TRU CALLING


























「ハリソン・・・?」


「あ、いや・・・あのさ・・・」


「え?」







彼の瞳はいつになく真剣で・・・その時、一瞬、抱きしめられるのかと思った。

















突然、モルグに彼が尋ねて来た。
凄く驚いたけど、どうやら彼はこの前の事を心配してくれたようで、それはそれで嬉しかった。
それから一緒に食事に行って、今、モルグまで送ってもらったのだけど別れ際、
ハリソンは急に私の腕を掴んで何か言いたげにしている。
だが私が首を傾げると、ハリソンはハっとしたように、その掴んでいた腕を離し、ちょっとだけ笑顔を見せた。







「ご、ごめん。えっと・・・帰り・・・気を付けろよ?」
「あ、うん・・・。でも帰る時はもう朝だし・・・」
「あ、そ、そっか・・・だよな? じゃ・・・俺、帰るよ」
「うん? じゃあ・・・バイバイ」







ちょっと慌てたようにハリソンは歩いて行ってしまった。




(変なハリソン・・・)




その後姿を見送りながら、私は軽く息をついて、そのまま仕事をするべくビルの中へと入って行った。





















「昨日、ハリソンが尋ねて来たわ」




トゥルーとカフェでランチをとっている時、ふと思い出しそう言った。
それを聞いて彼女はコーヒーカップを口に運びながら少しだけ微笑む。






「そう。何か・・・された?」
「え? 別に何も・・・休憩時間になったから一緒に食事してモルグまで送ってもらっただけ。どうして?」
「ううん。それならいいの」
「・・・・・・?」






トゥルーは少し息をついて笑顔を見せた。
まあ時々、彼女は変な事を言うから私も特に気にしない事にする。







「ね、それより今日の夜の事なんだけど・・・トゥルーは行くの?」
「ああ、リンジーの紹介の話?」
「そう・・・。何だか断りきれなくて一応、行くとは言っちゃったんだけど・・・」
「私もよ? そろそろ次の恋人見つけろってうるさくて」
「右に同じく」






そう言って手を上げると、トゥルーも楽しげに笑った。


リンジーとは私達のもう一人の親友。
彼女とも高校時代からの付き合いで、彼女は化粧品メーカーに勤めている。
派手好きだが明るく素直な性格で、彼女がいるとその場が明るくなるのだ。
だが、おせっかいがたまに傷。
最近、恋人と別れた私とトゥルーに男を紹介すると言って張り切っている。


私は素直じゃない性格が災いして振られ、トゥルーは大学時代の教授と内緒で付き合っていたが、その男が学生と浮気。
トゥルーはそれを目撃してアッサリと振ってしまったようだ。





「私はいいと思うけど」
「え?」
は真面目すぎるのよ。そりゃ仕事も勉強も大事だけど・・・お互いまだ22歳なんだし恋くらいしなくちゃ」
「そうかなぁ・・・」
「そうよ。それに今、別に気になってる人もいないんでしょ?」
「え? それは・・・」
「何よ、いるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」






トゥルーにそう聞かれて私は言葉に詰まってしまった。


気になる人というか・・・・・・・・・・・・
この前、助けられてから何となく彼の事が頭に浮かぶ、なんて言えるわけもないんだけど。
昨日だって・・・何だか意味深な行動をした割に、サッサと帰ってしまって、ちょっと気になったりしてる。
ま、ほんとに"ちょっと"なんだけどね。
だいたい、あんなロクデナシを気にしても仕方ない。(トゥルーには悪いけど)


そう思いながら伺うように見ているトゥルーに笑顔を見せた。




「そんな人いるわけないじゃない」
「そう?」
「そうよ」
「ふーん」





トゥルーはそう言いながら何となく意味深な笑みを見せて頷いた。











「Hey!Beautiful Ladies♪遅くなってごめん!」





その時、突然、後ろから肩を抱かれ、ドキっとして振り返る。






「ハ、ハリソン?!」
「ちょっと遅いわよ? ハリソン!」
「トゥルー?」
「悪い!ちょっと野暮用でさ」





ハリソンはそう言って私の隣に座った。
私は何故、ここに彼が来たのか分からなくてトゥルーを見ると彼女は苦笑いを浮かべて肩を竦める。






「今日、ハリソンにランチ誘われたからと約束しちゃったって言ったら、俺も行くってきかなくて・・・ごめんね?」
「そ、そう・・・。なら・・・そう言ってくれれば良かったのに・・・」
「ごめん」
「何? 俺が来たら迷惑だった?」
「そ、そんなことないけど・・・」






グっと顔を覗き込まれ、私は慌てて首を振った。


(何だか鼓動が少し早くなったのは気のせいよ、うん)







「それより・・・今夜、男、紹介してもらうって?」
「え? 何でそれ・・・あ、トゥルーに聞いたの?」
「まぁね。昨日、を送った後に姉さんから電話来て、ちょっとゴタゴタに巻き込まれたんだけど・・・その時に聞いたんだ」
「ゴタゴタって・・・?」

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」






私が尋ねるとトゥルーとハリソンは顔を見合わせ、何だか同じような顔をしている。


(また、この姉弟、何か隠そうとしてるわ・・・)



そう思いながら返事を待ってると案の定、想像通りの答えが返ってきた。









「何でもないの。ちょっとね。そんな事より、ね、食べ終ったら今夜着ていく服でも買いに行かない?」
「はぁ・・・」
?」
「何でもない。でも服なんていいわよ・・・。別に何でもいいじゃない」
「ダメよー。奇麗にしなくちゃ。たまにはね?」







トゥルーはそう言って笑顔を見せるが、ハリソンは何となく嫌な顔をして私を見た。







「マジで行くの?」
「え?」
「気が乗らないなら行くのやめたら?」
「ちょっとハリソン!あんたが口出す事じゃないでしょ?」
「何だよ。はあまり乗り気じゃないだろ? 姉さんこそ無理に誘うなよ」
「私じゃなくてリンジーよ!」
「あっそ。だけど彼女の紹介じゃ、きっとろくな男じゃないねっ」
「ちょ、ちょっと二人とも・・・ケンカしないでよ・・・」







言い合いを始めた二人に私は慌ててそう言った。
するとトゥルーとハリソンも、グっと言葉を詰まらせ、「ごめん」と呟く。






「とにかく・・・約束しちゃったから今夜は行くわ?」
「おい、―」
「決まり!じゃあ後で買い物に行きましょ?」







何かを言いかけたハリソンの言葉を遮り、トゥルーは楽しげにそう言うと軽くウインクをした。































別に期待してたわけじゃないのよ。


確かに仕方なく来ただけだし、こうして新しい服と靴を身につけてるのだってトゥルーに買い物に引っ張って行かれただけだし。
それでも新しい出会いがあるかも・・・なんて少しは思ってたりして、ちょっと自分でもゲンキンだなとは思ったんだけどね。
それにほら、最近は私、少しおかしかったし・・・ロクデナシな男なんて気にかけちゃって、このままじゃマズイなんて思ってたわけだから。
しかも今、私の目の前にいる男性、(ドゥーイという化粧品のCMとか出ちゃってるモデルよ、モデル!)は
凄くスマートでカッコいいし、それはちょっとだけ期待してた私も驚くほどのいい男だったんだもの。




なのに何で気分が沈んでいくんだろう?








、飲んでる?」
「あ、リンジー」
「彼女、俺より飲んでるよ」
「え? そ、そんな事は・・・」






(た、確かに!あまりに、いい男が来たから緊張しちゃってグイグイと、そんな強くもないのにワインなんて飲んでしまったわ・・・)





ドゥーイはクスクス笑いながらリンジーと何か言葉を交わしてから私の肩を抱いてきた。
リンジーはそれを見て今度はトゥルーの方に歩いて行く。
(トゥルーの方も、まあなかなかのイケメンで彼女も楽しそうに話をしているようだ)






「リ、リンジー何だって?」
「え? まあ頑張れってさ。それより・・・二人で、この店抜け出さない?」
「え・・・?でも・・・」
「ほら、ここうるさいだろ? だからもっと静かな店に行かないか?」







そう言われて困ったが確かに、このバーは静かとは言い難い場所だった。
大きな音で音楽がガンガン流れていて、ホールの方では男女入り乱れて楽しそうに踊っている。





「ね? そうしよう」
「う、うん・・・じゃあトゥルーにも言わなくちゃ・・・」






ドゥーイの押しの強さに負け、そう言ってトゥルーの方に行きかけると、不意に腕を掴まれた。





「大丈夫だよ。さっきリンジーに言っておいたからさ」
「え?」
「ほら、行こう」






ドゥーイはそう言って私の肩を抱くと、そのまま店の外へと歩いて行く。
私はトゥルーの方を振り返りながらも、そのまま彼について行った。
するとドゥーイは表の入り口ではなく裏口へと歩きだし、私は慌てて足を止めた。






「ちょ、ちょっと、どこに行くの?」
「ああ、俺の車が裏に止めてあるんだ」
「そ、そう・・・。でもお酒飲んでるし・・・」
「それほど飲んでないから大丈夫だよ? 君の方が飲んでるだろ?」
「まあ・・・」





そう言われてみればそうだ。
今も少しフワフワしていて気持ちがいいくらい。
だからか気も大きくなって、まあ大丈夫って言うんだし大丈夫なんだろう、なんて安易に彼についていってしまった。


裏口から出ると、そこは路地みたいな場所で薄暗く、他に数台の車が止まっているだけだ。





「あれが俺の車」
「あの赤いの?」
「そうだよ?」





彼の指さす方向に真っ赤な高級スポーツカーが止まっていて、それを見て、さすがモデル・・・なんて変なとこで感心していた。
すると肩を抱いてた彼の腕が急に下りてグイっと腰を抱き寄せられ驚く。






「ちょ、ちょっと何するの・・・っ」
「いいだろ? キスくらい」
「は?!」
「そっちも俺と付き合ってもいいと思ったからついてきたんだろ?」
「何言って―」





ドゥーイはそう言って顔を近づけて来て私は逃げようと体を捩った。
だが酔っているから体が思うように動かず、その上、彼の手が私の顎を持ち上げてくる。






「ちょ・・・やめて・・・っ」







キスされそうになり私は慌ててバッグに入れておいた例のスプレーを咄嗟に思い出し、手で探った。
その時、ドゥーイが突然、私から離れ―というか凄い力で剥がされた―驚いて顔を上げると・・・


















「あまり強引な男ってモテないぞ?」




「な、何だ、お前!」




「あ・・・!」














そこにはドゥーイの首ねっこを掴んで苦笑しているハリソンが立っていた。







「な、何でここに・・・っ」
「お前、誰だよ!離せ!」
「おいおい。俺に感謝しろよ。俺が来なかったらお前、顔にスプレーかけられてたかもしれないんだからさ」
「はあ?!」
「・・・・・・!」







そう言ってハリソンは私の方を見ると肩を竦めて笑った。
私はというと・・・ハリソンの言葉にドキッ!として手に掴んだスプレーを思わずバッグに引っ込める。


(何で、そんなこと知ってるわけ?!)




「な、何だよ、お前・・・!男がいるなら早くそう言えよな?」
「え?! ちょ・・・ドゥーイ、ちが―」
「クソ!リンジーに文句言ってやる。男つきの女なんて紹介しやがって・・・!」






ドゥーイはプライドが傷ついたのか、そのまま怒りながら愛車に乗り込み、凄いスピードで走り去ってしまった。
それを唖然として見送っていると、ハリソンが苦笑しながら歩いて来る。







「あーあ。また振られたな?」
「んな・・・!(ムカツクーっ!) あんたが邪魔したんじゃないっ」
「あれ? あいつにキスされて良かったわけ?」
「う・・・っ」







ハリソンは得意げな顔でそう言ってきて私は言葉に詰まってしまった。







「何で、ここにいるのよ・・・・・・」
「んー。飲みに来たらが、また襲われそうになってたからさ」
「む・・・っ。 ・・・・・・あなたは飲みに来るのに、こんな裏口から入るわけ?」
「俺は裏口が好きなんだよ」
「・・・・・・バカじゃない?」
「昔からな」






ハリソンはそう言って、ちょっと笑うと私をチラっと見てヒュ〜っと口笛を吹いた。







「その服、凄い似合ってる。奇麗だよ、
「・・・・・・さっきのドゥーイもそう言ってくれたわっ!」(い、いきなり誉めないでよ)
「へぇ。でもキスはさせなかったわけだから、そんなに気に入ったってほどでもないんだろ?」
「(そ、その通り・・・) ・・・・・・うるさいわね。さっさと飲みに行ったら?」
「そうだな。じゃあ・・・・・・どこ行く?」
「は?!」(意味わかんない、この男っ)
「そこに車、止めてあるんだ。昼間、洗車してきたから凄い奇麗なんだけどなー?」





ハリソンは私の肩を抱きながら、そのまま表通りの方に歩き出した。


(野暮用ってそれだったの?!)



そう思ってると彼は得意げな顔で私に笑顔を見せながら、





「今夜のデートは終わったようだし? この後は俺とデートするってのはどう?」


「デ、デートって・・・・・・」


「ダメ?」


「・・・・それは・・・だから・・・」


「はいはい!じゃあ決まり!ほら、行くぞ?」


「な、何よ、偉そうに!」










私の手をさりげなく繋いで歩いて行くハリソンに私は文句を言いながらもついていった。




だって・・・何だか、その少しだけ強引な手の温もりが妙に安心したから。










































 
Why does he remain







         in the mind?






           やっぱりどうかしてる 最近の私





























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ひゃーすみません、すみませんっ!またまた書いちゃいましたよっ!(苦笑)
ちょっと今の気分がハリソンなんですぅ〜〜すみませ・・・っ!
しかも以外に「トゥルーコーリング」ファンの方々が多くて小躍りしちゃいます!



皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…

【C-MOON...管理人:HANAZO】