TRU
CALLING
「あんた、ちゃんを追い掛け回してるんだって?」
いつものように兄弟三人で朝食を食べてる時、もう一人の姉、メレディスが苦笑いを浮かべてそう言った。
そのいきなりの質問に口に運んだパンがポロっと落ちる。
「べ、別に追い掛け回してるわけじゃないって。トゥルーも余計なこと言うなよ」
「あら、だって本当のことじゃない? この前だってをドゥーイから奪ってドライヴに行ったんでしょ?」
「奪ったって何だよ? あれは・・・また彼女が襲われそうになってたから―」
「へぇ、じゃあ何で、あの店に来たの? 偶然、その場に居合わせたなんて言わないでよ?」
「ぅ・・・」
「そうそう、それに色々、聞いてきたじゃない。店はどこだ、とか何時からだ、とか?」
「そうなのー? じゃあ計画的じゃない」
トゥルーは澄ました顔でそう言うとメレディスは呆れたように肩を竦めている。
(全く・・・いちいちメレディスの前で、そんなこと言うなよな・・・)
そう思いながら俺は最後のコーヒーを飲み干すと椅子から立ち上がった。
「じゃ、俺、約束あるから行くよ」
「どうせカードしに行くんでしょ?」
「よく分かってるじゃん。メレディス」
「そろそろギャンブルなんて止めてよ。いい加減、仕事を―」
「分かってるよ!またな!あ、トゥルー!」
「何?」
「勝ったら夜、夕飯でも奢ってやるよ!」
「ちょっとハリソン―」
トゥルーが何か言いかけたが俺は無視して、その店を出た。
"いい加減仕事を"
分かってはいるけどやめられないんだ、こればっかりは。
そう思いながら俺はこれから出勤するらしい奴らの間を潜り抜け、いつもの場所へと急いで向った。
「クソ!絶対インチキだ・・・」
文句を言いながら夜の通りを歩いて行く。
朝からカードをやって途中まではいい感じで勝っていたのに最後は一気に負けてしまい、有り金全部をとられてしまった。
文句の一つも言いたくなる。
「あれ・・・俺の車・・・」
今朝、来た時、車を止めておいた場所まで来たが見当たらない。
すると道路に何か文字が書かれていて、レッカーされたのだと気づき、またムカっとくる。
「チっ!何だってんだよ・・・っ」
あまりにムカついて、その場に止まっていた別の車(しかもベンツ)をガンっと蹴飛ばした。
ついてない時は、とことんついてない。
煙草に火をつけ、仕方なく歩いて帰ることにする。
ふと時計を見れば、夜中の12時。
今、モルグへ行けば彼女に会える・・・
そう思って歩き出そうとした時、突然、グイっと肩を掴まれた――
「ど、どうしたの? ハリソン、その顔・・・」
「ちょっとね・・・」
驚くに俺は口から出ている血を吹いて苦笑した。
(まさか人の車を蹴飛ばしたせいで、そいつのボディガードに殴られたなんて言えない。ほんとついてない・・・)
「あれ・・・姉さんは?」
「あ・・・トゥルーなら先に休憩に入ってルークと夕飯に行ったわ?」
「そっか・・・。はぁー・・・」
あの大男に殴られた後、どうしようかと思ったが結局、ここへ来てしまった。
何だか、こんなについてない日の最後くらい彼女の顔を見てから帰りたいと思ったからなんだけど・・・
何故かは機嫌が悪そうだ。(嫌な予感)
「何だよ、怖い顔して・・・」
「またカード行ったんだって?」
「え? ああ・・・」
「その傷・・・もしかして、そのせいで―」
「ち、違うよ!これは・・・関係ないからさ」
そこは慌てて否定すると、彼女は思い切り溜息をついた。
「ギャンブルにハマったってろくなことないわ?」
「・・・何だよ・・・また説教? だんだんトゥルーに似てきたんじゃない?」
「ちょっとハリソン・・・笑ってる場合じゃないでしょ? トゥルー心配してたわよ?」
はそう言ってタオルを冷やすと、俺の口に当ててくれた。
何だかんだ言っても優しい彼女に、さっきまでのイライラが奇麗に消えていくのを感じる。
俺、やっぱりのこと本気で好きなのかも・・・
彼女といると、こんなに居心地がいいんだから。
「何よ・・・」
「え?」
「じぃっと人の顔見ちゃって・・・」
「嘘、俺、見てた?」
「見てたでしょ?」
「あーじゃあ見惚れてたんだ」
「は?」
(あーすぐ赤くなるんだからさ。そこが可愛いよなぁ)
そう思いながら笑いを噛み殺しているとは持っていたタオルを俺に投げつけてきた。
「自分で冷やしたら?」
「えーやってよ、」
「私は仕事があるのっ」
「少しくらい休んだ方がいいって」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
俺が能天気にそう言うと、は思い切り溜息をついて振り向いた。(ちょっと怖い)
その雰囲気を誤魔化すのに俺が笑顔を作ると、はプイっと顔をそらして、
「ハリソン・・・早く仕事見つけたら?そうしたら世の中、そんなに甘くないって分かるわよ」
「またその話・・・? それより・・・今度の休み、どっか行かない?」
「行かない!」
「わお、即答かよ・・・」
「私、ギャンブル好きな人とか仕事もしないでブラブラしてる人って嫌い」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
バッサリ切られるとは、こういう事だ。
俺は彼女のキツイ言葉に思わず言葉を失った。
そこへディビスが呑気に口笛なんか吹きつつやってきた。
「、そろそろトゥルーが帰って来るから・・・って、あ・・・」
「どうも」
「・・・どうも」
(分かりやすい奴・・・絶対、ディビスって俺のこと嫌ってるよな・・・)
何だか"また来たのか?"なんて顔をしながらディビスはの方に歩いて行った。
「、トゥルーが戻って来たら僕も休憩に入るんだけど・・・一緒に食事でもどう?」
「そうなの? じゃあ一緒に行きましょうか」
「・・・え?」
「何よ、ハリソン・・・」
「い、いや・・・別に」
俺が誘おうと思ってたのに・・・って言っても、俺、さっき有り金すったから、そりゃ無理か・・・(情けない)
その時、トゥルーがルークと戻って来るのが見えた。
「あら、ハリソン?!」
「よぉ、トゥルー」
「ど、どうしたの? その顔―」
「まあ、ちょっとね」
案の定、俺の顔の傷を見てトゥルーは驚いたように歩いて来た。
だけど俺はがディビスと出て行くのを見て気が気じゃなかった。
「ああ、トゥルー。僕と、そこのカフェにいるから。もし遺体が運ばれてきたら携帯に電話くれるかな」
「え? ああ、分かったわ」
「じゃ行って来ます」
はそう言ってディビスと楽しそうに話しながら出て行ってしまった。
ルークも仕事に戻るのか、トゥルーに声をかけている。
(あーディビスの奴、得意げな顔しやがって・・・今日はとことん、ついてないって事か・・・)
そう思って溜息をついていると、トゥルーがルークを見送って戻って来た。
「もう・・・またカード負けたわけ?」
「まあ・・・」
「その怪我もそのせい?」
「そりゃ違う。ちょっとイライラして蹴った車の持ち主のボディーガードにね」
「・・・はぁ・・・・・・」
あー本気で呆れてる・・・(まあ俺もいい加減、自分に呆れてくるけどな)
「全く・・・何してるのよ、ハリソン・・・」
「ごもっとも。今、自分でも呆れてたんだ」
「ほんとに、そう思ってないクセに」
「いや・・・今回ばかりは、かなりへコんだよ・・・」
そう言って肩を竦めるとトゥルーは首を傾げて椅子に腰掛けた。
「どうしたの?」
「にガツンと言われちゃってさ」
「・・・何を?」
「"私、ギャンブル好きな人とか仕事もしないでブラブラしてる人って嫌い"ってさ」
「・・・自業自得ね。は真面目だし親を失くしてから一人で頑張ってる子だもの。ハリソン見てるとイライラするのかもね」
「うわ、酷いな、トゥルー・・・」
俺は本気で落ち込んできた。
そりゃ俺だって今のままじゃいけないって分かってる・・・(つもり)
だけど、すぐには変われないよ。
そこに電話が入り、遺体が届いたと連絡が来た。
「ほら忙しくなるからハリソンは帰って」
「何だよ、トゥルー・・・。落ち込んでる弟を一人で帰す気?」
「仕方ないでしょ? これ以上に嫌われたくないなら仕事を探すかギャンブルやめたら?」
トゥルーはそう言って肩を竦め、隣の部屋へと行ってしまった。
はぁ・・・こうなる事が分かってたなら今日はギャンブルだってしなかったよ!
もし、してなかったら有り金全てとられる事も、こんな怪我することもなかったんだからさ。
そう・・・にあんなキツイ事を言われる事だって・・・。
時間を戻せたら・・・なんて姉さんじゃあるまいし、そんなこと出来るハズもないんだけど。
今までは半信半疑だった俺も、この日ばかりはトゥルーの力を信じたくなった―――――
「あんた、ちゃんを追い掛け回してるんだって?」
いつものように兄弟三人で朝食を食べてる時、もう一人の姉、メレディスが苦笑いを浮かべてそう言った。
そのいきなりの質問に口に運んだパンがポロっと落ちる。
「べ、別に追い掛け回してるわけじゃないって。トゥルーも余計なこと言うなよ」
「あら、だって本当のことじゃない? この前だってをドゥーイから奪ってドライヴに行ったんでしょ?」
「奪ったって何だよ? あれは・・・また彼女が教われそうになってたから―」
「へぇ、じゃあ何で、あの店に来たの? 偶然、その場に居合わせたなんて言わないでよ?」
「ぅ・・・」
「そうそう、それに色々、聞いてきたじゃない。店はどこだ、とか何時からだ、とか?」
「そうなのー? じゃあ計画的じゃない」
トゥルーは澄ました顔でそう言うとメレディスは呆れたように肩を竦めている。
(全く・・・いちいちメレディスの前で、そんなこと言うなよな・・・)
そう思いながら俺は最後のコーヒーを飲み干すと椅子から立ち上がった。
「じゃ、俺、約束あるから行くよ」
「どうせカードしに行くんでしょ?」
「よく分かってるじゃん。メレディス」
そう言ってメレディスの肩をポンっと叩いてトゥルーに声をかけようとした時、
「あ、ハリソン!」
「何だよ。説教なら―」
「違うわ。忠告よ」
「・・・・・・何の?」
意味ありげな顔でニヤっとするトゥルーに俺は首を傾げた。
「今日は・・・カードはやめておいたほうがいいわ」
「え?」
「それより今日は仕事の面接にでも行った方がいい。もし夜、夕食を誘いにモルグに来る気ならね」
その言い方は普段のトゥルーの説教とは違って、こう何て言うのか説得力があった。
その雰囲気でピンとくる。
「もしかして・・・"例の日"・・・とか?」
「何の話?」
事情の知らないメレディスがキョトンとしているが、トゥルーはコーヒーを飲みながら、ちょっとだけ肩を竦めて見せた。
一体、俺に何が起きたんだろう? とは思ったが、これは言う事を聞いた方がいいような気がして、
「OK・・・そうするよ」
「その方があんたの為よ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「何? 何の話よ?」
「何でもない。じゃハリソン、夜にね」
「ああ・・・じゃあな・・・」
俺は軽く息をつくと、その店を後にした。
「はぁ・・・今日は勝てそうな気がしたんだけどな」
そう呟き、出勤ラッシュのようになっている通りを歩いて行く。
さて・・・予定が変わったし、これから何をしよう?
帰って寝なおすか?
"それより今日は仕事の面接にでも行った方がいい"
「嘘だろ・・・?」
ふとトゥルーの言葉を思い出し溜息をつく。
だが、ふとジーンズのポケットに押し込んでいた今朝の新聞(競馬情報を見るのに持っていた)を取り出し開く。
確か、これに仕事の情報が載ってたはずだ。
ああ、あった。
"修理工、求む。車に詳しい人歓迎!"
「車の修理ねぇ・・・」
まあ、これでも車は好きだし詳しかったりする。
「行ってみるか・・・」
そう呟いてピンっと新聞を指で弾くと電話をするのに俺は歩き出した。
「え? 面接に行ったの?」
が驚いたように振り向いた。
あの後、面接に行ったら当然の如く受かってしまった。
そしてトゥルーに報告しようとモルグへ来た所。
だけど姉さんは用事があるから遅れると連絡してきたようで、そこにはしかいなかった。(きっと人助けに走り回ってるんだろう)
俺は何となく、この話を彼女にした方がいいような気がして、面接へ行った事を伝えたのだ。
(思った以上に嬉しそうな顔をしてくれた)
「それで? どうだった?」
「もちろん受かったさ。明日から来てくれって」
「凄いじゃない!良かったね!」
「・・・サンキュ」
はそう言って俺の好きな可愛い笑顔を見せてくれる。
それだけでトゥルーに感謝したいくらいだった。
「じゃあお祝いしなくちゃね」
「え? いいよ、そんな大げさな・・・」
「何で? いいじゃない!きっとトゥルーも喜ぶわよ」
はそう言って俺の手をギュっと握ってきた。(ちょっとドキっとする)
「あ、ねえ。私、これから休憩に入るの。夕飯、まだなら付き合ってくれる?」
「え・・・? あ、ああ、いいよ? (やった!)」
こんな風に彼女の方から誘ってくれたのなんて初めてで、俺はそれだけで鼓動が早くなる。
だけど、そこに見たくない顔が呑気に口笛なんか吹きつつやってきた。
「、そろそろトゥルーが帰って来るから・・・って、あ・・・」
「どうも」
「・・・どうも」
(分かりやすい奴・・・。絶対、ディビスって俺のこと嫌ってるよな・・・)
何だか"また来たのか?"なんて顔をしながらディビスはの方に歩いて行った。
「、トゥルーが戻って来たら僕も休憩に入るんだけど・・・一緒に食事でもどう?」
「え? あ、ごめんなさい・・・。ハリソンと行く事になったの」
「え・・・そう・・・・・・なんだ・・・。じゃあまた今度」
「ええ。ごめんね、ディビス」
「ああ・・・」
(ぷっ。ほんと分かりやすい・・・かなりへコんでるよ、ディビスの奴・・・)
ディビスはあからさまにジロっと俺の方を見ると、そのまま部屋を出て行ってしまった。
するとトゥルーが疲れた顔をしながら戻って来るのが見えた。
「あら、ハリソン。やっぱり来たのね」
「よぉ」
「今日はどうだった? カードしに行ったわけ? それとも―」
「トゥルー!ハリソン、面接に行ったのよ? カードなんて行くワケないでしょ?」
がそう言うとトゥルーは意味深な笑みを浮かべて俺を見た。
「そう!おめでとう、ハリソン!それで・・・今からと食事?」
「ああ、まあ・・・」
「そう。じゃあ行ってらっしゃい。あ、、ハリソンに奢らせちゃっていいわよ?」
トゥルーはそう言いながら仕事をするのに部屋を出て行ってしまった。
はすぐに出かける用意をすると、
「じゃあ行きましょ? 今日はお祝いの私が奢っちゃう」
「え? いいよ、そんな。この前も奢ってもらったし。今日は俺が出す。カードもしなかったしさ」
「そう? じゃあ・・・お言葉に甘えちゃおうかな?」
「ああ、そうして」
彼女の言葉に笑いながら肩を竦めると、
「あ、でももうギャンブルとかしない方がいいわよ?」
「え?」
「あんなのする人の気が知れない。お金を捨ててるようなものじゃない」
「そ、そう・・・かな・・・。は・・・ギャンブルとか嫌い?」
「ええ。ギャンブルばかりしてて仕事もしてない人とか見るとイライラしちゃうもの」
「へ、へぇ・・・・・・(顔が引きつってきた)」
「でもハリソンは仕事を決めたんだから見直した!」
「・・・・・・・・・サ、サンキュ・・・・」
(そ、そうか・・・じゃあ俺はの嫌いなタイプまっしぐらだったんだ・・・あぶねー・・・)
ちょっとドキドキしつつ、内心、仕事決めといて良かった・・・とホっとした。
「早く行こ? あのカフェ、今の時間、混むのよ」
はそう言って可愛い笑顔を見せると、俺の手を引っ張った。(ちょっと顔が緩んでしまった)
「ああ、じゃ急ごうか」
俺はそう言って彼女の肩を抱いて廊下に出た。
その時、トゥルーが戻って来て俺に軽くウインクをして中へと入っていく。
Reason why she
dislikes me?
どうやら今日も俺はトゥルーに助けられたようだ。
ブラウザの"戻る"でバックして下さいませv
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ちょっと命拾いしたハリソンなんぞ・・・(笑)
でも、いい方向にいけばそれにこしたことはないですよねー( ̄m ̄)
あーまた「トゥルーコーリング」見たくなってきちゃいました(笑)(何回見る気だ)
それとトゥルー夢に嬉しいコメントを頂いております!ありがとう御座います〜!
皆様に楽しんでいただければ幸いです。
日々の感謝を込めて…
【C-MOON...管理人:HANAZO】
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