事を理解してるんだから。他の男になんて任せられないわ?」




母さんは、そう言うとコーヒーを飲みながら、サマンサに、「ね?」 と微笑んだ、
(この時、僕は母さんを抱きしめてキスしたくなったよ!)




「それは…そうかもしれないけど…。オーリーが間違いでも起こしたらどうするの?」
「ぬぬっ。さっきから聞いていればっ。俺がどんな間違いするって言うんだよ!」
「あんたなんて手が早いんだからちゃんを襲いかねないって言ってるのよっ」
「な、何だとぉ?!そんな俺が手が早いって何で知って…ぐ…っ」




思わず認めてしまい僕は慌てて口を抑えた。
サマンサはニヤっと笑って僕を見ると、




「ほぅら!私、知ってるのよ?あんたのロンドンでの遊び…っ」
「う…っ」




そう…サマンサもACTRESSを目指し、僕と同じ学校に通ってたから後輩とかもいるし、
それなりに僕の噂を聞いた事があるようだった。




「そ、そんなのは過去の事だろ?!を好きになってからは一切、他の女の子と、そう言う淫らな行為はしてないよ!」
ぶは…っ




ぼくの言葉にサマンサが飲んでた紅茶を噴出した。(全く女のすることかね?)




「な、な、何バカなこと言ってるの?!ねぇ、母さん!やっぱりオーランドにを任せるのは危ないわよっ 何するか…」
「何だよっ」
「オーランド…あなた…ちゃんに変なことしてないでしょ?」




突然、母さんが僕の方を見たからドキっとしたが、僕は首をぶんぶん振って、


「人に言えないことは何も」


と答えた。
それには母さんも、ニッコリ微笑んで、




「そう。ならいいわ?ちゃんが嫌がるのを無理やり押し倒したりするのはダメよ?
ちゃんと気持ちが通じ合って許可もらってから押し倒しなさいね?」(!)


「うん、分ってるよ、母さん」




ほーら、母さんは何て物分りのいい母親なんだろう!
それに比べ、サマンサは、まだ怖い顔で僕を見ている…




「ちょっと母さん…。そんなこと言って…」
「いいのよ。無理やり押し倒すのは紳士じゃないけど、お互いに好きで気持ちが通じた時はそうなってもいいでしょう?」
「そ、そうだけど…。はオーランドの事は、そんな風に見てないかも…」
「ぬぅ。そんなの分らないだろ?口挟むなよ!」
「何ですって?私だっては可愛い妹くらいに思ってるのよ!それをみすみす愚弟の餌食になんてさせられないわ?」
「愚弟って言うな!それに何が"餌食"だよ!俺は死霊じゃないぞ!」
「アハハ!あんたにしちゃ上手いじゃないの!でも、そうね?あんたは死霊より性質が悪い悪霊ね?に獲りついて離れない悪霊っ」
「ぐぅ、言わせておけば〜っ」







バン!!




ビクっ




「全くもう…!とにかく、オーランドはサッサと食べてちゃんを起こしに行って来なさい。その際に変なことしちゃダメよ?」
「わ、分かった…」
「ま、キスくらいは許すわ?」
「へ?」
「おはようのキスでも何でもして早くちゃんの気持ちを自分に向けなさい?」
「う、うん…わ、分った…」




さすがに、くだけた僕でも、時々母さんが怖くなる時があるよ…
サマンサも驚いた顔で口なんて開けてるし…。
ま、僕の家族は皆、を可愛がってるって事だな?うん、いい事だ。 



、いつでもブルーム家に、お嫁に来れるよ!―




僕はサッサと朝食を食べ終わると、軽くシャワーを浴びて、そのままテラスに出た。




「はぁ〜物分りのいい母親を持って僕は幸せだ〜っ」




う〜んと伸びをして、そう言うと目の前のの寝室へと目をやる。
カーテンは閉じられているが、風で靡いてるのが見える。




窓は開けっぱなしなんだよなぁ、は…
泥棒や痴漢が入ったらどうするんだよ…




「さ、久々に飛びますか」




僕は軽く屈伸をしてテラスの柵に上った。
昔はよく、こうしてテラスからベランダに飛び移ったものだ。
その度にや、の両親に怒られたんだけどさ。(因みにそんな時も母さんは笑ってるだけだった)




今は、まともに玄関から行っても開けてくれない時があるからね。
今日は、ここからお邪魔しよう。




僕は目の前のの家のテラスへポンっと軽く飛び移った。




シュタッ





「10点まんてーん!着地成功〜!」


こんなに近いテラスだと何かと便利だよなあ〜




そんな事を思いつつ、僕はそっと窓が開いてるあたりのカーテンを捲って静かに寝室へと入った。
薄暗いので目が慣れるまで、ジっとしてると少しづつ見えるようになってくる。




いたいた…
は気持ち良さそうにベッドの上で丸くなっているのが見える。
僕は足音を忍ばせてベッドへと歩いて行くと、そっと端に腰をかけた。
ギシ…っとスプリングの音が軋むのも気にせず僕はの寝顔を覗き込む。
はスヤスヤと熟睡している様子。




「相変わらず可愛いな…」




僕はそう呟きながら、ちょっと微笑んでの頬についてる髪を払ってあげた。
昨日の夜は、来る気満々だったのにサマンサに邪魔されたからな・・・
せっかく一緒にビデオ見ようと思ってたのに…




でも…は僕の出てる映画を見てくれようとはしない。
何だか知り合いが出てる映画を見るのは恥ずかしくて集中できないんだとかで…
僕は毎回、自分の出た作品のDVDとかを貰って来てはに持ってくるのに一度だって観てくれた事はない。
それが何だか凄く寂しいんだけどさ…




…好きだよ…?」




いつも…君の事を思ってる…。
僕だって、こんな事言うのは照れくさかったりするんだ・・・。
だから、いつもあんな風にふざけてるようにしか言えなくて。
ほんとは昨日のキスだって凄く勇気がいったんだよ?
君に本気で怒られたらどうしようって、ビクビクしてた。




でも…も、いつもの調子で怒ってくれたから心底ホっとしたんだ。





ねぇ…こんな気持ち…分ってくれてないの?






…」






僕は少し屈むとの頬に軽くキスをして前髪も少し払うと見えるようになった額へも優しくキスをした。





僕は君の為に…いつでも傍にいて励ましてるから…

例え僕以外の男に振られても・…が泣いてたなら傍に居てあげたいと思う。


あの時のように…君を優しく抱きしめてあげる…


泣きやむまでずっと抱きしめていてあげるよ…。






「だから…いつか…俺のこと…」





僕はそこで言葉を切った。




がかすかに寝返りを打ち、僕の方に擦り寄ってきたから…







もう少し、の寝顔を見ていたくて…







僕はの頬に一つ、ありったけの想いを込めて口付けた―






「ずっと…好きだったよ?そして、これからも…ずっと君を想ってくから…覚悟しててね?ハニー…」






そう呟き、かすかに触れる程度のキスを……最後に唇に一つ。
























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前回に引き続きのオーランドバージョンなお話第二弾ですね(笑)
この母親にして、この息子あり!みたいな(笑)
今回はヒロインとの絡みはないですけどねぇ…
今後はどうなるのかな〜って普通にシリーズにしちゃってます(笑)